DECCA LIMITED v. THE UNITED STATES
No. 299-70
合衆国請求裁判所
210 Ct. Cl. 546;544 F.2d 1070;1976 U.S. Ct. Cl. LEXIS 26;
191 U.S.P.Q.(BNA)439
1976年7月9日

主要用語: 信号、送信局、受信器、位相、レーン、周波数、特許、双曲線、分割回路、送信、送信器、出力、発信器、khz、告発、マイル、入力、フィルター、侵害、粗い、指示計、混合回路、位相差、読み出し、航行、周期、伝播、細かい、マイル幅、領土内

判決要旨: [**1]

特許、侵害、使用場所、特許権者の権利の地域的範囲、全世界無線航行システム。− 原告は、その特許第2,844,816号のクレーム1、4および11の、合衆国が主唱している(sponsored)ワールドワドオメガ航行システムによって侵害されるものに対して、28 U.S.C. @ 1498の下で妥当な補償を求める。被告は、開示された実施例は使用可能ではなく35 U.S.C. @ 112の要件を満たしていないのでこの特許は無効であり、また、オメガ・システムは争点のクレームの対象ではなく、また、侵害訴訟が外国(現在はノルウェーのみ)に位置する合衆国所有の装置に基づいているが、合衆国特許法は合衆国の領土内にのみ適用され、外国にある装置に基づく損害賠償を排除すると主張する。下記の理由により、原告は争点のクレームの侵害を立証する責任を果たし、被告は、述べられた根拠に基づく特許の無効性を証明しなかったと判断される。さらに、オメガ・システム全体が少なくとも当該特許の訴訟の目的では単一のものとみなされ[***2]、システムは合衆国内で、ノルウェーからの信号を確立し、継続的にモニターし、同期するという意味で、ノルウェー局からの送信は合衆国によって管理されるので、その単一のものの場所は合衆国の領土内にあるとみなされるべきであると判断される。Deepsouth Packing Co. v. Laitram Corp., 406 U.S. 518(1972)とは区別される。したがって、クレーム1、4および11は被告により侵害され、原告は損害賠償金を受ける資格があり、その趣旨の判決が記入される。損害賠償額は今後の訴訟手続きにおいて決定される。

特許;侵害;販売または使用の場所、特許権者の権利の地域的範囲

[1]   合衆国特許法の適用には地域性があり、それ自体の条件によって、国内では侵害となる外国での行為によって侵害されることはない。Deepsouth Packing Co. v. Laitram Corp., 406 U.S. 518(1972)。

特許;使用可能性;一般

[2]   特許を付与されたシステムに欠陥がある、または、ある仮定された条件では機能しないかもしれない、または、より良い結果をもたらす、より良く複雑な装置が開発された[***3]という事実だけでは、記されている機能を行うための、開示された装置の使用可能性を減じることはない。

特許;使用可能性;一般

[3]   発明の使用不可能性は、発明の原理を実行するための特定の開示された実施例が、完全の域に達していないことを示すことだけでは、立証されない。

特許;仕様;開示の充分性

[4]   35 U.S.C. @ 112の要件を満足させるには、その分野で通常の技能をもつ人が特許の開示を理解でき、その分野の技術を使って、その開示から、使用可能なシステムを構築できることが十分である。

特許;侵害;機能または作用の特定

[5]   侵害していることを主張するには、特許のクレームの用語への文言上の対応以上のものを示さなければならない。告発されたシステムが、クレームされたシステムと、実質的に同じ結果を達成するために、実質的に同じ方法で、実質的に同じ仕事をすることを示さなければならない。

特許;侵害;証拠;組合せ

[6]   告発された組合せの1つまたは複数の要素については、侵害していない使用が可能であるという事実だけでは、[***4]これらの要素を採用しているすべてのシステムが非侵害であることを意味しない。したがって、同じ汎用コンピューターが非侵害のシステムで使用されているという証言は、告発されたシステムの他の要素と組合せた時、そのコンピューターが、特許を受けた航行システムを侵害してるか否かという問題とは無関係である。

特許;侵害;プロセスまたは方法特許

[7]   問題の発明が、送信された信号を分離し、その信号から細かいおよび粗い読み出しを生成することにより、その信号と自分自身を同期させるという機能を行うことができる、受信器を含むシステムであり、受信器がその結果を達成する具体的な機構ではないという結論を、証拠が裏付けている場合、告発されたシステムではアナログ技術ではなくデジタル技術が使われていることを示しても、侵害であることは避けられない。

特許;特許性;観念的なプロセス

[8]   コンピューター・プログラムは、それ自体では特許性はない(Gottschalk v. Benson, 409 U.S. 63(1972))。

特許;侵害;構成するもの;改良

[9]   告発されたシステムが、特許を受けたシステムの改良であるという理由だけでは、それが特許を侵害していないことにはならない。

特許;ライセンス;政府による使用;公用使用(eminent domain)[***5]

[10] 特許を受けた発明の政府による使用は、不法行為ではなく、特許に基づくライセンスの取得という公用使用とみなされる。合衆国による「使用」という観点からは、28 U.S.C. @ 1498に基づく訴訟原因は、告発された装置が初めて使用可能となった時に生じ、ライセンスが取得されたとみなされる時点が、この使用が生じた時である。公用使用の法理の下での@ 1498に基づく訴訟の根拠となるのは、補償がなかったとすれば、このライセンスの取得である。本訴訟については、特許を受けたシステムの完全な使用が起きたのは、受信器が合衆国で信号を受け取った時点である。

特許;侵害;販売または使用の場所;特許権者の権利の地域的範囲

[11] 船舶および飛行機のための、組合せられた全世界無線航行システムは、その性質自体のため、合衆国およびその領土外に位置する送信器をもっていなければならず、ある合衆国所有の送信局が外国に位置していたとしても[***6]、その信号のすべてが、正確な位置決定をするために米国から確立され監視され同期されるばかりでなく、その利益を受けるための使用が合衆国内で起こるので、合衆国特許法の地理的要件の目的にとっては、「マスター」局または複数の局が位置する合衆国に基地を置く、単一のものとみなされる。

弁護士: 原告側Robert B. Russell。助言者Henry C. NieldsおよびRussel & Nields法律事務所。

被告側: Joseph A. Hill、および司法副長官Rex E. Lee。助言者Paul F. Arseneau、およびAlbert Sopp、海軍省海軍電子システム部隊。

意見: [**1072]
[*549]判事: NICHOLS、KASHIWAおよびKUNZIG。


裁判所の意見: 本訴訟は、合衆国はO’Brien et al. 合衆国特許第2,844,816号のクレーム1、4および11を合衆国内で侵害し、28 U.S.C. @ 1498に基づき、その金額は規則131(c)にしたがい将来の訴訟手続きに委ねられる妥当かつ完全な補償を支払うべきたと判断した、前判事Cooperによる、勧告意見、事実認定および法律問題の結論に対する、規則134(h)にしたがって提出された被告の異議に基づいて、本法廷に提起された。侵害したと告発された装置は、船舶および飛行機の位置決定をするための、合衆国政府の全世界オメガ・システムである[***7]。本訴訟は本法廷に、弁護士の上訴趣意書と弁論によって提起された。以上を考慮した上で、本法廷は、1つの文章を除き上記の勧告された決定に同意するので、本訴訟における決定の根拠として、その文章を除き同一のものを採用する。その文章はここに削除される。

[*550]本法廷は全般的には、この治外法権問題に対する第一審裁判官の取り扱いに同意するが、オメガ信号を受け取る合衆国国籍の船舶または飛行機は、公海上では合衆国の領土の移動部分であるという理由だけで合衆国特許法の地域上の要件が満たされるという、異議のありえない命題だとは本法廷は考えないことに本法廷が依拠しているという印象を与えるのを避けるために、一文を削除した。我が国の法律の地域上の要件は、本訴訟では他の形で満たされていると我々は考えるので、この命題は不必要である。

Deepsouth Packing Co. v. Laitram Corp., 406 U.S. 518(1972)で判断されたように、合衆国特許法の適用には地域性があり、それ自体の条件によって、国内では侵害となる外国での行為によって侵害されることはない[***8]という事実から問題が生じる。その訴訟では、シュリンプ・デバイナーの構成部品の外国での、外国で組み立てるための出荷が、もし国内で組み立てられれば合衆国の組合せ特許を侵害するとは判断されたが、免責された。裁判所は特許法35 U.S.C.第154条と第271条の規定を引用した。前者は、合衆国特許は、第三者が「合衆国全体で」発明を生産し、使用し、または販売することを禁じる権利を付与するが、後者は侵害を、「合衆国内」での発明を生産し、使用し、または販売することであると定義している。第100条(c)によれば、「合衆国」は、「アメリカ合衆国、その領土および占有物」を意味する。さらに、特許のクレームは「独占に対するこの国の歴史的な反感」に鑑みて、厳格に解釈されなければならないと言われた。406 U.S. at 530。

