原告−被控訴人: STATE STREET BANK & TRUST CO.

被告−控訴人: SIGNATURE FINACIAL GROUP, INC.

96-1327
連邦巡回控訴裁判所
1998 U.S. App. LEXIS 16869
1998年7月23日決定

事前の経過:[*1]マサチューセッツ州連邦地方裁判所Patti B.Saris判事の判決に対する控訴

措置: 破棄差戻し

主要用語: 主題、数学的、特許、アルゴリズム、発明、機械、特許性のある、特許性のない、計算、ポートフォリオ、公式、ビジネスを行う、新規性、有体の、生産、抽象的アイデア、構造、記載された、具体的な、サマリジャッジメント、処理、計算する、特許性、算術的、パートナーシップ、無効な、金融サービス、構成された、組成物、データ処理。

原告−被控訴人側弁護士: Wiliam L. Patton、Ropes & Gray法律事務所、ボストン、マサチューセッツ州。控訴趣意書協力者James L. SigalおよびJames S. DeGraw。同前、Maurice E. Gauthier、Samuels, Gauthier, Stevens & Reppert法律事務所。

被告−控訴人側弁護士: Steven L. Friedman、Dilworth, Paxson, Kalish & Kauffman LLP法律事務所、フィラデルフィア、ペンシルベニア州。控訴趣意書協力者、Steven J. Henry、Wolf, Greenfield & Sacks, P.C.法律事務所、ボストン、マサチューセッツ州。Philip G. Koenig、Pittas Koenig法律事務所、ウィンチェスター、マサチューセッツ州。

法廷助言者Information Technology Industry Councilの弁護士、William T. Ellis、Foley & Lardner法律事務所、ワシントンD.C.。控訴趣意書協力者Harold C. Wegner、 Richard L.SchwaabおよびMary Michelle Kile。助言者John F. Cooney、Venable, Baetjer, Howard & Civiletti, LLP法律事務所。

法廷助言者Mastercard International Serviceの弁護士、Robert C. Scheinfeld、Baker & Botts, L.L.P.法律事務所、ニューヨーク、ニューヨーク州。控訴趣意書協力者Lawrence T. Kass。法廷助言者VISA International Service。Associationの控訴趣意書における助言者Laurie[*2]S. Hane、Donald S. ChisumおよびAlan L. Durham、Morrison & Foerster LLP法律事務所、パロ・アルト、カリフォルニア州。

判事: RICH、PLAGERおよびBRYSON、巡回判事

意見執筆者: RICH判事

意見:

RICH巡回判事

Signature Financial Group, Inc.(「Signature」)は、クレームされた主題がU.S.C. @ 101(1994)の範囲に含まれないという根拠で米国特許第5,193,056号(第 '056号特許)を無効とし、State Street Bank & Trust Co.(「State Street」)の請求を認めたマサチューセッツ州連邦地方裁判所のサマリジャッジメントを控訴する。State Street Bank & Trust Co. v. Signature Financial Group, Inc., 927 F. Supp. 502, U.S.P.Q.2D(BNA)1530(マサチューセッツ、1996)参照。本法廷は、特許のクレームは法定の主題に該当すると結論付け、原判決を破棄し差し戻す。

背景

Signatureは、「ハブとスポーク金融サービス構造のためのデータ処理システム」という表題の特許第 '056号の特許権者である。第 '056号特許はSignatureに1993年3月9日に付与され、R. Todd Boesをその発明者としている。第 '056号特許は全体として、ミューチュアル・ファンドの管理者および会計代理人としてのSignatureのビジネスで使用するために開発された[*3]投資構造を実施するためのデータ処理システム(「システム」)を対象としている。簡単に言えば、所有権のある名称「ハブとスポークÒ」によって特定されるこのシステムは、パートナーシップとして組織された投資ポートフォリオ(ハブ)にミューチュアル・ファンド(スポークス)がその資産をプールするという構造を可能にする。この投資構造はミューチュアル・ファンドの管理者に、投資管理における経済的スケール・メリットと、パートナーシップの税法上のメリットの有利な組み合わせを実現する。

State StreetとSignatureはどちらも、複層的なパートナーシップ・ファンド金融サービスの管理者および会計代理人として行動するというビジネスを行っている。State StreetはSignatureと、その第 '056号特許で説明されクレームされている、特許対象のデータ処理システムを使用する許諾を求めて交渉した。交渉が決裂したとき、State Streetはマサチューセッツ州地方裁判所に、無効性、実施不可能性、および非侵害の確認判決を求める訴訟を提起し、特許は法101条の法定主題をクレームしていないので無効であるとの部分的サマリジャッジメントを求める申し立てをした。この申し立てが認められたため、今回の控訴に至った。

