ISSN 2759-4009 (Online)
当財団では、2024年4月から、新たな論文誌「SOFTIC Law Review」(略称:SLR)を刊行いたします。
SLRは、当財団の事業趣旨であるソフトウェア技術と法制度の交錯する領域に関する学術的な論考等を社会に広く発信し、また当財団の調査研究事業に係る成果を社会に還元することを目的として企画されました。
SOFTIC Law News(略称:SLN)が速報性を有するニュースレターであるのに対して、SLRでは、その時節に照らして設定したテーマ、論点について、研究者・法曹実務家・企業実務家を執筆陣にお招きし、論点分析の深さ・充実度に焦点を置いた論考等を掲載してまいります。
最新号 Volume 1, Number 2 (October 2024)
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SOFTIC Law Review編集委員会委員長
慶應義塾大学大学院法務研究科
教授 奥邨弘司
ソフトウェア情報センター(SOFTIC)は、ソフトウェアプロダクトに関する普及啓発・調査研究、ソフトウェア等の権利保護に関する調査研究、プログラム著作物に係る登録事務などを主たる事業として、1986年12月に財団法人として設立され、その後2011年に一般財団法人への移行を経て、今日に至ります(次頁の「SOFTIC歩み」参照)。
その間、特許庁のコンピュータソフトウェアデータベースの構築に協力する電子化情報作成事業、半導体集積回路の回路配置に関する設定登録事務等の業務、ソフトウェア等に関する紛争に係る仲裁・和解の仲介サービスなど、様々な事業を推進してきましたが、設立以来、一貫して注力してきたのは、ソフトウェア等の権利保護に関する調査研究事業であり、それは、SOFTICのDNAといっても過言ではありません。
設立の翌年さっそく、ソフトウェアの法的保護に関する国際シンポジウムの第1回目を開催したこと、ソフトウェア等の知的財産権問題に関する国内外の判例や動向をまとめた「SLN:SOFTIC LAW NEWS」を発刊したこと、ソフトウェアの権利保護に関する調査研究委員会を立ち上げたことが、それを物語っています(SOFTICの調査研究の取組の今日までの足跡は、椙山敬士弁護士・吉田正夫弁護士の寄稿文をご覧下さい)。
本誌SOFTIC Law Reviewは、SOFTICのDNAを継承し、さらに発展させていくための新しい取組です。これまで、調査研究事業は、その時点の注目テーマについて速報性を重視して発信していくSLNと、産業界・法曹界・学界の専門家によって年単位でテーマを深く研究していく委員会活動との2本柱によって、推進されてきました。
SOFTIC Law Reviewは、従来の調査研究事業ではカバーできていなかった部分、つまり、時々の注目テーマについてスピード感を持ちながらも深く研究し、その成果を広く発信していくことを目指しています。そこで、SOFTICがこれまで培ってきた知的・人的資源を活用して、論文誌を創刊することとしました。年2回(将来的には3回を予定)の刊行で時宜のテーマに対応し、オンライン誌とすることで発信を強化します。内容は、各分野の専門家による論考や座談会記事などで構成し、オンライン誌の利点を活かして字数無制限で、深く鋭い研究成果を披露していただきます。
究極のテーマは、ソフトウェア等の権利保護ですが、毎号のSOFTIC Law Reviewが取り上げるテーマは多様です。と言うのも、SOFTIC発足当時は、ソフトウェアと言えばコンピュータ・プログラムを意味し、流通は磁気記録媒体、社会的には、オフィスや研究所など限られた場面での利用が主でした。また、関係する法律は著作権法が中心でした。しかし、今やソフトウェアには、あらゆるデジタル情報、デジタルコンテンツが含まれ、その流通手段も光記録媒体やインターネットに様変わりしました。しかも、日常生活のあらゆる場面で、ソフトウェアは利用され、クラウドやメタバース、AIなど、以前は想像もできなかったような応用が進んでいます。さらに、ソフトウェアに関係する法律も、著作権法だけでなく、特許法、意匠法、商標法、不正競争防止法(営業秘密、限定提供データ)など拡大を続けています。そういった変化を踏まえつつ、そして将来も見据えながら、ソフトウェア等の権利保護を、広い視点で取り上げて行きます。
新しい取組であり、走りながら考えているところも少なくありません。論考の著者、座談会の出席者をはじめ、SOFTIC内外の多くの関係者のご協力で、なんとか創刊号を世に出すことができました。
SOFTIC Law Reviewが、ソフトウェア等の権利保護に関心のある、産業界・法曹界・学界の皆様のお役に立つことを期待すると共に、皆様が、論考の著者などとして積極的に参加してくださることを願うばかりです。
「・・・3、2、1、メインエンジン点火、リフトオフ!」
(SOFTIC Law Review 創刊号より)