MATTHEW BENDER & CO. v WEST PUBLISHING CO..

背景
議論 -
結論
脚注


連邦第2巡回区控訴裁判所

1997年8月開廷期

(口頭弁論:1998年3月16日  判決:1998年11月3日)

Docket No.97-7430
原告ー被控訴人  MATTHEW BENDER & COMPANY, INC.
訴訟参加人ー原告ー被控訴人  HYPERLAW, INC.

被告ー控訴人  WEST PUBLISHING CO.; WEST PUBLISHING CORPORATION

控訴裁判所裁判官 CARDAMONE および JACOBS 、地方裁判所裁判官 SWEET [注 1]の面前にて.

原告は CD-ROM ディスクに記憶された判例の編集物を製作、販売するものであって、被告の印刷版の判例集中の特定の本文の場所を示すためのサイテ−ション(citation [判例名、巻、ペ−ジなどの引用])(いわゆる「スターページネーション」(star pagination)  [ 星じるしのペ−ジ付け])の原告版判例集への挿入が、被告の判例集の著作権を侵害しないことを宣言する判決を求める.被告は現在、原告に対して略式判決を認めた、ニュ−・ヨ−ク州南部地区連邦地方裁判所(Martin裁判官)の判決に対して控訴し、スターページネーションは、被告の保護された判例配列のコピ−行為として訴えを提起できるものである、と主張する.

原判決維持.Sweet 裁判官は反対して個別意見を書く.

原告ー被控訴人側訴訟代理人  MORGAN CHU、カリフォルニア州ロサンゼルス(控訴趣意書には、David Nimmer, Elliot Brown, Perry Goldberg, Irell & Manella LLP )

訴訟参加人ー原告ー被控訴人側訴訟代理人  PAUL J.RUSKIN 、ニュ−・ヨ−ク州ダグラストン (控訴趣意書には、Carl J. Hartmann, New York, NY, Lorence L.Kessler, Washington, DC )

被告ー控訴人側訴訟代理人  ARTHUR R.MILLER 、マサチューセッツ州ケンブリッジ(控訴趣意書には、James F.Rittinger, Joshua M.Rubins, Satterlee Stephens Burke & Burke LLP, New York, NY)

合衆国法廷助言者  DAVID SEIDMAN 、ワシントン DC 連邦司法省検察官(控訴趣意書には、Joel I.Klein、連邦司法省司法次官補、Lawrence R.Fullerton, 同司法次官補代理、Robert B.Nicholson、同検察官)

JACOBS控訴裁判所裁判官:

被告ー控訴人 West Publishing Co.および West Publishing Corp.(併せて以下「West」)は、連邦および州の判例集の印刷版を作成、出版している.原告ー被控訴人 Matthew Bender & Company, Inc.および訴訟参加人ー原告ー被控訴人 HyperLaw, Inc. (併せて 以下「原告」)は、 CD-ROM ディスクに記憶された判例集を製作、販売し、その判例集にWestの印刷版判例集中の特定の本文の場所を示すサイテ−ション(いわゆるスターページネーション)[注 2] を組込み、(または組込もう)とするのである.BenderとHyperLawは、スターページネーションが West の判例集の著作権を侵害しないことを宣言する判決を求める.Westは現在、Benderには侵害せずの略式判決を、HyperLawには侵害せずの一部略式判決を認める、ニュ−・ヨ−ク州南部地区連邦地方裁判所(Martin裁判官)の判決に対して控訴する.[ 注 3]

Westの控訴審の主な主張は、Westの判例集のスターページネーションが、原告の CD-ROM ディスクのユ−ザ−に(一連のコマンドを入力することによって)、Westの著作権の保護のある判例配列を「知覚」できるようにし、原告の製品は(スターページネーションが加えられた時には)Westの配列の違法コピ−であるという.当裁判所は2つの理由に基づき、Westの主張を退ける.           

A.
たとえ原告の CD-ROM ディスクが(スターページネーションがついた時に)著作権法上Westの判例配列の違法コピ−になるとしても、(i) Westは、Westの判例集の判例の最初のペ−ジを原告の製品に記入すること(「平行サイテ−ション」)が公正使用の法理により許されると容認している、(ii)Westの配列は平行サイテ−ションによって知ることができる.だから原告はWestの判例配列のコピ−を合法的に作ることができる.(iii) スターページネーションの付加的利益とは、それが各判例中のWestのペ−ジ割り(page breaks)を読者が知り得るようにすることであり、そのペ−ジ割りは著作権によって保護されていない.(iv)故に、スターページネーションはWest判例集の保護された要素の「コピ−」を作るものではなく、また West の著作権を侵害しない.

B.
とにかく、著作権法の正しい解釈の下では、スターページネーションを挿入することは、 West の判例配列の侵害には至らない.

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背景
Westは以下のものを組合わせることによって、判決の「判例報告」(「case reports」of judicial opinions)を作成する.(i) 要旨(各判決の一般的判示を要約するもの)、頭注(各判決中に述べられた特定の法律上の問題点を要約するもの)、キ−・ナンバ−(key numbers)(法律上の問題点を、さまざまの法的主題とその下位の主題に分類するもの)のような、特定の個別に著作されたもの、(ii)判決の本文、Westはこれに他の判例集への平行サイテ−ション、法律家についての情報、その他雑多な付加物を加える.Westはその上で、これらの事件毎の記録を(最初はペ−パ−バックの速報版、次いで本格的製本版として)さまざまの「判例集」(case reporter)のシリ−ズとして出版する.これらの判例集は、併せてWestの「National Reporter System」と呼ばれ、(本件に関しては)次のものを含む.すなわち、Supreme Court Reporter(連邦最高裁判所判例集)(これは、すべての連邦最高裁判所の判決およびメモランダム判決を内容とする)、Federal Reporter(連邦下級審判例集)(これは、出版することに定められた連邦控訴裁判所の判例全部、および出版されなかった事件の処分を記録した表を内容とする)、Federal Rules Decisions (連邦訴訟規則判例集)およびFederal Supplement(連邦地方裁判所判例集)(これは連邦地方裁判所判決の選集である)、および New York Supplement(ニュ−・ヨ−ク州判例集)(ニュ−・ヨ−ク州判例の選集である).[ 注 4] Westの判例集に現れる判例は、それが載っている判例集の巻番号とペ−ジ番号によって一般的に引用される.或る引用ガイドは、連邦上級および第一審裁判所判決、およびニュ−・ヨ−ク州裁判所判決のWest版のサイテ−ションを勧め、裁判所によってはそれを要求するところもある.参照、The Bluebook: A Uniform System of Citation at 165-67, 200-01 (16th ed.1996) ;例えば次を参照、Third Cir. R. 28.3(a); Eleventh Cir.R. 28-2(k); 次も参照、The University of Chicago Manual of Legal Citation 15 (1989)(「州の判例を引用するには、政府刊行もしくは私的刊行の判例集双方の、その判例の巻数および最初のペ−ジを示すこと.」)

Benderは Authority from Matthew Bender(Matthew Bender判例集)という CD-ROM ディスク[注 5]のシリ−ズを販売している.このシリ−ズ中の1つの製品である「New YorkProduct 」は、3つの要素より成る.(i) 「New York Law and Practice 」(ニュ−・ヨ−ク州法および手続)(ディスク1枚).これはニュ−・ヨ−ク州の制定法および学術資料を内容とする.(ii)「New York Federal Cases」(ニュ−・ヨ−ク州連邦判例)(ディスク3枚).これは1789年から現在に至る第2巡回区控訴裁判所およびニュ−・ヨ−ク州所在の連邦地方裁判所の判決を内容とする. (iii) 「New York State Cases」(ニュ−・ヨ−ク州判例)(ディスク4枚).この内容は 1912 年から現在に至るニュ−・ヨ−ク州判決(ニュ−・ヨ−ク州最高裁判所の判決は 1884 年に始まる)である.これらの CD-ROM ディスクはこれらの裁判所の公刊、未公刊の判決と決定を内容とする.      
Benderは LEXIS(法的および非法的デ−タを収めたオン・ライン・デ−タベ−ス)からのライセンスによって、判決の本文を入手し、判決と決定を裁判所と日付順に配列してディスクに記憶させる.その順序はまた、ユ−ザ−が検索に当たって、判決記録を分類しないでディスクの中を拾い読みをする(browse) とき、見るものであろう.Westの判例集に現れている判例ごとにBenderは、その判例の冒頭に West の判例集の平行サイテ−ションを(例えば、100 F.3d101)、 West の巻で判例のペ−ジが変わる箇所に West の連続ペ−ジ番号のサイテ−ションを(例えば、*104または100 F.3d 104) を入れようとしている. (判例によっては既に入れてしまった).