議論

控訴において本法廷は[*4]、地方裁判所によるサマリジャッジメント付与の尊重は強いられるものではないが、サマリジャッジメントの基準が満たされたという独立した判断を行わなければならない。Vas-Cath, Inc. v. Mahurkar, 935 F.2d 1555, 1560, 19 U.S.P.Q.2D(BNA)1111, 1114(連邦巡回1991)。重大な事実に関する真正な争点がなく、申し立てた側の当事者が法律問題としてサマリジャッジメントを受ける資格がある場合に、サマリジャッジメントは適切に付与されたことになる。連邦民事訴訟規則56 (c)。法101条の法定主題をクレームしていないので、第'056号特許が無効であるか否かという本件における実質的な争点は、クレーム解釈と法律解釈の双方の問題である。「本法廷は、クレーム解釈に関する、事実に基づく問題とされるものを含め、クレーム解釈を新たに検討する。」Cybor Corp. v. FAS Techs., 138 F.3d 1448, 1451, 46 U.S.P.Q.2D(BNA)1169, 1174(連邦巡回、1998)(大法廷)。本法廷は、特許のクレームは法定の主題[*5]に該当するので、確認判決の原告State Streetは、法律問題として法101条の下で第 '056号特許を無効とするサマリジャッジメントを受ける資格はなかったと判断する。

法定主題の問題に関する以下の事実は、争われていないかあるいはSignature側が主張したバージョンである。Anderson v. Liberty Lobby, Inc., 477 U.S. 242, 255, 91 L. Ed. 2d 202, 106 S. Ct. 2505(1986)参照。この特許における発明は、全体として、管理者が金融情報の流れを監視し記録し、パートナー・ファンド金融サービス構造を維持するために必要な計算をすべて行うことができるシステムを説明している。すでに言及したように、パートナー・ファンド金融サービス構造は、基本的に、複数のミューチュアル・ファンドつまり「スポーク」が、その投資資金を単一のポートフォリオつまり「ハブ」にプールすることを可能にし、特に資金の管理費用の統合とパートナーシップの税法上の利点を提供する。特にこのシステムは、複数のスポークに対して、同じハブに投資された資産の毎日の配分を行う手段を提供する。このシステムは、ハブの投資有価証券の価値と各スポーク資産の付随額の毎日の変化を考慮して、各スポークがハブに維持している出資比率を決定する。

毎日の変化の[*6]決定においてシステムは、帳簿資本金額という概念に基づき毎日の総投資額を計算し、ハブの毎日の収入、経費、および純実現および非実現利益または損失の、スポーク間での配分を可能にする。これにより、各スポークの真の資産価値の決定、そしてスポーク間での配分比率の正確な計算が可能になる。このシステムはさらに、ハブや各スポークに対して毎日決定されたすべての関連データを追跡するので、ハブの会計上、税法上の目的のため、そして結果として公開で取引されている各スポークのために、年末の総収入、経費、資産売却差益あるいは差損を、決定することができる。

これらの計算が素早く正確に行われるということが最も重要である。各スポークは公衆に株を販売し、その株価はポートフォリオ内でのスポークの持分比に大きく影響されるので、このことは非常に重要である。ある場合にはミューチュアル・ファンドの管理者は、市場が終了してから一時間半以内に、株価を1ペニーまで計算することを要求される。計算の複雑さを考えると、この作業遂行のためには事実上[*7]、コンピューターまたはそれと同等の装置が欠かせない。

第 '056号特許は1991年3月11日に出願された。それは当初、ミーンス゜・プラス・ファンクション項目を組み入れた6つの「機械(machine)」クレームと、6つの方法(method)クレームを含んでいた。Signatureによれば、審査の過程で審査官は、法定主題をクレームしていないということで、法101条に基づき拒絶しようとした。しかし応答において6つの方法クレームが削除され、審査官は、現在の残りの6つのクレームに対して特許許可通知書を発行した。クレーム1のみが独立クレームである。

地方裁判所はその分析を、クレームはプロセス(process)に向けられており、各「手段(means)」項目は単にそのプロセスの各ステップ(step)を表現していると解釈した所から始めた。しかし「手段」項目をもつ「機械」クレームは、文書での説明の中に、クレームされた「手段」要素に対応する具体的構造がなければ、合理的に考えて、プロセス・クレームとしてしかみなされない。In re Alappat, 33 F.3d 1526, 1540-41, 31 U.S.P.Q.2D(BNA)1545, 1554(連邦巡回、1994)(大法廷)参照。これは、本件には該当しない。

独立クレーム1が法112条P 6に基づき適切に解釈されれば、以下で代表的クレーム1の[*8]説明に示すように、それは機械に、つまり文書での説明がクレームで説明されているそれぞれの「手段」に対応して開示する構造を述べている、角括弧内の主題を対象としている。

