連邦巡回裁判所のための合衆国控訴裁判所

96-1168

LAWRENCE B. LOCKWOOD(原告−控訴人)

AMERICAN AIRLINES, INC.(被告−被控訴人)

原告側弁護士:

Robert M. Taylor, Jr.−カリフォルニア州コスタ・メーザ、Lyon & Lyon 法律事務所。

被告側弁護士:

Don W. Martens, −カリフォルニア州ニューポート・ビーチ、Knobbe, Martens, Olson & Bear 法律事務所。書面上の協力者、Joseph R. ReおよびPaul A. Stewart

控訴された判決:合衆国カリフォルニア州中部南部裁判所の判決

裁判官 − Enright判事

連邦巡回裁判所のための合衆国控訴裁判所

96-1168

当事者:LAWRENCE B. LOCKWOOD(原告−控訴人)

AMERICAN AIRLINES, INC.(被告−被控訴人)

1997年3月4日決定

裁判官 MAYER, LOURIE, RADERの各巡回判事

LOURIE巡回判事

Lawrence B. Lockwoodは、合衆国カリフォルニア州中部南部裁判所の、American Airlines, Inc.側を勝訴とした略式判決を認める終局判決、Lockwood対American Airlines, Inc.判決、No.91-1640E (CM)(S.D.Cal. 1995年12月19日)を控訴した。その略式判決において原裁判所は、(1) AmericanのSABREビジョン予約システムは、合衆国特許再発行第32,115号、合衆国特許第4,567,359号および合衆国特許5,309,355号を侵害しておらず、(2) 第’355号特許および第’359特許で主張されたクレームはそれぞれ、35 U.S.C. §103および35 U.S.C. §102に基づき無効であったと判断した。Lockwood対American Airlines, Inc.判決、834 F.Supp. 1246, 28 USPQ2d 1114 (S.D.Cal.1993) 再審要請棄却、847 F.Supp. 777 (S.D.Cal.1994)(第’115号および第’359号の特許は侵害されなかったと判断);Lockwood対American Airlines, Inc.判決、877 F.Supp. 500, 34 USPQ2d 1290 (S.D.Cal.1994)(第’355号特許の主張されているクレームは無効であり侵害されなかったと判断);Lockwood対American Airlines, Inc.判決、37 USPQ2d 1534 (S.D.Cal.1995)(第’359号特許は無効と判断)。地方裁判所は、重大な事実について争われている真の争点が無く、Americanは法律問題として判決を受ける権利を持つと正しく決定したので、我々は控訴を棄却する。

背景

関連性のある事実は争われていない。Lockwoodは、第’115号、第’355号および第’359号特許を所有しており、そのすべてが、それによって顧客に販売用プレゼンテーションをし、顧客が商品やサービスを注文することができる、対話型自動販売ターミナルに関係したものである。Lockwoodは、AmericanのSABREビジョン航空予約システムは、三つの特許すべてを侵害しているとAmericanを訴えた。SABREビジョンは旅行代理店が運行予定や料金の情報にアクセスし、予約をし、顧客に示すためにホテル、レストラン、クルーズ、名所などの写真を取り出すために使う。これは、1960年代に初めて作られ写真の表示はできなかった、AmericanのSABRE予約システムを改良したものである。

1986年に再発行された第’115号特許は、顧客に紀行を視聴覚的に提示する、セルフサービス販売用ターミナルに関係している。主張されている唯一のクレームであるクレーム11の関係する部分は、次のように記されている。

利用場所に容易に運搬し設置できる大きさの、実質上、自己完備した装置で、以下のものからなる:

多数のデータ源から情報を選択的に編集する視聴覚的手段。

前記の視聴覚的手段で編集すべき情報を選択するための顧客操作手段。顧客の要求に応じて前記の視聴覚的手段にさまざまな情報の選択肢を、連続的かつ対話的に表示する手段を含む。

・・・

顧客からの前記のサービスに対する支払いを受け取る、少なくとも一つの電気機械的手段。

・・・

地方裁判所は、AmericanのSABREビジョンは主張されているクレームの四つの限定を含んでいないので、第’115号特許を侵害していないと判断した。特にSABREビジョンは「容易に運搬できる大きさの、実質上、自己完備し」たものではなくて、「視聴覚的手段」、「顧客操作手段」および「支払い受け取り手段」を含んでいないと、原裁判所は認定した。

