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判例仮訳

ここで提供している翻訳は仮訳です。誤訳、用語の誤用等の問題が存在する可能性がありますので、正確を期すためには原文もあわせてご参照下さい。

原告 Oasis Publishing Company, Inc.,

被告 West Publishing Company

Civ. File No. 3-95-563

ミネソタ州連邦地方裁判所第3部

924 F. Supp. 918; 1996 U.S. Dist. LEXIS 6927; 39 U.S.P.Q.2D
(BNA) 1271; Copy.L.Rep.(CCH)P27,530

判決 1996年5月17日

措置
 [*1] 一部略式判決を求めるWest Publishing Company の申立(Clerk Doc. No.57) を認める.
第X項目および第Y項目は棄却する.
一部略式判決を求めるOasis Publishing Company Inc. の反対申立(Clerk Doc. No.66) を却下する.

訴訟代理人
原告 OASIS PUBLISHING COMPANY, INC. 側: Bruce Howard Little, Janell M. Gabor,
Popham Haik Schnobrich & Kaufman, Mpls, MN, Jose I Rojas, Broad & Cassel, Miami, FL.

被告 WEST PUBLISHING COMPANY 側: Joseph Myles Musilek,Schatz Paquin Lockridge Grindal &
Holstein, Mpls, MN,Jonathan Cohen.

特別補助裁判官:John E Simonett, Greene Espel, Mpls, MN.

裁判官
合衆国地方裁判所判事,Paul A. Magnuson

理由執筆
Paul A. Magnuson

理由: 
メモランダムおよび決定

本件はWest Publishing Company ( 以下West) の一部略式判決を求める申立および
Oasis Publishing Company, Inc.(以下 Oasis) の一部略式判決を求める反対申立に基づき,
当裁判所に付される.
以下の理由により当裁判所は West の申立を認め,Oasis の申立を却下する.

背景

  Oasis Publishing Company, Inc.( Oasis) は諸州の制定法および判例を CD-ROM 形式で公刊する.West Publishing Company ( West )は,National Reporter Systemとして印刷されている州裁判所および連邦裁判所の判例集を,オンライン・デ−タベ−ス・サ−ビス( WESTLAW )および CD-ROM 形式でも公刊なども行う.両当事者は民間の営利会社である.

  WestはSouthern Reporter,すなわち,アラバマ州,フロリダ州,[*2] ルイジアナ州およびミシシッピ州の州上訴裁判所判決を含む地域的判例集を公刊する.Southern Reporterは West の National Reporter System の一部である. West はまたFlorida Cases も公刊する.それにはフロリダ州の判決を Southern Reporterに掲載された通りに再録し,関連する予備的索引とダイジェスト資料が加えられている.この資料は,判例の梗概,頭注,ダイジェスト・キ−番号,インデックス・ダイジェストおよび制定法の索引を含む.両当事者間にはWestがこの資料に対して著作権を有することについて異論がなく,それは本件では争われていない.Florida Cases 判例集は独自のペ−ジ数表示をしないで,Southern Reporter の巻数とペ−ジ数を用いて印刷されている.その結果,Florida Cases のペ−ジ数表示は連続せず,アラバマ,ルイジアナおよびミシシッピ判例が Southern Reporterに表れる場合には番号がとぶ.換言すれば,Florida Cases 判例集は,基本的には Southern Reporterからフロリダ以外の判例を除いたものである.従って,Florida Cases の引用をすれば,実際には Southern Reporterを引用したことになる. 注1

[*3]  

  Florida Cases および Southern Reporterの沿革は本件に関係がある.WestがNational Reporter Systemの一部としてフロリダ州の裁判所判決を含む Southern Reporterの公刊を始めたのは1887年であった.1948年以前,フロリダ州は私的にフロリダ裁判所の判決をFlorida Reports で公刊し,販売した.1948年フロリダ州がその上訴裁判所判決の公式判例集としての Florida Reportsの公刊を止めたその同じ年に,フロリダ最高裁判所は Southern Reporterが「フロリダ最高裁判所の意見および判決の公式公刊物である」と宣言する公式の通達を発した.翌年 West は Florida Casesの公刊を開始した.1972年 West はFlorida Cases の掲載範囲を拡大して, Southern Reporterの第2集が始まった1941年まで遡らせた.それ故,Florida Cases の掲載範囲は,現在 Southern Reporter第2集の第1巻に対応する.

  1963年制定されたフロリダ制定法 25.381 は,「最高裁判所および上訴地区裁判所の意見の判例集は Florida Casesと称する」と規定する.引用のブル−ブック(Bluebook) は,フロリダ州裁判所に提出される文書[*4] には,1846年から1948年までは Florida Reports を引用し,1886年から現在までは Southern Reporterを引用すべきことと定める.The Bluebook, a Uniform System of Citation 178 (15th ed. 1991).ブル−ブックはFlorida Cases の引用を命じないばかりか,その名もあげない.

  フロリダ州は Florida Casesをフロリダ州の公式判例集と認めている.少なくとも1957年から1987年の間のフロリダ州と West との契約はその一部に次のように述べる.「梗概,頭注,キ−・ナンバ−・ダイジェスト分類,インデックス・ダイジェスト,解釈された制定法の索引 … でFlorida Cases の諸巻に含まれたものは,著作権の目的物であり得るし,著作権を与えられる.」1987年から両当事者はこの文に,「および,判例の配列」を加えた.

  1982年以前,Florida Cases は製本形式でのみ公刊された.1982年より現在に至るまで,Florida Cases は週単位の速報版で公刊されている.数部をまとめて製本される. Southern Reporterもまず週単位の速報版で公刊され,次いで製本版となる.Florida Cases と Southern Reporterの各速報版と製本版は著作権表示を含む.WestはSouthern Reporter各巻に著作権登録証明書[*5]を有するが,Florida Cases の製本版には別個の著作権登録を得ていない.それ故1982年以前 West は,Florida Cases の速報版にも製本版にも著作権登録を得ていなかった.Westの登録証明書は著作権の主張の目的物として「ペ−ジ数」をあげていない.

  公刊された判例の「平行引用」(parallel citation)とは,同じ判例の他の出版社による版の第1ペ−ジの引用である.「スタ−・ペ−ジ数表示」(star pagination)はその特色であって,それによって公刊された判例が平行引用ばかりでなく,判例全体を通じてその判例の他の出版社による版からの,内部のペ−ジ段落を含む.