1.    パートナーシップとして設立されたポートフォリオの金融サービス構造を管理するためのデータ処理システムであって、各パートナーは複数のファンドの一つであり、

(a)   データを処理するためのコンピューター・プロセッサー手段[CPUを含むパーソナル・コンピューター]と

(b)   記憶媒体にデータを記憶するための記憶手段[データのディスク]と、

(c)   記憶媒体を初期化するための第1の手段[選択されたデータを磁気的に記憶するためのデータ用ディスクを準備するように構成された演算論理回路]と、

(d)   ポートフォリオ内の各ファンドおよび前日からの資産に関するデータ、そして各ファンドの増減、[ファンドの]資産に関するデータを処理するための、ならびに、各ファンドがポートフォリオ内にもつシェア率を割り振るための、第2の手段[特定のファイルから情報を検索し、特定の入力に基づき増減を計算し、百分率で結果を割り振り、別のファイルに出力を記憶するように構成された演算論理回路][*9]と、

(e)   ポートフォリオの毎日の配当、経費および純実現利益または純実現損失に関するデータを処理し、各ファンド間にそのデータを割り振るための第3の手段[特定のファイルから情報を検索し、特定の入力に基づき増減を計算し、結果を百分率で割り振り、別のファイルに出力を記憶するように構成された演算論理回路]と、

(f)   ポートフォリオの毎日の純未実現利益または純未実現損失に関するデータを処理し、各ファンド間にそのデータを割り振るための第4の手段[特定のファイルから情報を検索し、特定の入力に基づき増減を計算し、結果を百分率で割り振り、別のファイルに出力を記憶するように構成された演算論理回路]と、

(g)   ポートフォリオと各ファンドの年末の総配当、経費および資本売却差益または資本売却差損に関するデータを処理するための第5の手段[特定のファイルから情報を検索し、その情報を合計ベースで計算し、別のファイルに出力を記録するように構成された演算論理回路]と

を備えるシステム。

「手段」プラス機能として[*10]説明されている各クレームの構成要素は、もちろん、法112条P 6に基づき、明細書の文書による説明部分で開示された構造の「均等物(equivalents)」も含むと読まれるべきである。したがってクレーム1は適切に解釈されれば、機械、つまり、パートナーシップとして設立されたポートフォリオの金融サービス構造を管理するデータ処理システムをクレームしている。そしてその機械は、少なくとも、文書で説明で開示された、そしてクレームで説明された (a) から (g) までのミーンス゜・プラス・ファンクション要素に対応する特定の構造から構成される。「機械」は法101条の適切な法定主題である。法101条の分析の目的では、クレーム1が「機械」に向けられているか「プロセス」に向けられているかは、少なくとも、4つの列挙された特許性のある主題のカテゴリーのいずれかに該当する限り、ほとんど関係ないことを、本法廷は指摘する。「機械」も「プロセス」も4つのカテゴリーに含まれる。

しかし、このことは本法廷の分析を終わらせない。地方裁判所は、クレームされた主題は、法定主題に対する判例法上の2つの例外ルールの1つに該当すると結論付けたからである。1 地方裁判所は、第一の例外ルールは「数学的アルゴリズム」[*11]、第二の例外は「ビジネス方法」であると述べている。101条によれば、

いかなる新規で有用なプロセス・機械・製造物・組成物、あるいはいかなる新規で有用なそれらの改良を発明または発見した者も、この編の条件および要件を満たす限り、特許を取得することができる。

法101条の平明で明確な意味は、法定の主題に対して記されている4つのカテゴリーのいずれかに入る発明は、第35編に記されている、つまり102条、103条および112条 P2に見られる特許性に対する他の要件を満たす限り、特許されるということである。2

[*12]

法101条に拡張用語である「いかなる(any)」が繰り返して使われていることは、議会の意図が、特許が取得できる主題に、法101条に具体的に記されているもの以外の制限を置かないことであったことを示す。実際、最高裁判所は、議会は法101条を、「人間が作る、この世のすべてのもの」に拡大することを意図したと認めた。Diamond v. Chakrabarty, 447 U.S. 303, 309, 65 L.Ed.2d 144,100 S.Ct.2204(1980)、Diamond v. Diehr, 450 U.S.175, 182, 67 L. Ed. 2d 155, 101 S. Ct. 1048(1981)も参照。3 つまり、審議経過は、議会がかかる制限を意図しなかったことを明確に示しているので、法101条に、特許されうる主題への制限を読み取ることは不適切である。Chakrabarty, 447 U.S. at 308(「裁判所は、立法が表明していない制限や条件を特許法の中から読み取るべきではないと、本法廷はすでに警告した」(引用省略))参照。

