CLINTEC NUTRITION COMPANYおよびBAXTER INTERNATIONAL, INC.(原告)

BAXA CORPORATION(被告)

第94C7050号事件

アメリカ合衆国地方裁判所イリノイ州北部地区東支部

1997年合衆国地方裁判所LEXIS 12797;44 U.S.P.Q.2D (BNA) 1719

1997年8月22日記録

決定:[*1] Baxaのサマリジャジメント申立およびクロス・サマリジャジメント申立を認容。Clintecのクレーム40の文言侵害に関するクロス・サマリジャジメント申立は、棄却。Baxaの均等論に関するサマリジャジメント申立は、第'010号特許に関する請求のすべてについて認容された。

弁護士:CLINTEC NUTRITION COMPANYおよびBAXTER INTERNATIONAL, INC.(原告)側:Michael Sennett、Matthew Aaron Phillips(Chicago, ILのBell, Boyd & Lloyd事務所所属)

CLINTEC NUTRITION COMPANYおよびBAXTER INTERNATIONAL, INC.(原告)側:Robert Morton Ward、Robert M. Barrett、Brian Michael Mattson、Robert James Depke(Chicago, ILのHill, Steadman & Simpson事務所所属)

BAXA CORPORATION(被告)側:David Barry Goroff(Chicago, ILのHopkins & Sutter, P.C.所属)

BAXA CORPORATION(被告)側:Joseph Nevi Hosteny、Raymond P. Niro、Arthur Anthony Gasey、Paul K. Vickrey(Chicago, ILのNiro, Scavone, Haller & Niro, Ltd. 所属)

BAXTER HEALTHCARE CORPORATION(反訴被告側):John R. Myers、Michael Sennett、Matthew K. Phillips(Chicago, ILのBell, Boyd & Lloyd事務所所属)

CLINTEC NUTRITION COMPANY(反訴被告側):Robert Morton Ward、Robert M. Barrett、Brian Michael Mattson、Robert James Depke(Chicago, ILのHill, Steadman & Simpson事務所所属)

[*2]     CLINTEC NUTRITION COMPANY(反訴被告側):Michael Sennett、Matthew Aaron Phillips、(Chicago, ILのBell, Boyd & Lloyd事務所所属)

BAXA CORPORATION(反訴原告)側:Joseph Nevi Hosteny、Raymond P. Niro、Arthur Anthony Gasey(Chicago, ILのNiro, Scavone, Haller & Niro, Ltd. 所属)

裁判官:合衆国地方裁判所判事、Elaine E. Bucklo

Elaine E. Buckloによる意見

意見:〔編者注:意見の原文には、判読不能部分や脱落部分が含まれていた。LEXIS SERVICEは、受け取り次第、修正版をオンラインで掲載する予定である。〕

意見覚書および命令

           Clintec Nutrition Company(注1)(「Clintec”)は、文言通りのおよび均等論の下での特許侵害を理由に、Baxa Corporation(“Baxa”)を訴えた。Baxaは、サマリジャジメントの申立をした。Clintecは、クレーム40に対する文言侵害に関して、サマリジャジメントを申し立てた。Baxaは、クレーム40に対する文言侵害に関してクロス・サマリジャジメントを申したてた。以下の理由で、Baxaのサマリジャジメント申立とクロス・サマリジャジメント申立てが認容された。Clintecのクロス・サマリジャジメント申立は棄却された。

注1 1996年10月1日、Clintec Nutrition Companyは解散し、本件で争点となっている特許はBaxter International Inc.(“Baxter”)に譲渡された。Baxterは、実際の利害関係者であって、原告に加えられているが、便宜上ここで は両原告をClintecと総称する。

背景

           Clintecは、合衆国特許第4,653,010号(「'010号特許」)を所有している。第'010号特許は、液体を調合して静脈から与えられる混合栄養剤を作るコンピューター化された装置を記載している(注2)。オペレーターは、ビデオ・ディスプレイ端末を通じてホスト・コンピューターにパラメータ・セットを入れるか、ホスト・コンピューターに保存されている処方ライブラリーからそれを検索する。一つの「パラメータ・セット」は、一人の患者のための静脈注入用の混合物または「バッグ」に対応し、デキストロース、アミノ酸、脂質、無菌水などといった様々の「基本溶液」の項目で示されている。(注3)

注2  以下の記載は、特許明細書から引き出したものである。

           注3  オペレーターは、パラメータ・セットを、3つのいずれかの形で投入することができる。即ち、望ましい基 本溶液の量、最終的な混合液の総量において各基本溶液が占める割合、各基本溶液が最終的混合液に寄 与する栄養分、のいずれかである。

オペレーターは、各パラメータ・セットをその時間のところに記入する。すると、ある患者に24時間以内に薬剤が投与される回数によって [*4]、一または複数の行列ができる。各行列は、24時間以内の時間的間隔に対応する。

           オペレーターは次に、パラメータ・セットの行列を見直して、各行列の構成要素の調合を承認する。行列のすべての構成要素について承認のための見直しが終わった後、ホスト・コンピューターは、与えられた行列上の承認を受けたパラメータ・セットを、特定の種類の基本溶液群を基礎として分類する。分類して並べ変えられた列に対しては、さらに、必要な基本溶液の濃度に従って、二度目の分類が行われ、又、各パラメータ・セットに対して必要なバッグの大きさに基づいて、三度目の分類も行われる。

           承認を受けたパラメータ・セットの一群が分類されたら、システムは分類して並べ変えられた順序に対応するラベルを作成する。分類されたパラメータ・セットは、分類された順序で調合装置に送られる。

           調合される混合液についてのパラメータ・セットを分類する目的は、調合の過程で基本溶液の各容器を調合装置から外す前に空にすることにつきる。基本溶液の容器が、調合装置に取り付けられたり [*5]、外されたりする時には無駄が出る。一度に調合される混合液の順序を慎重に定めれば、必要な基本溶液の容器の数を最小限にし、従って、関連のコストも最小限にすることになる。必要があればオペレーターは、調合装置に分類して並べ変えられた順序に入っていない混合物の調合を指示することができる。

           Clintecは、Baxaの自動調合装置が第'010号特許のクレームを侵害していると主張している。 Baxaは、その調合装置が文言通りにまたは均等論において第'010号特許の何らかのクレームを侵害しているという重大な事実に関する真の争点が存在しないと主張して、サマリジャジメントを申し立てている。Clintecも、クレーム40に関してBaxaが文言侵害をしているという重大な事実につき真の争点が存在しないとして、サマリジャッジメントを申し立てている(注4)。これに対してBaxaは、本質的に同社の最初のサマリジャジメントの申立をクレーム40に関して繰り返すことで、クロス・サマリジャジメントの申立てをしている。

注4      Clintecは、均等論の下でのサマリジャジメントは申し立てていない。

分析

           Clintecが、Baxaによって侵害されていると主張しているクレームは、以下の6つの独立クレームの一つに従属していることに [*6] 争いはない。即ち、クレーム1(注5)、19(注6)、40(注7)、67(注8)、87(注9)、93(注10)である。侵害しているとされるBaxaの調合装置が、Clintecの独立クレームを侵害していないならば、Clintecが主張しているクレームは、同様に侵害されていない。 Carroll Touch, Inc.対Electro Mechanical Sys., Inc.判決、15 F.3d 1573, 1576 (Fed. Cir. 1993)。特許権者は、二つのうちの一つの形態の侵害を証明すればよい ― 文言侵害か均等論による侵害である。Warner-Jenkinson Co.対Hilton Davis Chem. Co.判決、U.S., 117 S. Ct. 1040, 1045, 137 L. Ed. 2d 146 (1997)。Clintecは、両方を主張している。

