目次
第八章
第一節
一、はじめに
二、用語解釈
三、明細書
四、発明類型の審査
五、特許要件
第八章 特定技術領域の審査基準
第一節 コンピュータ・ソフトウェア関連発明
本「コンピュータ・ソフトウェア関連特許審査基準」(以下本基準とする)は、台湾で現行の専利法や専利法施行細則を基にし、加えて専利審査基準総則編中の制定基盤、アメリカでの特許審査ガイドライン、日本の特許審査基準等といった関連資料を参考にして制定されたものである。
今まではコンピュータ・ソフトウェアに関する特許は認められておらず、その為、著作権方式で保護してきたのであるが、これは単にアイデア(idea)の表現形式の保健に限定されるだけで、アイデアが及ぼす機能は保護されず、特許権のように、他者が同じ内容で創作した物を排除することはできない。また、ソフトウェア産業が著しい発展を速げているここ数年来、各国は、コンピュータ・ソフトウェアの実質的な技術機能は保障され支援されるべきであり、それを運用して産業発展を促すべきであるとする認識をしはじめた。その為、コンピュータ・ソフトウェア関連発明に関しては、専利法による保護を与え、そして特許権を許可するというのが、先進国での一般的な考え方になっている。
本基準はコンピュータ・ソフトウェア関連発明を審査対象にするための基準であり、たとえ特許請求の際にソフトウェアとハードウェアとの連結方式により限定される具体的構造(物の発明に属する)、または直接的、間接的なコンピュータによって実施する手順またはプロセス(方法の発明に属する)が明記されていなくても、発明に関する詳細な説明または図面による内客の記載を通じて、審査委員がそれらをソフトウェアとハードウェアとの連結方式により限定される具体的構造、または直接的、間接的なコンピュータによって実施する手順またはプロセスであると認定すれば、実質上コンピュータ・ソフトウェア関連発明として認められるのである。
しかし、もし仮に明細書か図面内容がソフトウェアとハードウェアとの連結方式により限定される具体的構造、または直接的、間接的なコンピュータによって実施する手順またはプロセスと認定されなければ、コンピュータ関連発明ではないものとみなされ、別の審査基準にて審査が行われる。
コンピュータ・ソフトウェアは基本的には演繹法(a1gorithm)にて実施される方式の一つであり、演繹法には自然法則、科学原理、数学的方法、ゲームまたはスポーツの規則又は方法、更には数学的方法とは無関係の推理的手順、物理現象の推断といったものが含まれている。その為、コンピュータ関連発明は特許であるかないかを審査して認定する際に(“発明類型の審査”一節に記載)、慎重さが要求され、特許請求の範囲に部分的な内容「専利法第二十一条の特許を認めず」の項目に当した場合の即断的な拒絶は行なうべきではない。必ず全体として(asawhole)取り扱い、その解決手段が自然法則を利用した技術的思想の創作であるか否かを審査すべきである。例えは特許請求の範囲に数学的公式または計算方法があったら、即断的に特許取得の可能性を全て否定すべきではないということだ。ただ特許請求範囲に、単に数学的公式または計算方法(数学的公式または計算方法そのもの)を明記しただけで、如何にコンピュータを利用し、そして技術的効果を実現するかということを記述しなければ、それはただ数学論理の演繹にて解決されたものと認定され、特許権利保護の範噂には入らないものとなる。
また、コンピュータ・ソフトウェアは無形物であり、ハードウェアにより実行されてはじめてその技術的効果を生ずるが故に、以前にはかなりのコンピュータ・ソフトウェア関連発明の請求案は、特定のハードウェアと連結しないと発明の類型に該当できないという誤解があった。しかし、これでは当該発明に主張される特許請求の範囲は狭くなり、甚だしく違う方向へ向かうことになり、これら問題点はクリアーされる必要がある。また、コンピュータ・ソフトウェアはハードウエアによって実施されてはじめて当該発明の課題を解決することができるが、“特定”のハードウェア・プラットホームに限定する必要はない。詳しい説明は本基準四、(二)“物の発明の類型”一節を参照するとよい。
コンピュータ・ソフトウエアのハードウェアによる実行・及びその実行に伴うデータの処理の際は、必ずコンピュータ内部または外部にて、転換による具体的効果が現れる。この種の転換効果は物理的にせよ化学的にせよ人間の能力を経て完成した物ではなく、自然法則を利用したものとされ、専利法第十九条「自然法則を利用する」の規定に該当する。だが大切なのは、たとえ「ハードウェア資源を利用した処理」の箇所が自然法則を利用したものとみなされても、特定のハードウェアとソフトウェアとの連結された具体的構造に限定しない場合は、「コンピュータを用いて処理する」のみとされ、技術的思想はないものとみなされる。即ち特許請求の範囲の全体として(asawhole)取り扱い審査されることになり、そのソフトウェアが実行された手順又はプロセスが自然法則を利用した技術的思想で創作されたものであるか否かで決められる。
この他に読み取り可能な記録媒体の発明に関して、今までは特許の範囲には入れられてはおらず、最近アメリカ、日本等の国で認められるようになった。こうした世界の潮流に合わせて本基準では記録媒体の発明を審査対象の該当物に入れた。
本基準には付録一、二にコンピュータ・ソフトウェア関連発明を判断するためのフローチャートが載せられており、審査の際は、このフローチャートを基にして、コンピュータ・ソフトウェア関連発明の審査が執り行われることになる。
注意:本基準において取り上げた以上の実例は、本基準をよりよく理解するためのもので、補助的手段として作られたものである。とは言え、いかなる状況下でも本文の開示に反することはできないようにしてあろ。尚、本基準が取り上げた実例は、明細書のモデルになされるものではない。また、コンピュータ・ソフトウエア産業は特殊性があるので、本節本基準の規定は、コンピュータ・ソフトウェア関連発明の審査にのみ適用される。
本節に定義された用語解釈は、本基準で使用される用語を更に明確にし、誤解や混合を避けるために書かれたものである。本基準で下記の用語を用いる場合は、本節の基準にて定義される。ただし、本節の用語解釈は明細書作成の際そのままの形で使用されるべきものではない。例えば、本節の第9項で使用されている“ステップ”の用語は、一般の明細書には、おそら1“単一の動作”或いは“一連の動作”(すなわちstep(1)またはsteps)とされている。従って、何を基準に明細書の用語を定めるかに関しては、本基準三、(二)“特許請求の範囲”を参照されたい。
1.コンピュータ・ソフトウェア関連発明(computer software related invention):その発明の実施にソフトウェアを必要とする発明をいう。
2.演繹法(algorithm):論理的推断の過程の表す方式で、ある問題を解決するための方法をいう。自然法則、科学原理、数学方法、物理現象、抽象的観念、または人間の思考のステップなどの方式によって生ずるプロセスが含まれる。
3.コンピュータ:人間の入力した信号、保存されたプログラム、操作指示、またはデータの記録をもとに演算処理を行い一定の成果を生み出す有形物のこと。例えば、電子計算機、マイクロプロセッサ、シングルチップマイクロプロセッサ、CPUなど。ただし、上述のものに限らない。
4.ソフトウェア(software):コンピュータ動作におけるプログラムやプロセス、または手順のこと。
5.プログラム(program):コンピュータによる処理に適した命令の順番付けられた列をいい、コンピュータ・ソフトウェアが表現された形式の一つである。
6.プログラムリスト(program listings):プログラムを操作指示の形で、紙面印刷、画面表示などによる提示そのものをいう。
7.操作指示(command):コンピュータ操作のために出される記号や文字。
8.手順(procedures):特定の目的を達成するために、順序性がある一連の処理や操作をいう。コンピュータ・ソフトウェアの表現形式の一つ。
9.ステップ(step):特定の機能を遂行する操作や処理動作、または一連の操作や処理動作のこと。コンピュータ・ソフトウェアの表現形式の一つ。
10.操作、処理動作:コンピュータの単一の動作。
11.方法:具体内且つ非抽象的な成果を目的とする、一連の動作、過程、操作またはステップのこと。
12.記録媒体:情報を物理的装置によって、保存または/及び読み取り可能な媒体をいう。
13.データ構造(data structure):データ要素の問にある実際的又は論理的な関係があるものをいい、特定のデータ操作の機能をサポートするために設計された。
14.ハードウェア資源(hardware resources):コンピュータ、コンピュータ周辺機器、コンピュータ操作指示を受ける機械、またはコンピュータに入力されたデータの処理及びエネルギーの供給を行なう機械、メモリー、入力装置、出力装置など、処理や操作や機能遂行に使われる物理的装置又は物理的要素のこと。
明細書作成の際は、先行技術、発明目的、技術内容、特徴、機能などを明確に記載し、当業者にその発明の内容を理解させた上で実施させるようにする。特許請求の範囲として、特許を請求する主題、技術内容および特徴が具体的に記され、専利法第二十二条第三、四項の規定に該当すべきである。
発明目的の記入に関しては、請求された特許の主題は必ず実用性を有するべきである。すなわち、実質的な応用価値を有する発明である。審査では明細書全体が審査され、発明に関する詳細な説明、開示されているすべての特定の実施例、特許請求の範囲、請求対象が主張されたすべての特定の機能などが含まれ、その実用性が指摘され理解される(2)。
出願者の発明対象の技術内容、特徴、機能が審査される際、その詳細な開示及び特定の実施例が審査される。また、以下の段取りにてコンピュータソフトウェア関連発明の審査が進められる(3)。
ステップ1.当ソフトウェアが実行された手順によって、コンピュータは何をするかを決定する(4)(すなわち、当コンピュータの機能性)、
ステップ2.その機能性を与えるためにコンピュータがどのように構成されているか(すなわち、どのような要素がこのコンピュータを構成し、どのようにしてそれらの要素が結合し互いに関連して特定の機能性を提供するか)を決定する、
ステップ3.このコンピュータと、発明を構成するコンピュータの範囲外にある他の主題(すなわち、機械、装置、材料、このコンピュータの一部又は全体により実行されるプロセスステップ以外のステップ)との関係を決定する(5)。
特許請求の範囲の認定に関することであるが、審査の時は請求項を逐一審査し、請求項の一部分が特許条件に該当しないことを理由に全体を拒絶してはいけない。各請求項に制限を定める場合は、必ずあらゆる明細書の記載に当制限を表す部分に関連させる。すなわち、当制限設定の根拠を探し出し、それら請求項に合理的な設定をする。
専利法第22条第3項「....当業者に発明内容を理解させ実施させるため、明細書には、特許請求の範囲の他に、先行技術、発明目的、技術内容、特徴及び機能などの記載が必要」。
1.当業者
提示した記載内容は必ず当業者に理解させる。当業者とは、当発明内劉関係する技術全般をよく理解した者をいう。
2.明細書の開示による内容理解(6)
ある場合には、明細書の開示により当業者が当発明を実施することができるが、文語の要求を満たしていない。文語の要求については、出願者が必ず当業者に何を発明したか、何を主張したかということを合理的に表示しなければならない(7)。また、明細書に関する文語の要求は、特許審査基準の総則編の規定に則して作成しなくてはならない。
出願者がコンピュータの重要な要素の説明をする際、たいていの場合、機能ブロック図を用いる。審査する際は明細書を考察し、それらフロック図がある他に、フロック図のハードウェアまたはハードウェアと関連ソフトウェアの有するすべての要素とそれら要素間の相互関連性の説明を適切に表示されるかどうかを確認する。