[*13]

「数学的アルゴリズム」の例外

最高裁判所は、「自然法則、自然現象および抽象的アイデア」という、特許性のない主題の3つのカテゴリーを特定した。本件において特に関係するのは、最高裁が、数学的アルゴリズムはそれが単なる抽象的アイデアである限り特許性のある法定の主題とはならないと判断したことである。Diehr, 450 U.S. 175, 67 L. Ed. 2d 155, 101 S. Ct. 1048、passim; Parker v. Flook, 437 U.S. 584, 57 L. Ed. 2d 451, 98 S. Ct. 2522(1978)、Gottschalk v. Benson, 409 U.S. 63, 34 L. Ed. 2d 273, 93 S. Ct. 253(1972)参照。Diehr判決で最高裁は、ある種の数学的主題は、それだけでは、何らかの実際的な応用、つまり「有用で具体的で有体な結果」への適用がなされるまでは、抽象的アイデアに過ぎないと述べた。Alappat, 33 F.3d at 1544, 31 U.S.P.Q.2D(BNA)at 1557。4

[*14]

特許性のない数学的アルゴリズムは、「有用」でない、分離した概念または真実を構成する単なる抽象的アイデアであることを示すことによって、識別可能である。具体的観点からはこのことは、特許性をもつためには、アルゴリズムは「有用な」形で適用されていなければならないことを意味する。Alappat事件において本法廷は、ラスタライザーのモニターに滑らかな波形を表示するために一連の数学的計算を通じて、機械によって変換されたデータは、滑らかな波形という「有用で具体的で有体な結果」を生み出すので、抽象的アイデア(数学的アルゴリズム、公式または計算)の実際的な適用例を構成すると判断した。

同様にArrhythmia Research Technology Inc. v. Corazonix Corp., 958 F.2d 1053, 22 U.S.P.Q.2D(BNA)1033(連邦巡回、1992)において本法廷は、一連の数学的計算を通しての、患者の心拍からの心電図信号の機械による変換は、患者の心臓の状態という有用で具体的で有体なものに対応するので、抽象的アイデア(数学的アルゴリズム、公式または計算)の実際的な適用例を構成すると判断した。

今日、本法廷は、一連の数学的計算を通しての、さまざまな金額を表わすデータの、最終株価への機械による変換は[*15]、記録および報告の目的のために時々刻々定められる、取締当局によっておよびその後の取引において受け入れられ信頼されさえする最終株価という「有用で具体的で有体な結果」を生み出すので、数学的アルゴリズム、公式または計算の実際的な適用例を構成すると判断する。

地方裁判所は、クレームされた主題が特許性のない抽象的アイデアであるか否かの判断に、Freeman-Walter-Abeleテストを適用したことで誤った。Freeman-Walter-Abeleテストは、税関・特許上訴裁判所が考えたもので、その後、Benson事件とFlook事件の後で、特許性のない数学的アルゴリズムを抽出し特定するために本法廷によって採用された。In re Freeman, 573 F.2d 1237, 197 U.S.P.Q.(BNA)464(CCPA 1978)参照。In re Walter, 618 F.2d 758, 205 U.S.P.Q.(BNA)397(CCPA 1980)により修正。したがってこのテストは明確に表現されている:

第一に、クレームが分析され、数学的アルゴリズムが直接的に、または間接的に説明されているかが判断される。次に、数学的アルゴリズムが発見されたら、クレーム全体がさらに分析され、そのアルゴリズムが、「物理的要素またはステップに何らかの態様で[*16]適用されているか」否かが判断される。そして適用されていれば、「法101条の下で適格となる」。In re Pardo, 684 F.2d 912, 214 U.S.P.Q.(BNA)673, 675-76(CCPA 1982)(In re Abele, 684 F.2d 902, 214 U.S.P.Q.(BNA)682(CCPA 1982)を引用)。5

Diehr判決とChakrabarty判決の後では、Freeman-Walter-Abeleテストは[*17]、法定の主題が存在するか否かの判断において、ほとんど適用性がない。本法廷がAlappat判決において指摘したように(Alappat, 33 F.3d at 1543, 31 U.S.P.Q.2D(BNA)at 1557)、テストの適用はミスリーディングとなりうる。自然法則、自然現象または抽象的アイデアは、それ自体では保護を受ける資格がないとしても、自然法則、自然現象または抽象的アイデアを利用したプロセス、機械、製造物または組成物は、特許性のある法定主題だからである。6 このテストは、たとえばアルゴリズムの存在を判断する。Benson判決の下では、これは、法定主題ではないとの十分な状況証拠になりうる。しかしDiehr判決とAlappat判決の後では、特許請求された発明自体が数字のインプット、数字の計算、数字のアウトプットおよび数字の記憶を含んでいるという事実だけでは、それを法定の主題でなくしはしない。もちろん、その操作が「有用で具体的で有体な結果」を生み出さない場合にはそうなるが。Alappat,33 F.3d at 1544, 31 U.S.P.Q.2D(BNA)at 1557。7 結局、本法廷が繰り返し述べてきたように、

