S.Oakmont vs Prodigy

原告:STRATTON OAKMONT, INC.およびDANIEL PORUSH

被告:PRODIGY SERVICES COMPANY(IBM CORPORATIONとSEARS-ROEBUCK &

COMPANYの合弁会社のパートナーシップ)、「ジョン・ドウ」および「メアリ・ドウ」

STRATTON OAKMONT, INC.対 PRODIGY SERVS. CO.

索引番号:31063/94

ニューヨーク州最高裁判所(ナッソー郡)

判決:1995年5月24日

記録:1995年5月26日

担当裁判官:

STUART L. AIN裁判官

判決理由執筆:

STUART L. AIN

判決理由:

略式命令

担当裁判官:

STUART L. AIN裁判官

 前記の書類に基づき、被告PRODIGY SERVICES COMPANY(以下「PRODIGY」という)に対するパーシャル・サマリー・ジャッジメントを求める原告の申立を認めることを命令し、この法廷は、次の二つの争点について、法律問題として、次の通り判決する。

 (i) PRODIGYは、原告の文書誹毀を目的とする「マネー・トーク」BBS上での原告に関する記述の「出版業者 (publisher)」であった。

 (ii)PRODIGYの「マネー・トーク」BBSのリーダー、Charles Epsteinは、訴状で申し立てられている行為および不作為 において、PRODIGYの代理人を務めた。 本件で争われているのは、1994年10月23日および25日にPRODIGYの「マネ ー・トーク」コンピュータ掲示板への正体不明のユーザすなわち「投稿者(poster)」が行った原告に関する記述であ る。これらの記述は、次のようなものを含んでいた。

 (a) 証券投資金融会社STRATTON OAKMONT, INC.(以下「STRATTON」という)およびSTRATTON社長DANIEL PORUSHは、 Solomon-Page Ltd.の株式の最初の公募に関連して、犯罪行為および詐欺行為を行った。

 (b) このSolomon-Pageの公募は、「大きな刑事的詐欺」および「100%の刑事的詐欺」であった。

 (c) PORUSHは「まもなく犯罪者であることが証明される」者だった。

 (d) STRATTONは「生活のために嘘をつかなければクビにされるブローカーのカルト」であった。

 原告は、この表現が載ったコンピュータ・ネットワークの所有者・運営者であるPRODIGYおよび上記の表現を投稿した正体不明の当事者を相手取って、本訴を提起した。第二の訂正訴状は、10件の訴因を申し立てているが、その中にはその記述自体で成立する文書誹謗(per se libel)の請求が含まれていた。この申し立てについて、「本訴の結果に重要な前進をもたらすため」(Zamansky宣誓供述書、par. 4)、原告は、二つの争点についてパーシャル・サマリー・ジャッジメントを求めている。すなわち、次の二つの争点である。

 (1) PRODIGYは上記の表現の「出版業者」と見なされる。

 (2)表現が投稿されたBBSのリーダーEpsteinは、本訴の請求において、PRODIGYの「代理人」として事実上のおよび表 見上の権限を持って行動した。

 背景として、PRODIGYのコンピュータ・ネットワークが少なくとも200万の加入者を有しており、これらの加入者がPRODIGYの掲示板上でお互いにまた加入者全体と通信を行っていることについては、争う余地がない。前記の表現が掲載されたBBSである「マネー・トーク」は、合衆国では大手の、もっとも広く読まれている財務関係のBBSであるといわれており、メンバーは、株式、投資およびその他の財務問題に関する意見を投稿できる。PRODIGYは、掲示板リーダーと契約しているが、これらのリーダーは、とりわけ、BBSの討論に参加し、BBS利用を奨励しユーザを増やすため販売促進を行っている。文書誹毀の申し立ての行われている文書が投稿されたときの「マネー・トーク」のリーダーは、Charles Epsteinであった。

 PRODIGYは、1990年に運営を開始した。原告は、PRODIGYが出版業者であるという主張の根拠を、大部分、1990年に始まったPRODIGYが家族向けのコンピュータ・ネットワークであると同社が述べた方針においている。PRODIGYのプログラム・通信販売部長であるGeoffrey Mooreが書いた種々の全国紙の記事で、PRODIGYは、自らを、同社のコンピュータ掲示板上に投稿されるメッセージの内容に編集権を行使するオンライン・サービスであるとしており、それによって明示的に自社を競合企業と区別し、また自社を明示的に新聞社になぞらえている(原告の申立書別紙IおよびJ参照)。ある記事で、PRODIGYは、次のように述べている。