コンピュータ・ソフトウェア関連発明の特許明細書の図面は、データフロー図(Data Flow Diagram)、シュードコード(Pseudo Code)、ブロック図(Block Diagram)、フローチャート(Flow Chart)、タイムチャート(Time Chart)など技術特徴が表示可能なものを使用できるが、ただし、上述のものには限らない。
機能手段言語ミーンズ・またはステップ・プラス・ファンクション(Means or Step Plus Function Language)(8)とは、請求項が組み合わせ式の要素(e1ements)の場合に使用される方式である。それら要素の構造、材料、動作(acts)が明碓に記されていない場合に使用され、組み合わせ式構成要素の特許請求の範囲を記す際に用いる。一定機能を有する手段(means)やステップ(step)の記述を以て実現される。この方式を用いる場合、構造上、または順序上における煩雑な解説が不要であり、特許請求の範囲の記述もより簡略化できる。機能手段言語の方式にて特許請求の範囲を表示する際、あらゆる構成要素の範囲が決められる。ただしその反面、同機能を有する技術手段で開発された他の発明すべて、及び未発明の手段やステップをも包括することになり、明らかに不適当である。この問題点に関しては、専利法第56条第2項に「発明の特許の範囲は、明細書に記載された特許請求の範囲を基にする。必要な際は、明細書及び図式の審査がなされる」という規定が定められている。そのため、機能手段言語にて特許請求の範囲を記す際は、機能手段による構成要素の構成、材料、動作が、審査対象の明細書の記載内容と一致するものとみなされる。同時に、審査の際、知られている技術により特許請求の範囲に言われた要素の同じ機能が実行でき、且つ、要素の構成、材料、動作が類似することを発見した場合、或いは当業者が簡単に明細書に言った構成、材料、動作などを置換できると判断した場合、明細書にその特殊性と相違性を示す具体的記載が記述されている場合を除き、知られている技術の範囲とされる。
出願者はただ明細書に該機能手段に対応するあるコンピュータまたはコンピュータ要素の知られている構造を明らかに開示して、且つ、該構造がハードウェアまたはハードウェアと関連ソフトウェアと組み合わせで実現されれば、明確に機能手段制限を主張することができる。該機能手段は以下のように定義される。
(1)ハードウェア、或いはハードウェアとソフトウェアにて実行される、ある特定の機能を備えたコンピュータ、または
(2)コンピュータ・プログラムにより指示された、一連の特に決められた動作を実行するコンピュータの論理回路または他の構成要素、または
(3)実行可能な操作指示を収納したコンピュータ記録媒体であり、該コンピュータ記録媒体にある操作指示というのは、コンピュータを特殊な方式で実行させることができるコンピュータ・プログラムをいう。
請求項に機能手段言語の形式が発見されながら、明細書に公知でない部分の対応的な開示を有しない場合は、当請求項が発明の主張及びその限定を明確に指摘したとはされない。例えば、出願者が明細書の記載に実行された機能的側面だけを明記し、その機能の基となるハードウェアや、ハードウェアとソフトウェアの結合関係に対する明示や暗示がない場合や、過去の特許請求案との関係や、関連文献の提示がない場合は、これら特許請求案で用いられた機能手段言語は何ら“構成”がなされていないものとみなされる。審査の際に、相応の開示がないという理由で、該請求項を拒絶する。出願者がその解説の責任を負い、請求項に機能手段が対応する特定構造、材料、明細書に機能手段を表示する実施例を明記しなければならない。また、もし機能手段言語の構造がある形式にて確定され、以て当機能を実行するメモリーまたは論理回路(例、すでに定義されたコンピュータプログラム)の実行が可能とされるならば、請求項に記載された機能手段の“構成”があるものと承認される。
明細書の開示、特に請求項の箇所は、コンピュータが実行された方法文はステップで定義すべきであり、ただソースコード形式またはオブジェクトコード形式のみを引用するものではない。ただし、当業者が発明の解決手段をもっと理解するために、自己文書処理(se1f-documenting)プログラムコード(9)、例えはシュードコード(Pseudo Code)の適度な運用が可能な場合に限り承認される。
なお、以下はソフトウェア関連発明における十分な書面記述ということに違反する例である(10)。
例1.未定義で慣用されていない技術用語、省略符号、記号といった、意味不明りょうである結果、請求項に係る発明が実施できない場合。
例2.発明の詳細な説明の記載において、請求項中の発明特定事項に対応する技術的手順又は機能が単に抽象的に記載してあるだけで、その手順又は機能がハードウェアあるいはソフトウェアでどのように実行又は実現されるのか不明りょうである結果、請求項に係る発明が実施できない場合。
例3.発明の詳細な説明の記載において、請求項に係る発明の機能を実現するハードウェアあるいはソフトウェアが単に機能ブロック図又は概略フローチャートで説明されており、その機能ブロック図又はフローチャートによる説明だけでは、どのようにハードウェアあるいはソフトウェアが構成されているのか不明りょうである結果、請求項に係る発明が実施できない場合。
例4.請求項がその発明の果たす一又は二以上の機能によって表現されているが、発明の詳細な説明ではフローチャートで説明されており、請求項記載の機能とフローチャートとの対応関係が不明りょうである結果、請求項に係る発明が実施できない場合。
上述のあらゆる場合、すべて開示は不完全であるとみなさる。出願者は具体内な説明や修正による補足部分を提出しなければならない。
3.明細書により、発明が実施可能(11)
コンピュータ・ソフトウェア関連発明の明細書により、当業者が保護を求める発明の実施が遂行でき、明細書の開示により、当業者がコンピュータを要求された機能を有するまで構成できるべきである。その際、その応用範囲内おいて当業者が複雑な実験に頼らず、当コンピュータと主張された発明の他の要素と相互関連をさせる。説明しなくても当業者が知っていることは別論である。
コンピュータソフトウェア関連発明の技術領域は一つ以上に及ぶことが多い。そのため、この類の発明における明細書は、必ず当業者がそれを基に実施できるように記述する。例えば、請求項の対象が、一化合物の立体構造の顕示を行なうコンピュータで、請求項の実施はこれを以て行われるとする。この場合、明細書の記載には以下の点が要求される。
(1)分子の模型化分野の当業者に分子の模型化の方法を理解させ、実施可能にさせる;そして
(2)コンピュータプログラミングの分野の当業者には、化合物の立体構造を表す画像を創出し表示するようにコンピュータに指令を出すプログラムを作ることを可能ならしめる。
特許請求の範囲とは、特許権の範囲の設定を意味するため、審査は慎重に行われなければならない。その目的は出願者が求める特許保護の範囲を定義付け、特許請求範囲と出願者の発明との関係の明瞭化にある。審査の際、各請求項が特許請求規定に適合しているかを判定する前に、各請求項の用語や、語彙の考査または認定が行われる。
審査時に行なう特許請求の範囲の分析は、まず各特許請求項の制限に従い執り行われる。方法に関する発明の特許請求項は、実行されたステップ或いは手順に限定されるべきである。また、物に関する発明の特許請求項に関しては、確実で具体的な構造に限定される。ハードウェア、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせ、またはソフトウェアの実行により作り出される生産物が含まれる。
発明が機能手段言語を用いているかどうかを問わず、審査の際は各請求項の範囲と、明細書記載の特許請求の範囲との照合を行なう。これは、審査時の各請求項の範囲認定による正確な遂行を目的とするからである。
特許請求の範囲の特許請求主題は、その範囲を限定する語彙によって定義される。審査の際は、この請求主題を考査しなければならない。一般に、その語彙が特許請求の範囲を限定するかに関しては、特許請求項に使われた文章構造、及び語彙の特定意義で決められる。建議性や選択性のステップが実行する要求がない場合、及び用語上に請求項を一特定の構造に限定されていない場合は、特許請求の範囲または特許請求項の限定はできない(13)。
審査の時は特許請求の範囲で使用されている語彙の意義を、必ず明細書の内容に従い判定しなければならない。その語彙が科学用語の名詞で翻訳である場合は原文を記す必要がある。その用語は国立編訳館で訳されたことがある場合は、その訳された用語を基準とする(14)。また、特許請求の範囲に出願者自身による語彙を使用する場合は、明確な語彙の定義を提示しなければならない。この定義は特許請求項中の語彙の意義を解釈する際に用いられる。審査の際は、出願者のあらゆる陳述が明細書に記された定義と同じであるかが判断される(15)。出願者が明細書の中に語彙の定義付けを行なわない場合は、その語彙は“一般的意義”を基準にして解釈される。
審査の時は、必ず当業者の観点から特許請求の範囲が解釈される。特許請求の範囲及び明細書の開示は、何らかの根拠なしに評価されるわけではない。請求項に発明の要素が周知の物である場合、出願者は特にこれら要素の説明をする必要はない。この状況では、これら要素は一つの或いは全ての専門的領域における周知のハードウェア又はハードウェアとソフトウェア結合の技術などが有する一般的機能を具備したものとして判断される。
明細書とは出願者が提示された語彙の定義を判定する際に役立つものであるが、明細書内に記述された範囲限定は、同じ範囲限定のない他の特許請求項には適用されない。審査の際は、対象の請求項に対し合理的な認定を行なわなければならない。
最後に、特許請求の範囲を審査する際は、特許請求の範囲の全ての限定を念入りに考慮されなけれならない。また、特許で主張する発明を個々の要素を独立させ、個別に審査を行うことはできない。そうはしないで、特許請求の範囲は全体として(as a whole)考慮されなければならない。
コンピュータ・ソフトウェア応用の技術領域は広範で、多くの業界では、物や方法の発明に関して全てコンピュータ・ソフトウェア関連技術を利用している。この種の特許請求が発明に属するかどうかの審査は、業界別に区分して行われるのではなく、応用技術の本質を以て行われる。例えば、コンピュータ・ソフトウェア関連技術が商売の方法または医療方法行われる場合でも、商売の方法または医療方法自体として請求されるわけではない。その為、商売の方法または医療方法とする別業界の応用対象とみなし拒絶してはならず、利用されたコンピュータ・ソフトウェア関連技術自体について判断することが必要である(16)。すなわち、専利法第19条の規定に従うこと。
特許請求の主題は専利法第19条の規定に適合しない発明は、すべて本節で定義する発明に属さない類型とされ(ここで次のことを強調しておく。本節の以下で挙げる例で、「発明に属さない類型」のものでないと判定したら、必ず発明に属する類型に該当するのではなく、更に物成いは方法の発明に属する類型、または記録媒体形式の発明の審査手順にて判断する)。特許審査基準(17)の説明に従い「自然法則を利用する」に該当しないのは以下のものである。
自然法則自体
単なる発見
自然法則に反したもの
自然法則を利用していないもの
この他に、コンピュータ・ソフトウェア関連発明の特性は、解決手段が自然法則を利用した手段であっても、もし「コンピュータを用いて処理すること」のみである場合、「媒体にプログラム又はデータを記録すること」のみである場合、又は「『コンピュータを用いて処理すること』及び『媒体にプログラム又はデータを記録すること』」のみである場合のいずれかの一つに該当すれば、何の「技術的思想」を備えていないものとみなされ、専利法第19条の規定に適合しないものとされ、コンピュータ・ソフトウェア関連発明には属さない(18)。
