原告Baystate Technologies Inc., v. 被告Harold L. Bowers, d/b/a/ HLB Technology

民事訴訟No. 91-40079-NMG

マサチューセッツ州米国地方裁判所

1999年米国地方裁判所LEXIS検索システム19538

1999年12月17日判決

処分: [*1] 再審済み米国特許No. 4,933,514(名簿番号129)の侵害がないことに関して部分略式判決を求める原告の申立てを却下し、被告/反対原告の特許(名簿番号125)の侵害の争点に関して部分略式判決を求める被告/反対原告の申立てを却下する。

弁護士: BAY STATE TECHNOLOGIES, INC、
原告: マサチューセッツ州ウスター、Bowditch & DeweyのLouis M. Ciavarra, George B. Sanders, Jr.

BAY STATE TECHNOLOGIES, INC、原告:

マサチューセッツ州ボストン、Bromberg & SunsteinのRobert M, Asher, Lee C. Bromberg, Robert L. Kann, Julia Huston

HAROLD L. BOWERS、被告:

ワシントンD.C.、Banner & Witcoff, Ltd.のFredrick M. Meeker, Steeve S. Chang

HAROLD L. BOWERS、被告:

マサチューセッツ州ボストン、Banner & Witcoff, Ltd.のDale A. Molone, Gregory J. Cohan

HAROLD L. BOWERS、反対原告:

マサチューセッツ州ボストン、Banner & Witcoff, Ltd.のDale A. Molone

BAY STATE TECHNOLOGIES, INC.、反対被告:

マサチューセッツ州ウスター、Bowditch & DeweyのLouis M. Ciavarra, George B. Sanders, Jr.

BAY STATE TECHNOLOGIES, INC.、反対被告:

マサチューセッツ州ボストン、Bromberg & SunsteinのJulia Huston

判事: 米国地方裁判所判事、Nathaniel M. Gorton

意見: Nathaniel M. Gorton

意見: 簡単な判決および命令

GORTON, J.

本件は、原告Harold L. Bowers, d/b/a HLB Technology(「Bowers」)が所有する米国特許No. 4,933,514'514特許)の解釈に関するものである。1991年5月16日に、原告Baystate Technologies Inc(「Baystate」)は、次の争点に関する確認判決を求めて、Bowersに訴えを起こした。1) その製品が'514特許を侵害していないこと。2) '514特許が無効であること。3) '514特許が強制不能であること。Bowersは、特許侵害、著作権侵害、ライセンス契約違反に関して反訴を提起した。

Baystateは後に訴えを修正して、追加の請求を加えた。本裁判所には、すべての請求および反対請求に関する(正式事実審を経ない)略式判決を求める交差申立てと、開示および正式事実審前の事項に関連するその他のさまざまな申立てが行われている [*2]。この簡単な判決文では、特許侵害に関する略式判決の交差申立てのみを扱う。

係争中の特許は、コンピュータ支援設計(「CAD」)ソフトウェアの操作を簡単にするためのテンプレートとタブレット装置の設計に関するものである。BowersとBaystateは共にこのようなテンプレートを生産し、販売している。

I. 背景

A. '514特許

Bowersはテンプレートを発明し、生産して、Cadjetという名前で販売した。CadjetはCadkeyという特定のCADプログラムの使用と操作を簡単にすることを目的としていた。Bowersはその発明の特許を申請し、'514特許を取得した。

一般に、CADプログラムを使用すると、コンピュータで概略図、機械図面、その他の設計を行うことができる。Cadkeyはほとんどのソフトウェア・プログラムと同様に、メニュー駆動型の先進コンピュータ・ソフトウェア・プログラムである。つまり、ユーザーはメニューからコマンドを選択することによって、そのプログラムの機能を利用する。

メニューから特定のコマンドを選択すると、場合によっては別のメニューが表示され、そのメニューから再び選択を行うことができる。たとえば、Cadkeyには「作成」「コントロール」、「変形」、「編集」、「表示」、「詳細」、「削除」、[*3]「ファイル」という名前の8つの「メイン・メニュー」がある。線を引くには、まず「作成」メニューをクリックする。すると、「線」、「円」、「弧」などの「作成」できるさまざまな図形の一覧が表示される。次に、「線」を選択すると、さまざまな種類の線を一覧表示する別のメニューが表示される。この一覧で、希望する特定の線を選択すると、コンピュータによってその線が引かれる。

