NATIONAL BASKETBALL ASSOCIATION

vs

MOTOROLA, INC.,
SPORTS TEAM ANALYSIS AND TRACKING SYSTEMS, INC.

合衆国第2巡回区控訴裁判所
第822、824事件 1996年8月期
(公判:1996年10月21日、 判決:1997年1月30日)
      訴訟事件一覧表の番号 96-7975、96-7983(CON)、96-9123(XAP)

全米バスケットボール協会とNBA PROPERTY社
原告−反訴被告−控訴被告−反控訴原告



SPORTS TRAXとして事業を行っているMOTOROLA社
被告−反訴原告−控訴原告−反控訴被告
STATS社として事業を行っているSPORTS TEAM ANALYSIS AND TRACKING SYSTEMS社
被告−控訴原告−反控訴被告

担当裁判官:VAN GRAAFEILAND, WINTER, ALTIMARIの各巡回控訴裁判事

MotorolaとSports Team Analysis and Tracking System(「STATS」)は、ニューヨーク南部地域の合衆国地方裁判所(Loretta A. Preska 判事)の出した、特に全米バスケットボール協会のゲームの最新のスコアや統計をプレー中に表示する携帯ページャー(ポケットベル)の販売を禁止する内容の無期限の差し止め命令につき控訴している。NBAとNBA Property社は、地方裁判所がそのランハム法上の主張を棄却したことについて反控訴している。我々は、進行中のゲームのテレビやラジオ放送から取った「リアルタイム」のNBAゲームのスコアや統計を送信することによって、MotorolaとSTATSが、NBAの財産を不正利用していることはないと判断した。従って、我々は、不正利用の主張については原審を破棄し、差し止め命令を取り消す。反控訴については、肯定する。

原告−反訴被告−控訴被告−反控訴原告の代表者Jeffrey A. Mishkin, 全米バスケットボール協会およびNBA Property 社、ニューヨーク州ニューヨーク(弁護士:Kathryn L.Barett, Richard W. Buchanan, および、(Weiss David Fross Zelnick & Lehman事務所所属の)Rodger L. Zissu, Mark D. Engelmann, Raphael Winick )

被告−反訴原告−控訴原告−反控訴被告の代表者 Herbert F. Schwartz, Fish & Nearve(ニューヨーク州ニューヨーク(弁護士:Patricia A. Martone, Vincent N. Palladino, Rodger H. Dusberger(Motorola社))

被告−控訴原告−反控訴被告の代表者 Andrew L. Deutsch, Piper & Marbury(ニューヨーク州ニューヨーク(弁護士:Edward F. Malaf, Paul M. Levy, Alain D. Leib(Deutsch Levy & Engel, Chicago, Illinois)

法廷助言者:全米フットボールリーグ、野球コミッショナー事務局、全米ホッケー・リーグの代表者 Bruce P. Keller, Debevoise & Plimpton(ニューヨーク州ニューヨーク(弁護士:lorin L. Reisner)

法廷助言者:Interactive Service Associationの代表者 Floyd Abrams, Cahill Gordon & Reindel(ニューヨーク州ニューヨーク)

法廷助言者:New York Times社の代表者 George Freeman, The New York Times社(ニューヨーク州ニューヨーク)

法廷助言者:National Broadcasting社の代表者 Susan E. Weiner, National Broadcasting社(弁護士:Michel K. Kellogg, Austin C. Schlick, Kellogg, Huber, Hansen, Todd & Evans, Washington D.C.)

法廷助言者:Chicago Marcantile Exchangesの代表者 Lee A. Freeman Jr., Freeman, Freeman & Salzman, Chicago, Illinois(弁護士:Jerrold E. Salzman, Chris C. Gair)

WINTER巡回控訴裁判事

Motorola社とSports Team Anaysis and Tracking Systems(「STATS」)は、Preska判事が出した 無期限の差し止め命令について控訴している。差し止め命令は、Motorolaが販売し、「SportsTrax」 という名で流通している、プロのバスケットボールの進行中の試合の最新情報を表示する携帯の ページャーに関するものである。差し止め命令は、全米バスケット協会とNBA Property社(集合的に 「NBA」とする)から権限を与えられていない控訴人が、ページャー、STATSのAmerica Onlineの コンピュータ・ダイアルアップ・サービス上のサイト、または、「同様の方法」を通じて、進行中の NBAの試合の得点やその他のデータを送信することを禁じている。

紛争の核心は、 International News Service 対 Associated Press 判決、248U.S.215 (1918)(「INS」判決)に基づく州法上の「ホット・ニューズ」の不正使用の主張が、連邦著作権法の 専占を受けずに存続する範囲と、NBAの主張がその存続するINS型の主張の範囲内に含まれるか 否かである。我々は、狭い範囲の「ホット・ニューズ」の例外が、専占を受けずに存続すると考える。 しかし、我々は、同時に、進行中の試合のテレビやラジオの放送から取材したNBAの「リアルタイム」の 得点や情報の控訴人による送信は、NBAの財産である「ホットニューズ」の不正使用とならないと判定した。

NBAは、ランハム法の主張の棄却について逆控訴している。我々は、ページャーの広告の中での Motorolaの不当表示は重大なものではないと判断し、原判決を肯定する。

I. 背景

 事実関係は、大体において、争いがない。Motorolaは、SportsTraxというページングの装置を販売 しており、STATSは、そのページャーに送信される試合の情報を提供している。この製品は、 1996年1月に、約200ドルで一般に発売された。SportsTraxのページャーは、1.5インチ×1.5インチの スクリーンを持ち、4つの基本モード、即ち「現況」「統計」「最終スコア」「デモンストレーション」 で作動する。本件の紛争を発生させたのは「現況」モードである (1)。このモードにおいて、SportsTraxは、進行中のNBAのゲームについての 以下の情報を表示する。即ち、(i)試合中のチーム、(ii)得点の変化、(iii)ボールを持っている チーム、(iv)チームがフリー・スローの立場にあるか否か、(v)ゲームのクオーター、 (vi)そのクオーターの残り時間である。情報は、2、3分毎に更新されるが、前半の終わりとゲームの 終わり近くには、更に頻繁に更新される。ゲーム自体の展開と、情報がページャーのスクリーンに 表示される時の間には、概ね2、3分の時差がある。