1.「技術的思想」を備えていないコンピュータ・ソフトウェア関連発明
(1)「コンピュータを用いて処理すること」のみ:
如何にしてコンピュータのハードウェア資源を用いて処理を行なったかという具体的な事項に間する直接的或いは間接的な記載がないものをいう。
(2)「格納媒体にプログラム又はデータを記録すること」のみ:
特許審査基準(19)では技術的思想ではないものを(一)技能、(二)情報の単なる提示、(三)単なる美術的創作、と分類している。その中に「情報の単なる提示は、ただ情報の内客を掲示しただけに過きず、技術的思想や特徴は無く、発明の類型には属さない」とされている。例えば、音楽を収録しただけのCDがその例である。
「情報の掲示(掲示自体、掲示手段または掲示方法など)に、もし、技術的思想や特徴を有する場合は、発明の類型に属するものとする」。
コンピュータプログラムやデータ自体は無形物であるため、記録媒体への保存が可能てなければ、発明の類型には属さない。しかし、ただのコンピュータプログラムや、格納媒体中の保存データでも、もし何も具体的効果がない場合は、やはり発明の類型には属さない。ただし、その媒体の中にあるコンピュータプログラムやデータを、機械を通じてコンピュータが読み取り、そしてコンピュータ処理において機能上或いは構造上に相互関連性を生じる場合(20)は、更に統けて審査が行なわれ、その実用的機能や応用性の有無を対象とした審査がなされる(21)。
審査対象が情報内容で、それが「情報の単なる提示」と「技術的思想及び特徴を有する」のいずれに属するかに関しては、当基準四、(四)“記録媒体形式の発明の類型”を参照されたい。
(3)「『コンピュータを用いて処理すること』及び『媒体にプログラム又はデータを記録すること』」のみ:
2.コンピュータ・ソフトウェア関連発明で、「自然法則の利用」に適合しない項目
(1)自然法則自体
特許審査基準(22)によれば、「発明とは、自然法則を利用した技術的思想の創作であり、技術的課題の解決をもって、期待された発明の目的の達成をなす」とあり、この自然法則自体はすでに存在している真理であり、人類の創作で得たものではない。従って、如何なる自然法則でもそれ自身を特許請求範囲に主張しようとも、専利法第19条の規定に適合しない。例えば、コンピュータ・ソフトウェアが描き出す自然法則自体(例、E=MC 或いはニュートンの法則など)は、発明の類型には属さない。
(2)単なる発見
特許審査基準(23)によれば、「創作は『発明』の一大要素であり、例えは「鉱石」などの天然物、及び自然現象の発見などには、創作行為は見られず、これらは自然法則の技術的思想を利用した創作ではなく、単なる発見の行為に過ぎないため、発明の類型には属さない」。天然物や自然現象(例えは電流、磁場、或いは天文など)は既存の事実であり、人の創作によるものではない。よって、もし特許請求の範囲に僅か自然現象自体のみ記されている場合は、ただの普通の発見とみなされる、
しかし、「発見された自然現象を産業上利用可能な技術的思想の創作へと変換できれば、それは創作的行為で得た『発明』に属し、単なる発見行為ではない」ものとされ、従って、ハードウェアやハードウェアとソフトウェアの結合の方式によって、ある物質を精練してきた方法、或いは専門家システム利用による希少鉱物の探鉱などは、単なる発見とはみなされない(24)。また、ある天然物或いは自然現象の発見により設計された装置は、「単なる発見」に属さないので、更に審査を行なう(25)。
実例1:
発明の名称:一化合物の立体構造を分析し、ディスプレイする装置
特許請求の範囲:
1.一化合物の立体構造を分析し、ディスプレイする装置。以下のものが含まれる。
一化合物の分子データを基にプログラム計算を実行し、その結果をアウトプットする論理回路の装置;
計算結果をもとに一化合物の立体構造をアウトプットする生産装置;及び
一化合物の立体構造をアウトプットするディスプレイ装置がある。
説明:
化合物の構造は、たとえ既存の事実ではあるが、上述の特許請求の範囲で主張したのは、特定のコンピュータ(或いは特定の装置)であり、化合物の構造を発見する方法とは無関係であるため、更に審査の必要がある(26)。
(3)自然法則に違反したもの
特許審査基準(27)に、「発明とは、自然法則を利用した技術的思想の創作であるため、技術的内容を利用した特許請求で、その一部が自然法則に反するものは、『発明』の類型には属さない」とあるため、コンピュータ・ソフトウェアの利用が自然法則に違反する場合、やはり発明の類型には属さない(28)。
例えば、ソフトウェア開発の過程において、非常に重要な課題となっているのが、開発中のソフトウェアが如何にして“停止不能な状態”(non-termination)を避けるかである。そのため、仮にあるソフトウェア発明の特許請求が検査専門のソフトウェア(それぞれのソフトウェアが“停止不能な状態”になるかどうかの検査を行なうソフトウェア)であるとしても、これは数学的方法で証明済みのことであるが、何ら規制がない条件のもと、演繹法が停止(termination)の問題の処理をするかどうかという問題を解決するのは不可能である。そのため、上述で主張した検査ソフトウェアは自然法則による方法に反しているため、発明の類型には属さない。
(4)自然法則を利用していないもの
特許審査基準(29)に、「特許請求の主題は、“自然法則を利用した”以外の法則でなされた創作に間して、たとえ創作でも、専利法第19条の定義に適合した発明でないため、発明の類型には属さないものとする」とある。例えば、経済法則、人為的な決定、心象的な活動のみのコンピュータソフトウェアの場合は、発明の類型には属さない。
ただし、そのコンピュータ・ソフトウェアが自然法則を利用していない部分を含んでいた場合でも、全体的に自然法則を利用しているならば、技術的特性を考慮し、更に検討を行なう。
実例2.発明の名称:ゲーム装置持許請求の範囲
1.トランプゲーム装置とは、コンピュータ利用によるトランプゲーム娯楽装置のことで、その特徴としては:
少なくとも一人のプレーヤーが複数枚のカードの組み合わせの中から、ある組み合わせを抽出して、異なった得点を獲得するという得点計算機構。
2.トランプゲーム装置とは、コンピュータ利用によるトランプゲーム娯楽装置のことで、その特徴としては:
−役データテーブルと一得点データテーブルを記憶する記憶機構(その役データテーブルに複数枚のカードの組み合わせに対して所定の役データが対応していて、その得点データテーブルに役データに対して得点データが対応している)。及び、
−アウトプット機構(選択された複数枚のカードの組み合わせを基本に、役データテーブルの検索が行われ、対応する役データを抽出し、該役データを基本に前記得点データテーブルを検索して対応する得点データを抽出し、抽出された前記役データの全て及び前記得点データの合計得点をアウトプットする)を有する。
説明:
請求項1に、「複数枚のカードの組み合わせの中から、プレーヤーは抽出する力一ドの種類を決定する」とあり、人為的な決定による方式であるため、「自然法則を利用していないもの」とみなされる。ただし、この請求項には、自然法則を利用した解決手段は、「異なった得点を獲得した場合における得点計算機構」を有しているため、特許請求の範囲を全体として取り扱い、やはり自然法則を利用しているものとなる。しかし未だ、如何にしてコンピュータ・ハードウェア資源を利用して処理を行なったかに間する直接的、間接的な具体的事項の記載がないため、これは「コンピュータを用いて処理すること」のみであり、技術的思想を有していないため、発明の類型には属さない。
請求項2に、人為的な決定の部分があるが、この請求項を全体として取り扱い、その中に如何にしてコンピュータハードウェア資源を利用して処理を行なったかに関する直接的な具体的事項が含まれている。この部分は自然法則を利用した技術的思想で単なる「コンピュータを用いて処理すること」のみではないため、更に一歩を進めて審査を行なわなければならない(30)。
3.法定により発明特許を与えないコンピュータ・ソフトウェア関連発明項目
専利法第21条第1項に、発明特許を与えない五項目の法規が列挙されており、その中でコンピュータ・ソフトウェア関連発明と関係深いのが、第3,4,5号の規定であり、それは次の通りである:
科学原理或いは数学的方法
ゲーム及びスポーツの規則或いは方法
人間の推理カ、記憶力によって実行される方法式いは計画
(1)科学原理或いは数学的方法
もしコンピュータ・ソフトウェアがただ科学原理(例、万有引力)または数学方法(一つまたは一連の数学公式)自体のみを表示する場合は、法定により発明特許を与えない項目とされる。
ただし、そのコンピュータ・ソフトウェアが、科学原理或いは数学的方法を利用して、科学原理或いは数学方法を先取り独占することではない場合は、特許請求の範囲を全体として考慮し、その技術の特性は自然法則の技術的思想を有しているかどうかを判断する。
例えば、コンピュータを利用して、BCDコードをバイナリコード(Binary Code)に変換する方法の発明が挙げられる。この場合、特許請求の範囲に主張したのは数字コードの格式を変換する数学的方法自体によるものであり、全体として考慮し、「如何にしてコンピュータ・ハードウェア資源を利用して処理を行なったかを記した具体的事項に間する、直接的又は間接的な記載」がなされていないため、法定により発明特許を与えない項目には属する(31)。
実例3:
発明の名称:タクシーの距離メーター料金計算方法及び装置
特許請求の範囲:
1.コンピュータ使用の運賃計算方法、そのステップは:
a.運賃計算公式の実行、その公式は
65+〔(キロ数*2)一2コ*5、及び
b.画面上における計算結果のディスプレイ。
2.タクシー運賃計算装置、
センサー:車輪回転数のデータを測量し、車輪の回転数データと円周の長さのデータを打ち出す。
第一記憶装置:測量した回転数のデータの保存を行なう;
第二記憶装置:車輪の円周の長さのデータを保存する;
乗積装置:回転数のデータと円周の長さのデータを読み取り、双方のデータを乗積し、その結果のアウトプットを行なう;
第三記憶装置:乗積装置がアウトプットしたデータの保存を行なう;
計算モジュール:第三記憶装置がアウトプットしたデータの読み取りを行い、そのデータを2乗し、そこから2を差し引き、出た数字を5乗し、最後に65を加算する。そして計算結果のアウトプットを行なう;
アウトプット装置:その計算モジュールのアウトプットしたものをディスプレイ。
説明:
請求項1に間しては、タクシー運賃の計算に対する数学公式は明らかにされていても、「如何にしてコンピュータ・ハードウェア資源を用いて処理を行なったかを記した具体的事項に関ずる、直接的又は間接的な記載」が明らかにされていないため、ただ「コンピュータを用いて処理すること」のみによるものとなる。ここには明らかにこの数学公式の先取り独占が意図されていることから、法定により発明特許を与えない項目には属するものとされる。
また、請求項2に関しては、ハードウエア資源を利用した処理は、自然法則を利用した技術的思想の創作に属するものである。これは特許請求の範囲を全体として取り扱い、如何にしてコンピュータ・ハードウエア資源を用いて処理を行なったかを記した具体的事項を直接表したものに属し、「コンピュータを用いて処理すること」のみのものではなく、この数学公式自体を独占することもないから、更に一歩進めて審査を行なう必要がある。
(2)ゲーム及びスポーツの規則或いは方法
特許審査基準(32)に「ゲーム及びスポーツの規則或いは方法自体は、自然法則とは無関係であり、人為的規則及び方法を手段としていることから、必然的に人間の推理カ、記億カ、技能、偶然性及び精神的性質などの要因によってなされたものである為、自然法則を利用した発明とは言えない」とある。