メニューを使ってこの手順を実行するには時間がかかる。Bowersの製品(Cadjet)は、このプログラムの使用を簡単にすることを目的としている。この製品は、キーボードやマウスのようにコンピュータに接続される「タブレット装置」というコンピュータ装置を使用する。タブレット装置はポインティング・デバイスの位置を検出するために使用される電子グリット上の2次元作業面である。グリッド上の各四辺形には、コンピュータで実行できる特定の作業が割り当てられる。コンピュータで特定の作業を実行したいユーザーは、タブレット装置上の適切な場所に、(マウスにやや似ている)ポインティング・デバイスを置いて、ボタンをクリックする。これはマウスまたはキーボードの入力によって、コンピュータ画面上に表示される [*4] プログラムのメニュー階層を操作するコマンド選択に代わるものである。

特許を取得したBowersの製品は、必要な機能を実行する場合にポインティング・デバイスを動かす場所を視覚的にユーザーに示すために、タブレット装置上に置かれるテンプレート(半透明の膜)である。テンプレートは、コンピュータで実行できるさまざまな機能に対応し、'514特許では「しるし(indicia)」と呼ばれている小さな記号と文字が印刷されている。別のソフトウェア・プログラムが、各コンピュータ・コマンドをタブレット上の特定のグリッドに割り当てて、コンピュータとタブレット間をリンクする。

テンプレートは、ユーザーがCadkeyのメニューを通じて利用できる多数のコマンドの配列を視覚的に示している。実質的に、テンプレートは、ある機能を実行するために画面上のメニュー階層を操作する必要をなくすために、コンピュータ・プログラムからメニューを取り出して、ユーザーの前にあるテンプレートにメニューを広げる。それどころか、ユーザーはテンプレート上のしるしから必要な機能を直ちに選択することができる。たとえば、ユーザーが線を引きたい場合には、必要なコマンドを見つけるためにコンピュータ [*5] 画面の3階層のメニューを操作しなくても、引きたい線の種類が描かれている四辺形上にポインティング・デバイスを置くだけで実行できる。

Bowersの'514特許は、テンプレート上でCadkeyのコマンドを整理して表示する方法を記述している。推奨実施例(Cadjetテンプレート)は、テンプレートの2つの層から構成されているため、実際には「テンプレートの組」である。底面のテンプレートは、ボックス状のグループに整理された方形ブロック状のグリッドで構成されている。各グループは特定の色によって識別される。2番目の透明なテンプレートは、底面のテンプレート上に添付され、「しるし」が印刷されている。しるしとは、必要な機能を実行するためにポイントするテンプレート上の位置を示すために黒で印刷された文字とアイコンである。

2つのテンプレートを使用することによって、Bowersの発明品のユーザーは、コンピュータ・プログラムがアップグレードされるたびにその製品を買い換えるコストを節約することができる。この製品を変更するには、上面の白黒の透明な膜を交換するだけで済み、カラーのテンプレートはそのまま使用し続けることができる。これによって、プログラムが修正されるたびに、より高価なカラー・テンプレートを再印刷するコストが大幅に削減される。

Baystateの製品、DRAFT-PAKは、設計と機能の両方に関して、BowersのCadjet製品に似ている。DRAFT-PAKはCadjetと同様に、タブレット装置を使用して、Cadkey設計ソフトウェアのさまざまなコマンドを実行することができるテンプレートである [*6]。

B. '514特許の審査

Bowersは、1989年に米国特許商標庁(「PTO」)に初回の特許申請を行った。PTOは1990年に'514特許を発行した。1991年に本訴訟が提起され、Bowersは以前に開示された先行技術に照らして特許の審理を受けるために、1993年にPTOに'514特許の再審査を請求した。その要求はすぐに認められた。

特許審査官は、1993年7月13日に審査官通知を発行して、'514特許クレームを先行技術から区別しようとするBowersの要求を拒絶した。次に、Bowersはクレームを補正して、その拒絶に異議を申立てた。審査官は1994年4月1日に、第2審査官通知を発行して、先行技術に照らして自明であることに基づいて、そのクレームを拒絶した。Bowersは再び補正を行って拒絶に異議を申立てたが、審査官は1994年10月5日に、第3および最終審査官通知を発行して、Bowersのクレームが先行技術に照らして自明であることを根拠として、その拒絶を繰り返した。