合衆国国籍の船舶が合衆国の領土であるとのいわゆる擬制は、領土内での適用のために制定された合衆国の法律全般を[**1073]、航海への明示的な言及なしに、合衆国船籍の船舶に適用させはしないと、何回も判断されている。United States ex rel. Claussen v. Day, 279 [***9]U.S. 398(1929);Cunard S.S. Co. v. Mellon, 262 U.S. 100(1923);Scharrenberg v. Dollar S.S. Co., 245 U.S. 122(1917)。

裁判官席からの審問においてこの問題を扱う際に、回答は主としてBrown v. Duchesne, 60 U.S.(19 How.) 183(1857)に見つかると、両当事者は考えたようである。[*551]その訴訟では、その特定の状況に関しては、合衆国特許法の黙示的な免責が存在したと判断されたので、フランス船籍の船舶の装置の一部として合衆国の港に運ばれた機器によっては、合衆国特許が侵害されなかったと判断された。議会はその一般的表現では、特許権者に、平等のアクセスを保証している協定にしたがって我が国の港湾にやってくる、自国の特許法に準拠して装備された、我が国の港湾の外国船籍の船舶を困らせ妨害する権限を与えることを意図したはずはない。この訴訟は、Benz v. Compania Naviera Hidalgo, S.A., 353 U.S. 138, 146(1957)でも引用され準拠され、合衆国の労働法は、合衆国の港湾に一時的に滞在している外国船籍の船舶上での労働争議には適用されないと判断された。

合衆国国民が利益を得るために所有しているが、外国船籍である「便宜地籍船」の場合には[***10]、最高裁判所は、このような合衆国法の免責を認められるか否か、またいつ認められるかという点で、困難に出遭った。Hellenic Lines Ltd. v. Rhoditis, 398 U.S. 306(1970);McCulloch v. Sociedad Nacional, 372 U.S. 10(1963);Lauritzen v. Larsen, 345 U.S. 571(1953)。これらの訴訟が示すように、認められた時も認められなかった時もある。

Gardiner v. Howe, 9 Fed. Cas 1157(1865)では、裁判所は、公海での合衆国の商船上での使用は、合衆国特許の侵害になりうると判断した。裁判所は、合衆国特許法は合衆国の裁判権に服する範囲のすべての場所で適用されるとの見解を取った。Marconi Wireless Tel. Co. v. United States, 99 Ct. Cl. 1(1942)、一部原判決維持、一部取消、320 U.S. 1(1943)、差戻しでの決定、100 Ct. Cl. 566(1943)においては、裁判所はGardiner v. Howeに従った。それによれば、利用可能な唯一の判例であったBrown v. Duchesneと同様、Marconi特許は、中国北京の合衆国公使館の合衆国海軍無線局で作成され使用された一群の受信器によって侵害されたと判断されるとみなした。意見では言及されていないが、もちろん、合衆国はその場所で治外法権をもっていることはよく知られている[***11]。現在、これらの訴訟の本件への適用性には問題があるかもしれない。なぜなら、上記のCunard S.S. Co. v. Mellon、およびDeepsouth Packing Co. v. Laitram Corp.とは明らかに合致しておらず[*552]、また、35 U.S.C. 第100条(c)における「合衆国」の定義は、1952年の改訂によって初めて特許法に加えられたからでもある。2 U.S. 法典議会行政ニュース(1952)2394、at 2409参照。それ以前は特許法は、州、領土および占有物に明白に制限するという形では、それ自身の範囲を定義していなかった。しかし本法廷は、Gardiner v. HoweやMarconi Wireless訴訟を否定したり破棄したりはしない。それらに軽く、そしてためらいをもって依拠するだけである。

合衆国の港湾にいる時を含めての外国船籍の船舶の合衆国法からの黙示的な免責は、その論理的な結果として、公海あるいは外国の領海であっても、その法律を合衆国船籍の船舶へ適用することを要求すると考えられるかもしれず、Marconi訴訟では実際にそう考えられた。しかし法律の免責は、常に、その適用よりも容易である。そのような適用の試みは、各問題ごとに検討されなければならない[**12]。もちろん、議会が明示的かつ意識的に船舶や飛行機について立法している時は、問題は消滅する。それは単に、一般的法律の解釈の問題となる。特許法の場合、Deepsouth訴訟で言及された敵対的解釈の原則により、合衆国特許法の適用を、Brown v. Duchesneに含まれている免責に対応させることへの障害が加わっている[**1074]。

以上のことを考えて、本法廷は、特許法の目的においては、合衆国の船舶および飛行機はそれがどこにあろうとも合衆国の領土であるという擬制に基づく決定は、危ういと考える。本法廷は、この問題は未解決であると考えるが、それでもDeepsouthの場合のように、侵害の場所は外国ではなく合衆国内にあると結論付けるのに十分な、他の根拠があると認定する。

侵害していると告発されたシステムであるオメガは、第一審裁判官による意見と認定の中で十分に説明されている。これは、特定の種類の電波を発信し、それを船舶または飛行機上の受信器で受信し、使用して、海上での船舶や飛行機の位置を定めるための、合衆国政府による全世界でのシステムである。Loranも同じ役割を果たすが[***13]、オメガがそれを継ぐと予想される。発信装置は、合衆国政府によって設計され作成された[*553]。送信局は合衆国に2つ、そして現在はノルウェーに1つだが、外国にその他の局も計画されている。位置を通る1つの線を決めるのに2つの送信局が必要であり、正確な位置決定には2つの線を交差させるので3局が必要である。船舶または飛行機上の受信器は信号をコンピューターに読み込み、場所に関する正確な情報を読み出す。合衆国政府は必ずしも受信器を提供しないが、さまざまな設計が可能である。船舶や飛行機がいったん受信器を設置すれば、どこを航行するにもこれを使うことができるように、少なくとも究極的な目的としては、このシステムは世界全体で動かなければほとんど価値がない。それ自体の性質により、このシステムは1つの国に制限することはできず、単に複数の国や海上で機能するから地域性がないのではないと本法廷は考える。本国は送信局がある国だと本法廷は考えるが、もし送信局が複数の国にあるのなら、合衆国特許法の目的での全体の所在地とは、「マスター」局があり[***14]すべての送信局が監視される場所、つまり現在は合衆国のワシントン特別区である。システム中のすべての送信局は、合衆国の送信局と完全に同期されなければならない。受信器は、信号を受け取り、その到着時刻の時間差を測定し、解釈する。したがって、外国の送信局も受信器も、「従属装置」である。実際には大部分海上で、主権のない地域で機能している受信器の、必然的に分散し変わっている位置は、合衆国特許法の目的では、オメガ・システムの位置と、必要な関連をもっているとは本法廷は考えない。このシステムは合衆国に位置している。この分析は、特許局特許権紛争委員会の分析に合致している。Rosen v. NASA, 152 USPQ 757(1966)では、人工衛星に関する発明は、コントロール部門がある合衆国で実用化されたと判断された。

この見解は、上記のDeepsouth訴訟で拒絶された見解のように、合衆国特許法の治外法権効果を主張しているものではない。他国の特許法との抵触の可能性もない[***15]。たとえばブラジルでのシュリンプ・デバイナーの組み立ては、ブラジルの特許法の問題となりうるが、組み立てについて合衆国法とは異なる結果をもたらすかもしれない[*554]。もし、「従属」送信局の所在国である外国が、その特許法を、その送信局を困らす形で適用したとすると、それはBrown v. Duchesneでのフランス船へ合衆国法を適用しようとする試みのようにみなされる。これは、許容不可能ではないとしても、変則的である。フランス人はそこでは治外法権を与えられていなかった。オメガ・システムの何らかの要素の国内への移入に同意した外国は、その意図された使用と抵触する自国の特許法の適用を控えることに、黙示的に同意したのだと思われる。もしこの黙示の了解が破られるとすれば、救済は、治外法権の主張ではなく、送信局の除去であろう[**1075]。

いずれにしろ、オメガ・システム全体は、少なくとも本件の特許訴訟の目的においては、単一のものであり、そのものの場所は合衆国領土内にあるとみなされなければならない[***16]。システムはこの場所に幾つかの足を降ろしており、合衆国領土の使用が、システムにとって不可欠である。施設を外国に置くことも、この計画にとって必須のものだが、特定の国を選択する必要はないことは、明らかである。どの国も、容易に他の国に取って代わられる。

したがって、上記の特許のクレームは侵害されたと結論付ける。原告は損害賠償を受ける資格があり、その意味の判決が記入される。

以下、第一審裁判官による、修正された意見、事実認定、および法律問題についての結論が記される。

事実審裁判官の意見

COOPER、第一審裁判官: 合衆国が主唱している全世界オメガ航行システムが、O’Brien et al. の特許第2,844,816号のクレーム1、4および11を侵害していると告発し、原告は、28 U.S.C. @ 1498の下で妥当な補償を求める訴訟を提起する。被告は、開示された実施例は使用可能ではなく、開示は35 U.S.C. @ 112の要件を満たしていないのでこの特許は無効であると主張し、この請求に反対する。(注1) さらに被告は、オメガ・システムは争点のクレームの対象ではないと主張する。最後に、この侵害訴訟は外国に位置する合衆国所有の装置に基づくが、合衆国特許法、したがって28 U.S.C. @ 1498は、合衆国の領土内にのみ適用され、外国にある装置に基づく損害賠償を排除すると主張する。

