カリフォルニア州北地区

                 連邦地方裁判所

原告: EBAY,INC. 対  被告: BIDDER'S EDGE,INC.

No. C-99-21200 RMW   

仮差止命令を付与する決定 

[Docket Nos.6,12]

原告eBay,Inc.(「eBay」)の仮差止命令を求める申立は、当裁判所により2000年4月14日審理された。当裁判所は申立書および答弁書[注1]を読み,訴訟代理人の弁論を聴いた。以下に述べる理由により、当裁判所は仮差止命令を付与し、被告 Bidder's Edge Inc.(「BE」)がeBayの書面による許可なく、自動質問プログラム(automated querying program)を使用してeBayのコンピュータ・システムにアクセスすることを禁ずる。

I 。背景

eBayは、インタ−ネットに拠る個人対個人の取引サイトである。(Jordan陳述書、パラグラフ3)eBayは、売り手には販売する物件をリストに載せることができることを、買い手になる見込みのある人にはリストを検索して物件の入札をすることができることを売りものにしている。(同上)売り手は競売の条件を決めることができる。(同上)物件は最高入札者に売られる。(同上)取引は売り手と買い手との間で直接完了し、eBayは関与しない。(同上)特定の物件を探している買い手になる見込みのある人は、eBayのサイトにアクセスして関係競売と入札資格(bidding status) のためのキ−・ワ−ド検索をすることができる。(同上)eBayはまた種類別リストを作り、骨董品、コンピュ−タ、人形など2500種類以上の物件を載せている。(同上)ユ−ザ−はこれらの種類別リストのペ−ジをブラウズして、興味のある物件を見つけることができる。(同上)

eBayサイトのユ−ザ−は登録してeBayユ−ザ−契約に同意しなければならない。(同上、パラグラフ 4)ユ−ザ−は、ユ−ザ−契約の末尾にある「承諾します」ボタンをクリックして、7ペ−ジのユ−ザ−契約に同意する。(同上、証 D)ユ−ザ−契約の最新版は「ロボット、スパイダ−、その他の自動装置、または当社のウエブ・ペ−ジまたはここに書かれた内容を、当社による事前の明示的書面による許可なく、モニタ−またはコピ−するための手動のプロセス」の使用を禁じている。(同上)BEが eBay サイトの検索を始めた時に有効であったユ−ザ−契約の版がそのような行為を禁じていたか、またはBEがユ−ザ−契約を順守することに同意したことがあったかは、明らかではない。

eBayは現在700万以上の登録ユ−ザ−を有している。(Jordan陳述書、パラグラフ 4)40万以上の新しい物件が毎日同サイトに加えられる。(同上)毎分300万近い物件に600の入札が行われる。(同上)ユ−ザ−は現在、eBayのデ−タベ−スに平均1日に1000 万の検索を行っている。物件の入札と販売は、何百万もの別々の競売で絶えず進行している。(同上)

ソフトウェア・ロボットはコンピュ−タ・プログラムであって、インタ−ネットを通じて作動し、他者のウエブ・サイト上で検索、コピー、検出(retrieving)の諸機能を行っている。[注2] (Maynor陳述書、パラグラフ 3; Johnson-Laird 陳述書、パラグラフ 15)ソフトウェア・ロボットは、毎分何千もの命令を実行することができ、人間の能力を遥かに凌駕する。(Maynor陳述書、パラグラフ 3) ロボットはシステムの処理および記憶の蓄積(processing and storage resources) を使い尽くし、システムの容量のその部分をそのシステムの所有者にもその他のユーザーにも利用できないようにする。(同上)システムの蓄積を十分に使い尽くせば、システム全体の処理の速度が遅くなり、システムに負担がかかり過ぎることになり、誤作動(malfunction)すなわち「クラッシュ」(crash)を生ずるであろう。(同上)ひどい誤作動はデ−タの消失およびサ−ビスの中断の原因ともなり得る。(同上)

eBayサイトは「ロボット排除ヘッダ−」(robot exclusion headers)を用いる。(同上、パラグラフ 5) ロボット排除ヘッダ−は、そのようなヘッダ−を見つけて対応するようにプログラムされたコンピュ−タに送信されて、eBayは無断のロボット活動を許さないというメッセ−ジである。(同上)ロボット排除基準に従おうと思うプログラマ−は、特定のデ−タ・ファイル「robots.txt」を読み、そこに含まれるコントロ−ル命令に従うように、ロボットをデザインする。(Johnson-Laird 陳述書、パラグラフ 20 )

コンピュ−タがインタ−ネット上で相互に交信することができるためには、各コンピュ−タに独自のインタ−ネット・プロトコル(「IP」)アドレスが割当られている。(Maynor陳述書、パラグラフ 6)或るコンピュ−タがインタ−ネットを通じて他のコンピュ−タから情報を求める時、依頼する側のコンピュ−タは、応答が送信され得るためには、応答する側のコンピュ−タに自分のIPアドレスを提示しなければならない。(同上)これらのIPアドレスによって受信する(incoming) 依頼の出所の確認ができる。(同上)eBayは、特定の IP アドレスそれぞれから受信する依頼の数をモニタ−することによって、自分のサイトにおけるロボットの活動を確認する。(同上、パラグラフ 7)一旦eBayがロボット活動に関連すると信じられるIPアドレスを確認すると、そのIPアドレスの身元、発信源(origin) および所有者の調査が行われ、その活動が正当または許されたものであるかどうかが決定される。(同上、パラグラフ 8)調査によって無断のロボット活動が明らかになれば、eBayはそのIPアドレスからのその後の依頼を無視(「遮断」)しようとすることもできる。(同上)特定のIPアドレスからの依頼を遮断する試みはいつも成功するとは限らない。(同上、パラグラフ 9; Johnson-Laird 陳述書、パラグラフ27)

団体が自分のコンピュ−タに「プロキシーサーバー」(proxy server) をインスト−ルすることはよくある。(Johnson-Laird 陳述書、パラグラフ 12) プロキシーサーバー・ソフトウェアは、送信される(outgoing) インタ−ネットの依頼の焦点の役をする。(同上)プロキシーサーバーは、すべての送信、受信されるデ−タの交換(traffic)が中心となる出入口            (centralized portal)を通るように指示することによって、システムの蓄積を保存する。(同上)団体が自分のプロキシーサーバーの使用をその地域のユ−ザ−に限定するのが一般的である。(同上)しかしながら、団体によっては公的サ−ビスとしてか、または「ファイヤーウォール」の使用により自分のプロキシーサーバーを適切に保護できないためかのいずれかによって、遠隔ユ−ザ−が自分のプロキシーサーバーにアクセスするままにしている。(同上、パラグラフ13)遠隔ユ−ザ−発の送信依頼は、そのような保護されていないプロキシーサーバーを通して送信(routed) されることができ、そのプロキシーサーバーから初めて発せられたように見える。(同上)そうすると、受信される応答はそのプロキシーサーバーが受取り、遠隔ユ−ザ−に送信される。(同上)そのようなプロキシーサーバーを通じて送信された情報依頼は、発信源のIPアドレスを容易に突き止めることはできないし、発信源のIPアドレスからの質問を遮断する試みを回避するために用いることができる。(同上、パラグラフ 14 )善意の第三者のプロキシーサーバーからの質問を遮断することは、それが果てしない隠れんぼゲ−ムを作り出すので非能率的であり、またそのプロキシーサーバーを使用する正当かつ望ましいユ−ザ−からの依頼を遮断するという実質的危険を冒すことになるので、反生産的になる可能性がある。(同上、パラグラフ 22 )