Bowersは応答および補助宣誓供述書 [*7] を提出し、審査官は1995年1月5日にアドバイス通知を発行して拒絶意見を繰り返し、審判請求期限を設定した。Bowersと審査官が審判請求趣意書を提出した後、PTO審判部は1996年9月10日に意見書を発行し、審査官の見解を覆して、'514特許を再発行した。また、補正されたクレームについて、再審査証明書が発行された。

再審査手続きでは、以前に開示された先行技術のKeymasterテンプレートに照らして、'514特許の有効性が審理された。Keymasterテンプレートは、実質的に'514特許で開示された装置と同じ機能を実行する。すなわち、これはCadkeyプログラムのさまざまなメニュー・コマンドを表す文字と記号を含むタブレット装置で使用するためのテンプレートである。Keymasterテンプレートと'514特許で開示された装置は、どちらも色によって区別されるグループにコマンドを整理している。

再審査手続き中に、Bowersはテンプレート上でコマンドを配置する方法に基づいて、Keymasterからその発明を区別した。審査官は'514特許のクレーム1とKeymaster間に1つの相違点を認めたが、当該技術分野において技量を有する者 [*8] が、開示された変更を行うことは自明であったと判断した。PTO審判部はこの判断を退けて、審査官が審理していない別の相違点がBowersによって指摘されていることを示した。


C. 現在の訴訟

この訴訟のクレーム解釈に関する本質的な争点は、Bowersが再審査手続き中にKeymasterテンプレートと自らの発明とを区別しようとした方法にある。特許法は、特許権者が審査中に否認した解釈が排除されるように、クレーム用語の解釈を制限している。Southwall Technologies, Inc. v. Cardinal IG Co., 54 F.3d 1570, 1576(連邦巡回控訴裁判所 1995)。したがって、本裁判所は、再審査手続き中にBowersがクレーム内の意味と範囲に関して自らの意図を示した陳述と合致するように、クレームを解釈しなければならない。

Baystateはクレームの解釈を示し、再審査手続き中にBowersが陳述した制限のために、その解釈が要求されると主張している。Bowersは、Baystateの主張では審査記録の解釈が誤っており、特許が不適切に制限されていると反論する。さらに、Bowersは、Baystateの解釈では、開示された発明の唯一の実施例が特許クレームの範囲から外れるため、Baystateの解釈は正しいはずがないと主張している [*9]。Virtonics Corp. v. Conceptronic, Inc., 90 F.3d 1576, 1583(連邦巡回控訴裁判所 1996)で、連邦巡回控訴裁判所は、推奨実施例が特許クレームの範囲から外れるような特許の解釈が「正しいことは稀であり、非常に説得力のある証拠が必要である」と判示した。

D. クレーム

次に、再審査済み特許のクレーム1を示す。

1.    CPU(中央処理装置)、データ入力のために複数のキーがあるキーボード入力ステーション、データ入力のためにポインタの位置の動きに反応する最低1つのポインタ・ボタンがあるポインティング・デバイス・ステーションを有し、最終的な操作機能を選択するために、上記のキーボードまたはポインタでの連続的な入力によってアクセスできる選択可能な一連のグループ機能を示すメイン・メニュー層、選択可能なグループ・サブ機能を持つ一連のサブメニューの第1層、および少なくともサブメニューの第2層があるシステム・オペレーティング機能を含むコンピュータ・システムで、改良には次のものが含まれる。

a.     当該ポインティング・デバイスと共に使用するためのテンプレート [*10]。

b.    テンプレート上に整理され、複数のグループ(各グループは当該メイン・メニューの定義済みの選択可能項目に対応する)内に配置されるしるし。対応するグループ内のすべてのしるしは、共通のグループ識別特性を有する。

c.    少なくとも第2レベルの複数のしるし。各しるしは、当該メイン・メニューの項目に対応するサブメニューの定義済み選択可能項目に対応する。

d.    当該タブレットに、一定の方向で当該テンプレートを固定するための手段。そのタブレットで、当該ポインティング・デバイスは、当該ボタンの1回の操作によって、操作機能を選択することができる。
両当事者はb項、c項、d項の意味について争っている。

II. クレームの解釈

A. クレーム解釈の法的原則

特許侵害クレームの決定には、2段階の分析が必要である。第1に、裁判所は意味と範囲を決定するために、主張されたクレームを解釈しなければならない。Texas Instrument Inc. v. Cypress Semiconductor Corp., 90 F.3d 1558, 1563(連邦巡回控訴裁判所1996)を参照。その後、事実認定者は、訴えられた構造物が適切に解釈されたクレームに含まれるかどうかを判断する。同上 [*11]。

