LESLIE A.KELLY, et al. Plaintiff他
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三木・吉田法律特許事務所
井口 加奈子 | |
富士通エフ・アイ・ピー(株)
山根 慶子 |
・一般的無差別な映像収集方法の結果としての複製。 | |
・被告はむしろ、サーチエンジンのユーザにより完全な結果を提供できるように、包括的なサムネイルの索引の開発に商業的関心を有している。 |
・被告の映像の使用の用途は、原告の芸術的著作物としての使用とは異なり、映像をカタログ化し、それへのアクセスを向上させるものである。 | |
・サムネイル索引の性質は美的なものでなく機能的なもの。 | |
・目的は芸術的でなく包括的。 |
・ユーザが原ウェブページの他の部分を見ることなく普通サイズの映像を見ることが可能(かつダウンロードする可能性がある)。 | |
・映像属性ページはサーチエンジンのコンテンツを発見し組み立てるという目的に明瞭に結びつかない。 しかし、新しい企画における使用の目的と性格を考慮するときには、初期の不完全な手段より変容的目的を考慮する方が適切である。 |
・ 被告は、サムネイル索引の中で、原告の映像の全体を複製して使っているが縮小しているおり、サムネイルは使用できる映像にまで拡大できない。 | |
・ 被告の主張によれば、縮小と分解は、複製行為による損害を軽減する。 | |
・ 部分的またはより縮小した映像の使用では、ユーザが映像を識別することが困難になり、視覚サーチエンジンの目的、有用性を減殺する。 | |
・ Arriba Vista映像属性ページは、その原ウェブページの周辺コンテンツから切り離された普通サイズ映像を表示するが、映像の属性を表示するのに普通サイズである必要はないし、サーチエンジンの主たる目的を達成するために普通サイズで表示する必要もなかった。 |
1)関連ある市場は、原告のウェブサイト全体。写真は、原告の製品を販売促進し、客寄せをしてウェブサイ トに掲載されている他の広告を見せるために用いられている。 | |
2)被告は、被告のサーチエンジンは、むしろ原告サイトへアクセスするユーザ数を増加させると主張する。 | |
3)原告は、被告の行為により、ユーザの不正な複製使用を誘発し、また、ディープリンクにより原ウェブ サイトの第一面を回避させる結果、ユーザが原告のウェブサイト上の広告を見たり販売促進のメッセージ を見る機会を減少させ、原告のさまざまな製品の売れ行きが害されたと主張するが、これを裏付ける証拠 はない。 | |
4)被告は、売れ行きの損害がなかったことを立証する傾向のある証拠を提出して立証責任を果たしたが、 原告はその証拠を打ち砕かなかった。 |
・被告は原告の著作物を自分のものと主張したことはなく、特定的に原告の著作物を直接目標とした行為を行っていない。 | |
・被告のサーチエンジンで原告の画像は、200万の他の映像と一緒に、ユーザにインターネット上のサイト を探し出すより良い方法を提供しようとする被告の努力の中で一掃(swept)された。 | |
・被告の目的は本来的に変容的であり、現在もそうである。 | |
・新しい使用と新しい技術が発展中であるときは、広く変容的な使用の目的は、発展の初段階での避け難
い欠陥(複製が生じること)よりもっと重要視される。 |
・原告の著作権管理情報は映像自体に現れていないので、Dittoのクローラが当該映像に索引を付けた
際に含まれなかったので、被告のウェブサイトにも現れなかった。 | |
・原告は、Dittoクローラの付随的な効果ではなく、被告の行為には故意があったと立証していない。 |
・原告は、被告が、サムネイルと普通サイズの映像で、著作権管理情報から切り離された原告著 作物の複製物をユーザに利用させたことを立証すべきである。 | |
・被告は、ユーザに原告の著作権を侵害させることになると「知るべき合理的根拠」を有しない。 なぜなら、ユーザは、サムネイルを利用する際、サムネイルの原ウェブサイトの名前、著作権 管理情報を知ることができ、リンクする機会を与えられ、また、被告のウェブサイトは著作権 についての警告をユーザに与えていたからである。 | |
・原告は、自己の映像がウェブサイトに表示されているので、著作権侵害を受けやすいというが、 これを裏付ける立証をしていない。 |