注1. 被告は、クレームが35 U.S.C. @ 102または@ 103の下で無効であるとの主張はせず、明示的にその抗弁を放棄した。

下記の理由により、原告は争点のクレーム1、4および11の侵害を立証する責任を果たしたと結論付けられる。さらに、被告は、主張された根拠に基づく特許の無効性を証明せず、被告が提起した治外法権の問題は、本訴訟における責任の認定を排除しないと結論付けられる。

I

本件で争点となっている技術は、知られている場所に固定された複数の送信局が無線信号を送り、その信号が、送信器から離れた位置にある、動く受信器によって感知されるという、双曲線無線航行システムに関係している。双曲線航行では、受信器は、無線信号の到着の時間差を測定する[***18]。時間差が、信号が伝わった距離の差の尺度になる。このようにして、受信器がその線上に存在するという位置線(LOP)が決定する。このシステムが双曲線と呼ばれるのは、航行図に示されているように、位置線が双曲線になるからである。これらの双曲線のLOPは、一対の送信器のそれぞれからの距離の差が一定の点が描く経路として定義される。

双曲線航行では、少なくとも3つの送信局からの信号が必要である。一対の送信局からの信号が1本のLOPを決めるのに使われ、他の対の送信局からの信号が、もう1本のLOPを決める。この2本のLOPの交点が、受信器の位置を決定する。

双曲線航行図では、隣り同士の双曲線が、それにはさまれる地帯つまりレーンを決定する。2つの送信局からの無線信号の位相が正確に一致している場合には[*556]、受信器はいずれかの双曲線上にある。しかし信号の位相が一致していなければ[***19]、受信器は2本の双曲線の中間、つまりいずれかのレーンの中にある。特許第’816号と[**1076]オメガ航行システムの双方が関係している問題は、どのレーン内に受信器があるか、そして、そのレーン内のどこにあるかということを確かめることである。

特許第’816号では、大きな地帯つまりレーンが1fに対応するように選ばれた。つまり、各位置双曲線は隣りの線から、基本的周波数の半周期分だけ離れる。告発されたオメガ・システムの場合のように、1f周波数が1.133 khzだとすると、2つの送信局を結ぶ基準線上で測定するレーンの基本幅は、72海里となる。(注2.)  双曲線航行図は通常は9fに基づいているので、その周波数では、レーン幅は8海里となる。したがって、レーン決定の問題は、受信器を積んでいる乗物が、どの8マイル幅レーンにあるか、そしてその8マイル幅レーンのどこにあるかということになる。

注2. レーン幅はさまざまな方法で表現できる。海里で表現するには、常に周波数を指定することと、測定は「基準線」上で行うという了解が必要である。ここで使われているように、海里(n.m.)での表現は、基本線上での測定を指していることが理解されなければならない。

特許第’816号、特にその図4、5および7の実施例は、航海士(航空士)が、自分が±36マイルの範囲で、どこにいるのかをわかっている、つまり9つの8マイル幅のレーンのうちのどこにいるかはわかっているが、その中のどこにいるのかはわからない、という前提に基づいて進む。その問題を解くのに特許第’816号は、2つの送信局AとBのそれぞれから送られる、9f、10fおよび12fの信号を使うことを提案する。各送信局からの信号は、互いに位相を一致させて送信される。信号の送信パターンは、周期的に明確に変えられ、受信器はいつでも、どの送信局から信号を受けているのか判断できる。受信器では、送信局AとBからの9f信号の位相が記憶され比較される。これらの2つの信号の位相差は伝播時間の差に比例し、ある9fレーンでの受信器の位置を示す。つまり、2つの9f信号を位相で比較することにより受信器は、特許で「細かい」制御と呼ばれる[*557]、航海士(航空士)が、8マイル幅レーン内のどこにいるかわかる読み出しを示す。

まだ、受信器がどの8マイル幅レーンにあるかという問題が残っていることは、理解できるだろう[***21]。この問題を解くために、図7の受信器は3つの分割回路と混合回路を使って、2つの送信局のそれぞれからの1f信号を作る。これは次のように達成される。まず各送信局ごとに、9f信号と12f信号の差を取って3fのうなり信号を作り、それで分割回路をノッチして、最初の9f信号から、その最初の信号と位相が一致した3f出力を作る。それから9f信号と10f信号を差し引いて1fの差信号を作り、別の3つの分割回路がノッチされ、3f信号から、最初の9f信号と同じ位相をもつ1f信号を作る。これは、受信器の2つの別のチャンネルで行われ、それぞれが送信局Aからの信号と、送信局Bからの信号を処理する。受信局AとBから生成された2つの1f信号が比較され、位相差が、特許が「粗い」制御と呼ぶものに反映される。粗い制御は、1fレーン内、つまり72マイル幅のレーン内、あるいは別の言い方では、9つの8マイル幅レーンのグループの中での、位置を示す。

2つの読み出しを組合せて、航海士(航空士)は、9つのレーンのグループのうちのどのレーンにいるか[***22]、そしてその特定のレーン内のどこにいるかを示すLOPがわかる。位置決定をするために特許第’816号は、第三の9f、10fおよび12fの信号の組合せを送信する第三の送信局Cを設置し、これらの信号を受信器の第三のチャンネルで処理することを提案する。つまり送信局AとBからの信号が、上記のように処理されてLOPを1つ定め、送信局AとCの信号が第二のLOPを定める。この2本のLOPの交点により、受信器の位置が確立する。

この段階で、そしてオメガ・システムについて議論する前に、特許の無効性に関する被告の主張を検討するのがいいだろう。第’816号の受信器からの読み出しは無限個の双曲線型同位相レーンのいずれにも対応するので意味がないと被告は主張する[**1077]。さらに、混合回路と分割回路の作用により、受信器の信号の位相の一貫性が失われ[*558]、また、特許で開示された送信器は安定したパターンを生成することができないとも主張する。

これらの抗弁を裏付ける被告の証拠には説得力がなく、これらの主張のいずれも確認できない[***23]。第’816号の受信器のレーン決定能力が、±36マイルの未知の部分には及ばないことには疑いはない。しかし、これから説明するオメガ・システムも同様である。重要な点は、特許第’816号が、その明確な限界の範囲内で、レーンの不定性を解決する機能があるシステムを開示していることである。システムに欠陥があるという事実だけでは、あるいは、ある仮定された条件の下では機能しないかもしれないという事実だけでは、あるいは、より良い結果をもたらす、より良くより複雑な装置が開発されたという事実だけでは、開示された装置の、その説明された機能を行う能力を否定はしない。

「現実世界」の電波がさまざまな外乱や異常の影響を受けるという事実も、この結論を変えない。認定8で説明されるように、第’816号の受信器はこれらの異常に対して補償をしており、特許権者が3つの周波数9f、10fおよび12fの使用を提案したのは、まさにこの問題に対応するためである。これらの3つの周波数により、2つの周波数の場合と比べて約3倍の摂動に対処できることを、特許権者は発見したのであった。

明らかに、発明の原則を実行する、特定の開示された実施例が完全ではないと示すだけでは、使用不可能性は立証されない[***24]。Field v. Knowles, 183 F.2d 593(CCPA 1950)。この点については、電波が出遭う異常や、望ましくない効果に対する修正をしていない「生の」LOPでも、集結のためには有用であり、告発されたオメガ・システムが同様の読み出しを生成する能力をもつように設計されたのはまさにこの目的のためであったことに留意することには価値がある。

開示の不適切さに関する被告の主張にも価値はない。本訴訟の記録に基づくと、この分野の通常の技能をもつ人がこの特許の開示を理解でき、その開示から、この分野の技能を使って、使用可能なシステムを作ることができたことには疑いはない。これは、35 [*559]U.S.C. @ 112の要件を満たすのに十分である。Bowser, Inc. v. United States, 181 Ct. Cl. 834, 388 F.2d 346(1967); Trio Process Corp. v. L. Goldstein’s Sons, 461 F.2d 66, 74(第三巡回、1972)、裁量上訴棄却、409 U.S. 997。

したがって、クレーム1、4および11は有効であると結論付ける。

II

次に、告発されたオメガ・システムを検討すると、これは8つの送信器が、世界中の戦略的場所に位置する、長波(VLF)無線航行システムである[***25]。現在は、合衆国に2つ(ハワイ州のHaikuと、ノース・ダコタ州のLa Moure)、およびノルウェーに1つの、合計3つの送信局しか完成していない。システムが完成すれば、これらの8つの局からの信号により、世界全体で全天候用航行サービスが提供されるだろう。