段階的プロセスそれぞれは、それが電気的か化学的か機械的かにかかわらず、広い意味でのアルゴリズムを含む。[*18]法101条は明示的に、特許性のある発明の一つのカテゴリーとしてプロセスを含んでおり、法100条 (b) はさらに、「プロセス」という用語を、「プロセス、技術または方法を意味するものと定義し、知られているプロセス、機械、製作物、組成物または素材の新しい使用法を含めているので」、アルゴリズムを含んでいるまたはそれに向けられているからと言って、そのクレームが法定の主題に該当しないと判断する根拠はないことになる。これが、特許付与の禁止が数学的アルゴリズムに限られてきた理由である・・・。

In re Iwahashi, 888 F.2d 1370, 1374, 12 U.S.P.Q.2D(BNA)1908, 1911(連邦巡回、1989)(強調は原文)8。

クレームが法定の主題を含んでいるか否かの問題では、プロセス、機械、製作物または組成物という主題の4つのカテゴリーのうち、どれにクレームが向けられているかではなく、9 むしろ、主題の本質的性質、特にその実際の有用性に焦点を当てるべきである。[*20]法101条は、法定の主題は「新規性、進歩性および開示と通知の適切さ」を含む、第35編の他の「条件と要件」も満たさなければならないとも定めている。In re Warmerdam, 33 F.3d 1354, 1359, 31 U.S.P.Q.2D(BNA)1754,1757-58(連邦巡回、1994)参照。すでに指摘したように、現在の分析の目的上は、クレーム1はハブとスポークのソフトウェアのプログラムをもつ機械に向けられており、明らかに「有用、具体的で有体な結果」を生み出す。Alappat, 33 F.3d at 1544, 31 U.S.P.Q.2D(BNA)at 1557。したがってこのクレームは、その有用な結果が、価格、利益、比率、費用あるいは損失などの数字で表現されているとしても、法定の主題となる。

ビジネス方法の例外

法101条に基づき特許第 '056号を無効とする他の根拠として、地裁は判例法に基づき、いわゆる「ビジネス方法」という法定主題に対する例外ルールに依拠した。本法廷はこの機会に、この不適切な[*21]例外に別れを告げる。「ビジネス方法」の例外はその始めから、おそらく、法103条によって抹消された「発明に対する要件」から生じた、ある一般的な、しかし、もはや適用されない法的原則の適用を表現したものに過ぎなかった。1952年の特許法以来、ビジネス方法は、他のプロセスや方法に適用される特許性の法的要件と同じ要件に服するようになり、そうでなければならなくなった。10

[*22]

ビジネス方法の例外は、発明の特許性を否定するためには、本法廷によってもCCPAによっても使われたことはなかった。11 この例外の適用は常に、第35編のより明確な概念、あるいはより一般的には、数学的アルゴリズムの認定に基づく抽象的アイデアの例外の適用に基づく判定によって先行されてきた。In re Howard, 55 C.C.P.A.1121, 394 F.2d 869, 157 U.S.P.Q.(BNA)615(CCPA 1968)におけるCCPAの分析がわかりやすい。そこで同裁判所は、新規性の欠如を理由として審判部によるクレームの拒絶を維持し、ビジネスを行う方法は「内在的に特許性がない」という審判部の101条の根拠を適用することは不必要であると認定した。394 F.2d at 872, 157 U.S.P.Q.(BNA)at 615。12

[*23]

同様に、In re Schrader, 22 F.3d 290, 30 U.S.P.Q.2D(BNA)1455(連邦巡回、1994)は、ビジネス方法の例外に言及する一方で、クレームは黙示的に抽象的アイデアを数学的アルゴリズムという形で説明しており、「物理的活動または対象物を表わすまたは構成する主題の転換または変換」が存在しないという事実を指摘した。22 F.3d at 294, 30 U.S.P.Q.2D(BNA)at 1459(強調省略)。13

State Streetは、本法廷はMaucorps事件やMeyer事件を議論したときに、Alappat判決におけるビジネス方法の例外の有効性を認めたと主張する:

Maucorps事件では、セールスマンのそれぞれの顧客への最善の対応[*24]を決定するビジネス方法が扱われ、Meyer事件は、神経科医による患者の診断を助けるための「システム」が関係していた。明らかに、これらの件で「発明」とされたものは、いずれも法101条のどのカテゴリーにも該当しない。