クレームの解釈は裁判所での法律問題である。Markman v. Westview Instrument Inc., 52 F.3d 967, 979(連邦巡回控訴裁判所 1995)(大法廷)を参照。クレーム解釈の目的は、当該技術分野で通常の技量を有する人物が、特許申請時に係争中の用語に与えるであろう意味を確かめることである。Wiener v. NEC Electronics Inc., 102 F.3d 534, 539(連邦巡回控訴裁判所 1996)。Haynes International, Inc. v. Jessop Steel Co., 8 F.3d 1573, 1578 n. 4(連邦巡回控訴裁判所 1993)を参照。クレームの文言の意味を確かめるために、裁判所は次の3つの記録の内部証拠を参照する。1) クレーム自体。2) 通常の意味とは異なる意味に用語を定義している限り、明細書。3) クレームの範囲に関して、特許権者の明示的な陳述が含まれている限り、その特許の審査記録。Vitronics Corp. v. Conceptronic, Inc., 90 F.3d 1576, 1582(連邦巡回控訴裁判所 1996)。明細書の図面もクレームの範囲の解釈で使用できる。5 Donald S. Chisum, Patents 18.03 [2] [c] [iii] [*12] at 18-108 (1998)(判例を引用)を参照。

クレームの解釈では、訴えの対象となっているかどうかに関わらず、まずクレーム全体の文言を審査する。Bell Communications Research, Inc. v. Vitalink Communications Corp., 55 F.3d 615, 620(連邦巡回控訴裁判所1995)。明細書または審査記録によって、発明者が明示的に別途指定しない限り、クレームの用語には通常の慣習的な意味が与えられる。Id.; Markman, 52 F.3d at 979(「特許権者は、用語に対して自由に独自の意味を与えることができるが、用語に特殊な意味を与える場合には明細書で明確に定義しなければならない」と述べる)。

裁判所は、クレームがあいまいな場合に限り、すべての入手可能な内部証拠を検討した後に、技術を理解し、クレームを解釈するために、専門家の証言、辞書、学術論文などの外部証拠を参照することができる。Victronics, 90 F.3d at 1584を参照。ただし、クレームの用語を変更したり、否認するために外部証拠を使用することはできない。Markman, 52 F.3d at 981。

クレームは、発明について確認する目的で [*13] 明細書に照らして解釈されるが(Unique Concepts, Inc. v. Brown, 939 F.2d 1558, 1561-62(連邦巡回控訴裁判所 1991)を参照)、明細書の制限はクレームに組み込むべきではない。Sjolund v. Musland, 847 F.2d 1573, 1581(連邦巡回控訴裁判所 1994)。したがって、一般に明細書で使用された例だけにクレームの範囲を制限することは不適切である。Electro Medical Systems, S.A. v. Cooper Life Sciences, Inc., 34 F.3d 1048, 1054(連邦巡回控訴裁判所1994)を参照。

B. 争点

本件の当事者は、クレーム1で使用されている一部のフレーズの意味について争っている。これは特にクレーム1の (b) 項、(c) 項、(d) 項と、それぞれのクレーム項目に関連して再審査手続き中にPTOに対して行われた陳述である。

1.    クレーム1 (b)

a.     初回クレーム

一部を除いて、クレーム1 (b) の文言の意味について、両当事者間に争いはない。ただし、両当事者にはクレームの適用範囲に関して見解の相違がある。この争点は、クレーム1 (b) に含まれる制限が、テンプレート上のすべてのグループに適用されるのか(Baystateの主張)、またはグループの一部のみに適用されるのか(Bowersの主張)に関係する。

Baystateはクレーム1 (b) の文言「各グループは当該メイン・メニューの定義済みの選択可能項目に対応する」は、テンプレート上のすべてのグループが対応するソフトウェアのメイン・メニューに対応していなければならないことを意味すると主張している [*14]。Baystateは、DRAFT-PAKにはCadkeyメイン・メニュー項目ではない「表示」および「マスク」のグループが含まれていると指摘する。

同様に、Baystateは、テンプレート上の特定のグループ内に配置されるしるしがすべて、Cadkeyメイン・メニューの同じ項目の下に含まれていなければならないことが、クレーム1 (b) によって要求されると主張する。たとえば、Cadjetテンプレートの「作成」グループ内にあるすべての項目は、Cadkeyの「作成」メニューの下に存在していなければならない。Baystateは、「計算」はCadkeyの「ファイル」メニューの機能でなくても、DRAFT-PAKではその「ファイル」グループ内に「計算」という機能が含まれていると指摘する。

