B. BRAUN MEDICAL INC.
(原告・控訴人)

ABBOTT LABORATORIESおよびNP MEDICAL, INC.
(被告・反対控訴人)

96-1508, 96-1525

連邦巡回裁判所のための合衆国控訴裁判所

1997 U.S. App. LEXIS 23563; 43 U.S.P.Q.2D (BNA) 1896

1997年9月8日決定

これまでの経緯: [*1] ペンシルバニア東部地区の合衆国地方裁判所(Huyett, 3rd判事)判決に対する控訴

決定: 一部認容、一部破棄自判、一部破棄差戻

訴訟代理人: 原告・控訴人側−ニューヨーク州ニューヨーク市の、Hopgood, Calimafde, Kalil & Judlowe, L.L.P所属の弁護士、William G. Todd。書類作成協力、Porter F. FlemingおよびRichard E. Parke。所属事務所は、ペンシルベニア州フィラデルフィア市のAlbert G. Bixler, Connolly Epstein Chicco Foxman Engelmyer & Ewing。

被告・反対控訴人側−マサチューセッツ州ボストン市のBromberg & Sunstein LLP所属の弁護士、Lee Carl Bromberg 。書類作成協力、Robert L. Kann, Timothy M. MurphyおよびKerry L. Timbers 。所属事務所は、Judith R. S. Stern。

裁判官: MICHEL、PLAGER、CLEVENGERの各巡回裁判所判事

意見執筆: CLEVENGER

意見:CLEVENGER巡回裁判所判事

 B. Braun Medical, Inc.(Braun)は、陪審審理を経て出された、Braunは当該特許を濫用している、その特許の主張はエクイティ上禁反言によって封じられる、そしていずれにせよ、訴えられている装置は問題のBraunの特許クレームを侵害していない、という地方裁判所の判決に対し控訴している。Abbott Laboratries(Abbott) は、Braunの権利濫用(patent misuse)につき、弁護士報酬と損害賠償を求めて交差上訴した [*2]。我々は、エクイティ上の禁反言と権利濫用の取扱について、地方裁判所に誤りがあると判断した。従って、我々は、一部を認容、一部を破棄自判、一部を破棄の上で審理継続のために差戻す。


I

 問題の特許、合衆国特許第4,683,916号('916号特許)は、一般的に静脈 (IV) 血管に取り付けられた逆流バルブに向けられたもので、針の無い注入器による液体の注入や吸引を可能にする。この型のバルブは、血液中の病原菌が移される可能性のある、針による負傷の危険を減らすことにより、医療関係者に安全という利益をもたらす。1987年以降、Braunは、商品名SafSite(R)として、特許を受けた逆流バルブを具体化した商品を販売している。'916号特許には、下に複写されている、SafSite(R)バルブに対応する図面が含まれている。

 これらの図面が示しているように、バルブは、組み合った二つのボディ・エレメント11と25の間にはさまれた弾性のあるディスク50でできている。ボディ・エレメント25は、三角メンバー40を含んでいるが、それは、弾性ディスク50の中心を支えている。ボディ・エレメント11は、メンバー60を含んでいるが、それは、注入器によって動かされた時、弾性ディスク50に圧力をかけ、通常は閉じているバルブを開かせる。

 1991年の初め [*3] から、BraunとAbbottの代表者達は、特許を取得したSafSite(R)バルブについてAbbotが購入することを協議していた。Braunは、Abbottのプライマリー・ラインとピギーバックのセットの使用のために、SafSite(R)をAbbottに販売することには積極的な姿勢を持っているが、延長セットでの使用のためには、そのバルブを販売しないとAbbottに告げた。1。1991年10月23日付けの手紙で、Abbottの流体システムの本部長であるRandy Prozellerは、彼の会社がこうした制限に従うことに同意した。“我々は、我々が問題のバルブを我々のプライマリーとプライマリー・ピギーバックのセット以外のリスト・ナンバーに使用しないことという御社の要請を尊重する。”この取り決めに従って、Abbottは約536,000個のSafSite(R)バルブを購入した。

注1     プライマリー・ラインとピギーバックのセットは、針の無い注入器が静脈に直接取り付けられることを可能にする。SafSite(R)バルブを組み込んだ延長セットは、一方の端にSafSite(R)バルブが、もう一方の端に一つまたはそれ以上のコネクターが付いたチューブでできている。このような延長セットは、追加的な流体や薬品の送り出しを可能にする。

[*4]

 その間も、AbbottとBraunの間で、Abbottの延長セットで使用するためのSafSite(R)バルブの購入についての交渉は続いていた。両当事者が条件について合意に達することができなかったので、Abbottは、NP Medical, Inc.(NP Medical)に代わりのバルブの開発を要請した。広範な研究の後で、NP Medicalは、特許を侵害しているとされる製品、NP Medical Luer Activated Valve(LAV)を開発した。この新しいバルブの新規性を持つ部分は、ParadisとKotsifasに対する合衆国特許第5,190,067号に記載されている。