Alappat, 33 F.3d at 1541, 31 U.S.P.Q.2D(BNA)at 1555。しかし、これらの事件をさらに詳しく検討すると、Maucorps事件やMeyer事件でクレームされた発明は、ビジネス方法の例外ではなく、数学的アルゴリズムの例外に基づく抽象的なアイデアであるとして拒絶されたことがわかる。In re Maucorps, 609 F.2d 481, 484, 203 U.S.P.Q.(BNA)812, 816(CCPA 1979)、In re Meyer, 688 F.2d 789, 796, 215 U.S.P.Q.(BNA)193, 199(CCPA 1982)参照。14

法定主題に対するビジネス方法の例外を確立したと頻繁に引用される事件である、Hotel Security Checking Co. v. Lorraine Co., 160 F. 467(第2巡回、1908)でさえも、特許を無効とするためにこの例外に依拠はしていない。[*25]15 この事件では、特許は、不適切な主題であるからではなく、新規性および「発明」の欠如によって無効と認定された。裁判所は、「このシステムの基本原則は、雇主の商品の料金を、それを取った代理人につけるという帳簿技術と同じだけの歴史がある」。同上at 469。「特許の出願時に、レストランにおいて何らの帳簿システムがなかったとすれば、現金登録と勘定の突き合せの新しい有用なシステムが、法律の下で特許されうるか否かという問題に直面したことになっただろう」。同上at 472。

[*26]

本件も例外ではない。地方裁判所は、幾つかの専門書に説明されているように、ビジネス方法の規則の述べたが、ビジネス方法の例外に基づき特許を無効と認定するその主たる理由として、次のように述べた:

Signatureの発明に特許性があるとすれば、ハブとスポーク構造を模倣した複層ファンディング構造を実施しようとする全ての金融機関は、そのようなプロジェクトを開始する前にSignatureの許可が要求されることになる。これは、特許第 '056号が、このタイプの金融構造を管理するために必要な、コンピューターによるほとんど全ての会計方法を含めるほど幅広くクレームされているからである。

927 F. Supp. 502, 516, 38 U.S.P.Q.2D(BNA)1530, 1542(強調追加)。特許のクレームが特許されるには広過ぎるか否かは、法101条ではなく、102条、103条および112条に基づき判断されるべきである。上記の表明が正しいとすれば、クレームされたものが法定主題であるか否かは問題とならない。

この背景を考えると、特許審査手続きマニュアル(MPEP)(1996)の最新版において[*27]パラグラフ706.03 (a) が削除されたことは、驚くべきことではない。それ以前のマニュアルには、次のように書かれていた。

ビジネスを行う方法は、プロセスまたは方法のカテゴリーに入るようには見えるが、法定の条項に該当しないとして拒絶することができる。Hotel Security Checking Co. v. Lorraine Co., 160 F.467(第2巡回、1908)およびIn re Wait, 24 U.S.P.Q.(BNA)88, 22 C.C.P.A. 822, 73 F.2d 982(1934)参照。

MPEP @ 706.03 (a)(1994)。この認識は、米国特許商標庁の1996年のコンピューター関連発明に対する審査ガイドラインで支持され、それによれば、

審査官はビジネスを行う方法に向けられたクレームを正しく取り扱うのに困難を感じてきた。クレームはビジネスを行う方法として分類されるべきではない。そうではなく、かかるクレームは他のプロセス・クレームと同様に扱われるべきである。

審査ガイドライン、61 Fed. Reg. 7478, 7479(1996)。これがまさに、このタイプのクレームを扱う方法であることに本法廷は同意する。クレームが法101条内の主題に向けられているか否かの判断は、クレームされている主題が「ビジネス」をするかその他の事をするかに依拠すべきではない。

結論

控訴された判決は破棄され、本件は、上記の意見と合致した[*28]さらなる手続きのために地方裁判所に差し戻される。

破棄差戻し



1     実際、本法廷はここではその判断はしないが、本法廷自身の先例が示唆するように、判例法による例外、すなわち抽象的アイデア、自然法則等々は、法定主題のすべてのカテゴリーに適用されるべきである。Alappat, 33 F.3d at 1542, 31 U.S.P.Q.2D(BNA)at 1556参照。In re Johnston, 502 F.2d 765, 183 U.S.P.Q.(BNA)172(CCPA 1974)(Rich判事、反対意見)も参照。