オメガ・システムにとって双曲線無線航行技術が基本である。しかしこのシステムは、それ以上の能力をもつように設計されている。たとえば、適切な受信器をもつ航海士(航空士)は、ロー・ロー(つまり、range-range)航行方式を採用することができる。この後者の航行方式は、双曲線の代わりに円形格子を用い、1局からの信号のみを必要とする。しかし、地上と飛行機用のAN/ARN-99、そして潜水艦用のAN/BRN-7という、侵害していると告発されたどちらの受信器も、最初の位置を確定するのに双曲線モードを使う。そしてARN-99はロー・ロー・モードに移るが、BRN-7は双曲線モードにとどまる。さらにどちらの受信器も[**1078]、いかなる時も「生」の双曲線LOPを表示する能力をもつ[***26]。特許第’816号は双曲線航法のみに関したものなので、告発されたシステムはその観点のみから検討され、ロー・ロー機能はARN-99の追加機能とみなされる。

オメガ・システムは、最新の、最も現代的で複雑な装置を使用するように設計されている。オメガ送信器では、各送信局からの送信を調整し、すべての送信局が互いに同期していることを保証するために、セシウム・ビーム・スタンダードという形での原子時計が使われる。各送信局は明確に異なるパターンで9f、10fおよび12fの信号を送信しており[*560]、受信器はどの送信局を受信しているのかを判断し、受信する電波と同期することができる。

各受信器は3チャンネルの無線受信回路とコンピューターから構成される。コンピューターは、オメガ航法のプログラムがあらかじめ組み込まれた、軍隊用の汎用デジタル・コンピューターである。航海士(航空士)はコンピューターのプログラムを変えることも、いかなる形でコンピューターのルーチンを変えることもできない。無線受信回路は、増幅回路、混合回路、およびその他のハードウェアから構成され、受信される9f、10fおよび12fの信号を処理し[***27]、コンピューターが取り扱えるデジタル情報に変換する。これは、受信器の各チャンネルで、9f、10fおよび12fの信号のそれぞれと手元の発振器の出力とのうなりを作り、それぞれが9f、10fおよび12fの信号の位相情報をもつ3つの別個の中間周波数(If)を生成することによって行われる。この位相情報は、二進法の数字を表わす一連の電気的パルスに変換され、コンピューター部分に入れられて記憶装置に記憶される。

特許第’816号に関しては、双曲線モードにあるオメガの受信器は、その最初の位置を、±36マイルの範囲内でしか決定できない。つまり、航海士(航空士)はどの72マイル幅のレーンにいるのかを知らなければならず、すると受信器はライニング手続きによって、9つの8マイル幅レーンのうちのどれにいるのか、そしてその8マイル幅レーン内のどこにいるのかを決定することができる。それは次のようにして決定され、説明されている機能は、どの8マイル幅レーンに受信器があるのか[***28]の決定に到達するための「状態ベクトル」分析のプロセスを通じて、コンピューターによって実際に行われることがわかる。9f(1f?)、10fおよび12fの周波数は「差」である。つまり、2つの送信局のそれぞれからの9fと10fの信号が差し引かれて9fの差周波数を作り、9fと12fの信号が差し引かれて3fになり、10fと12fの信号が差し引かれて2fになる。基本周波数が1.133 khzの時は、9f、10fおよび12fの基準周波数は、それぞれ8、7.2および6マイル幅のレーンを定義し、1f、2fおよび3fの差周波数はそれぞれ、72マイル、36マイルおよび24マイルの双曲線レーンを定める。コンピューターは記憶されている位相情報を使って[*561]、2つの送信局からのこれらの差周波数の信号の位相を比較し、大きなレーン内での位置を確定する。3つの周波数を使うことにより、レーン内での位置の不定性は解消する。デジタル・コンピューターの速度は速いので、周波数の差を取り位相を比較することを、数秒で何回もできる。そして計算の結果を平均することで、どの8マイル幅レーンにいるのかについての最善の評価、つまり決定がなされる。

その決定をした後、コンピューターは差周波数モードから[***29]単一周波数モードに移る。このモードでは、2つの送信局のそれぞれから、1つの周波数の位相が比較される。たとえば、送信局AとBからの9f信号の位相が比較され、その周波数は8マイル幅レーンを定めるので、位相差は、すでに特定された8マイル幅レーン内のどこに受信器があるのかを示す。ここでもコンピューターは速く、数秒内で何回も計算を行い、その結果を平均し、読み出しを提示することができる。

いったん受信器がその位置を確立すれば、双曲線レーンを越えるごとに、越えた数を数えることができる。もしある時点で[**1079]、オペレーターが自分の位置を知ろうとすれば、受信器は命令を受けて、「生」の双曲線LOPを表示する。そのLOPは、現在のレーン・カウント、つまり受信器のある8マイル幅レーンの番号の、および上記の9f信号の位相比較による、その時点で受信器がレーンを越えてからどれだけ進んだかのデジタル表示から構成される。告発された受信器はさらに、その計算に、さまざまなプログラムされた補正を施し、決定された位置を、緯度と経度で表現される読み出しに変換する能力をもっている[***30]。


III

侵害の問題に移る。クレーム1は以下の通りである。

位置がわかっている2つの送信局から発信された信号の、受信器までの伝播時間の差を示すことによって位置線を決めるという双曲線無線航行システム。最初の送信局からは、角度をラジアンで示すと、それぞれn1オメガ0t + a1、n2オメガ0t+a2、および(n1 + 1)オメガ0t + a3という位相条件を満たす3つの信号が発信され[*562]、2番目の送信局からは、それぞれn1オメガ0t + a1 + k、n2オメガ0t + a2 + k、および(n1 + 1)n1オメガ0t + a3 + kという位相条件を満たす3つの信号が発信される。ただしn1とn2は整数で、オメガ0は2pi掛ける一秒当たりの基本周波数、tは秒数、そしてa1、a2、a3およびkは定数である。送信は、1つの送信局からの各周波数の信号の中断中に、他の送信局から同じ周波数の送信が行われるように順番に切換えられ、送信の切換えによって[***31]受信器の切換え手段を同期させるために、周期的に明確に変えられる。受信器は、送信された信号を受け取る手段、送信における明確な交替によって同期され、2つの送信器から受信された信号を分離するように作られた切換え手段、および、伝播時間の差を示す、基本周波数の逆数に秒数が等しい時間差表示の循環サイクルをもつ位相差指示器から構成される。その指示器は、細かいコントロールと粗いコントロールによって動かされる。その細かいコントロールは、現場で生成される中断なしの信号から生じる一対の信号に依拠し、その1つは上記の最初の送信局から受け取った信号のうちの1つのみによって位相コントロールされ、他方は上記の2番目の送信局から受け取った信号のうちの1つのみによって位相コントロールされる。また粗いコントロールは、各送信局から送信された3つの異なる周波数から生じる、受信した6つの信号に依拠する。

クレームが侵害されていると原告が立証するためには、このクレームの条件に対する文言上の対応以上のものが示されなければならないという被告の主張は正しい。Wastinghouse v. Boyden Power[***32]Brake Co., 170 U.S. 537, 568(1898)。それを示さなければならないばかりでなく、告発されたシステムはクレームされたシステムと、実質的に同じ作用を、実質的に同じ方法で行い、実質的に同じ結果を達成しなければならない。Marvin Glass & Associates v. Sears, Roebuck & Co., 448 F.2d 60(第5巡回、1971);Dominion Magnesium Ltd. v. United States, 162 Ct. Cl. 240, 320 F.2d 388(1963)。

クレームの文言のオメガ・システム上での読取り可能性に関しては、認定19で説明されるので、ここで繰り返しても意味がない。原告は証拠の優越によって、HaikuとLa Mourのものなど2つの送信器、およびARN-99またはBRN-7の受信器をもつオメガ・システムがクレーム1の文字通りの表現に対応することを示すという、責任を果たしたと言えば十分である。

文言の読取り可能性があるにも関わらず、オメガ・システムは、実質的に同じ最終結果を生み出すのに実質的に同じ手段を採用していないと被告は主張する。特に被告は、オメガ・システムでは汎用コンピューターが使用されているのに対して、特許ではアナログ処理が開示されており、そのコンピューターは多くの他の目的で使われ[**33][**1080]、レーンの特定が行われる計算を実際にするのはコンピューター・ソフトウェアであり、そのソフトウェアは一連の方程式以上のものではなく、オメガ受信器は特許第’816号の図7で開示された受信器よりもはるかに多くのことができるという事実に依拠する。

告発された組合せの1つまたは複数の要素、つまり本訴訟ではコンピューターが、侵害ではない使用が可能であるという事実だけでは、それら同じ要素を採用するシステムすべてが侵害とはならないことを意味しない。LaSalle Street Press v. McCormick & Henderson, Inc., 445 F.2d 84, 94(第7巡回、1971)。したがって、同一の汎用コンピューターが、爆撃任務に採用される侵害ではないシステムで使われるという証言は、そのコンピューターがオメガ・システムの他の要素と組み合わされた時に、クレーム1の航行システムを侵害しているか否かという問題には、まったく無関係である。