注5      クレーム1には、次のように記載されている。

           一回分量毎の混合液を作るため、いくつかの混合液の調合を最も効果的な形で行う方法。以下の段階からなる。

           選別された基本溶液のグループから調合される混合液のパラメータ・セットを供与する。1セットが投薬一回分量を示す。基本溶液はそれぞれ別の容器に入れられている。各容器には、それほど多くない量の個別の基本溶液が入っている。

           一回分量毎の薬液を作るために必要な基本溶液の容器の数を最小限にするため、各セットに含まれている個々の基本溶液と、各セットに含まれている各基本溶液の量に従って、パラメータ・セットを分類する。

           上記の分類された順序で混合液を調合し、それによって一回分の薬液を作るために必要な基本溶液の容器の数を最小限にする。

[*7]

注6      クレーム19には次のように記載されている。

           一回分量毎の混合液をつくるため、いくつかの混合液の調合を最も効果的な形で行うシステム。以下の段階からなる。

           選別された基本溶液のグループから調合される混合液のパラメータ・セットを保存するためのミーンズ。上記基本溶液は容器に入れられていて、各容器にはそれほど多くない量の基本溶液が入っている。

           一回分量毎の薬液を作るために必要な基本溶液の容器の数を最小限にするため、各セットに含まれている個々の基本溶液に従って、パラメータ・セットを分類するためのミーンズ。

           上記の分類された順序で基本溶液を混合するためのミーンズ。それによって一回分の薬液を作るために必要な基本溶液の容器の数を最小限にする。

注7      クレーム40は以下の通りになっている。

           一回分量の混合液を作るため、いくつかの選別された混合物を調合するシステム。以下で構成されている。

           基本溶液のグループから調合されるいくつかの混合液についてのパラメータ・セットを受け取るためのミーンズ。1セットが投薬一回分量を示す。

           上記のセットを保存する、および、調合されるパラメータ・セットを選別するためのミーンズ。

           一回分の薬液を作るため、選別されたパラメータ・セットに対応する選別された混合液を調合するためのミーンズ。

           上記の保存ミーンズを上記の調合ミーンズと結合させるためのミーンズ。

[*8]

注8      クレーム67は、以下の通りである。

           一回分量の混合液を作るため、いくつかの選別された混合物を調合する方法。以下で構成されている。

           いくつかの基本溶液を維持するためのミーンズ。各基本溶液は、あまり多くない量を擁する個別の容器に入れられている。

           選別された基本溶液のグループから調合される混合液のパラメータ・セットをいくつか供与する。1セットが投薬一回分量を示す。

           上記のパラメータ・セットを保存サイトに保存し、必要な基本溶液の容器の数を最小限にするため、あるセットが必要とする個別の基本溶液と量に基づいて調合されるべきセットを選別する。

           上記選別されたパラメータ・セットを、保存サイトから調合サイトに移動する。

           それに反応して、上記の選別された混合液を調合する。

注9      クレーム87は以下の通りである。

           いくつかの混合液の調合を最適なものとする方法。以下の段階で構成される。

           基本溶液のグループから調合される混合液のパラメータ・セットを供与する。この段階では、各基本溶液はあまり多くない量を擁する容器に入れられている。作られる一回分量は、それぞれ、それに関するパラメータ・セットを持つ。

           上記混合液を作るために必要な基本溶液の容器の数を最小限にするため、上記の各セットに含まれている個別の基本溶液と、各セットに含まれている個別の溶液の量に従って、パラメータ・セットを分類する。

           分類されたパラメータ・セットのリストを印刷する。

[*9]

注10    クレーム93は、以下の通りである。

           一回分量毎の薬液を作るため、いくつかの混合液の調合を最も効果的な形で行うシステム。以下で構成される。

           上記システムの利用者から、いくつかの基本溶液を用いて上記の一回分量毎の薬液を作るためのいくつかのパラメータ・セットを受け取るためのミーンズ。各基本溶液は、あまり多くない量を擁する容器に入れられている。

           上記基本溶液グループから調合される混合液のパラメータ・セットをいくつか保存するためのミーンズ。

          上記一回分量毎の薬液を作るために必要な基本溶液の容器の数を最小限にするため、上記の各セットに含まれている個別の基本溶液と、使用される各基本溶液の量に従って、パラメータ・セットを分類するためのミーンズ。

           分類されたパラメータ・セットに対応して整理されたリストを印刷するためのミーンズ。

I. 文言侵害

A. クレーム1、19、87、93

           文言侵害を分析する際の第一歩は、クレームの解釈である。それにより裁判所はクレームの範囲と意味を確定する。Markman対Westview Instruments, Inc.判決、52 F.3d 967, 977-79 [*10] (Fed.Cir.1995), affd, U.S., 116 S. Ct. 1384, 134 L. Ed. 2d 577 (1996); Carroll Touch, 15 F.3d at 1576。

           争点は、以下のクレームの要素(注11)である。(注12)

           クレーム1 --「上記の一回分毎の薬液を作るために必要な基本溶液の容器の数を最小限にするため、各セットに含まれている個々の基本溶液と、各セットに含まれている各基本溶液の量に従って、パラメータ・セットを分類する・・・ステップ」

           クレーム19 --「上記の一回分毎の薬液を作るために必要な基本溶液の容器の数を最小限にするため、各セットに含まれている個々の基本溶液に従って、パラメータ・セットを分類するためのミーンズ」

           クレーム87 --「上記の混合液を作るための基本溶液の容器の必要数を最小限にするため、上記の各セットに含まれている個別の基本溶液と、各セットに含まれている個別の溶液の量に従って、パラメータ・セットを分類する・・・ステップ」

           クレーム93 --「上記の一回分量毎の薬液を作るのに必要な基本溶液の容器の数 [*11] を最小限にするため、上記の各セットに含まれている個別の基本溶液と、使用される各基本溶液の量に従ってパラメータ・セットを分類するためのミーンズ」

注11 クレームの「要素」は「限定」とも呼ばれる。

注12         訴えられた装置において限定のうちの一つがない場合でも、クレームは文言侵害とされることはなくなるので、上記の限定だけを検討すればよい。Becton Dickinson & Co.対C.R. Bard, Inc.判決、922 F.2d 792, 798 (Fed. Cir.1990)。

           上記クレームの「ミーンズ」と「ステップ」の要素は、パラメータ・セットを分類するという機能を明記しているが、その機能を支える明確な仕組みには言及していない。Clintecがこれらの要素を35 U.S.C. §112, P.6の要件に従う「ミーンズ(またはステップ)・プラス・ファンクション」の形で表現していることは、両当事者が認めているところである。上の条文は「組み合わせにかかわるクレームにおける構成要素は、具体的構造、材料または行為を明記せず、特定の機能を果たすためのミーンズまたはステップを表現することができる」と定めている。ミーンズまたはステップを記載したクレームが文言侵害とされるには、侵害とされる装置が (1) 限定で表示されていると同一の機能を果たしている [*12] こと、そして (2) 明細書に開示されたと同一のまたは均等物であることが必要である。Carroll Touch判決、15 F.3dの1578;§112, P.6(ミーンズ(ステップ)・プラス・ファンクションの構成要素は、「明細書に記載された対応する構造、材料ないし行為、またはそれらの均等物を範囲とする。」)