BenderはFOLIO ファイル検索プログラムを使用する.これはユ−ザ−がいろいろな方法で判例にアクセスできるようにしている.その方法には、判例がディスクに記憶されている順序、開廷期検索、 West またはLEXIS の平行サイテ−ションまたはペ−ジ・サイテ−ションが含まれる.この他に、判例の中に出てくるサイテ−ションは、「hot-linked」されていて、ユ−ザ−は引用された判例を、判例サイテ−ションにマウスをクリックすることによって検索できる.

Westは、FOLIO 検索システムはBender製品のユ−ザ−が次の手順を反復して、Westの判例集に印刷されている通りの順序で、判例を見たり(印刷したり)することができるようにしていると主張する(この略式判決の申立に関しては、当裁判所は真実と認める).(i) ユ−ザ−は West の判例集中の最初のペ−ジに達するのに、プログラムのジャンプ・フィ−チャ−(jump feature) を起動させる.(ii)判例の終りまでずっとペ−ジを繰る.(iii) 最後のスターページネーション参照(reference)を見付ける.(iv)Westの同じペ−ジ番号または次のペ−ジ番号で始まる判例を検索するためジャンプ・サイテ−ション・フィ−チャ−を起動させる.[注 6]

HyperLawは、1991年以来の連邦最高裁判所判決を収める1年毎の CD-ROM ディスクである、Supreme Court on Disc および、1993年1月以来の連邦控訴裁判所の判決のほとんど全部(公刊、未公刊を問わない)を内容とする四半期毎の CD-ROM ディスクである Federal Appeals on Disc を販売している.[注 7]HyperLawは、現在判決の本文を直接裁判所から入手し、その Federal Appeals CD-ROM ディスクには、Westが出版するよりもずっと多くの判例を収録する.判決は CD-ROM ディスク上に「ほとんど年月日順に」組織されている.HyperLawは、Supreme Court ReporterとFederal Reporterに登載されている判例全部の West の判例集の平行サイテ−ションを含めており、スターページネーションも加えようと意図している.[注 8]

Benderの訴えは、 West の判例集のスターページネーションが、 West の配列をコピ−したものではなく、また West の著作権を侵害するものではないことを宣言する判決を求めた. HyperLaw も同じ救済を求めて訴訟参加した.その上で、全当事者が略式判決の申立をした.地方裁判所は、スターページネーションの争点については原告に略式判決を認め、Westの判例集のスターページネーションをその判例の CD-ROM 版に挿入することは、Westの編集著作物の保護され得る要素を複製することにはならない、と結論した.同裁判所は、「保護は編集著作物のうちで、編集者によるオリジナルな創造を具現する面にしか及ばない」かつ、「何処のどの特定のペ−ジに裁判所判決の本文が現れているかということは、編集者のオリジナルな創造を具現するものではない、故に … 保護を受ける権利がない」と述べた.同裁判所はさらに、仮に West のパジネ−ションに著作権性があるとしても、スターページネーションは公正使用の法理によって許されるであろうと判示した.


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議論
Westの判例集は、判例の編集著作物である.著作権法は「編集著作物」を「既存の資料またはデ−タを収集して作り上げた著作物であって、それらの資料またはデ−タの選択、調整または配列によって出来上った著作物が、全体としてオリジナルな著作物を構成するもの」であると規定する.17 U.S.C.#101(1994) .編集著作物には著作権性があるが、その著作権は「その著作物に使用された既存の資料またはデ−タと区別して、その著作物の著作者が寄与した資料にしか及ばない」.17 U.S.C.#103(1994) [注 9]連邦政府の著作物は著作権保護を受けない、17 U.S.C.#105(1994) 、それらを編集著作物に含めることはできるけれども.

Feist Publications, Inc. v. Rural Telephone Service Co., 499 U.S.340, 111 S.Ct. 1282(1991)事件は、編集著作物の著作権に関して、その後多くの判例を生んだ最高裁判所判例である.Feist 事件では、電話帳の出版者は、その競争者がホワイト・ペ−ジのリスト(listings) の一部をコピ−することによって、自分の編集著作物の著作権を侵害した、と主張した.連邦最高裁判所は、編集著作物の著作権の範囲を次のように明らかにした.「事実の編集著作物は、もし事実の選択または配列にオリジナルな特徴があれば、著作権が与えられ得る.しかしその著作権は特定の選択または配列に限定される.如何なる場合にも、著作権は事実そのものには及ばない.」同上 at 350-51, 111 S.Ct. at 1290 .
保護可能性のこの制限によって、「事実の編集著作物の著作権は薄弱である.有効な著作権があっても、その後の編集者は、競争する著作物が同一の選択と配列を特徴としない限り、他人の出版物に含まれている事実を自由に使って、その競争著作物を作る助けとすることができる.同上 at 349, 111 S.Ct. at 1289.連邦最高裁判所は明示的に「額の汗」法理を退けた.同法理は、情報を入手し組織するのに投入された労働を基礎として、編集著作物の事実その他の非オリジナルな要素に、著作権保護を及ぼすことを正当化していたのである.同上 359-60, 111 S.Ct. at 1295 .

Feist 事件によれば、侵害を立証するためには2つの要素を証明しなければならない.
「(1) 有効な著作権の所有、および (2)著作物のうち、オリジナルな構成要素のコピ−行為」である.同上 at 36l, 111 S.Ct. at 1296. Bender と HyperLaw は、Westが侵害の第一要素、すなわち、Westはその判例集それぞれに有効な著作権を有することを証明した、と認める.

しかしながら、Feist 事件の第二要素から明らかなように、編集著作物の著作権保護は、「著作者にオリジナルな著作物の構成要素にしか及ばない.」同上 at 348, 111 S.Ct.at 1289 .「オリジナリティ−」要件は、「著作物が独立して創造されること … および、少なくとも最小限の創造性を有すること」両方の要件を含んでいる.同上 at 345,  111 S.Ct.at 1287 (強調追加);次も参照、Key Publications, Inc. v. Chinatown
Today Publ´g Enters.,Inc., 945 F.2d 509, 512-13 (2d Cir. 1991)(「簡単に述べると、オリジナルとはコピ−ではなく、最小限度の創造性を示すことをいう.」)本件で争われているのは、判例集の原告版の本文を通じて配分された West の巻番号やペ−ジ番号への参照である. West は、その各巻のパジネ−ション、すなわち、ペ−ジ割りとペ−ジ番号の割当の挿入、が自動的コンピュ−タ・プログラムによって決定されることを認め、Westはこの過程に何らオリジナルなもの、創造的なものがあると真剣に主張していない.  Martin裁判官が述べたように、「何処のどの特定のペ−ジに裁判所判決の本文が現れているかということは、編集者のオリジナルな創造を具現するものではない.」 West の判例集の内部パジネ−ションは少しも創造性を伴っていないから、巻番号やペ−ジ番号はWestの編集著作物のオリジナルな構成要素ではなく、それ自体 West の編集著作物の著作権によって保護されていない.[注 10]  参照、Feist, 499 U.S. at 363, 111 S.Ct.at 1297( 「構成上の問題として、著作権は著作物のうち、微量以上の創造性をもつ構成要素しか保護しない.」)

巻番号とペ−ジ番号は、 West の編集過程のうちの保護されない部面であるから、それらをコピ−しても West の著作権の侵害にはならない.[注 11 ]しかし West は、原告がWestの一部の判例集の巻番号とペ−ジ番号をすべて挿入したし、またはしようとしているという事実(Westはもっともらしく証明した)に基づいて、代替的主張を提出している.Westの代替的主張によれば、ペ−ジ番号付けは(それ自体)Westの編集著作物の保護され得る要素ではないけれども、(i) 原告の West 判例集のスターページネーションは、原告の CD-ROM ディスクに West の判例配列を組込み、それによってユ−ザ−は、原告のファイル検索プログラムを通じて、 West の保護されている配列[注 12 ]を知覚することができる、かつ、(ii)著作権法の「コピ−」の定義によれば、17 U.S.C.#101 、機械の助けを借りて編集著作物の保護され得る要素を知覚できるようにする著作物は、編集著作物のコピ−となる.当裁判所は2つの別々の理由によって、この主張を退ける.[注 13]

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A.