被告によるデジタル手段の使用が告発されたシステムを区別しているという主張に関しては、クレームはその条件によっては、いかなる形でも、開示された特定のアナログ機構に限定されないことに留意すべきである。また明細書には[***34]、特許権者が発明とみなすものは、開示された特定の装置の配列または詳細であるとの示唆が含まれていない。実際、特許の第7欄第4 - 6行に記されているように、図7に示されている受信器で達成されるものと「同一または同等の情報を与えるような受信器を構成する方法はたくさんある」。有効性を維持するためにそのクレームを開示された装置に限定することを要求するような従来技術もなく[*564]、ファイル・ラッパー禁反言の法理が、クレームのそのような限定的解釈を要求するという根拠もない。つまり、この発明は、送信された信号とそれ自体を同期し、信号を分離し、そしてそれらの信号から細かいおよび粗い読み出しを生成する機能を行うことができる受信器を含むシステムであり、受信器がこれらの結果を達成する特定の機構ではなかったという結論を、証拠は支持する。これらの事実に基づき、告発されたシステムではアナログではなくデジタルの技術が使われていることを示すことでは、侵害は回避されない。National Dairy Products Corp. v. Swiss Colony, Inc., 364 F.Supp. 134, [***35]152(ウィスコンシン西、1972)。

ソフトウェアに関する被告の主張も、同様に説得力はない。Gottschalk v. Benson, 409 U.S. 63(1972)は、コンピューター・プログラムはそれ自体では特許性がないと判断しているが、クレーム1は明らかに、単なるプログラムではなく要素の組合せを示している。オメガに関係することについて、クレーム1は、コンピューターのプログラムについてのみ書いているのではない。実際、被告の専門家は審理で、プログラムはそれ自体では何も成し遂げず、オメガ・システムがそのために設計された航行機能を達成するために、機械化されなければならない。したがって、オメガのコンピューターがデータを処理するためのバースト・フィルター、トラッキング・フィルターそしてカルマン・フィルターは、「物理的」存在ではない「単なる抽象物」であるという被告の主張は、まったく的はずれである。たとえばカルマン・フィルターが基づいている理論、およびコンピューター自体のための指示またはプログラムは、一連の方程式以上のものではないかもしれないが、信号を受信しそれを処理する手段、およびそれらの指示を実施し、最終結果を達成する手段は、クレームの条件を満たす、有形の物理的存在である。

第’816号の実施例と比較してのオメガの複雑さに関する被告の主張にも、重みを与えることはできない[***36]。被告が指摘したように、デジタル・コンピューターは実際には1954年には利用できず、カルマン・フィルター・プロセスは1960年までは、開発されてもいなかった。そして、原子時計とコンピューター化された動作をもつオメガ・システムが、特許の図7の実施例で達成されるものよりも[*565]、より正確な読み出しを提示できることは明らかである。しかし、告発されたシステムが、特許を受けたシステムの改良であることだけでは、特許を侵害していないことにはならない[**1081]。Eastern Rotocraft Corp. v. United States, 184 Ct. Cl. 709, 397 F.2d 978(1968)。

ここで重要なのは、オメガ・システムが双曲線モードで使われた時に、特許第’816号の特許権者の寄与である基本的システムを使うことである。したがって、9f、10fおよび12fの信号が、同位相で、明確に交替するパターンで発信され、2つの離れた送信器から順番に切換えられ、受信器を送信の列に同期させるために明確な送信パターンが使われ、信号は受信され別個の処理チャンネルに分けられ[***37]、LOPの読み出しという形での指示計が与えられ、読み出しは「粗い」位置と「細かい」位置を表示し、細かい位置は、受信され記憶される9f信号とそれらの2つの信号の位相比較に依拠し、粗い位置は2つの送信局それぞれからの9f、10fおよび12fの周波数差、ならびにそれらの信号の位相比較によって得られる。それがクレーム1で定義されたシステムであり、それがそのクレームで定義された特許権者の寄与であり、それがオメガが機能する方法である。そのことを証拠の優越によって示したことで、原告はその責任を果たした。Stamicarbon N.V. v. Escambia Chem. Corp., 430 F.2d(第5巡回、1970)、裁量上訴棄却、400 U.S. 944。

クレーム4はクレーム1に従属しており、単に、信号が順番に発信されるという要件を加えているだけである。オメガは明らかに、特許第’816号と同じ目的でそうしている。

ここで主張される最後のクレームであるクレーム11は、他の2つの送信局からの信号に対して、ある指定された位相条件を満たす信号を発信する、第三の送信局の限定を加えている。これら3つの送信局からの出力を[***38]2つずつ組合せると、二本の交差する位置線が作成でき、受信器の位置決定がなされる。クレーム1に関連して議論されたものと同じ理由により、告発されたオメガ・システムは、説明されているように[*566]信号を発信する第三の送信局をもつと結論付けられる。受信器はクレームされた態様で機能でき、機能する。

しかし被告は、ハワイ州Haikuとノース・ダコタ州La Moureに位置するもの以外の唯一の送信局はノルウェーにあり、したがって、合衆国の領土外にあると指摘する。被告はDeepsouth Packing Co. v. Laitram Corp., 406 U.S. 518(1972)を引用し、クレームされた組合せ全体の、使用可能な一式が、合衆国の領土内で作られまたは使用される場合にのみ、クレームは侵害されると主張する。この組合せが必要とする第三の送信局がノルウェーにあるので、原告は、使用可能な一式としての組合せが合衆国の領土内で完全に作られ使用されたと示すことはできず、したがってクレーム11に基づく責任はありえないと被告は主張する。

しかしDeepsouth訴訟は、クレームされた組合せ全体が合衆国外で完成され使用されたという状況を扱っているので、この訴訟は実際には当てはまらない[***39]という原告の主張は正しい。本訴訟では、クレームされた組合せの一部のみ、つまり必要な3つの送信器のうちの1つだけが合衆国外に位置しており、完成された一式の有益な使用は実際には、合衆国の管轄地域内で、オメガ受信器を装備された被告が所有する船舶または飛行機が、クレームされた態様で信号を受信し、利用する時に起きている。またDeepsouth訴訟では、組合せが組み立てられた時にはすでに、組合せのすべての要素が販売され、国内生産者以外の人の手にあった。本訴訟では、ノルウェーのすべての装置が合衆国によって購入され、合衆国によって設置され、合衆国によって所有し続けられ、最初は合衆国によって動かされ、今日でも合衆国の指示と管理の下に合衆国の利益のために使われている。これらの事実に基づき、Deepsouth訴訟は本件に関係するとはみなされない。[**1082]

したがって提起される問題は、クレーム11のシステムが、特許法で採用された意味で、合衆国によって合衆国のために作られ使用されたかということである[***40]。より具体的に言えば、問題は、第三の送信局がノルウェー領土上に位置しているにも関わらず、合衆国は、合衆国内でクレームされたシステムを作りまたは使用したと言えるか否かである[*567]。

いずれの当事者も、正確にこの問題を扱った判例を引用しておらず、初判例事件だと思われる。特許侵害は技術的不法行為なので不法行為原則から指針が得られると、原告は示唆する。特に、どの法律が適用されるかという問題に関しては、途中の行為の一部が他の場所で起きたとしても、不法行為はそれが完了した時に最後の行為が起きた場所で起きた、または被害を受けた場所というのが従来の規則であると原告は主張する。その分析の下では、この侵害行為は、合衆国内の受信器が3つのすべての送信局から信号を受けた時に、完成され被害を受けたと原告は主張する。したがって、侵害は合衆国内で起きたと原告は主張する。しかし被告が指摘するように、特許を受けた発明の政府による使用は[***41]、不法行為ではなく、特許に基づくライセンスの公用使用とみなされるということは決定している。Crozier v. Krupp, 224 U.S. 290, 308(1912)。したがって不法行為との類推は、意味があるとしても不完全である。しかし、公用使用に基づく分析的アプローチは、原告の不法行為分析と同様の結果をもたらす。合衆国による「使用」という観点からは、@ 1498に基づく訴訟原因は、告発された装置が最初に利用可能となった時に生じる。Regent Jack Mfg. Co. v. United States, 167 Ct. Cl. 815, 337 F.2d 649(1964)。そして、ライセンスが取得されたとみなされるのは、使用が起きた時である。Irving Air Chute Co. v. United States, 117 Ct. Cl. 799, 93 F.Supp 633(1950)。公用使用の法理の下では@ 1498に基づく訴訟の根拠は、この補償なしでのライセンスの取得である。本件では、システムの完全な使用があるのは、受信器が合衆国で信号を受信する時である。不法行為の観点からはこれが「被害」を受けた時であり、公用使用の観点からは、これはライセンスを取得した時である。