           クレーム解釈について、クレーム1、19、87、93のミーンズおよびステップの構成要素における機能は、基本溶液の容器の数を最小限にするために各パラメータ・セットに含まれている個別の基本溶液とその量に従って調合されるパラメータ・セットを分類することであるのに間違いないと結論づけた。構造(注13)に関しては、パラメータ・セットを分類するのがホスト・コンピュータであることが明細書に明確に開示されている。(第'010号特許、3段、44〜50行参照)(「次にホスト・コンピューターが、指定された基本溶液に基づいて承認されたすべてのバッグを分類する」);(第'010号特許、8段、38〜49行)(「与えられた列の構成要素のすべてが承認のために検討された後、承認された行列の構成要素は、・・個別の基本溶液の種類に基づいて、・・ホスト・コンピュータによって分類される [*13]」)、(第'010号特許、4段、65〜69行)(「ホスト・コンピュータは、そのディスク・ドライブに、・・分類・・のための4bプログラムを保存している」)(強調追加)(注14)。

注13     Markman判決は「明細書に記載された具体的構造、材料、または行為」§112, P.6の「均等物」の認定が、法律問題か事実問題かの争点を明確に保留していた。52 F.3dの977注8。どのような構造を明細書が開示しているのかを裁判所が認定し、侵害ありとされる装置が、それかまたはその均等物を用いているか否かの判断は陪審に委ねるべきであるということが、Markman判決と調和するように思われる。

注14     Clintecは、この部分で同社の専門家の意見を考慮するように強く求めた。しかし、限定の用語の意味は多義的ではないので、外部証拠に頼ることは適当でないだろうVitronics Corp. 対Conceptronic, Inc. 判決、90 F.3d 1576, 1583 (Fed. Cir. 1996)。

           解釈がなされたら、当該クレームの要素は侵害 [*14] 装置と比較され(またはそれに当てはめられ)なければならない。Carroll Touch判決、15 F.3dの1576。この段階は、事実認定者のためのものであるが、重要な事実に関する真の争点がない場合にはサマリジャッジメントが適切である。Southwall Techs., Inc.対Cardinal IG Co.判決、54 F.3d 1570, 1575 (Fed. Cir. 1995)。重要な事実に関する真の争点が存在することを示すために、Clintecは二つの証拠群、即ち、Baxa自身の説明とClintecの専門家の報告書に依拠している。

1. Baxaの説明

           Clintecは、Baxaの調合装置の操作書類にあった3カ所の表現を指摘している。一カ所は、装置が「患者用の溶液がディスクから装填された時、それを分類する」(別表Sの13)(注15)と記載している。もう一カ所は、「前の一連の溶液を反復することによって溶液群を製造することも可能である。」(別表Tの5-15.)と述べている。三番目は、「オプション・スウィッチは、TPN-PC PLUSにClintecのマルチ・タスク・オペレーション・システムの作業に匹敵する修正を行わせる」(同上の5-73)と説明している。

注15     こことこれより後の項に挙げられている別表は、Baxaの侵害不存在についてのサマリジャッジメント申立に対するClintecの反論覚書に添付されているものである。

[*15]

           Clintecは更に、Baxaの専門家であるDennis Tribbleの証言から二カ所の抜粋を示した。Tribble氏は、Baxaの調合装置には患者の姓を基礎として溶液フォーミュラを分類する能力があり(Tribble Dep.、別表Lの82)、オペレーターが望めば、溶液が調合される順番を変更することができると述べていた。(注16)(同上の276-77)。

注16     Clintecが具体的部分やページを挙げずに何頁もある別表を裁判所に示した場合には、裁判所は関連情の報を抜き出すために書類全部に目を通したりはしない。合衆国対Dunkel判決、927 F.2d 955, 956 (7th Cir. 1991)(「裁判官は、書類の中に埋まっているトリフを捜す豚とは違う」)。N.D. Local R. 12 (N) (3)(記録への具体的な参照を要求している)も参照せよ。従って、例えばClintecが、Baxaソフトウエア開発者であるMike MyersがBaxaの調合装置が「分類している」ことを認めたとして17ページある別表Eを提示した場合、私は、Clintecの主張は立証されていないとみなすことになる。

           更に、私はBaxaのサマリジャッジメント申立に対する反論を裏付けるために提出された、Clintecの12 (N) 追加的事実陳述書(statement of additional facts)は役に立たないことに気づいた。裏付けがなされているとしても、Clintecの陳述書の大半は番号が後に続く“BTX”の形で記録を参照しているが、Clintecが提出した別表はアルファベットで表示されている。私がClintecの追加的陳述書を確かめることができるような相互参照情報は提出されていない。N.D. Local R. 12 (N) (3)(記録への具体的な参照を要求している)参照。同様にClintecがその署名の中で“BTX・・”として記載している証拠を用いることはできない。

[*16]

2. Clintecの専門家報告

           Clintecの専門家であるJeffrey P. Campbellと David A. Uhen(注17)による報告書によれば、Baxaの調合装置のオペレーターは、コンピューターに患者用の溶液についてのオーダーを入力する時、各患者について「成人」「小児」または「新生児」といった範疇を示さなければならない。これら3つの範疇に対する溶液の種類は、供給容器の異なる配置を命じる程に互いに異なっている。一度に一つの範疇についての溶液を調合すれば、容器の配置を変える際に廃棄される供給容器の数を減らすことになる。BaxaのTPN-PC PLUSソフトウエアがアルファベットで表記された患者の名前を表示する時、該当する範疇コードも表示する。そのようにして、オペレーターは、調合のための「オペレーティング・システムへの移動のため〔同一のコードのついた〕個々の患者のファイルを・・・選びだす」ことができる。同一のグループ・コードのついた溶液は、別々のフロッピー・ディスクまたは別々のディレクトリに保存され、ディスク毎またはディレクトリ毎に調合される(Campbellの報告書、別表Uの9)。「このようにして〔オペレーターは、〕溶液をタイプ毎に分類して、調合のために必要な基本 [*17] 溶液の容器の数を最小限にする順序に整理するためBaxaシステムを利用するのである。」(Uhenの報告書、別表Dの30-31)

注17     Uhen氏は、彼の報告書で明示的または黙示的にCampbell氏の報告書に依拠している。Clintecは、Uhen氏の報告書の以下のページを示した。即ち、22〜26、30〜33(クレーム1について)、50〜54(クレーム19について)、105〜108(クレーム87について)、123〜127(クレーム93について)の各ページである。22〜26ページには、分類についての記載は含まれていない。50〜54、105〜108、123〜127ページの情報は、30〜33ページの情報の写しである。従って、Uhen氏の報告書の30から33ページまでと、Campbell氏の報告書に依拠することになる。

           報告書は、更に、オペレーターが調合のために溶液を確認している時、BAXA DirectEntry Softwareが、いつ、その溶液がその時点で調合装置に装備されていない成分を必要とするかを表示することも説明している。オペレーターは、速やかに用意ができていない成分を搭載するか、その特定の調合過程を中断するかを迫られる。従って、基本的にオペレーターは現時点での成分配置に適合する溶液だけを走査して調合する。[*18]。「このようにしてオペレーターは、原液容器の変更と必要な容器の数を最小限にするため、原液の種類によって個々の患者のオーダーの選択にDirectEntry Softwareを使用している。」(Uhen氏の報告書、別表Dの33);(Campbell氏の報告書、別表Uの10)

