INTERACTIVE GIFT EXPRESS, INC. 原告

COMPUSERVE INC. 他、被告

95 Civ. 6871 (BSJ)

ニューヨーク州南部地区合衆国地方裁判所

1998 U.S. Dist. LEXIS 7081

1998513日、判決

1998515日、登録

処分:[*1Freeny特許のクレームの解釈を採用する。

判事:BARBARA S. JONES、合衆国地方裁判所判事

意見作成:BARBARA S. JONES

意見:意見および指令

BARBARA S. JONES
合衆国地方裁判所判事

 原告Interactive Gift Express, Inc. ("IGE") n[1]は、コンピューター・ソフトウェア会社、出版社、および書店で構成される被告が、米国特許第4,528,643号(「Freeny特許」)を寄与侵害および侵害を誘引したと主張している。Freeny特許は、販売場所において素材物(material object)における情報を複製する方法ないし装置を記載している。被告のうちコンピューター・ソフトウェアおよび出版社に関して、原告は被告らがソフトウェアまたは文書を「オンライン」で、すなわちインターネットおよびWorld Wide Webによって販売することによって、Freeny特許を侵害していると主張している。n[2] 被告である書店、Walden Book Company, Inc. (Waldenbooks)に関して、原告はWaldenbooksが、パスワードを消費者が検索するまでアクセスすることができない暗号化されたコンピューター・ソフトウェアを収めたCD-ROMを含んでいる書籍を販売することによって、Freeny特許を侵害していると主張している。

 1996625日に、当裁判所は開示をクレーム解釈の件に限定し、原告に対し、被告側でのクレーム解釈報告書を1996826日までに提出するよう命令した。1996107日に、当裁判所は原告に、その内容が原告を拘束するものとなる被告側での改訂クレーム解釈報告書(「報告書」)を1996118日までに提出するよう命令した。19961220日付の命令により、当裁判所はクレーム解釈に関する打合せスケジュールを設定したが、これはその後1997411日付の命令によって変更された。

 19961112日付の原告を拘束する「報告書」、および両当事者のクレーム解釈摘要書を検討し、当裁判所はFreeny特許のクレーム1を解釈する法律上の以下の結論を下した。n[3]

背景

 「SYSTEM FOR REPRODUCING INFORMATION IN MATERIAL OBJECTS AT A POINT OF SALE LOCATION」という名称のFreeny特許は、1983110日出願の米国特許願第456,730号に関して198579日にCharles C. Freeny, Jrに対して発行されたものである。19941228日に、Freeny特許のすべての権利はIGEへ譲渡され、IGEはこの譲渡によりFreeny特許のすべての権利の唯一の所有者(owner)であることを継続している。Freeny特許は、Freenyの発明がオーディオ・レコード、動画、書籍、ソフトウェア、グリーティング・カード、または電子的に複製することのできるその他の情報などの各種の情報の製造、流通、および販売に関する従来の方法に付随する問題を特定し、これを解決することをクレームに記載している。

 従来の製造および流通システム

 Freeny特許によれば、情報を具現化する素材物を製造し、流通する既存のシステムでの問題は、3つの面を有している。最初の問題は情報の所有者が負担するかなり高額の製造および流通コストに関するものである。情報の所有者は従来、この情報を何らかの素材物(たとえば、[*4]カセット・テープ、ビデオ・テープ、フロッピー・ディスクなど)に具現化して、消費者への販売のために、各種の小売販路(すなわち、販売場所)へ頒布している。このプロセスが、当該情報を有形物に再現するための製造施設と、情報を具現化した素材物を各種の販売場所へ流通させるためのネットワーク、の両方を必要とするため、情報の所有者は、最終的には消費者に転嫁されることになる素材物のかなりの額のコストを負担している。

 既存のシステムにおける第2の問題は、Freeny特許が記載しているように、これらの情報所有者の報酬に関するものである。Freeny特許によれば、素材物を製造流通させるこの従来のシステムを用いている情報の所有者には、素材物の購入に関して、小売販路からの支払いを集金しようとした場合、あるいはこれらの素材物に具現化された情報が不正に複写された場合に、報酬の問題が生じることになる。

 Freeny特許によれば、従来のシステムの第3の問題は、これらの素材物に関して小売業者が直面する在庫に関連した判断に関するものである。すなわち、小売業者はまず、どの情報具現化[*5]素材物を在庫とすべきかを判断し、次いで、このような情報の構成(たとえば、コンパクト・ディスクかカセット・テープか)およびこのような構成の各々の数量を決定しなければならない。情報所有者が負担する製造流通コストと同様、これらの小売コストも素材物の消費者に転嫁される。したがって、Freeny特許は、これらの経済的な考慮事項のため、小売業者が情報具現化素材物の完全な在庫を維持するのは実際的なことではなく、このことが結果として、消費者が小売業者が在庫していなかった特定の情報具現化素材物を購入したいと考えたときに、販売の喪失につながるものと結論付けている。

II. Freenyの発明

 Freeny特許によれば、Freenyの発明は情報所有者と消費者の間に、より直接的なリンクを作り出すことにより、情報具現化素材物の製造および流通の従来手段に付随するこれらの問題を解決する。Freeny特許は、共通のホスト機械と電子的通信を行っている複数の販売場所機械を使用して、情報具現化素材物を製造する方法またはシステムを記載している。[*6Freeny特許はこれらの販売場所機械を情報製造機械(「IMM」)と呼び、ホスト機械を情報管理機械(「ICM」)と呼んでいる。各IMMは販売場所、「消費者が所定の、あるいは予め選択した情報を具現化している素材物を購入するために出かける場所」におかれ、各販売場所は、システムの他の販売場所に関して遠隔に配置されている。Freeny特許、第5欄、第47-50行、「[ICM]は販売場所の各々に関し、また[IMM]に関して遠隔配置されている。」同上、第5欄、第35-39行。「素材物」に関し、Freeny特許はこの用語を「情報を具現化または固定することができ、これに具現化された情報を直接または他の機械または装置の助けを借りて知覚、複製、使用あるいは通信することのできる媒体または装置」と定義している。同上、第4欄、第36-41行。Freeny特許で特定されている素材物の例としては、フロッピー・ディスク、カセット・テープ、レコード盤、8-トラック・テープ、オープン・テープ、ビデオ・ディスク、電卓、携帯電子ゲーム、グリーティング・カード、[*7]地図、およびシート・ミュージックがある。同上、第4欄、第41-55行参照。