 SportsTraxの運営は、ゲームをテレビで見たり、ラジオで聞いたりしているSTATSのレポーター から供給される「データ・フィード」に依存している。レポーター達は、パソコンに得点の変化や その他の情報、例えばシュートの成功や不成功、ファウル、時間の経過などを打ち込む。情報は、 モデムで、STATSのホスト・コンピュータに伝達され、そのコンピュータは転送のためにデータを 集積・分析・整理する。情報はそれから、公共の通信業者に送られ、次にそこから衛星を通じて多数の ローカルFMラジオネットワークに送られる。ラジオネットワークは、個々のSportsTraxペイジャーが 受け取る信号を発信する。

 NBAの控訴状は、SportsTraxという装置のみを問題としているが、NBAは、公判でSTATSの America Online(「AOL」)上のサイトに関する証拠を提出した。1996年1月から、STATSのAOL上の サイトにアクセスしたユーザーは、通常、ホーム・コンピュータに付けられたモデムを通じて、 SportsTraxページャーに表示される情報よりやや包括的且つ詳細なリアルタイムのゲーム情報の提供を 提供されるようになった。AOL上のサイトでは、ゲームの得点は15秒から1分毎に更新され、プレーヤー とチームの統計は、1分毎に更新される。地方裁判所の最初の認定と判決〔National Basketball Ass'n vs Sports Team Analysis and Tracking Sys. Inc.社、931F.Supp.1124(S.D.N.Y.1996)〕 は、AOL上のサイトについては取り上げなかった。「NBAの訴状と、公判で提出された証拠は、大部分が SportsTraxを対象とするものだった」からである〔National Basketball Ass'n vs Sports Team Analysis and Tracking Sys. Inc.,、939 F.Supp.1071、1074、n.1(S.D.N.Y.1996)〕。しかし、NBAの申立により、地方裁判所はその認定と判決 を修正し、STATSのAOLのサイト上でのリアルタイムのゲーム情報の利用を差し止めた〔同上、1075 n.1〕。控訴状の記録、当事者の書類、口頭の主張が主としてSportsTraxの装置を問題としていたため、 我々も同様にその製品に焦点を合わせた。しかし、我々は、両方の製品について法的論点は同一と 考えており、我々の判定はSportsTraxとSTATSのAOLのサイトに等しく妥当する。

 NBAの控訴状は、救済のための主張を6つ挙げている。即ち、(i)不正使用による州法上の不公正 競争、(ii)ランハム法、15 U.S.C.§1125(a)の第43(a)条の下の不当広告、(iii)ランハム法、 第43条の下の起源の不当表示、(iv)起源の不当広告と不当名称による州法とコモンロー上の不公正 競争、(v)連邦法上の著作権侵害、(vi)1934年の通信法、47 U.S.C.§605の下の通信の不法妨害で ある。Motorolaは、NBAが、Motorolaと、SportsTraxを後援し広告することを約束した4つのNBA チームとの間の契約上の関係を不法に妨害していると主張して、反対請求を提示した。

地方裁判所は、第1の点−−ニューヨーク法の下の不正使用−−を除いて、NBAの主張をすべて 退けた。更に裁判所は、Motorolaの反対請求も棄却した。MotorolaとSTATSが不正使用について 責任ありと認定して、Preska判事は無期限の差し止め命令(2) を出し、損害の計算をその後の手続に留保し、控訴手続の終了まで執行を猶予した。 MotorolaとSTATSは差し止めについて控訴し、一方、NBAは、地方裁判所がそのランハム法の不当広告の 主張を棄却したことについて反控訴した。従って、我々に提示された論点は、州法上の不正使用と ランハム法上の主張である。

II. 州法上の不正使用の主張

A. 判定の概要

 州法上の不正使用の主張に対する我々の判定は、主として著作権法の専占に基づいているので、 議論は必然的にニューヨーク法の下の不正使用の要素の範囲に留まらないことになる。ここでの我々の 判定の概要は、おそらくその議論−−または少なくともその必要性−−をより理解し易くするだろう。

 我々が直面している論点は、今世紀になってからずっと、技術が情報通信の速度と量を着実に 上昇させてきたにつれ、いろいろな形で発生してきたものである。今日、個人は、家庭、職場、または それ以外の場所にいても、コンピュータ、ページャー、またはその他の装置を使って、実際、高度に 選定された種類の情報を思いのままに獲得することができる。Internationl News Service v. Associated Press, 248 U.S.215(1918)(「INS」)事件判決は、ここでの技術が現代の基準によれば原始的で あったとはいえ、技術的進化によって引き起された問題を取り上げた最初の判決の1つである。 INS事件は、会員である新聞社に電信でニュース記事を送信している2つの電信サービス会社、 Associated Press(「AP」)とInternational News Service(「INS」)が関わっていた〔同上〕。 INSは、APの速報から事実の記事を剽窃し、INSの新聞社に電信で送っていた〔同上、231〕。INSは更に、 東部海岸のAP新聞から事実記事を取って、時差があるためそれらが未発行である西部海岸のINS新聞に 電信することもあった〔同上、238〕。最高裁判所は、INSの行為は、APの財産に対するコモンロー上の 不正使用であると判断した〔同上、242〕。

 技術の進化によって、ラジオ局は、野球の試合やオペラのような催しの「生の」放送を開始する ようになり、多くの企業家達が、いろいろな方法で自分の利益のために他人の送信を利用するように なった。それに対応して、ニューヨークの裁判所は、概ねINS事件を基礎として、誰かが別の者 の催しについての送信を利用することに倫理的な基準をはめる一連の不正使用に関する判例法を作り あげた。

連邦著作権法は、1976年まで、この分野であまり積極的な役割を果たさなかった。それ以前は、野球の試合のような観客の面前での催しは著作権の対象とならないということが一般的な理解だった−−重要な判例法はない−−ようである。更に、そのような催しの放送の録音やビデオテープが著作権の対象となるか否かについてさえ疑問があった。しかし、1976年に、議会は、スポーツの試合のような観客の前でのパフォーマンスの同時録音放送に明確に著作権保護を与える立法を可決した。17 U.S.C.§101参照。このような保護は、基礎となる催しには及ぼされなかった。