従来、サーチエンジンなどで他人のウェブページのURLを索引とすることは、著作権法上問題はないとされてきたが、映像で表示する行為については議論されてきた。この点について、本決定は緻密な衡量を重ねて結論づけたものとして重要な意義がある。 本決定の価値判断としては、サーチエンジンが、索引を付けられた原ウェブページのコンテンツ発見のためのものであることからすれば、映像の検出はURLの表示よりその目的達成のために有用といえ、評価しうる。 しかし、Arriba Vista映像属性ページについては、サーチエンジンの目的に対して必要かつ相当なものであったのかかなり疑問があったにもかかわらず、裁判所は、サーチエンジンにおける映像使用の目的を、技術の発展の初期段階における不可避的な欠陥よりも優先した。そもそも、裁判所のいうように不可避的な欠陥であったのかどうかも疑問であるが、何より、このような考え方が進めば、侵害行為があったとしても技術の発展のために権利者に侵害を甘受することを強いる結果とならないか懸念されるところである。 |
1.フェアユースについて 本件では他人の著作物を複製してサムネイルの形でサーチエンジンに掲載する行為についてフェアユースが認められたが、この点については妥当な結論であると考える。 本裁判所では、複製による使用の目的が原告の従来の目的と比較して変容的であることを重視している。 確かに、サーチエンジンの目的は、原告の著作物の利用目的とは異なり、ウェブページでの検索目的である。しかも、サーチエンジンの重要性は増しており、映像で検索結果を分かりやすく並べることにより、原告のページへのアクセスを増やす結果になろう。 しかし、サムネイルとはいえ、映像内容を識別できる大きさであるため、検索の目的として更に拡大した映像の属性ページを設ける必要があったかは疑問である。現在のdittoのページでは、サムネイルをクリックするとすぐに元のウェブサイトへリンクするが、被告のサイト上で映像を拡大する行為はもはや公正使用の範囲内とはいえるのかは疑問である。 | |
2.DMCA違反について 本判決では、被告が故意に権利管理情報を除去したケースではないと認定され、DMCA1202条(b)(1)は認められなかったが、妥当な判断であると思う。 なお、日本の著作権法においても、使用する際に技術上やむを得ず除去、改変が行われる場合は、著作権法違反とはいえないと考えられているため、クローラによる映像の収集、複製による権利管理情報の除去が避けられないものであれば、本判決と同様の判断となると思う。 |
・本件では、被告のどの行為が問題となっているのか。被告がデータベースを作成する際に原告のウェブ サイトの映像を複製する行為が問題となっている。 | |
・被告の新しい作品が変容的であればあるほどフェアユースは認められることになるというが、そうすると 翻案権との関係はどうなるのか。ここでいう変容的というのは複製と翻案のいずれにも対応するものなの か。 | |
・商業的目的とは具体的にはどういうことをいうのか。例えば、原告の映像をサムネイルではなく、また被告の
ウェブサイトを見る者が原告のウェブサイトに行くこともない形で取り込んで、その映像の周囲に被告の広告を付けるといった場合はどうか。その場合には商業的目的があるといえるのではないか。 | |
・本件では、商業性は認めつつ、変容性を認定している。その変容性も、当該映像だけでなく、被告のウ ェブサイト全体との関係で検討しており、従来から行われてきた1対1の比較ということからすれば特殊な ものといえる。 | |
・我が国で本件のような事案について判断する場合、引用など著作権の制限の中でフェアユースと同様の結論を導くとすると、著作権法50条があるので、著作者人格権がどうなるのかという問題を残すことになる | |
・本件の被告の行為は、日本法でいう「引用」にあたるのか。 | |
・人格権の処理については、画質が落ちた(たとえば200kbitから100kbitに落ちたなど)というだけで同一性を害するかという問題もある。 | |
・サムネイルではなく、テキストでのサーチエンジンの運営においても、データベース作成時における複製は問題となりうる。我が国においては、公衆送信権侵害の問題もある。 | |
・我が国の改正著作権法における権利管理情報の表示の仕方については、名前を表示したり、権利の処理方法を表示したりする方法がある。 |