 Freeny特許の仕組みに関していうと、情報はまずICMへ入力され、これによって符号化され、その内部に記憶される。この符号化された情報は次いで、通信リンクを介してIMMへ転送され、各IMMに記憶される。n[4] この段階で、IMMには消費者のトランザクションをサポートする準備ができている。消費者はIMMを使用して、特定のIMMに記憶されている情報の取り合わせを調べ、消費者がIMMに複製させたいと望む情報に対応したカタログ・コードを選択する。この選択を行った後、ただしIMMが要求された情報具現化素材物の複製を開始する前に、IMMは「複製要求コード」をICMへ伝送し、これによって消費者が選択した情報を素材物上へ複製する許可を要求する。複製要求コードはカタログ・コード、要求元IMMを特定するIMMコードを含んでおり、また販売承認用のクレジット・カード・データなどの他の情報を含むこともできる。Freeny特許第9欄、第48-50行、第13欄、第25-31行。

 ICMは複製要求コードを受信し、情報具現化素材物のIMMによる複製を認可するかどうかを判定する。ICMがこのような複製を許可することを選択した場合、ICMは認可コードをIMMへ伝送する。認可コードはIMMコード、符号化カタログ・コード、符号化カタログ解読プログラム、および符号化認可選択コードを含んでいる。符号化カタログ・コードはIMMに、どの情報を復号し、複製するかを命令し、符号化カタログ解読プログラムはIMMに、この情報をどのように復号するかを命令し、符号化認可選択コードは各IMMに記憶されている認可解読プログラムを特定する。「認可コードの受信に応じて、IMMは[IMM]に記憶されている事前選択情報を復号し」、これを素材物上に複製し、その後素材物を消費者がIMMから取り出すことができる。同上、第6欄、第7-10行。

 明確化するために、Freenyの発明が音楽記録に関連してどのように作用するかの例を示す。様々なアーティストによる各種の音楽記録が、ICMに符号化されたフォーマットで入力され、記憶されている。これらの記録[*9]は、次いで選択されたIMMに、符号化されたフォーマットで記憶するために転送され、IMMが消費者のトランザクションをサポートできるようにする。消費者はIMMを使用して、消費者が購入することを望む音楽を選択し、この例では、ザ・ビートルズのSgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band(「サージャント・ペッパー」)に対応したカタログ・コードを入力することになる。n[5] IMMはサージャント・ペッパーを特定するカタログ・コード、消費者が使用する特定のIMMを特定するIMMコード、ならびに、恐らくは販売承認用の消費者のクレジット・カード番号を含んでいる複製要求コードをICMへ伝送する。ICMはトランザクションを承認した場合、認可コードをIMMへ伝送し、IMMが特にサージャント・ペッパーを使用可能なフォーマットへ復号することを可能とする。IMMは次いで、サージャント・ペッパーをカセット・テープやコンパクト・ディスクなどの素材物に複製し、その後、消費者はサージャント・ペッパーの自分のコピーをIMMから取り出すことができる。

 要するにFreeny特許は、Freenyの発明が情報の複製に関して情報所有者に報酬が与えられるようにするものであり、「製造、在庫、構成配布および集金に付随する問題を解決し、...情報を具現化した素材物をより効率よく、経済的で、利益が上がる態様で販売することを可能とするものである」。同上、第4欄、第8-18行。

III. IGEの侵害の主張

 原告は、すべてのパーソナル・コンピューターが、有料で情報をダウンロードし複製するために使用される場合、Freeny特許の意味でIMMであると主張している。原告はさらに、コンピューターがどこに配置されていても、情報をその場所でダウンロードし、有料で、フロッピー・ディスク、ハード・ディスク、テープ、または紙などの素材物に複製する場合には、Freeny特許にしたがって販売場所を構成するものであると断言している。したがって、原告は被告等が、インターネットおよびWorld Wide Webを通じてコンピューター・ソフトウェアおよび文書を販売のために提供することによって、Freeny特許を寄与侵害し及び侵害の誘引をなしていると主張している。原告はまた、被告Waldenbooksが、パスワードを消費者が検索するまでアクセスすることができないように暗号化されたコンピューター・ソフトウェアを収めたCD-ROMを含む書籍を販売することによって、Freeny特許を寄与侵害[*11]しており、また侵害を誘引していると主張している。

IV. Freeny特許のクレーム1

 Freeny特許は57のクレームを含んでおり、そのうちの3つ−クレーム129および37−が独立したものである。クレーム1および29は方法クレームであり、クレーム37はシステムないし装置クレームである。しかしながら、原告の「報告書」に示されているように、これら3つの独立クレームの解釈には何の違いもない。n[6]6 したがって、クレーム1が独立クレームのうち最も範囲の広いものであるから、当裁判所はそのクレーム解釈の分析をクレーム1に限定したが、その分析がクレーム29および37にも同等に適用できることに留意されたい。

 Freeny特許のクレーム1は次の通りである。

 販売場所に配置された情報製造機械を利用して素材物に情報を複製する方法において、

情報製造機械に関して遠隔配置されたソースから、各々がカタログ・コードによって一意に特定される複製する情報を情報製造機械へ与えるステップと、

複製する情報を一意に特定するカタログ・コードを含む複製要求コードを、情報製造機械へ与えて、カタログ・コードによって特定されるある種の情報を素材物に複製することを要求するステップと、

複製要求コードに含まれているカタログ・コードによって特定される情報の複製を認可する認可コードを情報製造機械に与えるステップと、

情報製造機械において複製要求コードと認可コードを受け取り、このような複製を認可する[*13]認可コードに応答して複製要求コードに含まれているカタログ・コードによって特定される情報を素材物に複製するステップとを備えている方法。

 両当事者が争っているのは、(1)クレーム1が情報のリアルタイムのダウンロードをカバーしているのか、それとも所定の又は事前の選択情報に限定されるのかどうか、
2)クレーム1が、復号にパスワードを必要とする暗号化された情報を収めているCD-ROMに適用されるのかどうか、および(3)クレーム1で使用されている「認可コード」、「販売場所」、「素材物」および「情報製造機械」という用語が何を意味するのかということである。

検討

 クレームの解釈は、当裁判所が判断する法律上の事項である。Markman v. Westview Instruments, Inc., 52 F.3d 967, 970-71 (Fed. Cir. 1995) (en banc), aff'd, 517 U.S. 370, 134 L. Ed. 2d 577, 116 S. Ct. 1384 (1996) 参照。特許のクレームの意味を確認するため、当裁判所はまず、クレーム、明細書、および、証拠になっているのであれば、引用された従来技術を含む出願経過を含む内部証拠の記録、すなわち特許自体に注目する。Vitronics Corp. v. Conceptronic, Inc., 90 F.3d 1576, 1582-83 (Fed. Cir. 1996) 参照。通常、内部証拠の分析はクレームおよび用語の曖昧さを解明するものである。同上、1583参照。特許権者が明細書または出願記録において、特別な定義を明確に述べていると思われない限り、クレームの用語には一般にその通常の[*14]意味が与えられる。同上、1582参照。