 1976年の修正法には、州法上の主張の対象たる作品が著作権保護の範囲に含まれている場合には、排他的な著作権保護と「同等の」権利を実現する州法上の主張を専占する(その主張に優先して、その主張を封じる)規定も含まれていた。17 U.S.C.§301参照。1976年の修正の立法的沿革に基づき、INS事件の「ホット・ニューズ」のような主張は、専占を受けずに存続することが一般的に認められている〔H.R.No.94-1476の132(1976)、1976 U.S.C.C.A.N. 5659、5748に再録〕。但し、INS事件以降のニューヨークの不正使用の判例法の多くは、「ホット・ニューズ」の範囲をずっと超えて、先取りされている。

 我々は、INS事件のような、専占を受けない「ホット・ニューズ」の主張は、以下のようなケースに限定されると考える。即ち(i)原告が、費用を使って情報を生み出しているまたは集めている、(ii)情報が時間に敏感である、(iii)被告による情報の利用が、原告の努力に対するただ乗りとなる、(iv)被告が、原告の供する製品やサービスと直接の競争関係にある、(v)他の当事者が原告やその他の者の努力にただ乗りする可能性によって、その製品やサービスを供する誘因が減殺され、それらの存在や質が実質的に脅かされてしまう場合である。我々は、SportsTraxがこの基準を満たしていないとの結論に達した。

B. 催しまたは催しの放送に対する著作権

 NBAは、基礎となった試合とその放送の両方に関して、著作権侵害を主張した。地方裁判所はこれらの請求を棄却し、NBAはその棄却については控訴していない。しかし、著作権法の専占の効果に照らし、NBAの州法上の不正使用の主張の成立可能性の分析の枠組みを準備するために、侵害の主張について議論することが必要である。

 1. 基礎となる試合に対する著作権の侵害

 我々の見解では、基礎となるバスケットボールの試合は、17U.S.C.§102(a)の下の「原著作物」を構成しないため、連邦の 著作権保護の対象物に該当しない。第102(a)条は、「言語的著作物」「音楽的著作物」「演劇的著作物」のような範疇を含め、 この法律がカバーする「著作物」の8つの範疇を列挙している(3)。その列挙にはスポーツの催しは含まれていないし、その列挙が限定的でないことは明らかであるとはいえ、このような催しは、列挙されたいずれの範疇とも類似していない。

 スポーツの催しは、一般的な意味で、「作り出される」ものではない。勿論、少なくともプロのレベルでは、試合に向けてかなりの準備がなされる。しかし、実際に起こるであろうことを決めるのが、希望や信頼の表現であるなら、準備は、それと同じ程度に希望や信頼の表現でしかない。映画、演劇、テレビ番組やオペラなどと異なり、スポーツの催しは競い合うもので、台本はない。準備によって、間違いが成功に終わることもあるかもしれない。敵がそれを予期できなかったためにヤードを稼いだフットボールのまずいプレイがその例である。運動競技は、全体として予想しなかった結果に終わることもある。もっとも注目すべき最近の出来事としては、フライのボールとの衝突によって審判が誤ってホームランのサインを出したことがあった。

 更に、ファンを引きつけるべきであるとするなら、スポーツ競技の中にあるどんな「著作物」も、競争相手の模倣に対して開放されていなければならない。もしフットボールのT-フォーメーションの発明者がその著作権を持つことができていたら、このスポーツは盛んにならずに終わりを迎えていただろう。スポーツの準備が最も著作に似ている場合−−フィギアスケート、体操、またプロレスもそうだとはっきり言う人もいるかもしれない−−でさえ、特に優美で困難な−−プロレスの場合には外見上苦しい−−曲芸的な妙技を考案し実演する選手は、それに対する著作権を行使すれば、将来の競争を損なうことになる。妙技を実演する唯一の選手であるとの主張は、他の者が試みることを許されていない場合には、あまり意味がない。
 こうした理由から、著作権についてのNimmer論文は、スポーツ競技が著作権の対象とならないという意見の方がずっと合理的であると結論付けている〔1 M.Nimmer ( D.Nimmer, Nimmer on Copyright§2.09[F] at 2-170.1(1996)〕。Nimmer論文は、他にも問題はあるが、リーグ、チーム、選手、審判、競技場の従業員や、さらにはファンさえも、それぞれ「作品」に貢献していて、共同の著作権者の数に含まれることになると指摘している。

 明らかに、構成された競技それ自体が著作権の対象となるか否かという論点についての判例法は ほとんどなく、あっても、それはそれらが対象とならないことを示している。 Prod. Contractors, Inc v. WGN Continental Board. Co.,判決、622 F.Supp.1500(N.D.Ill.1985)〕(クリスマス・パレードは、著作権保護を受けることができる著作物 ではない)を参照せよ。基礎となっている試合の著作権を主張するにあたり、NBAは、「選手の演技は、 著作権を得るに必要とされる適度の創造性を含んでいる」と述べた、 Baltimore Orioles. Inc, v. Major League Basaball Player's Assn.判決、805 F.2d.663、669 n.7(7th Cir.1986)、cert. denied、480 U.S.941(1987)の脚注を根拠として いる。しかし、この裁判所は、「更に、たとえ選手の演技が十分に創造的でなくとも、選手は、カメラマンやディレクターがテレビ放送に創造的な労働という形の貢献をしていることを認めている」と続けている〔同上〕。この最後の文は、裁判所がテレビ放送の著作権保護の可能性を検討しているのであって、明らかにカメラなしで行うことができる、基礎となった試合を検討しているのではないことを示している。

 我々は、判例法がないことは、スポーツの催しが著作権の対象でなかった、また、対象でないという一般的な理解に起因すると考えている。実際、1976年以前は、催しそれ自体よりも著作権保護を得るずっと強い根拠があると言える、そうした催しの表現や描写の放送が著作権保護を受け得ることに対する疑いさえあったのである。事実、本書の次の節で述べるように、議会はこうした保護を生の催しの録音放送に及ぼすことが必要だと判断した。議会がかかる保護を催しそれ自体に及ぼさなかったという事実は、控訴人はNBAの試合の著作権を侵害していないとした地方裁判所の判断が正しいという我々の見解を裏付けるものである。

