原告AT&T CORP.

被告EXCEL COMMUNICATIONS, INC.、EXCEL COMMUNICATIONS MARKETING, INC.、EXCEL TELECOMMUNICATIONS, INC.

民事訴訟No. 98-434-SLR

デラウェア地区連邦地方裁判所

1999 U.S. Dist. LEXIS 17871

1999年10月25日決定

注意:[*1]電子公表のみ

処分:本法廷は、1993年のExcel請求計算システムは、 '184号特許のクレームを侵害しており、また '184号特許は無効であり、35 U.S.C.§§102および103の下で実施不能であると認定する。

弁護士:原告側弁護士:Jack B. Blumenfeld弁護士、Morris Nichols Arsht & Tunnell法律事務所、デラウェア州ウイルミントン

原告側助言者:Albert E. Fey弁護士、Thomas L. Secrest弁護士、Steven C. Cherny弁護士、William J. McCabe弁護士、Armando Irizarry弁護士、Fish & Neave法律事務所、ニューヨーク州ニューヨーク

原告側助言者:Laura A. Kaster弁護士、Joseph L. Lazaroff弁護士、Christopher P. Godziela弁護士、AT&T Corp.ニュージャージー州リバティ・コーナー

被告側弁護士:William J. Marsden, Jr.弁護士、Fish & Richardson P.C.法律事務所、デラウェア州ウイルミントン

被告側助言者:Donald R. Bunner弁護士、J. Michael Jakes弁護士、Howard A. Kwon弁護士、Finnegan Henderson Farabow Garrett & Dunner LLP法律事務所、ワシントンD.C.

被告側助言者:Mike McKool, Jr.弁護士、Eric W. Buether弁護士、Lewis LeClair弁護士、Monte M. Bond弁護士、McKool Smith P.C.法律事務所、テキサス州ダラス

裁判官:[*2]Sue L. Robinson、地方判事

意見者:Sue L. Robinson

意見:簡短な判決

日付:1999年10月25日
デラウェア州ウイルミントン

Sue L. Robinson地方判事

I. 序論

              原告AT&T Corporation(「AT&T」)は、被告Excel Communicaitons, Inc.、Excel Communications Marketing, Inc.およびExcel Telecommunications, Inc.(総称して「Excel」)に対する訴訟を提起し、地域間電話メッセージ記録を生成するための方法を示した合衆国特許第5,331,184号(「 '184号特許」)の、Excelによる侵害を提訴した。本法廷は28 U.S.C.§1338に基づき、事物管轄権をもつ。

              1999年4月14日、連邦巡回区控訴裁判所は、'184号特許の主張されているクレームは、35 U.S.C.§101の下で定義された法定主題を指していると判断し、本件を本法廷、さらなる司法手続きのために差し戻した。AT&T Corp. v. Excel Communicaitons, Inc.、172 F.3d 1352(連邦巡回区、1999)参照。現在本法廷には、侵害および有効性に関するサマリジャッジメントを求めるさまざまな申立てがなされている。

II. 背景情報

              15年前はAT&Tは[*3]、合衆国における電話サービスの主要提供者であった。United States v. AT&T、552 F. Supp. 131(D.D.C. 1982)、維持sub nom、Maryland v. U.S.、460 U.S. 1001、75 L. Ed. 2d 472、103 S. Ct. 1240(1983)で登録された最終命令に従い、AT&Tはその長距離電話事業および設備生産事業を保持する代わりに、地域電話会社を分離することに同意した。その結果、地域内電話事業者(「LEC」)はすべての地域間電話事業者(「IXC」)に、(注1)AT&Tおよびその関連会社に提供するものと「種類、質および価格において同等な」地域内電話網へのアクセスを提供することを要求されてきた。「同等なアクセス」指令は、IXCが同等な質の通信を得ることばかりでなく、通話者がその電話をAT&T以外のIXCを通して行う機会をもつことも要求する。(注2)

注1 LECは加入者の電話と地域内の交換局を物理的に接続する電話会社である。これらの会社は地域内電話サービスを提供し、長距離電話のために顧客をIXCに接続する。

IXCは、「設備保有」または「再販者」である。Matter of WATS Int'l Corp. v. Group Long Distance (USA), Inc、12 FCC Rcd 1743、1744 n.5(1997)参照。設備保有IXCは、自社が所有、運営、賃借またはその他の形で支配する設備(交換機や通信線)を使って電気通信サービスを行う事業者である。AT&Tは設備保有IXCである。

Excelは再販者である。Excelは顧客の地域間通話を伝えるための設備を所有、運営、賃借またはその他の形で支配していないが、請求やその他の顧客サービスを行う。Excelのような再販者は顧客の長距離電話を実際には伝えないが、FCCによってコモン・キャリアとして規制されている。AT&T v. FCC、572 F.2d 17、24(第二巡回区、1978)(「コモン・キャリアとは、使用する設備を実際に所有あるいは運営しているかに関わらず、雇われて公衆へ無差別に通信サービスを提供することを請け負う事業者である」)参照。

注2 「同等なアクセス」が出現するまでは、1+でダイアルされたすべての地域間長距離電話はLECによってAT&Tに伝えられた。発呼者は、被呼番号を回す前に7桁の電話番号をダイアルすることによって初めて、他のIXCにつなぐことができた。「同等なアクセス」により発呼者は、長距離電話サービスのために、「1+」ダイアルだけでAT&T以外の電話事業者を選択できるようになった。

              LECは1986年9月までに、地域内電話の顧客がAT&T以外のIXCを「主要地域間電話事業者」(「PIC」)として選択する機構を開発するように要求された。PICとは、顧客の電話機からダイアルされた通話のために長距離サービスを提供する事業者である。(注3)かかる「同等のアクセス」の実現により、加入者が1+の長距離電話をしたとき、その加入者のLECが地域的な例外を除き、その電話を加入者のPICのネットワークにつなぐことが保証される。

注3 U.S. v. Western Elec.Co.、578 F. Supp. 668、670(D.D.C. 1983)参照。

III.  '184号特許

              第 '184号特許は全体として、「地域間電話の料金を請求するために使われるメッセージを記録するための、電話網で使用される取り決めに関係する」。( '184号特許、第1列6-8行目)この発明は「より具体的には」、「IXCとも呼ばれる長距離電話つまり地域間電話の事業者の設備の利用を含む、長距離つまり地域間電話のメッセージ記録の生成」に関係していると言える。( '184号特許、第1列30-34行目)この発明の現実世界における文脈は、下記の通り、明細書に一般的に説明されている。

              地域内電話事業者つまりLECによる地域内電話サービスの各加入者は・・・、自分によってまたは自分のために選択された、付随する「主要地域間電話事業者」つまりPICをもつ。・・・加入者が長距離電話をかけると、その電話はその人のLECのネットワークからそのPICのネットワークを通り、最後は被呼者を加入者としてもつLECのネットワークに入る。通話の終了時に、通話を送った交換機、たとえば地域間電話事業者のネットワークの交換機が[*6]、AMA[自動メッセージ・アカウント]を生成する。

'184号特許、第1列35-49行目)

              通常のシステムでは、メッセージ記録は・・・発呼側交換機からメッセージ累積システムに送られる。そのシステムが累積されたメッセージを、適切な、さらなる処理システムに送る。その処理システムがAMAメッセージ記録を、業界標準の「交換メッセージ・インターフェース」つまりEMI、メッセージ記録フォーマットに変換する。EMI記録は計算システムに送られ、そのシステムは特に、その通話に適用される料金を計算し、その料金分の度数をEMI記録に加える。そのようにして作られた記録は請求システムに送られ、通常、加入者に郵送される「ハード・コピー」の請求書を生成するために処理されるまで、そこにとどまる。

'184号特許、第1列14-29行目)

              第 '184号特許には特に、計算システムによってPIC標識という「追加データ」を通常のメッセージ記録欄(注4)に加えることが含まれている。「各計算システムはPIC標識を生成するために、[IXCの]加入者の電話番号が[*7]すべて記憶されている包括的なデータベースにアクセスできる必要がある」。( '184号特許、第5列33-36行目)すでに述べたように、明細書に記されている実施例におけるPIC標識の生成は、計算システムの中で起こる。

              特に、段階506において初めて、発呼加入者がIXC 30にPIC'dされているか否かが判断される。もしそうでなければ、図3に示されているようにPIC標識3410が必ず「非設定」状態にある限り、さらに続ける必要はない。一方、発呼加入者がIXC 30にPIC'dされている場合には、段階508において、被呼加入者がIXC 30にPIC'dされているか否かが判断される。もし被呼加入者がIXC 30にPIC'dされていなければ、ここでもPIC標識3419は「非設定」状態にとどまる。しかしもし被呼加入者がIXC 30にPIC'dされている場合には、段階511に記されているように、PIC標識3419は「設定」状態に置かれる。ここでは関係のない、その他のさまざまな機能を行った後、次の処理をするために、計算システム331は計算されPIC評価をしたEMIメッセージを請求システムに送る。

'184号特許、第5列45-61行目)

              PIC標識3419という値は・・・[*8]問題の通話の被呼加入者のPICがIXC 30内にあるか否かの標識である。さまざまな実施例において、この標識は、実際に被呼加入者のPICを特定するコードという形を取ることもできる。あるいはPIC標識は単に、少なくとも被呼加入者のPICがIXC 30であるか否かを示すフラッグ(標識)という形でもよい。しかしここで説明する実施例では、PIC標識3419はそれよりも明示的である。特にその値は、被呼加入者と発呼加入者双方のPICがIXC 30であるか否かを示す。

'184号特許、第4列11-22行目)

注4 「典型的なメッセージ記録フィールドは、発呼と被呼の電話番号、および通話時間である」。( '184号特許、第1列12-14行目)

              まとめると、この発明の要点は、標準的なEMIメッセージ記録に「PIC標識」を含めるという点にある。すでに説明したように、「PIC」とは地域内電話会社の加入者に付随する「主要地域間電話事業者」であり、その加入者が長距離電話を発呼した場合、その電話は加入者が何らかの介入措置を取らない限り、LECによって[*9]その加入者のPICのネットワークを通じて伝えられる。( '184号特許、第1列35-45行目)「PIC標識」は、被呼加入者のPICが発呼加入者のPICと同一であるかの示唆を与える。これは従来は、長距離電話に対して発呼加入者が課金されるべきか、どの程度課金されるべきかという問題には関係のない情報であった。 '184号特許によれば、「PIC標識」は、