  「当社は、当社がサービスの提供を希望する何百世帯もの米国家庭の文化を反映する価値体系を追求していることを、弁 解しようとは思わない。責任ある新聞は、その掲載する広告の種類、掲載する手紙、編集者が大目に見るヌードおよび 根拠のないゴシップの程度を選択し、これを最低限おこなうことは確かである」。(別紙J)

 原告は、上記のPRODIGYによる記事を自白であるとみなし(Dattner v Pokoik, 81 AD2d572, 437 N.Y.S.2d 425, app. dsmd. 54 NY2d 759参照)、一部の文書および証言録取書とともに、これらの記事は原告のprima facie case(一応有利な事件)を立証すると主張している。PRODIGYはこれに反論して、同社の方針が1990年以降変更され発展してきたこと、およびこの問題に関する1993年2月付けの最近の記事は、文書誹毀とされる表現が投稿された1994年10月のPRODIGYの方針を反映していないと主張している。最近の記事と上記の表現との間の18ヵ月の時間の経過は重要でないということはなく、また裁判所は表現と自白を文脈を離れて解釈することに慎重を期しているが、以下の審理は、この証拠の重みにのみ向けられる。

 原告はさらに、PRODIGYが出版業者であるという主張を裏付けるため、次の追加証拠に依拠している。

 (A) 「内容に関する手引」(原告の別紙Fにある「手引」)の公表。この手引ではとくに、ユーザは、「侮辱する」メモの投稿を控えるよう求められ、「他のメンバーを困らせる、または、悪趣味もしくは社会基準に著しく反すると見なされる、または、調和したオンライン社会の維持に有害と見なされるメモは、PRODIGYがこれに気付いた場合は、削除される」旨注意を受けている。この手引はすべて、「PRODIGYは掲示板上でのオープンな討議や討論を約束するが…これは『何をしてもかまわない』ことを意味するのではない」と明示的に述べている。
 
 (B) ソフトウェア・スクリーニング・プログラムの使用。これはすべての掲示板の投稿に侮辱的な文言がないかを自動的に前もってスクリーニングするプログラムである。

 (C) PRODIGYの掲示板のマネージャーであるJennifer Ambrozekによれば、Epsteinのような手引の実施などを任務とするリーダーおよびこのリーダーを監督するPRODIGY社員の利用(原告の別紙R、Ambrozekの証言録取書写本、191ページ参照)。

 (D) 「緊急消去機能」と呼ばれる掲示板リーダー用のツールに関するEpsteinの証言。この機能に基づいてリーダーは、メモを消去し、「教唆、誤った忠告、侮辱、間違ったトピック、ありそうもないトピック、悪趣味等々に及ぶ」あらかじめ作成された説明メッセージを送ることができる(Epsteinの証言録取書写本、52ページ参照)。

 PRODIGYが出版業者であるという認定は、名誉毀損請求の追求において原告が越えなくてはならない最初のハードルである。文書誹毀を繰り返す者または別の方法で再発行する者は、その者が最初にそれを発行したものとして責任を問われるからである[Cianci v New Times Pub. Co., 639 F2d 54, 61;リステイトメント(第二版)、不法行為、I 578 (1977)]。これに対し、書店や図書館など頒布業者(distributors)は、争点の名誉毀損表現を知っていた場合または知る理由のあった場合にのみ、他人に対する名誉毀損表現について責任を問われる[Cubby Inc. v CompuServe Inc., 776 F.Supp. 135, 139;Auvil v CBS 60 Minutes, 800 F.Supp. 928, 932も参照]。名誉毀損物の頒布業者または配達業者(deliverer)は、受動的な導管(passive conduit)と見なされ、過失のないときは責任があるとは見なされない[上記Auvil;Misut v Mooney, 124 Misc2d 95, 475 N.Y.S.2d 233(文書誹毀とされる記事を掲載した週刊新聞の印刷業者に対する請求が、印刷業者が当該記事の文書誹毀とされていたところの性質を知っていたまたは知る理由があった証拠がないため却下された)も参照]。しかし、たとえば新聞は、ニュースや論評や広告の受動的な容器または導管以上のものである[Miami Herald Oublishing Co. v Tornillo, 418 U.S. 241, 258, 41 L.Ed. 2d 730, 94 S.Ct. 2831]。新聞に掲載される資料の選択と新聞の内容に関する決定は、編集権および判断の行使にあたり(同上)、この編集権とともに、責任の拡大が生じる(上記Cubby参照)。要するに、本法廷が決定すべき重要問題は、上記の証拠が、PRODIGYがそのBBSに対して新聞と同じ責任を有する出版業者とするに十分な編集権を行使したかというprima facie caseを、立証するかどうかである。