第’359号特許は、視聴覚的な販売用プレゼンテーションを提供し、複数の組織からの商品やサービスをまとめる、複数の対話型セルフサービス・ターミナルからなるシステムを開示している。唯一の独立クレームであるクレーム1の関係する部分は、次のように記されている:

各業界の複数の組織の情報、商品およびサービスを自動的にまとめるシステムで、以下のものから構成される。

・・・

少なくとも一つの顧客用販売兼情報ターミナル・・

・・・

前記の販売兼情報ターミナルは以下のものを含む:

顧客との対話のための視聴覚的手段で、以下のものから構成される:

顧客に選択的に伝送される一連の視聴覚情報を記憶する手段。

選択された一連の、前記の記憶された情報を顧客に伝送する手段。

顧客からの情報を集めるための顧客操作入力手段・・

地方裁判所は、SABREビジョンは「視聴覚的手段」と「顧客操作手段」を含んでいないので、第’359号特許を侵害していないと判断した。原裁判所はまた、1982年に発行されその後第’115号特許として再発行された合衆国特許第4,359,631号で開示されたセルフサービス・ターミナルと組み合せて、元来のSABREシステムを見ると、第’359号特許は自明なので、同特許は無効であるとも判断した。

最後に、1994年に発行された第’355号特許は、航空予約システムと組み合わせ、旅行代理店がクライアントのために独自のあつらえの販売用プレゼテーションを作ることによって、旅行代理店の営業販売能力を増すためのシステムを開示している。唯一の独立クレームであるクレーム1の関係する部分は、次のように書かれている:

各組織のサービス、価格情報または販売情報を記憶するための手段を含む、中央データ処理センター。

少なくとも一つの販売促進装置。

・・・

前記の販売促進装置は次のものを含む:

前記の装置に入力された決定要因および、顧客のプロフィールと要請に基づき、独自の販売用プレゼンテーションを構成し表示するための手段。

多数の、ランダムにアクセス可能なデータを保存する記憶手段。

・・・

前記の決定要因を選択的に組み合わせ、少なくともデータのある部分のアドレスを指定して検索するための手段。

・・・

地方裁判所は、SABREビジョンはとりわけ「独自の販売用プレゼンテーション」を構成せず、または顧客の情報を「選択的に組み合わせて」写真を検索しないので、第’355号特許を侵害していないと判断した。さらに原裁判所は、第’355号特許のクレームは第’359号特許で予測されていたという理由で、同特許は35U.S.C.§102 (b) に基づき無効であると判断した。第’355号特許は、第’359号特許として発行された出願から始まった、一連の出願に基づき発行された。地方裁判所は、第’355号特許は最初の特許出願の提出日に対する資格を持たないと判断し、したがって第’359号特許は予測させる従来技術であると結論づけた。Lockwoodは、三つの特許すべてのクレームの解釈において地方裁判所は誤りを犯したと主張し、各争点についてAmericanを勝訴とした略式判決は重大な事実についての真の争点がまだ争われているので排除されると論じ、ここに本裁判所に控訴する。

議論

我々は、地方裁判所の略式判決を、改めて検討する。Conroy対Reebok Int’l, Ltd.判決、14 F.3d 1570, 1575, 29 USPQ2d 1373, 1377 (Fed.Cir.1994)。略式判決は、重大な事実についての真の争点が無い場合に認められるもので、申立人は法律問題として判決を受ける権利を有する。Fed. R. Civ. P. 56 (c)。このように、略式判決は、「合理的な陪審が、申立人でない当事者に有利な評決を報告することができ」ない場合に、出されうる。Anderson対Liberty Lobby, Inc.判決、477 U.S. 242, 248 (1986);Conroy, 14 F.3d, 1575, 29 USPQ2d, 1377(「申立人は・・・相手方の主張を支持する証拠がないことを地方裁判所に示すことによって、その責任を満たすことができる」)。重大な事実についての真の争点があるかどうかを決定するに当たり、証拠は、申立に反対する当事者に最も有利な見方で、疑問は申立人でない者の有利に解釈して、検討されなければならない。Transmatic, Inc.対Gulton Indus, Inc.判決、53 F.3d 1270, 1274, 35 USPQ2d 1035, 1038 (Fed.Cir.1995)。