              地域間電話事業者が請求書をその加入者に渡すとき、たとえばその事業者のネットワークを通じてなされた通話に関して、その事業者がPICである被呼加入者になされた場合と、PICが異なる加入者になされた場合で異なる請求措置を取るために利用することができる。

'184号特許、第1列67行目-第2列5行目)

              AT&TがExcelに対して主張する4つの独立クレームは、以下の通りである。

1. 各加入者が発呼した地域間電話が[*10]その加入者に付随する複数の地域間電話事業者のうちの特定の一社の設備を自動的に通る、電気通信システムにおいて使用する方法であり、その方法の各段階においては、

発呼加入者と被呼加入者との間の地域間電話に対するメッセージ記録を生成し

そのメッセージ記録の中には、被呼加入者に付随する地域間電話事業者が、予め決められていた地域間電話事業者であるか否かの関数である値をもつ主要地域間電話事業者(PIC)標識を含み

・・・

12. 各加入者が、その加入者が発呼した地域間電話を伝える主要地域間電話事業者(PIC)をもつ、電気通信システムにおいて使用する方法であり、その方法の各段階においては、

発呼加入者と被呼加入者との間の課金される各地域間電話に対するメッセージ記録を生成し、

そのメッセージ記録の中で、その電話を伝えた特定の地域間電話事業者が被呼加入者のPICであるとき特定の値を取る標識を提示し、

・・・

18. 各加入者が、その加入者が発呼した地域間電話を[*11]伝える主要地域間電話事業者(PIC)をもつ、電気通信システムにおいて使用する方法であり、その方法の各段階においては、

発呼加入者と被呼加入者との間の課金される各地域間電話に対するメッセージ記録を生成し、

そのメッセージ記録の中で、その電話を伝えた特定の地域間電話事業者が、被呼加入者のPICであり発呼加入者のPICでもあるとき特定の値を取る標識を提示し、

・・・

40. 各加入者が発呼した地域間電話がその加入者に付随する複数の地域間電話事業者のうちの特定の一社の設備を自動的に通る、電気通信システムにおいて使用する方法であり、その方法の各段階においては、

発呼加入者と被呼加入者との間の地域間電話に対するメッセージ記録を生成し、

被呼加入者に付随する地域間電話事業者が[*12]、その電話を伝えた設備をもつその特定の地域間電話事業者であるか否かを判断するために、その電話を伝えたその地域間電話事業者のうちの特定の一社に付随する実質的にすべての加入者の電話番号を記憶したデータベースにアクセスし、

被呼加入者に付随する地域間電話事業者が、その電話を伝えた設備をもつその特定の地域間電話事業者であると判断された場合に、その通話の標識を特定の値に設定し、

そのメッセージ記録における情報とその標識双方の関数である出力を提示する。

'184号特許、第7列2-16行目、第8列15-27行目、57-68行目、第9列1-2行目、第12列1-24行目)

幾つかの従属クレームも争点になっている。クレーム4と6はクレーム1に従属する。それらは下記の通りである。

4. 含めるという段階が、地域間電話事業者のうちの予め決められていた会社に付随する加入者の実質的にすべての電話番号が記憶されているデータベースにアクセスするという段階から構成される、クレーム1の発明

・・・

6. それらの電話それぞれに対して生成されたメッセージ記録内のPIC標識の値の関数として、少なくともそれらの電話の幾つかに対して請求するというさらなる段階から構成される、クレーム1の発明

'184号特許、[*13]第7列26-30行目、34-37行目)

クレーム13と15は、少なくとも部分的にクレーム12に従属する。それらは下記の通りである。

13. 提示するという段階が、その特定の地域間電話次号社に付随する加入者の実質的にすべての電話番号が記憶されているデータベースにアクセスする段階を含む、クレーム12の発明

・・・

15. それらの電話それぞれに対して生成されたメッセージ記録内の標識の値の関数として、少なくともそれらの電話の幾つかを請求するというさらなる段階から構成される、クレーム13の発明

'184号特許、第8列28-32行目、36-39行目)クレーム19と21は少なくとも部分的にクレーム18に従属し、それぞれクレーム13および15と同様である。

IV. クレーム解釈

A. 法的基準

              サマリジャッジメントを求める申立てにおいて提起された主張を議論する前に、本法廷はまず、争われているクレームを解釈しなければならない。「特許クレームで使用されている表現の意味を法律問題として解釈することは、本法廷の権限かつ義務である」。Markman v. Westview Instruments, Inc.、52 F.3d 967、979(連邦巡回区、1995)、維持、517 U.S. 370、134 L. Ed. 2d 577、116 S. Ct. 1384(1996)。クレーム解釈の原則は[*14]確立している。解釈はクレームの表現から始まり、それによりクレームの範囲を定める。York Prods., Inc. v. Central Tractor Farm & Family Ctr.、99 F.3d 1568、1572(連邦巡回区、1996)参照。クレーム表現の分析においては、本法廷は「通常の構文論」を採用しなければならない。Eastman Kodak Co. v. Goodyear Tire & Rubber Co.、114 F.3d 1547、1553(連邦巡回区、1997)つまり「クレームは英語文法の規則に基づき読まれなければならない」。In re Hyatt、708 F.2d 712、714(連邦巡回区、1983)。本法廷はまた、クレームで使用されている専門用語には、「発明者がその用語を異なる意味で使用したことが特許および審査経過から明らかでない限り、当該発明の分野に経験をもつ人が与える意味を与えなければならない」。Hoechst Celanese Corp. v. BP Chems., Ltd.、708 F.3d 1575、1578(連邦巡回区、1996)

              本法廷はまた、クレーム表現の文脈を見るために、明細書を審査しなければならない。連邦巡回区裁判所は次のように説明する。

              明細書は、明示的にクレームで使用されている用語を定義しているか、[*15]含言によって用語を定めているならば、辞書として機能する。・・・すでに何度も述べたように、「クレームは、それが含まれている明細書に鑑みて読まれなければならない」。・・・明細書は発明の書面による説明を含み、その分野で通常の技能をもつ人がそれを作りかつ使えるのに十分なほど、明確かつ完全でなければならない。したがって明細書は常に、クレーム解釈分析にとって適切である。通常、それは決定的である。それは、争われている用語の意味にとって最善のガイドである。

Victronics Corp. v. Conceptronic, Inc.、90 F.3d 1576、1582(連邦巡回区、1996)

              クレーム解釈に関係する内部証拠の最後の出所は、それが証拠に含まれているとすれば特許の審査経過である。審査経過は、「クレームの範囲に関して出願者が行った明示的な表明を含む」、特許商標庁におけるすべての手続きの完全な記録を含む。同上 at 1583。審査経過は、それゆえ「クレームの意味を決定する際、重要な異議をもつことが多い」。同上。一方、クレームの意味の外部証拠は多くの場合不適切である。同上参照。外部証拠には、[*16]専門家の証言が含まれる。

B. 連邦巡回区裁判所の意見

              出発点としてAT&Tは、 '184号特許のクレームが35 U.S.C.§101の下で有効な主題を定めていると判断する際に連邦巡回区裁判所は、必然的にクレームを解釈したと主張する。(D.I. 289 at 1-2)AT&Tは特に、クレームされた発明の連邦巡回区裁判所による説明に言及する。それによればこの発明は、

              複数の長距離電話サービス提供者をもつ電気通信システムで作動するように作られている。システムは地域内電話事業者(「LEC」)および長距離サービス(地域間電話)事業者(「IXC」)を含む。LECは地域内電話サービス、およびIXCへのアクセスを提供する。各顧客は地域内サービスのためのLECをもち、AT&TやExcelなどのIXCを、その主要長距離サービス(地域間電話)事業者、つまりPICとして選択する。IXCはAT&Tのように自社の設備を所有することもある。Excelのように、「再販者」あるいは「再販事業者」と呼ばれるその他の事業者は、設備所有者と契約し、自社の加入者の電話を設備所有者の交換機および通信線を使って伝える。MCIやU.S. Sprintを含む幾つかのIXCは、自社の通信線とリース線双方を使う。

              システムは、三段階のプロセスを含む。発呼者が直通(1+)の長距離電話をかけると、(1) 呼び出しがLECネットワークで交換機に送信されLECが発呼者のPICを特定すると、LECは自動的にその呼び出しを発呼者のPICが使用する設備に送る、(2) PICの設備はその電話を、被呼者のLECに送る、(3) 被呼者のLECはその呼び出しを、自社の地域内ネットワークを通じて被呼者の電話に伝える。

              発呼者が直通長距離電話をかけると、交換機(地域間ネットワークの交換機のこともある)がモニターし、「自動メッセージ・アカウント」(「AMA」)メッセージ記録を生成し、電話に関連したデータを記録する。この同時のメッセージ記録は、発呼および被呼の電話番号、通話時間などの情報の欄を含む。これらのメッセージ記録は交換機から、処理および請求のためのメッセージ累積システムに送られる。

              メッセージ記録は電子フォーマットに記憶されるので、一つのコンピューターから他のコンピューターへ送り、情報処理上の便宜のために書式変更することができる。そして[*18]電話事業者のAMAメッセージはその後、業界標準の「交換メッセージ・インターフェース」に変換され、計算システムに送られ、結局は請求システムに送られて、通常、加入者に郵送される「ハードコピー」の請求書の作成のために処理されるまで、そこにデータはとどまる。

B.