  Oasis はCD-ROMでフロリダ州裁判所判例集を,Florida Cases の平行引用とスタ−・ペ−ジ数表示双方をつけて,公刊しようとする意図を発表した.Florida Cases のペ−ジ数表示は,もちろん Southern Reporterのペ−ジ数表示である.何故なら Florida Casesのペ−ジ数表示は, Southern Reporterのペ−ジ数表示を意図的に映すからである.Oasis は Florida Casesの1セットを製本版で入手して,それをサ−ビス業者に送り,フロリダ[*6]判決をコンピュ−タ・デ−タに変換し,最終的にはその判決を CD-ROM 形式に変換して,その CD-ROM 製品を売り出そうと意図する.Oasis には West が作成したダイジェスト資料(判例の梗概,頭注等)を含める意図はない. West は平行引用の使用が,著作権法にいう公正使用であることを認めるけれども,Oasis が Florida Cases/Southern Reporterのスター・ペ−ジ数表示を使用しようとする計画に反対する.

  Oasis はフロリダ州南部地区(裁判所)に West を訴えた.その訴状に Oasisは次のように主張した.第T項目では, West が 15 U.S.C.@ 2 に違反する違法な独占を作り出して維持した,第U項目では West が 15 U.S.C.@ 2 に違反して独占化の危険な蓋然性を作り出した,第V項目では Oasisの主張する West の独占はまた,フロリダ制定法@542.19に違反する,第W項目では West がフロリダ制定法@542.22にいう独占を作り出そうと企てている,第X項目では West がOasis にスタ−・ペ−ジ数表示の許可を拒否することは,様々のフロリダ州公的記録法に違反する,第Y項目では裁判所は,westがSouthern Reporterのペ−ジ数に連邦著作権法の保護を有しないこと,Oasis はペ−ジ数をあげても[*7] West の著作権を侵害するものではないこと,フロリダ州公的記録法は  Southern Reporterのペ−ジ数の著作権を強行できないものとしていることの宣言的判決を下すべきである.

  Westはすべての項目を棄却し,その上で当裁判所に移送する申立を行った.フロリダ州南部地区裁判所は,その分析を示すことなく本件を当裁判所に移送し,Westの棄却の申立に対しては判断しなかった.当裁判所に係属してからは,さらに開示を行った後,Westは第Xおよび第Y項目について一部略式判決を求める申立をする.Oasis は一部略式判決を求める反対申立をして, West が Florida Casesの判決の配列に著作権を有しないこと,Oasis の計画するスタ−・ペ−ジ数表示は「公正使用」であること, West がフロリダ州制定法 chapter 119に違反していることの宣言的判決を求めた.両当事者は,本件で争われている著作権の主張の処置が決まるまで,連邦およびフロリダ州の反トラスト法の主張の本案の考慮を延期することを申し合わせた.

議論

 主要事実について真正の争点がなく,申立当事者が法律問題として勝訴判決を受ける権利を有する場合には,略式判決が適当である.Fed. R. Civ. P.56(c); Celotex Corp. v.Catrett, 477 U.S.317, 91 L.Ed. 2d 265,106 S.Ct.2548 (1986); Unigroup, Inc. v. O´Rourke [*8] Storage & Transfer Co., 980 F.2d 1217,1219-20 (8th Cir. 1992) .裁判所はその請求に適用される実体法により,実質的に決定する.Anderson v. Liberty Lobby, Inc., 477 U.S. 242, 248, 91 L.Ed. 2d 202, 106 S. Ct.2505 (1986).当該実体法によって,訴訟の結果に影響を与えるような事実に関する争いは実質的である.同上.実質的な事実の争いは,その証拠が合理的な陪審が被申立当事者勝訴の評決を答申するに十分な場合には「真正」である.同上,at 248-49 .

  本件の紛争はいくつかの争点を提起する. West は Southern Reporterおよび   Florida Cases の判決の配列に著作権を有するのか?もしそうであれば,Oasis の計画するスタ−・ペ−ジ数表示は West の配列の著作権の要素を侵害するのか?それとも,スタ−・ペ−ジ数表示は West の著作権の「公正使用」であるのか?最後に,Florida Cases または Southern Reporterの「公式の」指定,またはフロリダ州公的記録法は West の著作権と称するものの強行性を奪うのか?

  T.判例の配列に対する著作権

  Oasis は, West が Southern Reporterの配列に著作権保護を有しない,たとえ有したとしても, West の[*9]著作権は Southern Reporterに収録されている判例の内部のペ−ジ数表示を保護しない,そして最後に,そのような著作権保護は Florida Casesの内部のペ−ジ数表示には及ばない,と論ずる. West は内部のペ−ジ数そのものに著作権法上の権利を有するとは議論しないで,判例集中の判例の配列に著作権を有すると主張する.

  予備的事項として,Oasis は編集物が著作権保護を受け得ることを認めるが,West の主張にかかわらず,実際の争点は West が単にペ−ジ数表示に著作権を有し得るかどうかであると論ずる.Oasis はペ−ジ数表示が配列を表わすものではなくて,著作権保護を受けない単なるシステムまたはプロセスであると主張する.17 U.S.C.@ 102(b) .当裁判所は賛成しない.West Publishing Co. v. Mead Data Central, Inc., 事件におけると同様に,「数の保護はそれ自身のために求めるものではない」.799 F.2d 1219,1227 (8th Cir. 1986), Cert.denied, 479 U.S. 1070, 93 L. Ed. 2d 1010, 107 S. ct. 962 (1987). Mead 事件においてしたように, West は内部のペ−ジ数表示が判例の配列を表わし, West が判例の配列に対して有する[*10]保護は,ペ−ジ数表示に及ぶと論ずる.

  編集物が著作権保護を受け得るには,その著作物は次の3つの別々の要素を有していなければならない.「(1) 既存の資料,事実またはデ−タの収集,(2) これらの資料の選択,調整または配列,および(3) 特別な選択,調整または配列による『オリジナル』な著作物の創造」Feist Publications v. Rural Telephone Service Company, 499 U.S. 340, 357, 113 L.Ed. 2d 358, 111 S. Ct. 1282 (1991).今日の争いは第3の要素,すなわち,オリジナリティ−に焦点がある.そのオリジナリティ−は West による判例の配列が「創造性の僅小な分量以上のものを有する」ならば,本件においても存在する.同上,at 363.

  Oasis の主たる主張の根幹は,Feist 事件は Mead 事件を暗黙裡に覆したということである. Mead 事件において,第8巡回区控訴裁判所は,当裁判所(Rosenbaum 裁判官)の判決を確認し,Westに暫定的差止命令を与えて,Meadが行おうとする LEXISのスタ−・ペ−ジ数表示コンピュ−タ検索製品に, West の内部引用を用いることを禁じた. Mead事件の裁判所は,内部のペ−ジ数表示が West の配列の一部であることを認め,Westの配列は著作権を受け得ると認めた.799 F.2d at 1226-29 .最後に同裁判所は,[*11] 法廷に提出された事実に基づいて, LEXISが行おうとする使用が West の著作権を受け得る配列を侵害するものと判示した.Feist 事件において連邦最高裁判所は,出版社が土地の電話会社の刊行したホワイト・ペ−ジから選択したリスティングを複製できるかどうかを考察した.同裁判所は,元のホワイト・ペ−ジからコピ−した情報も,その選択や配列も著作権を受け得ないと判示し,従って同裁判所はその複製による侵害はないと認定した. 499 U.S.at 362-64 .