Westは間接侵害理論を主張する.(i) 保護され得ない巻番号とペ−ジ番号を CD-ROM ディスクに組込むこと(いわゆる「編集著作物マ−カ−」(compilation markers)または  「タグ」(tag)[目印])、(ii)機械の助けを借りて West の判例配列を認識できるようにすること、(iii) これは101 条の「複製物」の定義によれば、編集著作物のコピ−にあたること.さしあたり West が著作権法を正しく解釈した、すなわち、配列のコピ−は、その配列がユ−ザ−と機械の助けを借りて認識できる場合に作られる、と仮定しても、そのコピ−はスターページネーションを挿入することによって作られていないことは明らかである、と当裁判所は考える.

Westは、Westの判例集の平行パジネ−ション(特定の判例の出ている巻番号と最初のペ−ジ番号を示すこと)を原告の製品(ならびにその他の判決の編集著作物のいずれにも)に挿入することは、公正使用の法理によって許されることを認める.[注 14 ]参照、Westの解答上訴趣意書 at 5 n.5 (「競争者による West 判例集の平行パジネ−ション(ただしスターページネーションを加えないで)は、著作権法 107条による公正使用である、  -- すなわち、107 条の要因の下に分析されると『公正』と見なされるが、そうでなければ侵害的使用である -- という West の前々からの主張」を述べる);Bender´s Rule 3(g) Statement #32,Joint Appendix at 1581への West の解答;次も参照、West        Publ´g Co. v. Mead Data Central, Inc., 799 F.2d 1219, 1222 (8th Cir.1986)(Westは、その判例集の[事件の]最初のペ−ジのサイテ−ションが著作権法 107条による侵害にならない「公正使用」であると認める」). West は口頭弁論において(地方裁判所でしたと同様に [注 15 ])これらの平行パジネ−ションは、すでに原告の CD-ROM ディスクのユ−ザ−が、機械の助けを借りて West の配列を知覚できるようにすること、それ故、すでに原告の CD-ROM ディスクに West の配列の合法的「コピ−」、すなわち、Westが定義するコピ−、を作ったものと認めた.[注 16]
一旦コピ−がこのように平行サイテ−ションによって作られると、 -- 誰でもこのコピ−を知り得ることを利用しようと思うと仮定すれば -- スターページネーションによって知覚し得る(機械の助けを借りて)ようにされた唯一の付加的デ−タは、各判例内のペ−ジ割りの位置である.しかしペ−ジ割りは West のオリジナルな創造から生ずるものではないから、その位置をコピ−しても違法ではない.故に当裁判所は、スターページネーションの巻番号とペ−ジ番号は保護されていない情報を単に伝えるだけであって、その複製は West の著作権を侵害しない、と結論する.
Oasis Publishing Co. v. West Publishing Co., 924 F.Supp. 918 (D.Minn.1996)事件における地方裁判所は反対の結論に達し、判例配列を知るのに用いことができる平行サイテ−ションの公正使用のコピ−行為は、配列を知るために使用することもできる内部パジネ−ションのコピ−行為を許さないと論じた.参照、同上 at 926 .[注 17 ]なるほど公正使用の法理の下のコピ−行為は、必ずしも追加的使用を許すものではなく、追加的コピ−行為で、全体としてはコピ−行為となるものを許さない.しかし編集著作物は保護できるとしても限度があって、編集著作物のオリジナルな要素(すなわち、その選択、配列、および調整)しか、コピ−行為に対して保護されない.平行サイテ−ションの挿入は、すでに West の配列のコピ−(少なくとも West の定義するコピ−)を作り、それは公正使用の法理の下で許され得るコピ−なのである.スターページネーションは、同じ配列のコピ−をもう一つ作るとはいえない.スターページネーションを禁ずることは、ただWestにその編集著作物のうちで、重要性と価値を持つに至ったオリジナルでない要素を保護することを許すことになろう.従って、たとえ West の著作権の解釈に賛成するとしても、当裁判所は侵害を認めるわけにはいかないであろう.

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B.

しかし、当裁判所による West の主張の拒否は、もっと根本的なものである.もし人が、原告の CD-ROM ディスクを読み、分類するコンピュ−タ・ソフトウェアを用いて、それを始めから終りまで拾い読みすれば、判例の順序が West の配列に負うところは何もない.Westの主張は、 CD-ROM ディスクは侵害コピ−である.何故なら CD-ROM ディスク上でデ−タを操作するユ−ザ−は、随意に判例を(そのうちの多くを捨てて)順序を変えて、Westの配列順に直すことができるであろうというのである. West の理論を West が(誤って)依拠している制定法の言葉でいうと、原告の CD-ROM ディスクの1枚1枚が「コピ−」である.何故なら West の著作権のある配列が「機械または装置の助けを借りて …知覚する」ことができるようにディスクに「固定」されているからである.17 U.S.C.
#101(1994).

以下に述べる理由によって、当裁判所は CD-ROM ディスクは、それを読む機械と装置が 著作権のある配列または実質的に同様な配列に組み込まれている資料を知覚する時に、著作権のある配列を侵害すると結論する.少なくとも本件記録にはない勧誘、誘因または便宜がない限り、著作権のある配列は、もし機械が配列を知り得るのは、誰か他人が機械を使って著作権者の配列に並べ直した後初めてできるのであれば、 CD-ROM ディスクによって侵害されていない.

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1.101 条の「複製物」の定義

Westは制定法の「複製物」の定義に依拠している.侵害を証明するためには、著作権者は排他的権利の侵害を証明しなければならない.17 U.S.C.#501 (1994).そのような権利の一つが「著作権のある著作物を複製物またはレコ−ドに複製する」権利である.17 U.S. .#106(1)(1994) (強調追加).著作権法101 条は「複製物」を次のように定義する.                                       

本件の分析に含まれている条件に基づき、強調を加えた.
「複製物」とは、現在知られており、または将来開発される方法によって、著作物を固定する有体物であって、それから直接に、または機械もしくは装置の助けを借りて、著作物を知覚し、複製し、またはその他の方法で伝達できるもの(レコ−ドを除く)をいう.「コピ−」という用語は、レコ−ドを除き、著作物が最初に固定された有体物を含む.17 U.S.C.#101 .

「著作物の有形的表現媒体への『固定』とは、瞬間的期間以上の期間に亘って、著作物を知覚し、複製し、またはその他の方法で伝達することを可能にするに足るほど永続的または安定的に、コピ−に具現されることである.」同上.(強調追加)

著作権法は、オリジナルな著作物とその著作物が「固定」されている有体物との間の「根本的区別」を確立する.参照 前出[注 9] .101 条が「複製物」と「固定」という語を定義した唯一の目的は、「固定」要件を明らかにすること、すなわち、著作権性のある著作物と侵害著作物が組み込まれている有体物を定義して、その有体物内のその著作物の固定性の要件を記述することである.参照、1 William F. Patry, Copyright Law and Practice 168 (1994) (「制定法上の著作権の2つの本質的基準は、オリジナリティ−と固定である.」);同上 at 174 (「複製物」の定義は、「『著作権性のある目的物が固定され得る有体物すべてを含む』ように意図されている」と述べる).101 条の「コピ−」の定義によれば、著作物はそれが直接に、または機械の助けを借りて、知覚され、または伝達され得る有体物に固定される時、固定要件を充足する.[注 18]

この定義は、「White-Smith Publishing Co. v. Apollo Co., 209 U.S.1,[28 S.Ct.319] (1908)事件のような事件から引出される」諸区別を避けるためのものであった.「同事件では、一部の事件における制定法上の著作権性が、その著作物が固定される形式または媒体に依存させられていたのである」.下院報告書 No. 94-1476, at 52(1976), reprintedin 1976 U.S.C.C.A.N. 5659, 566;次も参照、上院報告書 No.94-473, at 51(1975)[注 19 ].White-Smith 事件において連邦最高裁判所は、ピアノ・ロ−ルは、それが演奏する著作権のある音楽を侵害しない、何故ならその穿孔(perforation)は目でみても分からず、故に音楽(最高裁判所はこれを「『理解できる表音法による手記または印刷の [作曲の]記録』」と定義した)にはならなかったからである.参照、White-Smith Publ´g Co., 209 U.S.at 17, 28 S.Ct. at 323 .同事件において、ピアノ・ロ−ルに具現された著作物はオリジナルな著作物、すなわち音楽作品を複製したことに問題はなかった.唯一の問題は、その複製が「固定」要件を満たしたかどうかであった.だから「コピ−」の定義には、機械の助けを借りて知覚できる著作物を具現する有体物を含むように固定要件を拡張し、それによって著作権のある著作物で、フロッピ−・ディスク、 ハ−ド・ドライブ、磁気テ−プのような媒体に含まれたものの複製が、著作権法の「固定」要件を確実に満たすようにする意図があった.