           最後に、報告書はBAXA MicroMacro Operating Softwareは、オペレーターが選択された溶液を一つのグループとして調合することを可能にする「バッチ・モード」を含んでいることを示している。ソフトウエアは、調合される各バッチにについて使用される様々な原液とそのそれぞれの量を列挙したバッチ・レポートを作成する。このレポートを用いてオペレーターは、最も多い分量を必要とする溶液を最初に調合するような形で調合装置を構成する。それから、オペレーターは調合される溶液の順番を上に準じて変更する。例えば、報告書があるバッチでは成分Aが少量しか必要とされないことを示している場合、オペレーターは成分Aを必要とする溶液を拾いだし、それらの溶液が最後に、即ち他の成分が完全に分配され、調合装置の供給容器の場所が使用できるようになった後で調合されるようにバッチ内の順序を変更する。「これによって・・・バッチの最後の方で、わずかな量だけが必要となる場合、オペレーターは余分な大きな容器を付けておくことを避けることができる。 [*19]」(Campbell氏の報告書、別表Uの12)「このようにしてBAXA MicroMacro Operating Softwareは、必要な供給容器の数を最小限にするために、基本溶液の種類と数によってパラメータ・セットを分類するために用いられている。」(Uhen氏の報告書、別表Dの32)

           Baxaの操作書類の記載とTribble氏の証言は、Baxaの調合装置がクレーム1、19、87、93に記載されたと同一の機能、即ち、基本溶液の容器の数を最小限にするようにパラメータ・セットを分類する機能を果たしているという事実的争点を作り出してはいない。Carroll Touch判決、15 F.3d の 1578参照(侵害装置は、クレームのミーンズまたはステップの項に記載されたと同一の機能を果たさなければならない)。それらは、せいぜいBaxaの調合装置が、溶液が調合される順序をコンピューターに入力された順序と比べて変更することができるのを示しているに過ぎない。

           Clintecの専門家の報告書は、Baxaの調合装置によってオペレーターが原液の容器の数を最小限にするような形で調合されるパラメータ・セットの順番を整えることが可能になっていることを示している。言い換えると、オペレーターはクレーム1、19、87、93の中で定義されている通りの意味で [*20]「分類する」ことができるのである。しかし、Clintecは合理的な事実認定者が、Baxaの調合装置がコンピュータまたはそれに相当するものによって分類を行っていると結論づけることができる証拠は提示していない。同上参照(侵害ありとされる装置は、明細書に開示されたと同一の構造またはその均等物を使用していなければならない)。法律問題として、Baxaの調合装置のオペレーターが行う人間としての判断は、コンピューターと同一でもなければ、それの均等物でもない。Davies対U. S. 判決、31 Fed. Ct. Cl. 769, 778-79 (1994)(Brown対Davis判決、116 U.S. 237, 249, 6 S. Ct. 379, 385, 29 L. Ed. 659 (1886) を引用)。Davis判決においては、侵害ありと主張される装置の使用者は、特許が自動的な機能としてクレームに記載した機能を手動で行うことができた。被告に文言侵害についてサマリジャッジメントを与える際に、裁判所は「人間がクレームに記載された構造の一部分を代替する場合」、その構造は明細書に開示されたものと同一またはその均等物でなければならない(Carroll Touch判決、15 F.3dの1578)という、35 U.S.C. §112, P.6の下での侵害基準は満たされていないと判断した。Davis判決、31 Fed. Cl. の778-79。Valley Recreation Prods., Inc.対Arachnid, Inc.判決、[*21] Nos. 93-1543, 94-1101, 36 F.3d 1117 (table), 1994 WL 530818の*3 (Fed. Cir. Sept. 30, 1994)(人間の介入を必要とするスコアリング・ミーンズ(scoring means)がクレームされている特許に対し、侵害とされる装置は同一の機能を自動的に行っていた場合に、文言侵害について被告勝訴のサマリジャッジメントか維持された。)注18。

注18     Clintecは、BaxaとClintecの調合装置が「実質的な均等」の関係にあることを示した、食料医薬品局(“FDA”)に対するBaxaの§510 (k) の提出書類にも依拠している(別表Fの1)。しかし、Clintecは、Baxaの調合装置が「分類する」ことを示した提出書類の中の肯定的表現を指摘していない。

           Baxaは、その調合装置がClintecの装置に「実質的に均等」であることを証明することができたので、FDAの規則により、より広範な手続を経ずに調合装置を販売する当局の認可を獲得した(同上)。装置は、既存の装置と予定される使用法が同じで、技術的な特徴も同じである場合、「実質的な均等物」となる。21 U.S.C. §360c (I) (1) (A) (West Supp.1997)。このように、510 (k) の提出書類は、侵害を主張されている製品であるBaxaの調合装置を、第'101号特許を商品化したClintecの調合装置と比較している。「裁判所がその侵害分析の中で、侵害ありとされている製品を、・・・特許権者の商品化された製品と比較するのは誤りである。」Zenith Laboratories, Inc.対Bristol-Myers Squibb Co.判決、19 F.3d 1418, 1423 (Fed. Cir. 1994)。事実説明の部分で、United States Surgical Corp.対Hospital Prods. Int'l Pty. Ltd.判決、701 F. Supp. 314, 347 (D. Conn. 1988) の裁判所は、§510 (k) の提出書類の記載は「侵害の認諾として解釈されることができる」と注記したものの、同裁判所は侵害の分析において提出書類を根拠としなかった。

[*22]

B. クレーム40および67

           ここで、以下のクレームの以下の要素を解釈しなければならない。(注19)

           クレーム40--「調合するパラメータ・セットを選別する・・・ミーンズ」

           クレーム67--「必要な基本溶液の容器の数を最小限にするために、個別の基本溶液と、あるセットで必要となる量を基礎として調合されるべきセットを選別する・・・ためのミーンズ」

注19    前出注12を参照せよ。

           争点は「選別(selecting)」機能の意味するところである。35 U.S.C. §112, P6(ミーンズ・プラス・ファンクションで表現されるクレーム要素)参照(注20)。Baxaは、「選別する」は、クレーム1、19、87、93に出てくる「分類する(sorting)」の類義語であると主張している。即ち、そこでの分類とは、基本溶液の容器の数を最小限にするように調合されるパラメータ・セットを分類することである。Clintecは「選別する」とは、「緊急性というような優先順位で、システムに入力された一連の定式(formula)から、パラメータ・セット(即ち、定式)を〔単に〕選び出すことを意味する」と反論している。(注21)(Pl.'s12 (M) Statement P37.)。

注20     両当事者は、Clintecがこれらの要素を、§112, P.6に従うミーンズ・プラス・ファンクション形式で表現していることを認めている。

注21     Baxaは、「選別」の定義を提示することを証拠開示の間中、拒否していたので、それを許されるべきではないというClintecの主張は、記録によって裏付けられていない。

           「主張されているクレームを解釈する際に、裁判所はまず、記録に内在する証拠を検討しなければならない。即ち、クレームを含む特許そのもの、明細書、およびそれが明白な場合には出願経過などである。」Vitronics判決、90 F.3dの1582(Markman判決、52 F.3dの979を引用)。

1. 特許/クレーム

           クレームの文言には、「発明者が異なった使い方をしたことが明らかである場合を除き、その通常または慣用の意味が与えられる。」Jonsson対Stanley Works判決、903 F.2d 812, 820 (Fed. Cir. 1990)(Envirotech Corp.対Al George, Inc.判決、730 F.2d 753, 759 (Fed. Cir. 1984) を引用)。分類するとは、選択し、配分し、分類することである。WEBSTER'S THIRD NEW INT'L DICTIONARYの2175 (1981) を参照せよ。選別するとは、選択することである。同上の2058。従って、この二つの語は、類義語である。

           更に、一つのクレーム文言は、他のクレームに照らして解釈されなければならない。Jonsson判決、903 F.2dの819。クレーム67には「必要な基本溶液の容器の数を最小限にするために、個別の基本溶液と、あるセットで必要となる量を基礎として、調合されるべきセットを選別する・・・ためのミーンズ」[*24] が記載されている。クレーム1、19、87、93は、すべて個別の基本溶液と各パラメータ・セットの中に含まれているそれらの量に従って、基本溶液の容器の数を最小限にするような形で分類するステップまたはミーンズを記載している。クレーム1、19、87、93において「分類する」という語が用いられている文脈は、クレーム67の中で「選別する」という語が示されている文脈と同一であるので、この二つの語は同一の意味を持っている。