  Oasis は Mead 事件は「額の汗」基準を適用したが,Feist 事件はそれを斥けたと主張する.Feist 事件において O´Conner裁判官は,「著作権の必須要件はオリジナリティ−である」ことを明らかにした.499 U.S.at 345.その意見は,選択と配列に関する選択は,それが十分にオリジナルであるならば著作権保護を受け得るけれども,基礎にある編集された事実それ自体はその選択や配列と関連しているからといって,オリジナルにもならないし,著作権保護を受け得るものにもならないことを繰り返し述べている.同上,at 348-49 .

  Mead事件において第8巡回区控訴裁判所は,Feist 事件で議論され適用されたのと本質的に同じ創造性基準を適用した. West の National Reporter System における判例の[*12]配列の単なる「額の汗」分析の代わりに,同裁判所は配列の「オリジナリティ−と知的創造の要件」を考察した.Mead, 799 F. 2d. at 1225, 26.Feist 事件は Mead 事件を覆したものではない.

  Feist 事件は編集物の著作権の主張に対して新しい基準を立てようとしたものではなく,1909年の著作権法の中に存在し,著作権局によって一貫して認められ,1976年の著作権法によって強調されたオリジナリティ−基準を明示的に再確認したのである.参照,499 U.S. at 351-56.たとえFeist 事件で明確化された創造性基準が,Mead事件によって予測されず,明示的に適用されなかった「新」実体的基準を提供したと仮定しても,  Feist 事件において選択と配列に適用された基準は, Mead 事件に疑問を投げ掛けるものではない.Feist 事件で争われていたのは,電話会社に電話サ−ビスを申し込んだすべての人の氏名,都市および電話番号の電話会社による公刊にすぎなかった.これはせいぜい「一種の選択」であったが,「初歩的」で「分かり切った」ものであり,「単なる選択を著作権を受け得る選択に変換するのに必要な創造性のかけら」すらも欠いていた.同上,at 362.そして配列も情報の簡単なアルファべット順のリスティングにすぎなかった.[*13] 従って,それもまた創造性の最低基準にさえ達していなかった.同上,at 363. (「ホワイトペ−ジ電話帳に氏名をアルファベット順に配列することには創造性はかすかにもない」).

  しかしながら,連邦最高裁判所がFeist 事件においてオリジナリティ−基準を高めようとしたと結論することは誤りである.編集物はある程度のオリジナリティ−を有しなければならないけれども,著作権保護を生ぜしめるに必要な創造性基準は全く低いことを,最高裁判所は明示的かつ反復的に再確認した.Feist 事件の教えるところは,「オリジナル」とは「その著作物が独立に創作され … かつそれは少なくともある微少の創造性を持つ」ことであり,「必要な創造性のレベルは極めて低いこと」,「僅かな[創造性]でも十分であること」,「著作物の大部分は,若干の創造性の閃きを,それが『どれ程粗悪でとるに足らず,または分かり切ったものであろうとも』もっているのだから,まったく容易にその基準に達すること」,配列はそれが独立になされ,「最小限の創造性を帯び」ている限り十分にオリジナルであること,「オリジナリティ−の要件は特に厳重ではないこと」,「新規性は要求されていないこと」,[*14] 「創造性の閃きが完全に欠如し,またはあまりにも僅少であるため無いに等しいと[認められるのは]極めて狭い著作物の類型に限られること」,選択と配列が存在しないのは「機械的かつ決まり切っていて,何らの創造性も必要としない場合に限られること」である.499 U. S. at 345-62(引用省略).著作権は「創造性の僅少な分量以上」を有する著作物のみを保護することに基づいて,同上,at 363, 最高裁判所は電話会社のホワイトペ−ジの選択,調整および配列が「創造性のほんの僅かな痕跡すらもないもの」と認めた.同上,at 362.

  Mead事件の裁判所は, West の National Reporter System 中の判例の配列が,その配列の著作権を得るに足る「知的創造物要件」を充足すると判示した.その判示を下すにあたって,同裁判所は West がまず,すべての州およびすべての連邦裁判所から意見を収集し,州の判決を連邦の判決から分け,その判決の様々の地域的判例集に入れるところを定め,判決を審級別に分け,請求裁判所と軍事裁判所の判決を別にし,判例を題目別に分け,各巻の中に判例を配列する.799 F. 2d at 1226 .Oasis の主張とは反対に,[*15] 第8巡回区控訴裁判所の議論では明らかに, West の知的創造的努力を,単に時間順または裁判所別のような何かオリジナルでない方法で判例を集めて公刊するという,頭を使わない労働にすぎないとは見なかった.当裁判所は Mead 事件の裁判所が適切なオリジナリティ−基準を適用したが,もしそうでなかったとしても,同裁判所の分析は同事件における West の配列がその後 Feist事件において連邦最高裁判所が繰り返し強調した「微量の創造性」を容易に満足させたことを示していると結論する.

  本件に戻って, West による Southern Reporterの配列方法は議論の余地がない.実際,恐らく Mead 事件の予備的,手続的な背景のために, Mead 事件において判例の配列の創造性を証明するに当たって議論された事実よりも,もっと多くの事実が当裁判所に提出されている記録に載っている.第1に,Westは州別に判例を分けるに当たって,アラバマ州,フロリダ州,ルイジアナ州およびミシシッピ州の裁判所の判決をまとめて別のものとした.次に West は判決を審級別に分けている.例えば, West はアラバマ州最高裁判所,アラバマ州民事控訴裁判所およびアラバマ州刑事控訴裁判所の判決をまとめて別のものとする.各州および各審級内で, West は判決を分類し[*16] まず詳細な頭注のついた意見と,表紙をつけたメモランダム( jacketed memoranda ) ,次にシ−ト・メモランダム( sheet memoranda )そして最後に処分索引( table disposition) を置いて配列する.West は処分索引をアルファベット順に,詳細な頭注のついた意見および表紙のついたメモランダムを登録日付,もし同日登録であれば,West のつけた事件番号によって配列する. West では幾人かの弁護士が編集者の仕事をする.これらの編集者はどの判例に頭注をつけるかばかりでなく,判決の主題に基づき West の配列の一般基準を無視してよいかどうかも決定する.従って,それらの判例の約25%において West の編集者は, West の配列の一般基準を無視し,判例の配列を変える.例えば,その West の編集者はある判例を,そうしなければその判例がもっと後の巻に入るはずのところを,もっと早く処理することを選び,それによってその判例が同じ巻の中で関連判決の後に続くことになることもあろう.注2  同様に, West はその過程を早めて,関連判決の後直ちに判決を公刊し,その判決が下された日付を無視することもあろう.注3  あるいはまた, West は別々の判決を1個の公刊された意見にまとめることを選ぶこともあろう.注4