BEは1997年に設立された従業員22名の会社である。(Carney陳述書、パラグラフ 2)BEのウエブ・サイトは1998年11月に初登場した。(同上、パラグラフ 3)BEは競売のホスト役を勤めない。(同上、パラグラフ 2) BEは競売の集合サイトであって、オンラインの競売の買い手に、個別的に各ホスト・サイトを検索する必要なしに、無数のオンライン競売の物件を検索することができることを売り物にするように設計されている。(同上)2000年3月現在で、BE ウエブ・サイトは100以上のウエブ・サイトで競売されている500万以上の物件に関する情報をもっていた。(同上、パラグラフ 3)BEはまた、そのユ−ザ−に追加的な競売に関連するサ−ビスと情報を提供する。(同上、パラグラフ 2) BEサイトで入手できる情報は、eBayのような様々の競売サイトへのアクセスを通じてBEが編集(compile)する情報デ−タベ−スに含まれている。(同上、パラグラフ 4)ユ−ザ−が BE に特定の物件の検索をエンタ−すると、BE は自分のデ−タベ−スを検索し、その検索に答えるデ−タベ−ス中のあらゆる物件のリストで、競売の終了期日と時間別のものを作り出す。(同上、パラグラフ 5) 一時に一つずつ各競売サイトに当たらなくても、ユ−ザ−は BE に当たれば、一つの検索をするだけで、BEが探知した(tracked )あらゆる競売サイト上のその物件に関する情報を入手できる。(同上、パラグラフ 6)BEサイトにeBayの競売に関する情報を含めることは重要である。何故なら、eBayは消費者対消費者のオンライン競売サイトで飛びぬけて大きいからである。 (同上)

1997年6月16日、 BEウエブサイトが初登場する1年以上も前、Peter Leeds[注 3]はBEの共同設立者であるKimbo Mundyからの電子メ−ルに答えて、電子メ−ルを書いた。(Ritchey 陳述書、証 6)Mundyの電子メ−ルには次のように書かれていた。「私は思うのですが、雑誌はサイトの遮断能力を過大評価しているかもしれません。Arthur AndersonのBargain Finder のような初期のエージェント(agent)の実験は、あらゆるサイト上のrobots.txt ファイルをチェックし、求められれば止めるように注意していました。」(同上)(下線原文のまま)Mundyは次のように返答した。「まともに働くロボットは、それでもrobots.txtファイルをチェックすると期待されていると思います…。我々の他の懸念もまた法律上のものでした。顧客がサイトをチェックするためにツ−ルを用いることと、単一の事業体(business enterprise)が繰り返しそれをして、その上でその情報を配布して利益を得ることとは全く別のことです。」(同上)

1998年の初め、eBayはBEデ−タベ−スにeBayがホスト役を勤めるBeanie BabiesとFurbies の競売のための情報を含める許可をBEに与えた。(同上、パラグラフ 7)1999年の初め、BEは自分の範囲内の個人対個人の競売数を増やして、eBayを含むそれらのサイトがホスト役を務めるさらに広い範囲の物件を範囲に入れ始めた。(同上、パラグラフ 8)1999年4月24日、eBayはBEがeBayウエブ・サイトを90日間クロ−ル(crawling)することを、口頭で許可した。(同上)両当事者は、その期間中に正式なライセンス契約を結ぶつもりであった。(同上)しかしそれはできなかった。

主たる争いは、eBayのデ−タベ−スの検索のためにBEが用いる方法についてであったようである。eBayが望んだのは、BEがeBayのシステムの検索をするのは、BEシステムがBEユ−ザ−から質問を受けた(queried)時に限ることであった。(Ploen陳述書、証 9)こうすればeBayシステムの負荷(load)は減少し、BEデータの正確性を増す。(同上)BEは、自分自身の競売データベ−スを編集するためにeBayシステムを繰り返しクロ−ルすることを望んだ。(Carney陳述書、パラグラフ18 )こうすればBEの検索の速度は上がり、BEは競売一般を追跡でき、特定の競売、競売の種類に動きがある時、または新しい物件が追加される時に、自動的にそのユ−ザ−に最新情報を伝えることができる。(同上)

1999年の8月の終わりか9月の初めに、eBayはBEに電話して、BE がそのサイトにeBayの競売リストを掲示することを止めるように求めた。(同上、パラグラフ9; Rock陳述書、パラグラフ 5)BEはそうすることに同意した。(Rock陳述書、パラグラフ5)1999年10月、BEは他の競売集合サイトがeBay競売に関する情報を含めていることを知った。(Carney陳述書、パラグラフ12)1999年11月2日、BEは新聞発表をして、自分のサイトにeBayの競売リストを含めることを再開したと述べた。(Rock陳述書、証H)1999年11月9日、eBayはBEに書簡を送り、BEの活動は無断のものであると再主張し、BEがeBayサイトにアクセスすることを止めるように主張し、BEの活動は民事侵害を構成すると主張し、BEの活動にライセンスを与えようと申し出た。(同上、証 I)eBayとBEは今度もライセンスの条件に合意できなかった。その結果、eBayはBEのeBayサイトへのアクセスを遮断しようとした。1999年11月末までに、eBayは、BEがeBayシステムに質問するために用いていると思った合計169のIPアドレスを遮断した。(Maynor陳述書、パラグラフ 12 )BEはeBayのIP遮断を回避するために、プロキシーサーバーを用いてeBayサイトのクロ−ルを続けることを選んだ。(Mundy証言録取書 at 271:18-19 (「我々は結局交替的(rotating)プロキシーサーバーを採用した。」))

BEデ−タベ−スに含まれる競売物件の約69パ−セントはeBayでホストされている競売からのものである。(Carney陳述書、パラグラフ17)BEは、eBay競売を含めることを止めれば、そのユ−ザ−の3分の1を失うことになると見積もっている。(同上)

両当事者は、BEが1日約10万回eBayサイトにアクセスしたことに意見が一致している。(Felton陳述書、パラグラフ 33 )eBayは、BEの活動が1999年10 月と11 月の或る期間中、 eBay が受取った依頼数の1,53 パ−セントに上り、eBayが転送した全デ−タの 1.10 パ−セントに上ったと主張する。(Johnson-Laird 陳述書、パラグラフ 64)BEは、BEの活動は eBayの受取った依頼の1.11パ−セントに過ぎず、eBayの転送したデ−タの0.74パ−セントに過ぎないと主張する。(Felton陳述書、パラグラフ 60)eBayの主張では、2000年 2月20日までにBEの活動は27パ−セント減少し、依頼の0.74パ−セント、デ−タの0.61 パ−セントになった。(Johnson-Laird 陳述書、パラグラフ70-71 ) eBay は、BEの活動による損害額は、1999年の7か月と2000年の最初の3か月を含む 10 か月間に、合計45,323 ドルから 61,804 ドルの間になると主張する。(Meyer 陳述書、パラグラフ28)しかしながら、その計算は、BEがeBayの蓄積の最大の利用が全10か月間継続すると仮定しているから、欠陥があるように思われる。(同上)その上、その計算はBEの活動によるeBayのコストの増加を計算しようとしないで、BE活動にeBayの経費の比例配分額を当てている。(同上)eBayはBEの活動による特定の損害額の増加分を主張していない。(参照、Rock宣誓録取書、192:8-10)[注4]

