先週の講座で小さな声でお話をしたこと。データだが、「知的」ではないという語義の点はともかく、例えば機械によって生成されるデータが(伝統的に知的財産権法によって保護されてきた、著作物に相当する等のデータを除き)、知財法で保護されるべきものの一つと位置付けられてきていることに個人的にずっと違和感がある。知的財産基本法では「『知的財産』とは・・営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報」(第2条)とあって営業秘密以外にも「事業活動に有用な情報」があると示唆されていて、「限定提供データ」を保護することとした不正競争防止法は「知財」を保護するばかりではないとは言える。しかし宝の山として産業活動に特に大きな意味を持つ個人情報は、むしろ知的財産とは意識されていないのではないか。機械によって生成される多様な情報を化体するデータも、利用する立場から見れば、どちらかというと個人情報に近い(その意味を見出せれば、だが)宝の山と言える。
知的財産として取り扱って法的に囲い込む理屈を与えるよりも、技術的な手段で一定の制約を付すことは仕方ないかもしれないが共創領域に置いて、その活用から得られる利益を分かち合うものとして取り扱った方が、人類の福祉に資するのではなかろうかとずっと思っている。