Sega Enterprises, Ltd. v. Galaxy Electronics Pry., Ltd.

「Virtua cop」「Daytona USA」並行輸入事件


株式会社セガ・エンタープライゼス
法務部 大辻 寛人


当事者

原告:
Sega Enterprises, Ltd.
Avel Pty., Ltd.
被告:
Galaxy Electronics Pty., Ltd.
Gottlieb Electronic Pty., Ltd.

裁判所

オーストラリア連邦裁判所

判決日

1996年8月28日判決

関連法令(条文)

オーストラリア1968年著作権法
第86条−
映画フィルムの著作権の性質(フィルムの複製、フィルムを公への上映・視聴、放送、購読者への放送を目的とした頒布)
第101条−
著作権に含まれる行為を行うことによる侵害
第102条−
販売又は貸与の為の輸入による侵害
第103条−
販売及びその他の取引による侵害
日本国著作権法
第2条1項19号−「上映」
第2条1項20号−「頒布」
第2条3項−「映画の著作物」
第10条1項7号−「映画の著作物」
第26条−上映権及び頒布権
米国著作権法
Section 102(a)(6)
-Subject matter of copyright: In General--"motion pictures and other audiovisualworks"
Section 106(3), (4)
-Exclusive rights in copyrighted works
Section 109
-Limitations on exclusive rights: Effect of tranfer of particular copyor phonorecords
Section 602
-Infringing importation of copies or phonorecords

関連判例
(国内)

  • パックマン事件(東京地裁昭和59年9月28日判決
  • ドラゴンクエストII事件(東京地裁昭和62年2月24日決定)
  • ディグダグ事件(東京地裁昭和60年3月8日判決)

判 決

原告勝訴




<<資料目次>>

判決要旨

1. Virtua Cop
2. 1968年オーストラリア著作権法第10条第1項及び第24条
3. 映画フィルムの「侵害コピー」に関する考察
4. 回路配置法等の適用による映画フィルムとしての著作権法上の保護の排除
5. 「映画フィルム」の範囲
6. ビデオゲーム中の、音の録音に関する録音物としての保護
7. 決定

私見


【判決要旨】

論点:

 本件では、Virtua CopyびDaytona USAという二つのビデオゲームが関係している。Virtua Copの内容は、警察組織による犯罪組織の襲撃であり、Daytona USAは、カーレースゲームである。これらは、ビデオ画面上に多かれ少なかれ伝統的な映画のフィルムに類似する一連の影像を表示する。
 これらビデオゲームは同じ原理で構成される為、両当事者は、審議をVirtua Copに集中する事に合意する。

1. Virtua Cop
 Virtua Copの装置では、一連の合図(Cue)に対するプレイヤーの正確な反応によって、簡単なストーリーを画面に表示するように設計されており、不正確な反応に対しては、特定数の変化が生じる。
 株式会社セガ・エンタープライゼスは、Virtua Copの開発に際し、チームを形成し、グラフィックデザイナーによって情景およびキャラクター描写(図面、基本設計;セット;コンピュータ上での「テストバージョン」及びそのビデオテープへの複製; スクリーンに表示されるシーンの一層の詳細な手描きのスケッチ)が作成された。 プログラムは、物体及び登場人物の三次元的な位置について計算した。 音響効果は音のライブラリから選択されるか、または作成され、音楽はシンセサイザーで作曲され、会話が録音され、プログラムに組み込まれた。
 上記の製作物が統合され、Virtua Copを画面に表示する為の、専用のコンピュータ機器となった。 スケッチ、モデルおよびビデオテープはプログラムの開発中に使用されたものの、完成品の画面影像は映画フィルムの特徴的技術(小さい半透明の影像)に比較し得る方法では表示されなかった。
 これにより、ビデオテープ(画面上で視覚的影像に変換される磁場を含む)との近似が類推される。
 被告は、上記類推に対し、プログラムによるリアルタイムのコンピュータグラフィックスの表示は、二次元の画面影像を再生するものとは異なると主張する。
 本主張について、プレイヤーの行動に対する影響は、基本的なテーマに基づいた、特定数の変化で、プログラムによって生成可能な物体と場面の範囲に制限されている事について考察する必要がある。

2. 1968年オーストラリア著作権法第10条第1項及び第24条

第10条第1項

本法令中、反対の意図が示されない限り、...「映画フィルム」とは、物品を用いて次の事ができるようにその物品に化体された視覚的影像の集合をいい、かつ、そのような視覚的影像と一体となった録音帯に化体された音の集合を含む:
(a) 映画として上映すること、又は
(b) 上映することができる他の物品に化体すること。