              第 '184号特許の発明は、通話が特定のPICに関係しているかを示すために、標準的なメッセージ記録へのデータ・フィールドの追加を要求する(「PIC標識」)。このPIC標識は、被呼者のPICを特定するコード、被呼者のPICが特定のIXCであるか否かを示すフラッグ、被呼者と発呼者のPICを同一のIXCとして識別するフラッグなど、さまざまな形式で存在しうる。このようにしてPIC標識はIXCに、特定されたPICを元にして差別化した電話料金の請求を可能にする。

AT&T Copr. v. Excel Communications, Inc.、172 F.3d 1352、1353-54(連邦巡回区、1999)

              AT&Tが正しく指摘したように、「有効性分析の最初の段階は、特許の保護を求める主題を決定するために、発明のクレームを解釈することである」。Smiths Indus. Med. Sys., Inc. v. Vital Signs, Inc.、183 F.3d 1347、1353(連邦巡回区、1999)。[*19](注5)しかし本件では連邦巡回区裁判所はそのような解釈を行わなかった。上訴において連邦巡回区裁判所は、「 '184号特許の主張されているクレームは、35 U.S.C.§101の下での法定の主題をクレームしなかったので無効であるか」という、狭い問題を扱った。同上at 1355。制定法および関係する判例法の検討に基づき連邦巡回区裁判所は、AT&Tが「PIC標識の値を決定するために[加入者のおよび被呼者のPIC]にブール代数を適用し、請求の目的で有用な信号を作成するために切り換えと記録のメカニズムを通してその値を利用する」プロセスをクレームしていることは、「 '184号特許の書面による説明から明らかである」と認定した。同上at 1358(強調追加)。連邦巡回区裁判所は、State Street & Trust Co. v. Signature Fin. Group, Inc、149 F.3d 1368、1373(連邦巡回区、1998)で開発された分析を適用し、「クレームされたプロセスは、数学的原理の他の利用を専占せずにブール原則を有用で具体的で有形な結果を生み出すために適用するので、文言的に、クレームされたプロセスは[*20]第101条の範囲に十分に入る」。183 F.3d at 1358、1361

注5 本法廷は、この表明は§101に基づく主題分析ではなく、§103に基づく自明性分析の文脈でなされたと指摘する。Smiths Indus.、183 F.3d at 1353(「クレームは適切に解釈されれば、発明の範囲を定め、第一審裁判所に、クレームされた発明が先行技術に鑑みて自明であるか否かの判断を可能にする。」)

              State Streetテストを適用する際に、連邦巡回区裁判所は、争点のクレームの範囲および意味の判断を要求されなかったし、判断しなかった。クレームされた発明の連邦巡回区裁判所による説明はクレーム解釈を構成せず、したがって本法廷は、そこでなされた表明あるいは記述に拘束されない。このように決定する際に本法廷は、連邦巡回区裁判所の決定においては、クレーム解釈の原則およびクレーム自体に関する分析が完全に欠けていることを指摘する。したがって本法廷は[*21]、本件の争点となっているクレームを解釈するという作業を課せられていると結論付ける。

C. 分析

1. 「電気通信システムで使用する」

              争点の各独立クレームの前置きには、 '184号特許で開示された発明は、「電気通信システムで使用する」方法に向けられていると記されている。前置きには「電気通信システム」という用語の具体的な定義は与えられていないが、システムは次のように説明される。

              各加入者が発呼した地域間電話がその加入者に付随する複数の地域間電話事業者のうちの特定の一社の設備を自動的に通る、

'184号特許、第7列2-6行目、第12列1-5行目)

各加入者が、その加入者が発呼した地域間電話を伝える主要地域間電話事業者(PIC)をもつ、

'184号特許、第8列15-18、57-60行目)(注6)Excelは「設備を通る」および「電話を伝える」という表現に焦点を当て、「電気通信システム」という用語は「合衆国電気通信システムを構成する電話送信設備」に限定されると主張する。(D.I. 300 at 59)その主張の裏付けとして[*22]Excelは、下記のような方法を開示する、独立クレーム24の表現を引用する。

・・・のリクエストに応答して地域内電話事業者の加入者間の電話接続を確立するように作られている、地域内電話事業者と地域間電話事業者から構成される電気通信システムで使用される(方法)

'184号特許、第9列32-36行目)Excelによれば、「電話接続」という表現を使用したことにより、「電気通信システム」を構成するLECとIXCを、その「電話送信の側面」に限定する。そしてExcelは、この用語の範囲からはずれるのは、集金や販売などのLECやIXCが行う補助的機能であると主張する。それらは長距離電話サービスの提供には必要だが「電話送信設備」の使用は含まない。(D.I. 300 at 60)

注6 「[A]クレームの前置きは、クレーム全体がそれを指すという意味をもつ」。Bell Communications Research, Inc. v. Vitalink Commnications Corp.、55 F.3d 615、620(連邦巡回区、1995)。一般に、クレームの前置きはクレーム全体の文脈で読まれたとき、「クレームが前置きと独立に読むことができず、クレームに意味を与えるためには前置きを読まなければならず、または発明を指摘するのに必須である場合」にのみ、クレームの限定を説明する。Marston v. J.C. Pennsy Co.、353 F.2d 976、986(第四巡回、1965)Kropa v. Robie 38 C.C.P.A. 858、187 F.2d 150(C.C.P.A. 1951)を引用)。したがって、「クレームの前置きがクレームに「生命、意味そして活力を与えるのに必要」ならば、クレームの前置きはクレームの他の部分にあるかのように解釈されるべきである」。Pitney Bowes, Inc. v. Hewlett-Packard Co.、182 F.3d 1298、1305(連邦巡回区、1999)Kropa、187 F.2d at 152を引用)。本件では、「電気通信システムで使用する」という前置きでの表明は、クレームの他の部分の解釈に役立たない。単に、クレームされた発明の、意図された利用分野を説明した表明に過ぎない。かかる表明は、「クレームの限定を構成する、あるいは説明すると言うことはできない」。したがってこの表明自体は限定ではない。

              「電気通信システム」という用語は、明細書では定義も使用もされていない。その代わりに、明細書は「電話網」および「地域間電話事業者交換機のネットワーク」に言及する。( '184号特許、第1列7行目、第3列3-4行目)たとえば、長距離電話に関する電話網の動作は、明細書では次のように要約されている。

加入者が長距離電話を発呼すると、その呼び出しは発呼加入者のLECのネットワーク、PICのネットワーク、そして最後に被呼者を加入者としてもつLECを通して伝えられる。

'184号特許、第1列41-45行目(強調追加)、 '184号特許、第1列68行目-第2列3行目、第4列46-53行目も参照)Excelは、明細書の表現および図を考えると、独立クレームの前置きで言及されている「電気通信システム」は、設備保有の電話事業者のネットワークを必要とすると主張する。

              一方AT&Tは、「電話通信システム」はそのようには限定されず、合衆国で事業を行っているすべての長距離サービス事業者から構成される[*24]、同等なアクセスをする電気通信システムに言及すると主張する。(D.I. 300 at 16、D.I. 213 at 13)特にAT&Tは、長距離電話の伝達のための設備の所有ではなくIXCの使用に言及した、明細書における下記の表現を指摘する。

この発明はより具体的には、IXCとも呼ばれる、長距離つまり地域間の電話事業者の設備の使用が関係する、長距離電話つまり地域間電話のメッセージ記録の生成について述べる。

'184号特許、第1列30-34行目)(強調追加)。特許には、「電気通信システム」という用語において、顧客の地域間電話を伝えるのに使用される設備の所有権をもつことをIXCに要求するという解釈には、裏付けはないとAT&Tは主張する。

          IXCが長距離サービスの提供つまり電話の伝達のために、交換機、コンピューター、通信線などの設備を使用することは自明である。しかし、クレームされている発明を実行するために[*25]、IXCは顧客の地域間電話を伝える設備を使用ではなく所有しなければならないとは、 '184号特許のどこにも書かれていない。むしろクレームの表現自体そして明細書は、電話接続を物理的に確立する交換機や通信線などの設備ばかりでなく、システムが行える請求や集金などの補助機能からも構成される「電気通信システム」を意図している。したがって本法廷は、「電気通信システム」という用語は設備を保有するIXCのネットワークには限定されないと結論付ける。(注7)

注7 この解釈と合致して本法廷は、クレームされた発明の実践は、その加入者の電話を伝えるのに使用される設備を所有するIXCには限定されないと結論付ける。クレームに所有権の限定を読み取る根拠はない。むしろこの特許は、IXCの「設備の使用[所有ではなく]が関係する」長距離電話のためのメッセージ記録の生成に向けられている。( '184号特許、第1列30-34行目)(強調追加)したがって、本法廷は、(1) 加入者がPIC'dしているIXCは設備保有の電話事業者である必要はなく、長距離電話サービスをするどの会社でもよく、(2)第 '184号特許でクレームされた「PIC標識」および「特定の値をもつ標示」は、加入者の電話が伝えられるネットワークをもつ設備保有のIXCの標識には限定されないと、結論付ける。

2. 「地域間電話」および「自動的に伝える」

          争点の独立クレームは、「・・・加入者によって発呼された地域間電話」に関する方法を指示する。( '184号特許、第1列3-4行目、第2列1-18行目、59-60行目、第12列2-3行目)クレーム1と40の前置きは、「地域間電話」を、「加入者に付随する複数の地域間電話事業者のうちの一社の設備を自動的に通る」と説明する。( '184号特許、第1列4-6行目、第12列3-5行目)クレーム12と18の前置きは、「各加入者が、その加入者が発呼した地域間電話を伝える主要地域間電話事業者(PIC)をもつ」と述べている。( '184号特許、第2列16-18行目、58-60行目)AT&Tは、発明の時点でこの分野に技能をもつ人ならば、クレームの表現を読めば、クレームが「1+」長距離電話(「1+電話」)のみを指示していることは理解すると主張する。一方、Excelは明細書の表現を引用し、クレームされた発明は限定なしに地域間電話に適用されると論じる。( '184号特許、第1列30-35行目、 '184号特許、第1列6-8行目、第6列50-63行目、第3列62-66行目[*27]、第4列2-5行目も参照)。

              最初の問題として本法廷は、「1+電話」という用語はクレームにも明細書にも現われないことを指摘する。AT&TとExcelはこの用語を、まず1を回し、それから被呼加入者に付随する地域コードと7つの数字を回す、直通電話を指すのに使う。AT&Tはこれらの1+電話を、他のタイプの長距離電話、特に0+電話、ダイアル・アラウンド電話、そして1-800電話と区別する。発呼加入者のPICを通して伝えられる1+電話と異なり、1-800電話は、被呼加入者が1-800サービスを取り決めているIXCによって伝えられるということには、両当事者は合意する。同様にダイアル・アラウンド電話も発呼加入者に付随するPICではなく、発呼加入者が電話をするときに選択するIXCによって伝えられる。そしてこの選択は、被呼加入者の電話番号の前に、10-10-321といった特定の番号つまりアクセス番号を回すことによってなされる。一方、クレジット電話やコーリング・カード電話、コレクト・コールそして交換手を通した電話を含む0+電話は、[*28]発呼加入者が使用している電話回線へPIC'dされているIXCを通して伝えられるが、その回線にはその電話の料金は課金されない。0+電話をする加入者は、0と、被呼加入者の地域コードおよび電話番号を回す他に、クレジット・カードの番号を回したり、交換手への経路選択情報を提供したりなどの他の行動もしなければならない。

