INTELは汎用microprocessorの市場で独占力を有する。過去5年間の世界市場での売上の80%(INTELのデータ)
新規参入は困難で、INTELの独占力を崩すのは容易ではない。
新規参入者は2億5000万ドル以上の開発投資と4年以上に及ぶ開発を要する。IA-64の開発は1994年に始まったが、その第1世代の製品は2000年間までには発売が期待されない。
新規参入するには相当規模(16億ドル)の生産設備を要し、設備立ち上げ後少なくとも4〜5年は収益を見込めない。外注生産をする場合でも6ヶ月のリードタイムと初期費用のほか、1人当たり年間20万ドルを要する30人のスタッフが必要。
新規参入の場合、製品の名声,OSや相当数のユーザーの望むアプリとの技術的適合性、高信頼性を要する。多数のユーザーとソフト開発業者の支持を得る魅力ある製品にすること〜Network効果の重要性
INTELは取引先(PC等のメーカーを含む)に技術情報を先行開示―機密保持契約―漏洩及び目的外使用禁止〜取引先及びINTEL双方にとっての利益
しかし、INTELは3件の取引先に対し、それら取引先のマイクロプロセッサー関連技術をINTELにライセンス供与させる目的で、INTELの技術情報の提供を拒絶して、これまで確立してきた商業関係を中止した。これによりこれら取引先がINTELのマイクロプロセッサーによるコンピュータ製品を適時に市場に送り出して競争する能力を傷つけるものである。
このようなINTELの行為の影響〜3つの取引先その他の取引先やINTELに依存している企業が新たなマイクロプロセッサー関連技術を開発しようというインセンティブが減殺される。
[3つの事件]
1.DEC関係
うちINTELベースの売上は約20億ドル
ここ数年毎年2億5000万ドルにのぼるINTELマイクロプロセッサーを購入してきた。INTELも今後の数年数量の増加を期待。
DECはALPHAというマイクロプロセッサーを含む半導体製品の開発、製造、販売をしている。シェアは低いが技術的に優れており、INTELのものも含め現に販売されている汎用マイクロプロセッサーのなかでは最も高いパフォーマンスを発揮すると広く認められている(INTELの技術者も認めている)。これはWindowsNTを搭載してINTELと競合できる唯一の他社製マイクロプロセッサーでもある。INTELの当面の主要目標は64bitALPHAに対抗できるIA-64マイクロプロセッサーやMercedその他のIA-64ベースのデバイスを開発することである。
95年登場のペンティアム・プロはALPHAとのパフォーマンスギャップをある程度埋めたが、DECの調査ではペンティアム・プロはDECの特許権を侵害しているものであった。そこで97年5月12日、DECは特許侵害を理由にINTELを提訴。
これに対してINTELは、DECには新しいINTELのマイクロプロセッサーを使用した新しいコンピュータ製品の開発に必要な技術情報は一切開示しないと公に宣言し、以下のように対応した。
●技術情報の返還要求、追加的情報の供給拒絶―他の同様の取引先に開示しているものであっても、また、DECがこれらの情報を過去にミスユースしたとか、これからミスユースするかもしれないという合理的な疑いもないのに。
●マイクロプロセッサーの試作品の返還要求、追加的試作品の供給拒絶
●INTELマイクロプロセッサーの将来の供給について不安を与え、INTELがスポンサーをする業界の会合へのDEC従業員の参加を事前の通知なく拒絶するなどのことをした。
●DECはもはや最新のINTELマイクロプロセッサーを組み込んだコンピュータ製品を適時に市場に投入できないという観測を業界にもたらした。コンピュータ製品のライフサイクルは6ヶ月程度なので、新製品の発表が遅れるということは致命的。
87年にインターグラフは、クリッパーという名称のマイクロプロセッサー・デバイスを開発していたフェアチャイルド社の先進プロセッサ部門を買収し、93年まで自社コンピュータ製品向けにクリッパーの開発を継続した。
その後インターグラフは92年終盤より、クリッパーベースではなく、INTELのペンティアム・マイクロプロセッサー及びWindowsNTベースのワークステーションの開発にシフトした(初期の時代のINTEL採用のコンピュータ製造者の一社)。インターグラフはワークステーション市場へのINTELの浸透に有用なフィードバックをもたらして来た。インターグラフはペンティアム・プロを搭載したワークステーションの最初のメーカーであり、INTELマイクロプロセッサーを単数ないし2つ搭載した3Dグラフィックス・ワークステーションをはじめて発売したメーカーであった。
94年までにインターグラフのHWの4分の3はINTELベースになり、96年には100%となった。爾来多数のINTELベースの新製品を開発発売してきた。インターグラフは97年第一四半期におけるWindowsNTワークステーションの販売高でトップセラーになっている。
96年に、INTELはインターグラフに、INTELのマイクロプロセッサー情報の開示を受けてINTELベースのワークステーションを適時に開発しつづける条件として、インターグラフのクリッパー・マイクロプロセッサーの技術を無償供与するよう要求した。