   West の配列に他の出版社はどこも倣っていない.それには機械的な時間順または管轄区域の順序をはるかに超えるものが必要であり,上に論じたその他の理由によって, 「創造性の僅少な分量以上」を持つ.Feist 事件以来合衆国上訴裁判所判決はこの結論を支持する.CCC Information Services,Inc. v.Maclean Hunter Marker Reports,Inc.,44 F.3d 61(2d Cir. 1994)(自動車評価の編集刊行物は,[*18] 編集者が中古車の価格を予測するために様々のソ−スを用いた場合には十分オリジナルであると判示),cert.denied,133 L. Ed. 2d 32, 116 S. Ct. 72 (1995); および Key Publications v. Chinatown  Today Publishing Enterprises, Inc., 945 F.2d 509 (2d Cir.1991)(中国系商工人名録からの抜粋は,出版者がすべてのビジネスからニュ−・ヨ−クの中国系アメリカ人社会に関連のあるビジネスを選んだが,営業中でないと思われるビジネスを排除した場合には十分創造的であると判示し,その形式がたいていの分類人名録と共通であったけれども,出版者がどのカテゴリ−を含めるか,そしてどんな見出しの下にするかについて選択した場合には,配列にも十分創造性ありと判示した)と次を比較.Bellsouth Advertising &  Pub. Corp. v. Donnelley Information Pub. Inc., 999 F. 2d 1436 (11th Cir. 1993) (電話帳は出版社がその電話帳の地理的範囲とリスティングの変更を許す期限を単に決定した場合には,選択において必要なオリジナリティ−を欠くと判示)(全員一致),  cert. denied, 127 L.Ed. 2d 232, 114 S. Ct. 943 (1994) .

  確かに,「Feist 判決のたいていの適用は,その判示事項が適用される[*19] 限定された領域を認めて,同判決は電話帳のホワイトペ−ジのような最も平凡な著作物においてのみ著作権を無効とすると判断した」.1 M. Nimmer, Copyright @ 3.04[B][2],p. 3-33 (脚注省略). West による Southern Reporterの配列の仕方は,Feist 事件において著作権保護を正当化するために定められたオリジナリティ−要件を容易に充足する.

  当裁判所は,Westの判例配列の著作権が Southern Reporterに収録された判例の内部のペ−ジ数表示を保護していないという Oasisの議論を次にとりあげる.Oasis は West が Southern Reporterの判例の平行引用は公正使用であって,著作権侵害にはならないことを認めている事実を指摘して,各判例のそれに続く内部のペ−ジ数表示は著作権保護を受け得ない単なるシステムまたはプロセスであって,創造性を完全に欠くと主張する.一旦 West がその判例配列を選んだ以上,それに対応するペ−ジ数はすべてそのシステムの一部であるか,またはたまたま本文がおさまるペ−ジを示すにすぎない,単なる著作権性のないプロセスであるかは議論の余地がある.しかしこれこそ Mead 事件でまさに必然的に排除された議論である.第8巡回区控訴裁判所が Mead 事件において同裁判所の審理した事実に基づいて判決をしたように,「内部ペ−ジの引用を重要な部分とする West の判例配列は,[*20] 著作権保護を受け得るオリジナルな著作物である」.799 F. 2d at  1227(emphasis added).本件においても同様に, Southern Reporterの内部のペ−ジ数表示は West の全体的配列の一部であって,同様に保護されるのである.
  最後にOasis は,Southern Reporter の配列の著作権保護が,Florida Cases の内部のペ−ジ数表示の著作権保護を生み出していないと論ずる.しかしながら,前述のように,実際に引用されるのはFlorida Cases ではなくてSouthern Reporter であり,Florida  Cases は本来的には単なるSouthern Reporter の複製にすぎない … それはペ−ジ数を含むがフロリダ州以外の判例は含まれていない.その上,Florida Cases 中のフロリダ州上訴判決の順序を決めるにあたっての選択だけで,上に論じた創造性基準をみたすのである.フロリダ州の各審級毎に West は,頭注のついた意見,メモランダム判決,または処分索引を配列しなければならず,Westの編集者は West の一般的配列ガイドラインを無視することに関して同じ創造的決定をすることを,Oasis は認めている.さらに Oasisは,Florida Cases 中のフロリダ判決がSouthern Reporter の約 60 パーセントを占めることについて争っていない.[*21]

  要するに, West によるSouthern Reporter 中の判例配列は,著作権保護を受けるに必要な創造性を有している.その配列のペ−ジ数表示は,その配列の必須の一部分であって,配列そのものの著作権保護の一部を受けている.Florida Cases がフロリダ州裁判所の判決以外を一切省略していることは,Southern Reporter の元の配列の創造性を減ずるものではないし,フロリダ州上訴判決だけの配列に用いられた創造性は,Florida Cases に複製された配列の著作権保護に必要な創造性を示している. Mead 事件におけると同様に,本件における West の判例の配列は,内部のペ−ジ数表示を含み,著作権保護を受け得るオリジナルな著作物である.1世紀以上も前に連邦最高裁判所によって確立されたように,「そのような判例集の著作物は,著作権の適法な目的物であり得るが,それはまた判例配列の順序,判例集の巻別,各巻の番号づけとペ−ジづけ,意見中に引用された判例の索引 [*22], … インデックスの適当な圧縮された表題への細分 … をも含む」
Callaghan v. Myers, 128 U. S. 617, L. Ed. 547, 9 S. Ct. 177 (1888)(emphasis added).

  U. スタ−・ペ−ジ数表示による侵害

  一般に,著作権のある著作物の所有者だけがその著作物を複製することができる.17 U.S C. @106(2).著作権法は,例えば文芸著作物( literary works)のような著作物がコピ−されないように保護し,17 U.S.C. @102(a)(1) ,「『文芸著作物』という用語は, … カタログ,人名録,および類似の事実,参照または教育的著作物やデ−タの編集物を含む」.H.R.Rep.No. 1476, 94th Cong., 2d Sess., (1976).