              AT&Tは、PICという概念は1+電話の文脈でのみ意味をもつと論じる。(D.I. 191 at 8、33)それと合致してAT&Tは、発呼加入者のPICを通して伝えられる地域間電話は、定義によって1+電話であると主張する。(D.I. 191 at 7-8、33-34)AT&TはNewton's Telecom DictionaryにおけるPICの定義、およびさまざまな情報ガイドや訓練マニュアルにおけるExcelのこの用語の使用例を参照することによって、この主張を裏付ける。(D.I. 191、Ex. C at 478、Ex. G at EX 0026214、D.I. 228、Ex. 4、D.I. 191、Ex. G at EX0026235)これらの定義はPICを、1と10桁の数字をダイアルし予め選択されていたIXCへ電話を回すことを必要とする電話のこととしている。

              主張されたクレームの表現は、発呼加入者のPIC「の設備を自動的に通る」つまり「伝えられる」地域間電話に向けられた発明を開示する。[*29]明細書はクレームされた発明の分野を説明する際に、PICについて次のように述べる。

New Jersy Bellのような地域内電話事業者つまりLECによる地域内電話サービスへの各加入者は、自分が選んだまたは自分のために選ばれた「主要地域間電話事業者」つまりPICをもつ。加入者は、そのIXCにPIC'dされているという。加入者が長距離電話を発呼すると、呼び出しは発呼加入者のLECのネットワークからPICのネットワークへ、そして最終的には被呼者を加入者としてもつLECのネットワークを通って伝えられる。

'184号特許、第1列35-45行目)上記の解釈と合致させ、本法廷は、発明の分野は1+電話に限定されると結論付け、クレームをそのように解釈する。(注8)

注8 この点に関しては本法廷はさらに、「その加入者に付随する複数の地域間電話事業者のうちの特定の一社の設備を自動的に通る」および「その加入者が発呼した地域間電話が伝えられる主要地域間電話事業者(PIC)」は、クレームに「生命、意味および活力を与えるのに必要」であると結論付ける。これらの表明は、クレームの主体で開示されている方法に関係する地域間電話の特定のタイプを教示しているので、「クレームのその後の表現と結付いている」。同上。つまりクレームはこれらの前置きの表明の文脈でのみ理解できる。したがって、これらの表明はクレームの限定を構成する。

3. 「加入者」

              第 '184号特許は、被呼「加入者」または発呼および被呼「加入者」双方が、ある特定のIXCを、付随するPICとしている否かの値をもつ、PIC標識の追加に関する方法をクレームする。(注9)Excelはそのクレーム解釈摘要書において、 '184号特許において特定された「加入者」とは「発呼および被呼電話番号によって特定される、発呼または被呼電話回線」であると主張する。(D.I. 190 at 31)したがってExcelは、被呼加入者のPICとは、「電話がなされた回線のために1+長距離サービスを被呼加入者に提供する事業者」であると主張する。(D.I. 300 at 33)一方AT&Tは、「加入者」とは電話回線のことではなく特定の個人を指すと主張する。

注9 両当事者は、「付随する」という用語は「・・にPIC'dされている」を意味すると合意している。つまり加入者「に付随する」電話事業者は、その加入者のPICを意味する。

              クレームも明細書も、「加入者」という用語の具体的な定義[*31]を提示していない。しかし「加入者」と「電話番号」は区別されており、大部分では、 '184号特許の「加入者」という用語の使用はAT&Tが提唱する解釈と合致している。( '184号特許、第1列35-39行目、55-57行目、第2列17-24行目、51-53行目、56-61行目、第3列13-19行目、59-65行目)。一般的な理解では、「加入者」とは「市販の電話設備を自分の敷地に設置した個人」を意味する。Webster's at 2278。この定義は、電気通信業界での「加入者」という用語の意味と合致する:「電話会社によって提供される電話サービスを受ける個人または会社」。(D.I. 213、Ex. N at 618)これらの使用法も、AT&Tが提唱する解釈と合致する。

              一方Excelが提唱する解釈は、本法廷に、「加入者」の通常の意味を捨てることを要求する。2つの状況だけが、通常の習慣的な意味以外の態様でクレームの用語を定義することを十分に正当化する。Johnson Worldwide Assocs., Inc. v. Zebco Corp.、175 F.3d 985、990(連邦巡回区、1999)。第一の状況は、発明者が、クレームの用語に対して明示的な定義を明確に記すことによって[*32]、自分自身のための辞書編集者になることを選択した場合である。同上参照。本件はそれには当たらない。第二の状況は、特許権者が選んだ用語がクレームの明瞭さを害なうために、使用された用語からクレームの範囲を確認する手段がない場合である。同上参照。

              Excelは、クレームされた発明の設計要件が、「加入者」が、個人ではなく、呼び出された、または電話をするのに使われた電話番号によって特定される電話回線を意味することを要求すると主張する。この論理は、クレームされた発明の目的自体を無視している。 '184号特許は、「地域間電話に対して料金を請求するのに使われるメッセージを記録する」方法を説明する。( '184号特許、第1列7-8行目)したがって、クレームされた発明は、地域間電話に対する請求プロセスに向けられる。請求されるのは加入者であり電話回線ではない。つまり、1+長距離電話をするために特定の電話を使用する個人が、その電話回線のPICを選択した加入者であるか否かは関係がない。電話に対して請求されるのは[*33]、いずれにしろその電話回線に付随する「加入者」である。さらに、電話回線ではなく加入者が、特定の電話番号を使ってなされる1+電話を伝えるIXCを選択するのである。

              クレーム表現および明細書が電話一回に対してPICが一つだけ存在することを要求すること、つまり「被呼加入者」に対して単一のPIC、そして「発呼加入者」に対して単一のPICしか存在しないということは、「加入者」という用語を、電話回線ではなく個人に同一視することによっては害なわれない。Excelが指摘したように、クレームされた発明は個々の通話の枠組み内で作動する。その電話に関しては、発呼「加入者」は単一のPICを自分と結付ける。被呼「加入者」も同様である。他の電話回線に関して、その加入者が他のIXCにPIC'dされているか否かは、個々の通話の文脈では重要ではない。したがって、特定の電話回線ではなく特定の個人を意味するものとして「加入者」という用語を使用することは、クレームの範囲が「使用された表現から」確認できなくなるほど「クレームの明確さを害なう」ことにはならない。

              したがって本法廷は「加入者」という用語を、[*34]電話回線ではなく特定の個人を意味すると解釈する。この解釈および前の解釈を組合せると、「被呼加入者のPIC」は、呼び出される電話番号に1+長距離サービスを提供する(つまり処理するおよび/または処理の手配をする)ため加入者が選択したIXCを意味すると解釈される。

4. 「されている(is)」

              第 '184号特許のクレームは、被呼加入者、またはクレーム18の場合には発呼と被呼の双方の加入者が、特定のIXCにPIC'd「されている(is)」か否かの判断を要求する。Excelは、「されている(is)」という用語は、主張されているクレームで使われる場合、「クレームで言及された通話時」を意味すると主張する。(D.I. 300 at 50)AT&Tは他の解釈を提唱しない。

          通常の語法では、「されている(is)」は、「事実上の、経験上の、現実の、あるいは空間と時間上のもの」を指示するために使われる。Webster's at 1197。したがってExcelの解釈は、使われている文脈を考えれば、この単語の通常の意味と合致している。さらにExcelの解釈は、PIC標識を特定の通話に結付けるばかりでなく、被呼加入者に対して単一のPICを予測する独立クレームの表現と合致する。[*35]( '184号特許、第7列13-16行目、第8列25-27行目、第8列67-第9列1行目、第12列14-17行目)

したがって本法廷は、「されている(is)」は「クレームで言及された通話時」を意味すると解釈する。この解釈と合致して、「その被呼加入者のPIC」とは、クレームで言及された通話時に電話された電話番号に1+長距離サービスを受けるために加入者が選択したIXCを意味すると解釈する。

5. 「PIC標識」および「特定の数をもつ標示」

              第 '184号特許のクレーム1は、「被呼加入者に付随する地域間電話事業者が、地域間電話事業者のうちの予め決められているものであるか否かの関数」である値をもつ「PIC標識」がメッセージ記録に含められる方法を教示する。( '184号特許、第7列11-16行目)明細書は、「PIC標識」が、被呼加入者のPICを特定するコード、あるいは「少なくとも被呼加入者のPICが特定のIXCであるか否かを示す」フラッグなど、さまざまな形を取りうると定めている。( '184号特許、第4列13-19行目)好適な実施例では、「PIC標識」の値は、[*36]「発呼および被呼の加入者双方のPIC」がある特定のIXCであるか否かを示す。( '184号特許、第4列21-22行目)そして、

              もし両加入者がIXC 30にPIC'dされていたら、PIC標識は3419に設定される。その他の場合は設定されない。そして確かに、すでに述べたように、PIC標識3419という値は、被呼加入者のPICがIXC 30であるか否かを指示する。特に、PIC標識3419が設定された場合、IXC 30が被呼加入者のPICである。もしそう設定されていなければ、IXC 30は被呼加入者のPICではない。

'184号特許、第4列31-39行目)

他の主張された独立クレームは、メッセージ記録の中に「PIC標識」を含めるとは開示していない。その代わりにクレーム12は、「その電話を伝えた特定の地域間電話事業者が被呼加入者のPICであるときに特定の値をもつ標示」の、メッセージ記録への提供を要求する。( '184号特許、第8列24-27行目)独立クレーム18もメッセージ記録への「特定の値をもつ標示」の提供を要求するが、そこで開示される標示の値は、その電話を伝えたPICが、[*37]被呼および発呼の両加入者のPICであるか否かの関数である。( '184号特許、第8列66行目-第9列2行目)同様にクレーム40は、被呼加入者のPICが「その電話を伝えた設備をもつ特定の地域間電話事業者」であるとき、「特定の値に標識を設定する」ことを要求する。( '184号特許、第12列18-22行目)つまり、主張されたクレームのすべてが、少なくとも特定のIXCが特定の被呼加入者のPICであるか否かを反映する値をもつ標識を、メッセージ内へ含めることを要求する。明細書によれば、標識の値は「たとえば異なる請求処理」を可能とするように、「・・・その後の請求作業において有益に使用できる」。( '184号特許、第4列44-46行目)

              したがって本法廷は、「PIC標識」および「特定の値をもつ標示」という用語を、少なくとも、特定のIXCが通話時に被呼加入者のPICであるか否かを指示する設計を要求するものとして解釈する。すでに指摘したように、 '184号特許でクレームされた「PIC標識」および「特定の値をもつ標示」は、加入者の電話を伝えるネットワークをもつ[*38]設備保有IXCの標識に限定されない。