ディスクまたはテ−プに記憶された著作物は、たとえ技術的助けがなければ人間の感覚では知覚できなくても、著作権のある著作物のコピ−となり得ることを明らかにする意図をもったその定義の意味は、 CD-ROM ディスクは、たとえそこに収められた情報が CD-ROM プレ−ヤ−の助けがなければ知覚できなくても、著作権を侵害し得るということである.しかし本件では、唯一の固定された配列は、原告の CD-ROM ディスクに組み込まれ、かつ、デ−タを操作することなく機械の助けを借りて現れる(Westのものではない)順序なのである.

少し要約すると、Westは「複製物」の定義に依拠して、原告の CD-ROM ディスクがその著作権のある判例配列を複製している、何故ならスターページネーションは、ユ−ザ−にコンピュ−タと FOLIO検索システムの「助けを借りて」、すなわち、 CD-ROM ディスクに組み込まれているデ−タを操作し、Westの判例集に現れている順序で判例を検索することによって、著作権のある要素を「知覚」できるようにするからであると主張する. West の複製物の定義は、 CD-ROM ディスクに適用すると、組み込まれている著作物を拡張して、自ら進んでデ−タを操作する第三者のユ−ザ−によって行われ得る、すべての配列または再配列を含むようになるであろう.しかし当該制定法の表現は、技術によって読むことができる「著作物」が「固定されている」有体物を指すのであって、再配列その他によって著作物の固定した組み込み方を変更するために、技術を用いることによって自然発生的に創造され得る別個の著作物を指すのではない.制定法を自然に解釈すると、著作物の配列とは、求めもしないデ−タの操作なしに、機械が知覚し得る配列である.

Westは 101条の「複製物」の定義の解釈を支持する判例をあげていない.[注 20]当裁判所が発見したどの判例も、或る著作物が固定要件を満たすかどうかを確かめるだけに、その定義に依拠したものであって、その有体物に固定された著作物の配列や再配列を決定するためではない.例えば、次を参照、Stenograph L.L.C. v. Bossard Assocs., Inc.,144 F.3d 96, 100(D.C.Cir.1998)(101 条の「複製物」の定義を引用して、「コンピュ−タへソフトウェアをインスト−ルすること(installation)が、著作権法にいう『複製行為』の結果となるという命題の根拠とする」); Stern Elecs., Inc. v. Kaufmam, 669 F.2d 852, 856(2d Cir.1982)( 101 条の「複製物」の定義を用いて、視聴覚著作物が「固定」要件を満たすかどうかを決定する);Sega Enters.Ltd. v. Accolade, Inc., 785 F.Supp. 1392, 1396(N.D.Cal.)(101 条を用いて、中間的コピ−は訴訟提起できるかどうかを決定し、中間的複製物と侵害されたと主張される著作物との間の実質的類似性を、中間的複製物が著作権のある著作物の複製であるかどうかを決定する基準と認める)、 aff´d in part and  rev´d in part, 977 F.2d 1510(9th Cir.1992).

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2.実質的類似性
Westの著作権のある著作物の要素が「複製物」中に複製されたか、という提起された問題は、原物(original) と侵害著作物と主張されるものとを比べ、著作権性のある要素が実質的に類似しているかどうかを問うことによって答えられる.本件の事実の下で、原告の CD-ROM ディスク上の「著作物」の配列は、情報がディスクに物理的に組み込まれ、すなわち、「固定されている」順序で情報を読む CD プレ−ヤ−がディスプレ−するものであって、機械を用いて第三者ユ−ザ−が、組み込まれているデ−タの操作および再配列によって知覚することができる、ありとあらゆる配列ではない.

Feist 事件で連邦最高裁判所は、事実の編集著作物の著作権保護は薄弱で、同じ事実または著作権性のない要素を内容とする編集著作物は、それが原編集著作物と「同じ選択と配列を特徴」としない限り、侵害にならないことを強調した.Feist, 499 U.S.at 349, 111S.Ct. at 1289(強調追加);次も参照、Key Publications, Inc. v. Chinatown Today Publ´g Enters., Inc., 945 F.2d 509, 514(2d Cir.1991) (侵害を証明するために編集著作物の著作権者は、「侵害されたと主張される編集著作物に著作権性を与えている要素、しかもその要素間のみの、実質的類似性」を実証しなければならない、と判示する).
2つの著作物が実質的に類似する配列を含むかどうかを決定するために、諸裁判所はその2つの著作物の資料の順序を比べ、両編集著作物が非常に類似した文字の順序または形式を特徴とする時に限り、侵害を認定する.例えば、参照、Lipton v. Nature Co.,71 F.3d464, 472 (2d Cir.1995)(著作権のある著作物に含まれる 25 語中、 21 語が侵害すると主張される著作物に同じ順序で列挙されている時に、配列の侵害を認定する);Worth v. Selchow & Righter Co., 827 F.2d 569, 573 (9th Cir.1987)( [論理、文法、修辞学]三科の百科辞典中の事実の記入事項のアルファベット順の配列は、ゲ−ム・カ−ドの主題と無作為配列により事実の記入事項を構成した著作権のあるゲ−ムによって、侵害されていないと判示);次も参照、Jane Ginsburg, No “Sweat ”? Copyright and   Other Protection of Works of Information After Feist v. Rural Telephone, 92 Colum.L.Rev.338, 349(1992)( Feist 事件によれば、「広範な逐語的複製行為」でなければ、編集著作物の侵害にはならない、と述べる)「類似性が単に[著作権者の]著作物のうちの著作権性のない要素のみに関し、または事実の合理的審理者が両著作物は実質的に類似していると認定できないならば、略式判決が相当である.」Williams v.Crichton,84 F.3d 581, 587(2d Cir.1996)(内部引用符と引用判例省略)当裁判所は、Westが必要な実質的類似性を証明していない点で、原告および法廷助言者である合衆国[司法省]に賛成する.[注 21 ]
Westの判例集は、原告の CD-ROM ディスクよりもずっと少ない判例を載せていて、裁判所、日付、部類(正式意見、匿名意見、決定等)のような分類に従って配列され、オリジナリティ−の特徴として West のあげる例外がある.他方原告は、判例を単に裁判所と日付だけで構成している.両著作物の比較をすれば、 West の判例集中で並んで現れている判例は、原告の製品上ではいくつもの他の判例によって隔てられていることが明らかになる.たとえこの隔てられた多くの判例を無視するとしても、原告の製品上に含まれている West の判例は、 West の配列に似た配列には全くなっていない.[注 22 ]

スターページネーションは(判例の本文のペ−ジの位置を表す他に)、付随的に読者がさまざまなコンピュ−タ・キ−を操作して、 West の配列のコピ−を作ることができる方 法を読者に示すかもしれない.しかし同様にして、仮に CD-ROM ディスクが、判例が CD-ROM ディスクに組み込まれている通りの順序で、紙で出版されたならば、そのような考え方をする読者は鋏を使って、 West の配列の「コピ−」を合成することができよう.次と比較、Horgan v.MacMillan, Inc., 789 F.2d 157, 162(2d Cir.1986)(「著作権侵害決定の基準は、原本が侵害コピ−と主張されるものから再現できるであろうかではなく、後者が前者に『実質的に類似』しているかどうかである」という).