A.    有効性

地方裁判所は、第’359号特許の主張されているクレームが、従来技術第’631号特許と最初のSABREシステムに鑑みて自明であったと判断した。35U.S.C.§103 に基づく自明性の決定は、事実調査を含む法的結論である。Uniroyal, Inc.対Rudkin-Wiley Corp.判決、837 F.2d 1044, 1050, 5 USPQ2d 1434, 1438 (Fed.Cir.1988)。Lockwoodは、第’359号特許のクレームの主題は自明ではなく、地方裁判所は特許は無効と結論づけた点で、許されない、事実についての逆の推測を行ったと主張する。Lockwoodはまず、地方裁判所は、SABREシステムが従来技術としての資格があると結論づけた点で誤りを犯したと主張する。

Americanは、SABREシステムは1962年に一般に導入され、1965年までには1000以上の接続された販売デスクをもっており、1970年までには他の大部分の航空会社の予約システムに接続されたと表明する宣誓供述書を提出した。Lockwoodはこれらの事実については争わないが、SABREシステムの「肝心な側面」は公衆にはアクセス不可能だったので、従来技術ではありえなかったと主張する。Americanの専門家はSABREソフトウェアの主要なアルゴリズムは機密であり所有権のある情報であり、システムの公衆に明らかであった側面はこの技術に熟練した人がこのシステムを複製するのに充分ではなかったことを認めた。しかしAmericanは、装置が法律上の意味で「公然使用」または「他の人によって使用された」とみなされるには、その「内部の動作」に公衆がアクセスできる必要はないと答えた。

最初のSABREシステムの地方裁判所が依拠した側面が第’359号特許の従来技術であることについて、我々はAmericanに同意する。地方裁判所は、多数の組織(たとえば航空会社、ホテル、レンタカーなど)に対して予約やその確認を行ったSABREは、第’631号特許のターミナルと組み合わさって、第’359号特許の主張されているクレームを自明なものとすると判断した。第’631号特許のターミナルは明らかに、この「多数の組織」という特徴を欠いている。しかし、公衆がSABREはこの機能をもっていることを認識しており、公衆はLockwoodの発明の日以前から独立の旅行代理店で旅行の予約をするのにSABREを使っていたことは、争われていない。

ある装置がこの国で発明日以前に「他の人に知られていた、もしくは使用された」ならば、または、出願日以前に一年間以上この国で「公然使用」されていたならば、それは従来技術としての資格をもつ。U.S.C.§102 (a) および (b) (1994) 参照。Lockwoodは、この技術に熟練した人でも、SABREの秘密の側面にアクセスできなければクレームされた発明を製作し操作することはできなかったという記録証言を指摘することによって、略式判決を排除しようとした。しかし特許を与えられた発明を定義するのはクレームである。Constant対Advanced Micro-Devices, Inc.判決、848 F.2d 1560, 1571, 7 USPQ2d 1057, 1064 (Fed.Cir.1988) 参照。我々がこの意見ですでに結論づけたように、AmericanによるSABREシステムの高レベルでの公然使用は、第’359号特許のクレームされている特徴を公的所有に置くのに充分であった。In re Epstein, 32F.3d 1559, 1567-68, 31 USPQ2d 1817, 1823 (Fed.Cir.1994)(「この『公然使用または売出し済み』という認定以上には、授権タイプの調査の必要性はない」)参照。Lockwoodは、他の、クレームされていないSABREシステムの側面が公衆に提供されていなかったことを示す証拠によって、このことを否定することはできない。さらに、第’359号特許自体が、Lockwoodが従来技術として我々に要求するレベルの詳細を開示していない。これらの理由から、Lockwoodは、重大な事実についての真の争点が略式判決を排除することを示せていない。

Lockwoodはさらに、SABREシステムが実効的に従来技術だとしても、そのシステムと第’631号特許は第’359号特許の発明を生み出さないと主張する。第’359号特許のクレームでのターミナルは、35 U.S.C. §102,6 を条件として、「顧客から情報を集めるための手段」と「顧客に選択的に伝送される一連の視聴覚情報を記憶するための手段」を含む多数のミーンズ・ファンクションの限定を含んでいる。ミーンズ・ファンクション項目は、「明細書に開示された対応する構造およびその等価物に限定される」と解釈される。In re Donaldson Co., 16 F.3d 1189, 1195, 29 USPQ2d 1845, 1850 (Fed.Cir.1994)(大法廷);35 U.S.C. §102,6 (1994) 参照。Lockwoodは、第’359号特許で開示された構造は、第’631号特許で開示されたターミナルとは実質的に異なっており、少なくとも彼の専門家の供述は、略式判決を排除するのに十分な、重大な事実についての真の争点を提起したと主張する。

