もう20年前なのだが、研修で、割と長い期間を野中郁次郎先生の謦咳に接するという、まことに貴重で贅沢な経験をさせて頂いた。野中先生は、知識創造がどのようになされていくのかをモデル化して、それをSECIと名付けておられる。S=Socialization →E=Externalization →C=Combination →I=Internalizationという暗黙知から形式知へ表出され、それが結合されて再び暗黙知化されるというプロセスをスパイラルに循環して、知識が創造されていくと教えて頂いた。劣等生の私には、実はSocializationという行為(態様)が最も印象深かった。場を共有する中で、例えばある人が考えていること(暗黙知)をその人の表情や仕草から感じ取る。・・・ご存知ない方は劣等生の私の書くことを鵜呑みにせず、先生の本をお読み下さい。

知識を創造するというほど大きな意味を持つ場合でもなく、ちょっと前に書いた飲み会の場などでしばしばあることだし、仕事の話をしていてもあることだが、目が泳いだり、目を伏せたりなどの微妙な表情や、目の奥に揺らいでいるものから、賛成していないなとか、渋々だなとか、興味がありそうだな、というようなことを感じ取る(人間の体を駆使した心理表現というのは侮れないと思う。人間が言語を獲得するずっと以前から使っているのだから。・・・欧米人?は口元を確認できないマスクが苦手という話もあった)。

テレワークは、打合せというと勢いテレコンにならざるを得ない。そうすると、こうした微妙な部分は伝わらない。はっきりと言うしかないのだ。ただ、口にするにはそれなりの勇気が要るし、そもそも口頭や文章の表現力の問題となる。言葉足らずだったり、言い過ぎてしまったり(冗談を言ったつもりでも、そうとは受け取られず相手が怒ってしまったこともある)と、自らのリテラシの低さを反省したことは多々ある。テレワークの当初にしばしば私が起こしたミスコミュニケーションは、起こるべくして起こったと思う。テレコンでも、アバター表現の先達が身近にいるが、自分はその点でも全くダメだ。Googleなどのように大層な知識を創造するのではないが、リアルに顔を合わせて、仕事に取り組むスタイルが良いと思うのだ。

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