2. 明細書

           明細書は、用語を暗に定義している場合に辞書の役目を果たすことができる。Markman判決、52 F.3d の979。明細書には、以下の通り、記載されている。

           「本件発明によれば、システムと方法は、一つまたは複数の基本溶液から複数の選別された混合液を調合するために準備されたものである。システムには、基本溶液から調合される混合液のグループについてのパラメータ・セットを記憶する記憶装置が含まれている。調合装置は、電気的に記憶装置と接続されており、使用されるべき基本溶液とその量を定めるパラメータ・セットを受け取ったら、記憶装置と共同して [*25]、選別された混合液を調合する。」

           (第'010号特許、3段、3〜13行)(強調追加)。上記は、「発明の概要」の最初の段落である。明細書の別の部分には、「選別」「選別する」「選別された」などの語句は登場していない。Clintecの発明にとって分類という要素が持つ重要性を前提とすれば、「発明の概要」の最初の段落が、単にコンピューターに入力された順番から「パラメータ・セットを選択すること」だけを意味していて(Pl.'s 12 (M) Statesment P.37)「分類」を含んでいないとは考えにくい。更に、論理的な解釈として、混合液(またはパラメータ・セット)は、混合液の調合の素である基本溶液の容器の数を最小限にするために、ホスト・コンピューターがそれまでに分類した順番で調合(または調合装置への移動)のために「選び出される」ということである。

3. 出願経過(注22)

注22     いずれの当事者も、クレーム67の出願経緯を詳しく調査していないし、私もそれが必要であると考えていない。Vitronics, 90 F.3dの1582(「裁判所は、それが明らかな場合、出願経緯も考慮することができる。」)(強調追加)

[*26]

           「出願経過は、出願手続中に否認された解釈を排除するように、クレーム文言の解釈を限定する。・・・クレームにつき特許許可を得るために、ある解釈をし、侵害行為を疑われる者に対しては別の解釈をすることは許されない。」Southwall Techs.判決、54 F.3d の1576

           クレーム40(特許出願では37という番号になっていた。注23)は、当初は以下の通りであった。

           「以下で構成される、いくつかの選別された混合液を調合するためのシステム。

           基本溶液のグループから調合されるいくつかの混合液についてのパラメータ・セットを保存するためのミーンズ。

           選別されたパラメータ・セットに対応する選別された混合液を調合するためのミーンズ。

           上記の保存ミーンズと上記の調合ミーンズを結合させるためのミーンズ。」

           (別表Dの2-3、注24)。特許局の審査官(「審査官」)は、二つの理由からクレーム37 (40) を拒絶した。第一に、そのクレームは不明確であるということだった。35 U.S.C. §112, P.2

           「クレーム37の第3行においても、再び『パラメータ・セット』とは何か、それらがどのようにシステムにインプットされるのかが不明瞭である。『基本溶液』とは何かも明確でない。第5-6行では、『選別されたパラメータ・セット』はどのようにして選別されたのか?」

           (別表A、PP4, 12)(強調追加)[*27]。第二に、審査官はクレーム37 (40) を合衆国特許第3,670,923号(Hawes, Jr.等)を考慮した、合衆国特許第4,527,245号(Axelson, Jr.等)という先行技術を超えて特許されないとして拒絶した。35 U.S.C. §103(注25)。審査官はこれについて以下のように詳述している。

           「Axelson等は、物質を調合するある装置を開示している。それには、調合装置の中で用いられる割合や量のパラメータを受け取るための、プログラムによって制御可能なコントローラが含まれている。Axelson等はまた、いくつかの物質の中のどれが調合されるのかを選別するコントロール手段を示している。これらの物質は予め分類され、最終的な混合液を調合する際に容易になるように容器に準備されている。当該技術分野における通常の熟練を有する者にとっては、Axelson等の書類に開示されているように、物質を先に分類しておくのではなく、Axelson等のプログラム制御が可能なコントローラ内部の、本件発明のようなプログラムによって制御可能な分類手続を使用することが、明白だっただろう。」

(別表AP18)(強調追加)。

注23     出願経過を論じる際に、クレーム40をクレーム37 (40) および修正クレーム37 (40) と称する。

注24     以下の説で示される別表は、Clintecの部分的サマリジャッジメントの申立に対する応答として、またクレーム40に関する自身のクロス・サマリジャッジメント申立を裏付けるものとして、Baxaが提出した「争そわれていない事実の説明書」に添付されたものである。

[*28]

注25    この法律の該当する部分は、以下のように記載している。

           「発明の開示や記述が本編第102条に定められたように、同一ではなくとも、特許が求められる主題と先行技術の間の違いが、その主題が全体として、発明がなされた時点において、その主題が関係する技術分野において通常の熟練を有する者にとって自明であっただろうとという程度である場合には、特許されない。」

           35 U.S.C. §103 (a)

           Clintecは、審査官の二つの拒絶理由に応答した。1986年5月12日付けの修正文書において、Clintecはまず曖昧性の問題に対処するため、クレーム37 (40) を修正した。

           「(修正済)以下で構成される、一回分量毎の混合液を作るために、いくつかの選別された混合液を調合するシステム。

           基本溶液のグループから調合されるいくつかの混合液についてのパラメータ・セットを受け取るためのミーンズ、1セットが一回分量を示す。

           上記のセットを保存する、および、調合されるパラメータの〔基本溶液のグループから調合されるいくつかの混合液についてのパラメータの〕セットを、選別するためのミーンズ [*29]。

           一回分量毎の薬液を作るため、選別されたパラメータ・セットに対応する選別された混合液を調合するためのミーンズ。

           上記の保存ミーンズと上記の調合ミーンズを結合させるためのミーンズ。」

(別表Dの2-3)(下線部が新しい文で、括弧内が古い文)

           第二に、ClintecはAxelsonが先行技術であることを争わなかった。むしろ、それが先行技術であることを暗に認めて、Clintecは以下のように述べた。

           「すべてのクレームは、Hawes, Jr.等の技術を考慮したAxelson, Jr.等の先行技術を超えてはされないとして、35 U.S.C. §103の下で拒絶された。Axelson, Jr.等の文書の範囲と内容は、いろいろな種類の穀物というような、いくつかの物品が選別された割合で構成する最終的製品を作るために、混ぜ合わせられることの開示を含んでいる。混合物をつくるために用いられる物品の割合は、各物品の選別された量がシュート(chute)を通って穀物容器に流れ出ることを可能にするように、必要な量に対して選択的にゲートを開けるコンピューターによって調節されている。」

(同上の6)(注26)

注26                  Axelsonには、「混合される物が入った容器を選別するミーンズ」と、「混合物の相対的割合を選別するミーンズ」が含まれている。(別表B、1段、58〜62行)

[*30]

           Clintecは次に、修正済のクレーム37 (40) とAxelsonの技術を以下のように区別した。

           「特許請求している発明は、クレーム1、19、37〔クレーム40として発行された〕、67、87、および93に記載されているように、いくつかの混合物のパラメータ・セットが供給されること、そのパラメータ・セットが、一回分量毎の薬を作るために必要な基本溶液の容器の数を最小限にするために、各混合液を作るために使用される個別の基本溶液と、各パラメータ・セットに含まれている各基本溶液の量に従って保存されることを必要としている。」

