コンピュータビデオゲームの製造・販売をしていたSEGAは自己のゲームが無許可で電子掲示板(BBS)にアップロード・ダウンロードされていたことに対して、そのBBSのシステムオペレータでありかつSEGAのゲームのコピー機を販売していたSABELLAを著作権・商標権等侵害で訴えた。
SEGAのSummary Judgmentの請求に対してカリフォルニア北地区連邦地裁は著作権寄与侵害及びカリフォルニア州商号権侵害に関してはSABELLAの責任を認めたが、連邦商標権侵害・連邦不正競争及び原産虚偽表示・カリフォルニア州不正競争に関しては事実に関する争点が存在するため事実審理が必要であるとしてSummary Judgmentを認めなかった。
当事者 |
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裁判所 | カリフォルニア北地区連邦地裁 |
判決日 | 1996年12月18日 |
関連法令 (条文) | 17U.S.C.§101,§107 15U.S.C.§1051 15U.S.C.§1125 California Business and Professions Code§14401 Cal. Bus. & Prof. Code§14210、17200〜17203 |
判 決 | 原告実質勝訴 著作権の寄与侵害、カリフォルニア州商号権侵害を容認。 |
キーワード | BBS運営者の責任、寄与侵害、商標権侵害 |
<<資料目次>>
【T.事実関係】
【U.証拠に関する異議】
【V.SUMMARY JUDGMENTの要件】
【W.論点】
【X.裁判所の判断】
【Y.救済】
【Z.コメント】
【[.YWGでの検討要旨】
- SEGAの業務内容
- コンピュータ・ビデオゲーム(システム及びプログラム)の製造・販売
- SEGAのカートリッジに含まれるゲームでプレイすることのみが可能。カートリッジは$30〜70/個で販売されている。コピー及び商業的配布は禁止されている。
- 著作権及び商標権を有している。
- →著作権登録:Sonic Spinball, Jurassic Parkを含むいくつかのゲーム。
- →商標権登録:「SEGA」。
- SEGAはゲームの品質・信頼性を保証しており、欠陥品の交換にも応じている。
- 「SEGA」名でゲームを販売し「SEGA」には信用が蓄積されている。
- SABELLAの業務内容
- 電子掲示板(BBS)のシステムオペレータ
- THE SEWER LINEと呼ばれるBBSを運用し、THE SEWER LINE上では「DIRTY SCUM」と言う変名又は仮名で知られていた。
- SBELLAの BBSにはSEGAのゲームが「SEGA」の商標付きのままアップロード、ダウンロードされていた。(Jack Yang氏の証言による証拠有り)
- いったんアップロードされればユーザはゲーム全部をダウンロードできる。
- SABELLAはSEGAのビデオゲームと関係のある「Genesis」と言うディレクトリが自分のBBSに入っていることを知っていた。
- SABELLAはリストによってダウンロードの回数等を把握していた。
- ダウンロードの特権に対してユーザに費用請求(アクセスレベル4段階に対応)していた。
- BBS上でユーザに対して「ほとんどお金を支払わずにゲームを手に入れることが出来る」旨の使用規則も公表していた。
- ゲームコピー機の販売($350〜525/個)
- Sharon's Data Systems と言う企業名でSEGAのゲームをコピーすることを目的としたコピー機(Multi-Game Hunter Copier)を販売。
- →ユーザはコピー機を購入し、SEGAのゲームをHDやFDにコピーすることによりSEGAのカートリッジ式ゲームがカートリッジなしでプレイ可能となる。
- コピー機を買うとSABELLAのBBS上のゲームのダウンロードが無料となる旨広告していた。
- SEGAがSummary Judgmentを求めたことに対するSABELLAの異議申立書の却下を求めるSEGAの申立
[SEGAの主張]
[地裁の判断]
- SABELLAの異議申立書は裁判所の定めた期日後で、かつLocal Rulesの定める期日後に提出されたので無効である。
- SEGAは本申立を放棄したため本申立は却下する。