なるほど、 CD-ROM 技術は紙とは異なる.何故なら West が指摘するように、 CD-ROM ディスク内の判例の配列は、情報がユ−ザ−によってディスプレ−され、または紙に印刷される方法とは必ずしも対応しない.それは、ファイル検索システムはユ−ザ−が色々な方法で検索することができるようにするからである.参照、Robert C.Denicola, Copyrightin Collections of Facts: A Theory for the Protection of Nonfiction Literary     Works, 81 Colum. L.Rev. 516, 531 (1981) (「[電子的デ−タベ−ス]中で、デ−タの特定の、固定された配列を求めることは意味のないことが多い」)しかし101 条による  Westの主張を退けたのであるから、当裁判所は原告の著作物の配列が、原告の CD-ROM ディスクに組み込まれ、かつ、原告の製品を拾い読みするユ−ザ−にディスプレ−される順序であると、結論できる.その順序は West の判例集とは実質的に類似していない.
                                     

BenderとHyperLawの判例検索システムは、ユ−ザ−が最初に West の配列を作る手順を踏まないで、 West の配列の判例を拾い読みができるようにするという証拠はない.故に、Westの判例順序の訴訟提起できるコピ−、すなわち、有形の媒体に固定された実質的に類似した配列をもつ著作物(おそらく判例のプリントアウト)は、 CD-ROM ディスク・ユ−ザ−によって作られることができよう.但し、それは電子的鋏としてファイル検索プログラムを用いてのみ可能である.当裁判所は、原告の製品が West 判例集のスターページネーションを挿入することによって、直接 West の著作権を侵害するとは認定できない.

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3.寄与侵害

実質的類似性がないにもかかわらず、デ−タベ−スのメ−カ−はユ−ザ−が著作権を直接に侵害することを助ける機械を作ったために、寄与侵害者(事情によっては)として責任を負わせられるかもしれない.Westは、BenderとHyperLawのユ−ザ−がスターページネーションと CD-ROM 製品の検索機能を用いて、 West の判例集に載っている順序で判例を検索し印刷するであろうと仮定した.参照、Michael A.Trittipoの宣誓供述書#5 、Joint Appendix at 1287. CD-ROM ディスク・ユ−ザ−で、 West の編集著作物をそういう方法で写した者は、侵害者であろう.しかし、 West は、westの訴訟代理人である     Mr. Trittipo以外には、第一次の侵害者を確認できなかった.参照、Cable/Home
Communication Corp. v. Networks Prods., Inc., 902 F.2d 829, 845 (11th Cir.1990) (「寄与侵害は必然的に、直接または第一次侵害の認定に続かなければならない.」);2 Paul Goldstein, Copyright # 6.0(1996)(「被告に寄与的または代位的に責任を負わせるには、直接侵害が先に起こっていなければならない.」).

一団の第一次侵害者がいると仮定すれば、当事者で「侵害行為を知りながら、他人の侵害行為を誘導し、惑起し、または実質的に寄与する者は、『寄与的』侵害者として責任を負わせられるかもしれない.」参照、Gershwin  Publ´g Corp. v. Columbia Artists Management, Inc., 443 F.2d 1159, 1162(2d Cir. 1971) .寄与侵害責任に至る活動には 2つのタイプがあって、(i) 侵害を奨励し、または補助する個人的行為 (ii)侵害を容易にする機械または商品の供給、である.参照、ITSI T.V.Prods.,Inc. v. California Auth. of Racing Fairs, 785 F.Supp.854, 861 n.13(E.D.Cal.1992) .WestはBenderと HyperLawが CD-ROM 製品を販売することは、第二の範疇に属すと主張する.

しかし法廷助言者合衆国は、設備の供給は、もしその設備が「実質的非侵害使用ができ」、それが公正使用の法理のよって許される用途を含むなら、寄与侵害にはならない、と述べる.参照、 Sony Corp. of Amer. v. Universal City Studios, Inc., 464 U.S.417,442, 104 S.Ct. 774, 788-89(1984).責任が実質的非侵害用途によって排除されるかど うかを決定するに当たって、連邦最高裁判所は Sony 事件において、寄与侵害者と主張される者が、その供給する設備で違法複製行為に影響を与え、または奨励しなかったことを強調した.同上 at 438, 104 S.Ct. at 787 ;次も参照、Cable/Home Communication  Corp., 902 F.2d at 846.

Westの判例集中の判例の配列は、どんなに細心かつ周到であっても、これらの製品の第一次用途、すなわち、判例の検出と検索には、大して役立たない.結局、アクセスの有用な順序を決定するのは、ほとんど常に出版者の順序づけよりもむしろ、各ユ−ザ−の調査目的である.(判例の編集著作物は、音楽のメドレ−またはソネットの順序とはあまり似てはいないから).原告の製品中にある West のページネーションの第一次の用途は、法曹界では標準的慣行となった、 West 判例集中の特定の本文の所在をユ−ザ−が参照できるようにすることである. West は、正確に引用するために West の巻番号とペ−ジ番号を使用することが、少なくとも公正使用であることは認める(たとえそれが訴訟提起できいるコピ−行為となるとしても).原告がその製品のユ−ザ−に、 West の配列を複製するように奨励した証拠はない.事実、 CD-ROM 製品は、実質的に類似する配列を作るためスターページネーションを使用する、容易な方法を提供していない.ユ−ザ−は1時に1つずつ、 West の判例集に出ている順序で検索し、1つ1つ印刷しなければならない.こんな割の悪い仕事をやりたい顧客がいるだろうか? 当裁判所は、原告の製品が圧倒的でないとしても、実質的かつ非侵害的用途を有し、原告は寄与侵害者として責任はない、と結論する.[注 23 ]

Westは Sony 事件は、中立的な「主要商品」(ビデオ・テ−プ・レコ−ダ−)で、「如何なる著作権のある著作物との関連、関係、または繋がりなく売られている」ものに関するが、一方原告の CD-ROM ディスクは、「そのデ−タベ−スに恒久的に組み込まれている、Westが所有権をもつ配列のコピ−そのものを … 内容としている」ことを根拠に、同事件と区別する.この主張は、寄与侵害というよりは直接侵害、すなわち(すでに他の理由によって当裁判所が退けた主張)を述べている.ともかく、当裁判所は「実質的、非侵害的用途」基準が、Sony事件におけると同様に、本件でも適用できると考える.連邦最高裁判所は、著作権者が原著作物の著作権をてこに用いて、付随的に侵害に用いられるが、実質的には非侵害的用途を有する製品の頒布を統制(かつ、ロ−ヤルティ−を入手しようと)するのを防ぐために、その基準を適用したのである.参照、Sony, 464 U.S. at 440-42,104 S.Ct. at 788-89; 次も参照、2 Goldstein,前出 #6.1.2 ( 「そのような資料、または設備の配布が寄与侵害を構成すると判示し、従ってそれらを著作権者の統制の範囲に入れることは、著作権者が、著作権のある著作物とは直接関係のない商品の価格と利用に影響を与えることができるようにするかもしれない.」)同じ理由づけが本件にも妥当する.Westの編集著作物の著作権は薄弱であるが、 West はそれをてこに用いて、そのページネーション(編集著作物の全然保護されない要素)を保護し、それによって、 West の判例配列を随伴的に複製するように用いることもできるが、検索と引用の道具として実質的、支配的、かつ非侵害的用途を有する、 CD-ROM 製品を排除しようと(またはロ−ヤルティ−を引出そうと)しているのである.[注 24]

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C.

当裁判所は、第8巡回区控訴裁判所と West Publishing Co. v. Mead Data Central,    Inc., 799 F.2d 1291(8th Cir.1986) 事件において、意見を異にする.同事件においてLEXIS (オン・ライン・デ−タベ−ス・プロバイダ−)は、自社のオン・ライン版にWestの判例集に合わせてスターページネーションをつける計画を発表した.Westの主張は、スターページネーションはユ−ザ−に、まるで West の判例集を読んでいるかのように、判例にさっと目を通すことができるようにし、そういう方法で West の判例配列をコピ−した、というのである.同上 at 1222.同裁判所は「Westの配列は、判例の編集著作物の著作権性のある部面であり、Westの判例集のページネーションは West の配列を反映、かつ表現し、MDC が West のペ−ジ番号を使用しようと意図していることは、 West の配列の著作権を侵害する」と判示した.同上 at 1223.たとえ「LEXIS を用いて、 West 判例集に配列されているように判例に目を通すことができ」ないとしても、包括的にスターページネーションを挿入することは侵害になる、と同裁判所は述べた.