第24条
 この法律の目的上、音又は視覚的影像は、それらの音又は視覚的影像が、他の装置の助けを借りて又は借りずに、物品から複製することができるように、その物品がそれらの音又は視覚的影像に関して取り扱われる場合には、その物品に化体されたものとみなされる。
 映画として上映するということは、平たく言えば視聴者によって見られるという事である。
 被告は、Virtua Copの二次元影像は、ポリゴンモデルの三次元な頂点を見て計算されて表示されているものであり、二次元影像そのものはコンピュータの内部には存在していない、と主張する。
 本主張の有効性は、「化体される(embodied)」という用語がどのように理解されるかによる。
(1) 「化体(embodied)」の意味
    • The New Shorter Oxford English Dictionary(1993)における「embodied」の定義、
    • その正確な用法であるWS・ギルバート著「イオランテ」における大法官の台詞、
    • 上記の用法と近似する用法として、第10条起草者が「embodied」という言葉を使用したであろうという推量、
    • Jefferys v Boosey (1854) 4 HLC 815; 10 ER 681事件におけるLord Cranworth LCによる記述、及び
    • 著作権法審査委員会による1995年のコンピュータソフトウェアの保護に関する報告中に現れる「embodied」の用法から判断して、
 
「化体する」とは、著者が、その創作に、存在・使用が継続され得る形を与える事を意味するものと思われ、同様の意味が、第10条においても見出されるべきである。
(2) 「化体」の定義に対する制限的解釈に関する考察
 視覚的影像の化体について、それをフレーム等に限定することは、「化体」という言語について、その本質ではない制限的な解釈を与える事になる。
 コンピュータが、コード化された座標や入力データを画面上の視覚的影像として「理解する」事は、脳が、文書というコードを解釈する事に等しい。
 一般に、小説や詩は、文書という媒体によって、そして、フィルムは画面上にその視覚的影像を上映する何かしらの方法で、伝達されるが、どちらの場合でも、縮小解釈によって、著作権の内容の理解をあいまいにすべきではない。
    • (文学の著作権に関して)「複製物における財産は…無体の財産であり、原稿、その他物理的な存在から分離される。」「著作権とは、物質的・有体的内容も持たない概念の財産である。」
      −Millar対Taylor事件(1769年)4 Burr 2303; 98 ER 201 at 1396; 251, Lord Mansfield
    • 「著作物は著者の精神的産物であり、原稿その他の記録は単に当該精神的産物の正確な本質を発見する為の媒体にすぎない。」
      −Laddie PrescottとVitoria著The Modern Laws of Copyright and Designs第2版(1995年)の第2.36節)
    • Drone著、A Treatise on the Law of Property in Intellectual Productions(知的産物における財産法に関する論文)(1879年)第6章
    • (フィルムの場合においては、)「著作権は、フィルムを構成する視覚的影像及び音声の組み合わせの中に存在する。」
      −(オーストラリア取引委員会Gummow J対Film Funding and Management Pty Ltd (1989年)87 ALR 49 at 64))
(3) 立法主旨;自由解釈
(4) 結論
 第10条及び第24条に言う「映画フィルム」という定義は、同様の結果を達成する新しい技術を包含し、同条は本件に適用され得る。
 プレーヤーが利用する入力装置及びセガ社が開発した本装置による視覚的影像の再生は、映画としての上映に当たる。 その再生内容の変化は予定された範囲内でのものであり、本判断に影響を与えない。

3. 映画フィルムの「侵害コピー」に関する考察
 映画フィルムに関しては、「コピー」とは、フィルムを構成する視覚的影像又は音声が化体される物品を意味する。
 「化体される」という単語が、本件で使用されたようなコンピュータ技術を、制裁を受けない模倣に利用される事を許容するような意味を持っているとは思われない。
  原告の為に要請された適任の資格を持つ専門家であるLambert博士は、いくつかの既存の映画はオブジェクト・ベースド・エンコーディングによって再生させることができたという証拠を提出し、当該技術による再生が将来の技術において可能であることを疑うなんらの理由も見いだせない。
 第10条第1項に定義される映画フィルムの「侵害複製」は「フィルムの複製」である。
 狭義の解釈によって、本件にあるようなコンピュータ技術によるフィルムの再現が、侵害を構成しないとは考えられない。
4. 回路配置法等の適用による映画フィルムとしての著作権法上の保護の排除
 被告は、Avel Pty Ltd対Wells (1991年) 105 ALR 635事件及びその控訴(1992年) 36 FCR 340を参照して、本件に関連する集積回路は、もし適用されるのであれば、著作権法及び回路配置法(1992年)の条項の中でそれらの保護を見いださなければならない、と主張する。
 集積回路の存在及び特定の制定法の条項の適用は、当該集積回路が映画としての上映の為に使用された場合において、映画フィルムとしての著作権法の条項の適用を妨げるものではない。
5. 「映画フィルム」の範囲
 被告は、映画フィルムはフレームを利用していなければならない、と主張する。
 フレームの使用は、映画フィルムが視聴者に対して映画として上映される為の方法であり、結果ではない。
6. ビデオゲーム中の、音の録音に関する録音物としての保護
 原告は、本装置は、音の録音を含んでいる、と主張する。
 著作権法第23条の「映画フィルムの一部を形成する視覚的影像と関連づけられるサウンドトラックに表現される音は音の録音でないと考えられるものとする。」との規定により、サウンドトラックが映画フィルムに属すことがわかっている状態で、原告の主張は成立し得ない。
7. 決定
    1. 原告は、確定されるべき日付に、本法廷の判決理由に従って適切に作成される簡易判決案を提出すること。
    2. 被告は本件の判決の費用を支払う事。

【私見】

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