さらに、Baystateは、Cadkeyの特定のメニューにあるすべてのコマンドは、テンプレート上でグループ化され、同じ「グループ識別特性」を共有しなければならないと主張する。Baystateは、DRAFT-PAKではCadkeyの「詳細」メニューが「詳細/設定」と「詳細/変更」という2つの独立したグループに分かれていることを指摘する。

Bowersは、Baystateによるクレームの解釈に反論せず [*15]、クレームに含まれる制限はテンプレートのすべてのグループには適用されないと主張する。Bowersは、'514特許では、2つ以上のグループがクレームの制限を満たすことだけが要求されていると主張する。この主張は、Baystateが上記の解釈を示したフレーズの前にあり、そのフレーズを修飾している「複数のグループ」というフレーズを根拠としている。たとえば、Bowersは、「複数のグループ」が「各グループは当該メイン・メニューの定義済みの選択可能項目に対応する」というフレーズを修飾しており、すべてのグループではなく、2つ以上のグループがメイン・メニューの定義済みの選択可能項目に対応していれば足りると主張する。

「クレームの用語に新規の意味を与える明示的な意図が示されない限り、発明者のクレームの用語は通常の意味を持つ」。York Products v. Central Tractor Farm & Family Center, 99 F.3d 1568, 1572(連邦巡回控訴裁判所 1996)。Bell Communications Research, Inc. v. Vitalink Communications Corp., 55 F.3d 615, 620(連邦巡回控訴裁判所1995)。Markman, 52 F.3d at 980(特許権者は、用語に対して自由に独自の意味を与えることができるが、用語に特殊な意味を与える場合には明細書で明確に定義しなければならない)。'514特許には、「複数」という用語に対して代替的な [*16] 定義がないため、本裁判所はこの用語に通常の意味を適用する。

辞書では「複数(plurarity)」は「複数(plural)である状態または事実」と定義されている。American Heritage Dictionary Third Edition 1053(3d ed. 1997)。また、「複数(plural)」は、「指定された2つ以上のモノ、そのモノの特性、または文法形式」として定義されている。Id, at 1052いずれの定義にも、特定のモノの「すべて」が指定されることは示されていない。したがって、本裁判所はクレーム1 (b) の文言によって、2つ以上のグループがメイン・メニュー項目に対応することだけが要求されるとするBowersの主張に同意する。

Bowersの見解は、明細書の文言によっても支持されている。明細書は、しるしが「メイン・メニューの定義済み選択可能項目に対応する複数のグループ内」に配列されることを記載している。米国特許No. 4,933,514「発明の簡単な説明」第2列、12-14行。Bowersは実際のクレームでは別の文言を使用しているが、クレームは特許に含まれる明細書に照らして解釈される。Unique Concepts, Inc. v. Brown, 939 F.2d 1558, 1561-62(連邦巡回控訴裁判所 1991)[*17]。'514特許の明細書は、明らかにテンプレート上に複数のグループが存在し、それぞれがメイン・メニュー項目に対応することを要求している。2つ以上のグループを含み、それぞれのグループがメイン・メニュー項目に対応しているテンプレートはこの制限を満たす。クレーム1 (b) は、テンプレート内のすべてのグループがメイン・メニュー項目に対応することは要求していない。

Bowersは、「複数」の解釈を支持する説得力のある補足的な主張をしている。Baystateの主張を受け入れると、推奨実施例は特許の範囲に含まれなくなってしまう。テンプレート上のすべてのグループがCadkeyのメイン・メニュー項目に対応することを要求しているとクレーム1 (b) を解釈した場合、'514特許で詳述された推奨実施例は、その特許の範囲から外れる。これは推奨実施例(Cadjetテンプレート)には、Cadkeyのメイン・メニュー上にないグループがいくつか含まれているためである。推奨実施例が特許の範囲から外れるような特許の解釈は、「正しいことは稀であり、非常に説得力のある証拠が必要である」ことは明らかである。Vitronics Corp. v. Conceptronic, Inc., 90 F.3d 1576, 1583(連邦巡回控訴裁判所 1996)[*18]。このような「稀」な解釈を支持するためにBaystateが提示する唯一の証拠は、再審査手続き中にBowersがPTOに対して行った陳述だけである。次の項で説明するように、再審査手続き中のBowersの陳述は、Baystateによって誤って解釈されている。したがって、本裁判所は、推奨実施例を特許の範囲外にするような'514特許クレームの解釈は行わない。

b.    クレーム事後再審査

Baystateは、PTO再審査手続き中のBowersによる陳述のために、自ら示すクレームの解釈が要求されると主張している。Baystateが根拠としているBowersの陳述を次に示す。