 まず、当裁判所は特許発明の範囲を画定するために、断定されているもの、されていないもの両方のクレームの用語に注目する。同上参照。特許のクレームに使用されている技術用語は、当業者が与えるであろう意味を有するものと解釈されるが、特許および出願経過から、特許権者が異なる意味で、その用語を使用していることが明らかな場合は除くものとする。Hoechst Celanese Corp. v. BP Chemicals Ltd., 78 F.3d 1575, 1578 (Fed. Cir.), cert. denied, 136 L. Ed. 2d 198, 117 S. Ct. 275 (1996) 参照。

 第2に、当裁判所は特許明細書を検討して、「発明者が何らかの用語をその通常の意味と一致しない態様で使用しているかどうかを判定する」。Vitronics, 90 F.3d, 1582.「明細書はクレームに使用された用語を明示的に定義している場合、あるいは用語を暗黙に定義している場合、辞書としての役割を果たす」。同上。「それ故、明細書はクレーム解釈の分析に常に高い関連性を有するものであり」、通常「争いのある用語に対する単一で最良の手引きとなる」。同上。

 第3に、[*15]当裁判所は出願経過が証拠となっているのであれば、それを検討して、クレームの意味解釈を助けるものとする。「この経過はクレームの範囲に関して出願人が行った明示の表示を含め、特許商標庁におけるすべての審査の完全な記録を包含している」。同上。ただし、出願経過はクレームの限定事項を拡大したり、縮小したり、あるいは変更したりすることはできない。Markman, 52 F.3d, 980 参照。

 外部証拠は、これに対し、「専門家および発明者の証言、辞書、および学問上の論文を含む、特許および出願経過以外のすべての証拠からなる」。同上。「この証拠は科学的原理、技術用語の意味、および特許および出願経過に現れる技術分野の用語を説明するのに有用なことがある」。同上。「外部証拠は発明の時点における従来技術の状態を実証することがある」。同上。対応する外国出願において外国の特許庁に対して行った表示も、当分野の技術者がクレームの文言をどのように解釈するかを判断する上で助けになることがある。Caterpillar Tractor Co. v. Berco, S.PA., 714 F.2d 1110, 1116 (Fed. Cir. 1983) 参照。外部[*16]証拠はしかしながら、クレーム自体により、あるいは明細書および出願経過を参照して正しく理解されたクレームによって確立されているクレームの意味を変更することはできない。Vitronics, 90 F.3d, 1584 参照。さらに、クレームおよび明細書が明白な場合、あるいは内部証拠の分析のみで争われているクレームの用語におけるあいまいさが解決される場合、外部証拠に依存することは不適切である。同上、1583参照。

 最後に、当裁判所は可能であれば、従来の技術についての解釈を避ける態様でクレームを解釈することを含め、クレームの有効性を維持するようにクレームを解釈するものであるが、当裁判所がクレームを書き直すのは不適切である。Harris Corp. v. IXYS Corn., 114 F.3d 1149, 1153 (Fed. Cir. 1997); ACS Hosp. Sys., Inc. v. Montefiore Hosp., 732 F.2d 1572, 1577 (Fed. Cir. 1984) 参照。

 これらの原則を念頭において、当裁判所はクレーム1を解釈する。

I. 情報が配布される時期

 Freeny特許がIMMへの情報の事前配布に加えて、IMMへの情報のリアルタイム・ダウンロードもカバーしていると原告が主張しているのに対し、被告はクレーム1を情報の事前配布に限定すべきであると主張している。[*17]リアルタイム・ダウンロードとは要求された情報がIMM内に記憶されておらず、消費者が品目を要求した後速やかにIMMへ伝送されることを意味する。

 事前配布−−所定または事前の選択は、Freeny特許によれば、情報がIMM内に記憶されており、IMMのユーザーが要求した情報を所定の、あるいは事前選択の収集物から選択するだけであることを意味する。クレームの文言およびFreeny特許の明細書に基づいて、当裁判所はクレーム1が情報のIMMへの事前配布のみに適用されると解釈する。すなわち、IMMが消費者のトランザクションをサポートできるようになるには、情報が常にIMMに記憶されていなければならない。

A. クレームの文言

 クレーム1に示されているように、情報を素材物に複製するFreenyの方法は、4つの「ステップ」を含んでいる。クレーム1では、これらのステップを列挙された順に行わなければならないとは明示的に述べられていないが、最低限、クレーム1で最初に挙げられているステップが、4番目に挙げたステップの前に行われなければならないと当裁判所は判断したが、これは他の解釈では、Freenyの発明が作動しなくなるからである。

 クレーム1に示すように、これらのステップはそれぞれ、情報[*18]配布段階、複製要求コード段階、認可コード段階、および素材物への情報の複製段階を記述している。列挙されたステップのうち最初のものは、IMMによって複製される情報を、遠隔ソースからIMMへ与えなければならず、各情報がカタログ・コードによって一意に特定されることを示している。換言すると、このステップはIMM内への記憶のためのIMMへの情報の事前配布を要求している。クレーム1の文言にしたがうと、ステップ4が複製しようとする情報のICMからIMMへの伝送を行わないのであるから、複製する情報が予めIMMに記憶されていなければ、IMMが情報が具現化された素材物を複製することが不可能となる。ステップ4は「複製要求コード」および「認可コード」をIMMが受信することを記載しているだけであり、その後、IMMが「このような複製を認可する認可コードに応答して ... 素材物に情報を複製する」。クレーム1IMMへの情報のリアルタイム・ダウンロードを含むことを意図していたのであれば、IMMが複製要求コードおよび[*19]認可コードを受信することに加えて、ステップ4は、IMMが複製される情報を受信することも要求することになる。あるいは、この特許が情報のリアルタイム・ダウンロードをカバーすることも意図していたのであれば、特許は「認可コード」を、そのコードの一部として要求された情報を含んでいるものと定義したはずである。n[7] しかしながら、特許のどこにも「認可コード」がこの態様で定義されていない。

B. 明細書

 クレーム1の文言そのものに加えて、Freeny特許の明細書は、Freeny特許が情報のリアルタイム・ダウンロードに適用されないという被告の見解を十分にサポートしている。特許明細書全体にわたり、IMMが消費者がIMMと対話したときにはじめて情報を受信するのではなく、情報を「記憶」していることが示されている。[*20]たとえば、この特許は次のように述べている。

 一般に、情報は入力ラインを介して情報制御機械へ入力され、入力された情報は符号化され、情報制御機械に記憶される。情報制御機械に記憶された符号化された情報は、通信リンクを介して情報製造機械へ通信され、通信リンクおよび受信された符号化された情報は、情報製造機械の各々に記憶される。

 Freeny特許、第5欄、第51-59行。また、「認可コードの受信に応じて、情報製造機械は情報製造機械に記憶されている事前選択情報を復号し、復号した情報を出力ラインへ送る」。同上、第6欄、第7-11行。これらは2つの例に過ぎない。