 ここでもPRODIGYは、すべてのメッセージを投稿に先立って手作業で検討する従来の方針が「原告が申し立てるところのメッセージが投稿されるずっと以前に」変更されていたと主張している(Schneckの宣誓供述書、par. 4)。しかし、この変更および変更のしらせを普及させたことに関する文書や詳しい説明は、提出されていない。加えて、PRODIGYは、量についていえば−−現在PRODIGYの掲示板には、一日に60,000件のメッセージが投稿されている−−手作業でのメッセージの検討は実行不可能であると主張している。PRODIGYは掲示板リーダーが手引に違反するメッセージを削除できると認めている一方、リーダーは「編集者」の役割は果たしていないと断固たる(conclusory)態度で主張している。さらにPRODIGYは、本法廷は完全な裁判記録がなければこの発展しつつある通信メディアに直接影響する問題を決定すべきでない、と全般的に主張している。ただしPRODIGYは、同社が出版業者であるかどうかというこの争点についてどんな事実が提示されずに残っているかについては述べていない。

 判例については、PRODIGYは、上記のCubby事件に依拠している。この事件で被告CompuServeは、加入者に、オンライン総合情報サービスまたは「電子図書館」を含むコンピュータ関連サービスまたはフォーラムを提供するコンピュータ・ネットワークであった。ジャーナリズム・フォーラム上で利用できる出版物の一つが、原告に関する名誉毀損的表現である電子ニューズレターを掲載した。興味あることに、Cameron Communications, Inc.(以下「CCI」という)と称する独立の主体が、「CompuServeが確立した編集・技術水準およびスタイル方式に基づきこのジャーナリズム・フォーラムの内容を管理し、検討し、創造し、消去し、編集しまたは他の方法でコントロールするため、契約して」いた。裁判所は、CompuServeは出版物がCompuServeのデータベースにアップロードされる前に争点である出版物の内容を検討する機会を全く持たなかったことに留意した。その結果、裁判所は、CompuServeの製品は莫大な数の出版物を所蔵する「本質的に、営利目的の電子図書館」であり、CompuServeはこれらの出版物の内容に対する「編集権をほとんどまたは全く」持っていないと判示した。サマリー・ジャッジメントを求めるCompuServeの申し立てを認めて、Cubby事件の裁判所は、次のように判示した。

  コンピュータ化されたデータベースは、より伝統的なニュースの販売業者と機能的には等価なものであり、CompuServeのような電子ニュース頒布業者に公共図書館、書店またはニューススタンドに適用されるものより低い責任基準を気まぐ れに適用すれば、情報の自由な流通に不当な負担をかけることになろう。 (776F. Supp. 135, 140)。

 CompuServeとPRODIGY事件の重要な違いは、二つある。第一に、PRODIGYは、公衆とメンバーに対して、そのコンピュータ掲示板の内容をコントロールしていると公言していた。第二に、PRODIGYはこのコントロ−ルを、同社の自動ソフトウェア・スクリーニング・システムとBBSリーダーが実施を求められる手引とを通じて、実行した。たとえば侮辱的な表現および「悪趣味」に基づいてそのコンピュータ掲示板からメモを削除するため技術と人材とを積極的に用いることで、PRODIGYは、内容に関して明らかに決定を行っており(上記Miami Herald Publishing Co. v Tornillo参照)、この決定は編集権を構成する(上記)。この編集権が完全でなく、またメモが到着したときおよび苦情が出されたときの両方で行使されることは、がメンバーがどんなものを掲示板に投稿し読んでいいのかをPRODIGY決定する役割を持っていると独自の役割を自称している単純な事実を、最小にすることはなくまた骨抜きにすることもない。上記に基づき本法廷は、本訴の原告の主張においてPRODIGYは頒布業者ではなく出版業者であると結論せざるを得ない。