「Keymasterテンプレートの各グループは、Cadkeyシステムのメイン・メニューの選択可能項目に対応してない。たとえば、Keymasterテンプレートの「位置」グループ下にある「選択」グループは、操作機能を選択するためのCadkeyシステムの最後のサブメニューにある」。(特許侵害の問題に関する部分略式判決を求めるBowersの申立ての別紙5ページ、タブ30にあるPTOへの審判請求に関するBowersの審判請求趣意書)。

2番目のフレーズで、BowersはKeymasterの先行技術と、自らの発明とを区別しようとしている [*19]。Keymasterには「選択」というグループが含まれている。ただし、このグループはCadkeyのメイン・メニュー項目ではなく、プログラムのメニュー階層のもっと下層にある。

Baystateは、クレーム1 (b) によってテンプレート上のしるしの全グループがアプリケーションのメイン・メニュー項目に対応することが要求されることを意味していると、この再審査での陳述を解釈する。Baystateは、テンプレートの「選択」グループがCadkeyのメイン・メニューの一部ではないために、BowersはKeymasterテンプレートを区別していると主張する。これに対して、Bowersは「Keymasterテンプレート上のどのグループもクレームの制限を満たしていない」ことをPTOに主張し、その例として「選択」を挙げたにすぎないと反論している。

この争点は、Bowersのフレーズ「各グループは、…対応していない」が、「すべてのグループが対応する必要がある」(Baystateの主張)、または「どのグループも対応していない」(Bowersの主張)のどちらを意味するかに帰着する。どちらの主張にも反して、裁判所は、Keymaster上のすべてのグループが、Cadkeyメイン・メニューの選択可能項目に対応しているわけではないことを意味するにすぎないと判示する。

「Keymasterテンプレートの各グループは、Cadkeyシステムのメイン・メニューの選択可能 [*20] 項目に対応してない」というBowersの陳述は、明らかに次のことを意味している。1) KeymasterのすべてのグループがCadkeyのメイン・メニュー機能に対応しているわけではないこと。および2) 一部のグループはCadkeyメイン・メニュー機能に対応し、その他のグループは対応していないこと。メイン・メニュー機能に対応していない「選択」グループの例を示すことによって、BowersはCadkeyメイン・メニュー機能に対応していないKeymasterテンプレート上の少なくとも1つのグループの例をPTOに示した。Cadkeyメイン・メニュー機能に対応するKeymasterグループもKeymasterテンプレート上にいくつかあるため、Bowersはこのようなグループを指摘することもできたはずである。

本裁判所は、Baystateが再審査でのBowersの陳述を誤って解釈していると判断し、クレーム1 (b) は複数、つまり2つ以上のグループがその制限を満たすことだけを要求していると判示する。

2.    クレーム1 (c)

クレーム1 (c) に関係する争点のほとんどは、クレーム1 (b) から派生する解釈に関係する。特に、両当事者はクレーム1 (c) に含まれる制限が、テンプレートのすべてのグループに適用されるか(Baystate)またはテンプレート上の一部のグループだけに適用されるか(Bowers)について争っている。

裁判所は、すでに「複数」という用語が「2つ以上」を意味すると決定しているため [*21]、この点について再び詳述する必要はない。クレーム1 (b) の解釈で使用した分析に基づいて、裁判所はクレーム1 (c) に含まれる用語に同じ意味を適用する。したがって、クレーム1 (c) で使用される「複数」は、ここでも「2つ以上」を意味する。

クレーム1 (c) には、「第2レベルの複数のしるし。各しるしは、当該メイン・メニューの項目に対応するサブメニューの定義済み選択可能項目に対応する。」と記述されている。Baystateは、このクレームの制限が、テンプレート上のすべての機能に適用されると主張している。これに対して、Bowersは第2レベルの複数のしるしがクレームの制限を満たすことだけが要求されていると反論している。