 1993年7月20日、Braunは、NP MedicalのLAVが、'916号特許のクレーム1および2を侵害していると主張して、AbbottとNP Medicalを訴えた。本件で問題となっている主なクレームは、次のように記載している(番号は後付け)。2

1.    以下から構成されるバルブ装置

[1]   そこを通過して開く入口部分を持つ第一のボディ・エレメント

[2]   前記の第一のボディ・エレメントを補完し、そこから開く出口部分を持つ第二の本体部分

[3]   前記の第一と第二のボディ・エレメントの間にはめられた弾性バルブ・ディスク

[4]   ディスクの中心を支えるために、一方のボディ・エレメントについた第一の手段

[5]   前記のディスクが横に動かないように、第一の手段にディスクをしっかりと押さえつけるための、もう一方のボディ・エレメントについた手段 [*5]

[6]   通常は閉じているディスクを開き、その装置を通って流体の注入や吸入ができるようにする、注入器のエンゲージメントのための、上記のバルブ・ディスクに隣接した手段

注2     従属的なクレーム2は、独立のクレーム1の主題に関連するもので、それを限定している。クレームの解釈の問題点は、両方のクレームについて同一であるから、我々は(両当事者がしているように)クレーム1に限定して議論する。

 被告は、特許侵害を否定し、その有効性を疑い、権利濫用・禁反言・黙示の許諾といったエクイティ上の防禦方法を主張した。Braunの異議を制して、地方裁判所は、問題のクレームの解釈を含めて、すべての問題を陪審に付託した。1994年11月、陪審は、'916号特許は無効ではない、そして、NP Medical LAVによって侵害されてはいないと判断した。陪審は、クレームの第5の要素が、横断的なバーまたはそれに相当するものを必要としていると解釈し、問題の [*6] 製品にはそれがないとして、侵害は無いと判断した。陪審は更に、Braunは、禁反言によって被告の侵害を責めることを封じられる、また、Braunは'916号特許を濫用していると判断した。最後に、陪審は、被告からの黙示の許諾があったとする抗弁を否定した。

 権利濫用の認定を基礎として、Abbottは、その宣言的判決の反訴による損害賠償を求めた。この点について更に8日間の審理を経て、陪審は、主張されているBraunの権利濫用はAbbottに何の損害も生じさせなかったと判断した。地方裁判所がすべての争点について判決を出した後に、Abbottは、本件が例外的なものであると主張して、弁護士報酬を求める申立てを提出した。地方裁判所は、この申立てを否認し、Braunが“侵害の請求を提起するに当たり、その者の側の不誠実または重大な過失の可能性を否定する以上の十分な証拠と法的な裏付け”を提示したと説明した。両当事者は、地方裁判所の判決の自分に不利な部分について控訴した。


II

 本案に進む前に、我々は、まず、地方裁判所がすべての争点を陪審に付託した点で間違いを犯したというBraunの主張を取り上げる。Braunは、審理の途中でも、法律問題 [*7] としての判決を求める評決後の申立てにおいても、異議を唱えて、この争点を維持していた。Braunの異議を制して、すべての争点を陪審に付託する際、裁判所は、後にこれらの争点が“裁判所の専権事項であると判定された場合、陪審の評決を諮問的なものとして参考にする〔原文のまま、「受領する」〕”と述べた。

 クレームの解釈について、我々は、本件が陪審に付託されたのは、Markman対Westview Instrumenst, Inc.判決52 F.3d 967, 979, 34 U.S.P.Q.2D(BNA)1321, 1329(Fed. Cir. 1995)(大法廷)、134 L. Ed. 2d 577, 116 S. Ct. 1384, 38 U.S.P.Q.2D(BNA)1461(1996)において、クレームの解釈は法律問題であるとした本裁判所の意見が出される前の1994年であったことに注目する。我々は、本件についての陪審の解釈に賛成であるから、地方裁判所が犯した間違いは、実害がないものであった。

 エクイティ上の禁反言と権利濫用の争点について言えば、地方裁判所は、Fed. R. Civ. P. 39(c)の下の諮問的評決を求める権限を根拠にその争点を陪審に付託したのではなく、Fed. R. Civ. P. 39(b)により与えられた権限を根拠に付託したのである。同項は次のように定めている。

(b)   裁判所による。規則第38条に定められたところにより陪審の審理が要求されなかった争点は、裁判所によって審理される。但し、当事者が、権利によってかかる要求ができた[*8] 行為の中で陪審にその要求をしなかったとしても、裁判所は申立てによりその裁量で、争点の全部または一部について、陪審審理を命令することができる。