 2. NBAの試合の放送への著作権の侵害

 前述の通り、NBAの試合の録音録画された放送−−ゲームそれ自体に対抗するもの−−には、今や著作権保護を受ける資格が与えられている。著作権法は、特に、生の演技やスポーツ競技の同時に記録される送信が原著作物が「有形の表現媒体に固定されていなければならない」〔17 U.S.C. §102(a)〕という同法の要件を満たすようにするため、1976年に修正された。即ち、定義を記載した同法の第101条は、以下のように修正されたのである。

 議会レポートは更に、著作権保護の対象となっているのは放送であって、基礎となった試合ではないことも明らかにしている。著作権の対象となるのは「原著作物である」という同法の要件〔17 U.S.C. §102(a)〕に、試合の放送がどのように合致しているかを説明するについて、議会レポートは次のように述べている。

 放送が著作権法の下で保護されているとはいえ、地方裁判所は、MotorolaとSTATSはNBAの著作権を 侵害していないと正しい判断を下した。なぜなら、それらは、放送から事実のみを再現したのであって、 放送の内容たる試合の表現や描写を再生したわけではないからである。「事実/表現の二分法」は、 「事実を基にした作品の保護の範囲を厳しく限定する」著作権法の根本原理である 〔Feist Publication, Inc., v. Rural Tel. Service Co.,判決、499 U.S.340、350(1991)〕。「どんな著作者も、事実やアイデアに対しては著作権を持たない。著作権は、 その作品の−−『表現』と称される−−著者の独創性の跡を示す側面に限定される」 〔同上。(Harper & Row, Inc. v. Nation Enter、471 U.S.539、547-48(1985)を引用〕。

 我々は、「被告は、ディレクター、カメラマン、その他放送の独創性に貢献している者の関与なしで、NBAの試合の観客がその競技場から得ることのできる事実的情報だけを提供している」〔939 F.Supp.の1094〕ということについて、地方裁判所に賛同する。SportsTraxの装置とAOLのサイトは、放送から選び出した事実情報のみを再生し、著作権の対象たる試合の表現を複製してはいないので、控訴人は放送の著作権を侵害していない。

C. 州法上の不正使用の主張

 地方裁判所の差し止め命令は、ニューヨーク州の法律の下で、被告がその試合におけるNBAの財産権を不法に使用したという結論を基礎としている。地方裁判所は、(i)基礎となる試合に関するNBAの不正使用の主張は、著作権法の第301条によって専占されない、(ii)ニューヨークのコモンローの下で、被告は、不法な不正使用を行っている〔同上の1094-1107〕との判定によってこの結論に達している。我々は、これに賛同しない。

 1. 著作権法の専占

 a) 概要

 議会が1976年に著作権法を改正した時、同法は、一定の形態で著作権の主張と相互関係にある州法上の主張の専占を規定した。17 U.S.C.§301の下では、以下の場合に、州法上の主張は、専占される。即ち、(i)州法上の主張が、既に17 U.S.C.§106の下で著作権法により保護されている排他的な権利のうちの1つと「同等の法文上または衡平法上の権利」を主張しようと している−−「一般的適用範囲要件」と呼ばれる、−−しかも(ii)州法上の主張が適用されようとしている特定の作品が、第102 および103条の下で著作権によって保護される作品の種類に該当している−−「対象要件」と呼ばれる (4)−−場合である。

 地方裁判所は、基礎となっている試合に関しては、放送とは反対に対象要件が満たされていないので、NBAの横領の主張は専占されないとの結論に達した〔939 F.Supp.の1097〕。裁判所は、基礎となった試合に関する不正使用の主張と、その試合の放送に関する不正使用の主張の別々の分析を「部分的専占」と称している〔同上の1098、n.24〕。地方裁判所は次に、INS判決をかなり広げた、ラジオ放送に関するニューヨークの古い一連の不正使用事件判例に依拠した。我々は、問題にされている複製や横領が部分的に著作権の対象である試合の放送に関わっている場合、放送と試合の両方に関して対象要件が満たされていると考える。従って、我々は、部分的専占の法理と、そこから生まれる「原告は、放送における著作権の侵害と、基礎となった競技における権利の不正使用の両方を主張することが可能である」という奇妙な結果を否定する〔同上〕。我々は、適切に限定されたINS事件の「ホットニューズ」不正使用の主張は、一般的適用範囲要件を欠いているために専占を受けないが、地方裁判所が根拠としたもっと広いラジオ放送理論は、議会が著作権保護を同時記録の放送に拡大した時点で専占されたと理解する。

 b) 「部分的専占」と対象要件

 複製または不正利用される著作物が「著作権の範囲内に該当する」場合に、対象要件が満たされる 〔Harper & Row, Inc. v. Nation Enter、723 F.2d 195、200(1983)、他の理由については留保、471 U.S.539(1985)〕。我々は、本件の場合、対象要件が満たされている、そして「部分的専占」の概念は著作権法の第301条と調和しないと考える。試合の放送が著作権保護を受けられ、基礎となる試合は受けられないとはいえ、著作権法が、著作権法の対象作品からの複製または流用に基づく不正使用の主張に対する専占を分析する際に、この2つを区別していると読むべきではない。我々は以下のように考える。

 著作権保護を受ける資料は、しばしば、その中に著作権保護の対象とならない要素を含んでいる。 しかし、第301条の専占は、著作権の対象たる要素ばかりでなく、その対象とならない要素に関しても、 州法上の不正使用の主張を封じている。例えば、Harper & Rowにおいて、我々は、フォード大統領の回想録からの抜粋の複製を根拠とする州法上の主張は、純粋に事実的な、著作権の対象でない情報に関しても、専占によって封じられると判断した。我々は次のように述べた。

