[債権者]社団法人日本音楽著作権協会II 事案の概要
・国内の公衆送信事業者をはじめ、レコード、映画、出版、興行、社交場等各種の分野における音楽の利用者に対して、音楽著作物の利用を許諾し、その対価として利用者から使用料を徴収するとともに、これを内外国の著作権者に分配することを主たる目的とする社団法人。
・別紙楽曲リストに記載の各音楽著作物(以下「本件各管理著作物」という。)の著作権を管理。[債務者]有限会社日本エム・エム・オー
・ソフトウェアの開発、販売その他を目的とする有限会社。
・平成13年11月1日から、カナダ法人ITPウェブソリューションズ社と提携することで、カナダ国内に中央サーバ(以下「債務者サーバ」という。)を設置し、Peer To Peer技術を用いたサービスを、「ファイルローグ」の名称で日本向けに提供。
・ウェブサイトにおいて、ファイルローグ専用のファイル交換用ソフトウェア(以下「本件クライアントソフト」という。)を、不特定多数の利用希望者に対して配布。
債務者が運営するインターネット上の電子ファイル交換サービスにおいて、債権者が著作権を有する音楽著作物をMP3形式で複製した電子ファイルが、債権者の許諾を得ることなく交換されていることに関して、債権者が、上記電子ファイル交換サービスを提供する債務者の行為は、債権者の有している著作権(複製権、自動公衆送信権、送信可能化権)を侵害すると主張して、上記電子ファイルの送受信の差止めを求めた。[ファイルローグの利用方法]
[ファイルローグの特徴]
・MP3ファイルのみではなく、音声、動画、画像、文書、プログラムなどの多様な電子ファイルを交換することができる。
・債務者サーバには、電子ファイルのファイル情報等のみが送られ、交換の対象となる電子ファイル自体は利用者のパソコン内に蔵置され、債務者サーバに送信されない。
・ファイル送信の指示及び電子ファイル自体の送信は、受信者と送信者のパソコンの間で直接行われる。[利用者が権利侵害をした場合の債務者の措置]
・利用規約
・ノーティス・アンド・テイクダウン
・現在のところ、債務者は、送信可能化状態にされたMP3ファイルの中から、著作権、著作隣接権侵害に当たるものを選別したり、そのファイル情報の送信を遮断したりするなどの技術を有していない。[ファイルローグの運営状況]
社団法人日本レコード協会による平成13年11月1日から平成14年1月23日までの間の毎平日の午後5時前後に行われた調査
・債務者サーバに接続しているパソコンの共有フォルダに蔵置されている電子ファイルの数は、平均54万弱で、そのうちMP3ファイルは平均約8万で全体の約15%
・各調査時点で同時に債務者サーバに接続している利用者数は平均約340人
・平成13年12月3日の時点で、債務者サーバに登録された利用者数は約4万2000人
・債務者サーバから不作為に抽出した306件のMP3ファイルについて、そのファイル名及びフォルダ名に照らし判断した結果、96.7%のものが市販のレコードを複製したものであると判断された。
・ファイルローグの利用は無料であるが、債務者は、パソコン画面上に表示される広告から、若干の広告料収入を得ている。[本件各管理著作物の複製]
債権者は、平成14年3月1日、債務者サーバに接続して、ファイルローグにおいて送信可能化されているMP3ファイルを無作為に抽出してダウンロードした上、それを再生して、当該MP3ファイルは債権者が管理している著作物の複製物であるかを確認した。その結果、26曲のうち、25曲は債権者が管理している音楽著作物を演奏したものを収録したレコードをMP3形式で複製した電子ファイルであり、そのうち18曲が、本件各管理著作物を演奏することにより生じた音を録音したレコードをMP3形式で複製した電子ファイル(以下「本件各MP3ファイル」という。)であった。[債権者と債務者との事前交渉等]
平成13年12月14日
債権者は、債務者に対し、ファイルローグによるファイル交換が債権者の有する著作権を侵害するものであるから、直ちに著作権侵害の解消及び発生防止の措置を講ずるよう通知平成13年12月18日
債務者は、債権者に対し、以下のように回答
・債務者の行為は情報交換のためのインフラの整備、提供であり、ファイルローグが他人の権利を侵害するような情報の流通に利用されることを完全に防止できるとまではいえない状況にあっても、まず、情報交換のインフラを整備、提供することこそが重要であると考えている。