 我々の知る限り、エクイティ上の争点が、規則39(b)項に定められた権限に従って、異議がある場合にも陪審に付託されることができるかについて検討した裁判所はわずかしかない。そのわずかな裁判所は、規則が定めている裁量的権限は、エクイティ上の争点を陪審が審理することを認めてはいないと結論づけている。例えば、New Hampshire Fire Ins. Co.対Perkins判決、28 F.R.D. 588, 592(D. Del. 1961)、Coates対Union Oil Co.判決、176 F. Supp. 713, 715(D. Colo. 1959)を参照せよ。更に、9 Charles Alan Wright、Arthur R. Miller、Mary Kay Kane、Federal Practice and Procedure§2334(2d ed. 1983)も参照のこと。他方で、少なくとも一定のエクイティ上の争点に関しては、我々の姉妹裁判所の間で、かかるエクイティの争点が規則39(b)項の権限とは別の権限に基づいて陪審に付託されることができるか否かで意見が分かれている。Newhouse対McCormick & Co.判決、110 F.3d 635, 641-43(8th Cir. 1997)(エクイティ上のフロント・ペイの争点の陪審審理を禁じた第2、第4、第7、および第10巡回区裁判所の規則に従った判決)と、Cassino対Reichhold Chem., Inc.判決、817 F.2d 1338, 1347(9th Cir. 1987)(第3、第5、第6、第9巡回区裁判所の [*9] 規則に従って、陪審にフロント・ペイの金額の判定を許した判決)を比較せよ。

 規則第39条の複雑さと、裁判所は異議があってもエクイティ上の争点を陪審に付託して良いかという疑問は、本件の準備書面の作成や陳述の焦点とはなっていない。我々は、エクイティ上の争点を陪審に付託することが破棄事由となる誤りであるか否かを決定する必要はない。なぜなら、以下に示す理由で、両方の争点に対する我々の判断は、これらの争点を陪審に付託することで引き起こされる有害な結果からBraunを切り離すことになるからである。

III

 控訴の第一の争点は、問題の製品が'916号特許を侵害していないという陪審の評決に関連する。陪審は、“クレーム1は、横断バーおよびそれに対応するもののみを記載している”と判断した。NP Medical LAVは、横断バーもそれに対応するものも持っていないので、陪審は、文字通りにせよ、均等論の下にせよ、侵害なしという評決を答申した。控訴にあたってのBraunの主張の焦点は、陪審はクレーム1の解釈を誤っており、そのため、侵害無しとする評決は覆されなければならないというものである。

 侵害(文字通りにせよ、均等論の下にせよ)は、事実問題 [*10] であって、我々はこれについては、陪審審理のコンテキストの中で実質的証拠があったかを再検討する。Young Dental Mfg. Co.対Q3 Special Prods.判決112 F.3d 1137 1141, 42 U.S.P.Q.2D(BNA)1589, 1592(Fed. Cir. 1997)。陪審の侵害なしという認定は、クレーム1の中の第5の限定の解釈に由来している。これは争われている唯一の限定である。そのクレームの適切な解釈は、法律問題であり、これについて我々は新たに検討することになる。Markman判決、52 F.3d at 979, 34 U.S.P.Q.2D(BNA)at 1329を参照せよ。

 第5の限定は、“上記のディスクが横に動かないように、第一の手段にディスクをしっかりと押さえつけるための、もう一方のボディ・エレメントについた手段”と、記載している。この限定は“ミーンズ-プラス-ファンクション”の文言で表現されており、それは当該機能を支える明確な構造を示していないので、35 U.S.C. §112, P 6(1994)の要件に従うことになる。Cole対Kimberly-Clark Corp.判決、102 F.3d 524, 531, 41 U.S.P.Q.2D(BNA)1001, 1006 (Fed. Cir. 1996), petition for cert. filed, 65 U.S.L.W. 3799(U.S. May 19, 1997)(No. 96-1858)参照。Greenberg対Ethicon Endo-Surgery, Inc. 判決、91F.3d 1580, 1584,39 U.S.P.Q.2D(BNA)1783, 1787(Fed. Cir. 1996)も参照せよ。この規定は、このようなクレームの限定 [*11] が“明細書またはそれと同等のものに記載された・・・対応する構造も含めて解釈される”ように指示している。§112, P 6。従って、我々は、第5の限定に記載された手段に対応する構造物を見い出すべく、特許の記載を調べなければならない。より具体的には、我々は、柔軟性のあるディスク50を、横の動きを抑制するように、三角のメンバー40にしっかりと押さえる構造を調べなければならない。

 クレームの記載を調べると、我々は直ちに、そのような構造についての明確でしかも多義に解釈できない表現を発見する。第2図は、はっきりと、三角のメンバー40に対してディスクを押さえている横断バー50を示している。これは明示的に文章で確認されているが、それには、以下のように書かれている。

 組立ての後では、(示された通りの)上部の第一のボディ・エレメントの横断バー15の下側の表面が、柔軟性のあるディスクの中央部を押さえ、それを三角ポイント40の上端に押しつける。三角の先端が、ディスクの内部にわずかな刻み目140(図3)を作るような圧力であることが望ましい。こうすれば、この刻み目140が、ディスクの横の動きを抑制することになろう。

同様に、[*12] 発明の概要は、次のように説明している。

 一つのボディ・エレメントに付いている先端が尖った三角形が、ディスクの中央部分を支えており、そのディスクは、もう一方のボディ・エレメントの中に出ている横断バーからの圧力を受けている。三角の先端とバーの間の圧力は、大体において、柔軟性を持ったディスクが横に動かないように抑えるのに十分なものである。