LEXIS 上の判例の中で、 West の判例集にジャンプ・サイテ−ションすることは、侵害となる.何故ならそれはLEXIS ユ−ザ−に、現在見ている判例の部分の、West配列中での正確な位置を知ることができるようにするからである.

[LEXIS の]スターページネーションがあれば、消費者は West の判例集をもはや買わなくても、 West の配列のあらゆる部面を入手できよう. West の配列内の判   例と判例の一部の位置を知ることは、人が West の判例集を買う理由の大きな部分であるから、LEXIS のスターページネーションの特徴は、 West の市場における地位に不利な影響を与えるであろう.「著作権のある著作物の、正常な市場の如何なる部分にしろ、それに取って代る使用は、通常侵害と考えられるであろう.」上院報告書 No.473, 94th Cong., 1st Sess. 65(1975) …同上 at 1227-28 ;次も参照、Oasis Publ´g Co. v. West Publ´g Co., 924 F.Supp.  918, 922-25(D.Minn.1996)( (i) West Publishing Co.事件は、Feist 事件の「額の汗」法理を否認したことによって覆されたのではない.(ii)たとえそうだとしても、「[West の判例集の]内部ページネーションは、 West の配列全体の一部であって、同様に保護される」と判示する).

West Publishing Co. 事件において第8巡回区控訴裁判所は、配列の「反映」としてのページネーション保護の先例をあげていないし、スターページネーションを挿入することがどうして West の配列に実質的に類似する配列を特徴とする「複製物」を作ることになるかを説明してもいない.それはむしろ類似していない配列であって、 West 判例集の本文の位置をただ参照するだけで、 West の判例配列を複製しようと思う人の作業を随伴的に単純化するものである.なるほどスターページネーションは、ユ−ザ−が West 判例集中の本文の一部の位置を知る(役に立つ程度に近く)ことができるようにしている.しかしこの位置は、 West の原判例配列(またはオリジナルな創作物)から近いところに到達するのではなく、適法に複製できる.だからそのような複製行為の結果、 West 判例集の市場性への損害は著作権法上認められない.第8巡回区控訴裁判所の取って代る用法に関する上院報告書の引用が、同報告書中の公正使用の法理の議論からとられたものであることは興味深い.同法理は、著作権者が自分の著作物の保護できる要素の侵害を最初に実証した時、初めて適用できるのである.

West Publishing Co. 事件は、その根底は、今は通用しない「額の汗」法理に基づいて いる.同裁判所は、LEXIS が West のペ−ジ番号を大量に流用して、 West の判例集の需要の多くに取って代ったからというだけで、 West の著作権を侵害したと認定した.この結論の到達するに当たって同裁判所は、(i) LEXIS による流用は、 West が「編集に随分労力と勤勉性を費やした」ものの大部分を West から奪うことになるであろう、と述べ、West  Publ´g Co., 799 F.2d at 1227 、(ii) Hutchinson Telephone v. Fronteer     Directory Co., 770 F.2d 128(8th Cir.1985) を引用したが、参照、West  Publ´g Co.,799 F.2d at 1228、それはまた、Leon v. Pacific Telephone & Telegraph Co.,91 F.2d 484(9th Cir.1937) および Jeweler´s Circular Publishing Co. v. Keystone Publishing Co., 281 F.83(2d Cir.1922) を根拠とした.これらはFeist 事件で覆された古典的「額の汗」判例なのである.故に、West Publishing Co. 事件の第8巡回区控訴裁判所は、 West のオリジナルな創作物ではなく、むしろ West の勤勉性の集合物を誤って保護したのである.Feist 事件は West Publishing Co.事件の理由づけの基礎を失わせているのだから、参照、United States v. Thomson Corp., 949 F.Supp.907, 926(D.D.C.1996)、当裁判所はその踏襲を拒否する.

結論
当裁判所は、BenderとHyperLawが、その判例の CD-ROM ディスク版に West の判例集のスターページネーションを挿入することによって、 West の著作権を侵害しない、と判断する.地方裁判所の判決を支持する.
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脚注

[ 注 1]
ニュ−・ヨ−ク州南部地区地方裁判所 Robert W.Sweet 裁判官は、指名により審理に参加する.

[注 2]
 この相互参照方法は「スターページネーション」と呼ばれる.何故なら星印およびサイテ−ションまたはペ−ジ番号が判例の本文に挿入されて、判例の異なる版でのペ−ジの行末が来る時を示すからである.

[注 3]
地方裁判所は、スターページネーションの争点については略式判決を認めた.しかしHyperLawは、見出し(captions) と判決の本文の West 版の複製がWestの著作権を侵害しないという追加的宣言を求めていた.その請求については、地方裁判所は略式判決を認めず、裁判官による審理の後、HyperLaw有利の判断を下した. West はこの判断に対しても控訴し、当裁判所は本日下した別の意見において、その判断を支持する.参照、Matthew Bender & Co. v. WestPubl´g Co., No.97-7910 .

[注 4]
Westの判例集の一般的配列は次の通りである(各後続の範疇は前の範疇内の判例の順序を決定する):
Supreme Court Reporter: 判例の組織は(i) 意見のタイプによる(正式意見、それから決定、メモランダム判決); (ii)次に登載日付の順序による;(iii) 次に意見を執筆した裁判官の先任順による(匿名意見が個々の裁判官が執筆した意見の後へ);(iv)次に事件表番号(docket number) による.
Federal Reporter: 判例は速報版で組織される:(i)裁判所による(第1にコロンビア地区巡回区控訴裁判所、次いで番号のついた巡回区控訴裁判所、最後に連邦巡回区控訴裁判所);(iii) 次に意見のタイプによる(まず、意見、および表紙つきメモランダム(jacketed memorandom)、次いで sheetメモランダム);表の形で報告された事件は、速報版の終りにまとめて記載される;(iii)次いで年月日順.速報版2つまたは3つがその後まとめられて恒久版となる.
Federal SupplementおよびFederal Rules Decisions:判例は速報版にまとめられる.(i) 巡回区;(ii)州のアルファベット順;(iii) 州に複数の地区があれは、次の順で:北部、中央部、中部、東部、西部、南部;(iv)年月日順.速報版はそれからまとめられて製本される.
New York Supplement: 判例は速報版にまとめられる:(i) 形式、例えば、十分な頭注のついた意見とメモランダム判決;(ii)裁判所の段階;(iii) 部門別;(iv) 年月日順.速報版はそれからまとめられて製本される.
これらの一般的ガイドラインは、特定の編集上の決定に従って、判例を連続して、または同じ巻に入れて出版したり、あるいは意見を、その後その意見を修正する決定または否認する再審理とまとめて出版される.

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[注 5 ]
当事者が述べるように、 CD-ROM 出版物は書籍にまさる利点がいくつかあり、それには(i) 小さいスペ−スに大量の情報を記憶する能力;(ii)単語検索を用いて本文中の事項を検索する能力;(iii) 本文の一部をプリント・アウトし、またはディスクにダウンロ−ドする能力がある.その上、同じ利便のうちのいくつかを提供するオン・ライン検索サ−ビスとは異なり、 CD-ROM ユ−ザ−は時間使用料金を払わなくてもよい.