インターグラフがこれを拒絶すると、INTELは同社のグラフィックス・ワークステーションの開発に著しい遅延をもたらすことになるような重要な情報の開示を拒絶した。
97年、インターグラフはINTELベースのコンピュータ技術を使用している複数の第三者がインターグラフの特許権を侵害していると主張。当該第三者の一部がインターグラフのクレームに関してINTELに補償を要求すると、INTELはインターグラフに対し関連特許権の無償ライセンスをせよと圧力を強めた。
インターグラフがこれを拒絶するとINTELは、新しいINTELのマイクロプロセッサーを使用した新しいコンピュータ製品の開発に必要な技術情報をインターグラフにアクセスさせないようにし、以下のように対応した。
●INTELの最新チップをベースとして開発するのに必要な技術情報の提供を拒絶〜他の同様の取引先に開示しているものであっても、また、DECがこれらの情報を過去にミスユースしたとか、これからミスユースするかもしれないという合理的な疑いもないのに。
●マイクロプロセッサーの試作品の返還要求、追加的試作品の供給拒絶
●INTELのチップに存したバグをインターグラフに知らせず、また同社がバグの修復のため第三者に委託しようとしたのを妨害した。その結果、インターグラフはマザーボードの再設計等を要し、著しい製品遅延をもたらした。
●INTELマイクロプロセッサーの将来の供給について不安を与えた。
●インターグラフはもはや最新のINTELマイクロプロセッサーを組み込んだコンピュータ製品を適時に市場に投入できないという観測を業界にもたらした。コンピュータ製品のライフサイクルは6ヶ月程度なので、新製品の発表が遅れるということは致命的。
INTELの上記のような行為は、適法ないし競争促進的な目的に資するために合理的に必要なものではない。
INTELの上記行為は、インターグラフの新製品開発・発表の能力に著しい障害を及ぼし、また、連邦地方裁判所が98年4月にINTELに対してかかる行為の中止を命じる仮決定を発していなければ、インターグラフの事業に長期間にわたるいっそう著しい脅威を与えたものと考えられる。
INTELベースの製品が同社の売上の主要部分を占め、97年には20億ドル超のマイクロプロセッサーを購入した、INTELにとって最大の顧客である。
94年11月、コンパックはパッカード・ベルを特許権侵害で提訴した。INTELは侵害対象コンポーネントの供給者としてパッカードに対して補償義務があることから、パッカード側に訴訟参加した。
INTELは、新しいINTELのマイクロプロセッサーを使用した新しいコンピュータ製品の開発に必要な技術情報をコンパックにアクセスさせないようにした。
INTELの上記のような行為は、適法ないし競争促進的な目的に資するために合理的に必要なものではない。
INTELの上記行為は、コンパックの新製品開発・発表の能力に著しい障害を及ぼし、また、コンパックがINTELに同社の技術をライセンスしなければ、コンパックの事業に長期間にわたるいっそう著しい脅威を与えたものと考えられる。
上記のとおりINTELは特定の取引先に対し、競争マイクロプロセッサーと関連技術の特許についてライセンスをさせる手段として、有用な商業関係を切断し又は切断する旨脅した。INTELの上記行為は、当該の取引先の新製品開発・発表の能力に著しい障害を及ぼし、また、当該取引先がINTELに同社の技術をライセンスしなければ(インターグラフのケースでは差止命令が出され)、当該取引先の事業に長期間にわたるいっそう著しい脅威を与えたものと考えられる。特許権はイノベーションを促進する重要な手段であるから、INTELが取引先にライセンスを強要することは、マイクロプロセッサー関連技術の開発についてINTELに依存しているあらゆる企業のインセンティブを減殺するものである。その様な技術を有し又は開発している殆どの企業はINTELからの仕返しを恐れるので、INTELの行為の自然で蓋然的な結果として、新しい先進のマイクロプロセッサーや関連技術を開発しようとする産業界のインセンティブが減殺されるものといえる。その結果、INTELの行為は現行世代の汎用マイクロプロセッサーにおける独占力を確固たるものにし、新しいマイクロプロセッサー技術や次世代マイクロプロセッサー製品の開発競争を減殺する。
INTELは、合法的ないし競争促進的な目的に資する合理的な必要がないのに、排他的行為を通じて故意に、汎用マイクロプロセッサー市場及び同市場内のより狭い市場における独占力を維持してきた。
INTELはまた、現行及び次世代の汎用マイクロプロセッサーの市場及び同市場内のより狭い市場にける独占を企図し、またこれらの目標を実現する危険な蓋然性が認められる。
通知書送達後20日以内に答弁書を提出できる。答弁なき事実は認めたものとみなされる。
但し被審人は、以下の諸事情の全部又は一部に基づくものではなく、合法的な事業上の考慮から上記行為が必要であることを照明できる場合はこの限りでない。
3.被審人は、反競争的行為の訂正又は再発防止のために適切なすべての方法を講じなければならない。
以上のとおりFTCは98年6月8日、本訴状を被審人に対して発する。
Swindle委員―反対