 従って、この説明文は、横断バー15は、横に動かないように抑えるため、柔軟性を持ったディスクを、三角のメンバー40にしっかりと押しつけるように設計された構造物であることを明示的に述べている。

 このような明白な開示を前にして、Braunは、確かに説明文は、柔軟性を持ったディスクが横に動かないように抑えるため、それを三角のメンバーにしっかりと押しつける構造物として、横断バーを開示しているけれども、それは更にその機能を果たす代わりの構造物も開示していると主張する。とりわけ、Braunは、明細書の図3がバルブ・シートと、柔軟性のあるディスクを三角のメンバーにしっかりと押しつけるこのバルブ・シートの機能を示していると主張している。3。我々は、この主張を否認する。

注3     バルブ・シートは、バルブが閉じた状態にある時、柔軟性のあるディスク51の上面が載っているボディ・エレメントの一部分である。

[*13]

 第112条第6パラグラフは、ミーンズ-プラス-ファンクションクレームは“明細書に記載された・・対応する構造を含めて解釈されなければならない”としている。(強調付加)。我々は、この規定に従う場合、明細書に開示された構造は、明細書または出願経過が、その構造をクレームに記載された機能と明確に結びつけているまたは関連づけている場合にのみ、“対応する”構造になると考える。構造を機能に結びつけるまたは関連づけるというこの義務は、§112, P 6を利用する便宜に対する代償である。O.I. Corp.対Tekmar Co.判決、115 F.3d 1576, 1583, 42 U.S.P.Q.2D(BNA)1777, 1782(Fed. Cir. 1997)参照。この点についての我々の考えは、ミーンズ-プラス-ファンクション形式で書かれたクレームは、特許法の明確性要件に服すると述べた、我々の先例からの支持も受けるだろう。

 ある者が、クレーム中でミーンズ-プラス-ファンクションの表現を用いる場合、その者は、明細書に、その表現が何を意味しているのかを示す適切な開示をしなければならない。出願人が適切な開示を記載しなかった場合、出願人は事実上、第112条第2パラグラフにより必要とされている、発明の具体的な表示と明確な特許範囲請求を怠ったことになる。

[*14]

Donaldson Co.判決、16 F.3d 1189, 1195, 29 U.S.P.Q.2D(BNA)1845, 1850(Fed. Cir. 1994)(大法廷)、Dossel判決、115 F.3d 942, 946-47, 42 U.S.P.Q.2D(BNA)1881, 1884-85(Fed. Cir. 1997); 35 U.S.C.§112, P 2参照。

 特許の図3が、バルブ・シートを示しているとはいえ、明細書にも、出願経過にも、バルブ・シートの構造が記載されている機能に対応している、即ち、それが柔軟性のあるディスクを横の動きを抑制するように三角のメンバーに押しつけているということは書かれていない。バルブ・シートと記載された機能の間に結びつきが無いことは、横断バーと記載された機能の間に明示的なはっきりとした関連が示されていることを考えると、特に注目に値する。Braunの明細書が、ディスクをきまった場所にしっかりと維持する構造として、適切にバルブ・シートを開示していないので、Braunは、その特定の手段を明確に指し示し、明瞭に特許請求することができていない。以下と比較せよ。Athletic Alternatives, Inc.対Prince Mfg., Inc.判決、73 F.3d 1573, 1581,37 U.S.P.Q.(BNA)1365, 1372(Fed. Cir. 1996)(特許権者が、狭い解釈のみを特定し、明瞭に特許請求したことを理由に、特許権者のより広いクレームの解釈を否定した)、[*15] Fonar Corp.対General Elec. Co.判決、107 F.3d 1543, 1551-52, 41 U.S.P.Q.2D(BNA)1801, 1807(Fed. Cir. 1997)(明細書は、他のウェーブの形も使用することができると述べているが、そのウェーブの形を明確に特定していないので、§112 P6のクレームは、実際に開示された一般的な勾配のウェーブに限定されると説明している。) 要するにBraunの明細書は、ディスクを適切な位置に、横の動きを抑えてしっかりと維持する構造として、バルブ・シートを記載してはいない。従って、我々は、第5の限定に記載された手段が、横断バーにのみ関係しているとの陪審の認定に賛成する。

 このようなクレームの解釈を基礎とすれば、侵害がないという陪審の評決を裏付ける実質的証拠が存在する。問題とされている装置には横断バーは無い。そして、陪審は、バルブ・シートがクレームに記載された機能を果していない、また、それは横断バーと相互に交換することができないという証言に基づいて、バルブ・シートは−−§112 P 6の下で文字通りにせよ、均等論の下にせよ−−横断バーに相当するものではないと認定することができた。Pennwalt Corp.対Durand-Wayland, Inc.判決、833 F.2d 931, 934, 4 U.S.P.Q.2D(BNA)1737, 1739(Fed. Cir. 1987)[*16](大法廷)(問題とされた装置は、§112 P 6の均等となるためには、クレームに記載された機能と同一の機能を持っていなければならない)参照。従って、我々は、この点についての地方裁判所の判決を認容する。