以上の通り、ゲーム及びスポーツの規則或いは方法自体によるものは、法定により発明特許を与えない項目とされている。ただし、これら規則や方法を利用してビデオゲームやコンピュータ・ソフトウェアを製造した場合、例えは僅か部分的に人間の推理カ、記億カ、技能、偶然性及び精神的性質などの要因を以て製造した場合は、更にその技術の特性を考慮し、判断しなければならない(33)。
例えば、射撃による的当てゲームの計算上の規則などは、発明の特許主張はできないし、また、高得点の獲得を目的とした射撃方法も、やはり特許主張できない。だが、赤外線により構成されたラスタの場合は、それぞれターゲット表面がX軸とY軸に分かれており、射撃ポイント座標の測定が可能で、コンピュータ得点換算によるターゲット用自動得点計算装置或いは方法にて行われ、また、人間の推理カ、記憶カ、技能、偶然性及び精神的性質などを用いていない。その為、この件に関しては更に審査を統ける必要がある。
(3)その外、人間の推理カ、記憶力によって実行される方法或いは計画
発明とは自然法則を利用したもので、工業或いは産業にて技術思想の実践を通じて、必ず同一の効果を反復的に生み出す創作である(34)。もしコンピュータ・ソフトウェアの実行が人間の推理カ、記憶力によらないと、システムの選択認定ができない場合は、かなりの不確実性を生ずることになり、反復的に同一効果の再現は見込めず、法定により発明特許を与えない項目に属する(特許審査基準、第一馬第一章第四節1-1-13、例8“漢字検索コード方法”を参照)。
以上で強調しているのは、“人間”の推理カ、記憶力によって実行できる方法式いは計画のことである。もし人間の推理や判断による箇所をコンピュータプログラムに変換可能ならば、推理及び判断をコンピュータにて実行し、既定の条件に基づき自動的に実行される。例えば、決定サポートシステム、オートコントロールシステムなど、或いは人間の記憶情報によって実行できる箇所がコンピュータに保存して、コンピュータ自ら読み取って、応用が行なえる場合、例えば、エキスパートシステムのデータバンク部分があり、もしこれが反復再現効果を具備している場合は、更に審査を統ける必要がある。
“漢字検索コード方法”(すなわち中国語入力法)は、人間の推理力や記憶力によって実行される箇所を部分的に有しているが、特許請求の範囲を全体として考察し、自然法則利用による技術思想の部分を有しているので、更に審査を続ける必要がある。
1.コンピュータ・ソフトウェア関連発明における物の発明の定義
産業利用が可能で、自然法則を利用した技術的思想の創作であり、更にハードウェアとソフトウェアの結合方式によって定義される具体的構成が、即ちコンピュータ・ソフトウェア関連発明における物の発明の類型である。
2.コンピュータ・ソフトウェア関連発明における物の発明の類型
コンピュータ・ソフトウェア関連発明における物の発明の類型は、主に二つの種類に分けられる。(1)特定物に限定しないハードウェアとソフトウェアとの結合による発明、すなわち、あらゆる不特定のハードウェアにてソフトウエアの実行が可能な発明をいう;(2)特定のハードウェアに限定した、或いはハードウェアと特定のソフトウェアの結合方式による、具体的構成を有する発明。審査時には、特許請求の範囲を基本に、明細書に関連する技術的特徴を考慮した上で審査が進められる。この定義は以下に分類できる。物の発明の類型−第一種類、この類型は不特定のハードウェアに属する為、審査時は物の発明としての特許請求の範囲が、発明の類型に属するかどうか(方法の審査に関しては、方法の発明の類型の項を参照)を決定する為、実行するソフトウェアによる課題解決の方法式いは手段を審査する。物の発明の類型−第二種類、それは特許請求の範囲が発明の類型かどうかを決定する際は、審査時にその特定の物の発明が特定するところのハードウェア或いはハードウェアと特定のソフトウェアの結合の具体的構成を見た上で、まず対象物の発明の認定を行なう。
(1)物の発明の特許請求−第一種類〔物の発明の特許請求範囲には、あらゆる不特定のハードウェアを対象とした発明実施の方法(underlying process)を含む〕
審査時は特許明細書に詳細に目を通し、特許請求の範囲で取り上げたハードウェア要素のみを拠所に分類を行なわないこと。すなわら、たとえ特許請求の範囲にハードウェアの要素が述べられていたとしても、特許請求の範囲が特定した物の発明の特許請求(すなわち、第二種類一物の発明の特許請求)に限定していない場合、まず明細書に対応ずる技術的特徴を考慮する。審査時において明細書の記載内容に従い、物の特許請求範囲を解釈する際、もし対象物の特許請求の範囲が、何らかのコンピュータ(或いは物)の応用に関する実施方法を包括している場合、この特許請求の範囲は以下の類型に属するものとされる。
・特許請求の範囲はコンピュータ(または物)或いはコンピュータ(または物)の組立部品における具体的性質が、コンピュータ内、あるいはコンピュータ外にて実行される機能またはステップといった範囲に制限される。そして、
・特許請求の範囲には、あらゆる形式による組合物(例えば、コンピュータやその読み取り可能なメモリーなど)の各種実行方法に対する類別が含まれる。
もし特許請求の範囲が上の類型に属するものである場合、「第一種類−物の発明の特許請求範囲に認定される。この特許請求の範囲には、何らかのコンピュータ(または物)使用による方法の実施が含まれ、またそれがコンピュータ(または物)或いはコンピュータ(または物)の組立部品における具体的性質が、コンピュータ内、或いはコンピュータ外にて実行される機能またはステップといった範囲に制限」とされている。しかしながら、この特許請求の範囲には未だ特定のプログラムによって実行されるコンピュータ(または物)、又はそのハードウェアやソフトウェア要素などの具体的構成などに対する限定がなされておらず、また、それら要素と「特定のハードウェア方式」或いは「ハードウェアと特定のソフトウェアによる方式」との結合関係の指摘がなされている為、この場合、特許請求の範囲は一つの特定の物とは認定できない。この際、発明に間する課題解決方法式いは手段を審査する必要がある。
物の発明に間する請求項の中に、方法の発明があらゆる不特定対象物に応用されることを、審査時に発見した(すなわち、第一種類−物の発明の特許請求)場合は、たとえその該当物の請求項の対応方法(underlying process)に則して審査の実行がなされたとしても、別に請求項が方法の発明のみに属する類型とみなされるわけでないことに注意する。これは該当物の請求項の中の、あらゆる不特定のハードウェア、或いはハードウェアプラットホーム、及び請求項の機能を実施する関連ソフトウエアなどの表示をしているだけに過ぎないからである。
審査員が特許請求範囲全体を審査し、特許請求の範囲が特定物に限定されていないと認定をした際、もし出願者がこの認定に同意できない場合は、出願者は請求対象「発明」が如何なる理由にて一特定物(すなわち、第二種類−物の発明の特許請求)に値するかの理由説明を提出する。さもなければ、第一種類−物の発明、あらゆる不特定のハードウェアに属する発明)の類型として審査が進められる。
特許請求の範囲が第一種類−物の発明の特許請求範囲に属するものと認定され、同時に審査にて該当の発明の課題処理の方法式いは手段、が発明の類型に属するものとされた場合は、この対象物の特許請求は発明の類型に属する請求とされる。同様に、もし対象物の課題処理の方法式いは手段が発明の類型に属さないものとなされた場合は、この対象物の特許請求は発明の類型に属さない請求とみなされ、拒絶される。
(2)物の発明の特許請求――第二種類(特定物の発明に対する特許請求)
“特定のハードウェア”或いは“特定のソフトウェア”とは、ある課題処理を目的に、特別に設計された特定のハードウェア或いは特定のソフトウェアのことを指す。ある物の特許請求の範囲が、前述した第一種類−物の発明の特許請求範囲に属さないものと認定された場合、当物の特許請求は、特定物の発明に対する特許請求となされ、すなわち、第二種類−物の発明の特許請求とみなされる。コンピュータ関連発明の特許請求が一つの特定物の発明と認定された時、対象物は特定のハードウェア或いハードウェアと特定のソフトウェア(specific software)の具体的構造を以て認定される。当業者にその内容を理解させるために、出願者は当業者が理解可能な方式にてプログラムにて用いるコンピュータ、ハードウェア、ソフトウェアの要素などの具体的構造を制限する。一般的に、特定のプログラムにて実行されるコンピュータの特許請求範囲では、そのコンピュータの要素が明確に限定され、その要素が如何にして特定のハードウェア或いはハードウェアと特定のソフトウエアの方式と結合するかの指摘がなされている。
特定のコンピュータ(又は物)のメモリーを明確に限定する為、特許請求の範囲には一般或いは特定のメモリー、及び特定のソフトウェアをはっきりと指摘する。また、メモリーに保存されるソフトウェアの機能に対する説明を提示する。
特許請求の範囲にて定めた特定物は、それが属する専業技術領域において実用性を有していれば、法定の要件に適合したものとなる。もし、特許請求の範囲及び明細書の開示が、特定物の応用領域のみで、そこに限定の記述がなければ、当業者にその実際的な応用を理解させることはできず、特許請求の範囲は発明に属さない類型とみなされる。
実例4:(発明に関する甲、乙二部の特許請求の明細書があり、双方とも発明の名称及び特許請求の範囲が同じであっても、各明細書の開示内容が異なる。)
発明の名称:化合物の3次元構造を分析、顕示の方法と装置
特許請求の範囲:
1.ある化合物の構造を判定し、顕示する方法。以下のものを舎む。
a.化合物の波動関数パラメータを解き、化合物の構造を判定する。
b.手順a.にて判定された化合物の3次元構造を顕示する。
2.化合物の3次元構造を判定するコンピュータ装置。以下のものを含む。
a.化合物の3次元構造を判定する判定装置(means)。及び
b.化合物の3次元映像を顕示する顕示装置(means)。
甲の明細書:明細書に記述された特定のソフトウェアには、すなわち、特定のプログラムコードセグメントが記載されており、これはマイクロプロセッサーの設定を高ネい、特定の論理機能回路を作り出すものである。この回路は、特許の請求項に装置(means)の形式にて規定付けられており、これはその装置限定に適合したものである。
乙の明細書:明細書の中には、当業者が理解可能なコンピュータシステムを選択し、コンピュータシステムによって特許で主張された方法が実行される。しかし明細書中には、特許請求項で規定づけた両装置(means)に対する説明及び限定がなされていない(すなわち、明細書には、特定のソフトウェア或いは論理回路の提示がなされていない)。ただし、明細書の中には、化合物の波動関数方程式を如何にして解読するかの説明があり、また、その波動関数方程式の解読を通じて、化合物の具体的構造が判定されている。
説明:
甲の明細書には、その技術的特徴として、特定のプログラムで設定されたコンピュータを用いて、特定の論理機能の回路を作り出されることが記載されている。これは、明らかにコンピュータの要素を制限し、並びにこれらの要素が如何にして特定のハードウエア或いはハードウェアと特定のソフトウエアなどの方式と結合するか、と指摘されている。言い換えれば、明細書に(そこで主張する機能の実行ができる)特定物が制限がなされているのである。そのため、その特許請求の範囲は、明らかに特定のコンピュータに限定されており、この特許請求の範囲は特許を与えられるかどうかと主張する方法とは無関係である(第二種類−物の発明の特許請求範囲に属する)。