 立法的沿革も、第301条(a)の対象物要件についての上記のような理解を裏付けている。議会レポートは、次のように述べている。

 部分的専占の法理−−放送の不正利用を根拠とする主張の専占を認めるが、基礎となる事実の不正 使用を根拠とする主張の専占は否定する−−の採用は、州法上の主張の及ぶ範囲を大幅に拡大すること になって、議会が意図する専占を機能させなくするだろう。固定された形の著作権の対象たる作品を、 著作権の対象とならない基礎となる出来事や事実から分離することは、通常、困難か不可能である。 更に、議会は、著作権保護を放送にのみ及ぼし、基礎となる出来事には及ぼさないことにするに際して、 後者がパブリック・ドメインに該当することを予定したのである。部分的専占は、議会がパブリック・ ドメインに該当すると予定した資料に排他的権利を与え、議会が許すことを意図した行為を不法なもの にすることによって、上記の意図を逆さまにしてしまう。この問題点は、最近、 ProCD. Inc., v. Zeidenberg判決、86 F.3d 1447(7th Cir.1996)で明示された。これは、被告が、原告の著作権のあるソフトウエアから、 著作権の対象でない事実(電話番号リスト)を複写した事件である。第301条(a)の下の専占を議論 する際に、Easterbrook判事は、対象要件は満たされていると判断し、以下のように述べた。

 ProCD判決〔86F.3dの1453(引用は省略)〕我々は、Easterbrook判事に賛同し、専占に関して、基礎となるゲームとそのゲームの放送を分離する分析を否定する。

 c) 全体的範囲要件

 全体的範囲要件の下では、第301条は「連邦法で規定されている『排他的権利の1つを侵害する』行為によって損なわれる州法上の 権利のみを専占する」〔Computer Assoc. Int'l v. Altai, Inc.判決、982 F.2d. 693、716(2d.Cir.1992)(Harper & Row判決、723 F.2d.の200を引用)〕。しかし、本来、全体的範囲要件に 該当している、ある形態の営利的不正使用も「特別要素」の基準に合致すれば専占を受けない。Altai判決の中で述べられているように、

 ProCD判決は、部分的に、特別要素という検査基準を適用するものであった。不正使用の主張が専占されるべきであると 判断した後に、続けてEasterbrook判事は、原告が州法の契約上の主張を持ち出すことができると判断した。裁判所は、被告が契約法上 の問題としてソフトウエアのシュリンクラップ・ライセンスによって拘束されており、個人的な契約上の権利は、著作権法によって与えられる排他的権利と同等ではないために専占の対象とはならないと判定した。換言すると、契約上の権利の主張は、全体的範囲の要件が満たされていないので、専占を受けなかったのである〔ProCD、86 F.3dの1455〕。

 従って、我々は、INS判決を根拠とする「ホット・ニューズ」不正使用の主張が、どの範囲で、特別要素を含んでいて、 著作権の下の排他的権利と同等とならないのかという疑問に焦点を移すこととする。裁判所は、このような主張のうちのある形態の ものが専占を受けないことを一般的に認めている〔Financial Information, Inc. v. Moody's Investers Service, Inc.事件判決、808 F.2d 204、208(2d Cir.1986)、cert.denied、484 U.S.820(1987)(「FII」)。この結論は、部分的に、1976年の修正の立法的沿革を根拠としている。議会レポートは、以下のように述べている。

 FII判決、808 F.2dの209も参照されたい。 (「International News Service判決の下の『ホット』ニューズの不正使用は、不公正競争の法理の支流であって、議会レポートに従って、著作権の専占を受けない。」)(引用省略)。従って、最も重大な問題は、専占を受けない「ホット・ニューズ」の主張の範囲である。

 INS事件では、原告のAPと被告のINSは、顧客たる新聞社にニュース記事を売る「電信サービス会社」であった。APは、 INSが、APソースからの事実や情報をINSの関連新聞社に売ることを阻止する訴訟を提起した。INSがAPのニュースを用いることができる 1つの方法は、APのニュースの速報から事実を剽窃することであった〔INS判決、248 U.S.の231〕。もう1つの方法は、発行されたばかりの東海岸のAPの新聞から取った事実を紙面がまだできていない西海岸のINSの新聞社 に売ることである〔同上の238〕。最高裁判所は、(Erie R. Co. v. Tompkins判決、304 U.S.64(1938)より前に)INSによるAP情報の使用は、連邦の普通法の下の不法な行為であると判断した。同判決は、INSの行為を次のように特徴づけている。

 原審の地方裁判所が依拠したニューヨークの不正使用判例の理論は、INS判決のそれよりかなり広い。例えば、地方裁判所は、 Metropolitan Oera Ass'n v. Wagner-Nichols Recorder Corp.判決、101 N.Y.S.2d 483(N.Y.Sup.Ct.1950)、aff'd、107 N.Y.2d 795(第1部1951)を詳細に引用している。Mtropolitan Opera判決は、ニューヨーク州法の不正使用条項を、「商業的な価値に対する財産権は、あらゆる形の不道徳な商業的行為から守られるべきであるというもっと広い原理」を表しているものと説明し、不正使用条項は、社会の倫理に違反する商業的な悪行を処理するため」に発展した、また、この原理は「広範で融通性がある」と述べている〔939 F.Supp.の1098-1110(Metropolitan Opera判決、101 N.Y.S.2dの492、488-89を引用)〕。

 しかし、我々は、「不道徳な商業的行為」とか社会の「倫理」といったはっきりしない概念を基礎とする、Metropolitan Opera判決の広くとらえた不正使用の概念は、専占の対象となると考える。このような概念は、事実上、不正な複製と同義であって、意味のある形で著作権の侵害と区別できるものではない。従って、地方裁判所が依拠する広範な不正使用原理は、著作権法の排他的権利に対応するものである。

 実際、我々は、FII判決で同じことを述べた。この判決は、競争相手である金融報告サービス会社が行った金融情報の複製 に関わるものであったが、Metroplitan Opera判決の広範な不正使用理論を明確に退けた。我々は、以下のように説明した。