Yahoo!、Google、ExciteやAlta Vistaのような主要インタ−ネット検索エンジンは、ロボット排除基準を尊重するようである。(Johnson-Laird 陳述書、パラグラフ 81-85)[注 5]

eBayは現在、以下9つの訴訟原因に基づき、BEがeBayのコンピュ−タ・システムへのアクセスを禁止する仮差止救済を申立てている。すなわち、侵害、虚偽の広告、連邦および州法上の商標の希薄化、コンピュ−タ詐欺および濫用、不正競争、不正目的使用、経済的利益の見込みの妨害、および不当利得である。しかしながら、eBayは独立して、または代替的にも、eBayサイトから取られたデ−タのBEによる利用方法の制限に限定された差止救済を申立てていない。[注 6]

U。法的基準

仮差止命令の救済を受けるには、申立人は「本案勝訴の見込みおよび回復不能の損害の可能性か、または本案に達する重大な問題が提起されていて、かつ困難の均衡が著しく自分に有利に傾くこと、のいずれか」を証明しなければならない。Sega Enterprises Ltd. v. Accolade, Inc., 977 F.2d 1510, 1517 (9th Cir.1992)(引用判例省略)。上記基準の選択肢は、2つの別個の基準というよりはむしろ「単一の連続体の両極端」を表している。Benda v. Grand Lodge of Int'l Ass'n of Machinists & Aerospace Workers, 584 F.2d308, 315 (9th Cir.1978) 。「適用されるべき基準の決定における重大な要素は、両当事者に対する相対的困難である。損害の均衡が決定的に原告に傾くならば、その時には原告は、均衡がそれ程決定的でない場合ほど強固な本案勝訴の見込みを証明する必要はない。Alaska v. Native Village of Venetie, 856 F.2d 1384, 1389 (9th Cir. 1988)。「重要な問題」とは、それに関して申立人が「本案勝訴の相当な見込み」を持つものである。

Sierra On-Line,Inc. v. Phoenix Software, Inc., 739 F.2d 1415, 1421 (9th Cir.1984) 。一般的に、「損害の均衡」の評価は、「勝訴の見込みの分析」に先行しなければならない。何故なら、損害の均衡の評価があって初めて、裁判所は原告の勝訴の見込みの証明がどの程度強力かつ実質的でなければならないかを知ることができるからである。参照、Village of Venetie, 856 F.2d at 1389。

V。分析

A 。損害の均衡

eBayは、もし仮差止命令による救済が与えられなければ、以下4つの型の回復不能の損害を被ることになると主張する。 (1)BEによる自動代行者(automated agents) の使用の結果、そのコンピュ−タ・システムの容量が失われたこと;(2)BEの誤解を生むような掲示によるeBayの評判と信用に対する損害;(3)eBayの商標の稀薄化;(4)BEの不当利得。[注 7](申立書、at 23:18-25)BEが被ることになると主張する損害は2つの種類に分けることができる。第一の型の損害は、BEの自動質問プログラムのためにeBayのコンピュ−タ・システムに負担がかかる結果被ることになると、eBayが主張する損害(「システムへの損害」)である。第二の型の損害は、これらの自動質問プログラムの使用によってBEが入手する情報に関するBEの不実表示の結果被ることになる、とeBayが主張する損害(「信用への損害」)である。

上記のように、eBayから得た情報のBEによる使用の方法を特に独立して取扱うための差止命令を、eBayは求めてはいない。[注 8]eBayのコンピュ−タ・システムにロボットを使ってアクセスしなくても、eBayの競売デ−タベ−スの内容について不実表示をすることによって、またはeBayの商標を濫用することによって、BEは信用への損害を与えることができるであろう。その上、eBayのデ−タベ−スの頻繁かつ完全な反復的検索を許すこと(それはシステムへの損害を悪化させると推定される)、BEのリストの正確性について適切な否認を要求すること、またはBE によるeBayの商標の使用を制限することは、いずれもBEがeBayのデ−タベ−スにアクセスすることを差止めるという思い切った救済を求めることなく、信用への損害の可能性を減少または排除するであろう。[注 9] eBay は信用への損害と主張するものに対する差止命令による救済を、独立して、または代替的に求めていないのであるから、当裁判所は損害の均衡の分析には信用への損害と主張されるものを含めず、また当裁判所は、勝訴見込みの分析において信用への損害と主張されるものに基づく訴訟原因の本案を取り上げない。

eBayによれば、 BE のウエブ・クロ−ラ−による eBay のサ−バ−への負荷は、 eBay のリスト・サ−バ−への負荷全体の 1.11 パ−セントから 1.53 パ−セントの間になる。

eBayは、BEの現在の活動による経済的損失、および BE その他のクロール行為全体の結果である損害の可能性の両方を主張している。経済的損失の主張に当たって、 eBay の議論は、 eBay は自分のコンピュ−タ・システムを創るためにかなりの時間、労力と金銭を費やしたこと、および BE は eBay のシステムのうち BE の使用する部分の支払いをしなければならないということである。 eBay は自分の全システムを維持する費用の比例配分額を BE の活動によるものとする。しかしながら、 eBay は BE の活動によってこれらの費用の発生が増加したとも、また特定のサ−ビスの分裂(disruption) を BE の活動に帰すことができるとも述べていない。[注 10 ] eBay は、物件1つを入手する費用の比例配分額が、無断使用による損害額の適正な基準になるという命題の根拠を提示していない。これとは対照的に、カリフォルニア州法は、損害額の適正な基準はその行為によって生じた現実の損害であるということに確定しているようである。

訴えられている行為が、占有または占有権の実質的妨害には至らないが、その動産またはその使用への干渉、またはそれに対する損害で構成される場合、その所有者は、侵害または準侵害に対する訴訟原因を有し、その財産の減損またはその使用の損失により生じた現実の損害額のみを回収することができる。

Zaslow v. Kroenert, 29 Cal. 2d 541, 551 (1946)。その上、たとえ BE が eBay に増加する維持費を負担させているとしても、計算できるであろう金銭損害賠償は、一般に仮差止命令の適切な根拠ではない。参照、例えば、Sampson v. Murray, 415 U.S. 61, 90(1974)。また eBay は、本件が金銭損害賠償が衡平法上の救済の根拠となる特別な型の事件であるという必要な証明もしていないようである。参照、 In re Estate of Ferdinand Marcos,Human Rights Litigation, 25 F.3d 1467, 1480 (9th Cir. 1994) (「地方裁判所は、原告が金銭損害賠償では被告の支払不能が差し迫っているため不十分な救済にしかならないこと、または被告が敗訴判決を避けるために或る種の資産の秘匿または分散を行っていることを証明できる場合には、仮差止命令を発する権限を有する。」)