[注 6] 
Westの訴訟代理人は検索手順を以下のように記述する.
[Bender] 製品を用いて、私は West のNew York Supplement(Second) シリ−ズ628 巻の有形の印刷本を持っているかのように、すべての方法で行動することができた.私は West のサイテ−ション「nys2d ヲ628 ヲ1 」をタイプした.すると Bender 製品は、 West が628 巻の最初の判例として配列することを選んだ判例「In the Matter of Neftali D」の頭注をディスプレ−した.Bender製品は West の頭注その他の資料が第1ペ−ジの残りを占めていることを示した.何故なら裁判所の判決の本文はスタ−・ペ−ジ{628 N.Y.S.2d2}の後に始まるからである.判決の本文を通読して、私は West が第2ペ−ジに入れた本文の終る所と、第3ペ−ジの本文の始まる所を見た.何故なら、文章の途中で第2ペ−ジが終り、第3ペ−ジが始まる所を示す符号があったからである.その符号は太字のグリ−ンの{628 N.Y.S.2d 3}であった.同様に、第3ペ−ジの終る所が分かった.何故ならそこには太字のグリ−ンの{628 N.Y.S.2d 4}があったからである.(1) 第5ペ−ジが始まる所を示す符号がなかったこと、(2) 第4ペ−ジの符号の後の本文の量は、第3ペ−ジと第4ペ−ジの間の量よりも著しく少なかったこと、の観察から、628 巻の次の判例もその巻の第4ペ−ジから始まる、と分かった.それから West のサイテ−ション「nys2d ヲ628 ヲ4 」を入力して、次の判例を見ようとした.そして同じように続けた.
カ−ソルを前の判例の最後のスタ−・ペ−ジ符号の左側に置くだけで、Westのサイテ−ションをタイプする必要さえないことが分かった.カ−ソルをそこに置いて、control-d を押せば「nys2d ヲ628 ヲp4」のような West のサイテ−ションがすでにタイプしてある jump link destination boxが出た.「p 」を削除すると、WestのNew York Supplement 628 巻の配列通りの次の判例に、完全なサイテ−ションをタイプする必要なしに達することができた.

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[注 7]
記録は、本件開始以来 HyperLaw がこれらの2製品を1つにまとめたことを示すようである.

[注 8]
HyperLawの主張によれば、その製品ではユ−ザ−が West の判例集に出ている通りの順序で判例を見ることはできない.しかし地方裁判所は、Benderのディスプレ−と検索能力とHyperLawのものとを区別しなかった.それが本件の結果に影響しないのであるから、HyperLawの製品はBenderの製品と同じ検索能力を持つと仮定しよう.

[注 9]
著作権法 103条は次のように規定する:
(a) 第102 条に明記する著作権の目的物は、編集著作物および二次的著作物を含む.ただし、著作権が存する既存の資料を使用した著作物に対する保護は、その資料が不法に使用されている著作物の部分には及ばない.
(b) 編集著作物または二次的著作物の著作権は、その著作物の著作者が寄与した資料であって、その著作物に使用された既存の資料と区別されるもののみに及び、既存の資料の排他的権利を含まない.17 U.S.C.#103 .

[注 10]
別の論証過程を用いても、同一の結論に到達できる.著作権法上、原著作物と有形の媒体にその著作物を有形的に組み込んだものとの間には、根本的区別がある.参照、H.R.Rep.No. 94-1476, at 53(1976), reprinted in 1976 U.S.C.C.A.N.5659, 5666(「『著作』の生産物である『原著作物』と、それが組み込まれ得る多数の有形的目的物との間の根本的区別」を述べ、「故に、著作権法の意味では、『書籍』は著作物ではなく、特殊な種類の『複製物』である.そうではなくて、著作者は『文芸の著作物』を書くであろう.それが今度は広い範囲の『複製物』とか『レコ−ド』に組み込まれ得る … 」と述べる).有形的媒体に著作権性のある著作物を組み込むことは、その有形的媒体の特徴も著作権性があるということを意味しない.故に、本件においては、Westの編集著作物のオリジナルな要素である判例の配列は保護できるが、その著作物を有形的に組み込んだもの、すなわち、ペ−ジ番号は、保護されない.

[注 11]
反対意見は、著作権保護をすべてのペ−ジ番号に及ぼしたいであろう.何故なら、Westの判例集に現れている判例全体にそれが挿入されると、それは判例集の配列を写すからである.反対意見 [3ペ−ジ] .しかしそのようなアプロ−チは、オリジナルな著作物を表すものではないペ−ジ番号に、著作権を及ぼすことになろう. West の判例配列には著作権性があるかもしれないけれども、かつ、スターページネーション全部がその配列の認識を可能にするであろうけれども、著作権保護をオリジナルでない要素に及ぼす根拠はない.何故なら全面的にコピ−されると、それはコピ−するのではなく、保護される要素を表すからである.

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[注 12]
Westの主張は、判例の配列、参照、前出 注 3、はオリジナルであって、著作権保護に値するというのである.HyperLaw(Benderではなく)は、Supreme Court Reporterおよび Federal Reporter (HyperLawの CD-ROM ディスクに含まれた判例を内容とする判例集)中の West の判例配列は、著作権性をもつに足るほどオリジナルではない、と主張する.しかし当裁判所は、Westの配列は West の判例集のスターページネーションを挿入することによって複製されなかった、と認定するのだから、その判例集はオリジナルで著作権性のある配列を含むと、決定することなく、仮定することができる.
さらに、この意見は West の判例集に含まれる判例選択の、原告による複製行為を取上げていない.第一に、 West は第一審において、BenderがWestの判例選択ではなく、Westの判例配列をコピ−したと主張した.第二に、原告の編集著作物は West の判例集よりずっと多くの判例を含んでいることには争いがない.例えば、HyperLawの 1996 年第2四半期 CD-ROM ディスクは、約36,000の連邦最高裁判所および控訴裁判所の判決を含み、そのうち 22,000 だけがWestによって出版されたにすぎない.Bender製品の判例選択も West のものとは異なり、(i) それは West の判例集にはない多数の未公刊の判決を含む.(ii) West の Federal Reporter, Federal Supplement, Federal Rules Decisions とは異なり、Benderの製品はニュ−・ヨ−ク州裁判所が判決を下した連邦事件のみを含む.従って、原告の編集著作物の判例選択は、 West の選択とは実質的に類似しているとは認定できない.参照、Tasini v. New York Times Co., 972 F.Supp.804, 823(S.D.N.Y. 1997)(Sotomayor 裁判官)(選択の侵害を認定するには、「後の著作物は、先行著作物とは選択において『些末な程度以上に』異なっていてはならない」という)(Kregos v. Associated Press, 937 F.2d 700, 710(2d Cir.1991) を引用).

[注 13]
原告は、Banks Law publishing Co. v.  Lawyers´Co-Operative Publishing Co., 169 F. 386(2d Cir.1909)を引用して、判例集のスターページネーションは許されると論じ、Banks 事件は判例配列には著作権性がないと判示した、とほのめかしている.Banks 事件の判示は、原告の身分が公式判例集報告者である点に根拠を置いたようである.参照、同上 at 389(地方裁判所判決本文のリプリント)(「同人の義務を定めている法律を合理的に解釈すると、ページネーション、画一的サイズと合理的厚さの巻、および適切かつ便利な判例配列を含     む」).なるほど、Banks 事件における第2巡回区控訴裁判所の意見が付言し     たように、「下級審のうち、公式判例報告者が著作権を得る権利の … 問題     を扱っている部分は議論する必要がない」同上 at 391 .何故ならそのことは、     同裁判所が判例報告者の公式な身分に根拠を置いたのではなく、配列にオリジ     ナリティ−を欠くことか、それとも以上の分析が制定法の命じていない要素の     著作権性に関するものであるかのいずれかを意味し得るからである.ともかく、     Benderは、略式判決については、 West の配列が著作権保護に値する程度にオ     リジナルであることを認めている.Banks 事件は、相互ページネーションのある     著作物の配列に著作権性があるとすれば、スターページネーションが他の判例     集の配列を侵害するかどうかという別個の問題に答える助けにはならない.      Banks 事件は1909年の著作権法の施行にも先立つものである.当裁判所は、
     Banks 事件に基づいて本件の判決を下すことを拒否する.

[注 14]
 BenderとHyperLawによれば、 West はさまざまな裁判所や議会の委員会において、Westの平行サイテ−ションは公有であると認めた.しかしこれらの陳述は、法的手続の前後関係の中で行われたものでなければ、はっきりした言葉で表わされてもいない.裁判所がこの主張を何らかの形で採用した証拠もない.参照、AXA Marine & Aviation Ins.(UK) Ltd. v. Seajet Indus.Inc., 84 F.3d 622,628(2d Cir.1996)( 「裁判上の禁反言を援用する当事者は、(1) 裁判上の禁反言の主張を受ける当事者が以前の手続で、矛盾する事実に関する主張を行ったこと、(2) 以前の矛盾する主張が何らかの形で、最初の裁判所によって採用されたこと、を証明しなければならない」という).