 さらに、明細書にはIMMが実際には、符号化された情報の収集物を「マスター・ファイル・ユニット」と呼ばれる永続記憶ユニットに記憶するように構成されていると記載している。「各情報製造機械は符号化された情報を受信し、... 受信した符号化された情報を記憶するように構成されている」。同上、第5欄、第21-24行。次いで、「符号化された[*21]情報は、対応するカタログ・コードとともに、IMMコードによって特定された情報製造機械へ、通信リンクを介して通信され、情報製造機械のマスター・ファイル・ユニットに記憶される]。同上、第12欄、第8-13行。

 マスター・ファイル・ユニットは、永続記憶ユニットとして機能するように構成されている。マスター・ファイル・ユニットは符号化された情報を、一意に特定するカタログ・コードとともに、通信リンクによって受信するように構成され、適合されている。他のモードにおいて、マスター・ファイル・ユニットは、符号化された情報とカタログ・コードを単一の経路で受信する。マスター・ファイル・ユニットは、受信した符号化された情報とカタログ・コードを記憶する。

 同上、第9欄、第39-47行。したがって、明細書に記載されているように、情報をIMMに与えるクレーム1の第1のステップは、符号化された情報の収集物を各IMMに記憶できるように実行される。

 IMMに記憶されたこの符号化された情報を明細書全体にわたって、「事前選択」または「所定」の情報と呼んでいる。これらの用語が、情報所有者がどの[*22]情報をICMに入力し、記憶するためIMMへ伝送するかを選択するプロセスを指していることは明らかである。IMMへ伝送され、これに記憶される情報が選択または決定されてから、消費者がIMMを使用するため、この情報はしたがって、「事前選択」または「所定」のものである。

 最後に、特許明細書は情報のリアルタイム・ダウンロードを教示するものではない。この特許は、「実施形態の一つ」において、ICMIMMへの情報のリアルタイム配布をサポートするようにプログラムできると述べている。同上、第24欄、第33-58行。このような実施の形態において、「情報製造機械には、符号化された情報が記憶されておらず、符号化された情報を含んでいる認可コードの受信に応じて、素材物に情報を複製するように機能するに過ぎない」。同上、第24欄、第41-46行。しかしながら、このシナリオを提示した後、明細書は時間および金銭上の両方の観点から、リアルタイムの配布方法を堅実なものではないとしており、このような提案された使い方を、IMMへ予め伝送され、記憶されている符号化された情報の更新に限定している。同上、第24欄、第46-53行参照。

 リアルタイム[*23]配布方法を使用することを教示していないことに加えて、特許明細書のこの部分は、Freenyの発明がクレーム1に記載されているように動作するためには、何らかのステップのシーケンスが必要であり、また、最小限、ステップ1がステップ4に先行しなければならないという、当裁判所の解釈をサポートするものである。具体的にいうと、ステップ4が、複製要求コードと認可コードのみをIMMが受信することを記載しており、複製される情報をIMMが受信することについては何ら触れていないため、IMMが消費者のトランザクションをサポートできるようになる前に、情報をIMMへ転送し、記憶しなければならない。クレーム1IMMへの情報のリアルタイム・ダウンロードを含めることを意図していたのであれば、特許はリアルタイム配布を使用することを認めない場合と同様に、Freenyの発明がリアルタイム配布をサポートするため、認可コードが符号化された情報を含んでいなければならないことを明示的に述べることになる。同上、第24欄、第41-46行参照。特許のどこにも、認可コードがそのコードの一部として複製される情報を含んでいると定義されていない。

 したがって、クレーム1の文言およびFreeny特許の明細書に基づいて、当裁判所はクレーム1が情報のIMMへの[*24]事前配布のみに適用されると解釈する。

II. 認可コード

 原告も被告も、「認可コード」という用語の意味を争っている。その「報告書」において、認可コードは「情報製造機械(消費者の[原文のまま]コンピューター・システム)が電子データを素材物に複製することを可能とする」ものであると、原告は主張している。「報告書」、証拠D。原告は消費者のインターネット・プロトコル(IP)アドレスが認可コードを構成しているとも述べている。被告はこれらの定義の両方に異論を唱えており、「認可コードは要求元コンピューターにどのように情報の符号化された項目を複製するかを指示する電子信号を意味するものと解すべきである」と主張している。クレームの解釈に関する被告CompuServeの摘要、39

A. 認可コードとしてのIPアドレス

 当裁判所はインターネットで使用されているようなIPアドレスなどのハードウェア・アドレスが「認可コード」を、この用語がFreeny特許で使用されているように構成していないという点で、被告に同意する。「インターネット・プロトコル(IP)は1組の相互接続パケット交換ネットワーク(インターネットワークすなわちインターネット)を通じて、データの配布を行う。IPは固定長アドレスに基づいて、データグラムを送信元から宛先[*25]へ伝送し、経路指定する。Chris Shipley & Matt Fish, How the World Wide Web Works 153 (1996)(原告の「報告書」に引用。証拠C)。

 原告の情報源が示しているように、IPなどのハードウェア・アドレスは経路指定機構に過ぎない。したがって、Freenyの発明に関連して、IPアドレスに対応しているのはIMMコードであり、認可コードではない。Freeny特許の明細書に示されているように、IMMコードは「ある特定の情報製造機械を一意に特定する」。Freeny特許、第7欄、第51-53行;同上、第14欄、第22-25行も参照(「IMMコードは情報製造機械が、特定のメッセージをその特定の情報製造機械が受信するようにされているかどうかを判定する手段を提供する」)。また、IMMコードは認可コードおよび複製要求コード両方の構成要素であるが、これは情報をICMからIMMへ送る働きをするだけの特殊コードである。さらに、当裁判所は認可コードとIMMコードが同じものであれば、「認可コード」という用語はIMMコードと同じに定義され、2つのコードを設ける必要がなくなることに注目した。したがって、[*26IPアドレスはこの用語がFreeny特許で使用されている「認可コード」に対応しない。

B. 複製を可能とするものとしての認可コード

 被告は情報が具現化された素材物を、IMMが複製することを「可能」とするものとしての認可コードという原告の解釈にも反論している。原告が「可能化」という用語を「認可」の同意語として使用している限りにおいて、当裁判所は原告の解釈に同意する。n[8] すなわち、認可コードの目的は情報具現化素材物の複製を「認可」することである。これはしかしながら、定義とはならない。これは認可コードが何を行うかを説明するものではあるが、どのようにこれを行うかを正確に説明するものではない。