                                  

eBayの損害の主張は、BEの活動を競争者の店の価格を調べるために1日 10 万のロボットの大群を送っていることに等しい、と考えなければならないという議論に一部基づいている。この類推は写実的ではあるが、適切ではないと思われる。形式的区別ということは認めるけれども、「レンガとモルタル」[注 11 ]の店への無断のロボット侵入者は、不動産に対する侵害を犯していることになろう。営業所への進行中の侵害に対する適切な救済は仮差止命令であろうことについては疑いはないようである。参照、例えば、State v.  Carriker, 214 N.E.2d 809, 811-12 (Ohio  App.1964) (オハイオ州の刑事侵害法の解釈をして、商事の被誘引者で、買う気もないのに、入れとの誘引が取消された後に、自分自身の利益のために他人の営業所を使用する者を含むとする);General Petroleum Corp. v. Beilby, 213 Cal. 601, 605 (1931) 。もっと重要なことは、その類推が正確であるためには、そのロボットはその店の 100人の顧客ごとに 2人以下でなければならないであろうし、そのロボットは顧客の買物経験を妨害しないこと、またロボットは顧客の目にも入らないことさえあろう。そのような状況の下であれば、ロボットが回復不能の損害の恐れとはならないという正当な主張ができる。しかしながら、 eBay の差止命令による救済を受ける権利はまた、遥かに強い議論に基づいている。

仮に BE の活動が阻止されることのないまま継続を許されるとすれば、そのことは他の競売の集合人(aggregators)を勇気づけて eBay システムの同様な反復的検索を行わせ、その結果 eBay はシステムの遂行能力の減少、システムの利用不能、またはデ−タの損失による回復不能の損害を被るであろう。(参照、Spafford陳述書、パラグラフ 32[注 12 ];Parker陳述書、パラグラフ 19 [注 13 ];Johnson-Laird 陳述書、パラグラフ 85 [注 14 ]) BE は、システムの遂行能力の減少、システムの利用不能、またはデ−タの損失が、利益の損失と顧客の信用の喪失より成る回復不能の損害を eBay に与えることになろうということを真剣に争っていないようである。利益の損失および顧客の信用の喪失による損害は回復できない。何故ならそれは容易に計算も補償もできず、それ故差止命令による救済の適切な根拠となるからである。参照、例えば、People of State of California ex rel.Van De Kamp v. Tahoe Reg'l Planning Agency, 766 .F.2d 1316, 1319 (9th Cir.1985) 。本件と同様に、仮差止命令による救済が認められないと、訴えられている活動の増加が助長され、そのような増加は回復不能の損害の強い見込みをもたらすであろう場合には、原告は少なくとも回復不能の損害の可能性を証明したことになる。[注 15 ]

特許権侵害の事案において、連邦巡回区控訴裁判所は、仮差止命令が拒否され、侵害者がそれによって力づけられ、訴訟係属中に特許権を侵害する場合に生ずるであろう損害を、少なくとも部分的に仮差止命令の根拠としてもよいと判示した。参照、Atlas Powder Co.v. Ireco Chems., 773 F.2d 1230, 1233 (Fed. Cir.1985)。仮差止命令による救済がなければ、「侵害者は訴訟が係属している間中、強制的ライセンシ−になることができる」。同上 連邦巡回区控訴裁判所の判決理由は説得的である。「特許権の性質そのものは他人を排除する権利である … 。当裁判所は、有効性と継続的侵害が明らかに、本件におけるように、明確に立証された場合には、現在回復不能の損害があると推定されると判断する。このように判断しないならば、特許権の根拠となる公序良俗に反することになろう。」Smith Intern., Inc. v. Hughes Tool Co., 718 F.2d 1573, 1581(Fed. Cir.1983)。(脚注省略)。同様に動産の所有権概念に基本的なものは、他人を排除する権利である。参照、Kaiser Aetna v. United States, 444 U.S. 164, 176(1979)(「他人を排除する権利」を「財産権と通常呼ばれる権利の束の中で最も本質的な棒の1本である。」という)。動産に対して進行中の侵害に対する仮差止命令による救済が利用できないとすれば、侵害者が訴訟を長引かせている間中、その侵害者は他人の動産を使用する強制的ライセンスを得ることができよう。

BEが、動産に対して進行中の侵害に基づく仮差止命令を支持する判例はほとんどない、と述べているのは正しい。これに反して、カリフォルニア州においては、差止命令が不動産に対する継続的侵害に対する適切な救済であることは基礎的法原則である。参照、Allredv. Harris, 14 Cal.App. 4th 1386, 1390 (1993)(5 B.E. Witkin, Summary of        California Law, Torts §605 (9th ed. 1988)を引用)もし eBay が限られた座席数しかないレンガとモルタル造りの競売場であるとすれば、 eBay は、その席を入札してくれそうな人に取っておき、どの物件にも入札する意思のない個人(またはロボット)の入場を断り、 eBay が物理的に排除できなかった顧客でない侵害者に対して仮差止命令による救済を求める権利を有するようである。分析上難しいのは、加害者はコンピュータ・システムの進行中の侵害を行うことができることであって、その侵害は、動産に対する侵害は進行中であっても恐らく横領にまでは至らないのであるから、動産への侵害という伝統的な概念よりむしろ、不動産侵害の伝統的概念にもっと似ている。[注 16 ]当裁判所は、本件における事情の下で、コンピュ−タ・システムから他人を排除する eBay の基本的財産権に対するBEによる進行中の侵害は、仮差止命令の根拠となるに十分な回復不能の損害を生ずる可能性があると結論する。

BEは、たとえ eBay に回復不能の損害の推定を受ける権利があるとしても、その推定には反証が許されると論ずる。推定は、当事者が訴えられている活動に従事するライセンスを与える行動様式に従っていて、その結果その権利の侵害は差止命令によるよりはむしろロ−ヤルティ−によって償うことができると期待することは合理的であろうという証拠、または当事者が訴えの提起を不当に遅らせ、そのため回復不能という考え方を否定するという証拠によって、反駁することができる。参照、Polymer Technologies, Inc. v.     Bridwell, 103 F.3d 970, 974 (Fed. Cir. 1996)(特許権侵害の事案において回復不能の損害の推定を論ずる)。 BE は、eBay が[競売情報の]集合者にそのサイトのクロ−ルをライセンスする行動様式に従い、同時に救済を求めるのを遅らせたその双方を行った、と主張した。以下に述べる理由により、当裁判所は eBay の限られたライセンス活動も、eBay が司法介入なしに問題を解決しようと試みる間、差止命令による救済を求めるのを遅らせたことのいずれも、回復不能の損害の可能性を反駁するのに十分ではないと認定する。

もしeBayの回復不能の損害の主張が、BEが現在行っているクロ−ル活動によって引起こされる損害の可能性のみを前提しているとすれば、eBay が他の者にeBayサイトをクロ−ルすることをライセンスしたという証拠は、 BE の活動の結果eBayに回復不能の損害を与えることにならないであろうことを暗示するであろう。しかしながら、主張されている回復不能の損害の主な理由は、もし eBay [訳注: BE ?]が eBay サイトのクロ−ルを引き続いて行うことを許されるとすれば、eBay は頻繁かつ規律のないクロ−ル行為を助長し、eBayのシステムが回復不能の損害を被る点にまで至るであろうということである。 eBay が来る者すべてに、無差別にライセンスを与えたという証拠はない。むしろ、eBay はeBayのライセンス契約の条件を順守することに同意した集合サイトの数を限定して、クロ−ル行為を許すことを注意深く選択したようである。「そのような[限定された]ライセンスの存在は、来る者すべてに与えられる一般的ライセンスとは異なり、簡単に計算できる料金と交換して製品の配布の規制を一切放棄する決定の証拠にはならない。」Ty, Inc.v. GMA Accessories, Inc., 132 F.3d 1167, 1173 (7th Cir.1997)(著作権侵害の事案における回復不能の損害の推定を論ずる)。eBay のライセンス活動は、 eBay サイト上のクロ−ル活動の分量と性質を限定する方向に向けられていたようである。そのようなライセンス行為は、 eBay サイトの白紙委任状的クロ−ル行為が回復不能の損害の恐れを生じないという推測の根拠にはならない。

