インターネットの普及に伴い、コンテンツ配信、電子商取引・決済等をはじめとするインターネットを介した各種ビジネスが注目されており、これらビジネスに関連する特許も多数取得されているといわれています。これらは、「システム」又は「方法」の特許としてクレームされることが多く、例えば、あるシステム関連の特許の場合に、サーバーによるサービス提供者、当該サービスの一部として関与する事業者、及び利用者等の複数の主体によって、それぞれが分担して全体のクレームが実施されるという場合に、クレームの構成要件全体を実施している主体がいないことから、誰が当該特許の使用者となるのかの問題になります。

　このような共同侵害の成否に関し、2012年8月31日、米国Akamai事件（コンテンツ配信方法）及びMcKesson事件（医療現場における電子的コミュニケーション方法）についての大法廷判決において、従来の考え方とは異なる判断が示されました。この判決で示された内容が、ネットワークを介したサービス提供ビジネス等の実務にどのような影響があるか注目されているところです。

　一方、わが国においても複数主体の共同侵害成否に関連する裁判例の蓄積がありますが、その成立要件については未だ確立された状況にはないといわれています。その中で、眼鏡レンズ供給システム事件（東京地判平成19年12月14日）では、当該特許が本来的に複数主体の関与を前提にしている場合には、複数主体全体で分担して全構成要件が実施されていれば足りるとする、伝統的な考え方とは異なる判断も示されております。

　今後、種々のサービス提供にクラウドの利用が益々増えると予想される中、複数主体を前提とせざるを得ないような技術構成も多分に考えられますので、共同侵害がどのような場合に成立するのかはクラウドビジネスの展開に当たって大変重要な問題であると考えます。

　本セミナーでは、法律専門家により、日米における共同直接侵害成否の各現状について解説いただき、その状況を踏まえて、実務における今後の対応や留意点等についてディスカッションしていただきます。

　皆様の奮ってのご参加をお待ち申し上げます。

アイビーホール ２階「ミルトス」（東京都渋谷区渋谷４−４−２５）　

１．基調講演

　「複数主体による特許権侵害について」
　　　　　飯村敏明氏　知的財産高等裁判所 所長