我々はそれに同意しない。Americanは、特許の有効性を前提としたとしても、第’395号特許のクレームのターミナルに関係した手段の限定が第’631号特許の明細書に記されていることを示すという責任を果たしたと我々は考える。Lockwoodは、審理にとっての真の争点を提起する具体的な事実を説明することによって答えることはしなかった。特に、Lockwoodは、第’631号特許の開示は、第’359号特許の明細書で開示された構造またはその等価物を欠いているとは告発しなかった。地方裁判所が指摘したように、Lockwoodの専門家 Tuthill博士は、第’631号特許と第’359号特許のいずれにも言及されていない構造に依拠した。たとえば Tuthillは、第’631号特許で説明されているターミナルは問題を解決するのに「後退チェーニング」システムを使用しているが、第’359号特許は「前進チェーニング」システムを使っているので、クレームされている発明は第’631号特許とは異なると述べている。しかし第’359号特許も第’631号特許も、後退あるいは前進チェーニングには言及していない。また第’359号特許の明細書は、どのハードウェアあるいはソフトウェアの構造も、特定の問題解決技術に限定されているとは記していない。

さらにLockwoodは、この二つの特許で開示されたハードウェアおよびソフトウェアは互いに等価ではないと主張する。しかし第’359号特許はハードウェアとソフトウェアを広い用語でクレームしており、どちらの特許も、視聴覚情報を記憶し検索するビデオ・プレーヤーを使う、類似のコンピューター制御のセルフサービス・ターミナルを説明している。たとえば、「前記の記憶および伝送手段のための手段」に関しては、Lockwoodの専門家は、「この手段に対応する第’359号特許で説明される構造は、プロセッサー・ユニットと、プロセッサーが実行するアプリケーション・プログラムである」と主張する。しかし第’359号特許の唯一のソフトウェアの説明は、高レベルの機能フローチャートの模範例からなっている。したがってLockwoodの主張と彼の専門家の表明は根拠がない。彼らは、第’359号特許のどの構造が第’631号特許の開示からなくなっていると考えられるのか、指摘していない。以上に基づき我々は、Lockwoodと彼の専門家の供述は、重大な事実についての真の争点を提起することによってAmericanの申立てに適切に答えなかったという点で地方裁判所に同意し、したがって、第’359号特許の主張されているクレームは法律問題として自明であるとの地方裁判所の判断は適切であると、我々は結論づける。

Lockwoodはまた、地方裁判所は、第’355号特許は第’359号特許から予測されるとして無効であると判断した点で誤りを犯したと主張する。第’359号特許は1986年に、結局第’359号特許として発行された一連の 5つの出願の最初の出願に基づき発行された。第’359号特許は、結局第’355号特許の中でクレームされた発明を開示していることは争われていない。第三、第四、第五の出願は第’359号特許が発行されてから一年以上後で提出されたので、第’355号特許の有効性は、第二の出願の提出日をその提出日とできるかに依存する。その関係する主題は明らかに、最初の出願の利益を受ける権利がある。

35 U.S.C. §120に基づき、早期の出願の提出日の利益を得るためには、最初の出願を含む一連の出願のそれぞれが、35 U.S.C. §112の書面での説明という要件を満たさなければならない。In re Hogan 559 F.2d 595, 609, 194 USPQ 527, 540 (CCPA 1977)。地方裁判所は、後の三つの出願のうちの二つは開示の連続性を維持していないと判断し、第’355号特許は、必要な早期提出日を提出日とする権利をもたないと結論づけた。