eBayが最初に BE について知ったのは1997年の終りか1998年の初めで、BEが eBay の用いているのと同じ広報活動会社を雇おうとした時であった。(参照、Ploen 陳述書、証 1)本申立は 2000 年 1月18日に提出された。説明のない 2年の遅延が主張されている損害の回復の困難性について重大な疑問を提起するのは確かであろう。参照、Playboy Enters.,Inc.v. Netscape Communications Corp., 55 F. Supp. 2d 1070, 1090 (C.D.Cal.1999) (わずか 60 日から 3か月の遅延でも、回復不能の損害の推定の反証に十分であると判断されたという)。本件においては、諸事情から如何なる遅延も、 eBay が司法的介入なしにこの争いを解決しようとする誠実な努力の結果であることが証明され、回復不能の損害の可能性の認定の反証にはならない。

1999年 4月、 eBay は両当事者のライセンスの交渉中、90日間 BE に eBay サイトをクロ−ルすることを許すことに同意した。1999年8月末または9月の初め、両当事者のライセンス交渉が成立しなかった後、 eBay は BE に eBay サイトのクロ−ルを止めるように求め、BE もそれに従った。1999年11月 2日になって初めて、 BE は新聞発表を行い、 BE が自分のサイトに eBay の競売リストを含めることを再開したと述べた。それに応えて、1999年11月 9日 eBay は BE に再度書簡を送り、 BE の活動は無断であると伝えて、再びBEの活動にライセンスを申し出た。[注 17 ]eBay と BE がライセンスの条件につき今度も合意できなかった後、 eBay は BE による eBay サイトへのアクセスを遮断しようとした。1999年11月末までに、150 以上の IP アドレスを遮断したにもかかわらず、BE が交替するプロキシーサーバーを通じて eBay システムにクロ−ルすることを、eBay は防ぐことができないことが明らかになった。自力救済の試みに失敗したので、eBay は1999年12月10日本訴を提起し、 5週間後本申立を提出した。 eBay の主な懸念は、もしBEが無断行為を続けることが許されるならば、その結果生じるであろうクロ−ル活動増加の見込みの恐れのあることであり、それに加えて、 eBay が司法的介入なしにこの争いを解決しようと繰り返し試みたこと、他方 eBay が自分の財産を守ろうとするのを BE が引き続き妨害しようとしたこと、これらから当裁判所は eBay が仮差止命令による救済を求めるに当たって遅延したことは正当化されると確信する。

BEは、たとえ eBay が仮差止命令を与えられない場合に回復不能の損害を被るとしても、差止命令の与えられた場合には BE はもっと大きな回復不能の損害を被るであろうと主張する。 BE によれば、 eBay デ−タベ−スへのアクセスができないと、 BE のリストの物件の 3分の 2が減少し、BE の価値の 8分の 1、すなわち 8千万ドルから 7千万ドルの減少の結果となるであろうという。(Sweeny陳述書、パラグラフ 42, 43 )BEへの損害の可能性は軽微とは思われないけれども、BE は eBay サイトのクロ−ル行為を自主的に止めていた期間中、回復不能の損害を被ったようには見えない。BE が eBay サイトへの自動的質問をできないようにしても、 eBay サイトからの情報を含む集合サイトをBE が維持することを妨げることにはならない。如何なる経済的損害の可能性も、適切な保証書を差し入れることによって適正な取扱いとなるのである。

その上、進行中の侵害を止めるように強制されることから生ずると主張される損害は、法律的には認められないように思われる。著作権侵害の事案において、一旦原告が本案勝訴の見込みの強いことを証明すれば、被告が侵害の継続を禁止する仮差止命令を受けることから生ずる被告の損害は法的関連性がない。参照、Triad Sys.Corp. v. Southeastern  Exp.Co., 64 F.3d 1330, 1338 (9th Cir.1995)(被告は「侵害行為の中止を適正に強制される時に、被告が被る損害について苦情をいうことはできない。」)第 9巡回区控訴裁判所は、原告が著作権侵害の訴訟の本案勝訴の見込みの強固な証明を一旦すれば、「差止命令は[被告の]ビジネスに壊滅的となるであろうということ」を地方裁判所が考察したことさえ、破棄すべき誤審であると判示した。Cadence Design Sys.,Inc. v.Avant! Corp.,125 F.3d 824,830 (9th Cir.1997) 。これらの事件における理由づけは、原告の財産権の明らかな侵害に基づいて事業様式(business model)を樹立する被告は、その被告がその財産権を尊重するように強制された場合にはその事業は損害を被ると主張して仮差止命令を打破することはできない、というもののようである。参照、Concrete Mach. Co.,Inc. v. Classic Lawn Ornaments, Inc., 843 F.2d 600, 613 (1st Cir. 1988)(「強固な勝訴の見込みが証明される場合、その時には裁判所は、たとえ被告が相対的により大きい負担を負うことになろうとも、差止命令を発付すべきである。蓋然的侵害者は、著作権者の犠牲において違法行為を継続し、引き続き利得することを絶対に許されるべきではない。」)連邦巡回区控訴裁判所は、特許権侵害に関して同様な原則を打ち立てた。参照、    Windsurfing Int'l Inc. v. AMF, Inc., 782 F.2d 995, 1003 n.12 (Fed. Cir.1986)(侵害すると認定された製品に基づいて事業を築くことを選択する者は、侵害の継続を禁止する差止命令がそのように選択された事業を破滅させようとも、訴えて審理を受けることはできない。」)従って、当裁判所は、 eBay が少なくともシステムの回復不能の損害を被る可能性を証明し、 BE は困難性の均衡が自分に有利に傾いていることを証明していない、と結論する。

B 。勝訴の見込み

上記の通り、eBay はその訴訟原因 9個全部について仮差止命令を求める申立をしている。この 9個の訴訟原因は、以下の 8つの法理に対応する。(1) 動産の侵害、(2) Lanham法15 U.S.C.§1125(a) 下の虚偽の広告、(3)連邦法および州法上の商標の稀薄化、(4) コンピュ−タ詐欺・濫用法 18 U.S.C.§1030の違反、(5) 不正競争、(6) 不正目的使用、(7) 将来の経済的優位の妨害、(8) 不当利得。当裁判所は、 eBay が求める差止命令による救済の根拠となる侵害の主張において、勝訴する十分な見込みを証明したと認定する。当裁判所は eBay が侵害の主張に基づき求める救済を受ける権利を有すると認定するのであるから、当裁判所は、その他の主張の本案も、またはこれらのその他の州法上の訴訟原因の多くが連邦著作権法によって専占されているという BE の主張も、取り上げない。当裁判所はまず侵害の主張の本案を取り上げ、次いで侵害の主張の著作権法による専占に関するBEの主張、最後に公益を取り上げる。