           (同上)(強調追加)。クレーム37 (40) がAxelsonから区別されたのはこのような形でだけであった。Clintecは更に、別のクレーム群は、それらがAxelson技術の中には見られない時間的間隔・行列・印刷ラベル・またはその他の特徴を必要としているので、Axelson技術とは異なっていると述べた(同上、6-7)。Clintecは、「クレームに審査官が示唆する最も広い解釈を与えたとしても、上述の相違点はいずれも、Axelson, Jr.等の引用例によっては開示されず、示唆されてさえいなかったので」第'010号特許のクレームは「Axelson [*31]・・・の引用例を超えた特許可能な主題を含んでいる。」(同上、7)と結論付けた。

           審査官は、Clintecがクレーム37 (40) を変更し、それを特にAxelson技術から区別した後で、第'010号特許を許可した。「特許可能性通知(Notice of Allowability)」が「1986年5月12日に提出された修正文書への応答」(別表E)であった。記録は、拒絶と特許可能性の間には、1986年5月12日の修正文書しかなかったことを示している。Axelsonの技術と、修正文書中のクレーム1、19、37 (40) 、67、87、93の間に引かれた区別は、明細書の中で原液の容器の数を最小限にするため、調合される混合液を分類することとして、繰り返し記載されている発明の説明と合致している。(第'010号特許の2段64〜68行、3段44〜51行、8段45〜49行、8段64〜68行参照)

           出願経過は、「特許権者がクレームに記載した発明の範囲を確定し、その周辺図を描く〔ために〕・・・公衆が信頼ができる、・・・特許権者のクレームに関する公的な記録」の一部である。Vitronics判決、90 F.3dの1583。本件の場合、出願経過に基づいて合理的な競争相手は、以下のような結論を出すことができるだろう。(1) 審査官は[*32] Axelsonの特許が、どの物質が調合されるかを選別するためのコンピューターの使用を開示していることを理由に、先行技術を超えて特許されないとして、クレーム37 (40)  を拒絶した(注27)。(2) Clintecは、Axelson技術が先行技術であることを認めた(注28)。(3) Clintecは、修正済のクレーム37 (40) が基本溶液の容器の数を最小限にするために分類を必要としていることを基礎として、Axelson技術をクレーム37 (40) から区別した。(4) 審査官は、Clintecの修正と説明に基づき、修正済のクレーム37 (40) を許可した。(5) 従って、クレーム37 (40) の中の「選別する」という語は、クレーム1、19、87、93の中の「分類する」という語と同じ意味を持っている。

注27                  Clintecは、審査官がClintecのいろいろなクレームとAxelson技術の間に別の相違点もいくつか見いだしていると指摘する。このことは正しい。しかし、この事実はここでは無関係である。

注28                  Clintecは、Axelson技術は薬剤ではなく穀物に関わるものであるから、先行技術ではないと主張する。Clintecは、ここで、これを主張することはできない。第一に、同社は審査官の拒絶に対する対応としてこれを主張しなかった。第二に、1985年2月14日付けの予備的修正文書において、Clintecは薬剤の調合について記載していない予備的修正文書と情報開示書(“IDS”)(別表C)の中の数多くの参照文を審査官に示している。IDSにおいて、Clintecは「上に特定されたシステムのそれぞれは、マルチコンポーネントの混合システムの一形式を開示しているという点で、審査中の申請に関わりを持つと考えられる」と述べている。Ekchian対HomeDepot, Inc.判決、104 F.3d 1299, 1304 (Fed. Cir. 1997)(「IDSの中の記述は、裁判所がクレームの範囲を解釈する基礎となり得ると判断している」)。

[*33]

Clintecの主張

           Clintecは、「選別」は「分類」と同じ意味ではなく、「緊急のためというような、優先順位によって、システムに投入された一連の定式からパラメータ・セット(即ち、定式)を選びだすことを意味する」(Pl.'s 12 (M) Statement P37)という立場を維持している。辞書の定義を根拠として、Clintecは「分類」と「選別」が異なる意味を持つと主張する。しかし、上述の通り、これらの語句は類義語である。明細書の、Clintecが意味する「選別」の種類を記載している部分(Pl.'s 12 (M) Statement P37)(第'010号特許の4段18〜21行、10段31〜58行)では、「選別」の語は使われていない。実際、明細書中で「選別」の語が登場する唯一の場所の文脈は、Baxaが考えている意味、即ち、原液の容器の数を最小限にするための分類を暗示しているのである(第'010号特許の3段3〜18行)。

           Tandon Corp.対United States Int'l Trade Comm'n判決、831 F.2d 1017 (Fed. Cir. 1987) を根拠として、Clintecは、クレーム中の異なる語句は異なる意味を持つと推定されると述べている。Tandon判決にはこのような記述がある(同上、1023)けれども、そのすぐ後には、[*34] 別の記述もある。「いろいろな方法で発明の境界を明らかにするため・・・クレームが増やされるという慣行が長い間認められてきた(引用省略)。従って、異なる意味に読み取れる二つのクレームが同一の主題を内容としていることがあり得る」(同上)。

           Clintecは、更にクレーム区別の法理(doctrine of claim differentiation)も根拠としている。この法理の下では、「あるクレームを別のクレームと同じように読み取るような解釈は避けられるべきである。」 Autogiro Co. of Am.対合衆国判決、181 Ct. Cl. 55, 384 F.2d 391, 404 (Fed. Cir. 1967)。Clintecは、クレーム40に従属しているクレーム62が、「承認されたパラメータ・セットの分類のためのミーンズ」と記載していることを指摘する。従って、原告はクレーム40が同様に「分類」の限定を記載していることはあり得ないと言う。しかし、「時にはクレーム区別の法理が支配することがあるものの、」以下の場合には、無視される。

           「〔判読不能〕〔争点となっている〕定義・・・が、〔判読不能〕〔明細書〕および出願経過続から別の形で明確になっている場合」

           〔判読不能〕対Tekmar Co. Inc.判決、115 F.3d 1576, 1582 (Fed. Cir. 1997)Autogiro Co. of Am.判決、384 F.2d 404も参照せよ。(「クレーム区別」の法理は厳格な規則ではなく、目安である。あるクレームに [*35] 一つの解釈しかないような場合は、類似性が許されなければならない。」)本件は、このような場合である。

           Clintecは、同社の専門家であるUhen氏の証言を思い起こさせようと試みた。しかし、本件のような場合、「公的な記録に、特許発明の範囲が明確に記載されているならば、〔専門家の証言のような〕外部証拠に依存することは不適切である。」 公衆は、公的記録を信頼する権利があるからである。Vitronics判決、90 F.3d の1583

           Clintecは、Baxaがしようとしていることは出願経過で現れた「分類」という要素をクレーム40に挿入することであって、それは適切でないと主張する。Clintecは、出願手続をした弁護士、Kay Hannafanが、クレーム37 (40) が分類を必要としていると述べた時点で誤りを犯しただけだと言っている。Clintecが根拠としたのは、IntervetAm., Inc.対Kee-Vet Laboratories, Inc.判決、887 F.2d 1050 (Fed. Cir. 1989)、本裁判所のViskase Corp.対American Nlt'l Can Co.判決、947 F.Supp.1200 (N.D. Ill. 1996)、そして、International Rectifier Corp.対SGS-Thomson Microelecs. Inc.判決、38 U.S.P.Q.1083 (C.D. Cal. 1994) である。