Lockwoodは、地方裁判所は出願自体のみを見たという点で誤りを犯したと主張する。我々はそれに同意しない。問題なのは出願の開示である。提出日についての資格は、開示されていないが、明示的に開示されたもの以上に自明である主題には拡張されない。開示されたものにのみ拡張される。開示の中の用語、熟語あるいは図の意味は、その技術に熟練した人の立場から説明または解釈されるべきだが、すべての限定が明細書に登場しなければならない。問題は、クレームされた発明が明細書に開示されたものの自明な変形であるか否かではない。むしろ、先行する出願自体が発明を説明してなければならず、しかも、主張する提出日の時点でクレームされた発明を発明者が発明していたことを、その技術に熟練した人が明確に結論づけられるほど充分に詳しく説明することである。Martin対Mayer判決、823 F.2d 500, 504, 3 USPQ2d 1333, 1337 (Fed.Cir.1987)(「当該技術に熟練した人が、開示の説明に基づき特許権者の装置を製作できるかが問題ではなく、・・むしろ、その出願がその特定の装置を開示しているかが問題である」と述べている)(Jepson対Coleman判決、314 F.2d 533, 536, 136 USPQ 647, 649-50 (CCPA 1963))参照。Lockwoodは、説明要件を満たすのに必要なものは、発明を「所有している」ことを示すことのみであると主張する。Lockwoodは正確に基準を述べている、Vas-Cath Inc.対Mahurkar判決、935 F.2d 1555, 1563-64, 19 USPQ2d 1111, 1117 (Fed.Cir.1991) 参照。しかし彼は、それがどのように満たされるのか述べていない。発明を、クレームされる限定すべてとともに説明することによって発明を「所有している」ことを示すのである。それを自明にするものの説明ではない。同上(「出願者は、当該技術に熟練した人に、主張される提出日時点で、自分が発明を所有していることを伝達しなければならない。「書面説明」調査の目的においては、発明とはその時点でクレームされているものである)(強調原文)。人はそれを、言葉、構造、図、グラフ、公式など、クレームする発明を充分に説明する手段でそれを行う。この通りの言葉で正確な用語が使われる必要はない。Eiselstein対Frank判決、52F.3d 1035, 1038, USPQ2d 1467, 1470 (Fed.Cir.1995)(「先行する出願はクレームされる主題を、当該クレームで使われているものと正確に同一の用語で説明している必要ない・・・」)参照。しかし明細書は、クレームされる主題の等価の説明を含んでいなければならない。早期の提出日を主張している発明を自明にする説明では充分ではない。

Lockwoodはさらに、彼の専門家の供述は、中間の出願が当該技術に熟練した人に何を開示したかという問題に関して、重大な事実についての真の草原を提起するのに充分であったと主張する。しかしAmericanが主張したように、中間の一つの出願は複数の業者に接続したコンピューター・システムを開示しておらず、別の中間の出願はビデオ・プレーヤーをもつ中央コンピューターを開示しているが、ビデオ・プレーヤーまたはその他の同等の記憶手段を含む独自の販売促進用装置を開示していない。Lockwoodの専門家は、前者の出願で開示されたターミナルは複数の業者に「接続でき」、また、後者の出願は「消費者の家庭でのテレビやキーボードの使用を議論した」のみであるが、「Lockwoodはビデオ・プレーヤーを含むターミナルの使用も」思い描いていたことは、この技術に熟練した人にとって明らかであると主張した。これはLockwoodの問題を解決しない。Lockwoodは明細書で開示されたものと異なる発明をクレームした。§112の書面説明要件の目的においては、発明が当該技術の知識と組み合わされたとき、発明者が思い描いたが開示しなかった修正に関して推測させるというのは、充分ではない。一連の出願の中の各出願が、クレームされた特徴を説明していなければならない。中間の出願の一つがビデオ・プレーヤーを含む個別のターミナルを説明していないことは、争われていない。したがってLockwoodの専門家による供述は、重大な事実についての真の争点を提起しない。地方裁判所は、第’355号特許は第’359号特許によって予測されたので無効であると、正しく判断した。

B.    侵害

特許のクレームが侵害されたか否かを判断するには、二段階の分析が要求される。「第一に、クレームが、その範囲と意味を決定するために適切に解釈されなければならない。第二に、その適切に解釈されたクレームが、告発された装置または工程と比較されなければならない。」Carroll Touch Inc.対Electro Mechanical Sys.,Inc.判決、15 F.3d 1573, 1576, 27 USPQ2d 1836, 1839 (Fed.Cir.1993)。クレームの解釈は本裁判所が決定すべきものである。Markman 対Westview Instruments, Inc.判決、116 S.Ct. 1384, 38 USPQ2d 1461, 1463 (1996)(「我々は、クレーム内の技術用語を含む特許の解釈は、排他的に本裁判所の管轄内にあると判断する」)。クレームの解釈においては、本裁判所はクレーム、明細書、審理手続き経過、および必要ならば外部証拠を検討する。Vitronics Corp.対Conceptronic, Inc.判決、90 F.3d 1576, 1582, 39 USPQ2d 1573, 1576 (Fed.Cir.1996)。告発された装置への適切に解釈されたクレームの適用は、事実問題である。