IV

 当該控訴の第二の争点は、Braunは、エクイティ上、特許侵害を理由にAbbottとNP Medicalを訴えることを禁反言によって封じられるという判断に関係する。Braunは、この判断は証拠によって裏付けられていないので、地方裁判所は、この点について法律問題としての判断を求める更新された申立てを認めないことで誤りを犯したと主張している。我々はこれに賛成する。

 エクイティ上の禁反言は、特許権者が救済を受けることを禁じるものであるが、3つの要素で構成される。即ち (i) 特許権者は、特許権者が侵害について訴求しないということを、侵害ありとされる者に(言葉・行動・または沈黙によって)伝達したこと、(ii) 侵害したとされる者がその伝達を信じて行動したこと、(iii) 侵害したとされる者が、特許権者が今になって侵害の主張で訴えることが許されるならば、自分が重大な損害を受けることを証明すること、である。A.C. Aukerman Co.対R.L. Chaides Const. Co.判決、960 F.2d 1020, 1041-1043, 22 U.S.P.Q.2D(BNA)1321, 1335-37(Fed. Cir. 1992)(大法廷)を参照せよ。

 本件においては、Braunが、AbbottまたはNP Medicalに、それらがBraunの特許を侵害する競合的なバルブを製造・使用・または販売した場合に、Braunはその侵害を理由にそれらを訴えることをしないだろうと信じさせるようなことを伝えたという証拠はない。Braunは、針のないバルブに関して、NP Medicalと取引関係を持っていなかった。Braunは、Abbottとは関係があったが、それはBraunのSafsite(R)バルブに関するものであって、NP Medical LAVのものではなかった。従って、エクイティ上の禁反言の判定は、証拠によって裏付けられていない。

V

 陪審は、更に地方裁判所からの以下のような指示に基づいて、Braunに権利濫用があると認定した。(強調付加)

 特許権者は、特許の対象である製品の転売を禁ずるような制限を顧客に課したり、一定の製品と結びつけた場合に限って特許の対象たる製品の販売を許したりしてはならない。・・・もし、Braunが、Abbottを含めた顧客にかかる制限を課したことが、証拠の優越性から明らかな場合、Braunが特許を濫用したと認定しなければならない。

 Braunは、この陪審に対する指示は、Braunがその販売に付けるいかなる条件に対しても、本質的に当然の責任を創出しているので、法律的に誤っていると主張している。我々はこれに賛成する。

 [*18] この問題の解決は、我々のMallinckrodt, Inc.対Medipart, Inc.判決、976 F.2d 700, 24 U.S.P.Q.2D(BNA)1173(Fed. Cir. 1992)の先例によって統制される。我々は、その判決に、特許を取得した製品の販売後の使用について課した制限の適法性に関する先例を求めた。一般論として、我々は、特許を取得した装置の無条件での売却は、購入者のその後の使用を管理する特許権者の権利を消尽させることになると理解する。976 F.2d at 706, 24 U.S.P.Q.2D(BNA)at 1178。この原則の背後の理論は、このような取引においては、特許権者は、その商品の全体的価値に等しい金額を期待し、且つ、受け取っているということである。Adams対Burke判決、84 U.S.(17 Wall.)453, 456-57, 21 L. Ed. 700(1874)、 Keeler対Standard Folding Bed Co. 判決、157 U.S. 659, 663, 39 L. Ed. 848, 15 S. Ct. 738(1895)を参照せよ。しかし、この消尽理論は、明示的な条件のついた売買やライセンスには当てはまらない。そのような取引においては、両当事者は、特許権者によって与えられる“使用”権の価値のみを反映する価格を取り決めたと推論するのが、より合理的である。結果として、特許を取得した製品の売買またはライセンスに明示的条件が伴うことは、一般的に是認される。 Mallinckrodt判決、976 F.2d at 708, 24 U.S.P.Q.2D(BNA)at 1177, 1179を参照せよ。General Talking [*19] Pictures Corp.対Western Elec. Co.判決、305 U.S. 124, 127, 39 U.S. P.Q. 329, 330, 83 L. Ed. 81, 59 S. Ct. 116(1938)(“制限付ライセンスが適法であることは明白と考えられる”)と対比すること。しかし、このような明示の条件は、性質上、契約的なものであって、独占禁止法、特許法、契約法その他の適用されるべき法律の他、権利濫用のようなエクイティ上の考慮にも服する。Mallinckrodt判決、976 F.2d at 703, 24 U.S.P.Q.2D(BNA)at 1176。従って、何らかの法律またはエクイティ上の考慮に違反した条件は、効力を有しない。他方で、有効な条件に対する違反は、特許権者に特許侵害や契約違反に対する救済を与えることになる。Mallinckrodt判決、976 F.2d at 707 n.6, 24 U.S.P.Q.2D(BNA)at 1178-79 n.6参照。これが、一般的な枠組である。

