SYMANTEC CORPORATION v. McAFEE ASSOCIATES, INC. (NETWORK ASSOCIATES, INC.)

東芝情報システム(株) 清水 豊
富士通(株) 岡本 守弘


<<事件の概要>>

著作権のある原告のソフトウェアをリバース・エンジニアリングし、被告製品に組込んだことに対する、カリフォルニア州法の不正競争法(Business and Professions-code)による侵害の主張は、連邦著作権法(301条)によって専占されるとした判示。

当事者
  • 原告:SYMANTEC CORPORATION(以下SYMANTEC)
  • 被告:McAFEE ASSOCIATES, INC.
    別名 NETWORK ASSOCIATES, INC.
    (以下McAFEE)
裁判所 カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所 サン・ノゼ支部
判決日 1998年6月8日
関連法令
(条文)
17U.S.C. §301,§106
18U.S.C. §1961,§2314,§2315 (RICO法:Racketeer Influenced and Corrupt Organizations Act)
Cal.Bus.& Prof.Code §§17200 (Business and Professions-Code)
判決
  • 原告SYMANTECの仮差止命令を求める申立は認める。
  • 被告McAFEEの不正競争の棄却を求める申立は認める。
  • 被告McAFEEのRICO法違反及びRICO法違反共謀の棄却を求める申立は認める。
    (但し、原告SYMANTECに訴訟原因修正の許可を与える)
キーワード リバース・エンジニアリング、連邦著作権法による専占、RICO法、起訴状の修正

  1. 事案の背景
  2. *SYMANTECおよびMcAFEEの両当事者は、コンピュータ・ソフトウェア製品の開発、販売、製造を業としている。

    *訴訟の要因(原告SYMANTECの主張)
    SYMANTECの主張は次の通り。

    *原告SYMANTECの申立と裁判所の判断の経緯

  3. 本件の争点

  4. 本決定で裁判所は次の3つの申立に対し、判断している。

  5. 争点に対する両者の主張と裁判所の判断

    1. 仮差止命令を求める申立

    2. *仮差止命令を求める当事者の証明すべき事項

      *原告SYMANTECの主張

      *被告McAFEEの主張

      *裁判所の判断

    3. 棄却の申立

      1. 不正競争の請求(第8訴訟原因)

      2. *原告SYMANTECの主張
        • McAFEEがSYMANTECのソフトウェア(CrashGuard)をリバース・エンジニアリングのため入手したことは、「違法、不公正、または詐欺的商事行為または慣行、および不公正、欺瞞的、不真正、または誤導的広告」を禁止しているカリフォルニア州Business and Professions-code 17200条以下に違反する。
        • リバース・エンジニアリングは、ソフトウェアの使用を定めるライセンス契約に違反する。
        • リバース・エンジニアリングはそれ自体著作権の侵害はないが、McAFEEがライセンス契約の条項に同意し、その上で違反したことは連邦著作権法第301条に専占されない追加的要素を構成する。

        *裁判所の判断

        • 連邦著作権法301条により、州法上の請求は以下の2つを満たす場合に専占される。

          1. 保護されるべき著作物が、著作権の目的物であること
          2. 州法上の請求の根拠となる州の与える権利は、著作権法106条の特定する著作権の一般的範囲に属する排他的権利のいずれとも同等であること
        • 権利は「単に、複製、公演、頒布または展示する行為」によって侵害される場合には、著作権の一般的範囲に属する排他的権利と「同等」である。
        • 複製、公演、頒布または展示する行為に加えて、信頼関係の違反、偽物の売り戻し、契約妨害に基く不正競争の請求など、他の質的要素が州法上の請求に要求される場合は、その権利は著作権の範囲に入らず、専占はない。
        • 争われている行為は、SYMANTECのプログラムであるCrashGuardをリバース・エンジニアリングし、競合製品にコピーしたと主張されたMcAFEEの行為であり、この行為は保護されている資料を複製、頒布する著作権法の範囲内に属する。
        • SYMANTECの主張からは、McAFEEの行為が本来著作権侵害の請求であるものへの、追加的要素を加えるに十分であることは見出せない。
        • SYMANTECの不正競争の請求は、連邦著作権法によって専占されるので訴訟原因の修正の許可を与えず棄却する。