1 。侵害

動産に対する侵害は、「動産の占有に対する故意の妨害が侵害の近因となっている場合に成立する」。Thrifty-Tel v. Beznik, 46 Cal.App. 4th 1559, 1566(1996) 。動産の侵害は、「カリフォルニア州では不法行為理論として用いられることはほとんどないけれども」最近適用されて、長距離電話線の無断使用を含めた。同上。特定的に、同裁判所は「[被告の]活動によって生み出された電子信号は、侵害の訴訟原因の根拠となるに十分な実体性を有する」と述べた。同上 at n.6 。故に、 BE が eBay のコンピュ−タ・システムから情報を検出するために発した電子信号も、侵害の訴訟原因の根拠となるに十分な実体性を有する蓋然性があるようである。

コンピュ−タ・システムへのアクセスに基づく侵害の主張で勝訴するためには、原告は以下のことを立証しなければならない。(1) 被告がコンピュ−タ・システムに対する原告の占有権を故意にかつ無断で妨害したこと、(2) 被告の無断使用が原告の損害の近因となったこと。参照、Thrifty-Tel, 46 Cal. App. 4th at 1566 ;次も参照、Itano v.ColonialYacht Anchorage, 267 Cal. App. 2d 84, 90 (1968) (「訴えられている行為が動産への干渉により成る場合、『所有者は侵害または準侵害の訴訟原因を有し、その財産の損傷またはその利用の喪失によって被った現実の損害額だけを回収することができる』」)  (Zaslow v. Kroenert, 29  Cal. 2d 541, 550(1946)を引用)。本件において eBay は、両要件を証明する強固な見込みを証明し、究極的にその侵害の主張の本案で勝訴するに十分な証拠を提出した。

a 。 BE による無断の妨害          

eBayは、BEの使用は無断で故意的であると主張する。 eBay は正しい。 BE は、自分が eBayの電子デ−タに接続し探索するために、自動的コンピュ−タ・プログラムを用いたことを争っていない。 BE は、他の競売集合者が eBay の競売をそのリストに含めていたので、自分も eBay が BE にそのような行為を止めるように要求した後も、 eBay のウエブ・サイトの「クロ−ル」を続けたことを認めている。

BEは、eBay のウエブ・サイトは一般にアクセスできるのだから、自分がそのサイトを侵害するはずはない、と主張する。 BE の主張は説得性がない。 eBay のサ−バ−は私有財産であって、それへの条件付きのアクセスを eBay は一般人に認めている。 eBay はBEが行った型の自動的アクセスを一般的に許してはいない。事実 eBay は自動的にアクセスする者(automated visitors)に、彼らのアクセスは許されていないと明示的に通知している。「一般に、カリフォルニア州は、被告が同意の範囲を超えた場合、侵害の主張を確かに認めている。」 Baugh v. CBS, Inc., 828  F.Supp. 745, 756 (N.D.Cal. 1993)。

たとえ BE のウエブ・クロ−ラ−が eBay のシステムに個々の質問をすることを許されているとしても、そのウエブ・クロ−ラ−は繰り返し質問することによってロボットのように行動し始めた場合、その同意の範囲を超えたのである。参照、City of Amsterdam v.  Daniel Goldreyer, Ltd., 882 F.Supp. 1273, 1281 (E.D.N.Y. 1995)(「他人の同意を得て動産を使用する者は、同意を超える使用によって生じ、またはその使用中に発生する動産の損害に対して、侵害の責任を負う。たとえその使用が横領にならないとしても。」)その上、 eBay は、反復的かつ明示的に BE に対し、 eBay のコンピュ−タ・システムのBEによる使用は許されていないと通知した。 BE が質問を送るのにプロキシーサーバーを介した理由は、 eBay がこの無断アクセスを止めようとしたのを回避するために尽きる。当裁判所は、 BE の活動は eBay の許した使用の範囲を十分に超えていて、侵害を証明する目的には許されないものである、と結論する。参照、 Civic Western Corp. v. Zila        Industries, Inc., 66 Cal.App.3d 1, 17 (1977)(「しかしながら、当事者が制限的同意に従い立ち入ったとしても、 … その限度を超えるに至った場合には、侵害が生じ得ることは明らかと思われる … 」)(不動産に対する侵害を論じて)。

eBayは、 BE が eBay のコンピュ−タ・システムに対する占有権を妨害したと主張する。eBayには現在実質的妨害を証明し得る見込みがないようであるけれども、そのような証明は要求されていない。占有の実質的妨害にまでは至らないが、他人の動産またはその使用に対する干渉より構成される行為は、動産に対する侵害の訴訟原因を証明するに十分である。 参照、Thrifty-Tel, 46 Cal.App. 4th at 1567(その不法行為を横領と区別する)。当裁判所は、干渉を構成するに必要な占有の妨害の厳密な程度について若干確信を欠くことを認めるけれども、 BE の行為が eBay のコンピュ−タ・システムの使用にまで至っていることを、 eBay が証明できることは争いがないようである。従って、 eBay は BE によるeBayのコンピュ−タ・システムの使用が、 eBay の占有権に対する無断かつ故意の妨害であったという主張の本案について勝訴する見込みのあることを強固に証明した。

b 。eBayのコンピュ−タ・システムへの損害

侵害者はその侵害が動産の状態、品質または価値を減殺する場合、賠償責任がある。参照、Compuserve,Inc. v. Cyber Promotions, 962 F.Supp.1015 (S.D.Ohio 1997)。動産の品質または価値は「たとえ被告の行為によって物理的に損害を受けなくても、減殺され」るであろう。同上 at 1022。リステ−トメントは損害の要件に対して次の説明を与えている。

               

動産の占有者がそれの不可侵性に対して有する権利は、土地の占有者の同様の権利とは異なり、その動産への損害のない妨害に対して名目的損害賠償を求める訴えによっては法的保護を与えられない。他人の動産を妨害する行為者に賠償責任を課すためには、その者の行為が占有者の何か他の権利であってもっと重要なものに影響を与えなければならない。故に、他人の動産を故意に妨害する者は、その妨害がその動産の物理的状態、品質、または価値に対するその占有者の実質的に重要な権利に損害を与えるか、またはその占有者が実質的な期間その動産の使用を奪われ、またはその占有者の何か他の法的に保護される権利が影響を受けた場合に限り、賠償責任を課せられる … 。占有者の単なる動産の不可侵性に対する占有者の権利の十分な法的保護は、損害のない干渉に対してであっても自分の権利を守るために合理的実力を行使する特権によって与えられる。

Restatement(Second)of Torts §218 cmt.e(1977) 。

eBayは、 BE の活動が eBay のコンピュ−タ・システムの品質または価値を減殺したと証明できる見込みを有する。 BE の活動は、原告の帯域幅(bandwidth)およびサ−バ−の容量(capacity)の少なくとも一部分を消費する。 BE に責任がある eBay サイトへの質問のパ−センテ−ジについては若干の争いがあるけれども、 BE は原告のコンピュ−タ・システムに 1日約 8万から10万の依頼を送信することを認めている。(Ritchy陳述書、証 3  at 391:11-12) eBay は、この消費の結果 eBay のコンピュ−タ・システムに何らかの物理的損害が生じていると主張していないし、またこの使用に基づき収入または顧客を失ったかもしれないという主張の根拠となる証拠も提出していないけれども、[注 18 ]eBayの主張は、 BE の使用は価値のある帯域幅と容量を使用することによる eBay の動産の盗用であり、必然的に eBay が自分自身のためにその容量を用いる能力を弱めることになるというのである。参照、CompuServe, 962 F.Supp. at 1022 (「[原告が]そのコンピュータ機器(equipment)から実現する如何なる価値も、その機器が原告の加入者の本拠(base) に提供できる(serve )範囲から全面的に引出される。」)。