・債権者が要請するファイル交換の遮断措置を講じるためには、レコード会社名、曲名、アーティスト名を入力すれば、当該音楽著作物を演奏したものを収録した音楽CDをMP3形式に複製したファイルを自動的に検出するというような技術が不可欠であるが、債務者はそのような技術が存在することは知らない。
・債権者は、債務者の用意しているノーティス・アンド・テイクダウン手続を利用すべき。
1 被保全権利の有無
1) 本件各管理著作物について債権者の有する著作権に対する侵害行為の主体が債務者であるとして、債務者に対して、本件各MP3ファイルの送受信の差止めを求めることはできるか。
2) 本件各管理著作物について債権者の有する著作権に対する侵害行為を債務者が教唆又は幇助しているとして、債務者に対して、本件各MP3ファイルの送受信の差止めを求めることはできるか。2 保全の必要性の有無
1 争点1−(1)(著作権の直接侵害の成否)について[債権者の主張]
A 利用者の著作権侵害の有無
1) 送信者が本件各MP3ファイルをパソコンの共有フォルダに蔵置すること、及び共有フォルダに本件各MP3ファイルを蔵置した状態で債務者サーバにパソコンを接続させることは、債務者の複製権を侵害する。
・本件各MP3ファイルをパソコンの共有フォルダに蔵置することは、本件各管理著作物をパソコンのハードディスク等の記憶媒体に複製(法2条1項15号)する行為に該当する。
・私的使用の目的(法30条)でされたものであっても、共有フォルダに蔵置して債務者サーバに接続すれば、不特定多数の者に対して送信可能な状態にするので「公衆に提示」(法49条1項1号)したことになる。2) ファイルローグにおける送信者の行為は、債権者の有する自動公衆送信権及び送信可能化権を侵害する。
・ファイルローグにおいて、共有フォルダ内に蔵置された電子ファイルが、他のパソコンからの要求に応じて自動的に送信されることは、公衆によって直接受信されることを目的として行なう送信を公衆からの求めに応じ自動的に行なうものといえるから、「自動公衆送信」(同法2条1項9号の4)に該当する。
・送信側パソコンとそれが接続した債務者サーバとが本件クライアントソフトの機能により一体となって「自動公衆送信装置」(法2条1項9の5号イ)を構成するので、共有フォルダに電子ファイルを蔵置する行為は、「送信可能化」(法2条1項9の5号)にあたる。3) 受信者がファイルローグによって他の利用者のパソコンからダウンロードした本件電子ファイルを、受信側パソコンの共有フォルダ内に蔵置(複製)した上、さらに再送信可能な状態に置くとしたら、私的使用には該当しない。
B 債務者がファイルローグを提供することは、本件各管理著作物についての著作権を侵害する行為と解するべき。
1) 債務者の著作権侵害主体性を認める上で必要な「管理・支配」が及んでいる。
・ファイルローグの利用者による利用は、すべて債務者が配布した本件クライアントソフトと債務者が運営する債務者サーバを連携させることによって初めて可能となる。
・債務者が運営する債務者サーバと利用者のパソコンとが一体となって自動公衆送信装置を構成するのであるから、ファイルローグによる本件各管理著作物の送信可能化及び受信側パソコンにおける複製は、債務者と各利用者との共同行為というべき。2) 債務者は本件著作権侵害行為により経済的利益を得ている。
・債務者はファイルローグ画面にバナー広告等を表示することにより広告収入を得ている。
・債務者は、将来ファイルローグの有料化を予定している。
[債務者の反論]
A 利用者の著作権侵害の有無
1) 送信者が本件各MP3ファイルをパソコンの共有フォルダに蔵置すること、及び共有フォルダに本件各MP3ファイルを蔵置した状態で債務者サーバにパソコンを接続させることは、債務者の複製権を侵害しない。
・本件各MP3ファイルを保存する行為自体は、適法な行為(法30条1項)
・法49条1項1号は、私的利用目的で作成した複製物「によって」レコードに係る音等を公衆に提供した場合に、複製を行なったものとみなすという規定である。受信側パソコンに提示される音は、送信者が私的利用目的で作成した複製物により提示されるのではなく、受信者が私的利用目的で作成した複製物により提示される。2) 送信者が本件各MP3ファイルをパソコンの共有フォルダに蔵置すること、又は、共有フォルダに本件各MP3ファイルを蔵置した状態で債務者サーバにパソコンを接続させることは、債務者の有する自動公衆送信権及び送信可能化権を侵害しない。