      3. RICO法上の請求(第11および第12訴訟原因:RICO法違反および違反の共謀)

      4. *RICO訴訟成立の要件
        • 原告SYMANTECがMcAFEEの「行為」、「企業」、「パターン」、「恐喝的行為」の十分性を主張すること。

        *被告McAFEEの主張

        • SYMANTECはRICO法違反の第11訴訟原因を十分に述べていない。
          1. SYMANTECは法的に有効な企業の存在を主張していない。
          2. SYMANTECはRICO法上の責任を生じるに十分なMcAFEEの行為を主張していない。
          3. SYMANTECは恐喝的行為のパターンを主張していない。
        • RICO法上の請求が十分でないのでRICO法違反共謀の第12訴訟原因も成立しない。

        *裁判所の判断

        • SYMANTECは「企業」について正式、非正式を問わず決定を行い、組織の進行中の業務を指揮する機構を有する組織を十分説明していない。
        • 恐喝的行為の「パターン」の存在を主張するためにSYMANTECは2つ以上の実例を主張しなければならない。
        • SYMANTECは、McAFEEがCrashGuardとSymKrnl DLLの一部を州際頒布のためMcAFEE製品にコピーしたことは、RICO法の規定に列挙された制定法である、18 U.S.C. 2314条および2315条(盗まれた品物の州際輸送、販売、領得の禁止)に違反すると主張しているが、2314条および2315条は、禁制品的性質が著作権侵害から生ずる品物の州際輸送、販売または領得には適用がない。
        • RICO法違反の第11訴訟原因は棄却を免れない、よってRICO法違反共謀の第12訴訟原因も棄却を免れない。
        • 2314条および2315条は顧客情報を内容とする2個のディスケットとSymKrnl DLLの有体的コピーのような有体財産の移転および領得には適用があるとするSYMANTECの主張は正しいと思われる。
        • RICO法請求に関する証拠開示が進行中とのSYMANTECの発言と修正許可に寛大な法的基準に鑑み修正の許可は与える。

  6. 決定

    1. SYMANTECの仮差止命令を求める申立は、認める。
    2. 不正競争の第8訴訟原因の棄却を求めるMcAFEEの申立は修正の許可を与えることなく認める。
    3. RICO法違反の第11訴訟原因およびRICO法違反共謀の第12訴訟原因の棄却を求めるMcAFEEの申立は修正の許可を与えて認める。

  7. コメント
  8. 参考条文 (抄。仮訳)
  9. 連邦著作権法第106条 著作物の排他的権利
    この法律に基づく著作権の保有者は、第107条から118条までの規定に従うことを条件として、次に揚げることを行い、又は許諾する排他的権利を有する。

    (1)著作物を複製物又はレコードに複製すること。
    (2)著作物を基礎として二次的著作物を作成すること。
    (3)著作物の複製物又はレコードを販売その他の所有権の移転又は貸与によって公衆に頒布すること。
    (4)文芸、音楽、演劇及び舞踊の著作物、無言劇並びに映画その他の視聴覚著作物の場合には、著作物を公に実演すること。
    (5)文芸、音楽、演劇及び舞踊の著作物、無言劇並びに絵画、図画又は彫刻の著作物(映画その他の視聴覚著作物の個々の影像を含む。)の場合には、著作物を公に展示すること。


    連邦著作権法第301条 他の法律に対する専占
    (a)1978年1月1日以降においては、有形的表現媒体に固定され、かつ102条または103条に規定する著作権の目的物に入る著作物の、106条によって規定される著作権の一般的範囲内にある排他的権利のいずれかと同等である、すべての普通法上または衡平法上の権利は、もっぱらこの法律によって規制される。この日以降、いかなる者も州のコモン・ローまたは制定法にもとづき、これらの著作物のかかる権利または同等の権利を与えられない。

以 上

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