- たとえSABELLAの異議申立書が考慮されたとしても裁判所はSEGAを支持する。
- SEGAの証拠に対するSABELLAの異議
- キャプチャー・ファイルの不完全性
[SABELLAの主張]
[SEGAの主張]
- SEGAの提出したキャプチャー・ファイルはファイルの全部分を示していないし、失敗したダウンロード回数等も含み実際の(成功した)ダウンロード回数と一致しないから無効である。
[地裁の判断]
- キャプチャー・ファイルがファイルの全部分を示さないことを認めるが編集されたのは個人的なユーザ情報に関するもののみである。
- SABELLAの異議を退ける。
- SABELLAは編集された情報が個人的なユーザ情報以外のものであることの主張も説明もしていない。また「失敗したダウンロード回数等も含み不完全なファイルである」との主張は単なる推測に過ぎない。
- キャプチャー・ファイルは証拠として採用し得る。
- 差押日以後に押収された証拠
[SABELLAの主張]
[SEGAの主張]
- SEGAの提出したファイル・ディレクトリ・リストは自分のコンピュータ上にないディレクトリを示している。
- ディレクトリ・リスト中のファイルのうち日付が自分のコンピュータが差押えられた日以後のものがあるが、これらのファイルは差押日以後に作成・変更されたものである。従って証拠の信用性に欠ける。
[地裁の判断]
- ディレクトリ・リストのうちいくつかがSABELLAのコンピュータ上のディレクトリ名と異なることも差押日以後の日付がついていることも認めるが、それはこれらのディレクトリ・リストがバックアップの過程で作られたためである。
- ディレクトリ名とファイルの日付の違いだけではSEGAが不正にデータの改ざんを行ったという推量を支える根拠とはならない。
- SABELLAの推測は証拠の確実性の争点を支えるのに十分ではない。
- SEGAの主張はディレクトリ・リストよりもむしろキャプチャー・ファイルによっているので、ここではファイルリストは証拠として考慮しない。
SUMMARY JUDGMENTを下すための基準
- 重要な事実に関する真正な争点がないこと
- 重要な事実=該当する実体法下で事件の結果を左右するかもしれない事実。
- 申立当事者は重要な事実に関する争いのないことの立証責任を負う。
- 申立人が法律問題として明らかに勝訴する権利があること
- 著作権侵害(17U.S.C§101)
- 直接侵害
[SEGAの主張]
[SABELLAの主張]
- SABELLAはBBSの最も活動的なオペレータであり、詳細にアップロード、ダウンロードをチェックしていた。
- SABELLAはコピー機も販売しており購入者には自己のBBSからのダウンロードの特権も与えていた。
- 自分はBBSのシステムオペレータに過ぎないし、自らコピーしたこともない。
- 寄与侵害
[SEGAの主張]
[SABELLAの主張]
- SABELLAはBBSのユーザがSEGAのゲームをコピーしているのを知っていたしコピーに直接加担していた。
- ユーザのコピー行為は知らなかったし、侵害のおそれについてSEGAから通知を受けていない。
- 代位責任
- Fair Useの抗弁
[SABELLAの主張]
- ユーザの行為はSEGAの利益を奪わないし商業的性格もない。
- 購入前にゲームの価値を決めるためにブラウジングすることはフェアユースである。
- コピー機は実質的な非侵害的用途を有する。
- 故意侵害
[SABELLAの主張]
- ユーザのアップロード、ダウンロード行為は知らなかった。
- 連邦商標権侵害(15U.S.C§1051)
[SEGAの主張]
[SABELLAの主張]
- SABELLAはBBS上で「SEGA」の商標を使用した。
- 自分は「SEGA」の商標は使用していないし使用されていたことも知らない。
- 連邦不正競争及び原産虚偽表示(15U.S.C§1125)
[SEGAの主張]
- SABELLAがSEGAの商標・商号を使用することにより出所混同が起きる。
- SEGAがSABELLAを承認・支援しているかのような誤解を与える。
- カリフォルニア州商号権侵害(California Business and Professions Code§14401)