乙の明細書には、特許請求項で提示した二種の装置に対して、説明や限定の記述がなされていない。その為、該当するコンピュータ或いはコンピュ_タ部品の具体的な性質は、コンピュータで実行される機能或いはステップに限定される。しかしながら、そこで主張される方法において、その実行するコンピュータ、或いはそのハードウェア、ソフトウェア要素の具体的構造が限定されておらず、又、そのコンピュータの要素も限定されていない。ただ、その要素が如何にしてハードウェア或いはハードウェアと特定のソフトウェアなどの方式と結合するか、と指摘されており、明細書の中には主張された方法の説明が提示されているのみである。つまり、明細書の中には、“この方法はコンピュータにて実行され応用される”ことに対する区分、及び“方法そのもの”の特許請求の要件と何が異なるかの分別に関して何ら情報が提示されていないのである。審査の際は、その主張する方法を基に、対象「物」の特許請求の範囲に対する審査を進める。その為、特許請求の範囲は、不特定のコンピュータで実施され応用される方法に分類されることになり、そこで主張対象の物における特許請求の範囲が特許に値するかどうかは、その方法が特許性を有しているかどうかによって決まる(第一種類−物の発明の特許請求の範囲に属する)。
1.コンピュータ・ソフトウェア関連発明における方法の発明の定義
コンピュータ・ソフトウェア関連発明における方法とは、コンピュータが具体的かつ非抽象的な結果を生み出すために実施する一つの動作または一連の動作、手順、操作またはステップをいう。方法の発明について審査する際、その内容を全体として取り扱い、主張内容に重点が置かれる。また、該発明は直接的あるいは間接的にコンピュータを利用して実行される特徴があり、いかなるコンピュータプロセスの前後において、あるいはコンピュータ内部で、特定の実用的な応用がなされなければならない。
2.コンピュータ・ソフトウェア関連発明における方法の発明の類型
基本的にコンピュータ・ソフトウェア関連発明における方法の発明の類型は、実施された方法またはステップによりコンピュータの外部あるいは内部において具体的な変換または動作を生み出せる前提で、以下のように分類される。
・コンピュータプロセス前に、データまたは信号を具体的な変換をした方法またはステップの発明(36)(Pre-Computer Process Activity)
・コンピュータプロセス後に、ハードウエア資源に対する制御または制御に伴う処理(Post-Computer Process Activity)(37)
・コンピュータ内部で、ある技術的領域の実用的応用に限定されたコンピュータ関連方法(38)
(1)コンピュータプロセス前に、データ又は信号を具体的に交換した方法文はステップの発明
「コンピュータプロセス以前に、データまたは信号を具体的に変換した方法あるいはステップの発明」とは、特許申請の方法の発明が具体的な物体あるいは動作を利用して行われるコンピュータプロセス前のデータ処理をいう。このような発明は、通常コンピュータ外部で先に測量の動作が実施される。その測量結果をコンピュータが処理でき、かつ技術的な特徴を有するデータに変換することが可能である。また、このデータはいかなる物体あるいは動作の表示信号を具体的に交換させて、コンピュータプロセスにより、該課題を解決する能力がある。大抵の場合において、このような発明は実用的な応用価値を有するべきである。
例えば、患者のCTスキャン画像からのデータをコンピュータ・プロセッサーで処理する方法である。これは測定地点の局所的な値とその地点の用辺区域のデータの平均値と差を求めるために計算し、画像の各地点についてグレイスケールとしてその差を測定し、その結果生じる画像を表示する方法である。この例においてのデータは物理的対象であり、すなわち患者の体内の特定部分を抽象的に信号で表示する。人体がエックス線に通された際、人体の状態をコンピュータで処理できるように、技術的な特徴を有する電子信号に変換する。この発明による実用的な応用価値は、骨を映さずに人体内部の組織をCTスキャンの画像に表示が可能なことである。
他の例として、コンピュータ・プロセッサーを利用して地震測定を実施する方法である。震源(seismic source)から伝わる地殻の地震衝撃波(spherical seismic energy wave)を測定するために、地殻に受信機を碁盤状に配列して、受信した衝撃波を受信機が反射信号として発生させる。全ての反射信号を総合することにより、地震の衝撃波に対する地球の反射反応をシミレーションする信号を発生できる。この例では、コンピュータ・プロセッサーにて反射された地震衝撃波の信号を表わすことが可能てあろ。これらの電子信号にて地表下の地球物理学的な構造が表示可能になったことで、実用的な応用価値を有する。
実例5:
この発明では、心臓病患者の心電図からの信号を直接分析して、心臓機能を調べる。心臓の活動は心電計で検査され、患者の身体と電極が接触することで、相違な心臓脈で心臓の電子信号を察知できる。明細書は特定の心電図信号(QRS波)の起用を説明し、アナログ値からデジタル値に交換し、QRS波の複合デジタル信号は決められた時間内に多数のQRS波を取り出して平均化する。そして、アナログからデジタルヘの転換機を経由し、心電図信号をデジタル値に変換する。その中でハイパスフィルタは一般の技術としてよく知られている部品であり、当複合QRS波状の前の部分は隔離されていて、反対の手順で処理されたことによって、使用者は患者が危険性の高い心臓衰弱であるかどうかをすぐ発見することができる。この特殊の方程式についてはすでに説明されているが、方程式化されているマイクロプロセッサーはこの信号を管理する説明をし、方程式化ステップのフローチャートでもある。
特許請求の範囲:
1.ある心電図信号を分析する方法として、後の段階のQRS信号に高周波数の信号を事前に設置する事を決定するには、下記のステップを踏む。
a.シリーズQRS信号を時間定義区域に転換し、各部分のデジタル値は当信号における当時間のアナログ値に対応する。
b.QRS波を反対のステップでハイパスフィルタを通過させる、ハイパスフィルタを通過して数値を出す、及び
c.該数値と予定の該高周波数との比較
説明:
本発明はマイクロプロセッサーを必ず使用し、開示の発明は使用者が心臓衰弱患者の危険性が高いか否かを判定できる。QRS信号をコンピュータにて処理でき、かつ技術的特徴を有するデジタル信号に交換できる。コンピュータプロセッサーによって課題解決ができる。これは方法の発明の類型に属する。
(2)コンピュータプロセス後に、ハードウェア資源に対する制御又は制御に伴う処理
特許申請の方法の発明は、コンピュータプロセス後に、ハードウェア資源に対する制御あるいは制御に伴う処理である。このような発明は、コンピュータプロセス後にコンピュータ外部で独立した具体的な動作を生じるので、通常、産業分野において応用価値の高い場合が多い。
例えば、更新された製造工程のパラメータを利用して、金型内でゴムを硬化させる方法である。この方法はコンピュータ・プロセッサーを使用してゴムの硬化時間を判定する。また、ゴムの硬化中に、いつ硬化時間に到達するかを測定して、コンピュータ以外の機械がその時間に金型を開けることができる。
他の例として、ロボットの各種機械動作のデータをコンピュータ内に記憶させ、ロボットをコントロールする方法である。これはコンピュータ・プロセッサーにより、そのロボットおよび与えられた仕事を実施する位置の相対位置を算出するのである。また、計算された位置に基づいて、コンピュータ外でロボットの動作および位置を制御する。
実例6:
四輪駆動自動率の後輪駆動の角度を制御する方法の発明である。開示の制御方法とは自動車操作状況を表示できるいくつかのパラメーターの測定が含まれている。その中には前輪駆動の角度(δf)と自動率の速度(V)を測定し、開示の方法は更に特殊な転移函数G(s)と
δf={G(s)*k*}V
の公式を利用して、適当な後輪駆動の角度を算出する。この公式勾のKは駆動係数である。
移転函数と駆動係数については、既に明細書の中で定義されている。測定機からの電子信号を各パラメーターに生じ、誘導されたパラメーターの大きさが表示され、電子信号がマイクロプロセッサーで処理される。特殊なプログラムによっては必要に応じて適当な駆動の角度を算出できる。
特許請求の範囲:
1.四輪駆動自動牟の後輪を制御する方法は、下記に示されているステップの通りである。
a.自動車の前輪駆動の角度(δf)を測定;
b.自動車の速度(V)を測定;
c.δγ={G(s)*k*δf}/Vの公式で前輪駆動の角度(δf)と自動車qャ度(V)により、適当な後輪駆動の角度を計算。公式内のG(s)は転移函数、Kは駆動係数である。そして
d.算出された後輪駆動の角度(δγ)により後輪を駆動させる。
説明:
本実例の発明はコンピュータ・システムを必ず使用し、自動車の前輪駆動の角度と速度等のデータを測定し、四輪駆動率の後輪駆動の角度を制御できろ。この発明はコンピュータ外部で独立した、かつ具体的な操作を生み出す方法の発明の類型に属する。
(3)コンピュータ内部で、ある特定の技術的領域において実用的な応用範囲を限定するたコンピュータ・ソフトウェア関連方法
コンピュータはデータに働きかけ、その問にデータを変換することにより、組み合わせの構成部分の状態が変化されてある形の具体的な転換が生じる。このような具体的な転換は、常にコンピュータの内部で行われている、このような動作が発明の類型に属するかどうかを決めるための方法ではない。決定的な要因はコンピュータがいかに方法を執行するかではなく、あくまで何を執行したかであり、実用的な応用価値を達成することである。
単純に抽象的な観念を取り扱い、または演繹法で計算することは、たとえ該方法がある実用性を有したとしても(39)、発明の類型の条件を満たすものではない。このような主題が発明の類型の条件を満たすためには、主張された方法が技術的分野において、抽象的な観念または演繹法を実用的な応用範囲内に限定しなくてはならない。例えば、コンピュータプロセスとは単に雑信号のシミュレーションを演繹法で算出することだが、これは発明の類型に当てはまらない。しかし、演繹法を利用して雑信号をデジタル式にフィルターする方法は、発明の類型に当てはまる。実例7と実例9の請求項2はこの例である。反対に、明らかにある技術的分野において実用的な応用価値が限定されない場合で主張された特許申請の範囲は、発明の類型ではない。実例8と実例9の請求項1はこの例に当てはまる。
実例7:
あるコンピュータ設備の操作方法は動態の変更にシステムの出入力の設定を明確にする。これは、サブシステムの出入力(ハードウェア)および作業システム(ソフトウェア)を設定する際に必要である。操作時にプログラムは設定ファイルを生じて、動態または変更可能な保存装置にシステムの出入力設定にかかわる現在ある制御ブロックの状態を明確する。そして、該プログラムは“将来”の出入力設定ファイル(該出入力設定ファイルは、これから使用する出入力設定ファイルである。)となる。現在のシステム設定を将来の設定に変換する際、比較機能でソフトウェアに明確にした制御ブロックを完全に転換させるのに必要な変化を表示または添付された手順に完成した信号を生じること。
この発明はデータ処理システムのソフトウェア・ハードウェアの出入力設定における動態方法の変更法を提供する。また、この発明は単独の出入力における設定の定義法も提供する。該出入力における設定定義によりハードウェアとソフトウェアの定義を明確にする。またこの発明は有効な方法を提供する。それはこのシステムを第一出入力設定から第二出入力設定に移転でき、有効な検証に転換できることである。
明細書には設定された詳細のフローチャートに関するぺ一ジにわたる操作方法を提示し、最善の操作方法であるハードウェア方式を図面で説明した。
特許請求の範囲:
1.ある種のコンピュータ・システムの設定方法である。該コンピュータ・システムは中央処理機(CPU)、複数の出入力ユニットが出入力のサブシステムに連結している。以下は操作システム、および出入力ユニットにおける動態設定システムの手順である。