クレーム1 (c) の文章は、サブメニューの定義済み選択可能項目に対応する第2レベルに複数の、つまり2つ以上のしるしが含まれることを要求している。裁判所は、クレーム1 (b) と共にクレーム1 (c) を解釈し、前者は後者と一貫しているものと判断する。したがって、クレーム1 (b) の制限を満たしている2つ以上のグループ内で、第2レベルに含まれる2つ以上のしるしが、サブメニューの定義済み選択可能項目に対応していなければならない。

クレーム1 (c) をクレーム13(再審査手続き中に追加されたクレーム)と共に読むと [*22]、クレーム1 (c) で説明されている第2レベルの複数のしるしに対応するサブメニューは、メイン・メニュー項目の最初のサブメニューであることは明らかである。これは、再審査証明書に示されているように、クレーム1に記述されている第2レベルの複数のしるしは、「サブメニューの第1層にある定義済み選択可能項目に対応する」という記述がクレーム13にあるためである。

たとえば、テンプレートにCadkeyメイン・メニュー機能に対応する「作成」グループが含まれている場合、そのグループに含まれる第2レベルの2つ以上のしるしが、「作成」の下の第1サブメニューの選択可能項目に対応していなければならない。「作成」の下の第2サブメニューには「線」、「弧」、「円」、「点/円錐」、「多角形/輪郭線」、「スプライン曲線」がある。したがって、「作成」グループでクレーム1 (c) の制限を満たすためには、第2レベルのしるしには上記の機能のうち、少なくとも2つのしるしが含まれていなければならない。

ここでも、クレーム1 (b) と同様に、クレーム1 (c) の条件はメイン・メニュー項目に対応する2つ以上のグループで満たされていなければならない。したがって、クレーム1 (c) は、クレーム1 (b) で説明されるグループ [*23] に第2レベルのしるしが存在し、そのうち2つ以上がメイン・メニュー項目の第1サブメニューの項目に対応することを要求している。

3.    クレーム1 (d)

両当事者は、クレーム1 (d) の「当該ポインティング・デバイスは、当該ボタンの1回の操作によって、操作機能を選択することができる」という文言に関して争っている。Baystateは、テンプレート上のすべてのしるしは、最終的な操作機能を実行しなければならないという意味にクレーム1 (d) を解釈するべきであると主張する。

Bowersは、Vtronics判例を引用して、推奨実施例が特許の範囲から外れるため、Baystateの解釈は正しいはずがないと反論している。Bowersは、推奨実施例には機能を実行せずに、サブメニューをプル・アップ表示する項目がいくつか含まれていると、説得力のある主張をしている。

ここでも、推奨実施例が特許クレームの範囲から外れるような特許解釈は、「正しいことは稀であり、非常に説得力のある証拠が必要である」。Vitronics Corp. v. Conceptronic, Inc., 90 F.3d 1576, 1583(連邦巡回控訴裁判所 1996)。テンプレート上のすべてのしるしで機能が実行されることを要求するBaystateの解釈では [*24]、推奨実施例は特許クレームの範囲から外れてしまう。明確な証拠がなければ、裁判所はこのような解釈を受け入れることはできない。同判例。

Baystateは、Bowersの再審査手続きでの陳述のみを根拠として、「クレームにはメニューをプル・ダウン表示させるしるしは含まれない」と主張する。Bowersは、再審査中に「当該ポインティング・デバイスのボタンを1回押すことによって操作機能を選択できる」機能は、「Keymasterテンプレートの各グループには存在していない」と陳述した(被告/反対原告の特許侵害の争点に関して部分略式判決を求める被告/反対原告の申立てを支持する覚書別紙30の審判請求趣意書7ページ)。この陳述に基づいて、Bowersのクレームが、ポインティング・デバイスの1回の操作で機能を実行することをテンプレート上のすべてのしるしに要求しているとは必ずしも言えない。

本裁判所は、再審査でのBowersの陳述は、すべてのしるしに操作機能の実行を要求する制限をクレーム1(d) に与えていないと判断する。また、推奨実施例が排除されるように特許を解釈するに足るBaystateの主張を支持する証拠はない [*25]。したがって、「当該ポインティング・デバイスは、当該ボタンの1回の操作によって、操作機能を選択することができる」というフレーズは、そのポインティング・デバイスがボタンの1回の操作で操作機能を選択することができるが、必ずしもその必要がないことを意味すると解釈される。