- カリフォルニア州不正競争(Cal. Bus. & Prof. Code§14210、17200〜17203)
[SEGAの主張]
- SABELLAによる違法コピーゲームの配布・販売及び「SEGA」商標の使用は他人を欺くものである。
- 著作権直接侵害
>>>>>>著作権の複製権の直接侵害は否定
- 侵害された著作物に合法的に著作権が存在するか?→○
- SEGAは著作権登録を有しており、合法的に著作権が存在すると推定される。
- 被告が侵害行為を行ったと言う証拠があるか?→×
- SEGAのゲームがSABELLAのBBSへアップロード・ダウンロードされたときにコピーが行われ、誰かによる侵害行為があったことは立証されている。
- Netcom事件よりは被告の行為が能動的であったことは認めるがSABELLA自身がコピーをした又は直接コピー行為を生じさせたと言う証拠に欠ける。
- 結論
- シスオペ、コピー機販売者としてのSABELLAの行為は寄与侵害、代位責任の方で論じられるべきである。
- 著作権寄与侵害
>>>>>>著作権の複製権の寄与侵害は肯定
- 寄与侵害について
- 著作権法上明示の規定はないが判例上認められている。
- 侵害行為を知りながら他人の侵害行為を誘導・発生させ又は実質的に寄与した場合に寄与侵害責任が成立する。
- BBSユーザによる直接侵害があるか?→○
- BBSユーザによってSEGAのゲームが無許可でBBSへアップロード、 BBSからダウンロードされ、その際にコピーされていたことをSEGAは立証している。
- ユーザの侵害行為をSABELLAは知っていたか?→○
- SABELLAはSEGAのゲームのアップロード、ダウンロードの様子を管理していた。
- SABELLAは自分のコピー機でSEGAの違法コピーゲームをプレイできるとBBS上で広告し、コピー機の購入者にはBBSからのダウンロードの特権を与えていた。
- これらの事実よりSABELLAはユーザの侵害行為を知り得べかりしであったと推定される。
- ユーザの侵害行為にSABELLAは加担していたか?→○
- 「侵害行為を知りながらサイトや設備を供給することは寄与侵害に該当する」(第9巡回区控訴裁判所)
- SABELLAはサイト及びソフト・ハード・電話線等を供給してゲームのアップロード、ダウンロードを行わせていた。さらにダウンロードのためにBBS上のロードマップまで供給していたし、ダウンロードされたゲームのプレイを容易にするコピー機も販売していた等、サイトと設備の供給以上の行為を行っている。
- 結論
- 以上によりSABELLAはSEGAのゲームの違法コピーを奨励していたので寄与侵害責任がある。
- 著作権代位責任
- 寄与侵害が認定されたので論じる必要はない。
- フェアユースの抗弁
>>>>>>フェアユースの抗弁を否定
- 使用の目的・性質→×
- SABELLAの主張するブラウジング理論を裏付けする証拠がなく、商業的性質ではないと言う推定は出来ない。
- SEGAのカートリッジを買わずにSABELLAのBBSからゲームをダウンロードするように奨励していた証拠もある。実際にユーザはカートリッジの購入をしていなかった。
- 著作物の性質→×
- 著作物が創造的なものほどフェアユースの抗弁は難しい。SEGAのゲームは娯楽用であり、情報的というよりもフィクションやファンタジーを含む創造的なものであった。
- コピーの量及び実質性→×
- SEGAはBBSユーザが事実上ゲームの全体をアップロード、ダウンロードしていたことを立証している。一方、SABELLAは全部をコピーしたことに関する有用な理由付けが出来ていない。
- 当然則ではないが著作物の全体をコピーすることは通常フェアユースの認定に反する。
- 著作物の潜在的市場に与える影響→×
- SABELLAのBBSを利用することによってユーザはBBS上のSEGAのゲームからいくつものゲームをコピー、ダウンロードしていた。
- BBSからの違法コピー及びコピー機の販売は結合してSEGAのカートリッジの売り上げを減少させた。
- コピー機は非侵害的用途を有すると言う主張も認められない。コピー機の実質的効果はSEGAのカートリッジの購入を回避し、違法コピーゲームをプレイすることであったと認定する。
- 故意侵害
>>>>>>故意侵害を肯定