・本件クライアントソフト等を利用して行なわれるリアルタイム・チャット等を介して知り合った特定の人物によって直接受信されることを目的として、特定のフォルダを共有フォルダとして指定する場合があり得、この場合は、送信の相手方は少数人かつ特定人というべき。3) 受信者が自らのパソコン又は携帯用MP3プレイヤーで音楽を聴く目的で受信した電子ファイルを受信側パソコン内に蔵置した場合には、当該蔵置(複製)行為は、著作権(著作隣接権)侵害とはなり得ない。
B 債務者がファイルローグを提供することは債権者の有する自動公衆送信権及び送信可能化権を侵害しない。
1) 利用者による自動公衆送信及び送信可能化行為が債務者の管理の下で行なわれているということはできない。
・ 本件各MP3ファイルが蔵置されているフォルダを共有フォルダに指定し、又は、共有フォルダに本件各MP3ファイルを蔵置することによって送信可能化を行ったのは、あくまでも、利用者であって債務者ではないし、債務者がこれを勧誘した事実もない。2) 債務者は、ファイルローグの運営により利益を上げる意図を有していない。
・債務者は利用規約において、利用者に、著作権、著作隣接権、プライバシー権その他第三者の権利を侵害する電子ファイルを送信可能な状態とすることを禁止し、ノーティス・アンド・テイクダウン手続を採用することを規定している。
・インターネット広告会社各社は、本件各MP3ファイルを利用者が送信可能化したことに対して広告料を債務者に支払うのではない。
・債務者は、ファイルローグの有料化を予定しているが、「有料化を検討すること」と「利益を取得すること」とは異なる。C 債務者が、自己の運営するファイルローグにおいて、MP3形式によって複製され、かつ、送受信可能の状態にされた電子ファイルの存在及び内容等を示すファイル情報を受信者に送信することは、債権者の有する複製権を侵害しない。
1) 利用者による複製が債務者の管理の下でおこなわれていないことは明らか。
・利用者が「ダウンロード」コマンドや「保存」コマンドを実行することにより受信側パソコンに複製される電子ファイルは債務者が予め指定したものに限られるという事実はない。
・本件各MP3ファイルを送信ないし保存するように債務者が勧誘した事実はない。2) 債務者は、ファイルローグの運営により利益を上げる意図を有していない。
[裁判所の判断]
A 利用者の著作権侵害の有無(前提問題)
1) ファイルローグの利用者が、本件各管理著作物の著作権を有する債権者の許諾を得ることなく、本件各MP3ファイルをパソコンの共有フォルダに置いて債務者サーバに接続すれば、複製をした時点での目的の如何に関わりなく、本件各管理著作物について著作権侵害(複製権侵害又はそのみなし侵害のいずれか)を構成する。
・利用者がMP3ファイルを自己のパソコンの共有フォルダに蔵置することは、当該MP3ファイルの元となった音楽CDに複製された楽曲の複製行為(法2条1項15号)
・利用者が、当初から公衆に送信する目的で、音楽CDをMP3形式のファイルへ変換した場合には、法30条1項の規定の解釈から当然に、また、当初は、私的使用目的で複製した場合であっても、公衆が当該MP3ファイルを受信して音楽を再生できるような状態にした場合には、当該複製物により当該著作物を公衆に提示したものとして、法49条1項1号の規定により、複製権侵害を構成する。2) ファイルローグの利用者が、本件各管理著作物の著作権の管理者である債権者の許諾を得ることなく、本件各MP3ファイルをパソコンの共有フォルダに置いて債務者サーバに接続すれば、本件各管理著作物について、著作権侵害(自動公衆送信権侵害及び送信可能化権侵害)を構成する(法23条1項)
・ファイルローグは、ユーザー名及びパスワードを登録すれば誰でも利用できるものであり、既に4万人以上の者が登録し、平均して同時に約340人もの利用者が債務者サーバに接続して電子ファイルの交換を行っている。そして、送信者が、電子ファイルをパソコンの共有フォルダに蔵置して、本件クライアントソフトを起動して債務者サーバに接続すると、送信者のパソコンは、債務者サーバにパソコンを接続させている受信者からの求めに応じ、自動的に上記電子ファイルを送信し得る状態となる。B 債務者の著作権侵害(自動公衆送信権及び送信可能化権侵害)の有無