 興味ある比較を Auvil v CBS 60 Minutes(上記)に見出すことができる。この事件は、リンゴ生産農家が、あるネットワークが製作しその地方局が放映した名誉毀損とされる調査レポートを理由として、このテレビ・ネットワークと地方局とを訴えたものである。訴訟記録は、この地方局が、CBSとの契約によって編集権を有しており、西海岸との時間差が3時間あるからそうする機会があり、そうする技術能力を持っており、事実、過去にネットワーク番組の検閲をときたま行っていたにも関わらず(「60 Minutes」に関しては全く行わなかったが)、この放送に対してなんらの編集権も行使しなかったことを立証した。裁判所は、次のように認定した。

  これらの特徴は、検閲権と相まって、検閲義務を生じる、と主張されている。これは飛躍であって、裁判所はこれに荷担 する気にはなれない。
...
...原告の解釈にしたがえば、全米の地方局に、入ってくる送信を継続的に監視し即座に自由裁量の要求を行うかま たはその都度 7,500万ドルの訴訟に直面するかを判断するための十分な知識、法律上の眼識および専門家へのアクセス を持った常設の編集局を設けざるを得なくなるであろう。これは現実的ではない。
...
単に経済的に非現実的であるだけでなく、メディアの表現の権利および公衆の知る権利にとってこれ以上に恐ろしいシナ リオを想像するのは、難しい。(800 F. Supp. at 931-932)。

その結果裁判所は、過失がなければこの事件では立証できない(過失のあったことは証明されなかった)「導管の責任」に基づき、地方局に対する請求をすべて却下した。

 これと対照的に、本件のPRODIGYは、入ってくる送信を継続的に監視する能力を持ち、実際にメモの検閲に時間を費やす掲示板リーダーという編集スタッフを、実際に設置している。事実、自動スキャンニング、手引、BBSリーダーというPRODIGYの現行システムは、サイバースペースの通信の自由に恐ろしい影響を及ぼすかも知れないと言うことができようし、またこの恐ろしい影響は、このような検閲に付随する法的責任がなかったなら、まさにPRODIGYが望むものであるように思われる。

 本法廷がCubby、Auvil両事件の裁判所と完全に意見が一致していることを明確にしておこう。BBSは、一般に、書店、図書館およびネットワーク地方局と同じ文脈で考えるべきである[Edward v. Dilello, Functional Evuivalency and Its application to Freedom of Speech on Computer Bulletin Boards, 26 Colum. J. Law & Soc. Probs. 199, 210-211 (1993)参照]。シナリオを変更しそれが出版業者であると認定する権限を与えたのは、PRODIGY自身の方針、技術およびスタッフ配置の決定である。

 編集権の恩恵を得るためのPRODIGYの意識的な選択は、このような選択を行っていないCompuServeその他のコンピュータ・ネットワークよりも大きい責任を、同社に与えている。正式に言っておくと、PRODIGYが出版業者の地位を有するという本法廷の認定がすべてのコンピュータ・ネットワークにBBSのコントロールを放棄させるだろうというおそれがあるが、このおそれから、市場は、コントロールの拡大とその結果身をさらすことが多くなる(exposure)ことに対してネットワークに補償を拒否する、と推定するのは誤りである。[Eric Schlachter, Cyberspace, The Free Market and The Free Marketplace of Ideas: Recognizing Legal Differences in Computer Bullet: Board Functions, 16 Hastings Communication and Entertainment L. J., 87 138-139参照]。思うにBBSの内容を規制するPRODIGYの決定は、一部には、「家庭向け」コンピュータ・サービスを求めるユーザで構成されているとわかる特徴(mark)を得たいという希望に影響されていた。この決定は、コンピュータ・ネットワークが前記のようなサービスを提供するなら、同時にそれに付随する法的結果も受け入れなければならないことを、事実上必要とした。さらに、本法廷は、いくつかの案が議会で審議中の1995年通信規準法が制定されれば、本件で扱われる争点が最終的には連邦法によって専占される可能性のあることにも留意する[Congressional Quarterly U.S. 5 65 Congressional Quarterly U.S. HR 1004およびCongressional Quarterly U.S. 314参照]。