 上述したように、認可コードはIMMコード、符号化カタログ・コード、符号化カタログ解読プログラム、および符号化カタログ認可選択コードを含む、いくつかの他のコードで構成されている。たとえば、Freeny特許、第9欄、第58-61行参照。符号化カタログ・コードはIMMに、どの情報を復号し、複製するかを命令し、符号化カタログ解読プログラムはIMMに、この情報をどのように復号するかを命令し、符号化認可選択コードは各IMMに記憶されている認可解読プログラムを特定する。各IMM内に配置されている製造制御ユニットは「受信した符号化カタログ・コード、符号化カタログ解読プログラムおよび符号化認可選択コードを解読または復号するように構成され、適合されている」。同上、第9欄、第62-65行。「認可コードの受信に応じて、IMMは[IMM]に記憶されている事前選択情報を復号し」、これを素材物上に複製し、その後、素材物を消費者がIMMから取り出すことができる。同上、第6欄、第7-10行。

 符号化カタログ解読プログラムが認可コードの根本的な構成要素であることは明らかである。これがないと、IMMは情報を符号化され、使用できないフォーマットから復号され、使用可能なフォーマットへ変換する[*28]ことができなくなる。したがって、当裁判所は符号化カタログ解読プログラムがFreenyの発明の真の「認可」機構であると判断する。したがって、Freeny特許全体にわたって使用されている「認可コード」という用語は、最低限、IMMが素材物に複製するものであるIMMに符号化されたフォーマットで記憶されている情報を、IMMが復号ないし解読することを可能とするコードを含んでいる。

III. 販売場所

 両当事者はFreeny特許全体にわたって使用されている「販売場所」という用語について異なる解釈を提示している。その「報告書」において、原告は販売場所を「消費者または購入者が購入を行う場所」と定義している。「報告書」、証拠D。したがって、この特許の意味内で、あらゆるパーソナル・コンピューターがIMMを構成できると原告が主張しているのであるから、販売場所についての原告の定義では、パーソナル・コンピューターが配置されているあらゆる場所は、そのコンピューターが情報を素材物に有料で複製するために使用された場合、販売場所を構成する。被告は、これに対し、「販売場所」[*29]は消費者が情報具現化素材物を購入するために出かける小売販路などの場所であると主張している。

 この場合も、被告の解釈が全面的に正しいものである。Freeny特許は販売場所が小売販路などの場所であると十分明確にしている。明細書の本文で最初に使用されたとき、「販売場所」という用語は明示的に「小売販路」を指している。Freeny特許、第1欄、第17-18行。明細書はさらに販売場所を「小売販路」または「小売業者」と呼び(たとえば、同上、第1欄、第37-38行;第2欄、第13行;第2欄、第63行;第2欄、第67行参照)、「小売業者」を「販売場所の所有者」であると定義している。同上、第3欄、第41-42行。その後、明細書では「販売場所は消費者が所定の、あるいは予め選択した情報を具現化した素材物を購入するために出かける場所」と記載している。Freeny特許、第5欄、第47-50行。この文言、特に「出かける」という語は販売場所が予め選択した情報を具現化した素材物を購入するために、消費者が出向く、小売販路などの場所を示していることは明らかである。

 さらに、販売[*30]場所は、ブランクの素材物が消費者への販売のために入手できる場所でなければならない。IMMが情報を複製する素材物がIMMに記憶されているということは、特許には示されていない。それどころか、特許はブランクの素材物が、IMMとは別に、販売場所で消費者に販売されることを示している。Freeny特許が示しているように、「各販売場所には少なくとも1つの情報製造機械、少なくとも1つの複製ユニット、および複数のブランクの素材物がある」。同上、第12欄、第66-68行。特許はさらに、販売場所の所有者はIMMとともに使用される、8-トラック・テープまたはカセット・テープなどのブランクの素材物を消費者へ販売する人であり、この販売トランザクションはIMMが情報をこの素材物に複製することによって生じる販売とは別のものであると示している。同上、第13欄、第39-44行参照。

 最後に、販売場所を「消費者の家庭」と特許で一回だけ言及していることは(同上、第3欄、第66-67行)、原告の解釈を裏付けるものではない。「販売場所」という用語が消費者の家庭を指すのに使用[*31]されている明細書中の場所において、特許はFreenyの発明を説明するのではなく、消費者が特定のケーブル番組を要求し、その番組の所有者に必要な料金を支払ったことに応じて、その番組が消費者の家庭へ配信される従来技術のケーブル・テレビジョンの配信システムを説明している。しかしながら、このケーブル・システムの説明の直後に、Freeny特許はこのシステムがFreenyの発明のいくつかの機能を実行できないものであると批判している。同上、第4欄、第1-8行参照。特許の他の場所では、販売場所という用語が消費者の家庭を指すものとして使用されていない。したがって、特許を全体としてみて、かつFreenyの発明の目的を考えると、「販売場所」という用語に関連して明細書全体にわたり何回も「小売販路」または「小売業」といっていること、および消費者の家庭を販売場所と一回だけ言及している文脈から、当裁判所はこの特許が「販売場所」を消費者の家庭、個人の住居、パーソナル・コンピューターが配置されているなんらかの場所、または「消費者または購入者が購入を行う場所[*32]」のいずれかであるという原告の定義を裏付けていないと判断する。

 したがって、当裁判所は「販売場所」が最低限、消費者が事前選択情報を複製できる素材物を購入することを目的として出向き、かつブランク素材物が消費者へ販売される場所−小売販路など−であると判断する。n[9]

 素材物

 Freeny特許の意味で何が「素材物」を構成するかについて両当事者の間に若干の争いがあるため、またFreeny発明の目的そのものが「素材物」に情報を複製することであることを考慮して、[*33]当裁判所はここでこの用語の解釈を行う。Freeny特許で定義されているように、「素材物」は、「情報を具現化または固定することができ、これに具現化された情報を直接または他の機械または装置の助けを借りて、知覚、複製、使用あるいは通信することのできる媒体または装置」である。Freeny特許、第4欄、第36-41行。「素材物」を定義したすぐ後で、Freeny特許は、フロッピー・ディスク、カセット・テープ、レコード盤、8-トラック・テープ、オープン・テープ、ビデオ・ディスク、電卓、携帯電子ゲーム、グリーティング・カード、地図、およびシート・ミュージックを含む素材物の例の非網羅的なリストを提示している。同上、第4欄、第41-55行参照。

 しかしながら、その「報告書」において、原告は「素材物」を「情報が印刷された紙、またはフロッピー・ディスク、ハード・ディスク、テープなどへの記録」と定義している。「報告書」、証拠D。「素材物」の定義をまったく提示せずに、原告の「報告書」は問題の「素材物」の他の例を挙げているだけである。したがって、当裁判所はここでFreeny特許の下で何が「素材物」を構成しているかを検討する。