  Oasis は,そのスタ−・ペ−ジ数表示が West がその判例配列に有する著作権を侵害しないと論ずる.Oasis は, West の判例配列の著作権が,Southern Reporter に収録された判例の内部のペ−ジ数表示を保護してはいないと主張する.Oasis は, West がSouthern Reporter の第1頁の平行引用が公正使用であることを認めている点を指摘する.従って,Oasis の主張によれば, West は第1頁の引用の公刊を許すことによって,事実上すでにその配列を示しているのだから,内部のペ−ジづけはその配列をそれ以上示すものではなく,それ故公刊のための公正な [*23]資料となる.当裁判所は賛成しない.

  本件におけると全く同様に, Mead 事件においても West は収録判例の第1頁の平行引用が公正使用であり,侵害ではないと認めた.799 F. 2d at 1222 .同事件において, West の内部のペ−ジ数づけに基づく LEXISの「ジャンプ引用(jump citing)」の使用は,ユ−ザ−に West の配列を示すことになり得る.そしてこれが West の判例配列の著作権の許されない侵害になると判示された.本件においても同様に,ユ−ザ−はある巻の各判例から内部のペ−ジ数を決定することによって,Oasis のCD-ROM製品について West の配列を,平行引用に関係なく,分類し決定することができるであろう. West が第1頁を公正使用とみとめたことは,他の出版社がすべてのペ−ジ引用をコピ−することを許すものではない.平行引用したもの,あるいは各判例からの内部引用のいずれによるにしろ,ユ−ザ−は West の判例を分類し, West の配列を決定できるであろうけれども,前者(平行引用)は West の製品の必要に完全にとって代わることはないが,後者はそれができるのである.

  各判例の第1頁の平行引用を公正使用で侵害にあたらないと認めたことは,それに続く内部のペ−ジに対する West の著作権を減ずるものではない.その著作権はまた,分類による判例の配列を独立に許すであろう.[*24] .各判例の第1頁の平行引用を認めて1インチ貰ったからといって,Oasis は各ペ−ジのスタ−引用の1マイル全部をとる権利を得るものではない.だから,Oasis の計画する CD-ROM 製品が,公正使用として使用できる情報から判例を分類し,内部引用がなくても, West の配列を再現するために用いることができるにもかかわらず,スター引用によって判例の完全な内部のペ−ジ数表示を Oasis がコピ−して CD-ROM ユ−ザ−に提供することは,やはり West の判例配列の著作権の侵害になる.

  V.「公正使用」としてのスタ−・ペ−ジ数表示

  複製は,その複製が「公正使用」,例えば,批評,論評,報道,教授,研究,または調査であるならば違法な侵害ではない.Oasis が West の内部のペ−ジ数表示をコピ−しようとしていることが公正使用になるかどうかを決定するために,当裁判所は次のことを考察するであろう.(1) 使用の目的と性格.これにはその使用が商業的であるか,それともそうではなくて非営利の教育的目的のものであるかどうかが含まれる;(2) 著作権のある著作物の性質; (3) 著作物全体との関連で,用いられる部分の量と実質性[*25] ;(4) 使用が著作権のある著作物の売行き見込みまたは価値に及ぼす影響.17 U.S.C. @107 .

  1.使用の目的

  第1の要因について Oasisは, CD-ROM 製品は主として教育,研究,調査用であると論ずる.実際そうであろう.しかし文書または事実の配列のほとんどすべての著作権侵害事件において,新しい使用法は教育的,または調査を助けるためといっても不当ではないであろう.この要因はまた,その教育的使用が商業的かそれとも非営利かを別途に考量することを必要とする.Oasis の製品は教育または調査に用いられるかもしれないが,その製品は営利の教育的使用のためであって,非営利の教育的使用のためではない.議論の余地なく,Oasis の意図する使用は商業的である.事実,Oasis は West の価格を下回り, West と競争する意図のあることを認めている.「刊行物が,非営利ではなく商業的であるという事実は,公正使用の認定に不利に傾く別個の要因である.」Harper & Row, Publishers, Inc. v. Nation Enterprises, 471 U.S. 539, 562, 85 L. Ed. 2d 588, 105 S. Ct. 2218 (1985) .

   Nation 事件において連邦最高裁判所は, Gerald R. Ford 元大統領の自叙伝の未発表の原稿の一部を Nation 誌 [*26]が使用したことを考察した.同自叙伝の出版社は,Time 誌と契約して,同書発売の直前に同原稿のいくつかの部分を公刊することを許した.しかし Nation 誌は原稿全文を入手し, Time の発表予定記事のことを知り, Time 誌と同書の両者を「スク−プする」明示的目的で,もっぱら原稿からとった引用,パラフレ−ズや事実を急いで公刊した.最高裁判所はニュ−ス報道が原稿の公刊にあたってのNation誌の使い方の一般的目的であると認めたけれども,同裁判所は「Nation誌が近刊のハ−ドカバ−と Time 誌の要約をスク−プする目的であると述べている点を無視[できなかった]」471 U.S. at 562 .従って同裁判所は,「 Nation 誌の使い方は,著作権者の商業的に価値のある最初に公刊する権利にとって代わるという偶然の結果にとどまらず,それが意図した目的であった」と認定した.同上(emphasis in original).その認定にあたって同裁判所は,Meredith Corp. v. Harper & Row, Publishers, Inc.,378 F.Supp. 686, 690 (S.D.N.Y.), affd, 500 F. 2d 1221 (2d Cir. 1974) 事件に賛成して引用した.同事件において争われた [*27]教科書の目的は,抜粋の元となった当の教科書と競争することであって,地方裁判所はその使い方が公正使用ではないと判示していた.

  Oasis の使用は「変換的」であって West の製品の単なる代替物ではないというOasis の議論は,Oasis 自身の 1994 年事業計画大要と正面から矛盾する.同計画書はまた,計画された CD-ROM 製品が West 製品と直接的に競争する性格であることを示している.同計画書はその一部に次のように述べる:

  West Publishing Company とLawyer´s Cooperative はOasis の主たる競争相手である.各社は価格を異にする類似の製品を製造している. … これらの会社は CD-ROM を売る事業は行っていない.彼らは書籍の販売とオンライン・サ−ビスの事業を行っている.彼らの CD-ROM 販売は書籍およびオンライン・サ−ビスのマイナスになる.そのために自分達の CD 製品には割増し価格をつけている.

  Oasis の CD-ROM 製品を使うことによって,顧客はずいぶん紙の節約になることを実感するであろう.ノ−トをとることがスクリ−ン上ででき,ハ−ドカバ−の書籍をいくつもの棚に置くのに比べると, CD 一枚を買えば明らかに紙の節約となる.