 Mallinckrodt判決の中で、我々は、特許製品の売買後の使用に関する明示的な条件が、権利濫用となるかどうかを判定する枠組の輪郭も得た。エクイティ上の汚れた手の法理から生まれた権利濫用の法理は、独占禁止法とは別の形で特許権の濫用を限定する方法である。この事実集約的法理(fact-intensive doctrine)の下で最も重要な問題点は、条件を課すことによって、特許権者が“競争防止効果を持つ特許の‘物理的または時間的な [*20] 範囲’を容認不可能な程に拡大した”かどうかである。Windsurfing Int'l, Inc.対AMF, Inc.判決、782 F.2d 995, 1001-02, 228 U.S.P.Q.(BNA)562, 566(Fed. Cir. 1986)Mallinckrodt判決、976 F.2d at 704, 24 U.S.P.Q.2D(BNA)at 1176も参照。一般的に見られる容認不可能な拡大の二つの例は、関連の市場で市場支配力を享受している35 U.S.C. §271(d)(5)(1994))特許を、特許の無い製品の競争を妨げるために使用することや、特許を17年間以上利用することである。反対に、使用制限(本件で問題となっている制限のようなもの)の分野は、一般的に支持されており、General Talking Pictures, 305 U.S. at 127, 39 U.S.P.Q.(BNA)at 330参照、それらが引き起こす競争防止効果は、合理の原則に従って検討される。Mallinckrodt判決、976 F.2d at 708, 24 U.S.P.Q.2D(BNA)at 1179-80参照。

 地方裁判所は、Mallinckrodt判決の枠組に従って陪審に指示を与えることをせず、BraunがSafSite(R)バルブの販売に何らかの使用制限を課したならば、陪審はBraunに権利濫用があったと認定しなければならない旨の不適切な指示を与えたので、我々は、本件を破棄し、差戻す。差戻し後、地方裁判所は、Braunの制限 [*21] が特許権の範囲を越えているかどうかを先ず判定しなければならない。範囲を越えていなければ、Braunは権利濫用とは認められない。越えていれば、その制限は、合理の原則の下で評価されなければならない。4

注4     控訴書面の中で、Abbottは、Braunの制限が、本質的に独占禁止法に違反する水平的な制限になっていると主張している。差戻し後にこの争点に達した場合のために、ここで簡単に取り上げておく。手みじかに言えば、BraunとAbbottは、関連の市場で横に並んだ競争相手ではないから、Braunが課した制限は、当然違法の水平的制限とはならない。問題の二つの市場は、(i) SafSite(R)バルブのみの市場と、(ii) SafSite(R)バルブを組み込んだ延長セットの市場である。Braunは、それぞれの市場において競争を排除する権利を有する。従って、制限付売買は当然違法の水平的制限を構成してはいない。どちらかと言えば、BraunのAbbottに対する−Abbottの顧客に更に販売するための−売買は、垂直的制限に近く。Mallinckrodt判決は、特に、これが合理の原則の下で分析されるべきであると述べている。Mallinckrodt判決、976 F.2d at 706, 708, 24 U.S.P.Q.2D(BNA)at 1178-79参照。

 Abbottは、Braunの行為が当然に独占禁止法違反であるという命題に関して、もっと早い時期に出されたBaldwin-Lima-Hamilton Corp.対Tatnall Measuring Systems Co.判決、169 F. Supp. 1, 120 U.S.P.Q.(BNA)34(E.D. Pa. 1958)の中の地方裁判所の判断に依拠している。その事件は、本件には当てはまらない。Baldwin判決の結果は、売買に付けられたいかなる制限も権利濫用となるという裁判所の信念(belif)から引き出されている。169 F. Supp. at 29-30, 120 U.S.P.Q.(BNA)at 55-56。しかし、既に説明した通り、その推論は、Mallinckrodt判決で否定されたのである。Mallinckro dt判決、976 F.2d at 708, 24 U.S.P.Q.2D(BNA)at 1179参照。加えて、Baldwin判決の裁判所は、その事件における特許権者の行為を、抱き合わせ販売に近いものと見たが、本件ではそれは主張されていない。169 F. Supp. at 30-31, 120 U.S.P.Q.(BNA)at 56-57。

[*22]

VI

 陪審が権利濫用の評決を答申した後、地方裁判所は、Braunの権利濫用がAbbottに何らかの損害をもたらしたかどうかを判断する、別個の8日間の陪審審理を開いた。地方裁判所は、この正式事実審理の基礎を、明確に、“宣言的判決に基づいて、それ以上の必要または適切な救済を・・・その判決によって権利が判定された不利な立場の当事者に対する合理的な通知と審問を経た後に”認める裁量権を事実審裁判所に与えている宣言的判決法に置いている。 B. Braun Med., Inc.対Abbott Labs.判決、892 F. Supp. 115, 116-17, 36 U.S.P.Q.2D(BNA)1846, 1850(E.D. Pa. 1995); 28 U.S.C.§2202(1994)参照。この別個の事実審理の終了時に、陪審は、Abbottが、Braunの行為が何らかの損害を引き起こしたことを証明できなかったと認定した。続いて地方裁判所は、Abbottからのその点についての新たな事実審理の申立てを却下した。