 当裁判所は、最低限、有体[*34]物は(1IMMから取り外し、販売場所以外の場所で使用されるものでなければならず、(2)販売場所で独立した単独の商品として販売に供されるものでなければならず、(3 IMMとは別な、別個なものでなければならないという被告に同意する。取外し可能性に関して、Freeny特許は情報を販売場所において素材物に複製する方法を提示している。特許に記載されているように、IMMICMから認可コードを受信した後、IMMはこの内部に記憶されている、要求された事前選択情報を復号し、消費者がIMMから取り出した素材物に要求された情報を複製する。さらに、特許自体に提示されている素材物のすべての例、ならびに原告の「報告書」に列挙されている、コンピューターのハード・ディスク以外のものすべてが消費者が取り外すことができる物であることは、素材物がこの品質を備えていなければならないことを示している。これはFreenyの発明の目的の1つが、素材物の製造、流通、在庫に付随する本題を解決することであることによっても裏付けられる。

 素材物は独立した単独の商品として販売場所[*35]で販売に供されるものでもなければならない。この要件については、上記で、販売場所がブランクの素材物が消費者への販売に利用できる場所でなければならないと、当裁判所が注目した際に触れている。すなわち素材物は、その素材物に複製できる情報とは無関係に販売に供されるものでなければならない。

 最後に、特許から自明ではあるが、IMMによって製造される情報具現化素材物はIMMとは別で、別個のものでなければならない。すなわち、IMMは情報を素材物に複製する装置である。たとえば、Freeny特許、第5欄、第21-31行参照。

 それ故、ハード・ディスクがFreeny特許の意味の範囲で素材物ではないのは、これがFreeny特許で考えられている意味で取り外せないからである。ハード・ディスクはコンピューターの基本構成要素である。基本的に、ハード・ディスクはデータやソフトウェアなどの情報をコンピューター内に物理的に記憶する装置である。また、ハード・ディスクは、文字通りにいえば、コンピューターから取り外すことができるものであるが、そうするにはコンピューターを分解する必要がある。IMMを取り外すことは、Freeny特許が示している、素材物を取得するために、消費者が行わなければならない[*36]ステップないし手順ではない。それどころか、Freeny特許は、消費者がIMMから取り外した素材物に、IMMが情報を複製する発明を記載している。

 さらに、Freeny特許によれば、IMMが素材物と別で、別個のものであるから、ハード・ディスクが素材物を構成することはできない。その「報告書」において原告は、情報を有料でダウンロードし、複製するために使用した場合、パーソナル・コンピューターがIMMを構成し、コンピューターのハード・ディスクが素材物を構成できると述べている。「報告書」、証拠D参照。したがって、このシナリオにおいて、IMMと素材物は同じ装置である。ハード・ディスクはIMMとして作動しているが、これはダウンロードを行うのを可能とするのは、コンピューターのハード・ディスクに記憶されているソフトウェア、ならびにモデムなどの他のコンピューター・ハードウェアだからである。しかしながら、ダウンロードした情報が記憶されるのがハード・ディスクなのであるから、ハード・ディスクは素材物としても作動することになる。しかしながら、特許に記載されているように、IMMは情報[*37]を素材物に複製する装置である。たとえば、Freeny特許、第5欄、第21-31行参照。したがって、IMMが素材物と別で、別個のものでなければならないため、ハード・ディスクはFreeny特許の意味で素材物を構成することはできない。

V. 情報製造機械(IMM

 両当事者は「IMM」という用語の意味についても争っている。Freeny特許の明細書および図1が示しているように、IMM4つの独立した別個の構成要素、すなわち、「マスター・ファイル・ユニット、製造制御ユニット、情報製造ユニット、および複製ユニット」で構成されている。同上、第6欄、第27-30行。n[10] これらの構成要素の各々は各種の信号経路によってリンクされている。Freeny特許、図1,3,4参照。Freeny特許の一部である図の矢印は信号がこれらの信号経路に沿って流れる方向を示している。n[11] Freeny特許の明細書で示されているように、IMM4つの構成要素の各々は異なる機能を果たす。

A. 製造制御ユニット

 製造制御ユニット(「MCU」)は、入力ラインを介して「IMMコードおよびカタログ・コードを含んでいる複製要求コード」を受信し、通信リンクによって「受信した複製要求コード」をICMへ通信する。同上、第9欄、第48-53行。MCUICMから、通信リンクを介して、「IMMコード、符号化カタログ・コード、符号化カタログ解読プログラムおよび符号化認可選択コードを含む認可コード」を受信する。同上、第9欄、第57-62行。

 MCUは複数の「認可解読プログラムも記憶しており、各認可解読プログラムは認可選択コードによって一意に特定される」。同上、第9欄、第54-57行。MCUは「所定の認可解読プログラムにしたがって受信した符号化カタログ・コード、符号化カタログ解読プログラム[*39]および符号化認可選択コードを解読または復号するように構成され、適合されている」。同上、第9欄、第62-66行。「受信した符号化カタログ・コード、符号化カタログ解読プログラムおよび符号化認可選択コードを復号した後、製造制御ユニットは次に受信した符号化カタログ・コード、符号化カタログ解読プログラムおよび符号化認可選択コードの解読時に使用するため、認可選択コードを記憶する」。同上、第10欄、第5-11行。次いで、MCUは信号経路を介して、復号されたカタログ・コードをIMMのマスター・ファイル・ユニットへ送る。同上、第10欄、第11-14行参照。

 MCUはまた、(1)素材物に複製される「符号化された情報から解読プログラムおよびファイル解読プログラムを復号し」、(2 「復号された解読プログラムおよび復号ファイル解読プログラムを一時的に記憶し」、(3)素材物に複製される情報を復号し、(4)「[素材物に複製される]復号された情報を信号経路に与えて、情報製造ユニット(IMMの第3の構成要素)が受信する」ような態様で構成されなければならない。同上、第10欄[*40]、第27-40行。

 最後に、選択した情報を素材物に最終的に複製した後、「製造制御ユニットは信号経路上で情報製造ユニットから符号化情報を受信し、符号化された情報を信号経路上に与えて、マスター・ファイル・ユニットが受信し、これに復元されるようにする」。同上、第10欄、第50-55行。

B. マスター・ファイル・ユニット

 マスター・ファイル・ユニット(「MFU」)は「永続記憶ユニット」として機能する。同上、第9欄、第39-40行。MFUは、後で素材物に複製される符号化情報と、符号化情報の一部を一意に特定するカタログ・コードの両方を受信し、記憶する。同上、第9欄、第40-47行参照。符号化情報およびカタログ・コードはMCUからMFUへ信号経路を介して伝送される。同上参照;また第10欄、第11-14行参照。販売場所にいる消費者が素材物へ複製することを望む情報を選択した後、MFUはこの情報を信号経路を介して情報製造ユニット、すなわちIMMの第3の構成要素に与える。同上、第10欄、第14-21行参照。