2     In re Bergy, 596 F.2d 952, 960, 201 U.S.P.Q.(BNA)352, 360(CCPA 1979)(強調および脚注省略)に、以下のように説明されている。

特許性への難しい道で最初に開けるべきドアは、法101条である。・・・そのドアに近づく者は発明者であり、それは、その発明に特許性があるか否かに関わらない。・・・しかし発明者であっても、あるいは発明をもっていても、最初のドアを開けられる保証はない。それはどのような種類の発明あるいは発見なのか。発明に特許性を与える定性的条件とは異なり、種類の問題を扱う際には、法101条は幅広く一般的である。その表現は、「いかなる・・・プロセス、機械、製造物または組成物、あるいはそのいかなる・・・改良」である。法100条 (b) は「プロセス」をさらに拡張し、「技術または方法、および・・・知られているプロセス、機械、製造物、組成物または素材の新規な使用法」を含めている。もし、発明者が(法112条第2パラグラフに基づき)そのクレームで定めた発明が、名をあげられたカテゴリーのいずれかに該当するならば、発明者は第二のドアに進むことが認められる。それは法102条であり、「新規性および特許権の喪失」がそのドアの標識である。法101条においてはその「新しい有用な」という用語にも関わらず、発明は新規性に関して審査されない。それは制定法上の方式でも、確立した手続きでもないからである。

3     1952年の法律に付随する委員会報告書は我々に、議会は法定の主題に、「人間が作ったこの世のすべてのものを含める」ことを意図していたことを教える。S. Rep. No. 82-1979 at 5(1952)、H.R. Rep. No. 82-1923 at 6(1952)。

4     これは、数学的アルゴリズムの例外として知られるようになった。この名称は特にFreeman-Walter-Abele分析と関連して、混乱を招いてきた。数学的アルゴリズムは、抽象的アイデアを表している限りにおいてのみ特許性がないことを頭に入れることによって、この混乱は改善されるかもしれない。

5     このテストは多くの混乱の元となってきた。In re Abele, 684 F.2d 902, 214 U.S.P.Q.(BNA)682(CCPA 1982)においてCCPAは、「アルゴリズム自体のみよりもかなり多くのものを含んでいるプロセスの文脈で、数学公式」を適用するクレームを認めた。同上at 909。つまり、CCPAは明らかに、アルゴリズムへの追加の重要性という補足的配慮を差し挟んだ。In re Taner, 681 F.2d 787, 214 U.S.P.Q.(BNA)678(CCPA 1982)においてはCCPAは、Freeman-Walter-Abeleテストの適用を放棄したようであったが、その後、このテストは特許性のない主題を発見するための唯一のテストではないと「明確に述べた」にとどまった。In re Meyer, 688 F.2d 789, 796, 215 U.S.P.Q.(BNA)193, 199(CCPA 1982)。

6     たとえば、Parker v. Flook, 437 U.S.584, 590, 57 L. Ed. 2d 451, 98 S. Ct. 2522(1978)(「プロセスは、自然法則あるいは数学的アルゴリズムを含んでいるからというだけで特許性を失うわけではない」);Funk Bros. Seed Co. v. Kalo Inoculant Co., 333 U.S. 127, 130, 92 L. Ed. 588, 68 S. Ct. 440(1948)(「それまで知られていなかった自然現象を発見した人は、その法則が与えるものに対して独占権を主張することはできない。そのような発見からの発明となるには、その法則の新しい有用な目的への適用から生じたものでなければならない」)、Mackay Radio & Tel. Co. v. Radio Corp. of Am., 306 U.S. 86, 94, 83 L. Ed. 506, 59 S. Ct. 427(1939)(「科学的真実あるいはその数学的表現は特許性のある発明ではないが、科学的真実についての知識を助けとして作られた新規で有用な構造はそうなりうる」)。

数学公式を含むクレームが、全体として考えたときに、特許法が保護することを意図している機能(たとえば、ある物の他の状態または物への変換または移行)を行う構造またはプロセスにおいて、その公式を実施または適用するとき、そのクレームは法101条の要件を満たす。

Diehr, 450 U.S. at 192、In re Iwahashi, 888 F.2d 1370, 1375 12 U.S.P.Q.2D(BNA)1908, 1911(連邦巡回1989)、Taner, 681 F.2d at 789, 214 U.S.P.Q.(BNA)at 680。決定的問題は、クレーム全体が法定の主題に該当するか否かである。クレームが、その一部として、それ自体は特許性のない主題を含んでいることは、問題にはならない。「そうでなければ法定の主題となるクレームは、数学公式、コンピューター・プログラムあるいはディジタル・コンピューターを使っているというだけで法定外とはならない。」Diehr, 450 U.S. at 187。[*19]

7     Diehr判決において最高裁が明示的に述べたように、Benson事件およびFlook事件におけるその判断は、抽象的アイデアおよび自然現象には特許性はないという「昔から確立している原則以上のものではない」。Diehr,450 U.S.at 185(Chakrabarty,447 U.S.at 309、およびFunk Bros.,333 U.S.at 130を引用)。