Lockwoodは、地方裁判所が言及した第’115号特許のクレームの四つの構成要素すべての解釈を、地方裁判所は誤ったと主張する。第一にLockwoodは、適切に解釈すれば、「自己完結」という用語は、「装置がそれ自体で機能するのに必要な材料を含む装置または構成部分の集合」を意味し、「容易に運搬される」という表現は、開示されたものに近い大きさおよび重量をもつ構成部分の集合を含むと論じる。

Americanは、これらのLockwoodの解釈は、特許標章局(PTO)での彼の解釈とまったく一致しないと主張する。我々はそれに同意する。「容易に運搬される大きさの、自己完結した装置」という限定は、合衆国特許第3,705,384号で開示された取引用コンピューター・システムを鑑みると自明であるとしてPTOがLockwoodのクレームを拒絶した後で加えられた。この拒絶に応えてLockwoodは、部屋を埋める複数のキャビネットからなる従来技術のシステムから区別して、「一方、出願者の装置は、場所から場所へ移動可能な独立し自己完結したユニット」であると述べた。特許の審理手続き中、Lockwoodは自分の装置を、「独立して機能する」能力ではなくそのコンパクトな大きさによって従来技術から区別した。実際、Lockwoodが今提示する「自己完結」という言葉の解釈は、従来技術の特許も独立に作動できるシステムを開示しているので、彼の発明を従来技術から区別するのには不十分である。Lockwoodは、この以前の表明と合致しない解釈を主張することはできない。「クレームは、その承認を得る際と侵害者を告発する際に、異なった解釈をしてはならない。」Southwall Techs., Inc.対Cardinal IG Co.判決、54 F.3d 1570, 1576, 34 USPQ2d 1673, 1677 (Fed.Cir.) 裁量上訴棄却、116 S.Ct.515 (1995);Unique Concepts, Inc.対Brown判決、939 F.2d 1558, 1562, 19 USPQ2d 1500, 1504 (Fed.Cir.1991) 参照

第二に、Lockwoodは、「視聴覚」という用語は、ビデオによるプレゼンテーションか音声によるプレゼンテーションのいずれかを指すが、必ずしもその双方同時ではないと主張する。我々は同意しない。第’115号特許の明細書は、ユニットは旅行のドキュメンタリーを表示し、「高品質の視聴覚的紀行は、実質的に人間のすべての感覚を利用して顧客に動機と影響を与えることができる」と述べている。審理手続き中、Lockwoodは次のように主張した:

ある種の英数字のデータは、スケジュールを表示する空港のターミナルにあるもののような[従来技術の]形式で提示されるが、これらは、実際に簡潔な紀行やその他の映画水準の視聴覚的プレゼンテーションを提示する出願者の装置とは区別されるべきである。

Lockwoodは、開示されたターミナルは音声を発しない初期選択メニューを表示するが、このメニューは「視聴覚的」プレゼンテーションとしては言及されていない。むしろ、選択メニューは単に、「視聴覚的」プレゼンテーションを選ぶために使われる方法である。クレーム、明細書および審理手続き経過を検討し我々は、この用語は音声と映像双方を利用する装置を要求するとの地方裁判所の解釈は正しいと結論づける。SABREビジョン・システムが音声プレゼンテーションを利用できないことは争われていない。

第三に、Lockwoodは、「顧客」という用語は「取引の相手となる人」を意味すると解釈されるべきであり、したがってAmericanの「顧客」はSABREビジョンを利用する旅行代理店であると主張する。Americanは、特許自体が明示的に「顧客」の定義から旅行代理店を排除していると反論する。我々はそれに同意する。明細書は、発明の目的は、顧客が旅行関連の商品やサービスを直接購入できるように、旅行代理店の代わりをすることであると述べている。つまり、「通常、旅行代理店が処理するサービスの勧誘や販売を、完全に自動化された形で、しかも容易にアクセスできる場所で行うことのできる新装置」である。特許の明細書における「顧客」という用語の使用法から、告発された装置はこの本質的な限定を欠いていることは明らかである。SABREビジョンは、商品やサービスを購入する顧客によっては使用されず、そのように設計されてもいない。Lockwoodは、SABREビジョンは操作に経験を必要とするコマンド構造を使っているというAmericanの主張を真に争ってはおらず、SABREビジョンが旅行関連の商品およびサービスの消費者によるセルフサービスの操作に適しているとも主張していない。