C. 情報製造[*41]ユニット

 情報製造ユニット(「IMU」)は、素材物に複製される符号化情報を信号経路を介してMFUから受信した後、これを「一時的に記憶する」。同上、第10欄、第14-26行参照。IMUMCUから素材物にディジタル・フォーマットで複製される復号された情報を受信することができ、かつその情報をアナログ・フォーマットに変換できることの両方を行えなければならない。同上、第10欄、第40-45行参照。最後に、IMUは信号経路を介して素材物に複製される、変換された復号情報をIMMの第4の構成要素、複製ユニットへ伝送できなければならない。同上、第10欄、第41-48行参照。

D. 複製ユニット

 複製ユニットは「受信した情報を素材物に複製する」ように設計されている。同上、第5欄、第30-31行。複製ユニットは「[IMUから素材物に複製される]情報を受信し」、次いで「受信した情報を素材物に複製」できなければならない。同上、第10欄、第45-48行。

 したがって、特許から、IMMのこれら4つの構成要素が互いに別々で独立したもの[*42]であり、異なる機能を果たすことが十分に明らかである。販売場所におかれており、情報が複製される素材物がIMMとは全体として、またIMMの構成部品とは別な、独立したものであることも明らかである。

VI. CD-ROM

 上述したように、本訴訟における被告の一人はWaldenbooks、小売書店である。1995年に、WaldenbooksAndrew Schulmanの「Unauthorized Windows 95 Developer's Resource Kit」という題名の書籍を販売した。同書の裏表紙の内側には、「Smash Hits for Programmers Vol. 1.1」という題名の「CD-ROM試供品」が収められていた。CD-ROMは書籍の購入者のコンピューターがCD-ROM駆動装置を備えていれば、試してみる−アプリケーションごとに「試走する」−ことのできる各種のコンピューター・アプリケーション・プログラムのコピーを収めていた。書籍の購入者がアプリケーション・プログラムの1つを試したり、購入しようと望んだ場合のため、ソフトウェアのベンダー、「The Programmer's Shop」の1-800電話番号がその書籍のジャケットに記載されていた。書籍の購入者は1-800番号に電話をして、Waldenbooksから書籍の一部として購入したCD-ROM*43]に全部が収められている希望のプログラムを「ロック解除」するパスワードを受け取らなければならない。n[12] パスワードを受け取ると、選択したプログラムが自動的に解読され、CD-ROMから消費者のコンピューターへインストールされる。

 Waldenbooksが販売している製品が、CD-ROMを収めている書籍であり、他の被告のオンライン製品やサービスと異なっているため、当裁判所はここでCD-ROMに独自のいくつかの付加的なクレームの解釈の問題を検討する。

 原告はWaldenbooksCD-ROMを収めた書籍を販売することによって、Freeny特許の侵害を引き起こしたと主張している。原告の「報告書」によれば、次のようになる。

 暗号化された情報を有するCD-ROMの場合、ソースはCD-ROMを郵送などして、消費者が利用できるようにすることができる。通常、消費者[*44]はソースにモデムにより、さらには電話によって連絡を取り、CD-ROMの特定のファイルに対する認可コードを取得する。消費者はその後、ファイルの識別(カタログ・コード)および要求(複製コード)を用いることにより、認可コードをファイルを複製する要求とともに入力するためにコンピューター・システムを使用する。

 「報告書」、証拠C。原告の「報告書」からのこの節で使用されている「ソース」という用語は、原告により、「今日の用語で「サーバ」などの遠隔配置されたコンピューター・システムと定義されている。「報告書」、証拠C

 この場合も、原告の解釈は擁護できないものに過ぎない。事実、原告のすべてのクレームの解釈のうち、これは最も回りくどいものであろう。まず、Freeny特許で説明されているように、複製コードおよび認可コードは独立し、別のものであり、異なる機能を果たす。上述したCD-ROMの場合、しかしながら、一方のコードだけが必要である。すなわち、1-800番へ電話をかけると、消費者には暗号化されたプログラムのロックを解除するパスワードが与えられる。したがって、Freeny特許の語彙において、このパスワードは認可コードとして働く。Freenyの発明は複製要求コードと認可[*45]コードの両方を必要とするため、クレーム1は(1)両方のコードが存在しており、(2)複製要求コードが認可コードから独立し、別個のものであり、(3)各コードが異なる機能を果たす方法に限定されると解釈しなければならない。したがって、Freeny特許は、CD-ROMに収められている暗号化されたプログラムのロックを解除するのに、一方のコード(すなわち、パスワード)だけしか必要としないのであるから、上述のCD-ROMを対象としていない。

 第2に、Freenyの発明はIMMがまず受信し、その後、IMMからICMへ送られる複製要求コードを必要とする。Freenyの発明はICMからIMMへ送られる認可コードも必要とする。すなわち、Freeny特許は2つの機械、すなわちICMIMMが電子的に互いに通信を行う発明を記載している。人間はIMMでもICMでもない。簡単にいうと、消費者が電話を介して、消費者が消費者のパーソナル・コンピューターで使用されているCD-ROMに収められているコンピューター・アプリケーション・プログラムのロックを解除できるようにするパスワードを口頭で受け取る方法または装置を、Freeny特許が対象としていないことは明らかである。

結論

 意図されていた範囲以上[*46]に特許の範囲を拡張しようということを明確に試みて、原告はその特許がインターネットおよびWorld Wide Webのある種の使い方を対象としており、かつある種のCD-ROMの用途に適用されるとのありそうもない主張をしている。しかしながら、当裁判所にとって、Freeny特許のクレームおよび明細書が原告の範囲の広い解釈をサポートしていないことは十分明らかである。

 上記に照らして、当裁判所はFreeny特許のクレームについて、以下の解釈を採用した次の命令を提起する。

1.    Freeny特許のクレーム156は、消費者が「情報製造機械」(「IMM」)(以下で定義する)を使用して素材物(以下で定義する)に、IMMへすべてが予め配布され、これに記憶されているカタログ化された情報の収集物の中から情報項目を複製する方法、システムまたは装置に限定される。Freeny特許のクレーム156は、情報の要求された項目が消費者によって要求された時点でIMMへ伝送されるリアルタイム・トランザクションを対象としていない。

2.     Freeny特許のクレーム156で使用されている「認可コード」という用語は、最低限、IMMが素材[*47]物に複製される情報を復号できるようにするものであり、かつIMMに符号化された形態で予め記憶されているコードを含んでいなければならない。