                          

BEは、自分の検索は原告のコンピュ−タ・システムへの無視できる程度の負荷に相当し、eBayのコンピュ−タ・システムの状態または価値への侵害を構成するに必要な程度の損傷に達していない、と主張する。しかしながら、 eBay のサ−バ−とその容量は動産であり、BEの検索がこの財産の一部を使用することには争いがない。たとえ BE が主張するように、BEの検索が eBay のコンピュ−タ・システムの容量のうちほんの少量を使うにすぎないとしても、 BE はそれにもかかわらず、自分自身の目的のために eBay の動産のその部分を使用する能力を eBay から奪っている。法は他人の動産を使用するそのような権利を認めていない。従って、 BE の行為は eBay に損害を与えたようであり、 eBay に損害を与え続ける蓋然性があるようである。仮に当裁判所がこれと異なる判断をするとすれば、その他の競売集合者が eBay サイトをクロ−ルすることを助長し、恐らく eBay の顧客から有効なアクセスを奪う点にまで至るであろう蓋然性が生じるであろう。もし仮差止命令による救済が拒否され、他の集合者が eBay サイトのクロ−ルを始めるとすれば、 eBay のコンピュ−タ・システムの負荷がその状態または価値の実質的損傷となるであろうことは、ほとんど疑いがないようである。カリフォルニア州の法律は、救済を求めて当裁判所に訴えるのを、そのような災害の発生まで待つことを eBay に要求していない。当裁判所は、eBayが侵害の主張の本案について勝訴する見込みのあること、かつ仮差止命令による救済が与えられなければ、回復不能の損害を被る少なくとも可能性があることの強固な証明をしたと結論する。よって eBay は、仮差止命令による救済を受ける権利を有する。

2 。著作権の専占

BEは、侵害の主張が eBay によるその他の州法上の訴訟原因と共に、「 eBay が最初提出したが現在は退けられた著作権侵害の主張に類似し、その各々の主張は Biddger's Edge が、連邦著作権法の範囲内の権利である eBay の競売リストをコピ−するというeBayの主張に基づいている」と主張する。反論書、at 8:10-12。 BE が、侵害の主張はBEがeBayのコンピュ−タ・システムに無断でアクセスし使用しているという単なる事実よりもむしろ、BEが eBay のコンピュ−タ・システムにアクセスすることによって集めている情報を用いて行っていることから生じていると主張する限度で、事実に正確性を欠く。

州法上の訴訟原因が[連邦]著作権法によって専占されるのは、(1) 州法上主張されている権利が著作権法によって保護されている権利と「同等」である場合、かつ(2) 当該著作物が著作権法 102条および 103条に定める「目的物」の範囲に入る場合である。Kodadek v. MTV Networks Inc., 152 F.3d 1209, 1212 (9th Cir.1998)。「同等でないためには、州法上の権利に、行為の性質を変え、その結果著作権侵害の主張とは質的に異なるものとする別の要素がなければならない。」Xerox Corp. v. Apple Computer, Inc., 734 F.Supp. 1542, 1550 (N.D.Cal.1990) 。本件において、eBayは自分のコンピュ−タ・システムを許可なく BE に使用させない権利を主張している。有形の動産の使用から他人を排除する権利は、著作権によって保護される如何なる権利とも同等ではなく、故に、侵害を著作権侵害の主張とは質的に異なるものとする別の要素を構成する。しかし次を参照、 Ticketmaster Corp. v. Tickets.com,Inc., No.CV-99-7654 (C.D.Cal.minute order filed Mar.27, 2000) (無断のインタ−ネット情報の集合体に基づく侵害の主張を、著作権法に専占されたものとして退ける)。

3 。公益

差止命令を発すべきかどうかを決定する伝統的衡平法上の基準は、公益が差止命令発付をする方に賛成するかどうかを含む。American Motorcyclist Ass'n v. Watt, 714 F.2d  962,965(9th Cir.1983) 。両当事者は、eBayによれば動産の権利および知的財産権が尊重されないならば、または BE によればインタ−ネット上で公表された情報が広く一般にアクセスし用いることができなければ、インタ−ネットは機能しなくなる、と主張するさまざまの陳述書を提出している。当裁判所は、インタ−ネットはこの訴訟の結果にかかわらず存続するばかりでなく、成長と発展を続けると思うけれども、当裁判所はまた、インタ−ネットが情報の交換を奨励することと創造の経済的誘因を維持することとの間の、どんな均衡が公益を最大化するかを決定するには適してはいないことも認める。ことに、仮差止命令の段階で利用できる限られた記録に基づいて、当裁判所は一般の公益が仮差止命令を可とするか、それとも否とするかを決定することはできない。

BEは、 eBay 勝訴の仮差止命令を発付することは、eBayが連邦反トラスト法違反をして不正競争行為を行ったと主張されているのだから、一般の公益を害することになる、とより特定的な主張をしている。第 9巡回区控訴裁判所は、仮差止命令を発すべきかどうかを評価するに当たって、地方裁判所は一旦原告が本案勝訴の見込みを証明した以上、反トラスト法上の反訴の本案を審理する義務はないと述べた。参照、Triad Sys.Corp. v.Southeastern Exp. Co., 64 F.3d 1330, 1336 n.13 (9th Cir.1995) (著作権侵害の主張を論じて)。商標権侵害に基づく仮差止命令の事案において、[商標権の]不正使用が積極的抗弁である場合には、不正競争行為が審理されることは適当であろうけれども、参照、Helene Curtis Indus. v. Church & Dwight Co., 560 F.2d 13255 (7th Cir. 1977) 、本件においてそれを考察することは適切ではないと思われる。何故なら、動産に対する侵害に対して同等の積極的抗弁が出ていないからである。従って、当裁判所は公益が仮差止命令の発付に反対する方に傾かないと結論する。

W。決定

Bidder's Edge 、その役員、代理人、使用人、従業員、訴訟代理人およびこれらの者と共同にまたは参加して行動する者で、直接送達その他によって本命令の現実の通知を受ける者は、これによって、本件の審理中、 eBay の競売デ−タベ−スのいずれかの部分をコピーする目的で、 eBay のコンピュ−タ・システムまたはネットワ−クにアクセスするために、書面による許可を得ることなく、自動質問プログラム、ロボット、ウエブ・クロ−ラ−その他同様の装置を用いることを禁ずる。仮差止命令の条件として、差止が後になって誤りであったことが判明した場合、被告が受けた損害の賠償の支払いを確保するために、 eBay には金 2百万ドルの保証金の差出を命ずる。本決定は登載の日より 10 日後発効するものとする。

本決定は、 BE が自動質問プログラム、ロボット、ウエブ・クロ−ラ−その他同様の装置による以外で、 eBay のサイトから得られた情報を用いることを排除するものではない。当裁判所は、 BE による商標権侵害、商標権の稀薄化と主張されるもの、およびその他の主張に基づき eBay サイトへのアクセスを禁ずる eBay の仮差止命令の請求を却下する。本却下は、BEの使用が eBay の保護された何らかの権利を侵害するという説に基づき得られた情報の使用を、制限または条件付ける差止命令の申立を妨げない。 

                                 

[注 1] 2000年 4月21日、被告 Bidder's Edge, Inc.は反対答弁(reply )における事     実の主張に答えるため、補充的陳述書の提出の許可を求める一方的申立を提出した。当裁判所は、合理的な注意を払っていれば、 BE は少なくとも審理日までに陳述書を作成できたであろうと思うけれども、同陳述書は主要なインタ−ネット検索エンジンで行われた 4つの検索の結果より成るにすぎないものである。 eBay の反論は、 BE の陳述書の提出より生ずるであろう不利益を取り上げていない。従って、 BE の申立は認められる。

[注 2] 相当量の情報を得るためにインタ−ネット上で他のコンピュ−タに反復的に質問するプログラムは、訴答書面中でさまざまな名前で呼ばれている。これにはソフトウェア・ロボット、ロボット、スパイダ−、ウエブ・クロ−ラ−が含まれる。

[注 3] 当時電子メ−ルのアドレスが<peter@biddersedge.com >であったことを除い     て、Peter Leeds が誰かは明らかではない。

[注 4] 質問:集合者が引起こしたスロ−ダウンについて eBay ユ−ザ−から出ている        苦情を知っていますか?