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[注 15]
次の問答が地方裁判所で行われた:
裁判所:
でもスターページネーションは、スターページネーションを使うとコンピュ−タによって West システムを複製できるとおっしゃいますが、何故それができないのですか?つまり … 何故 … 第1ペ−ジを使うだけで、あなた方の編集著作物を複製できないのですか?
MR.MUSILEK [Westの訴訟代理人]:
裁判官殿、できるのです.どこで実際にペ−ジの終りが生ずるのかを示すことはできません.本文の特定の部分を見付けるのに、そのペ−ジの終りと関連するペ−ジ番号が示せないのです.
Joint Appendix at 3507.
             
[注 16]
West の判例集の平行サイテ−ションのみを内容とする原告の CD-ROM 製品のユ−ザ−は、Westの弁護士が述べたのと同じ方法を使って、 West の配列を再$カすることができよう.参照、前出 注 5.もっとも、次のWestの判例が始まる正確なペ−ジを発見するには、試行錯誤がいくらか必要になるであろうが.

[注 17]
同裁判所は述べた:
平行サイテ−ションか各判例中の内部サイテ−ションのいずれかを使って、ユ−ザ−は West の判例を分類し、 West の配列を決定できるであろうけれども、前者は West 製品の必要性に全面的に取って代わるものではないが、後者はそれができる.各判例の最初のペ−ジの平行サイテ−ションが公正使用で侵害とならないと認めることは、それに続く内部ペ−ジは、それも分類によって判例の配列が独立にできるようにするであろうから、それに対する West の著作権の利益を害したことにはならない.各判例の最初のペ−ジの平行サイテ−ションが公正使用で認められたことで1インチ得ても、Oasis はそれによって、各ペ−ジのスターページネーションという1マイル全部を取る権利はない.Oasis Publ´g Co., 924 F.Supp. at 926 .

[注 18]
定義の文言は本文の前の節に述べられている.17 U.S.C. #101.反対論は、この箇所の最初の「著作物」は侵害著作物を指すが、2番目の「著作物」は原著作物を指すと論ずる.Dessent at [pages 6-7].当裁判所の同法の解釈は平明な読み方から生じ、それによれば同じ意味が「著作物」を指すもの各々に与えられ、有体物に固定された著作物だけとは対立するものとして、2番目の「著作物」が原著作物を指す意図であった証拠は同法にはない.

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[注 19]
固定要件を説明して、下院報告書は全文次の通り述べる:
著作権保護の根本条件として、法案は著作物が「有形の表現媒体」に固定さるべしとの既存の条件を恒久化し、この媒体は「現在知られ、または将来開発さるべき」ものでもよいこと、かつ、固定は「直接に、または機械もしくは装置の助けを借りて、知覚し、複製し、またはその他の方法で伝達できれば」十分であることを付言している.この広い用語は、White-Smith Publishing Co.v.Apollo Co., 209 U.S.1 (1908)のような判例から引出された、人為的で極めて不当な区別を避けるためのものである.同事件によれば、制定法上の著作権性は、場合によっては、その著作物が固定された形式または媒体に依存させられてきた.同法案の下では、固定の形式、方法、または媒体が何であろうと違いはない.すなわち、 -- 言葉、数字、音符、音響、絵画、その他、図または記号的しるしであろうと、筆記、印刷、写真、彫刻、穴あけ、磁気、その他、如何なる安定した形式で有形的目的物に具現されていようと、直接または「現在知られ、または将来開発さるべき」如何なる機械または装置によって知覚し得るのであろうと、問わない.H.R.Rep.No.94-1476, at 52, reprinted in 1976 U.S.C.C.A.N.5659, 5665( 脚注省略)   

[注 20]
Westは、Tasini v. New York Times Co., 927 F.Supp.804(S.D.N.Y.1997)(Sotomayor 裁判官)に依拠する.しかし同事件は、101 条の複製物」の定義で当裁判所による解釈とは完全に一致している.Tasini事件で争われているのは、集合著作物の著作者が、201(c)条の集合著作物の「改訂」権下で、その集合著作物を内容とする、いくつかの電子的デ−タベ−スを製作する権利である.集合著作物の寄与著作者たちは、201(c)条は集著作物のコンピュ−タ・デ−タベ−スが改訂となり得るとは考えでいないなどと主張した.そして、201(c)条は著作権のある著作物を公けに展示する権利を与えてはいないのだから、その著作物はコンピュ−タ上で複製できない.何故なら「著作物はコンピュ−タ・スクリ−ン上で『ディスプレ−』されなければ、電子的に複製できないからである」と主張した.同上 at 816 .しかし裁判所はこの主張を退けて、複製権は201(c)条で与えられており、「必然的にその著作物のコピ−を作る権利を含んでいて、そのようなコピ−がコンピュ−タ端末から『知覚され』得ることを前提とする」と述べた.同上.
この陳述は、原著作物の複製がその著作物をコンピュ−タ端末上で知覚し得るようにする有形的目的物の上で見ることができるということを確認したにすぎない.しかし、それはそのコピ−に固定されたその「著作物」の配列と、その特定のコピ−が原著作物の複製であるかどうかを説明していない.またTasini事件は、101 条の「複製物」の定義を、分類装置の助けを借りて、第三者が知覚できるデ−タが、何らかの方法で配列されていることを意味するとは解していなかった.事実、同裁判所は CD-ROM に組み込まれた著作物が、原編集著作物に実質的に類似しているかどうかを考察した時に、同裁判所は101 条の複製物の定義に言及しなかった.同上 at 823-25.

[注 21]
West は、Benderの製品上の判例の外観またはレイアウトが、 West の判例集の外観またはレイアウトを複製していると主張していない.実際レイアウトは全く異なる.Benderはその判例を1つの欄にペ−ジ割りなしにディスプレ−しており、脚注は判例の終りか、脚注番号をマウス・ボタンでクリックすればアクセスできる pop-up windowを通してディスプレ−される.

[注 22]
Benderの製品については、Federal Reporter, Federal Supplement, Federal Rules Decisions に、配列の実質的類似性はあり得ない.これらの[West]判例集は多くのニュ−・ヨ−ク以外の裁判所の判例を内容とする.(第2巡回区控訴裁判所の判例は Federal Reporter で報告されている判例の約 8.4% 、ニュ−・ヨ−ク州連邦裁判所は Federal Supplement と Federal RulesDecisions に報告されている判例の約 16.3%にあたる).他方Bender製品はニュ−・ヨ−ク判例のみを内容とする.
Benderの製品と West の判例集の両方に現れている判例でも、構成が異なっている.例えば、Benderの製品の中で Knitwaves, Inc. v. Lollytogs Ltd.,71 F.3d 996(2d Cir.1995)を検索するユ−ザ−は、Knitwaves 事件の前の判例も、それに続く判例も West の判例集には載っていないことを知るであろう.     Federal Reporterでその前にある第2巡回区控訴裁判所判例である Aetna Cas. & Sur. Co. v. United States, 71 F.3d 475(2d Cir.1995)は、 Bender 製品中では近くにはない.またもう1つの例をあげると、BenderのシステムでDelchi Carrier SpA v. Rotorex Corp., 71 F.3d 1024(2d Cir.1995)事件を知るユ−ザ−は、United States v. Muniz, 71 F.3d 93(2d Cir.1995) が後に続くことを発見するが、その判例は West の判例集では 931ペ−ジも前に始まるのである.
またBenderのニュ−・ヨ−ク州裁判所判例の配列も、 West のものに類似していない.Westはまず裁判所順に構成するが、Benderは厳重に日付順に構成している.

[注 23]
以上に論じた理由の外に、原告は代位侵害に対して責任を負わせられ得ない.何故なら原告は直接侵害者の行動をコントロ−ルできないからである.参照、Shapiro, Bernstein & Co. v. H.L.Green Co., 316 F.2d 304, 307(2d Cir.1963)(代位侵害には、被告が侵害行為を監督する権利と能力を持つことを要すると判示).

[注 24]
たとえ「実質的非侵害用途」基準が主要商品の前後関係以上に適用がないとしても、原告が侵害行為を知りながら、Westの著作権の直接侵害に「実質的に寄与した」とは言い難い.参照、Gershwin  Publ´g Corp., 443 F.2d at1162、何故なら、知っていたという証明がなされていないし、侵害それ自身(なされたとしても)無意味であったであろうし、原告の製品の主要な用途は非侵害的であるからである.

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