 Abbottは、地方裁判所が新たな事実審理を与えなかったことで裁量権を濫用したと主張し、地方裁判所の決定に控訴した。Braunは、権利濫用は単に特許が行使不能になるという結果をもたらす肯定的抗弁にすぎず、侵害者とされる者に賠償金に対する権利を与えるものではないから、Abbottには [*23] 損害賠償請求権はないと応じた。

 既に述べたように、権利濫用の法理は、エクイティ上の汚れた手の法理の延長である。これによって、エクイティ裁判所は、濫用された特許権の行使には支援(support)を与えない。Senza-Gel Corp. 対Seiffhart判決、803 F.2d 661, 668, 231 U.S.P.Q.(BNA)363, 368(Fed. Cir. 1986)参照。権利濫用は、“それ自体いかなる法律にも違反していないが、特許権から反競争的な力を引き出し、それが公序良俗に反するとみなされる行為を制限する”のに有効なことから、侵害者とされる者が使えるエクイティ上の抗弁として発生した。Mallinckrodt判決、976 F.2d at 704, 24 U.S.P.Q.2D(BNA)at 1176。使用が功を奏すれば、この抗弁は、濫用がなくなるまで特許を行使不能にするという結果をもたらす。しかし、それは、侵害者とされる者に損害賠償を与える結果をもたらすものではない。

 地方裁判所は、権利濫用の抗弁に基づいて損害賠償の事実審理を開いたのではなく、宣言的判決に関するAbbottの反訴に基づいて開いたのである。この反訴の中で、Abbottは“これは、特許の無効、法的拘束力のないこと、および侵害の不存在という宣言的判決を求める請求である”と述べている。その肯定的抗弁に含まれた [*24] 主張をすべて繰り返した後で、Abbottは、次のような救済を懇請した。

1.    起訴の却下

2.    AbbottとNP Medicalが、Braunの特許を侵害していない旨の宣言

3.    '916号特許が無効で法的拘束力のない旨の宣言

4.    費用および弁護士報酬

5.    AbbottとNP Medicalが、黙示の許諾による'916号特許を使用する権利を持っている旨の宣言

6.    Braunは、AbbottとNP Medicalに対して特許を主張することを禁反言によって封じられる旨の宣言

7.    Braunは、Braunの起訴の日以前に起きた、主張されているところの侵害について、損害賠償を得る権利を持たない旨の宣言。

8.    “〔裁判所が〕正当且つ適切であるとみなす、それ以外の、また、それ以上の救済”

 28 U.S.C.§2202を根拠として、地方裁判所は、“宣言的判決法は、権利濫用に基づく宣言的判決の反訴の下で、金銭賠償を認めている”と判決した。Braun判決、892 F. Supp. at 116 n.1, 36 U.S.P.Q.2D(BNA)at 1850 n.1

 宣言的判決法は、裁判所の管轄を拡大するものでも、新たな実体的権利を創設するものでもない。12 James Wm. Moore 等、Moore's Federal Practice §57.02[1](3d ed.1997)。むしろ、[*25] 同法は、当事者のいずれかが(差止めまたは損害賠償金の裁定のような)強制的救済を求めるという段階に達しない事実上の紛争を内容とする場合や、強制的救済を求めて訴えを起こすことができる当事者がまだそれをしていない場合において、新しい非強制的な救済(宣言的判決)を与えるという手続的な仕組みである。10A Charles Alan Wright, Arthur R. Miller, Mary Kay Kane, Federal Practice and Procedure §2766, §2751(2d ed. 1983)参照。同法が、単に新しい非強制的な救済を与えるだけであることを前提とすれば、宣言的判決の訴訟における手続が、“ほとんどすべての点で、どの民事訴訟におけるものとも同じである”ことは驚くにあたらない。同上§2768。

 裁判所が不適切な制限を受けないように、同法は更に、裁判所が宣言的判決を出すための管轄を適切に有している以上、“相当の通知と審理の後で・・・、宣言的判決に基づき、必要または適切な更なる救済”を与えることができるとも定めている。28 U.S.C.§2202参照。この規定は、裁判所が、事件の状況に基づいて必要であるところに従い、損害賠償や差止めといった形の強制力ある救済を与えることを許すものである。しかし、それは、宣言的判決の [*26] 原告が、かかる救済を得る条件として実体法が課している要件を回避することを可能にするように作られたものではない。故に、§2202は、宣言的判決の原告が、更なる救済のための実体的な主張を述べなければならない場である審理を要求しているのである。