 本法廷は次に、本件で提起されている第二の争点、訴状で申し立てられている行為および不作為においてEpsteinがPRODIGYの代理人であったかどうかの問題に、移る。代理とは、ある者が自己に代わってかつ自己のコントロールにしたがって行為を行うことを他人に認める同意およびそのように行為を行うことに対する他人の同意の表明から生じる法的関係である[Maurillo v Park Slope U-Haul, 194 AD2d 142, 606 N.Y.S.2d 142, 606 N.Y.S.2d 243;代理のリステイトメント(第2版)、I 1]。本件の代理権分析の出発点は、PRODIGYとEpsteinとの間の「BBSリーダー契約」(William C. Schneckの反対宣誓供述書別紙Aにある「契約書」)である。この契約は、(I)毎月最低120件のメモの投稿、(II)メンバー代表との協力、(III)月報の提出、(IV)PRODIGYが規定する追加手続の順守など、11の具体的な責任を規定している。また、すべての販促活動についてPRODIGYの事前承認も規定している。加えて、この契約には、次の文言が含まれている。

  貴方はPRODIGYの代表ではありませんが、掲示板リーダーとしての貴方の行動は、PRODIGY に影響を及ぼします。
...
貴方は、BBSリーダーとしての貴方の行動のすべてについて、単独で責任を負います。PRODIGYは全般的にBBSリー ダーとしての貴方の行動(その行動がこの契約に違反しない限り)を支援することは確かですが、BBSリーダーとして 貴方が行う(または行わない)ことについて、当社はなんらの責任も負いません。ここに貴方は、貴方が行うことからま たはこれに関連して生じる...すべての請求、費用、責任、判決について、PRODIGYに補償しかつこれを免責すること に同意します。...
...
BBSリーダーであることは、貴方をProdigy Services Companyの社員、代表者または代理人にするものではなく、貴 方は、社員等であることを主張または示唆しないことに同意します。

 PRODIGYは、Epsteinとの代理関係から逃れるためこの文言に依拠している。しかし、魔除けの文言は、代理関係を決定するものではない[Matter of Shulman Transport Enterprises, Inc., 33 B.R. 383, 385, aff'd 744 E2d 293]。裁判所は、関係の実体に依拠しなければならない(上記)。一方当事者が他方に対して十分な程度の指揮と支配を保持する場合、本人−代理人関係が存在する[Garcia v Herald Tribune Fresh Air Fund, Inc., 51 Ad2d 897, 380 N.Y.S.2d 676]。さらに、ある者が請負人であるかどうかは、その者が代理人であるかどうかを決定するものではない[Columbia Broadcasting System,Inc. v Stokely-Van Camp, Inc., 522 F2d 369;Ackert v Ausman, 29 Misc2d 962, 218 N.Y.S.2d 822, aff'd 20 AD2d 850, 247 N.Y.S.2d 999]。

 PRODIGYとそのBBSリーダーとの関係の実体について、PRODIGYのセキュリティ担当役員McDowellは、BBSリーダーは手引にしたがうことを求められていること、およびPRODIGYがBBSリーダーの活動について「管理機能」を果たしていることを証言した(McDowellの証言録取書写し、78ページ、申立書の別紙5にある)。さらに、Epsteinの監督者Jennifer Ambrozek は、PRODIGYが掲示板リーダーとともに手引を見直し、その後リーダーはその手引の実施を求められると証言している(Ambrozekの証言録取書写し、23、191ページ、申立書別紙Rにある)。また掲示板リーダーは、1994年10月付けの28ページの「BBSリーダー・サバイバル・ガイド」(申立書別紙O)を配布され、これには多数のテクニカル・タームや手順が解説されており、その中に次のような注意事項がある。

  ある事項について何であるかまたは何をするよう想定されているのかが分からないときは、問い合わせるまでそのままに しておいて下さい。

事実の争いのない場合は、代理の問題は裁判所が決定すべきである[Plymouth Rock Fuel Corp. v Leucadia, Inc., 100 AD2d 842, 474 N.Y.S.2d 79]。本件は、これに該当する。PRODIGYの従業員の上記の証言とPRODIGYが作成した文書は、手引それ自体とともに、PRODIGYが争うことのできないものであり、少なくとも「マネー・トーク」BBSの監視・編集に限定すれば、PRODIGYはEpsteinの行動を指揮し、コントロールしていたことには、なんらの疑問もない。この結論に達するにあたって、本法廷は、権威の印象を生み出さなければならないのは代理人の行為ではなく、本人の行為であるから、Epsteinの証言には依拠しないように注意した[Ford v Unity Hosp., 32 NY2d 464, 473, 346 N.Y.S.2d 238, 299 N.E.2d 659参照]。上記に基づき、本法廷は、訴状で申し立てられた行為および不作為において、EpsteinはPRODIGYの代理人として行動したと判示する。

日付:1995年5月24日

ニューヨーク州ミネオラ市

Stuart L. Ain

J.S.C.