6. 「メッセージ記録に含める[提供する、確立する](注10)」および「請求」

注10 両クレームは実質的に同一だが、この段階について異なる表現を使っている。

              争点のクレームは、(1)「発呼加入者と被呼加入者との間の地域間電話のためのメッセージ記録を生成する」、および、(2)「そのメッセージ記録の中に」PIC標識を含めるという、2段階の方法を開示する。この目的のためにたとえば独立クレーム1は、次のように教示する。

              発呼加入者と被呼加入者との間の地域間電話のためのメッセージ記録を生成し、そのメッセージ記録の中に、被呼加入者に付随する地域間電話事業者が、地域間電話事業者のうちの予め決められているものであるか否かの関数である値をもつ、主要地域間電話事業者(PIC)標識を含める。

'184号特許、第7列8-16行目)Excelは、これらの段階は[*39]、請求プロセスの前に設備保有IXC(注11)のネットワーク内で起こると主張する。AT&Tは、請求プロセスを、「ハードコピー」の請求書の作成および加入者への郵送が行われる、特許で開示されたプロセス全体のうちの最後の段階として定める解釈を求める。両当事者は「請求」という用語の範囲について争っているが、双方の解釈案は相互に排他的ではない。

注11 Excelは、メッセージ記録内にPIC標識を含めるための特許明細書で説明されているプロセスは、「完全に設備保有の電話事業者のネットワーク内で、またはそれに付属して」なされると論じる。Excelの論理は、発明の実践を設備保有の電話事業者い限定しない本法廷の前の解釈を考えると無効である。上記、V.B.I.参照。さらに本法廷は、クレームが「メッセージ記録の生成」一般を教示しており、また、各地域間電話に対する最初のメッセージ記録は交換機によって生成されるが、他のすべてのメッセージ記録は装置の他の部分によって生成されることを指摘する。実際、好適な実施例では、PIC標識が、AMAメッセージ記録からの情報を使ってフォーマット・システムにより生成されるEMIメッセージ記録に含まれるシステムが開示されている。

              最初の問題として本法廷は、クレーム表現自体が、「そのメッセージ記録」の生成が請求システムへの送信前に起こるとしていることを指摘する。クレーム5、14および20はそれぞれクレーム1、12および18に従属するが、「その各メッセージ記録の請求システムへの送信というさらなる段階」と教示する。( '184号特許、第7列31-33行目、第8列33-35行目、第9列8-10行目)(強調追加)。同様に、やはりそれぞれクレーム1、12および18に従属するクレーム6、15および21は、次のように教示する。

少なくともそれらの通話の一つに、各通話ごとに生成されるメッセージ記録内のPIC標識の値の関数として、料金を請求するさらなる段階

'184号特許、第7列34-37行目、第8列36-39行目、第9列11-14行目)(強調追加)。クレーム40に従属するクレーム41も、計算と請求のさらなる段階を教示する。( '184号特許、第12列25-32行目)従属クレームはそれが従属する独立クレームを限定することはできないが、Karlin Tech. Inc. v. Surgical Dynamics, Inc.、177 F.3d 968、50 U.S.P.Q.2D(BNA)1465、1468(連邦巡回区、1999)(「従属クレーム[*41]に記されている限定は、それが従属する独立クレームの中に読み取るべきではない」と述べる)参照、それが従属する独立クレームの範囲の解釈においては考慮されるべきである、Laitrant Corp. v. NEC Corp.、62 F.3d 1388、1392(連邦巡回区、1995)(「各クレームは独立の発明であるが、従属クレームはそれが従属するクレームの解釈の助けになりえる」と述べる)参照、Transmatic, Inc. v. Gulton Indus., Inc.、53 F.3d 1270、1277(独立巡回、1995)(独立クレームの範囲は従属クレームで説明されている実施例を含むと指摘)も参照。 '184号特許においては従属クレームは、PIC標識を追加した後でのメッセージ記録の請求システムへの送信を予測している。

              第 '184号特許の明細書は、メッセージ記録の生成、および「請求」に先立つそれへのPIC標識の追加を要求するとクレームを読むことに対する、さらなる裏付けを提供する。明細書によれば、「典型的なシステムでは」、該当する料金の標示を含むEMI記録は「請求システムに送られ、通常は加入者に[*42]郵送される「ハードコピー」の請求書の作成のために処理されるまでそこにとどまる」。( '184号特許、第1列26-29行目)好適な実施例においては

通話の終了時に、IXCの発呼側交換機301は・・・その通話(接続)に関するAMA記録を生成する。この交換機は他の同様の交換機と一緒に、付随するメッセージ累積システム311・・・312・・・によって、定期的に読まれる。

              定期的に・・・各メッセージ累積機はその累積されたAMA記録を、対応するEMIフォーマット・システム321・・・322・・・に送る。同システムはAMA記録を、前記の業界標準のEMIメッセージ記録フォーマットに変換する。そしてEMI記録は定期的に・・・それぞれの計算システム331・・・332・・・に送られる。計算システム331・・・332・・・の機能の一つは、各通話を「計算」し、(注12)つまり各通話に適用される標準料金あるいは見積り料金を計算し、その標示をEMI記録へ追加することである・・・

* * * *

・・・計算システムはその他の機能も行える。しかしここで関係があるのは、PIC標識3419の生成である・・・おそらくここには関係のないさまざまな他の機能を行った後[*43]、計算システム331は、計算されPIC評価をされたEMIメッセージを、その後の処理のために請求システムへ送る。

'184号特許、第3列26-48行目、第5列42-45行目、57-61行目)明細書は、「PIC標識は便利なように、通話計算を行うシステム内のメッセージ記録に、計算自体と実質的に同時に追加される」と記している。( '184号特許、第2列19-22行目)明細書はさらに、好適な実施例に関して、「PIC標識3419という値は、その後の請求作業において有益に使用することができる」。( '184号特許、第4列44-45行目)

注12 該当するPIC標識を生成するためには、計算システムは「すべてのIXC 30加入者の電話番号が記憶されている包括的なデータベースにアクセスできる必要がある」。( '184号特許、第5列5-37行目)

              明細書の図も表現も「請求」はプロセス全体の最後の段階であるというAT&Tの主張を支持しているが[*44]、「請求」が「ハードコピー」の請求書の作成と郵送のみを含むという主張は裏付けてはいない。明細書は、「典型的なシステムでは」EMI記録は請求システムに送られ、そこで、通常は加入者に郵送される「ハードコピー」の請求書の作成のために処理されると述べる。( '184号特許、第1列14行目、27-29行目)(強調追加)。典型的なシステムとは唯一のシステムではない。これは特に、EMI記録は「その後の処理」( '184号特許、第5列60-61行目)あるいは「その後の請求作業」( '184号特許、第4列45行、第5列65-67行目、第6列12-13行目、16-21行目、30-35行目)のために請求システムに送られると記す明細書の他の表現を考えると真実となる。つまり、明細書とクレーム表現は「請求」を、メッセージ記録の生成、該当するデータベースからの情報の収集、PIC標識の生成、通話料金の計算、そして計算されたメッセージ記録の形成といったそれに先立つ段階からは区別するが、それをハードコピーの請求書の作成および郵送に限定してはいない。

              したがって本法廷は、「請求」という用語を[*45]、 '184号特許で開示された方法の最終段階と解釈するが、そこでなされる作業を、ハードコピーの請求書の作成および郵送には限定しない。この解釈と合致して、本法廷は主張された独立クレームを、メッセージ記録の生成およびそこへのPIC標識の追加が、メッセージ記録の請求システムへの送信に先立ち起こることを要求したものとして解釈する。

V. 審査の基準

              裁判所は、「訴答、供述録取書、質問書に対する答弁、公式記録上の自白、宣誓供述書などが、重大な事実に関する真正な争点がないこと、および申立て当事者が法律問題としての判決を受ける権利をもつことを示している場合にのみ」、サマリジャッジメントを下すことができる。連邦民事訴訟規則56 (c)。申立て当事者は、重大な事実に関する真正な争点がないことを立証する責任をもつ。Matsushita Elec. Indus. Co. v. Zenith Radio Corp.、475 U.S. 574、586 n.10、89 L. Ed. 2d 538、106 S. Ct. 1384(1986)参照。「結果を変更しうる事実は「重大」であり、合理的な人が、[*46]争点に関して立証責任をもつ人の立場が正しいと結論付けうる証拠が存在するならば、争点は「真正」である」。Horowitz v. Federal Kemper Life Assurance Co.、57 F.3d 300、302 n.1(第三巡回、1995)(内部引用省略)。申立て当事者が重大な事実の不在を立証したならば、被申立て当事者は「<審理のための真正な争点があることを示す具体的な事実>を提出しなければならない」。Matsushita、475 U.S. at 587(連邦民事訴訟規則56 (e) を引用)。本法廷は、「基礎となる事実およびそれからのすべての合理的な推測を、申立てに反対する当事者にとって最も有利な観点から見る」。Pennsylvania Coal Ass'n v. Babbitt、63 F.3d 231、236(第三巡回区、1995)。しかし被申立て当事者を支持する証拠の存在だけでは、サマリジャッジメントの申立ての却下にとって十分ではない。その争点に関して陪審が、被申立て当事者に有利に認定するのに十分な証拠がなければならない。Anderson v. Liberty Lobby, Inc.、477 U.S. 242、249、91 L. Ed. 2d 202、106 S. Ct. 2505(1986)参照。もし被申立て当事者が、立証責任をもつ訴訟の本質的要素に関して十分な立証をしなかった場合には、[*47]申立て当事者は法律問題としての判決を受ける権利をもつ。Celotex Corp. v. Catrett、477 U.S. 317、322、91 L. Ed. 2d 265、106 S. Ct. 2548(1986)参照。

VI. 議論

A. 侵害(注13)

注13 Excelが '184号特許を侵害しているとの部分的サマリジャッジメントを求めるAT&Tによる申立ては、クレーム12、13、15、18、19および21のみを対象としているが、本法廷は、Excelが主張されているすべてのクレームを侵害しているか否かを議論する。

              AT&Tは、Excelの1993年計算請求システム(「1993年Excelシステム」)は、特許 '184号の独立クレーム1、12、18および40、そして従属クレーム4、6、13、15、19および21を文言侵害していると主張する。特許法第271条 (a) は次のように定める。

              本編に別段のことが定められている場合を除き、特許を受けた発明を、特許の有効期間中に合衆国内で、権限なく生産し使用し販売を申し出、または販売した者は・・・その特許を侵害したことになる。