  その上,Oasis のフロリダ卸売業者 Giovanni D´Azzoは,証言録取中に次のことを認めた.すなわち,Oasis の CD-ROM 製品は West のフロリダ CD-ROM 製品と直接競争するであろうし,[*28] 一部の顧客にとっては,印刷した書籍に完全にとって代わる役をすることができるだろう,と.Oasis の文書課長( Secretary) Richard Qualsettは同じことを認めた.Oasis の目的は明白である.Oasis はその CD-ROM 製品で West の CD-ROM 製品と West のハ−ドカバ−と直接競争しようと意図している.

   Nation 事件および Meredith 事件におけると全く同様に,本件で侵害すると主張される製品の明示的目的は,それがコピ−した元の著作物と競争することである.それらの事件においては,新しい著作物はまたそれぞれ報道と教育という有益な公正使用の目的を持っていた.それでも両事件において,著作物はそれがコピ−した元の著作物と商業的に競争しようという明示的意図のために,公正使用とは認められなかった.本件においても同様に,Oasis の使用は,Oasis 製品がコピ−された元の West 製品との競争という偶然の結果にとどまらず,それが意図された目的なのである.従って,教育および調査に利益を与える可能性があるにもかかわらず,Oasis の CD-ROM 製品の,直接に競争しようとする商業的目的が明確に表明されていることは,それが West の配列の公正使用ではない強い論拠となる.

  2.著作物の性質

  当裁判所は次に第2の要因である著作権のある著作物の性質[*29] の考察に入る.
本件における著作物は編集物であって,特に争われているのはその編集物の中の配列である.オリジナルで創造的な著作物は,編集物よりももっと大きな著作権保護を受け得る.Campbell v. Acuff-Rose Music, Inc.,127 L.Ed. 2d 500,114 S.Ct. 1164,1175 (1994); Feist, 499 U.S. at 348-51 .しかしこのことは,編集物が無断コピ−のよい獲物ということにはならない. Mead 事件において Rosenbaum判事は,Westの著作権が編集物の配列にあることにもかかわらず,この要因が公正使用の認定に有利に働くものではないと認めた.616 F. Supp. at 1580.本件においても同様に,同著作物の性質は同著作物が公正使用となるコピ−行為を受けやすいものにするかもしれないが,それにもかかわらず,本件の諸事実は公正使用の認定を支持しない.

  3.使用された部分の量と実質性

  第3の107 条の要因は,著作物全体との関係で用いられた部分の量と実質性が,コピ−行為の目的との関係で合理的であるかどうかを問う.Campbell, 114 S. Ct.at 1175 .この要因はまた,用いられた資料の量ばかりでなく,その質と重要性をも考慮することを要求する.[*30] 同上; Nation, 471 U.S. at 564-56.

  第1要因を考察する間に確認されたように,Oasis はその製品が一部の人にとっては West の侵害された製品に完全にとって代わる役をするかもしれないと認めている.このことはOasis にとっては驚くべき予測ではない.一旦 Oasisがスタ−・ペ−ジ数表示をつけて CD-ROM 製品を公刊すれば, West の判例集に収録されている意見を引用しようと思ってOasis の製品を使っている著者は, West の製品を全然使わないでそうすることができるであろう. Nation 事件において連邦最高裁判所は,そのコピ−がコピ−の元の著作物の「本質的核心をとってしまう」という地方裁判所の意見に賛成した.471 U.S.at 564-65 .本件においてOasis 製品は, West のフロリダ上訴判決の全配列を完全にコピ−することになるであろう.Oasis はスタ−・ペ−ジ数表示の「必要」を指摘する.しかしながら,Oasis が市場で West の製品にとって代わるために West の内部のペ−ジ数表示が「必要」であるということは,本要因の適正な焦点ではない.完全に Time 誌を出し抜くために, Nation 誌は確かに Ford 大統領の原稿の実体的に価値のある部分を複写する「必要があった」.それにもかかわらずその使用は公正使用ではなかった.本件におけるOasis の特定のコピ−行為は, West の印刷物および CD-ROM 製品にとって代わる役をするであろう. Mead 事件におけるように,本件で West の配列にスタ−・ペ−ジ数表示をしようとすること [*31]は,「量的にも質的にも実質的な」コピ−行為を構成する.参照,Mead, 616 F. Supp. at 1580-81 .

  4.著作権のある著作物の売行き見込みに対する影響

  最後の要因は,著作権のある著作物の売行き見込みまたは価値に対するその使用の影響に関するもので,「疑いもなく公正使用の単独で最も重要な要素である.」Nation,471U. S. at 566.このことは,公正使用が正しく適用される時,それは「コピ−される著作物の売行きを,実質的に害さないような他者のコピ−行為に限られるからである.」  同上,( 1 M. Nimmer, Copyright @1.10[D], p.1-87 引用).そのように考察すれば,この要因は公正使用の認定に強く不利に働く.  

  この要因は「裁判所に,侵害者と主張される者の特定の行為によって生じた市場への損害の程度ばかりでなく,『被告の行った種類の無制約で広範囲に及ぶ行為が … 原本の売行き見込みに実質的に不利なインパクトを及ぼすことになるかどうか』を考察することを要求する.」Campbell, 114 S.Ct. at 1177 (1 M.Nimmer, Copyright@13.05[A][4],p. 13-102.61を引用).一般原則として,使用が商業的利潤を目的とする場合には [*32]先行著作物の売行きを害する蓋然性が推定される.Sony Corp. of America v. UniversalCity Studios, Inc., 464 U. S. 417, 450-51, 78 L. Ed.2d 574, 104 S. Ct. 774(1984)(「著作権のある資料の商業的使用はすべて,著作権者に属する独占の特権の不公正な搾取であると推定される… 」).しかしながら,侵害すると主張される著作物がパロディ−とかその他批判的な著作物のように変換的である場合には,市場への損害の推定は該当しないし,もっと証拠の提出が必要であろう.Campbell, 114 S.Ct. at 1177-78.そこで問題は,本件が West 製品の直接的コピ−行為かどうか,それとも変換かということになる.

  当裁判所は,Oasis による West の配列の CD-ROM 複製が単なるコピ−行為にすぎず,変換ではないと容易に結論することができる.当裁判所はコンピュ−タ・テクノロジ−の提供する法律調査能力が,ハ−ドカバ−の印刷物のペ−ジを次々と繰る調査能力を超えることは認める.しかしこの事実はOasis の助けにはならない.第1に, West が指摘するように, West はすでにOasis の製品が入れようとする判決および配列を収めた CD-ROM 製品を売出している.そしてOasis は自分の CD-ROM 製品が [*33] West よりも価格が安いことを予定している.参照,Nation, 471 U.S. at 568(原著作物ばかりでなく,派生的著作物への損害もまた考慮されなければならないと述べる).