しかしいずれの分析的アプローチも、クレーム11が侵害されたとの結論を、絶対的には導かない。クレームされた要素の1つが合衆国外にあり[***42]、使用可能な一式としての組合せは、この国の領土内[*568]のみには見付けることはできないというのが、明白な事実である。しかしこのシステムが、可能な限り合衆国内で作られたことには疑いはない。まさにその性質自体によって、システムは、この国の領土外に位置する送信器をもつ必要があるが、それらの外国の送信器の設置において、ある種の部分、たとえば発信アンテナやヘリックス・コイルなどを現場で建設する必要がある。また、使用可能なシステム一式全体を構築する最後の段階が合衆国内で行われたことも、留意する価値がある。ノルウェーの送信局は送信を開始する前に、合衆国の送信局と同期しなければならなかった。これは原子時計をノース・ダコタからノルウェーに送ることによって達成された。この時計のエポック・パルスを使って、ノルウェーの送信局と合衆国の送信局の位相が合わされた。そしてこの原子時計を合衆国に送り返して、許容範囲外のドリフトがあったか否かがチェックされた。この3つの送信器が、必要な位相関係をもつ信号を発信する使用可能な一式と言えたのは、この時点であった[***43]。最後に、実際にクレームされた態様で信号を受信し、処理する、完全かつ使用可能なシステムの最後の要素である、位相差指示計をもつ受信器は、合衆国内にある。

合衆国による作成ではなく使用という観点から分析すると、さらに明らかな描像が浮き上がる。ノルウェーの送信局からの送信は、その信号を確立し、継続的に監視するという意味で、合衆国によってコントロールされている。これらはすべて、合衆国で起こる。さらにすでに説明したように、その送信局の必要な同期とその活動の一部は、原子時計の使用を通してこの国で行われることも、被告は立証した。さらに、その送信局の送信と合衆国からの送信の同期を保証するすべての措置が、合衆国から行われる。つまり、ノルウェー局はノルウェーの領土に位置するが、その局からの信号を採用している航海士(航空士)は、実際はその局を「使用している」のであり、その使用は、信号が受信され[***44]、クレームされた態様で使われた時に起こることは明らかである。

[*569]上記のことを鑑みて、疑いがまったくないわけではないが、クレーム11の下での責任の根拠は示されたと結論付けられる。この結論は1つの要素ではなく、本件で存在する状況の組合せ、特に、合衆国による装置の所有、合衆国からの装置のコントロールおよび合衆国内でのシステムの実際の有用な利用に依拠している。さらに、言及すべきもう1つの観点は、特許権者の寄与は、送信器が信号を生成し、発信する態様にあるのではなく、特定の関係をもつ信号が離れている発信源から受け取られ、位置決定をするために受信器で利用されるというシステムにあることは、特許の明細書からもクレームからも明らかであるという点である。そうでなかったとしたら、つまり、発明が信号の生成自体を扱ったものだったとしたら、この国でのそれらの信号の利用は付随的なものであり、ノルウェー局での操作は、合衆国特許法の範囲外になることは[***45]、明らかだと思われる。しかし実際には達成される結果は、特許権者の真の寄与と合致していると思われ、その寄与に対する正当な報酬を保証することになる。

最後に、治外法権の問題に関して両当事者は、すべての送信局をその主張に含めた。しかしノルウェーの送信局は、クレーム11の下での責任の問題を解決するのに検討される必要があった、唯一のものである。他の送信局、または被告が購入したが、まだ設置していない他の装置に関する状況は、もし関係するならば、清算において適切に考慮されるべき問題である。

結論として、クレーム1、4および11は有効であり侵害されており、原告は、妥当かつ完全な補償を受ける資格をもつ。

事実認定

1.    「無線航行システム」という表題の特許第2,844,816号は、1955年3月7日にWilliam J. O’BrienとHarold G. Hawkerが提出した出願[*570]、出願番号第492,592号に対して、1958年7月22日に付与された。優先権が、1954年3月8日にイギリスで提出された出願に基づき主張された。特許の所有権は、イギリスの法人である、英国ロンドンに居住する[***46]原告に存する。クレーム1、4および11のみが、争点となるクレームである。

2.    ここでは第’816号として言及される、訴訟となっている特許は、複数の信号を個別に受信し、位相比較により位置決定をするために処理できるように装備された「方向を指示すべき船舶(飛行機)」で受信される、3つの特定の、調和的に関係している周波数をもつ連続波(CW)無線信号の断片の列を複数の送信器が送信する、無線航行システムに関係している。この発明は特に、わかっている場所に固定された複数の送信局が、送信器から離れた位置にある、移動する受信器によって感知される無線信号を送るという、双曲線無線航行システムに関係している。移動する受信器は、無線信号の到着の時間差を測定する。時間差は、信号が伝播する距離の違いの尺度である。このようにして、受信器が位置する位置線(LOP)が決定される。位置線は双曲線になるので、双曲線システムと呼ばれる。双曲線LOPとは、そこと、定められた一対の送信器との距離が、常に定距離だけ異なる[**1084]ように動く点が作る経路である[***47]。第二の一対の送信局からの信号に基づく第二の位置線を決めれば、この二本の交点が、受信器の位置を定める位置決定となる。

3.    (a) 特許第’816号が扱った問題は、「レーン決定」または「レーン識別」と呼ばれる問題である。双曲線システムでは、隣接する双曲線が、それにはさまれる地帯、つまりレーンを定める。レーン決定は、一群のレーン中のどのレーンつまり地帯に受信器があるかを判断する問題に関係している。特許第’816号では[*571]、広い地帯つまり広いレーンの幅は、1fに対応するように選ばれた。つまり、1本の位置線が隣りの線から、基本周波数の半サイクルだけ離れる。この地帯幅は、さまざまな方法で表現することができる。海里で示すためには常に、周波数の指定と、測定は「基準線」上で行われるという了解が必要である。2つの送信局の間に引かれる基準線から離れると[***48]、双曲線の間隔は広がるからである。幅を定める、より正確で一般的な方法は、位相差に依存する単位を使うことである。そのような定義は、受信器が基準線からどれだけ離れているかとは無関係に正確である。2つの信号の位相差は、実際には、単位は異なるが伝播時間の差に比例するので、1fレーンは、位相差というよりも時間差として表現できる。

       (b) 告発されたオメガ・システムのように、1f周波数が1.133 khzである場合には、基準線で測定された基準レーン幅は72海里である。9fの周波数では、レーン幅は8海里になる。双曲線航行図は、通常9fに基づいており、レーン決定の問題は、どの8マイル・レーンに船舶(飛行機)があるかの決定ばかりでなく、その8マイル・レーン内のどこにいるかの決定でもある。

4.    (a) 特許が意図した基本システムは、ブロック図で表わすと次の通りになる。

[原本の図を参照]

[*572](b) 特許のシステムは、少なくとも2つの送信局AおよびBを考えている。その信号の同期した送信を保証するために[***49]、B局の操作が、マスター/スレーブ関係でA局によってコントロールされるという点以外では、両送信局の送信器は同一である。各送信器は基準となる小さな基本周波数の高調波を作ることによって、9f、12fおよび10fの出力信号を生成する。基本周波数1fの正弦波出力信号を生成するように作られた、通常のオーディオ発振器が、1f「Pipper」を駆動つまり作動させるために接続される。Pipperは、一連の非常に短く狭いパルスから構成される、反復する波列を生成する。高調波に富んでいるこれらのパルスは、実質的に、1f入力信号の奇数および偶数のすべての高調波を含んでいる。送信器はまた、3つの非常に鋭く同調された増幅器を含んでおり、これらは、1f Pipperの出力に現われる周波数のスペクトラムから[**1085]、それぞれ12f、10fおよび9fの高調波を抽出するのに使われる。電力増幅器の出力は、同期モーターによって動かされる回転要素をもつロータリー・スイッチによって、整流子からアンテナに送られる。ロータリー・スイッチは、それぞれがスイッチの回転ローターに組み合わされている弧状導電セグメント一組を含む。ローターが順番に、それぞれの電力増幅器につながった弧状導電セグメントに絡むと[***50]、受け取られた高調波信号が、アンテナに送られる。発信される12f、10fおよび9fの高調波信号の位相は、1f Pipperとアンテナの間で生じる位相のずれを補償する位相弁別器によって、1f Pipperからの対応する出力と比較される。

       (c) ブロック図には送信局が2つ示されているが、位置決定をするには第三の送信局が必要となる。この第三の送信局もA局とマスター/スレーブ関係にあり、他の送信局と同じ態様で動作し、受信器に9f、10fおよび12fを発信する。

5.    特許第’816号に開示されている適切な受信器が、図7に示されている。

[*573][原本の図を参照]

       受信システムは、9f、10fおよび12fの送信された信号が受信される、3チャンネル構成という形を取る。アンテナ19に連続的にやってくる9fの受信信号は、9fの記憶発振器24、27および28に伝えられる。これらの記憶発振器はそれぞれ、位相弁別器23の作用の結果としての[***51]、各送信局からの入力信号の位相を「記憶する」。弁別器23は[**1086]実際上、各発振器それぞれの位相を9fの入力バーストの瞬時位相に同期させる。これによって、3つの送信局のそれぞれからの、入力搬送波の位相の、記憶されたレプリカが保持され、9fのそれぞれのバーストの送信間隔の終了後に、信号の処理のために使われる。