債務者は、本件各管理著作物の自動公衆送信及び送信可能化を行っているものと評価でき、債権者の有する自動公衆送信権及び送信可能化権を侵害していると解するのが相当。
1) ファイルローグは、送信者が、市販のレコードを複製したファイルが大多数を占めているMP3ファイルを、送信可能化状態にするためのサービスという性質を有する。
・ファイル情報の取得等に関するサービスの提供並びにファイルをダウンロードする機会の提供その他一切のサービスを、債務者自らが、直接的かつ主体的に行っており、利用者は、債務者のこれらの行為によってはじめてパソコンの共有フォルダ内に蔵置された電子ファイルが他の利用者へ送信し得る状態を実現できる。
・ファイルローグにおいて送受信されるMP3ファイルのほとんどが違法コピーに係るものとなることは避けられないものと予想され、債務者としてもファイルローグの開始当時から上記事態に至ることを十分予想していたものと認められる。2) 利用者の電子ファイルの送信可能化行為(パソコンの共有フォルダに電子ファイルを置いた状態で、同パソコンを債務者サーバに接続すること)及び自動公衆送信(ファイルローグにおいて電子ファイルを送信すること)は、債務者の管理の下に行われているというべき。
・利用者がファイルローグを利用するためには、本件クライアントソフト、債務者サーバとの接続が不可欠である。3) 利用者に債務者サイトに接続させてMPファイルの公衆送信化行為をさせること、及び同MP3ファイルを他の利用者に送信させることは、債務者の営業上の利益を増大させる行為と評価することができる。
2 争点1−(2)(教唆又は幇助の有無等)について[債権者の主張]
債務者は、利用者に対して、著作権侵害の教唆、幇助をしているといえるので、法112条1項の「著作権を侵害する者又は侵害するおそれがある者」に含まれる。[債務者の主張]
法112条1項所定の「著作権を侵害する者又は侵害するおそれがある者」には、第三者の著作権侵害行為を教唆又は幇助した者は含まれない。
・法112条1項は文言上差止請求権行使の相手方を「その著作者人格権、著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する者又は侵害するおそれがある者」に限定している。
・法112条1項の差止請求権は、被請求者の故意又は過失があることすら問わない強力な権利である。
・第三者による著作権等侵害行為を客観的に惹起し、補助し、又は容易ならしめる行為がすべて差止請求の対象になるのだとすると、その範囲は過度に広範囲となり、われわれの日常生活すら脅かされる事態に至る虞がある。
・我が国の著作権法には、特許法上の間接侵害(特許法101条2号)のような規定も、米国著作権法上の寄与侵害のような規定も設けられていない。
・債務者は、本件各管理著作物についての著作権侵害を教唆したことはなく、上記行為についての幇助の故意、過失もない。
3 争点2(保全の必要性の有無)について
[債権者の主張]
著作権侵害は時々刻々発生し、債権者には、莫大な被害が生じている。本案判決を待ったのでは、債権者に回復不能な損害が生じる。[債務者の主張]
本案判決を待ったのでは、債権者に回復不能な損害が生じるとの点については何ら疎明されていない。[裁判所の判断]
債権者に著しい損害が生じることは明らかであるので、本件において、保全の必要性は存在する。
・ファイルローグには、平成13年12月の時点で、既に4万人以上が登録し、平均でも約300人以上が債務者サーバに接続して、希望する電子ファイルを自由に受信しており、しかも、その利用者は個人として特定されていない。
・債務者は、交換情報を遮断するなどの措置を何ら採っていなかった。
・今後も同情報が公開されるおそれがある
4 仮処分において命ずる不作為の範囲について
[裁判所の判断]
送信側パソコンから送信されたファイル情報のうち、ファイル名及びフォルダ名のいずれかに本件各管理著作物の「原題名」及び「アーティスト」を表示する文字の双方が表記されたファイル情報の範囲で、その受信者への送信の差止めを認めるのが妥当。
・債権者は、債務者がファイルローグで本件各MP3ファイルを送受信の対象とすることの差止めを求めているが、この物理的行為は、専ら利用者が行っており、本件各MP3ファイル自体の送信又は受信の差止めを認めるのでは、本件申立ての目的を達成できないことになる。したがって、ファイルローグにおいて、ファイル情報を利用者に送信する行為の差止めを認めるのが相当。