  第2に,印刷された判決についてさえも,Oasis 製品は変換的ではない.Oasis は次の特徴がその CD-ROM 製品を変換すると主張する:

  Oasis の製品は,顧客が裁判所別,主題別,裁判官別,弁護士別,日時順などで分類するのに使用できる … .ユ−ザ−は「切り貼りしたり」編注をはめこんだり,その他の作業を行うことができる.Oasis Mem. Resp. at 27.

  Oasis の理論に従ってその論理的結論では,印刷された教科書を普通のコンピュ− タ・デ−タベ−ス・プログラムに変換すれば,その教科書を「変換」し,公正使用を構成することになろう.結局コンピュ−タ・ユ−ザ−はキ−・ワ−ドやフレ−ズを探して,本文のポイントからポイントへ飛ばすことができる.コンピュ−タ・ユ−ザ−は限りなく様々の範疇別に分類することができ,本文から1節を「切りとって」自分自身の著述の中に「貼り付け」,同じ本文の単純な印刷版では想像もできないような様々な方法で,コンピュ−タを使って本文の調査ができる.しかしながら,新しくもっと便利な媒体が原著作物を「変換」するのではない[*34] ;それは単に本文の実際的操作と使用の新しい方法を提供するにすぎない.本質的にCD-ROMプログラムは,印刷されたソ−スとは異なる媒体にすぎない.しかしこれは侵害の主張に対する抗弁ではない.これから類推して,TVシリ−ズからコピ−された本も侵害を構成することになろう.Twin Peaks Productions, Inc. v. Publications International, LTD., 996 F.2d 1366 (2d Cir. 1993),小説をコピ−した映画,Twentieth Century-Fox Film Corp. v. MCA,Inc.,715 F.2d 1327 (9th Cir.1983),cert. dismissed, 464 U.S. 1033 (1984) ,プログラムの言葉からコピ−されたコンピュ−タ・プログラムのプロセスの実行,Apple Computer Inc. v. Franklin Computer Corporation, 714 F.2d 1240 (3d Cir. 1983) ,ギフトの包み紙の画からコピ−された衣類のプリント,Eden Toys, Inc. v. Florelee Undergarment Co.,697 F.2d 27 (2d Cir. 1982) ,舞台劇からの映画,Twentieth Century-Fox Film Corp. v Stonesifer,140 F.2d579 (9th Cir. 1944),漫画本からとった「Betty Boop」人形,Fleischer Studios, Inc. v. Ralph A. Freundlich,Inc.,73 F.2d 276 (2d Cir.1934), cert.denied, 294 U.S.717, 79 L.Ed. 1250, 55 S.Ct. 516 (1935) .[*35] 「ある媒体中の著作物が,他の媒体中の著作物からコピ−されたとしても,やはり『コピ−』に変わりはない.」2 M.Nimmer,Copyright @8.01[B], pp. 8-15, 8-16 .

  Oasis の計画する CD-ROM 製品は非変換的であるから,当裁判所は West が市場損害を受けると推定する.しかしながら,本件においてこの推定はほとんど必要がない.何故ならOasis の売出し計画は,明示的に「幾棚ものハ−ドカバ−の書籍に対して1枚のCDを買うことで … 明らかに紙の節約」を予定しているからである.連邦最高裁判所が確立したように,「公正使用を否定するためには,次のことを証明するだけでよい.すなわち,もし争われている使用が『広まったら,著作権のある著作物の売行き見込みに不利な影響を与えるであろう』ということである」Nation, 471 U.S. at 568 (Sony, 464 U.S. at 451を引用)(emphasis added by Nation Court) .Oasis は West の CD-ROM の価格を下回る意図があることも,少なくとも市場の一部にとってその製品が West の印刷本製品の必要にとって代わり得ることを争ってはいない.しかし「公正使用の法理は,原本の使用にとって代わる使用を常に排除してきた.」Nation,471 U.S.at 550(引用省略) .この最後の要因は,本件において公正使用の例外を支持できない.すべての要因はこれを総合すると,[*36] Oasis のスタ−・ペ−ジ数表示の計画は West の配列の「公正使用」にはあたらない.

  W.「公式」指定の効果

  Oasis は次のように主張する.すなわち, West はフロリダ州制定法 25.381 注5に基づき,フロリダ上訴裁判所判決の公式編纂者であること,Southern Reporter をその公式判例集として採用するフロリダ州最高裁判所の通達を West が公表していること,注6 およびフロリダ州が West をその公式判例編纂者と見ていることを West が黙認していること.従って,フロリダ州と West との契約によって West はFlorida Cases の中で,フロリダ判決をSouthern Reporter に現れている通りに公刊しなければならないという事実と相俟って,Florida Cases は公有に属す,とOasis は主張する. West は,ある州の公式判例集を公刊する場合,出版社はその判例集のスタ−・ペ−ジ数表示をすることは自由であると認めている.しかし, West は同社がフロリダ州の公式判例集を公刊していることを否定する.フロリダ州はこの訴訟の当事者ではない.当裁判所はフロリダ州と West との間の法的関係の性格づけをすることは好まないし,本件の事実はそれを必要としない.当裁判所は,争われている West の著作権の実体を構成するものはフロリダ上訴判決そのものではなく,その判決の配列[*37] であることを繰り返し述べる.たとえ仮に West がOasis の主張するように,フロリダ州の公式編纂者であったとしても --それは当裁判所が今日決定する争点ではないが --  West の公刊する判例の配列の著作権は,フロリダ州の明示的同意によって West に属する.

[*38]

  Oasis は West によって判例集中に書かれ,含まれたダイジェスト資料は公有に属することは議論していない.この省略は適切である.私的著作物を政府が公刊し,またはその他の使い方をすることは,著作権保護を減じるものではない.例えば次を参照,
Practice Management Information Corp. v.American Medical Association,877 F.Supp.1386 (C.D. Cal. 1994) (American Medical Associationの著作権は,政府が AMAの  手続用語集を採用したことによって損なわれなかった.しかし,政府は医師達に彼らが提供した様々のサ−ビスに対して償還を求めるためには,同書を参照し,引用し,そのコ−ド番号システムおよびサ−ビス記述を用いることを要求した).しかしOasis によれば, West のフロリダ州との関係のために,Florida Cases は著作権保護を失い公有に帰したというのである.同時にOasis は,Florida Cases またはSouthern Reporter が同州の公式判例集として採用されたという主張にかかわらず, West がダイジェスト資料には著作権保護を持つことを認める.この主張は, West とフロリダ州との明示的契約が, West のダイジェストおよびその他のオリジナルな資料に持つ West の著作権を West に留保させている[*39] ことを暗黙裡に認めるものである.