              35 U.S.C.§271 (a)。連邦巡回区は、侵害の有無の判断のための二段階分析を提示した。

              第一に、クレームの範囲を確定するためにクレームを正しく解釈しなければならない。第二に、クレームを提訴された装置と比較しなければならない。

              Kahn v. General Motors Corp.、135 F.3d 1472、1476(連邦巡回区、1998)。「文言侵害を証明するには、原告は、クレームのすべての限定が提訴された装置によって文言通りに満たされていることを立証しなければならない」。同上。つまり、裁判所によって解釈されたクレームが、提訴された装置上で正確に読み取れる場合に文言侵害は成立する。Engel Indus., Inc. v. Lockformer Co.、96 F.3d 1398、1405(連邦巡回区、1996)参照。侵害は、クレームで要求されていない機能または要素を加えるだけでは回避できない。Loctite Corp. v. Ultraseal Ltd.、781 F.2d 861、865(連邦巡回区、1985)、他の理由により破棄、Nobelpharma AB v. Implant Innovations, Inc.、141 F.3d 1059(連邦巡回区、1998)。原告は証拠の優越によって、「クレームのすべての限定が、提訴された装置によって文言通りに満たされる」ことの挙証責任がある。Kahn、135 F.3d at 1476

              すでに指摘したように、Excelは交換機をもたない再販者である。[*49](注14)ExcelにPIC'dされた加入者が、(注15)1+長距離電話をしたとき、その加入者のLECは、Excelがその顧客の電話を伝えるために契約した電話事業者のネットワークにその電話を自動的に回す。(注16)(D.I. 198 at A931、A933、A947-51)電話の終了後、電話の基本的詳細を含むAMAメッセージ記録が、契約した電話事業者のネットワークの交換機に生成される。(D.I. 198 at A947-51)累積したAMAメッセージ記録はIXCの計算システムに送信され、そこで計算されるがEMIフォーマットにはされない。その後メッセージ記録はExcelに伝えられ、そこでは電話詳細記録(「CDR」)と呼ばれる。

注14 Excelの自身の手続きに関する説明は不明瞭に書かれているので(D.I. 189 at 6-11)、以下の引用では多くの場合、Excelの運営に関するAT&Tの説明(D.I. 191 at 16-23、D.I. 195 at 18-27、D.I. 213 at 15-18)から抜き出す。

注15 Excelはそのクレーム解釈および非侵害の摘要書を通じて、自社は設備を保有していないのでPICではありえないと主張してきたことを、本法廷は興味をもって指摘する。しかしその事業においてはExcelは、自身を「顧客のPIC」として言及してきた。(D.I. 189 at 6 n.20)明らかに、「発呼または被呼のANIのPICを決定」できないにも関わらず、Excelは「ほとんどの場合に・・・電話事業者とLECに、[自動番号識別]がExcelをそのPICとすべきであると電子的に通知することが」できる。(D.I. 189 at 6 n.20、7)

注16 LECは、LECの各加入者が3桁の電話事業者識別コード(「CIC」)に結付けられている、そのPICデータベースを見ることによって、それを行う。発呼加入者がExcelにPIC'dされているとLECが判断したら、LECはその電話を、Excelがその顧客の電話を伝えるように契約している電話事業者のネットワークに伝える。(D.I. 198 at A947-51)LECがその電話に付随するアクセス料金を請求できる電話事業者を特定できるように、CICはAMAメッセージ記録の中に含められる。(D.I. 198 at A947-51)

              Excelは受け取ったCDRを書式変更するばかりでなく、(注17)記録に含まれている計算情報を削除する。CDRがいったん書式変更されると、それは、「電話照会段階」を実行する「コレクター」に送られる。コレクターは一連のコンピューター・プログラムだが、書式変更されたCDRを読み取って発呼および被呼の電話番号を判断し、Excelの加入者の実質的にすべての電話番号[*51]を含むExcelの電話データベース・フラット抽出ファイル(「PDB」)で、その番号に付随する顧客識別コードを探す。PDB内に発呼加入者の電話番号が見つかったら、コレクターは「顧客照会段階」を行う。そこでは発呼電話番号に対応する顧客識別コードを使って、Excelの顧客データベース・フラット抽出ファイル(「CDB」)でその発呼加入者の資格を探す。(注18)同様に、もし被呼加入者の電話番号がPDBで見つかったら、コレクターは、被呼加入者の資格をCDBで探すという、もう一つの顧客照会を行う。(注19)コレクターはまた、両加入者がExcelから購入したサービスまたは製品のタイプも判断する。

注17 Excelが受け取るメッセージ記録はIXCごとに異なるフォーマットで書かれている。

注18 Excelはその主張のこの部分で、特定の加入者に対する顧客識別コードの存在は、「Excelが実際にその時点でその[加入者]のPICであることを意味しない。それはExcelが[加入者]のPICであるもしくはそうであった、または、ある時にExcelがその[加入者]に関する・・・許可証を受け取ったことを意味する」と主張する。(D.I. 189 at 9-10)CDRは、Excelが発呼加入者のPICであるときにのみExcelに送られるという本法廷の了解を考えると、発呼加入者の電話番号は常に、PDBおよびCDBに見出だされると考えられる。

注19 加入者は、アクティブ(ACTV)、交渉中(PEND)、取り消し(CXX)、サービス不能地域(9898)あるいはブランクという、5つの資格のうちのいずれか一つだけをもてる。これらのコードは電話がかけられた時のExcelにおける顧客の資格を反映する。ACTVというコードは加入者がExcelにPIC'dされていることを示す。(D.I. 191、Ex. H at 59、151-52、Ex. N at EX4228)PENDというコードは、加入者がExcelをそのPICとして選んだが、LECがまだその選択を確認していないことを示す。資格コードがCXXである場合には、その加入者はもはやExcelに関係していない。9898というコードは、その加入者の電話番号が、顧客がExcelにPIC'dできない地域にあることをを示す。そしてブランクという資格コードは、その加入者がExcelと関係した事がないことを示す。

          コレクターは受け取った情報を処理し、それを使って、「収集記録」と呼ばれる新しいメッセージ記録を生成する。「収集記録」には、発呼と被呼の両加入者の資格コード、および書式変更された最初のCDR情報が含まれる。収集記録は、メッセージ記録に含まれる情報に基づき、[*53]通話に適用される料金を決定する「料金計算器」に送られる。本件において特に重要なのは、料金計算器が資格コードを見て、両加入者が各通話に関して割引を受ける資格があるのか判断することである。(注20)料金が計算されると、料金付き記録が生成される。この記録はその後書式変更され、加入者へ直接請求するために、LECまたはExcelのシステムの他の部分に送られる。

注20 争点のExcelのプログラムは、発呼および被呼の加入者がアクティブなExcelの顧客であるか否かを判断するために作られたが、料金計算器は実際には、取り消されたコードの存在をチェックしているのみである。この設計の結果、顧客は資格コードがCXXでない限り割引を受ける。つまり、Excelは、割引が保証されていない場合にも「割引をしているかもしれない」と認める。 '184号特許で開示されたPIC標識を使用すれば阻止される状況である。

              本件における証拠の審査により、原告は[*54]証拠の優越によって、「[ '184号特許]の各限定は、提訴された[方法]によって文言通りに満たされる」ことを立証したことが明らかになる。争点の独立クレームは、二段階からなる方法を開示している:(1) 各地域間電話に対してメッセージ記録を生成し、(注21)(2) そのメッセージ記録に、PIC標識、または少なくともそのIXCが発呼加入者の、もしくは発呼および被呼の両加入者のPICであるか否かの関数である値をもつ「標示」を含める。1993年Excelシステムは、Excelが伝えた、課金すべき各地域間電話に対してメッセージ記録(収集記録)を生成し、その記録内に、被呼加入者および発呼加入者が通話時に、予め定められていた電話事業者であるExcelにPIC'dされていたか否かを指示する値(たとえばACTV)をもつ標識(資格コード)を含める。(注22)さらに、従属クレーム4、13、19および独立クレーム40で要求されるように、1993年Excelシステムでは、標識の値は、Excelの加入者の実質的にすべての電話番号を含むExcelのデータベース(「PDB」)にアクセスすることによって決定される。また従属クレーム6、15および21で教示されるように、標識(資格コード)の値は、加入者のプランの下で割引が認められるか判断するために、その後の請求処理[*55]において使われる。したがって、1993年Excelシステムは '184号特許の主張されているクレームを文言通りに侵害すると、本法廷は結論付ける。

注21 クレーム1と40は「地域間電話」のメッセージ記録の生成を教示するが、クレーム12と18は「課金すべき各地域間・・・」に対するメッセージ記録の生成を教示する。

注22 1993年Excelシステムは、被呼加入者の資格コードおよび発呼加入者の資格コードを含む。つまりクレーム18に関しては、もし両加入者がExcelにPIC'dされているならば、標識の値は「ACTV ACTV」となる。

B. 無効

              「特許は有効であると推定され、§112の下でか否かにかかわらず、無効の立証責任は異議申立て者にある。無効は、明確かつ納得できる証拠によって裏付けられた事実によって証明されなければならない」。United States v. Telectronics, Inc.、857 F.2d 778、785(連邦巡回区、1988)。[*56]Excelは、 '184号特許は先行技術に鑑みて35 U.S.C.§102(予測性)および§103(自明性)に基づき無効であると主張する。(注23)

注23 Excelは最初は、§102に基づく予測性、および§103に基づく自明性を根拠にサマリジャッジメントを求めた。(D.I. 185)1997年12月23日、Excelはデラウェアの地方規則7.1.3で課された40ページ制限を超えているとのAT&Tの異議に応えて、本法廷はExcelに、サマリジャッジメントのためにその摘要書から2つの先行技術の資料を選択するように命令した。(D.I. 209)1998年1月6日、ExcelはAT&Tに、サマリジャッジメントにおいては、1991年ExcelシステムとMCI Friends & Familyの先行技術資料が、 '184号特許を予測すると主張すると伝えた。しかし本法廷は、論点が提出された記録によって適切に構成されているので '184号特許の先行技術に対する自明性も議論する。