       各垂直層の記憶発振器によって生成された9f信号は、まず3f信号を得るために分割回路29、30および31に、それから周波数1fの信号を得るために、それぞれ他の分割回路32、33および34に向けられる。[*574]分割回路29、30および31は混合回路35のコントロール下にあり、分割回路32、33および34は混合回路38のコントロール下にある。混合回路35と38のそれぞれは、適切な時刻に、それぞれの送信局からの記憶された9f信号のレプリカを与えられる。12fが受信されている間、混合回路35が9fと12fの「うなり」周波数を作る。そのようにして作られた混合回路の3f出力波形は、適切な順番で分割回路29、30および31のうちの1つに送られる。[**52]10fが受信されている間、混合回路38は9fと10fの「うなり」周波数を作る。混合回路38の1f出力波形は、適切な時に、信号処理の順番に、分割回路32か分割回路33か分割回路34のいずれかの入力に送られる。

       A局から受信された9f信号の記憶されたレプリカと、B局からの記憶された受信信号は、微細位相指示計41で観測できる。分割回路32、33で作られた1f周波数の間の位相差は、粗位相指示計42によって、目で見えるようにされる。システムにはまた、受信器の別の2つの隣接する垂直チャンネルの間で接続される、微細位相指示計43と粗位相指示計44が含まれる。

       3つの送信局からの9f信号は、順番に受信器に到着する。その結果、9f受信信号を、各局からの信号を処理する特定の記憶発振器に伝えるための手段が必要となる。示されているように、発振器24は常に、A局からの9fバーストを受信しその位相を記憶しなければならず、発振器27はB局からのバーストを感知し、その位相を記憶しなければならず[***53]、発振器28はC局からの9f搬送バーストに付随する位相値のサンプルを取り、その値に同期しなければならない。順番に到着する9f信号を正しい発振器に伝えるために、システムはロータリー・スイッチ26を採用する。それは、順番に3つの弧状導電セグメントにつながる導電ローターの形を取る。回転ローターが適切な記憶発振器へ各9f受信信号を送ることを可能にするために[*575]、各弧状導電セグメントは、9f記憶発振器の1つの入力に接続される。スイッチ26のローター要素は、多くの他のスイッチの中のローター要素に、機械的に組み合わされる。これらのスイッチの1つは、信号処理周期の正しい時間間隔中に、混合回路35から分割回路29、30および31へ出力信号を伝えるのに使われる。混合回路38からの出力信号も、スイッチ26のローターと組み合わされたスイッチの1つによって、必要に応じて分割回路32、33または34のいずれかに伝えられる。回転ローターの位置は、常に、9f、12fおよび10f信号を発進するために沿岸局[***54](つまり送信器)で使われる回転ローターの位置と同期していなければならない。これは、受信器と送信器が常に正確に相関することを保証するために作用する、同期装置40aと同期モーター25aによって達成される。

6.    図7に示されている受信器は、9f、10fおよび12fの周波数を利用する。1.133 khzという基本周波数を仮定すると、基準航行周波数は、10.2、13.6および11 1/3 khzとなる。これらの周波数値を使うと、受信器の最初の2つの垂直層にある記憶発振器24と27はどちらも、受信された10.2 khz信号の位相を記憶する。微細位相指示計41は、2つの10.2 khz受信正弦波信号間の位相差を表示する。各層の最初の分割回路によって生成された出力信号の周波数は3.4 khzである。2つの分割回路29と30を接続する位相指示計は[**1087]、2つの3.4 khz正弦波アナログ波形の間の位相差を表示する。最も低い分割回路32と33は、1.133 khzの入力信号を、粗位相指示計42の反対側に供給する。

       1.133 khzの波長に対応する粗位相指示計42上の読み出しは[***55]、72マイル幅レーン内の位置を表わす。位相指示計42上に現われる表示は、微細位相計41上に現われる表示よりも、9倍「粗い」。粗位相計42上に現われる値は、双曲線格子上の72マイル幅レーン内の位置を示し、微細位相計41上に現われる値は、8マイル幅レーン内の位置を示す。まとめると、位相計42は8マイル幅の9レーンのうちのどこに受信器があるかを示し、位相計41は特定の8マイル幅レーン内の位置を示す。

[*576]7. 遠方の受信器へ発信されるVLFエネルギーは、送信器を出てから受信器に入るまでに、多くの変動を受ける。地表の導電性、日周変動、および地表上の各地点で変わるその他の多くの要因が電波に影響する。さらに、未知の原因による、継続期間が予期できない異常が起こり、電波に影響するか、信号の受信に干渉するかもしれない。その結果、送信された時に信号の位相が同期されたとしても、受信されるまでに伝播時間差以外の要因により[***56]、位相がずれるかもしれない。

8.    (a) 第’816号のシステムは、雑音と伝播エラーがある時にレーンを決定するための限定された能力をもつ。それは次のように行われる。9f信号のそれぞれが、位相同期発振器24、27および28に与えられる。これらの発振器は、受信された9f信号によって動かされ、したがって実際上、周波数でも位相でもその9fを「追跡」する。その出力はきれいな「雑音なし」の信号なので、「追跡フィルター」と呼ばれる。発振器24、27および28のような適切な追跡フィルターは1954年に知られており、比較的きれいな信号を作り出すことができた。そして位相器41と43でこれらの信号を位相比較することによって、細かいコントロールが得られる。粗いレーン決定は、コントロールされた2段階の3分割によって、次のように行われる。まずA局自体からの信号に関して、発振器24からの9f出力は、分割回路29によって3で割られ、次に分割回路32によって3で割られる。しかし分割回路29と32の出力は、もしさらにコントロールされなければ曖昧である。したがって、分割回路29は、発振器24の3番目ごとのサイクルのいずれかによって動かされ[***57]、分割回路32は、分割回路29の3番目ごとのサイクルのいずれかによって動かすことができる。それ以上のコントロールなしで、駆動をするべき精確なサイクルは任意となる。それが第’816号でコントロールされる方法は、まず、A局からの9fと12fの信号のうなりを混合回路35で作り、3fを作ることで始まる。このために使われる9fは、発振器24の出力であり、それは結局、A局からの9fの、記憶された表現となる。使われる12fは、増幅器21の12f出力である。

       [*577](b) 作られた3fうなり信号は分割回路に入れられ、実際上、パルス列の各グループの異なるサイクルから駆動力を受け取るように3f出力を動かすことのできる、優先的な、つまり「ノッチング」信号を構成する。しかしこのシフトは、入力された3f信号の、以前に存在していた3f出力との位相のずれが60度を超えていなければ行われない(9fでは180度を超える位相のずれ)。もし入力された3fの位相のずれが60度以下だったら、その3fが去った後に分割回路は元に戻り、あたかもその3fが入力されなかったかのように[***58]、以前と同様、9fグループの同じサイクルとの同期を再開する。

       (c) 同じことが、次の、3fから1fへの分割でも起こる。分割回路の既存の1f出力との位相のずれが60度を超える、優先的な、つまり「ノッチング」1f信号が分割回路(たとえば分割回路32)に入力されると(3fでは位相のずれは180度)、分割回路は動き、新しい3fパルスによって駆動されるようになる。もし入力された1fの位相のずれが60度以下だったら[**1088]、1f分割回路は、前と同じ3fパルスとの同期を再開する。

       (d) このようにして、分割回路29、30、31、32、33および34は各局からの3つのすべての周波数の影響の下でコントロール、つまり「ノッチ」され、粗位相指示計42と44は、9fの与えられたノッチに対応して動かされ、それによって、粗位相計が、レーンの番号全体を読み出すように較正される。いったん「ノッチ」が正しくできれば、10fと12fの信号が伝えられていない期間、分割回路は結果的にレーン情報を記憶する。実際、追跡フィルターが動き回り過ぎるほど長く9fが中断しない限り[***59]、システムは10fと12fなしで無期限に「積分」する。1954年に使用された発振器は、航行が直線的で水平だとすれば、9fが5分間停止してもレーンを見失わないほど十分によいものだった。実際、もし9fが信号のない間にレーンを1つまたは2つまたいだとすれば、信号の送信が再開された時、12fと10fが、ノッチする3fと1fの信号をそれぞれ作るために前記の方法で個別に使われ、信号がない間の検知されなかった移動が41/2 9fレーン(つまり±36海里)を超えなければ[*578]、正しい9fを読み出すように粗位相器42を元に戻す。同様に、信号の短時間の異常は、誤ったレーンの読み出しを引き起こすこともあるが、異常が終わった後、システムは同様の方法で正確な動作に戻る。