 本件において、地方裁判所が、濫用を理由に特許が行使不能であるという宣言的判決を出した場合、裁判所は次に、Abbottに損害回復の権利の根拠となる実体的な主張をすることを許す審理を行う裁量権を行使することができることになろう。これに関し、地方裁判所の意見とは異なり、“権利濫用に基づく宣言的判決の反訴請求の下では”金銭賠償を認めることはできない。なぜなら、権利濫用は、単にその特許を行使不能にするだけだからである。言い換えると、権利濫用の抗弁は、ただ、宣言的判決の反訴請求に装いを変えるだけで、損害賠償の積極的主張に転換することはできない。5

注5     これは、Abbottの立場の当事者に拠り所がないということではない。我々の先例は、権利濫用という結果を招来した特許権者の行為が、損害賠償を求める肯定的主張の要素としても働く場合があると説明している。Senza-Gel判決、803 F.2d at 668, 231 U.S.P.Q.(BNA)at 368参照。また、Transitron Elec. Corp.対Hughes Aircraft Co. 487 F. Supp. 885, 893, 205 U.S.P.Q.(BNA)799, 806, (D. Mass 7980)も参照せよ。従って、Abbottの立場の当事者は、独占禁止または契約違反の理論の下で、損害賠償を受ける権利を与えられるかもしれない。

[*27]

 地方裁判所が、上に概説した通り、損害賠償のための審理を開く権限を持っているとはいえ、我々は、裁判所が本件のような事実に基づいて新たな裁判を行う権利を持っているというAbbottの主張には反対である。地方裁判所が説明している通り、Abbottは、Braunの訴訟の結果として被った損害があれば、その額を提示する立証責任を負っている。Abbottの証人達の証言の不一致に基づき、また、Abbottの損害に関するその当時の文書資料がないことに基づいて、陪審は、Abbottがその立証責任を満たさなかったと判断したようだ。従って、地方裁判所は、損害についての新しい裁判を求めるAbbottの申立てを却下するにつき、その裁量権を濫用してはいない。6

注6    この争点についての我々の決定があるので、差戻し審で、Abbottが、Mallinckrodt判決の枠組みの下で権利濫用の抗弁を主張することを選択したとしても、損害に関する争点を蒸し返してはならない。

VII

 最後に、我々はAbbottの弁護士報酬に関する反対控訴を取り上げる。Abbottの主張に反して、我々は、地方 [*28] 裁判所が、Abbottへの弁護士報酬を否定するについて、裁量権を濫用してはいないという結論に達した。

 第35編285条は、“例外的な事案において、裁判所は、勝訴当事者に合理的な弁護士費用を与えることができる”と定めている。35 U.S.C. §285(1994)。この規定は、申立て当事者に、明白且つ説得力ある証拠により、その事案が例外的なものであることを証明することを要求している。証明があった時でも、地方裁判所は、弁護士報酬を認めるか否かについての裁量権を留保している。Carroll Touch, Inc.対Electro Mechanical Sys., Inc.判決、15 F.3d 1573, 1584, 27 U.S.P.Q.2D(BNA)1836, 1845(Fed. Cir. 1993); Hycor Corp.対Schlueter Co.判決、740 F.2d 1529, 1540, 222 U.S.P.Q.(BNA)553, 562(Fed. Cir. 1984)参照。

 10日間の審理を経て、地方裁判所は、“Braunは、特許侵害の主張を提起するにあたり、不誠実と重大な過失の可能性を否定するに十分な証拠と法的な裏付けを提出した”という理由で、弁護士報酬の裁定を拒否した。上の説明は、問題となった製品が'916号特許のクレーム1によって要求される限定の大部分を満たしていた、そして、Braunが何故そのバルブ・シートが残りの限定(ディスクを [*29] 三角のメンバーにしっかりと固定する手段)を満たしているかについて、支持することはできないが一応真実らしい主張をしたという事実に基づいている。更に、陪審は、Abbottが、Braunの権利濫用とされる行為の結果として被った損害を証明できなかったと認定した。従って、我々は、地方裁判所が、弁護士報酬の認定をしなかったことは裁量権の濫用ではないとの結論に達した。

VIII

 結論として、クレーム1は、横断バーまたはその対応物を必要としている。このクレームの解釈に基づけば、陪審の侵害なしの評決には、実質的証拠の裏付けがある。Braunが、エクイティ上、禁反言により、AbbottとNP Medicalを特許侵害で訴えることを封じられるという判断の立証は不適切である。更に、地方裁判所は、Braunが、Abbottに販売したSafSite(R)に販売後の使用制限を付けたのであれば、権利濫用を認定しなければならないと陪審に指示したことは誤りである。この論点は、Mallinckrodt判決で築かれた枠組みの下で分析されるべきものであり、我々は、そのためにこれを差戻す。最後に、地方裁判所は、Abbottに、Braunの競争防止的とされる行為から生じた損害についての新たな裁判を認めなかったことと、Abbottの弁護士報酬を否定したことで、裁量権を濫用したということはない。従って、地方裁判所の判決は、一部認容、一部破棄自判、一部破棄 [*30] 差戻しとなる。

費用なし

一部認容、一部破棄自判、一部破棄差戻し