1. 35 U.S.C.§102の適用

              予見性に基づく特許の無効性は、事実問題である。Glaverbel Societe Anonyme v. Northlake Mktg. & Supply, Inc.、45 F.3d 1550、1554(連邦巡回区、1995)。[*57]予測性は、適切に解釈されたクレームの各要素が単一の先行技術の資料の中にあれば証明される。同上参照。PPG Indus., Inc. v. Guardian Indus. Corp.、75 F.3d 1558、1566(連邦巡回区、1996)、Scripps Clinic & Research & Found. v. Genentech, Inc.、927 F.2d 1565、1567(連邦巡回区、1991)も参照。「発明の分野で通常の技術をもつ人が見たとき、クレームされた発明と当該資料の開示との間に相違があってはならない」。Scripps Clinic & Research & Found.、927 F.2d at 1576

              特許を受けた発明が予見されるか否かの判断においては、クレームは、それが属する、発明が説明されている特許明細書の文脈で読まれる。明確さを与えるあるいは曖昧さを避けるために必要ならば、特許権者の発明が新規であるか既知のものであるかの確認のために、審査経過および先行技術も参考にすることができる。

              Glaverbel Societe Anonyme、45 F.3d at 1554。外部証拠は「資料の開示を説明するために」適切なときもある。Scripps Clinic & Research & Found.、927 F.2d at 1576。「予見性は、クレームされた発明のすべての側面がすでに単一の資料の中で説明されていることを必要とする」ので、外部証拠[*58]の「範囲と証明能力は限定されている」。同上。したがって外部証拠は、「クレームの限定を満たすために、資料で開示されているもの以上の事実を証明するために使うことはできない。外部証拠の役割は、発明の分野で通常の技能をもつ者にとって当該資料が何を意味するかを裁判官に教えることであって、当該資料に欠けているものを補うことではない」。同上。

              しかし、欠けているクレーム要素が当業者の知識の内にある場合、予見性が確定することもある。In re Graves、69 F.3d 1147、1152(連邦巡回区、1995)参照。「資料中のこのギャップは、外部証拠に頼ることによって満たされる」。Continental Can Co., USA, Inc. v. Monsanto Co.、948 F.2d 1264、1267-68(連邦巡回区、1991)。「かかる証拠は、欠けている記述的事項が当該資料で説明されているものの中に必ず存在しており、当業者あればそのように認識するであろうことを、明確にしなければならない」。同上(In re Oelrich、666 F.2d 578、581(C.C.P.A.1981)を引用)。したがって、当該分野で通常の技能をもつ者の知識という外部証拠は[*59]、下記のような状況で適切となる。

              技術者の共通の知識は資料に記録されない。つまり技術上の事実が、裁判官は知らなくても当該発明の分野の人々には知られている場合。

              948 F.2d at 1269。したがって外部証拠は予見性の決定においては範囲が限定される。資料の説明には使えるが意味の拡大には使えない。In re Baxter Travenol Labs.、952 F.2d 388、390(連邦巡回区、1991)参照。

              本件においてExcelは、MCI Friends & Familyプログラムおよび自身の1991年請求計算システム(「1991年Excelシステム」)の双方が '184号特許を予測すると主張する。(注24)予め特定されている12人の加入者という電話サークルに限定されていた、初期のMCI Friends & Familyシステムが '184号特許の先行技術であることは、AT&Tは認める。(D.I.230at 6 n.2)しかしAT&Tは、1991年Excelシステムは '184号特許の最初の発明日に先立っていないので、予見させる先行技術とみなすことはできないと主張する。

注24 Excelはまた、 '184号特許はBellcore EMI標準およびAT&A自身のOptimum Serviceによって予見されると主張する。

              1991年Excelシステムの動作は、前述の1993年Excelシステムに似ている。1991年Excelシステムの一部として、顧客の資格コードがPAYOR-STATUSフィールドのメッセージ記録内に置かれる。(D.I. 198 at A701-02)1993年Excelシステムに使われているものと同一のこれらのコードは、電話料金を請求される加入者の資格のみを指示していた。(D.I. 198 at A703-04、A1033、A1102)したがって、1991年Excelシステムの資格コードは、被呼加入者が電話料金を請求される場合、つまり1-800電話でのみ、被呼加入者のPICを反映していた。(D.I. 198 at A707-08、A1120、D.I. 230、Ex. 19 at 22、24)本法廷はそのクレーム解釈において、 '184号特許のクレームの範囲から1-800電話を除外した。したがって1991年Excelシステムは、主張されているクレームの要素には読み取れない。

              したがって本法廷にとって残されているのは、MCI Friends & Familyプログラムが、主張されているクレームの要素に読み取れるかという問題である。その製品資料で説明されているように、MCI Friends & Familyは「MCIの顧客に、最も頻繁に電話をする家族や友人のサークルを作り、それらの人々への電話に対して[*61]20%割引を受けるように呼び掛けた」。(D.I. 199 at A1462)「住宅で利用しているダイアル1顧客ならばだれでもMCI Friends & Familyプログラムに参加できた」。(D.I. 199 at A1470)「[しかし]割引を受けるには、家族あるいは友人もMCI顧客でなければならない」。(D.I. 199 at A1462)

              MCIはMCI Friends & Familyプログラムを、1991年3月に正式に発表した。MCIは1991年3月または4月からその注文を受け入れはじめた。1991年4月末までには

Friends & Familyのすべてのシステムはテストを完了し、生産に入った。しかしFriends & Familyディスカウントの提供に入る前に、[MCI]は端末間テストを実施し、その時点まで登録した顧客のすべてのデータが、実際に請求システムに流れ、適切に割引されることを確認しようとした。

(D.I. 198 at A808)「ソフトウェアは作動し」、その結果、実際のMCI Friends & Family顧客に対する最初の請求作業が1991年5月3日から5月7日の間に行われた。(D.I. 198 at A806-808)

MCI Friends & Family顧客に対する請求書の作成プロセスは、1991年4月には下記の通りであったことが証拠付けられた。まず電話がMCIの[*62]長距離ネットワークに伝えられる。

その電話を伝えるMCIネットワークの交換機は、AMA記録と呼ばれる電話詳細記録を生成する・・・それには、日付、時間、発呼地、被呼地、通話時間等々の、ネットワークが見た電話についての情報が含まれる。

(D.I. 198 at A796)弁護士はMichael Friedmanの供述録取書から、有用と思われる多くのページを落としてしまったようだが(付録は78ページから86ページに飛んでいる)、電話詳細記録のデータはさらに、「電話標示を行う」ソフトウェア・プログラムによって処理されると本法廷は考える。つまりそのプログラムは「通話詳細1レイアウトを出力として生成する論理」を含んでいる。(D.I. 198 at A798、Ex. 132)証拠物132に記載されている通話詳細記録に含まれている欄の中に、「通話詳細FNFタイプ」がある。「FNF」は「Friends & Family」を意味する。(D.I. 199 at A1649、行番号2143)1991年4月、通話詳細FNFタイプ欄が反映できた値は3つあった:(1) Friends & Family顧客が「MCIにPIC'dされたアクティブ・サークル・メンバーに」かけた電話、(2) Friends & Family顧客がその顧客のFriends & Familyサークルのノン・アクティブ候補者に」かけた電話[*63](「ノン・アクティブ候補者」とは、MCIにPIC'dされていない人を意味する)、そして、(3)「他のすべての電話を指すブランク値」。(D.I. 198 at A802)これらの値はMCI顧客データベース、特に、

              どのMCI顧客が、割引のためにどの被呼電話番号を選択したかを示し、さらに、それらの被呼電話番号のうち、どれがMCIにPIC'dされており、したがってFriends & Familyディスカウントを受けられるか、あるいはどれがMCIにPIC'dされていおらず、したがってFriends & Familyディスカウントを受けられないかを示すPairs Databaseにアクセスすることによって提供された。

(D.I. 198 at A817、D.I. 199 Ex. 132 at A1744、行番号5910、A1775、行番号7122-7131)つまり、「通話情報がペア情報と比較されるのは・・・」この電話標示プログラムにおいてである。(D.I. 198 at A818)結局、「もし[Friends & Family]標識が設定されれば、そのことは、電話が、Friends & Familyに加入しているMCI顧客から、MCIにPIC'dされている被呼電話番号へのものであったことを意味し、したがって、この電話標識に基づきその通話は20%の割引を得る」。(D.I. 198 at A819)

              電話標示プログラムが終了すると、それによって作られたファイル、[*64]通話詳細1ファイルは、「MCIの業務用コンピューター上の電話詳細記録のファイル」となる。通話詳細ファイル内の各記録が一通話に対応する。(D.I. 198 at A802-803)通話詳細1記録は次に、「通話詳細記録にさらに情報を加え、通話詳細2と呼ばれる出力を生み出す・・・電話割引要約プログラム」という別のプログラムを通る。(D.I. 198 at A803)このプログラムにおいて、Friends & Family標識欄が「Friends & Familyディスカウントを計算・・・するためにアクセスされるが、修正はされない」。(D.I. 198 at A803-804)この段階は次のように説明される。

              このプログラムの論理には、TRFD FNFタイプの欄を見る数行のコードがある。もしそれが、FNF割引を適用すべきであることを示す値をもっているならば、それは合計レベルでのディスカウントなので、その顧客のための処理が完了した後にFriends & Familyディスカウントが計算できるように、電話料金が合計される。

              (D.I. 198 at A804)通話詳細2記録は再度、「請求書提出」のために使われる。請求書提出プログラムは、通話詳細2ファイル[*65]および幾つかのその他のファイルを読み・・・印刷可能なフォーマットの請求書、またはEMIフォーマットでのファイルを作成し、[MCI]のために印刷を行う地域内電話事業者に送る。(D.I. 198 at A804-805、D.I. 200 Ex. 135 at A2076、行番号6069、A2079、行番号6186、A2085、行番号6481-6487)

              AT&Tは、Friends & Family標識は、 '184号特許で使用された意味でのPIC標識ではないので、MCI Friends & Familyプログラムは '184号特許の主張されているクレームのいずれも予測しないと主張する。記録における争われていない証拠によれば、顧客の電話を伝える設備保有IXCであるMCIは、各地域間電話に対してメッセージ記録を生成し、それらの記録のうちの幾つかに、被呼加入者が通話時に、予め定められていた事業者であるMCIにPIC'dされていたかなどを示す値をもつ標識を含める。つまりMCIの先行技術はクレーム1の各要素で読み取れる。(注25)MCIの標識が、予め特定されている電話サークル内の人に向けられた電話にのみ含められるということは、この結論を変えない。クレーム1の表現は、PIC標識は発呼加入者が行ったすべての地域間電話のメッセージ記録に含められることは[*66]明示的に要求しておらず、かかる限定はこのクレームの中に読み取れない。つまり、被呼加入者がMCIにPIC'dされている幾つかの場合には標識が「設定されない」ということは、無関係である。クレームは、設定するための条件が存在するときには常に標識が「設定される」ことを要求していないからである。