 事実、FII判決は、狭い範囲のINS事件型のホット・ニュースの主張でさえ、専占を受けないことを不承不承認めているにすぎない〔同上の209〕。

 更に、Computer Associates Intern., Inc. v. Altai Inc.事件判決は、「特別要素」の判定基準は、州法上の主張が容易に専占を免れることを許すために適用されるべきではないと述べている〔982 F.2dの717〕。「行為は、認識や意図のように、『その行為の範囲を変えるが性質を変えない』要素によって、専占から救われるものではない。・・・この『特別要素』の判定を経て、我々は、保護の対象である原告の表現の複製のみを根拠とする不公正競争や不正使用の主張は、第301条によって専占されると判断した」〔同上(引用省略)〕。

 州法上の不正使用の主張が専占を受けずに有効に存続する範囲の狭さを強調するFII事件やAltai事件などの判例に 照らしてみると、NBAが根拠とした放送に関する判決のほとんどは、適切な判例ではない。これらの判決は、同時に記録される放送が 著作権法の下で保護されておらず、州法上の主張が連邦法の専占を受けていなかった時に出されたものである。例えば、 Metropolitan Opera判決〔101 N.Y.S.2d.483〕は、オペラのラジオ放送の無許可の複製・商品化・販売を内容としていた。もう1つの例として、 Mutual Broadcasting System v. Muzak Corp.判決 〔30 N.Y.S.2d 419(Sup.Ct.1941)〕においては、被告は、原告のラジオ野球放送を電話線を使って同時に再送信したのである。 前述の通り、著作権法の1976年の修正は、特に、同時に記録される放送に著作権保護を与えることを企図したものだった。そして、 Metropolitan OperaMuzakの事件は、今日なら、著作権侵害の事件として提起することができるだろう。更に、我々は、放送に著作権保護を与えた修正法が、それらの判決の根拠であった州法上の不正使用の主張の専占も規定したので、それらは(今日なら)著作権事件として提起されなければならなかったと考える。

 従って、我々の結論は、狭い範囲の「ホット・ニューズ」不正使用の主張だけが、著作権の範囲内の材料に関する訴訟について、 専占を免れるということになる(6)商標および不公正競争についての McCarthy論文、(1996年第4版)§10:69、10-134も参照せよ。(National Exhibition Co. v. Fass判決、133 N.Y.2d 379(Sup.Ct.1954)、Muzak判決、30 N.Y.S.2d 419、およびその他NBAが依拠した、1976年の著作権法修正以前の判例を論じ、その修正後は「州の不正使用に関する法は不必要であって、専占されることになるだろう。保護は、専ら連邦の著作権法の下で行われる」との結論を出している)(7)

 我々の意見では、INS事件の主張の中心的な要素は、以下の通りである。(i)原告は、ある程度の費用または支出で、情報を生み出しているまたは収集している。FII判決〔808 F.2dの206〕とINS判決〔248 U.S.の240〕を参照せよ。(ii)その情報の価値は、高度に時間に敏感である。FII判決〔808 F.2dの209〕、INS判決〔248 U.S.の231〕、不公正競争(第3次)リステイトメント、§38 cmt.c.を参照せよ。(iii)被告による情報の使用が、それを生み出すまたは収集するために原告がした相当な努力へのただ乗りとなる。FII判決〔808 F.2dの207〕、INS判決〔248 U.S.の239-40〕、不公正競争法の(第3)リステイトメント、§38 cmt.c.、McCarthy、§10:73の10-139を参照せよ。(iv)被告による情報の使用が、原告が供給している製品やサービスと直接の競争関係に立つ。FII判決〔808 F.2dの209〕、INS判決〔248 U.S.の240〕(v)他の者が原告の努力にただ乗りする可能性が、その製品やサービスを生産する意欲を減退させ、その存続や質が大きく脅かされる。FII判決〔808 F.2dの209〕、リステイトメント§38 cmt.c.、INS判決〔248 U.S.の241〕(「〔INSの行為〕は、〔APによる〕発行の利益を無にするか、わずかなものとしてしまい、収益と比較して費用が法外なものとなるので、そのサービスは事実上中止されることになるだろう。」)(8)

 INS判決は、倫理に関するものではない。それは、情報が利益を追求する企業家達によって大衆に供されるようにするため、時間に敏感な情報に対する財産権の保護について判断したものである。APのようなサービス会社は、収集のためにコストをかけたニュースに対する財産権を保証されなければ、その収集をやめるだろう。競争相手が、わずかな費用だけでその製品を不正使用し、それによって低価格で競争製品を頒布することができれば、最初にニュースを収集する動機はなくなってしまう。誰も「ホット・ニューズ」を収集する意欲を持たなくなるので、新聞の読者である大衆は不利益を受けることになる。

 従って我々は、「ホット・ニューズ」の主張が専占を受けずに存続することを認める、特別要素−−著作権侵害の要素に加えられるもの−−は、以下の通りであると理解するに至った。即ち(i)時間に敏感な事実的情報の価値、(ii)被告によるただ乗り、(iii)原告によって供給される製品やサービスの存在そのものに対する脅威、である。

 2. SportsTraxの適法性

 我々は、上に示された「ホット・ニューズ」の判定基準の下で、MotorolaとSTATSが、不法な不正使用に携わってはいないとの結論に達した。勿論、INS判決の「ホット・ニュース」の主張のいくつかの要素は満たされている。SportsTraxに送信される情報は、正確な意味で同時発生ではないが、にも関わらず、時間に敏感である。その上、NBAは、SportsTraxを通じて供されているような情報を提供している、または、まもなく提供する予定である。それは、現在、公式のゲーム・シートとハーフタイムと最終のボックス・スコアを供する「Gamestats」と呼ばれるサービスを各競技場内で提供している。それは、又、各競技場で、メディアに対して上記のような情報を提供している。NBAは、将来、いろいろな競技場の間でネットワークを作ったり、SportsTraxに似たペイジャー製品をサポートしたりできるように、Gamestatsを強化することを計画している。当然、SportsTraxは、強化されたGamestatsと直接の競争関係に立つことになる。