a.定義装置を使用し、一つの定義ファイルに複数の設定を作成する。およびこの複数の設定は複数の出入力ユニットの関連設定を代表する。
b.該定義装置に基づき、現在の設定を第一関連設定とする。
c.該定義装置に基づき、将来の設定を第二間追設定とする。
d.現在の設定に基づき、また複数の動態の変更可能なソフトウェアの制御ブロックエリア、該システムから開始する。およびソフトウェアの制御ブロックエリアは、第一関連設定に基づいて操作システムを設定する。
e.現在の設定に基づき、また複数の動態の変更可能なソフトウェアの制御ブロックエリア、該ハードウェアから開始する。およびソフトウェアの制御ブロックエリリアは、第一関連設定に基づいて出入力のサブシステムを設定する。
f.現在の設定および将来の設定により、設定の変更ブロックエリアが生じる、設定変更ブロックエリアは第一関連設定を第二関連設定に変更する際、該ソフトウェア制御ブロックエリアおよびハードウェア制御ブロックエリアにおける変換、および、
g.該設定の変更ブロックエリアにより、ハードウェアの制御ブロックエリアおよびソフトウェアの制御ブロックエリアを変化させる。変更が成功した場合、該ソフトウェアの制御フロックエリアは第二問追設定に基づいて、操作システムを設定する。またハードウェア制御フロックエリアは第二関連設定に基づいて入力のサブシステムを設定する。変更が失敗した場合は、間違いのある設定位置で信号が生じる。
説明:
本発明の特許申請範囲は動態的なコンピュータ・システムの出入力を設定できる。そのため、実際の応用範囲を限定され、方法発明の類型に属すると見なされる。
実例8:
コンピュータのデジタル処理により、二進法十進法コード(Binary Code)を二進法コード(Binary Code)の形式に変換する。キーボードとコンピュータ間のインターフェイスが改良され、データ入力能力を促進する。コンピュータは一連の数学的な論理的演算法のプロセスを実施して変換を実行する。明細書および図面にすべて開示されたハードウェアはデジタルコンピュータで表示する。
明細書には特殊なプログラムについて記載されていないが、ハイレベルの開示および関連フローチャートが記載されている。そのハイレベルの開示および関連フローチャートにより、専門技術者ならば該発明の使用法がわかる。
特許請求の範囲:
1.ある二進法十進法のデータを数字から二進法を変換する方法で、その手順は以下の通りである。
a.ある二進法十進法のデータをくり返し入力可能なシフトレジスタを収納する。
b.該信号を右へ最低三字分でシフトし、シフトレジスタの一字目の位置に二進法の“1”が現れるまで移動する。
c.シフトレジスタの二字目の位置にある“1”を覆い隠す。
d.シフトレジスタに二進法の“1”を一文字目の位置に記入する。
e.このデータを左へニ文字分のスペースで移動をする。
f.“1”を一文字目の位置に記入する。
g.シフトレジスタニ字目の位置にある二進法の“1”のために、このデータを奄ヨ最低三字分でシフトする。
説明:
本案で主張された発明はコンピュータで実施可能な一連のステップであり、ステップaは単にステップbからステップgまでの数学的操作に必要なデータを取得、且つ提供するのみである。この動作は「コンピュータプロセス前に、データを具体的に変換した発明」に該当しない(40)。ステップbからステップgまでは、単に二進法十進法コードを二進法コードに変換するための一連の数学的操作である。よって、請求項1を全体として考察し、数学的方法自体以外は実用的な応用価値を有せず、発明ではない類型に該当する。
実例9:
ある競売品(不動産関連)の入札方法である。あるコンピュータ・システムに記録された関連競売品を確認し、入札可能な者に連絡し、競売品ごとおよびその組み合わせの入札データを入手する。コンピュー夕・システムに上述の入札データを入力し、該入力資料の索引を作成し、競売品が儲けられる羨犬利益を決定し、すべての入札案件が有利な金額に達したことを確認する。そして入札者に落札した競売品の関連競売品も提供する。またコンピュータ・システムは同時に条件を満たしている個々の入札案件を受領し、入札者全員に受領済み信号を送信する。
特許請求の範囲:
1.複数の競売品のデータにおいての入札方法は下記のステップの通りである。
a.複数の関連する競売品のデータを分別して一つのファイルに記録する。
b.複数の販売品のデータを複数の可能な入札者に提供する。
c.入札者から個別の挽売品のデータおよび組み合わせろ競売品の数が自由に決められる。また個別の競売品データも自由に組み合わせることが可能である。
d.当入札価格を記緑に入力する。
e.この個別の競売品のデータまたは競売品データの複数の組み合わせの入札金額をインデックスに組み入れる。また、
f.競売品のデータおよび複数の組み合わせの入札金額を完全にリストアップする。該リストは最も理想的な総額ですべての競売品のデータの入札価格を決定する。また、このリストにこの理想的な総額に合うように個々の散売品の価格を出す。
2.不動産の入札方法は以下のステップの通りである。
a.複数の関連する不動産のデータを分別してコンピュータ・システムの一つのファイルに記録する。
b.複数の不動産のデータを入札者に提供する。
c.入札者から個別の不動産のデータおよび組み合わせる不動産の数は自由に決められる。また個別の不動産の競売データも自由に組み合わせることができるb、に受信が可能である。
d.当入札価格をコンピュータ・システム上の記緑に入力する。
e.この個別の不動崖の競売データまたは不動産の競売データの複数の組み合わbフ入札金額をインデックスに組み入れる。また、
f.不動崖の競売データおよび複数の組み合わせの入札金額を完全にリストアッモキる。この不動崖の競売品の売り出し最大獲得利益を判定する。該リストは高燉搗z的な総額ですべての不動産の競売データの入札価格を決定する。またこのリストにこの理想的な総額に合うように個々の競売品の価格を出す。
3.方法の発明であるかを判断する留意事項
(1)単に抽象的な観念を取り扱い、数字または信号などを使用した方法の発明は、実用的な応用価値に限定または表示されない場合、特許請求の範囲全体の内容を考察して、その方法が特許請求の要件を満たすか否かを評価する必要性がある(41)。
(2)コンピュータ・ソフトウェア関連発明における方法の発明は、抽象的観念或いは数学的な方法を使用することについて、技術的領域において実用的な応用価値を有することに限定されなくてはならない。審査する際、特許請求の範囲に明記してある用語に注意すべきである。特に前文部分(preamble)でただ簡単に発明についての“意図された使用”(intended use)または“使用領域”(field of use)などのみ説明方法は、特許請求の範囲を限定することにならない(42)。例えば、化学領域おいて利用するという意味の言葉のみを記述した場合、実際の応用範囲を限定したとは見なされない。特許請求の範囲全体として取り扱い、この発明が解決しようとする課題が実際に応用された範囲と限定するのである。例えば、実例9にある「入札領域に利用する」または「不動産入札領域に利用する」にのみ限定されることではなく、請求項の前文と本文を全体として取り扱い、「不動産入札領域に利用する」に限定し、且つ、「入札取り引き情報の表示と不動産入札を受けること」が実際に応用される範囲としたうえで、特定の技術領域に実際に応用された範囲を限定することが認定される。
(3)コンピュータ・プロセス前の方法又はステップの発明については、単にデータを収集し、又はデータを選択する行為が数学的演算ステップまたは演繹法を利用することで、特許請求の範囲を限定することにならない。そのような行為は数学式または論理的演算法の変数に対する数値を決定しているにすぎず、審査の際に充分注意が必要である。例えば、いずれか一組の測量点の数値を選択するようなことである。ただし、仮に特許請求の範囲はコンピュータが数学式または演繹法で処理する前に、データを作成又は生じるための動作を実行しなければならない。且つ、上述の動作はコンピュータが利用された数学式または演繹法自体以外に限定し、コンピュータ・プロセス前に、データ又は信号の具体的に変換した方法の発明とみなされる。例えば、前述の地震調査の方法については、地震のエネルギー波からの信号を“総合”する前に、信号を発生させ操作することを必要とする(43)。
(4)コンピュータ・プロセス後における方法文はステップの弁明を審査する際、充分注意しなくてはならない点は、コンピュータ・プロセス後の動作がこの方法の発明に先行する演算ステップの範囲内であることだ。この方法の発明における動作文はステップは単に数学的な演算の結果を出力するだけでなく、ある問題を解決するため重要な用途がある。すなわち、コンピュータ・プロセス後の動作は特許請求の範囲で独立した限定条件と見なされる。例えば、ただ自然現象又は数学的な方法の計算結果を記録し、または媒体の中で変換され、データを交換して違う形式のみで表示し、または計算結果を電気信号に変換して示すことなどである。いずれもコンピュータ・プロセス後に、ハードウェア資源に対する制御又は制御に伴う処理とは見なされない(44)。
(5)方法の発明の中に、たとえ部分的に数学的方法、診断方法、遊戯方法などのように法定では発明特許を与えない項目があったとしても、やはり全体として、その技術手段が単にそれらの方法自体であるか否かを審査する必要がある。そのような単純でない方法の発明の場合、コンピュータ技術を利用してコンピュータ外部または内部に具体的な交換があるかを考察し、前述の方法の弁明の類型で審査する。
情報を表示するとは、思想を述べたり、または表現することであり、情報自体は無形であるので、特許請求の主題になることはない。それ故、情報をコンピュータ読み取り可能な記録媒体に乗せて、該記録媒体に対して物理的又は化学的変換を起こさせる。すなわち、記録技術を利用して記録媒体に情報を表示する信号を物理的または化学的変化状態の形に置き換える。このような変換により、情報は記録媒体の形態を利用し物理的或いは化学的に実体化され、空間形態に存在できるようになる。コンピュータとの間に機能的及び構造的な相互関係を有する場合には、特許請求の主題となり得ることが多い。
一般に、情報の表示は以下二種類が挙げられる。
1.機能的・記述的構成(functional descriptive material)
コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されたとき、コンピュータによって処理し、コンピュータとの間に機能的及び構造的な相互関係を有することとなる。例えば、コンピュータプログラム又はデータ構造など。
2.非機能的・記述的構成(non-functional descriptive materia1)
コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータとの間に機能的及び構造的な相互関係を有すろことはなく、単に媒体に載置されているだけである。例えば、音楽、文学的著作物、データの編集物またはデータの配列など。
非機能的・記述的構成は、再生して出力するためのデータ自体を記録した構成である。すなわち、単に媒体にデータが記録されているだけであり、媒体と機能的及び構造的な相互関係を有さず、「単なる情報の提示」であるため、発明の類型に属さない(45)。
ただし、音楽、映像などのデータは、収納スペースを省くまたは読み取り速度を促進するなどのためにデータの加工方法に特徴がある場合には、その技術の本質が記録方法自体であり、非機能的・記述的構成であるか否かということとは関係なく、他の技術課題である。もし開示の方法は技術的思想または特徴がある場合には、発明の類型に属する。記録媒体形式の発明の実質は、記録媒体に記録されている情報自体またはその情報に基づく処理であって、情報の記録方式または記録媒体自体の構成特徴とは関係なく、該記録媒体はコンピュータが処理を実施しているときに、コンピュータとの問に機能的及び構造的な相互関係を有するかということで決められている。