最後に、Lockwoodは、SABREビジョンは、クレームされた「支払いを受けるための手段」に関係する開示された構造に等価なものをもっているか否かということに関して、事実についての真の争点が提起されたと主張する。SABREビジョンでは、旅行代理店がキーボードを通してクレジットカードの情報を打ち込むが、特許で開示された磁気カード読み取り機を含んでいない。Americanは、法律問題として、手作業を必要とするキーボードはカード読み取り機と等価ではないと主張する。Lockwoodは、カード読み取り機も手作業を必要とすると答える。ユーザーはカードを読み取り機に通さなければならない。SABREビジョンのキーボードが明細書で開示されたカード読み取り機に構造的に等価だと論じられたとしても、我々は、これが重大な事実についての真の争点を提起するかという点では同意しない。我々はすでに、少なくともクレーム11の三つの限定が告発された装置には含まれていないと地方裁判所は正しく結論づけたと判断した。それ以上の限定の存在または欠如に関するいかなる誤りも無害である。したがってそれらの限定に関する論争は重大ではない。したがって我々は、法律問題としてSABREビジョンがクレーム11を厳密に侵害はしなかったと判断した点で地方裁判所は誤りを犯さなかったと結論づける。

Lockwoodはまた、略式判決で等価物の法理に基づく侵害はなかったと結論づけた点で地方裁判所は誤りを犯したと主張する。Lockwoodはまず、地方裁判所はこの法理を適用する前にエクイティ上の制限を誤って課したと主張する。原裁判所はエクイティ上の要因に関するその表明にも関わらず、この法理を適用した。Hebert対Lisle Corp.判決、99 F.3d 1109, 1117, 40 USPQ2d 1611, 1616 (Fed.Cir.1996)(「Hilton Davis, 62F.3d, 1521, 35 USPQ2d, 1647-48,技術的等価物による侵害は厳格な侵害と同様、エクイティ上の制限をもたない」)参照。この誤りは無害である。審理手続きを分析した後、地方裁判所は、審理手続き経過の禁反言が等価物の法理に基づく侵害の認定を排除すると正しく結論づけた。

審理手続き経過の禁反言は、侵害訴訟において特許権者が、クレームの承認を得るために手続き中に放棄した内容に対する保護を得ることを排除している。Zenith Lab., Inc.対Bristol-Myers Squibb Co.判決、19 F.3d 1418, 1424, 30 USPQ2d 1285, 1290 (Fed.Cir.1994)。「審理手続き経過の禁反言が、等価物の法理に基づき侵害に対する制限として提起されたときは、『何が放棄されたかばかりでなく、その放棄の理由も精査しなければならない』」Insta-Foam Prods.,Inc.対Universal Foam Sys.,Inc.判決、906 F.2d 698, 703, 15 USPQ2d 1295, 1298 (Fed.Cir.1990)(Bayer Aktiengesellschaft 対Duphar Int’l Research B.V.判決、738 F.2d 1237, 1243, 222USPQ 649, 653 (Fed.Cir.1984))より引用。

審理中にLockwoodは、従来技術に関する拒絶に応えて、「視聴覚的手段」を強調した。地方裁判所が指摘したように、Lockwoodは、英数字のディスプレーを使った他の従来技術の特許を、「音声、または視聴覚的手段によって商品またはサービスの販売を促進する手段をもっていない」と述べて、自分の発明から区別した。Lockwoodは英数字のディスプレーとグラフィック・ディスプレーとを区別しなかった。むしろ彼は、純粋に視覚的なディスプレーと、音声も含んでいるものとを区別した。したがってLockwoodは、音声によるプレゼンテーションも視聴覚的なプレゼンテーションもしないSABREビジョンのディスプレーが、彼の視聴覚的手段と等価だと主張することから、禁反言により阻止される。

Lockwoodは、第’359号特許における「顧客」および「視聴覚的」という用語の地方裁判所の解釈に異議を唱えるのに同様の議論を使う。我々は、これらの議論も説得力がないと認定する。第’359号特許のクレームは、視聴覚的手段が「選択された前記の記憶された一連の情報を顧客に伝送する」ための手段からなり、記憶された情報は「一連の視聴覚的情報」であると明示的に述べている。明らかに、クレームは、映像と音声の情報双方が顧客に提示されることを要求している。