注25 すでに指摘したように、クレーム1は、メッセージ記録は各通話ではなく「各」地域間通話に対して生成されることのみを要求している。

              しかしクレーム12と18の表現は、「課金されるすべての地域間電話」における「標識」の提供を要求する(強調追加)。被呼者が予め特定されている電話サークル内にはいない電話に対しては、被呼者がMCIにPIC'dされていたか否かを示す標識はメッセージ記録内に含まれない限りにおいて、MCI Friends & Familyプログラムは '184号特許のクレーム12および18を予測しない。しかしMCIのソフトウェアのプログラムが[*67]メッセージ記録内に、上記の値のいずれかをもつ標識を含めることができるという事実は、(注26)被呼者が通話時にMCIにPIC'dされていたか否かのみを反映する標識を含めることが、発明の時点でその分野で通常の技能をもつ、MCIシステムのみを見た人の知識内に充分に入っていたと、本法廷に信じさせる。

注26 その値は多くの場合、被呼加入者がMCIにPIC'dされていたか否かばかりでなく、その加入者が予め特定されている電話サークルに含まれていたか否かも指示する。

              本法廷は、MCI Friends & Familyプログラムと '184号特許双方が、差別化された請求処理が保証されているか否かを示す値である標識を含む、メッセージ記録を生成する方法に向けられていることは意識している。かかる標識がMCI Friends & Familyプログラム内で生成されたある種のメッセージ記録には含まれないという事実は、プログラマーの技能または知識の欠陥を示すものではなく、それらのMCIメッセージ記録の中にかかる標識を含めることを必要とする割引をオファーする[*68]経済的動機がないことの反映である。実際、Michael Friedmanによれば、プログラミングの観点からは、無制限の「MCI対MCI」プログラムのためのソフトウェアを開発し実施することは、制限付きのFriends & Familyアプローチの場合よりも、「まったく単純で」あった。(D.I. 198 at A832)したがて本法廷は、「欠けている説明的事項は、当該資料に説明されているものの中に必ず存在しており、通常の技能をもつ者によってそのように認識される」と結論付ける。Continental Can Co.、984 F.2d at 1267-68

              クレーム4、13、19および40は、特定のIXCの加入者の「実質的にすべて」の電話番号を含むデータベースにアクセスするさらなる段階を含む。MCI Friends & Familyプログラムにおいては標識の値は、実質的にすべてのMCI加入者のリストを含む、MCI顧客データベース内のサブディレクトリーにアクセスすることによって提供される。したがって、MCIの先行技術はクレーム4、13、19および40で読み取れる。評価が完全な顧客データベース自体ではなく、[*69]サブディレクトリーにアクセスすることによってなされるという事実にも関わらず、これらのクレームの要求は満たされる。サブディレクトリーへのアクセスは、クレーム表現によっては阻まれない。さらに、サブディレクトリーに含まれる情報は、MCI顧客情報の、より大きなデータベースから抽出されている。実質上、電話の評価プロセスにおいては完全な顧客データベースが評価される。

              従属クレーム6、15および21は、PIC標識の値の関数として、地域間電話のうちの「少なくとも一つ」に請求をする、さらなる段階を開示する。記録にある証拠によれば、メッセージ記録におけるMCI標識の値は、加入者に請求をするときに適用される割引を評価するためにアクセスされることがわかる。したがって、MCI Friends & Familyプログラムは従属クレーム6、15および21で読み取れる。

上記のことに合致して、本法廷は、 '184号特許の主張されているクレームは、MCI Friends & Familyプログラムによって予見されると結論付ける。したがって '184号特許は、35 U.S.C.§102に基づき無効である。

2. 自明性

              本訴訟の手続経過、および '184号特許はMCI Friends & Familyによって予測されるという認定にも関わらず、[*70]本法廷は、 '184号特許は先行技術に鑑みて自明であるというExcelの主張を議論する。35 U.S.C.§103に基づけば、特許は

              もし、特許を求めた主題と先行技術との相違が、主題全体を、発明がなされた時点で、主題が関係する分野で通常の技術をもつ人にとって、自明とするようなものであれば、無効である。

              自明性の認定は、「[特許の]主題と先行技術との相違が、主題全体が、発明がなされた時点で、その主題が関係する分野で通常の技術をもつ人にとって自明であった」との判断を含む。35 U.S.C.§103。自明性の最終的判断は、基礎となる事実の調査に基づく法律問題である。Richardson-Vicks Inc. v. UpJohn Co.、122 F.3d 1476、1479(連邦巡回区、1997)参照。これらの事実の調査には、いわゆる4つのGraham要素の検討が含まれる:(1) 先行技術の範囲と内容、(2) クレームと先行技術との相違、(3) 関係する分野における通常の[*71]技術のレベル、(注27)そして、(4) 商業上の成功など、非自明性の二次的考察である。(注28)Graham v. John Deere Co. of Kansas City、383 U.S. 1、17-18、15 L. Ed. 2d 545、86 S. Ct. 684(1966)、B. F. Goodrich Co. v. Aircraft Braking Sys. Corp.、72 F.3d 1577、1582(連邦巡回区、1996)

注27 事実認定者は発明を、「例外的な技能をもっているかもしれない発明者の目を通してではなく、「通常の技能」をもつ者によって」評価すべきである。Interconnect Planning Corp. v. Feil、774 F.2d 1132、1138(連邦巡回区、1985)

注28 商業上の成功の二次的考察というこの最後の要素に関しては、本法廷は、Excelの収入、顧客層あるいは市場での地位の向上が、 '184号特許で開示されたPIC標識をメッセージ記録内に含めたことと関係しているとは納得しない。むしろ、Excelの商業上の成功は、それが提供する割引パッケージに関係しており、計算請求システムの作動とは別である。したがって本法廷は、この要素は自明性の議論にとっては証拠価値はほとんどないと認定する。

              「明確かつ納得できる証拠による[特許クレーム]の無効の立証は、出願の審査中に先行技術をPTOの審査官が知っていた場合には、特に困難である」。Hewlett-Packard Co. v. Bausch & Lomb Inc.、909 F.2d 1464、1467(連邦巡回区、1990)。しかし、「[主張されている]資料に鑑みての自明性について・・・PTOの見解が示されていない場合には、立証責任は・・より容易に果たすことができる」。EWP Corp. v. Reliance Universal Inc.、755 F.2d 898、905(連邦巡回区、1985)。しかし無効性の立証責任は、特許に異議を唱える当事者側にとどまる。Hybritech, Inc. v. Monoclonal Antibodies, Inc.、802 F.2d 1367、1375(連邦巡回区、1986)、American Hoist & Derrick Co. v. Sowa & Sons, Inc.、725 F.2d 1350、1358(連邦巡回区、1984)参照。

              議論を最小限にするために、自明性の評価において本法廷は、MCI Friends & FamilyプログラムとBellcore EMI標準のみを検討する。どちらも明らかに '184号特許の先行技術である。(注29) '184号特許の発明者にとっての問題は、地域間電話に対して生成されたメッセージ記録の中に、PIC標識つまり、少なくとも被呼加入者または被呼と発呼の加入者双方のPICの関数である値[*73]を、いかにして含めるかということであった。どちらの先行技術の資料も、争点の主題に向けられているので、ここでの議論に関係する。MCI Friends & Familyプログラムの範囲はすでに議論した。Bellcore EMIは、「Bellcore Client Companiesと地域間電話事業者との間の、料金請求に関するメッセージ情報の交換のために使用される」EMI記録の標準フォーマットを説明する。(D.I. 201 at A3184)この資料は、メッセージ記録の中で、1-800電話における被呼番号に付随するIXCを反映した標識を使用することを教示する。(D.I. 198 at A694-95、D.I. 201 at A3195-96、A3197、A3199)。

注29 Bellcore EMI標準は1990年8月16日に公表され提供された。(D.I. 198 at A764-65、D.I. 201 at A3183-90)本法廷は、 '184号特許でクレームされた発明が、1990年8月よりずっと以前、その特許の出願日(本法廷は1990年8月31日とみなす)よりも前に考えられたという主張を裏付ける証拠力のある証拠をほとんど提出しなかったことに留意する。(D.I. 230 at 13 n.5およびそこで引用されている参考資料)すでに指摘したように、MCI Friends & Familyは1991年5月7日より前に作動していた。 '184号特許の出願は1992年5月であった。

              すでに指摘したように、先行技術と、 '184号特許のクレームされた主題との間にはほとんど相違はない。したがって本法廷はその自明性分析において、MCI Friends & Familyによっては明確に予測されなかった要素、つまり「課金されるべき・・・各地域間電話」(強調追加)への「標示」あるいは「PIC標識」の提供のみを議論する。この要素に関しては、電気通信システムでは顧客を引き付けるために割引を提供する競争があるので、この分野で通常の技能をもつ人はより幅広い割引を提供するために、MCI Friends & Familyプランを修正することを考えただろう。発明の時点でこの分野で通常の技能をもつ人は、(注30)MCIの先行技術の教えをBellcore EMIの先行技術の教えと組合せ、すべての通話に対して被呼加入者のPICを指示した記録の中にPIC標識を挿入することがわかっただろう。さらに、通常の技能をもつ人は、PIC標識の値が、[*75]IXCの加入者の電話番号を含むデータベースにアクセスすることによって決定されうること、そして割引はその値に基づき計算されうることをMCI Friends & Familyプログラムの教えから認識しただろう。したがって本法廷は、クレームされた発明は予見されなかったとしても、先行技術を鑑みて自明であると結論付ける。

注30 AT&Tによれば、発明時に通常の技能をもっている人とは、学位をもち、長距離電話サービスを提供する地域間電話事業者のためのプランの開発および請求システムの設計に2年から4年の経験をもつ人である。(D.I. 201 at A2829)Excelは、この分野での通常の技能のレベルとはAT&Tの主張よりもずっと高いと主張するが、AT&Tの基準でも、クレームされた主題は先行技術に鑑みて自明であったと論じる。(D.I. 185 at 28)

VII. 結論

              以上の理由により本法廷は、1993年Excel請求計算システムは '184号特許を侵害していると認定する。しかし本法廷は、 '184号特許は無効であり、したがって、35 U.S.C.§§102および103の下で実施不能であると認定する。適切な命令[*76]が下される。