- 侵害の事実を知りながら行動したか又は著作権者の権利を無謀に無視したか?→○
- もしSABELLAの侵害行為が専らBBSのシスオペとしてのものならば故意に関して重要な事実の争点が存在する。
- しかしSABELLAはコピー機販売も行っており、コピー機販売に関するBBS上の広告は明らかにコピー機販売がSEGAのゲームの違法コピーと結びついている意思を表している。
- コピー機の広告中で著作権法の効果を認めていることによりユーザが侵害行為をすることを知っていたと認定される。
- 連邦商標権侵害
>>>>>>連邦商標権侵害(直接侵害)に関するSummary Judgmentは否定
- 原告が商標権を有しているか?→○
- SEGAは「SEGA」の商標権登録を有しているので商業的に登録商標を使用する排他的権利を有する。
- 被告の商標使用により公衆が混同を起こしているか?→○
- 「『混同を生じるおそれ(likelihood of confusion)』は商標の強さ、商品・マークの類似性、実際の混同の証拠、使用された販売チャンネル、商品のタイプ、公衆が払う注意の程度、商標を選んだ被告の意思、製品の種類の拡大の可能性等により判断する。」(第9巡回区控訴裁判所)
- 商品の類似性→○
- ダウンロードされたゲームはSEGAの本物のゲームと同一であり、BBSユーザ又は第三者は本物と違法コピーを混同するおそれがある。
- 商標の類似性→○
- BBS上のコピーに付されていたマークはSEGAの商標と全く同一であるので争う余地はない。
- 商標を用いたSABELLAの意思→?
- ユーザを騙す意思がなかったとしても混同形成の緩和はされない。
- ユーザにSEGAのゲームと認識させダウンロード及び自己のコピー機の販売を促進させようと、意図的に「SEGA」マークをBBS上のコピーに使用又は使用させていたと判断される。
- しかしSABELLAは「SEGA」商標がアップロード・ダウンロードされていたことは知らなかったと主張しており、重要な事実の争点が存在するので裁判所は混同のおそれの認定にあたっては本要因は考慮しない。
- 実際の混同→○
- 実際に混同があったという証拠はないが第9巡回区控訴裁判所は「混同のおそれの認定には実際の混同も故意も必要ではない。」と述べている。
- いったん製品が商取引に投じられれば混同が将来発生するおそれがある。
- 結論
- SABELLAのBBSにログインした者は違法コピーのゲームでもSEGAによるものと考えるであろうから混同のおそれがあったと認められる。
- 被告自身による商標の使用があったか?→?
- SEGAはSABELLA自身による「SEGA」商標の使用を証明できていない。SABELLAは自分が「SEGA」商標を使用していたこと及びユーザによる使用を知っていたことに関して否定しているので重要な事実に関する争点が存在する。
- SEGAの証明は寄与侵害を立証するかもしれないが、本件において商標権は直接侵害しか請求されていない。
- 連邦不正競争行為及び原産虚偽表示
>>>>>>連邦不正競争行為責任及び原産虚偽表示に関するSummary Judgmentは否定
- SEGAはSABELLAの「SEGA」商標使用により消費者が混同するおそれがあったことを証明しなければならない。
- BBS上に「SEGA」商標が用いられたことにより混同及び損害発生のおそれがあったことは認めるが、SABELLAが実際に使用・採用したか否かについては重要な事実に関する争点がある。
- 州商号権侵害
>>>>>>州商号権侵害は肯定
- California Business & Profession Codeの内容
- 正当な管轄権を有する裁判所は本規定に関する商号権侵害の差止命令可能。
- 法人は自分の法人名を商号として使用する排他的権利を有する。
- 侵害の認定には商標と同様に混同のおそれが必要である。
- 混同のおそれがあったか?→○
- SEGAは混同のおそれがあったことを立証している。
- 本法は商号権を侵害する商号の「いかなる使用」をも差止める権限を裁判所に認めており、SEGAはSABELLAによる商号権侵害を証明した。
- 州不正競争行為
>>>>>>州不正競争行為責任に関するSummary Judgmentは否定
- SABELLAが「SEGA」商標を使用したことに関して連邦商標と同様に重要な事実に関する争点が存在する。