記録媒体形式の発明の実質は、直接的には課題を解決する手段とはなり得ず、記録されたプログラムがコンピュータに読み取られて処理したとき、または記録されたデータ構造がコンピュータに読み取られてデータ構造に起因する特定の処理を行うときに、はじめて課題解決がなされる。それ故、コンピュータプログラム記録媒体形式の発明は、「間接的」な課題解決手段であって、データ構造記録媒体形式の発明は、「更に間接的」な課題解決手段である。ここで強調したいのは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体にただコンピュータプログラムまたはデータ構造を有するだけで特許の許可が下りず、対応された課題解決の手段を考察して判断する必要があるということである。
請求項に記載された事項が記録媒体形式の発明の場合は、基本的には付録二の判定手順に従う。まず、記録媒体に記録された情報が「単なる提示」に該当しないかを判断する。すなわち、機能的・記述的構成であるか否かを判断する(非機能的・記述的構成に当たる場合には「単なる情報の提示」に該当する)。「単なる情報の提示」に該当しない場合は、明細書全体として把握し、請求項に係わる発明に対応する解決手段が発明の類型に該当するかを考察して、上記の要件を満たせば、発明の類型に属する。反対には、発明の類型に属さない。
また、上記の判定手順には、請求項に係わる発明に対応する解決手段が発明の類型に属すかを判断することについて、機能的・記述的構成がコンピュータプログラムとデータ構造と二つに分かれるから、以下に説明する。
1.コンピュータプログラム記録媒体形式の発明は、付録二の判定手順のように、明細書全体として把握し、請求項に記載されたコンピュータプログラムによって特定の処理ができ(方法の発明)、または特定の機能が実現できる装置であり(浮フ発明)、且つ、該処理又は装置により課題を解決することができる。該処理又は装置が発明の類型に属せば、「課題に対応する解決手段が発明の類型に属する手段と判定される。
2.データ構造記録媒体形式の発明は、付録二の判定手順のように、明細書全体として取り扱い、請求項に記載されたデータ構造によって、コンピュータに読み取られ、データ構造の技術特徴に基づき、コンピュータが特定の処理ができ、または特定の機能が実現できる装置、且つ、該処理又は装置により課題を解決することができる。該処理又は装置が発明の類型に属せば、「課題に対応する解決手段が発明の類型に属する手段」と判定される。
記録媒体形式の発明については、特許請求の範囲においての開示が以下の通りである。
例1:「コンピュータに手順A、手順B、手順C、…を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」
例2:「コンピュータに手段A、手段B、手段C、…として機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」
例3:「コンピュータに機能A、機能B、機能C、…を実現させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」
例4:「コンピュータに構造A、構造B、構造C、…を有するデータが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体」
上記例1−例4のように記載しても、「発明」であることの要件を満たすとは限らず、やはり付録二のフローチャートにより審査しなければならないことを再度強調しておく。
特許の基本三要件は、産業上の利用性、新規性、進歩性を含んでいる。審査する時は一般審査基準に従う。その他に、コンピュータ・ソフトウェアの特殊性があるので、この部分を詳しく以下のように説明する。
前述のように、コンピュータ・ソフトウェアは応用技術領域がとても広く、たくさんの業界がある課題を処理するために、コンピュータ・ソフトウェア関連技術の利用が可能である。それ故、この種類の特許請求が産業上の利用性に該当するかどうかを審査するときには、明細書に記載された該発明の適用領域を考察して判断する。
発明の類型に該当する請求項を審査するときには、該請求項を上述の検索にある従来技術と比べて、新規性があるかどうかを判断する。仮に該請求項が従来技術と同じである場合は、新規性の規定に合致しないという理由で、該従未技術を例証して、該請求項を拒絶する。
請求項に関する発明と先行技術とに相違点がある場合は、出願時の技術水準を的確に手巴握して、請求項に係る発明が当業者にとって容易に実行できるか否かを判断する。容易に実行できるものでない場合は、該請求項が進歩性を推認できる根拠がある。すなわち、該請求項を許可することができる。容易に完成する場合には、該請求項が進歩性を推認できる根拠がないため、該先行技術の引用を以って該請求項を拒絶する。
請求項に係る発明と先行技術とに相違点がある場合は、出願時の技術水準を考察し、その相違点が当業者の通常の創作能力を発揮し、主張された発明が容易に完成できるか否かを判断して、該請求項の進歩性の有無を決める。これに関する説明を以下のように挙げておく。
1.他の応用分野への適用
応用分野においてソフトウェア関連発明に使用した手順又は手段は、適用分野にかかわらず機能、作用が共通している場合が多い。そのような場合、ある応用分野に関するソフトウェア関連発明の手順又は手段を、別の応用分野に適用しようとすることは、当業者が普通に考えることである。例えば、「ファイル険索システム」の引用発明が存在した場合、その機能・作用が共通している手段(検索のための具体的構成)を医療分野に適用して「医療検索システム」として、同じ機能又は作用を達成することがある。また、記録媒体に記録されたデータだけが異なる場合には、進歩性を推認されないことになる。例えば、データ構造Aを有ずる「学生の成績管理データを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」があったとする場合、同一のデータ構造Aを「調教馬の健康管理データを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」に適用しようとすろことになる(46)。
3.通常のシステム化手段の付加または置換
ソフトウェア関連発明は、コンピュータのハードウェア及びソフトゥニァを用いたシステムとして構成される場合が多い。そのような場合、システムの構成要素として通常用いられるものを付加したり、システムの構成要素の一部を均等手段に置換しようとすることは、当業者が容易に完成できることである。例えば、システムの入力手段として、数字コードの入力のために画面上の項目表示をマウスで選択し入力する手段やバーコードで入力ずる手段を付加したりする(47)。
3.ハードウェアで行っている機能のソフトウェア化
回路などのハードウェアで行っている機能をソフトウェアで実現しようとすることは、当業者が普通に考えことである。例えば、ハードウェアてあるコード比較回路で行っているコード比較をソフトウェアで行うこと(48)。
4.人間が行っている業務のシステム化
応用分野において人間が行っている業務をシステム化し、通常のシステム分析手法及びシステム設計手法を用いた日常的な作業をコンピュータにより実現できれば、当業者の通常の創作能力を発揮できる。例えば、システムの開発は、通常、計画立案→システム分析→システム設計という過程を経て行われる。システム分析とシステム設計という過程により、応用分野において人間が行っている業務をシステム化することができる。例えば、売上金の台帳への記入過程をシステム化したりする。このようなシステム開発を現状から見た場合は、当業者の通常の創作能力の範囲内のものと見てよい。
5.「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」に係わる追加限定
請求碩に係ろ発明と引用の先行技術との栢違点が当業者の通常の創作能力の発揮の範囲内のみにあり進歩性が否定される場合において、請求項にさらに“コンピュータ読み取り可能な記録媒体”に関する限定(limitation)が追加されたとしても、これのみをもって請求項に係る発明の進歩性が容認されることはない(49)。
6.コンピュータ化に伴う一般的効果
コンピュータ・ソフトウェアの領域のなかに、迅速に処理できる、大量のデータを処理できる、誤りを少なくできる、均一な結果が得られるなどの一般的な効果は、コンピュータ化に伴う当然の効果である。通常は、技術水準から予測できる成果と見ている(50)。
実例10(51):〔進歩性の判断例(人間が行っている業務のシステム化)〕
この発明は、銀行などの窓口で用いられている伝票の書き写し業務に関するものである。銀行の規定により、窓口で高額取り引きの伝票を作成するとき、従来は上司の承認を得ることが必要であった。上司の承認を得るためには、一時的に席を離れ、上司の所に伝票を届けるなどの作業が必要で、その間、事務ができなかった。持に上司が忙しい場合は、時間がかかることが多かった。本発明は、わざわざ上司の所に行かずに承認が得られるコンピュータを利用するシステムを提供するものである。また、表示画面に決裁すべき伝票の受信を表示するので、いちいち操作をしなくても、受信したことがわかる。さらに、ID(個人識別)カードを用いて承認データを入力するので承認権限がある人のみが承認データを入力できるように構成される。このシステムを用いることにより、伝票の承認を得るための、仕事の中断がなくなり、能率的な伝票処理が行えるので従来技術に比べて顕著な効果を発揮する。仮に本実例出願時の技術水準(引用例、周知技術など)は以下の通りである:
(1)伝票事務処理
I.伝票作成者の行うこと
1.伝票作成のデータを伝票に書き込み、伝票を作成する。
2.承認が必要なものを、承認者に手渡す。
3.伝票を承認者から受け取り、伝票作成を終了する。
U.承認者の行うこと
1.伝票作版者から伝票を受け取る。
2.伝票作成者から受け取った伝票を調べ、承認を与える。
3.承認した伝票を作成者に手渡す。
(2)コンピュータ技術
I.コンピュータ分野の技術常識
1.各人毎に入力部、出力部を有するコンピュータを配置し、それを通信制御部を介して通信回線で接続して、必要なデータを送受信する。
2.コンピュータでデータを編集し必要な書類のフォーマット形式に表示又は印刷する。
3.受信したデータがあれば、その旨画面表示する。
4.ID(個人識別)カードで自分のIDコードを入れ、処理を行う。
U.出願前に頒布された刊行物に記載された技術
5.入力されたデ丁タをチェックして送信が必要なもののみを送信する。
発明の名称:伝票承認システム
特許請求の範囲:
1.伝票承認システムには伝票入力作成装置と伝票承認装置が含まれている。伝票にデータを入力するための第1入力部、該第1入力部に入力されたデータに基づいて投Y入力された伝票を表示及び印字する第1出力部、第1通信制御部及び全体を制御する第1制御部を有する伝票入カ作成装置と
伝票を表示する第2出力部、承認データの第2入力部、第2通信制御部及び全体を制御する第2制御部を有する伝票承認装置とからなる伝票承認システムにおいて、上記第1制御部は、上記第1入力部から伝票の各項目のデータを取り入れて、取り入れた伝票の各項目をチェックし、承認が必要な伝票のデータを上記第1通信制御部から上記伝票承認装置に伝送し、該伝票承認装置から伝送されてくる承認された伝票のデータを上記第1通信制御部を介して受け取り、上記第1出力部より出力し、上記第2制御部は、上記伝票八カ作成装置から送られてきた承認が必要な伝票のデータを上記第2通信制御部から受信し、その受信した伝票データに基づいて当該伝票を表示出力し、承認するか承認しないかの承認データを上記第2入力部より入力し、その承認データを含む伝票のデータを上記弟2通信制御部から上記伝票入力作成装置に伝送することを特徴とする伝票承認システム。