C. クレーム解釈の結論

上記の分析に基づいて、本裁判所は'514特許のクレーム1で使用され、その解釈に争いのある用語に関して、次のように結論を下す。

1)    「テンプレート上に整理され、複数のグループ(各グループは当該メイン・メニューの定義済みの選択可能項目に対応する)内に配置されるしるし」は、2つ以上のグループがテンプレート上に存在し、1つのグループがメイン・メニュー項目に対応して、ほかのグループが別のメイン・メニュー項目に対応することを意味している。

2)    「少なくとも第2レベルの複数のしるし。各しるしは、当該メイン・メニューの項目に対応するサブメニューの定義済み選択可能項目に対応する」は、クレーム1 (b) で説明した「2つ以上のしるしのグループ」の1つに含まれる第2セットのしるしの内、2つ以上がそのグループに対応するメイン・メニュー項目の第1サブメニュー項目に対応しなければならないことを意味する。

3)    [*26]「当該ポインティング・デバイスは、当該ボタンの1回の操作によって、操作機能を選択することができる」は、ポインティング・デバイスの1回の操作によって、操作機能を選択することができるが、必ずしもその必要がないことを意味する。

III. 略式判決

A. 略式判決の認可基準

侵害または侵害のないことに関する略式判決の登録は、重要な事実に関する真正な争点がなく、特許の適切な解釈によって侵害または侵害のないことに関する判定が可能な場合に認められる。Porter v. Farmers Supply Service, Inc. 790 F.2d 882, 884(連邦巡回控訴裁判所 1986)。通常、侵害の問題は陪審に委ねられる問題である。ただし、重要な事実に関する真正な争点がない場合は、文言上の侵害の問題は、クレーム解釈の問題となり、略式判決の申立に基づく処理に適している。Athletic Alternatives, Inc. v. Prince Mfg., 73 F.3d 1573, 1578(1996)。訴答書面、開示、宣誓供述書に基づいて、「重要な事実に関する真正な争点がないことと、申立当事者が法律問題としての判決を受ける権利を有すること」を証明する責任は申立当事者が負う。申立当事者がその証明責任を果たした場合は [*27]、他方の当事者は正式事実審に付すべき真正な問題があることを証明する特定の事実を示す責任を負う。Celotex Corp. v. Catrett, 477 U.S. 317, 324, 91 L. Ed. 2d 265, 106 S. Ct. 2584(1986)。裁判所は被申立当事者に最も有利になるように、記録全体を見直し、その当事者のためにすべての合理的な推論を行わなければならない。O'Connor v. Steeves, 994 F.2d 905, 907(1st Cir. 1993)。

B. 争点

本件では、両当事者が略式判決の申立てを行っている。Bowersは特許侵害に関して略式判決の申立てを行い、BaystateはBowersの'514特許の侵害がないことに関して略式判決の申立てを行った。両当事者は重要な事実に関する真正な争点はないと主張している。Bowersは「裁判所がクレームの解釈問題に関してBaystateの主張を否認する場合は、(侵害に関する)Baystateのすべての部分略式判決申立てを却下し、Bowersの申立てを認めなければならない」と主張する。同様に、Baystateは「訴えられた構造物…の機能については、争いがない」と主張している。しかし、各当事者は「争われていない事実」の概略を示す文書を提出したが、その審査によって [*28]、多くの争いのある事実が判明した。裁判所による最終的なクレーム1の解釈は、いずれの当事者が提示した解釈とも少し異なっている。したがって、裁判所はBaystateまたはBowersのいずれに対しても、略式判決を認可しない。

したがって、再審済み米国特許No. 4,933,514(名簿番号129)の侵害がないことに関して部分略式判決を求める原告の申立てを却下し、被告/反対原告の特許(名簿番号125)の侵害の争点に関して部分略式判決を求める被告/反対原告の申立てを却下する。

ただし、裁判所は、両当事者が特許侵害の問題の解決を望んでいることを認識している。したがって、両当事者はこの命令の日付から30日以内に裁判所による上記のクレーム1の解釈に照らして、略式判決の正当性に関する(15ページを超えない)摘要書を提出することを両当事者に命じる。この命令の結果として、1999年12月21日に予定されていた正式事実審前協議と、2000年1月10日に予定されていた正式事実審の開始期日は延期され、正式事実審前協議は2000年2月9日午後3時30分に開催される。

以上のように命じる

Nathaniel M. Gorton [*29]

米国地方裁判所判事

日付: 1999年12月17日