- 差止→○
- 差止命令を出さないとさらなるSEGAのゲームのアップロード、ダウンロードによる著作権侵害のおそれがある。
- SEGAが著作権を有する全てのゲームについて終局的差止を命じる。
- カリフォルニア州法商号権侵害に関しても使用差止を命じる。
- 金銭賠償
- 法定損害賠償(著作権侵害)→$10,000
- 著作権法により原告は現実損害賠償額又は法定損害賠償額のいずれかを選べるが、SEGAは法定損害額賠償を選んだ。
- 故意侵害に対しては1著作物につき$100,000以下ならば裁判所の自由裁量で賠償額を決定できる。本件は著作物がビデオゲームである点、故意侵害である点で「Dragon Pacific事件」と類似しているので、それにならい1著作物につき$5,000の賠償額とする。
- 本件ではSEGAは2つ(Jurassic Park, Sonic Spinball)のビデオゲームについて著作権侵害を立証しているので、$5,000×2=$10,000の賠償を命じる。
- 弁護士費用→○
- 裁判所は勝訴当事者に合理的な弁護士費用を与える裁量権を有する。
- 弁護士費用負担の認定にあたっては勝訴当事者の成功の程度・事件の事実・法的議論における不真面目性・動機・客観的不合理性・特定の状況下における抑止の必要性・著作権法の目的の促進等の側面から判断する。
- SABELLAの議論のいくつかは薄弱又は不真面目であるし、侵害行為を知り得べかりし事由も存在する。非侵害的用途を有するとも言えないコピー機の販売も行ってユーザの違法コピーを促進していた。
- SABELLAの行為は広範囲の著作権侵害を引き起こし市場に衝撃を与える。
- 弁護士費用を負担させることは将来の侵害の予防にもなる。
- 以上によりSABELLAに弁護士費用の負担を命じる。
- BBS管理者というだけで責任を負わせたのではなく、侵害行為に対する被告の具体的な寄与度及び被告の故意過失が論じられており、結論は妥当と思われる。
- 著作権侵害にしろ商標権侵害にしろBBS管理者に直接侵害を認定するのは難しいのではないか。
- 頒布権、展示権侵害を要求したら認容されただろうか?
- 本件で問題となっているのは複製権についての侵害である。それでは、仮に原告が頒布権や展示権の侵害を主張していれば、直接侵害が認められたのではないか (Playboy v. Frena事件参照) 。
→WIPO著作権条約のcommunication to the pubilic権については、agreed statementにおいて、単なるサーバ・スペースや通信施設の提供だけではcommunication に当たらない旨が決議された。これに従えば、今後仮に米国が頒布権で送信を扱うこととしても、頒布権についての直接侵害は通常は認められ難く、寄与侵害の枠組みでプロバイダの責任の可能性が論じられることになるのではないか。
- 寄与侵害に問われた者自身はuse していないのが、その者についてfair「use」をどのように考えるか。普通考えられるのは、直接侵害者につきfair useが認められると、寄与侵害に問われた者も救われる、という枠組み。しかしSONY判決では、SONYによるVCR の販売が商業目的か否かを判断している。直接侵害者についてfair useが成立するか否かとは別に、寄与侵害に問われた者についてfair useが成立する余地があるか?
→本件では、使用の性質についてはユーザの行為の観点から、使用の目的についてはBBS 運営者の観点から判断している。結局、裁判所はあまり整理せずに判断しているようだ。
- 商標権についても寄与侵害の余地を示唆したことは興味深い。(要件につきto be studies)
- 連邦商標権侵害のクレームについては、使用の有無につき被告が否認しているので事実に関する争点があるとしてsummary judgmentが否定された。他方、カリフォルニア州法上の商号権侵害のクレームについては、使用の認定につき裁判所の裁量権が大きいことを根拠にsummary judgmentが否定された。同じ事実についてだが、両法の要件の違いで判断が分かれたのは興味深い。州法上のクレームは、 (日本の商号と同様) 権利の及ぶ地理的範囲が連邦商標権に比べて限られているから、要件は緩くて良いということかもしれない。