     答 :いいえ。

[注 5] BEはそんなことはあり得ない、何故ならこれらの検索エンジンの各々で行われた検索は eBay のウエブ・ペ−ジを含む結果をもたらすのだから、と主張しているようである。(補充的 Ploen陳述書、パラグラフ 1− 9)しかしながら、このことはこれらのサイトがロボット排除ヘッダ−を尊重しないことの証明にはならない。検索エンジンが排除ヘッダ−に従いながら情報を取得する多数の方法がある。それには同意を得ること、robot.txt ファイルのガイドラインに従うこと、または手動でサイトを検索することが含まれる。BEは、これらの検索エンジンのいずれかの活動について、如何なるサイトも一度でも不平をいったという証拠を出していない。

[注 6]  eBay の申立書および陳述書の大部分は、 eBay の商標および BE が eBay のコンピュ−タから取得する情報の不正使用の主張を取り上げている。当裁判所は、これらの主張に特定的な事実も、これらの主張の本案も取り上げない。たとえ eBay がこれらの訴訟原因の本案で勝訴する見込みを証明することができたとしても、そのような証明は、 BE による eBay の商標の使用,および BEによる eBay の競売リストの使用に対する差止命令による救済の根拠となるにすぎないであろう(それらに対する適切な救済は、 eBay と BE との間には提携関係のないことに関する否認、および顧客に対する BE の情報の範囲が限られていることの明示的警告であろう)。そのような証明は、 BE による eBay      のコンピュ−タ・システムへのアクセスを差止めるには十分ではないであろう。     しかしそれが eBay の求める唯一の救済であるけれども。

[注 7]  eBay は、不当利得が仮差止命令による救済の独立で十分な根拠であることは     いうまでもなく、独立の訴訟原因であるとの命題の根拠を出していないようである。                                

[注 8] 実際問題として、 BE が eBay のコンピュ−タにアクセスすること、またはeBay の競売デ−タベ−スを検索することを差止めることは、 BE が eBay の競売サイトから得た情報を有効に使えなくすることになるだろうけれども。

[注 9] 従って、 eBay の申立は一面でライセンス交渉の立場を強化するための戦術的     努力であって、回復不能の損害を防ぐための真正な努力だけではないようである。

[注 10 ]本件は 1999 年12月10日提起された。 BE は1999年12月中旬いくつかのサ−バ−の使用を止めた(decommissioned)。(参照、Mundy 証言録取書 at 75:12-14)ハ−ド・ドライブのフォ−マットを変更することは、 eBay のシステムへのアクセスの実際の期間を示したであろうサ−バ−・ログを破壊する結果となった。(参照、同上 at 74:17-24) eBay は、このことは BE に対する不利な推測の根拠となるべきである、何故なら eBay は、eBayシステムへの BE のアクセスとサービスの崩壊には因果関係があることを示すことはできないからである、と主張する。 BE はこれらの行為は、訴訟と関係のないハ−ドウェアの     機能停止(failure )の結果であると反論する。当裁判所は、これらの行為がBE の破壊した情報は損害を与えるものであったという推定の根拠となり得ることに賛成である。しかし、この情報が破壊された事情についての事実に依拠する問題の最終的解決には、もっと完全な記録が必要である。従って、 eBay には手続のこの時点で損害の確定的推定を受ける権利はなく、損害の不存在について BE の提出したすべての証拠の抹消を求める eBay の申立は却下する。

[注 11 ]「レンガとモルタル」という句は、伝統的ビジネスを支配的または全面的なオン・ライン・ビジネスと対比する時、前者を指すのによく用いられる。その句は、コンピュ−タ・プログラムから作られているサイバ−スペ−ス中で商取引を行う現代の趨勢に対して、レンガとモルタルのような物質で作られた物理的空間という事実関係のなかで商取引を行うことに、歴史的に依存することを指すようである。

[注 12 ]「もし同様の事業様式を用いる 30 から 40 もの会社が突然出現するとすれば、      eBay のサ−ビスの全負荷と影響はどんなであろうか?」

[注 13 ]「クロ−ラ− 1つが現在 eBay の蓄積の 1パーセントを使用するであろう。もし何百人ものユ−ザ−が同様のクロ−ラ−を使うとすれば、どうなるだろうか?」

[注 14 ]「Bidder's Edge が eBay のリスト・サ−バ−へ 1.53 パ−セントの負荷を課     したと認め得ると仮定すれば、単純な算数と経済学は、 eBay がその時弱体化させる負荷であろうものによって屈服させられるまでに、[ロボット排除基準を守らない]乱暴なロボットを配備する同様な会社がほんの少しだけ増えることが必要であることを示すであろう。」

[注 15 ]以下に論ずるように、 eBay は侵害の主張の本案について勝訴の強固な見込み     を証明した。故に仮差止命令による救済を受ける権利を有する。何故なら、eBay は回復不能の損害の可能性を証明したからである。従って、当裁判所は原告が本案勝訴の見込みについて同じ位強固な証明をしなかった場合に、活動の増加の恐れが仮差止命令による救済の根拠となるに十分となるかどうかの争点を取り上げない。

[注 16 ]他の諸裁判所が述べたように、伝統的法原則をインタ−ネットに適用することは面倒になり得るであろう。参照、 ImOn, Inc. v. ImaginOn, Inc.,   F.Supp. 2d  ,   , 2000 WL 310373 at *1 (S.D.N.Y. Mar.27, 2000)(「両当事者は、インタ−ネット上の『サ−ビスまたは製品』の供給者であって、本官がそう認め、かつ今後取り組むのだが、インタ−ネットは法律がそれに焦点を当て、確立した原則を適用するように努力しなければならなかった、最も流動的で急速に発展し、ほとんど毎日移り変わる商取引の領域の1 つである。」)

[注 17 ] BE は自分の行為が無断のものであることを明示的に通知を受けたのであるか     ら、 BE がロボット活動を禁止した eBay ユ−ザ−契約のある版に同意したことがあるかどうかは問題ではない。

[注 18 ]原告は、被告がそのシステムを検索していた間に、システムの停止およびシステムの性能の低下を経験したかもしれないと信じている。しかしながら、その機能不全と被告の活動との間に相互関係を示すことはできない。原告は、被告のロボット探索活動の詳細を記録したログを被告が破壊していなかったならば、そのような相互関係を示すことができる見込みがあろうと主張する。