 しかし、NBAのINS型の「ホット・ニューズ」の主張の試みに欠けている重要な要素がある。NBAが組み立てた主張は、3つの異なる情報関連製品を圧縮または混乱している。第1の製品は、ゲームをすることによって情報を生み出すことである。第2の製品は、ゲームの生の詳細な描写を送信することである。第3の製品は、ゲームについての厳密に事実的な情報を収集したり、再送信したりすることである。第1および第2の製品は、NBAの中心的な事業、即ち、その場にいる観客のためにバスケットボールの試合を見せることと、著作権を認められるそうした試合の放送を許諾することなのである。その試合についての厳密に事実的な資料の収集と再送信は、これとは異なる製品である。例としては、新聞のボックススコア、テレビのスポーツ・ニュースでの統計のまとめ、ページャーに送信されるリアルタイムの事実などがある。我々の見解では、第1と第2の製品については、NBAは、SportsTraxから受ける競争的影響を示しておらず、第3の製品についてはSportsTraxによるただ乗りを証明していない。

 NBAの主たる製品−−その場にいる観客のためにバスケットボールの試合を見せることと、著作権を認められるそうした試合の放送を許諾すること−−に関しては、SportsTraxまたはAOLのサイトが、NBAのゲームを見に行ったり、テレビで見たりすることの代わりとなると考える者がいるという証拠はない。事実、Motorolaは、「あなたが競技場に行ったり、ゲームをテレビで見たり、ラジオで聞いたりすることのできない時のために」作られたものとして、SportsTraxを宣伝している。
 NBAは、ページャー市場も、INS事件型の「ホット・ニュース」の主張に当てはまり、SportsTraxと将来のGamestatsとの競争が、欠如している要素を満たすことになると主張する。我々は、ページャーとか、STATSのAOLのサイトのような類似の装置へのリアルタイムの事実的情報の送信について、独立した市場があることを認める。しかし、SportsTraxが何らかの意味で、Gamestatsにただ乗りしているということは認められない。

 INS事件の「ホット・ニューズ」の主張の不可欠の要素は、被告による原告の製品へのただ乗りである。これが許されると、被告が直接の競争関係にある製品を安価に生産することが可能になる。SportsTraxは、このような製品ではない。NBAの試合の情報をリアルタイムで送信するためにページャーを利用するには、(i)試合についての事実の収集、(ii)これらの事実のネットワークでの送信、(iii)特定のサービスによるその組立、(iv)それらのページャーかオンラインのコンピュータのサイトへの送信が、必要である。控訴人は、いかなる意味でも、Gamestatsにただ乗りしてはいない。MotorolaとSTATSは、SportsTraxページャーに送信するためにNBAの試合で生み出された純粋に事実的な情報を収集するのに、彼ら自身の資金を使っている。彼らは、自分達のネットワークを持っていて、彼ら自身でデータを送信している。

 確かに、控訴人等が将来、SportsTraxページャーに再送信するために、強化されたGamestatsページャーから事実を収集するとしたら、それはただ乗りとなるだろうし、Gamestatsは、SportsTraxが負担していない事実収集の費用を負担しなければならないので、利益を出せなくなるかもしれない。もし、あるページャーから別のページャー・サービスへの事実の横取りが許されたら、ページャーや同様の装置へのNBAの試合の現在の情報の送信は事実上阻害されるだろう。送信主体となる可能性のある者は、最初の加入者もすぐに、創始者の送信にただ乗りする低コストの競争相手に出会うことになるのを知っているからである(9)

 しかし、本件の場合はそうではない。SportsTraxとGamestatsは、それぞれ、NBAの試合の事実的情報を収集するコストを負担している。そして、もし一方が、他方より安価なまたはそれ以外の点で優秀な製品を生産するなら、その生産者が市場を支配するだろう。これは、明らかに、INS判決が防止することを期待された状況、即ち、ただ乗りを予測することから生じ得る製品やサービスの欠落とは異なる。

 上記の理由について、NBAは、MotorolaとSTATSによるただ乗りに基づく、自社製品への損害を証明していないし、ニューヨーク州法に基づくNBAの不正使用の主張は(連邦著作権法に)専占される(10)

III. NBAの交差上訴

 NBAは、地方裁判所がランハム法、15 U.S.C.§1125(a)の第43条(a)(11)に基づく虚偽広告の主張を棄却したことに対して、反対控訴を行った。この主張は、SportsTraxが「各競技場のプレス・テーブルで作られた最新のゲーム情報を各競技場から直接に」提供すると説明している1996年1月のMotorolaの新聞発表と、小売用の箱の背の部分と小売用の陳列スタンドに表示された「競技場からのゲームの最新情報」という文句を根拠としている。

 NBAは、STATSのレポーターがテレビやラジオの放送からその情報を集めているので、それらは「競技場から直接の」ものではなく、「競技場から」のものでさえないと主張している。Motorolaは、これに対して、プレス・テーブルから来る情報に関する説明は、その新聞記事だけに使われた1回だけの表現であると答えている。同社はまた、ゲームの最新情報が「競技場から」来るという断言は、言語的な誤りではないと主張している。これは、おそらく、事実的情報が競技場で生まれるからなのであろう。

 第43条(a)の下の虚偽広告の主張を立証するためには、原告は、問題とされる広告の中の文句が虚偽であることを証明しなければ ならない。「虚偽性は、(1)広告が、事実的内容として、言語的に誤りであること、または(2)広告が言語的に真実であっても、 消費者を欺罔したり混乱させたりする可能性があることを証明することによって、立証できる。」 〔Lipton v. Nature Co.判決、71 F.3d 464、474(2d Cir.1995)〕。しかし、虚偽性を証明することの他に、原告は、被告が製品の「『本来的な質や特徴』を誤って 伝えたこと」も証明しなければならない。〔National Assoc. of Pharm. Mfrs. v. Averst Lab.判決、850 F.2d 904、917(2d Cir.1988)(Vidal Sassoon, Inc. v. Bristol-Myers Co.判決、661 F.2d 272、278(2d Cir.1981)を引用)〕。この要件は、他の巡回区で明示的に用いられている用語である、重大性のうちの1つである。 以下の判決を参照されたい。American Tel. & Tel. Co. v. Winback and Conserve Program, Inc.判決、42 F.3d 1421、1428 N.9(3d Cir.1994)(虚偽広告を主張する原告は「その欺罔が、購入の決断に影響を与える可能性があるという点で重大であること」を証明しなければならない。)(引用句と中の引用符は省略されている)cert.denied、115 S.Ct.1838(1995)、ALPO Petfoods, Inc. v. Ralston Purina Co. 判決、913 F.2d 958、964(D.C.Cir.1990)(虚偽のまたは誤解を招く広告は「購入の決断に与える影響において重大」でなければならない。)、 Taquino v. Teledyne Monarch Rubber判決、893 F.2d 1488、1500(5th Cir.1990)(欺罔は、「購入の決断に影響を与える可能性があるという点で重大」でなければならない)、更に、商標についてのMcCarthy論文、§27:35の27-54も参照のこと。(「消費者の購入の決断に何らかの影響を与えただろうという意味で、被告の誤った表示が『重大なもの』であったということがある程度証明され」なければならない。)