2.上記第2出力部は、表示画面を有し、承認が必要な伝票を受信したときに、上記表示画面の一部に未栽伝票が受信されていることを自動的に表示する手段を有することを特徴とする請求項1記載の伝票承認システム。
3.上記第1入力部は、IDカードの読取装置を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の伝票承認システム。
説明:
システム分析により抽出された伝票承認処理事務における伝票作成、承認及び書き写しに必要な機能をもとに、コンピュータ技術を用いて伝票承認処理をシステム化することが、当業者にとって容易であったかどうか、という観点から検討する。
請求項1に係って、伝票を作成するために、データの入力部と出力部が必要なこと、及び承認を要する伝票データを上司に送るために通信手段が必要なことは、上記伝票作成の事務処理の分析で明らかである。同様のことは、伝票を承認する場合も必要である、したがって、上記出願時のコンピュータ技術@から、
「伝票のデータを入力するための第1入力部、該第1入力部に入力されたデータに基づいて当該入力された伝票を表示及び印字する第1出力部、第1通信制御部及び全体を制御する第1制御部を有する伝票八カ作成装置と、伝票を表示する第2出力部、承認データの第2入力部、第2通信制御部及び全体を制御する第2制御部を有する伝票承認装置とからなる伝票承認システム」として、ハードウェア資源を選択してシステムを構放することは、当業者が日常的なシステム設計手法を用いて行える程度のことである。
そして、各制御部で行っている機能は、「第1入力部から伝票の各項目のデータを取り入れて、取り入れた伝票の各項目をチェックし、承認が必要な伝票のデータを第1通信制御部から伝票承認装置に伝送し、該伝票承認装置から伝送されてくる承認された伝票びデータを第1通信制御部を介して更け取り、第1出力部より出力する」こと、及び
「伝票入カ作成装置から送られてきた承認が必要な伝票のデータを弟2通信制御部から受信し、その受信した伝票データに基づいて当該伝票を表示出力し、承認するか承認しないかの承認データを第2入力部より入力し、その承認データを含む伝票のデータを第2通信制御部から伝票入力作成装置に伝送すること」、
はソフトウェアにより実現される内容であるが、これらは、伝票の事務処理の手順に上記のコンピュータ技術@ADを適用することにより、当業者が請求項1.の伝票承認システムを直ちに導き出すことができるものである。当業者が上記のコンピュータ技術@ADを通用して、容易に請求項1.の伝票承認システムを直ちに導き出すことができ、それ故、請求項1.には進歩性の存在を推認することはできない。
請求項2.及び請求項3.に係わる発明について、受信したデータがあれば、その旨画面表示すること、およびID力一ドで自分のIDカードを入れ、処理を行うことは、上記コンピュータ分野の技術常識BCに示したように、システムイ七の常套手段てある。
また、未栽伝票が受信されていることを自動的に表示する伝票承認システムを設置し、またはIDカードの読取装置を付加して認証データを入力することは、上記コンピュータ分野の技術常識BCに示したように、当業者が必要に応じて付加することが容易てある。
なお、出願者は明細書において、この発明は顕著な効果を奏する旨主張しているが、主張の効果は、コンピュータを使用したことに伴う当然の効果(効率向上)に過ぎないものと認められ、他に、この発明の進歩性の存在を推認できる事実はない。
以上のとおりであるから、請求項1.、請求項2.、請求項3.に係わる発明は、当業者が容易に発明をすることができ、それ故、進歩性の存在を推認することはできない。(工業情報策進会・科技法律センターScience & Tecknology Law Center, Institute for Information Industry.R.O.C.)
<注>
(1)“step”とは、単一の動作に限らす、例えぱ、step plus functionとは、組み合わされた一連の動作を意味する。
(2)米国“コンピュータ関連発明の審査ガイドライン”U.A(1)参照
(3)米国“コンピュータ関連発明の審査ガイドライン”U.B(2)参照
(4)米国“コンピュータ関連発明の審査ガイドライン”注[9]参照:Arrhythmia,958 F.2d at 1057, 22 USPQ2d at 1036:
「デジタルコンピュータによる資料操作は、加算、減算、乗算、割算、ピットシフトのような数学演算を、データについて、2進法で実行することは事実であるが、それはコンピュータが如何なる方法で実行するかに過きず、重要なことはデータとそれを扱う実世界での意味、即ち、コンピュータが何を為すかである。」
(5)米国“コンピュータ関連発明の審査ガイドライン”注[10]参照:多くのコンピュータ関連発明は、コンピュータだけから構成されない。そのため本局の審査委員は、コンピュータ関連発明のクレーム要素の中に、プログラム搭載コンピュータの部分ではない要素を明確に規定し、その他要素がプログラム搭我コンピュータにどのように関係しているかを判断すること。本局の審査委員は特定資料の収集を行ない、プロセス上におけるコンピュータの役割、及ぴプロセス上設定されたコンピュータと各装置間の連結関係、及び当プロセスにて行われる装置のその他構成要素との関係を解明した。
(6)米国“コンピュータ関連発明の審査ガイドライン”V.A(2)参照
(7)米国“コンピュータ関連発明の審査ガイドライン”V.B(1)参照
(8)台湾はこれまでにそのような明細書を書く方法における説明はないので、今後審査する時にトラブルを生じないように、現現を制定することが必要である。
(9)プログラムコードに使われた文字の大部分は・コンピュータ専業領域に慣用され、又は定義された操作指示または変数など記号であり、それらは当業者が理解できる特殊記号であるので、専利法施行規則第十四条に這反することではないはずだ。
(10)日本“特定技術分野の審査の運用指針、第一章コンピュータ・ソフトウェア関連発明”1.2.1参照
(11)米国“コンピュータ関連発明の審査ガイドライン”V.B(2)参照
(12)米国“コンピュータ関連発明の審査ガイドライン”U.C(2)参照
(13)米国“コンピュータ関連発明の審査ガイドライン”注[12]参照:特許請求範囲の中の文言の限定の効果について、問題を起こす可能性のある文言の例:
(a)“意図した使用"(intended use)または“使用分野”(field use)についての言及、
(b)“adapted to”または“adapted for”を用いたクローズ、
(c)“wherein”クローズ、
(d)“wherebv”クローズ
これらの例が全てではない。
(14)専利法施行規則第十四条の規定に参照
(15)米国“コンピュータ関連発明の審査ガイドライン”注[14]参照:
See e.g.,In re PauIsen, 31 US PQ2d 1671.1674(Fed.Cir. 1994)(発明者は発明を説明するために特定の用語を定義してよいが、“合理的な明瞭、熟慮、正確”によりしなけれぱならず、一般的でない定義をする際は、当業者に意味の達いをわからせるように明細書で定義を説明しなければならない)(Intellicall, Inc. v. Phonometrics, Inc., 952 F 2d 1384.1387-88, 21 USPQ2d 1383,1386(Fed.Cir.1992))
(16)米国“コンピュータ関連発明の審査ガイドライン”T(5)参照
(17)台湾特許審査基準第一章第二節1-1-2頁参照
(18)日本“技術分野の審査の運用指針、第一コンピュータ・ソフトウエア関連発明”2.2.1(4)参照
(19)台湾特許法審査基準第一編第一章第二節1-1-3頁参照
(20)米国“コンピュータ関連発明の審査ガイドライン”IV,B,la(1)〜IV,B,la(2)参照
(21)記録媒体形式の発明に問しては・当基準四、(四)“記録媒体形式の発明の類型”乙節を参照されたい
(22)台湾特許審査基準第一編第一章第二節1-1-2頁参照
(23)台湾特許審査基準第一編第一章第二節1-1-2頁参照
(24)コンピュータ・ソフトウェアの方法の発明に関しては、当基準四、(三)“方法の発明の類型”参照
(25)天然物及ぴ自然現象自体は、基本的に発明の類型には属さない。ただし、天然物及び自然現象を発見する方法や装置、あるいは天然物及ぴ自然現象を応用した方法や装置は、「発明に属さない類型」とはならない。
(26)米国“コンピュータ問連発明の審査ガイドライン”IV,b2,a(iii)参照
(27)台湾特許審査基準第一編第一章第二節1-1-2頁参照
(28)この例は永動機器の発明に類似している。
(29)台湾特許審査基準第一編第一章第二節1-1-3頁参照
(30)日本“特定技術分野の審査の運用指針、第一章コンピュータ・ソフトウェア関連発明”3実例七
(31)Gottschalk v Benson 409 US 63,72(1972)
(32)台湾特許審査基準第一編第一章第二節1-1-6頁参照
(33)実例2.ゲーム装置を参照
(34)行政法院七十三年判字第1257号
(35)米国“コンピュータ関連発明の審査ガイドライン”IV,B,2,a参照
(36)米国“コンピュータ関連発明の審査ガイドライン”IV,B,2,b,i参照
(37)米国“コンピュータ関連発明の審査ガイドライン”IV,B,2,b,i参照
(38)米国“コンピュータ関連発明の審査ガイドライン”IV,B,2,b,ii参照
(39)米国“コンピュータ関連発明の審査ガイドライン”注[45]参照:
In Sarkar,588F.2d at 1335,220 USPQ at 139、裁判所はこの取り扱いが数値が為されるべきことを説明した。式中の変数を数値に代える事をしなければ、数学方程式は事実上使用できない。式が指示する数値を置換することは数学的ステップの一つの形態として孝えられている。数値を集めてこれを置換するステップ、それだけで十分であれば、何らかの実用的価値ある全ての数学方程式、数式、またはアルゴリズムはそれ自体で、101条の“プロセス”として特許されることになる。数値を置換することが、式中に存在する非具体的なアイデアを具体的なものにする、または式の利用に吏えることに十分であるか否かの審議は現行の法律には存在しない。
(40)当基準四、(三)、3“「方法」の発明であるかどうかを判断する留意事項”を参照
(41)米国“コンピュータ関連発明の審査ガイドライン”IV,B,2,c参照
(42)米国“コンピュータ関連発明の審査ガイドライン”IV,B,2,d,i参照
(43)米国“コンピュータ関連発明の審査ガイドライン”IV,B,2,d,ii参照
(44)米国“コンピュータ関連発明の審査ガイドライン”IV,B,2,d,iii参照
(45)米国“コンピュータ関連発明の審査ガイドライン”IV,B,1参照
(46)日本“特定技術分野の審査の運用指針、第一章コンピュータ・ソフトウェア関連発明”2.3.(2)-2参照
(47)日本“特定技術分野の審査の運用指針、第一章コンピュータ・ソフトウェア関連発明”2.3.(2)-3参照
(48)日本“特定技術分野の審査の運用指針、第一章コンピュータ・ソフトウェア関連発明”2.3.(2)-4参照
(49)日本“特定技術分野の審査の運用指針、第一章コンピュータ・ソフトウェア関連発明”2.3.(2)-5参照
(50)日本“特定技術分野の審査の運用指針、第一章コンピュータ・ソフトウェア関連発明”2.3.(2)-4参照
(51)日本“特定技術分野の審査の運用指針、第一章コンピュータ・ソフトウェア関連発明”3実例八参照