8     In re Pardo, 684 F.2d 912(CCPA 1982)においてCCPAは、「数学的アルゴリズム」を、与えられたデータによる公式の実行へと狭く限定した。同じ年、In re Meyer, 688 F.2d 789, 215 U.S.P.Q.(BNA)193(CCPA 1982)においてCCPAは、同じ用語を、数学的アルゴリズムによって表されうるすべての精神的プロセスを含むように解釈した。これはPTOが、その審査ガイドラインにおいて取っている立場でもある。61 Fed. Reg. 7478, 7483(1996)。

9     もちろん、主題は少なくとも、法定の主題のカテゴリーのいずれかに該当しなければならない。

10    Newman判事は以前、次のように述べた。

[ビジネス方法の例外]は、・・・法101条における法定主題の定義について、保証されていない負担であり、誤りを生じやすく、余分で時代遅れであるとして放棄すべきである。法101条の用語集から除かれたほうがよい。・・・「ビジネス方法」の事件はすべて、第35編のより明確な概念を使って決定できたはずである。特許性は、クレームされた方法が「ビジネス」を行うか他のものかには依拠せず、全体として見たときのその方法が、特許法の102条、103条および112条に記されている特許性の要件を満たすか否かで判断される。

In re Schrader, 22 F.3d 290, 298 30 U.S.P.Q.2D(BNA)1455, 1462(連邦巡回1994)(Newman判事、反対意見)。

11    Rinaldo Del Gallo, III、「ビジネスを行う方法」はとうとう、制定法による拒絶理由としてのビジネスから退くか、38 IDEA 403, 435(1998)参照。

12    Dann v. Johnston, 425 U.S. 219, 47 L. Ed. 2d 692, 96 S. Ct. 1393(1976)(最高裁は、コンピューター化された金融記帳システムに関する特許が法103条に基づき無効であるとの判断に鑑みて、法101条の主張について議論することを拒否した);In re Chatfield, 545 F.2d 152, 157, 191 U.S.P.Q.(BNA)730, 735(CCPA 1976)、Ex parte Murray, 9 U.S.P.Q.2D(BNA)1819, 1820(Bd. Pat. App. & Interf. 1988)(「クレームされた会計方法は、経費分析計算書の発行のために必要な予備的段階としての、支払いの記入、分類、借方記帳および合計以上のものは要求していない・・・」)は、法定の主題外であることではなく、自明性または新規性の欠如を根拠とした。

13    ビジネスを「行う」方法とそれを実施する手段の従来の区別は、すべて現代のビジネス・システムの複雑さの中で曖昧になっている。Paine, Webber, Jackson & Curtis v. Merill Lynch, 564 F. Supp. 1358, 218 U.S.P.Q.(BNA)212(D. Del 1983)(コンピューター化された現金管理システムは法定の主題であると判断されると認定)参照。

14    さらに、これらのケースはBenson事件時代のFreeman-Walter-Abeleテスト、つまりDiehr判決およびAlappat判決以前に存在した分析に服した。

15    Loew's Drive-In Theatres v. Park-In Theaters, 174 F.2d 547, 552(第1巡回1949)(取引ビジネスのシステムを実行する手段は、「発明の特権の行使」を欠くと判断)、In re Patton, 29 C.C.P.A. 982, 127 F.2d 324, 327-38(CCPA 1942)(記録の参照に関して、特許性のある主題を定めていないとして、クレームは無効であると認定)、Berardini v. Tocci, 190 F. 329, 332(C.C.S.D.N.Y. 1911)、In re Wait,22 C.C.P.A.822,73 F.2d 982,983(CCPA 1934)(「間違いなくこれらはこのタイプの取引すべてにおける必須の段階であり、常にそうであった。仮に、ビジネスを行う幾つかの方法は特許性のある新規性を表しているとしても、かかる新規性は本件にはない」)、In re Howard, 55 C.C.P.A.1121, 157 U.S.P.Q.(BNA)615, 517, 394 F.2d 869(CCPA 1968)(「したがって本法廷は、クレームは新規なプロセスを定めていないという理由で控訴委員会の決定を維持する。・・・[したがって本法廷は]、ビジネスを行う方法が内在的に特許性がないか否かの問題を検討することは不必要であると[認定する]」)。In re Patton, 29 C.C.P.A. 982, 127 F.2d 324, 327, 53 U.S.P.Q.(BNA)376, 379(CCPA 1942)において、ビジネスを行うシステムは、それを実施する手段とは別個のものとみなせば特許性のない主題であるとの、より明確な表明がなされたが、この判例は、ビジネスという特許性のない主題の新たな分類を作り出すことは必要としていない。