           Intervet判決における出願経過は次の通りであった。特許局の二度目の措置に対応して、出願手続 [*36] をした弁護士は、二度のワクチン接種を必要とする先行技術とは異なり、自分が手続をしている発明は、一度しか必要としていないということを基礎として、発明を先行技術と区別しようとした。三度目の特許局の措置で、審査官は、クレームが先行技術からそれらを区別し、特許可能な一回のみのワクチン接種に明示的に限定されていないことを指摘した。これに対応して弁護士は、クレームのうちの3個だけを、一回のワクチン接種を意味するように修正した。しかし、弁護士は、修正文書につけられた「注釈」の中で、クレームのすべてが一回だけのワクチン接種に限定されていると述べた。弁護士は、後に「注釈」の記載が誤りであると認めた。887 F.2dの1053-54

           裁判所は、次のように判断した。

           「出願経過での弁護士による誤った注釈と、特許商標局により公式の許可として最終的に作成され発行された特許のクレームのいずれが優先するかの問題となった場合、我々は、法律は選択を認めないと考える。クレームそのものが、支配することになる。」同上、1054。

           裁判所は、以下を認めている。

           「弁護士が出願手続の中で言ったことや行ったことが、[*37] 特許権者に不利に認定される場合・・・がある。・・・例えば、特許権者がクレームの文言通りの意味を拡大しようとし、・・・弁護士がクレームを認めさせるために、審査官に対して、含まれていない趣旨だと表明した主題が、その拡大される範囲に含まれることになるのが出願経過から明らかである場合、特許権者は前言を翻すことを禁じられる。」

           同上(原文に強調あり)。裁判所は、「弁護士がクレームを修正しなかったのに、修正したと記載したにもかかわらず、特許権者は広範囲のクレームを認められた」のだから、この事件は異質であると結論付けた。同上(強調追加)。裁判所は、「誤った注釈が出願手続の終わりとならなかった〔ので〕、審査官は誤った方向に誘導されたり、欺罔されたりしてはいない」と指摘した。同上。弁護士と審査官の間で電話のやりとりが二回あって、審査官は二回「審査官の修正」を行い、3つを除くすべてのクレームに「一回のワクチン接種」という限定がないことは「十分に論議されただろう。」同上。

           本件の場合これと異なっている。Intervet事件では、3つのクレームは明示的に一回のワクチン接種に限定されている一方、他のクレームは限定されていなかった。Intervet事件の裁判所は、既存の文言を解釈しなければならなかったのではない[*38]。Intervet事件の裁判所は、それ自身「クレーム中の語句が意味するところを解釈すること、〔これは出願経過に依拠するのに適する〕・・・〔と〕、〔出願経過〕の中で現れた外部的な限定を付加することとは違い、後者は手続の経緯に依拠するのは適切でない」ことを認めている。同上の1053(原文に強調あり)。Vitronics判決、90 F.3dの1582(クレームを解釈する際に、「裁判所は、それが明らかならば出願経過を考慮することもできる。」)。更に、Intervet事件の弁護士とは異なり、Hannafan女史は、審査官の特許取得可能性ではなく、曖昧さに関する懸念に応えて、クレーム37 (40) を修正した。その後、審査官の特許可能性の拒否に応じて、彼女は、修正済のクレーム37 (40) が先行技術とどのように異なっているかを説明し、そこで「選別」を定義した。Intervet事件と違って、審査官とHannafan女史の間に更に連絡が取られたという証拠はない。連絡があれば、審査官は、1986年5月12日付けの修正文書で伝えられた内容と異なる理解を得ることができただろう。Intervet事件と異なり、唯一の論理的な結論は、審査官が、Hannafan女史の説明があったにもかかわらずではなく、その説明があったので、クレーム37 (40) を認めたということである。[*39] Intervet判決、887F.2dの1054、参照。

           Clintecは、審査官が「選別」と「分類」が別の意味を持つことを知っていたこと、同上参照(「審査官は、自分がどんなクレームを認めようとしているのか完全に知っていた。」)、そして、Hannafan女史の誤りは、出願経過を熟読する誰の目にも明らかだろうということ、Southwall Techs.判決、54 F.3dの1578参照(競争相手は「特許権者の独占権の範囲を確かめる際に、・・・〔出願経過を含め〕出願書類を信頼することができなければならない」)を主張している。その理由は次の通りである。即ち、(1) クレーム37 (40) には、修正の前も後も、「分類する」という語は含まれていなかった、(2) 1986年5月12日の修正文書以前に、審査官は「選別する」と「分類する」の間の違いを知っているとことを明らかにした、(3) Clintecは、クレーム37 (40) の原形を修正して、「分類する」機能ではなく「選別する」機能を付加した、(4) 審査官は「分類する」という限定を含ませるべくクレーム37 (40) を更に修正することを、Clintecに要求しなかった、ということである。しかし、これらの記述は、Baxaの主張、即ち、特許出願の拒絶に対するClintecの唯一の反応において、Clintecは(Hannafan女史)を通じて、「選別する」を「分類する」として有効に定義し、それにより、審査官および一般大衆のその語句の意味に対する理解を形作ったという主張に対する反論になっていない。(注29)

注29     Clintecは、クレーム37 (40) に関する1986年5月12日の修正文書以前に、審査官が「選別されたパラメータ・セットはどのように選別されるのか?」と尋ねたのに対し、クレーム87に関しては、「分類はどのように完了されるのか?」と尋ねた事実に依拠している(別表AのPP.12、13)。しかし、修正前のクレーム37 (40) は、「選別されたパラメータ・セットに対応する選別された混合液を調合するためのミーンズ」と記載している一方、未修正のクレーム87は、「各パラメータ・セットに含まれる基本溶液の種類に従って、パラメータ・セットを分類する」と記載している(別表Dの2-3、4)(強調追加)。審査官は、上記のクレームを、特に曖昧であることを理由に拒否した。明らかに、彼女は、不明瞭な語句の明確化を求めるに際して、意味が不明瞭な語句を用いて質問を提起したのだろう。このことから、審査官が「選別」と「分類」が別の機能を意味することを知っていたと推測することはできない。

           Clintecが根拠としているもう一つのViskase対American Nat'l Can Co. 判決にける争点 [*41] は、「約0.91g/cm〈3 〉を下回る濃度」という表現で用いられている「約」という語の意味であった。原告は、それが、0.905 と0.914 の間の数値を意味すると主張した。被告は、それが0.910を意味すると主張した。947 F. Supp.の1202。被告の理由の一つは、原告の特許が認められた後で特許局に送られた書状の中で、原告の弁護士が、特許は「約0.910g/cm〈3〉を下回る濃度を持たない」と述べていたことである。同上(強調追加)。Intervet判決に続き、この裁判所は、「出願経過でViskaseは、他にどこでも小数点以下の第3位を使用していない」、同上、弁護士は「約」という語を使って「やや上とやや下」の数値を示唆している、同上の1201、「審査官は、クレームそのものが、0.910という限定より広い文言を含んでいることを確かに知っていた」(注30)、そして、「審査官は修正を要求しなかった」、同上の1202、という理由で、弁護士の記述を無視した。

注30     この文は、審査官が、原告は「明らかに・・・0.91以下をクレームの範囲とするつもりだった」、また、原告のクレームは、「約0.86から約0.91の濃度を含む」と言ったという裁判所の初期の認定に基づいている。Viskase判決、947 F. Supp.の1201

[*42]

           本件は、これとは異なっている。「約0.91」を「0.910」に限定することによって、被告は、その言葉の「辞書の通常の定義」および「当該技術分野において熟練した者」による理解に反する解釈を主張している。同上。本件の審査官は、自分が「分類」と「選別」を区別したことを示していない。前出参照。「分類」という語は、ClintecのHannafan女史が、Axelson技術からクレーム1、19、37 (40)、67、87、93を区別するために用いたので、出願経過において一度ならず登場している。前出参照。更に、明細書は、「選別」に対比される「分類」の語であふれている。前出参照。最後に、本件の審査官がクレーム37 (40) の更なる修正を要求しなかったことは、驚きではない。彼女には、1986年5月12日の修正文書で「選別」の定義が提示されていたからである。