3.    Freeny特許のクレーム156は「認可コード」と「複製要求コード」の両方を必要とする方法、システムまたは装置に限定される。「認可コード」および「複製要求コード」は独立し、別個なコードであり、各コードは異なる機能を果たす。

4.     Freeny特許のクレーム156IMMが「複製要求コード」を受信し、「複製要求コード」を「情報制御機械」(「ICM」)へ送信し、「認可コード」をICMから受信することを必要とする方法、システムまたは装置に限定される。

5.    Freeny特許のクレーム156で使用された場合の「販売場所」という用語は、最低限、以下の属性のすべてを含んでいなければならない場所である。

a.    少なくとも1つのIMMを有していなければならず、したがって、情報を素材物に複製する少なくとも1つの装置(複製ユニット)、およびIMMに記憶されている事前選択情報を複製することのできる少なくとも2つのブランクの素材物を有していなければならない。

b.    消費者への販売のため、IMMとは別に、事前選択[*48]情報を複製することのできるブランクの素材物が入手できなければならない。

c.    事前選択情報を複製することのできる素材物を購入することを目的として消費者が出かける場所でなければならない。

      消費者の家庭はFreeny特許の意味内での販売場所ではない。

6.    Freeny特許のクレーム156で使用された場合の「素材物」という用語は、情報を具現化し、固定し、あるいは、一時的にではなく記憶することができ、これに具現化された情報を直接または他の機械または装置の助けを借りて、知覚、複製、使用あるいは通信することのできる有体の媒体または装置であり、次のようなものである。

a.    少なくとも1つのIMMが配置されている販売場所で販売に供され、購入できなければならない。

b.    素材物に複製される情報とは、独立して販売に供されるものでなければならない。

c.    販売場所に配置されているIMMとは、物理的に独立し別個なものでなければならない。

d.    選択した情報の複製時に、販売場所に配置されているIMMから消費者によって取り出される。

e.    販売場所以外の場所で素材物[*49]を消費者が使用することを目的としたものである。

7.    Freeny特許のクレーム156で使用した場合「情報製造機械」ないし「IMM」という用語は、最低限、次の4つの独立し、別個の構成要素を有していなければならない。(a) 製造制御ユニット、(b) マスター・ファイル・ユニット、(c) 情報製造ユニット、および (d) 複製ユニット。

       また、IMMのマスター・ファイル・ユニット構成要素および複製ユニット構成要素は、最低限、以下の属性を有していなければならない。

a.    マスター・ファイル・ユニットは、素材物に複製される符号化された情報、および素材物に複製される符号化された情報を一意に特定するカタログ・コードに対する永続記憶ユニットとして機能しなければならない。マスター・ファイル・ユニットは、クレーム1(および、これに従属するクレーム)に記載されている販売場所において、「カタログ・コードによって特定された情報を素材物に複製する」ステップを実行できず、またクレーム29(および、これに従属するクレーム)に記載されている販売場所において、「選択された情報を素材物に複製する」ことができず、またクレーム37(および、これに従属するクレーム)に記載されている販売場所[*50]において、「カタログ・コードによって特定された情報を素材物に複製する」ことができない。

b.    複製ユニットは、情報製造ユニットからの単方向信号経路上でアナログ形態の情報を受信し、受信した情報を、販売場所にあるIMMに配置された2つ以上のブランク素材物の少なくとも1つに複製しなければならない。複製ユニットは製造制御ユニット、マスター・ファイル・ユニットまたは情報製造ユニットの機能を実行することができない。

上記のように命令する

BARBARA S. JONES
合衆国地方裁判所判事

日付:ニューヨーク州ニューヨーク市

1998513



n1 この訴訟を提起してから、原告はその社名をE-Dataと変更した。[*2

[2] n2 原告はその申立書において、被告がFreeny特許を直接侵害しているとも主張しているが、原告はその19961112日付の「改訂クレーム解釈報告書」において、被告の誰もが直接侵害者ではないと述べている。

[3] n3 当裁判所は最初から、当裁判所がクレームの解釈に関して当裁判所を援助する専門家その他の証言を必要としないため、Markman審問が必要ないと述べていた。

[4] n4 情報をIMMへ記憶しなければならないかどうかは、当裁判所が以下で解決する両当事者間の争点である。

[5] n5 この例において、消費者は一人のアーティストのアルバム全体を購入しているが、Freenyの発明は、情報所有者との適切なライセンス供与およびその他の同意が存在していると想定して、消費者が様々なアーティストによる異なるアルバムから、多数の歌を単一の有体オブジェクトに複製するために選択することを可能にすると考えられる。

[6] n6 クレームの解釈に関して、クレーム129、および37の間に何の相違もないことは、その「報告書」において、原告がクレーム1の詳細な解釈を行い、クレーム29および37を解釈するときに、「クレーム1参照」と述べていることによっても明らかである。

[7] n7 当裁判所はさらに、クレーム29および37もこの解釈をサポートしており、またクレーム37が実際、ICMから受信した情報をIMMに「記憶」すると明示的に述べていることに注目する。

[8] n8 認可コードの目的が情報具現化有形オブジェクトの複製を「認可」するものであることを特許が明示的に述べていることを被告が認識しているのであるから、被告もこの解釈に同意すると思われる。たとえば、クレームの解釈に関する被告CompuServeの摘要、35参照。

[9] n9 明確とするため、当裁判所は小売店がFreeny特許の意味で「販売場所」を構成する場所の唯一のタイプではないことに留意している。たとえば、Freeny特許のクレームの限定事項を満たす卸売り店は販売場所を構成することができよう。ただし、販売場所は消費者の家庭ではありえない。

[10] n10 「図1に示した販売場所情報製造システムの情報製造機械部分の略図」であるFreeny特許の図3(同上、第4欄、第27-29行)は、IMM4つの構成要素の3つのものに関する付加的な詳細を示すものである。製造制御ユニットは製造プログラム・ユニット、通信モデム、および情報カタログおよび要求ユニットで構成されている。マスター・ファイル・ユニットはディジタル記憶ユニットおよび読取り装置で構成されている。なお、当裁判所は図3のマスター・ファイル・ユニットに32ではなく26と間違った参照符号が付けられていることに注目した。特許明細書は、しかしながら、マスター・ファイル・ユニットがこれら2つの構成要素で構成されていることを明らかにしている。Freeny特許、第19欄、第55-56行参照。情報製造ユニットはディジタル情報ユニットおよびディジタル・アナログ変換器を含んでいる。最後に、図3は複製ユニットに関する付加的な詳細を示していない。[*38

[11] n11 したがって、たとえば、図1の矢印の方向および明細書本文によって示すように、出力ライン22は信号を情報製造ユニットから複製ユニットへ送る。Freeny特許、図1;第5欄、第28-31行参照。

[12] n12 プログラムの中にはCD-ROMに収められておらず、したがってパスワードを入力した際にロック解除されず、インストールできないものもある。それどころか、これらのプログラムは消費者へ個別に出荷しなければならない。ロック解除できないCD-ROMに収められているプログラムだけがここで問題となる。