ルイス・ガルーブ・トイズ(ガルーブ)は、ゲーム・ジェニー(Game Genie)と呼ばれるビデオゲームのアクセサリ(付属品)を製造販売していた。ゲーム・ジェニーとは、ゲームのプレイヤーが、ニンテンドウのゲームの特徴を3点まで改変する装置であり、ゲームカートリッジとNESとの間に挿入されて使用されるものである。
例えば、ゲーム・ジェニーは、プレイヤーのキャラクターの命の数を増やしたり、キャラクターが移動する際のスピードを増したり、キャラクターをして障害物の上を飛び越えさせたりする。
プレイヤーは、ゲーム・ジェニーのプログラミングマニュアルおよびコードブックに書かれたコードを入力することにより、こうした改変をコントロールする。
ゲーム・ジェニーは、ゲームカートリッジからNES中の中央演算装置に伝達される1データバイトの値をブロックし、新しい数値を置き換えることにより機能する。
ゲーム・ジェニーは、ゲームカートリッジ中に内蔵されたデータを改変したり、別個の複製物を作出するものではなく、オリジナル・ゲームに付属された場合にのみ使用できる。
ニンテンドウは、ゲーム・ジェニーは、著作権法第101条所定の派生著作物を作出しており、ガルーブは、ニンテンドウの著作権を直接または間接的に侵害していると主張した。
連邦地方裁判所は、ニンテンドウの終局的差止命令申立を棄却した。判決の理由は以下1)ないし3)のとおりである。
本著作物中には、登場人物である君主、武将が1から100までの範囲の数値(能力値)で表現され、ユーザーが新武将を作出し、その能力値を新たに設定する事も可能となっている。
対象プログラムは、本著作物のデータ登録ファイルに書き込むデータ登録用プログラムに代わるプログラムで、ユーザーが100を越える能力値を設定することを可能にするものである。しかし、本著作物のプログラム自体が改変されるものではない。
原告は、対象プログラムは、「三国志III」を予想外の展開にするものであり、本著作物の同一性を侵害する改変行為であると主張した。
判決は、対象プログラムにより能力値が改変され、ゲーム展開やストーリーが当初予定した範囲を超えることは当然予想されると述べ、入力される能力値自体はデータであるとの前提に立ち、本著作物のプログラムを実行して展開されるストーリーおよび入力されるデータ自体は、プログラム著作物であるとはいえず、対象プログラムの使用は、本著作物の同一性を侵害する改変行為とはいえないと判示し、原告の請求を棄却した。
スペックコンピュータ株式会社(被告)は、「X-TERMINATORPS版第2号 ときメモスペシャル」と題するメモリーカード(以下「本メモリーカード」という)を輸入し、日本国内で販売した。ユーザーは、本ゲームをプレイする際に、本メモリーカード内のデータを使用することにより、対象とする女生徒に応じて、1)予め理想的な数値に設定したり、さらには2)ゲーム展開を大幅に省略したりすることが可能である。
原告は、被告の本メモリーカードの販売は、「予め設定されたパラメータ数値からゲームをスタートし、プレイによって数値を上昇させていく」本ゲームの映画の著作物としてのストーリーを改変するもので、本ゲームの著作者人格権および著作権を侵害すると主張し、被告に対し損害賠償および謝罪広告の掲載を請求した。
判決では、本メモリーカード内のデータは、本ゲームのプログラムの許容する範囲であるとし、本メモリーカードにより付与されたデータがゲーム展開にどのように影響するかは不明なため、本ゲームのストーリーの改変は認められないと判断した。
また、ゲーム展開が省略されることについても、本メモリーカードを使用した際のゲームの展開状況は、本ゲームが予定している多種多様のゲーム展開の一つであり、当該データを使用してプレイするか否かは、プレイヤーの選択に委ねられているので、本ゲームのストーリーの改変とはいえないと判示した。
もっとも、本メモリーカードに保存されている「藤崎詩織」のキャラクターのアイコンは、本ゲームのアイコンと同一であり、アイコンの画像の複製権侵害に関しては、被告は損害賠償責任を負うと判断した。
この影像はプレイヤーの操作により変化するが、その変化も全てプログラムにより予め設定されている。
株式会社技術評論社(被告)は、Chompほか23のプログラムを収納したFD(以下「本FD」という)を制作し、これを付属した書籍を発行、販売した。
本FD中のプログラムは、パソコンのハードディスクに記憶させ、MS-Windows上でゲームが進行し、ヂィスプレイ上に影像を展開、再現が可能であった。
判決では、1)本ゲームは映画の効果に類似する視覚的効果を生じさせ、2)ディスプレイ上の影像は電気信号の形式でROM中に記憶されて、物に固定されていること、3)本ゲームはパックマンとモンスターとが迷路を舞台として追跡を行う劇であり、著作者の創作活動の所産が表現されているので、本ゲームは「映画の著作物」であるとの判断が示され、その上でChompの影像は本ゲームの影像の複製物であるとし、被告の行為は、原告の映画の著作物としての本ゲームの複製権および頒布権を侵害したものと判断された。