 地方裁判所は、「本訴訟で問題とされている表現をその前後関係の中で検討した後で」、「ゲームの最新情報の特定の出所についての表現は、SportsTraxについての詳細な説明以外のものでない」と判断した〔939 F.Supp. の1110〕。我々は、問題の表現が現時点の事実関係において重大なものではないという点で、地方裁判所と同意見である。この表現における不正確な点は、現時点では消費者に影響を与えることはないだろう。ページャーで試合の最新の得点を知るという消費者の関心は、SportsTraxによってのみ満たされるからである。従って、データが、直接に観測されずに放送から採られたかどうかということは、単に無関係である。しかし、我々は、もしNBAが将来において、競技場から直接にデータが供給される、競争相手となるページャー−−おそらくSportsTraxより迅速な情報の更新と公式の統計を備えたもの−−を販売するとしたら、Motorolaの情報源に関する表現は、重大な誤解を招くことになる。但し、現在の事実に基づけば、問題とされている表現は重大なものではなく、製品の本来的な質と特徴を誤って表現していることにはならないだろう。

IV. 結論

 我々は、地方裁判所が出した差し止め命令を破棄し、不正使用に関するNBAの主張が棄却されるように決定する。我々は、ランハム法の第43条(a)の下の虚偽広告に関するNBAの主張を地方裁判所が棄却したことを認容する。


1. SportsTraxの他の3つのモードは、「現在」モードで提示されるより、はるかに同時性の低い情報を内容とする。「統計」モードでは、SportsTraxページャーが表示するのは、フィールド・ゴールの成功率や得点王のような、選手やチームの各種の統計である。しかし、これらは、ハーフ・タイムの時とゲームが終了した時にしか計算されない。「最終スコア」モードでは、この機械は、前日の試合の最終スコアを表示する。「デモンストレーション(例示)」モードでは、機械は、単に、仮想のNBAの試合で示された情報を模擬的に表示する。本件における中心的な問題は、「現在」モードでの、継続的に更新されるリアルタイムのNBAの試合情報の配布である。我々はこのようなリアルタイムの情報の配布が適法であるとの結論に達したので、それ以外のモードについてのそれ以上の説明や議論は必要でない。

2. NBAは、当初、予備的差し止めを申し立て、審問はその申立について行われた。後に、両当事者は、その審問を本案についての公判に統合することで合意し、補足書類を提出し、追加の口頭尋問に出席した。

3. 第102条(a)の条文は、以下の通りである。

     (1) 言語的著作物
     (2) 音楽的著作物。付随する語句を含む。
     (3) 演劇的著作物。付随する音楽を含む。
     (4) パントマイムおよび振付の著作物
     (5) 絵画および彫刻の著作物
     (6) 映画その他の視聴覚著作物
     (7) 録音物
     (8) 建築の著作物

4. その法律の該当する部分、17 U.S.C.§301は、以下の通りである。

5. この節は、INS事件の主張が全体的範囲要件を満たしていないために専占を受けずに有効に存続することを意味しているのだが、Nimmer論文は、 明らかに、地方裁判所が採用した見解、即ち、INS事件の請求は対象要件が満たされていないので専占を受けずに存続するという見解を取っている。Nimmer論文§1.01 [B][2][b] の1-44.2.

6. 受託者義務の違反を含んだ州法上の主張や、営業の秘密の主張は、本件に含まれておらず、ここでの議論で取り上げられていない。これらの主張は一般的に、「特別要素」の判定基   準に合格するので、専占を受けない。Altai判決、982F.2dの717を参照せよ。

7. 著作権法の専占を別としても、INS判決は、多くの裁判所や学者から懐疑的に見られ、しばしば、(その先例的意味を)厳密にその事実に限定された。特に、ラーンド・ハンド判事は、この判決を広く読むことに明らかに反対している。彼は次のように書いている。

8. 何人かの学者は、この要素を、中心的な市場における被告と原告の間の直接の競争を要求するものとして分類している。「不正使用の法理が決定的となりうるめずらしいケースでは、ほとんどの場合、被告の不正使用が、INS事件の場合と同じく、原告の主な市場での直接の競争を招来していた。不正使用の法理への訴えかけは、その不正使用が原告の主な市場に侵入しない場合は、ほとんど常に否定されている。」〔不公正競争の(第3次)リステイトメント、§38 cmt.c,の412-13〕National Football League v. Delaware判決、435 F.Supp.1372(D.Del.1977)も参照せよ。この場合、NFLは、NFLの試合に基づいた州のくじに関して、デラウエア州を訴えた。誤った不正使用の主張を棄却するにあたり、裁判所は、以下のように述べている。

9. NBAの製品は、強化されたら、現実に競争上の有利な点を持つことになるだろう。そのGamestatsシステムは、明らかに、ページャー市場ばかりでなく、沢山の競技場内サービスのために用いられ、一定の費用分担という結果を生むだろうからである。Gamestatsは、公式 の統計を集め、送信するにも一時的に優位な地位を占めるだろう。このことは、本件と、ただ乗りによって電信サービスが存続不能となる危険が生まれるINS事件の間の大きな差 を示すものであるとはいえ、真実かどうかが、本件に対する我々の判断に影響を与えることはない。

10. 本件に関する我々の判断からして、我々は、控訴人の修正第1条と消滅時効抗弁を取り上げる必要がない。

11. 15U.S.C.§1125(a)(1)の関連する部分の条文は、以下の通りである。