・債務者サーバが送信者から受け取った送信者情報のうち、受信者への送信を遮断すべきファイル情報の範囲としては、受信者のファイル選択を不可能ならしめ、かつ、本件各管理著作物以外の著作物を複製したレコードのファイルと誤認混同を回避するのに必要かつ十分なファイル情報にとどめるべき。
MP3形式で複製され、かつ、送受信可能の状態にされた電子ファイルのファイル情報の存在及び内容等を示す、利用者のためのファイル情報のうち、ファイル名及びフォルダ名のいずれかに別紙楽曲リストの「原題名」欄記載の文字(漢字、ひらがな、片仮名並びにアルファベットの大文字及び小文字等の表記方法を問わない。)及び「アーティスト」欄記載の文字(漢字、ひらがな、片仮名並びにアルファベットの大文字及び小文字等の表記方法を問わない。姓又は名のあるものについては、いずれか一方のみの表記を含む。)の双方が表記されたファイル情報を、利用者に送信することの差止めを認める。VI コメント
・ 「ファイルローグの利用者が、本件各MP3ファイルをパソコンの共有フォルダに置いて債務者サーバに接続すれば、本件各管理著作物について著作権侵害(複製権侵害又はそのみなし侵害のいずれか、自動公衆送信権侵害及び送信可能化権侵害)を構成する。」という判断は納得できるが、「債務者は、本件各管理著作物の自動公衆送信及び送信可能化を行っているものと評価でき、債権者の有する自動公衆送信権及び送信可能化権を侵害している」という判断は納得できない。
ファイルローグで交換される電子ファイルが違法なものでなければ、利用者も債務者も著作権侵害とはならず、違法な電子ファイルであれば、著作権侵害となる。そもそも、この違いは、ファイル交換される電子ファイルが違法なものかどうかの違いであり、本件管理著作物をMP3ファイルに変換するのは利用者であり、変換するツールは債務者が提供しているものでもない。・ 債務者のウェブサイトから本件クライアントソフトをダウンロードするときには、「利用規約を遵守する」というライセンス契約が成立しているが、これは法的には意味のないことなのか?
・ 仮処分の不作為の範囲は限定されているが、実際に、利用者のパソコンからファイル情報の送信を受けた債務者サーバが、1つ1つのファイルごとに、そのファイル名及びフォルダ名について、「原題名」、「アーティスト」のフィルタリングを行うというのは、実行不能ではないか?(実際に、債務者はファイルローグを一切停止している。)
・ 「利用者の行為が著作権侵害となる場合があること」は理解できるが、一方、利用者の行っていることは、債務者サイトからダウンロードしたソフトを起動し、自分の持っていない新しい曲のファイルを自らが聴くために、自分のパソコンに複製しているという「犯罪」というには、あまりにも普通のインターネット利用と思われる。
議論:
・*ファイルローグというサービス名、また楽曲のタイトルやアーティスト名を変えたらどうなっていたか。
・*結論には賛成だがやはり著作権に寄与侵害や間接侵害の規定があったほうがすっきりする。
・*特許法の間接侵害では「のみに使うもの」。アメリカの寄与侵害はもう少しゆるく、日本でいう教唆・幇助。不法行為なら教唆幇助。損害賠償ならそれでいける。112条差止請求権は教唆・幇助では無理ではないか。
・*債務者の行為とユーザーの行為が一体となって云々といっているところがあるがこれは「共同正犯」のようなやり方。
・*カラオケスナックとの類似。経営者やリース会社にも直接侵害を問う、そういった方向で一貫している。主体性や管理能力。
・*ときめきメモリアル事件でも、データを入れたカードを売っていて、直接の侵害行為はユーザーが行う。そこでカード販売業者の侵害を問うにはやはりある程度擬制がある。
・*MP3という技術があって、そのあとファイルフォーグのようなサービスが出てきたわけだが、これが逆だったらどうなっていたか。MP3作成者の責任が問われるのか。
・*債務者が管理しているということの要素として共有フォルダーにMP3ファイルを蔵置することが複製権侵害だと言っているが、蔵置されたファイルが侵害かどうかを把握することはほぼ不可能であり、にもかかわらず債務者が「管理」しているとする裁判所の決定は不可能を強いているようなものではないか。
・*債務者がユーザーに求めている利用規約の性質。
・*円滑に許諾を取れるようにすべき。