           Clintecが根拠とした第三の事件においては、International Rectifier、弁護士は「明らかに誤った方法で」先行技術を区別した。裁判所は、特許局が「〔先行技術を〕区別する別の理由を見つけ出し、弁護士が行った誤った表現に依拠しない」ことが必要だったと結論付けた。38 U.S.P.Q.の1091。Clintecは、審査官が、Hannafan女史が表示した以外の理由で、クレーム37 (40) をAxelson技術から区別しなければならないという主張を支持するために、本[*43]件を引用した。しかし、クレーム37 (40) における「選別」が、原液容器の数を最小限にするための分類を必要としているというHannafan女史の説明は、Axelson技術を超えて特許取得が不能としてクレーム37 (40) を拒否した審査官にとって「明らかに誤っている」とは思えなかっただろう。

           従って、私は、クレーム40および67の「選別」の意味は、クレーム1、19、87、93における「分類」の意味と同一であるとの結論に達した。Baxaの調合装置が、第'010号特許に開示されたと同一のまたはそれと等価な「分類」の構造を採用しているという重大な事実について、真の争点は存在しないので(前出参照)、クレーム40および67に対する文言侵害は存在しない。Carroll Touch判決、15 F.3dの1578。(ミーンズ・プラス・ファンクションの要素の文言侵害には、侵害とされる装置が (1) 同一の機能を果たすこと、(2) 同一のまたはそれと等価な構造であること、が必要である。)従って、Baxaの文言侵害についてのサマリジャッジメントの申立およびクレーム40に関するクロス・サマリジャッジメントの申立は認められる。Clintecのクレーム40に対するサマリジャッジメントの申立は [*44] 棄却される。

II. 均等論における侵害

           均等論の下では、

           「特許クレームの明示的な文言を文字通りの形では侵害していない製品または工程は、その場合にも、侵害を主張される製品または工程の要素と特許が与えられた発明のクレームに記載されいてる要素の間に「等価性」が存在する場合は、侵害ありと認定される場合がある。」

           Warner-Jenkinson, 117 S. Ct. at 1045。問題点は、「侵害ありとされる製品または工程が、特許対象である発明のクレームに記載された各要素と同一のまたはそれと等価な要素を含んでいる」かどうかである。同上の1054。「特定の特許クレームの文脈において各要素が果たす役割」が、侵害ありとされる装置の代替的要素と比較されて、「後者がクレームに記載された要素の機能・方法・および結果と一致しているか、または代替的要素はクレームに記載された要素とは実質的に異なる役割を果たしているのか」が判定されなければならない。同上。「均等論の下での侵害を立証するためには、クレームの要素のすべてが、そのまま又は均等物の形で、侵害ありとされる装置の中に存在していなければならない。」Storer対Hayes Microcomputer Prods.,Inc.判決、960 F. Supp. 498, 503 (D. Mass. 1977)(Warner-Jenkinson [*45] Co.判決、117 S. Ct.の1045を引用)。

           争点となっているのは、ホスト・コンピューター(「方法」)が、供給源の溶液容器の数を最小限にする(「結果」)ため、調合される溶液を分類する(「機能」)、「分類」機能という要素である。Clintecは、合理的な事実認定者が、Baxaの調合装置のソフトウエアは実質的に同一の方法で実質的に同一の機能を果たしていると結論づけることのできる証拠を提出してはいない。上述の通り、Baxaの調合装置のソフトウエアは原液容器の数を最小限にするために使われる可能性があるか否かについて事実問題としての争いがあるとしても、その結果は人間の判断を通じて達成されている。法律問題として、人間の判断は、ソフトウエアに相当するものではない。Davies判決、31 Fed. Ct. Cl.の778-79、Valley Recreation Prods.判決、1994 WL 530818の *3 (Fed. Cir. Sept. 30, 1994) 参照(均等論の下で侵害者とされた人物に略式判決を与えたことを認容した。特許された装置はオペレーターが動かすキー・パッドを通じてスコアを記録したのに対し、侵害ありとされた装置は、人が参加することなく自動的にそれを行っていた)。Valmont Indus., Inc.対Reinke Mfg. Co., Inc.判決、983 F.2d 1039, 1043 注2 (Fed. Cir. 1993)(「〔クレームの〕限定(それに等価のものを含む)がなくなっている場合、侵害ありと主張される装置 [*46] とクレームの対象である発明は、実質的に同一の方法で作用できない」)(引用省略)。

注31     クレーム40および67の「選別」機能要素は、上述の理由で、クレーム1、19、87、および93における「分類」機能要素と同一である。均等論の下でも、裁判所は文言侵害の下におけると同様にクレームを解釈しなければならないし、また、出願経過は分析において同様の役割を果たす。「先行技術による拒絶を回避するためなどの『特許性に関する実質的理由』による修正で、クレームの範囲が狭められた場合、特許権者は、放棄された対象が均等の範囲内にあると主張することはできない。」Regents of Univ.of Cal.対Eli Lilly & Co.判決No.96-1175, F.3d, 1997 WL 405946,の *16 (Fed. Cir. July 22, 1997)(Warner-Jenki nson, 117 S. Ct.の 1045-51を引用)(出願経過に照らした裁判所のクレーム解釈が、均等論の下で侵害ありとされた者に有利なサマリジャッジメントの理由付けとなっていることを認定)

[*47]

           Clintecは、均等論法理の下での侵害の認定は、事実問題であることが確定されていると述べている。しかし、「証拠が、合理的な陪審員にとって、二つの要素の間に等価性ありとは判断できないようなものである場合、地方裁判所は部分的または全体的なサマリジャッジメントを出さなければならない。」Warner-Jenkinson, 117 S. Ct.の1058、注8

           Clintecは、更に、その発明の「パイオニア」的性質が、Baxaに有利なサマリジャッジメントを不可能にすると主張する。しかし、Clintecは、この主張を裏付ける根拠となるものを挙げていない。

           最後に、Clintecは、Baxaは模倣をしたのであって、(そうでなければ)Clintecの調合装置に近いものを設計できなかっただろうと主張している。Baxaは、この主張に対して争っている。Clintecは、この争いがあるためにサマリジャッジメントは不可能だと主張し、Hilton Davis Chem. Co.対Warner-Jenkinson Co.判決、62 F.3d 1512, 1519 (Fed. Cir. 1995) を引用している。しかし、最高裁判所はHiltron Davis Chem.判決を破棄する際に、均等論の下で、侵害したと主張されている者の第一次的審査に対する行為の妥当性に与える重要性を大幅に減じた。Warner-Jenkinson, 117 S.Ct.の1052。従って、均等論に関するBaxaのサマリジャッジメントの申立は認められる。

結論 [*48]

           上記理由から、Baxaのサマリジャッジメントの申立、およびクロス・サマリジャッジメントの申立は認容される。Clintecのクレーム40の文言侵害に関するクロス・サマリジャッジメントの申立は棄却される。均等論に関するBaxaのサマリジャッジメントの申立は、第'010号特許のすべてのクレームに関して認容される。注32。

注32     Baxaがその回答文書をEkchian対Home Depot, Inc.判決、104 F.3d 1299 (Fed. Cir. 1997)で補足する旨の申立は、Clintecも異議を出していたが、実際的価値がないとして却下された。裁判所は、本件を独立に扱った。両当事者の予備的な申立も、実際的価値なしとして却下された。

           決定した裁判官:合衆国地方裁判所判事Elaine E. Bucklo

1997年8月21日