  Oasis の主張の克服できない難点は,同じ契約がまた判例の配列の著作権を West に留保していることである. West がその判例集に有する保護され得るいかなる著作権も,フロリダ州が West から奪おうとしたという証拠を,Oasis は何も提出していない.
実際,事態は明らかに正反対である.1957年以来 West とフロリダ州との間の関連各契約は,「Florida Cases の各巻中の … 梗概,頭注,キ−・ナンバ−・ダイジェスト分類,インデックス・ダイジェスト,解釈制定法の索引」の著作権を確認している.それは,フロリダ州最高裁判所が,Southern Reporter をその判決の公式公刊物として採用すると宣言しているにもかかわらずである. Mead 事件における第8巡回区控訴裁判所の判決後のFlorida Cases 公刊の契約すべてにおいて, West とフロリダ州は West の著作権の傘の下に「判例の配列」を明示的に含めてきた.Oasis はこの言葉が Mead 事件を念頭において特に加えられたこと,およびフロリダ州がこの追加文言を自由に黙認したことを争ってはいない.[*40] この特定の警告のタイミングと文脈から,それがFlorida Cases 中
の判例の内部のペ−ジ数表示を示していることは自明である.さらにOasis は,その追加がそれ以前の了解との訣別を表すとも,またそれは West が著作権法の下で別段に与えられた保護を受け得る権利を奪われてはいないことの再確認以上の何かであることも,争ってはいない.

  要するに,フロリダ州も West もその契約の中で, West から判例の配列の著作権を奪う合意を示してはいない.事実,両当事者が West はその配列に著作権を保持すると合意したことは,争われていない証拠によって確証されている.これに基づいて,仮に州による採用と契約によって West が, Oasis の主張するように,フロリダ州の「公式」判例編纂者であり,フロリダ判決のその公判物が公有に属すると想定しても, West は判例配列に対する著作権を保持している.

  X.フロリダ州公的記録法

  最後に,Oasis はFlorida Cases に含まれている判決記録の本文およびペ−ジ数表示は,同州公的記録法によって 注7 フロリダ州の公的記録であるから [*41],自由にコピ−できると論ずる. West は次のように主張する.すなわち,フロリダ州公的記録法は司法府とその記録には適用がないこと,Times Publishing Co. v. Ake, 660 So.2d 255 (Fla. 1995),フロリダ州公的記録法に West の配列の著作権を無効にすることを許すならば,合衆国憲法の最高法規条項に違反することになろうということ,ともかく West のオリジナルな資料を契約によって West に留保したことは,フロリダ州公的記録法から判例集のペ−ジ数表示を除外する,ということである.Westの最後の議論は,フロリダ州公的記録法の解釈または最高法規条項の適用を不必要とする.

  Oasis は,Florida Cases の中には West のダイジェスト資料が公刊されているけれども,公的記録法はこの資料を公有に属させてはいないことを認める. West の公刊物の「公的」[*42] 地位についてと同様に,公的記録法からダイジェスト資料を除外しているまさにその合意が,判例の配列をも除外する.フロリダ州公的記録法が, West によって収録された通りの判決を含むと,ここでも決定することなく,そう仮定しても,フロリダ州は判例の配列の著作権を West に留保することにより,公的記録法の適用範囲から判例の配列を契約によって除外したのである.

  結論

   West は Florida Casesの判決の配列に対して,保護され得る著作権を有する.
Oasis の計画するスタ−・ペ−ジ数表示は,Westの配列の著作権性のある要素を侵害することになろう.Oasis の計画するスタ−・ペ−ジ数表示は, West の配列の「公正使用」ではない.Florida Cases またはSouthern Reporter の「公式」指定も,フロリダ州公的記録法も West の著作権の強行性を奪わない.

  よって,以下のように決定する.

  1.West Publishing Company の一部略式判決を求める申立 (Clerk Doc. No.57) は

    これを容認する.

  2.第X項目および第Y項目は棄却する.

  3.Oasis Publishing Company, Inc.の一部 [*43]略式判決を求める反対申立(Clerk Doc. No.66)は却下する

  日付:  1996年5月17日

  Paul A. Magnuson

  合衆国地方裁判所判事                            




  注1 Florida Cases 1993年版のタイトル・ペ−ジは次のようになっている:
「WestのFlorida Cases :フロリダ州の最高裁判所および地区上訴裁判所の判例, National Reporter System の一部である Southern Reporter第2集に収録;603 So.2d 」次のペ−ジの著作権表示には「 Southern Reporter,第2集,603 巻より再録;著作権者West Publishing Co., St. Paul, Minnesota; すべての権利を留保.」

  注2 West は例として,State v. Campbell,66l So. 2d 1321(La. Oct.2, 1995)および State v. Campbell,661 So.2d 1374 (La. Nov.3,1995)をあげる.{*17]       

  注3 West は例として Elliott v. Elliott, 648 So. 2d 135(Fla. Dist. Ct. App. 1994)および Elliott v. Elliott, 648 So. 2d 137( Fla. Dist. Ct.App.1994) をあげる. フロリダ州地区控訴裁判所は前者の判決を 1994 年3月23日に,後者の判決を 1994 年11月30日に下したけれども, Southern Reporterには前者が後者の後に公刊されている.

  注4 West は例として Times Publishing v. AKE, 645 So. 2d 1003 (Fla.Dist.Ct.App. 1994) をあげる.その中で West は 1994 年6月29日に下された判決と1994年9月23日に下された判決をまとめている.これに対して LEXISは両判決を別々に収録している.

  注5 同制定法は該当部分に次のように述べる:
  最高裁判所および地区上訴裁判所の意見の判例集をFlorida Cases と称するものとする.1963年7月およびその後2年毎に別段の定めのあるまで,最高裁判所は法務長官とともに St. Paul, Minnesotaの West Publishing Corporationと契約し,法の要求または許可に従って,公務員および諸機関に提供するに必要なFlorida Cases の部数の公刊 … および配布を定めるものとする.同契約に基づき州が買上げるその判例集の部数は,その目的のために計上された金員から支払われるものとする.Fla. Stat. Ann. @25.381.

  注6 フロリダ州最高裁判所長官の署名を得た同通達は,次のように述べる:
  37 So. 2d 692 以下に収録された 1948 年フロリダ州最高裁判所判例から始まるSOUTHERN REPORTER は,フロリダ州最高裁判所およびフロリダ州諸機関の行政委員会によって,フロリダ州最高裁判所の意見および判決の公式公刊物として採用される.この書は脱落または重複なしに,Frorida Reports 160 巻と連絡する.

  注7 同州の公的記録法は,「すべての州,郡,市の記録は,何人も個人的に閲覧できるように開放されなければならない」という政策を確立する.Fla. Stat. ch.119.01.