さらに第’359号特許の明細書は、発明の目的は「公衆が遠方にあるターミナルを利用してセルフサービスでサービスを受ける」ことを可能にすることだと述べている。もう一つの発明の目的は、サービスを、「用意されている音声、画像および合成されたデータから視聴覚的装置によって生成された、人工的な代理店との面談のシミュレーションという手段によって」提供することである。ターミナルは、「保険の見積りをするのに必要な情報を顧客から視聴覚的に引き出す」ようにプログラムされており、「会社が一対一で多数の質問を処理するために多くの販売担当者を用意する必要がないので」時間と金銭を節約することができる。「明細書にしばしば存在するような好ましい実施例の引用は、クレームの限定ではないが」、Laitram Corp.対Cambridge Wire Cloth Co.判決、863 F.2d 855, 865, 9 USPQ2d 1289, 1299 (Fed.Cir.1988)、「我々はクレームを解釈するのに、補助として明細書を見る」。Carrol Touch, Inc.対Electro Mechanical Sys., Inc.判決、15 F.3d 1573, 1577, 27 USPQ2d 1836, 1840 (Fed.Cir.1993)。第’115号特許に関しては、この明細書は明らかに、「顧客」という用語がサービスの購入者を指しており、発明がその代わりになろうとしている販売代理店を除外している。したがって地方裁判所は、SABREビジョンは第’359号特許を侵害していないと法律問題として正しく判断した。

同様に地方裁判所は、審理手続き経過の禁反言が、等価物の法理に基づく侵害の認定を排除すると正しく結論づけた。審理中Lockwoodは、「このシステムは、従来技術で知られているような、中央コンピューターにリンクされたセルフサービスの販売センターではなく、顧客から必要な情報を引き出す点で販売員に取って代るものである」(強調追加)と述べて、明示的に従来技術と区別している。Lockwoodは、この表明は従来技術に基づく拒絶に応えてなされたものなので、禁反言は存在しないと主張する。我々はそれに同意しない。Lockwoodはこの表明を、第’359号特許のどのクレームも承認されていない時点で行った。従来技術のセルフサービス販売センターが販売員を使っており、Lockwoodは彼の発明を、顧客情報の収集のために販売員を必要としないという根拠で区別した。原裁判所は適切に、Lockwoodは彼の発明と従来技術のこの区別をすることによって、対象を限定したと判断した。Ekchian 対Home Depot, Inc.判決、104 F.3d 1299, 1304, 41 USPQ2d 1364, 1368 (Fed.Cir.1997)(「クレームする発明を従来技術に対して区別することによって、出願者はクレームが何を対象としないかを示しており、暗黙にそれに対する保護を放棄している」)参照。したがってLockwoodは、顧客情報を得るのに旅行代理店を必要とするSABREビジョンが、クレームされた「顧客操作入力手段」に等価であると主張することから、禁反言に基づき阻止される。

Lockwoodはまた、SABREビジョンは、第’355号特許でクレームされているような「独自の販売プレゼンテーションを構成し表示するための手段」と「選択的に組合せるための手段」を含む、「自動化された販売促進装置」に欠けているという地方裁判所の結論に異議を唱える。Lockwoodは、彼の専門家の宣誓供述書は、SABREビジョンの構造と第’355号特許の明細書で開示された構造の間の等価性を示すことによって、重大な事実についての真の争点を提起したと主張する。Lockwoodは、旅行代理店がSABREビジョンを操作するとき、生成されたリストから手作業で選択して写真を一枚ずつ見なければならないということは、争っていない。このタイプの操作は、クレームの文字通りの意味での販売用プレゼンテーションを「構成」しないと原裁判所は判断した。SABREビジョンの機能性は争われていない。SABREビジョンは適切に解釈されたクレームが要求する機能を行わない。たとえば、クレームの意味内での「独自の販売用プレゼンテーション」を「構成」しない。したがって、告発された装置の構造と特許で開示された構造を比較する必要性は存在しない。Valmont Indus., Inc.対Reinke Mfg. Co.判決、983 F.2d 1039, 1042, 25 USPQ2d 1451, 1454 (Fed.Cir.1993)(「告発された装置は・・クレームで記された機能と同一の機能を実行しなければならない」)。したがって等価物の法理についての争点は提起されていないので、地方裁判所は、SABREビジョンは第’355号特許のクレームを侵害していないと、法律問題として正しく判断した。

結論

地方裁判所は、第’359号特許は自明なので無効であり、第’355号特許は第’359号特許によって予測されるので無効であると正しく結論づけた。さらに地方裁判所は、重大な事実についての争点に関して真の争いはないと正しく結論づけ、American AirlinesのSABREビジョン予約システムは、法律問題として訴訟対象のいずれの特許も侵害していないと正しく結論づけた。したがって、American Airlinesを勝訴とした地方裁判所の判決は維持される。

控訴棄却