       (e) 同じ考察が、たとえば周波数分散の日周変動から生じる長時間の異常にも適用される。例として、もしA局からの9f信号に異常があったら、分割回路29が9fによって動かされ、9fの駆動サイクルに正確に同期して[***60]、異常が3fの分割回路29の出力にも現われる。混合回路35では、受信された12fにはエラーはないとする。これは、位相のエラーは9fのみにあり、A局からの9fと12fが混合された(ヘテロダインされた)時、位相のエラーは変更されずにうなりに取り込まれ、混合回路35の3f出力は、最初の異常の大きさに依存する量だけエラーを含む。しかし3fでのこのようなエラーは、分割回路29の3f出力を9fの異なる駆動サイクルへシフトするのに要求される、上記の3fでの60度という値に達していなければ、重要ではない。達していないと仮定すれば、12fが切れた後、混合回路35が信号を受けなかったかのように、分割回路29は同じ「ノッチ」にとどまる。同様に、分割回路32(分割回路29の出力によって駆動される)は、混合回路35からの過渡的信号の終了後、元のままにとどまる。

       同じ分析が、3fから1fへの、次のレベルの分割にもあてはまる。この場合、混合回路35が切れた後、混合回路38から1f信号が入力される。そして上記のように、分割回路32に、駆動力として分割回路29からの3つのパルスのうちの異なる1つを採用させるには、分割回路29の1fスケールでの出力に、60度を超える位相のずれがなければならない(3fスケールでは180度を超える位相のずれ[***61])。

       第’816号では、1fの差周波数(つまり混合回路38の出力での、9fと10fのうなり)が、3fのどのノッチが正しいかを決めるためにのみ使われる。これは、1fの差周波数のみが9fノッチを決めるのに使われる場合よりも、システムをエラー状態にすることなしに、かなり大きな許容量があることを意味する(つまり、3倍の異常)。A9対1システムは、9fで20度を超える異常は許容できない。しかし第’816号では、3fの差周波数(つまり、混合回路35の出力での9fと12fのうなり)を使って、9fで60度の異常があった場合に、正しい9fノッチがまず1対3基準でまず特定される。そして9fに60度の異常があっても、1fが正しい3fノッチを、1対3基準でも特定できる。

9.    まとめると、特許第’816号は、2つ(またはそれ以上の)離れた送信局からの3つの位相同期された、高調波の関係にある周波数の波が、送信され[***62]、同期された方法で受信され[**1089]、受信器で処理され、2つの信号(つまり2局からの9f)に依拠する細かなレーンの読み出しと、2局から受信した6つの信号に依拠するレーン番号全体の粗い読み出しから構成される「生」のLOPを提示する、双曲線無線航行システムを説明する。

       図7の受信器は、航海士(航空士)に、位相計41と42の読み出しを通して、受信器は9つのレーンのグループの内のどのレーンにあり、そのレーンのどこにいるかを示すように設計されている。もし航海士(航空士)が、どの9レーンのグループに自分がいるかがわかるほど正確に自分の位置を知っていたとすれば、位相計41と42は、曖昧さなしに自分の位置を示す。もし航海士(航空士)がどの9レーンのグループに自分がいるかわからなかったら、特許を受けた受信器は、その情報を提供することができない。

10.   (a) 市販のデッカ・デコメーターを、位相器41および42として使うことができた。この位相器は「生の」(つまり異常などの修正がされていない)双曲線LOPを、数字でつまりデジタルで表示する。クレーム1は、読み出しが、秒数では基本周波数[***63]の逆数である周期的サイクルで生じなければならない、つまり更新されなければならないと要求しているという被告の主張は誤りである。時間差表示の周期的サイクルをもつ位相差指示器は「秒数で言って基本周波数の逆数に等しい伝播時間の差」を表示するという、第1欄第49行の表現で意味されていること、そしてクレーム1の対応する表現は、受信器が1fレーンを通過する時に示される伝播の時間差の大きさが[*580]1fの逆数であることを意味する。たとえば、告発されたシステムでのように、基本周波数が1.133 khzである場合、位相器に反映された伝播時間の差は、受信器がある1fレーンから次の1fレーンに動く時、0.8824ミリ秒である。

       (b) 送信器が発信する出力信号に関する、特許第’816号のクレーム1の数学的表式は、1つまたは複数のラジアン単位の定数を含んでいる。第11欄第9行および第1欄第33 - 39行に説明されているように、そしてこの分野で通常の技能をもつ人なら容易に理解できるように、各周波数は高調波の関係にあり、それぞれが基本周波数に同期しており、正確な時間関係は、変動がない限り重要ではない。等しい位相変化が受信器に導入される限り、発信された信号に一定でない位相変化[***64]が起こるかもしれない。これらの一定でない位相変化は、各周波数の位相関係を示す表式の中に、定数として取り入れられている。これらの定数は、位相変化なしの場合のゼロから任意の値まで変化する。つまり特許第’816号は、任意の位相変化が起こるかも知れないが、唯一の要求は、システム全体でそれが一様に使われることだということを、認識している。

       (c) 特許第’816号の送信用ハードウェアおよび調整手続きは、その当時デッカにとって標準的なものであり、送信器の実現可能性は立証されており、1954年前に十分に知られていた。特許第’816号に示されているような、装置でのVLF(10 - 14 khz帯)の使用も、1954年には実現可能であった。図7の実施例が実際に製造され販売されたことはなかったが、図8および図9の関連構造は、製造・販売された。図7がそうされなかった理由は、VLF送信にとって適切なアンテナを建設し、運転するための、政府の許可が得られなかったためであった。かかるアンテナは非常に大きく、その送信は近所の電話送信と干渉する[***65]。原告はかかる許可がすぐに得られるだろうと予想して、ある時、VLFアンテナ用の装置に多額の資金を費やしたが、その予想は誤っており、計画は放棄された。

       (d) 特許第’816号では、装置の切換えは回転する「整流子」スイッチという手段によって説明されている。しかし第’816号は[*581]、この形式の切換えを強調してはいない。時間調整された切換えならば何でもよく、第’816号の開示の範囲に入る。

       (e) 第’816号の送信パターンは、同期のために周期的に変更される。しかし特許は、他の同期切換えの方法も使え(第5欄第39 - 43行)、必要なのは、受信器が受信した信号と同期して正しく調整されるような、「信号目的のための送信の変化」の何らかの形(第9欄第21行)であることを明確にしている。

       (f) 1954年には原子時計は利用できなかったので、第’816号での送信はマスター/スレーブ関係で行われ、スレーブの送信の精確なタイミングは、マスターの送信によって直接制御された。[***66]しかし特許第’816号は、この詳細について何も強調しておらず、第1欄第27 - 44行および第3欄第51 - 69行における発明の範囲の広い表現は、単に、位相と高調波の関係、および同期の必要性を記しているだけである。問題のクレームの何ものも、特許で開示された特定のマスター/スレーブ関係に限定されない。

       (g) 第’816号のデータ処理は、厳格にアナログである。つまり、A局からの9fの位相の角度が、B局からの9fの位相の角度と比較され、位相計41は、厳格にアナログ的に位相差を読み出す。同様に3fと1fの「ノッチング」信号は、分割回路に記憶されるレーン情報を作り出す機能を果たし、位相計42上に、厳格にアナログ的に読み出す。1954年時点では、この分野の技能をもつ人でも、実用的な観点からはアナログ手段しか利用できなかった。

       (h) 原告は、さまざまな種類の伝播の異常の存在にずっと以前から気付いており、1947年にはすでに、その航行システムのユーザーに補正を公表していた。しかし第’816号ではレーン決定の精度への[***67]伝播異常の影響を最小限にすることに留意し、伝播の分散を補償する微調整を行おうとはしなかった。つまり第’816号は、「生のLOP」の交点に基づく単純な「生の」位置を提示する。かかる情報は[*582]ランデブー目的に採用することができ、航行には既知の伝播の誤差を適用することができる。第’816号の装置は既知の場所に設置することができ、単に既知の位置にある装置の読み出しを比較することによって、その時点での伝播の誤差に対する正確な補正を行うことができる。その後、その装置がしばらくモニターされ使用されれば、少なくともしばらくの間は、予想される伝播の誤差を確定することができる。

11.   (a) 全世界で使用するための、米国海軍がスポンサーになっているオメガVLF航行システムが、侵害していると告発されている。そのシステムは、オメガ送信器が以下の8ヵ所に設置されるように考えられている。

La Moure、ノース・ダコタ

Haiku、ハワイ

Bratland、ノルウェー

リベリア

レユニオン島(フランス)

アルゼンチン

対馬、日本

オーストラリア

       ノルウェー、日本、アルゼンチンおよびリベリアと、送信局を設置する条件を定めた契約および/または協定が締結されている。

       (b) 被告[***68]は、オメガの8つの送信局のすべての構成要素を調達した。16の送信器、9つのタイミング&コントロール装置、および8つのアンテナ調節装置であり、次のように名付けられている: 

1.           オメガ・タイミング&コントロール・セットAN/FRN-30

2.           オメガ・チューナー AN/FRQ-18(V)

3.           オメガ・トランスミッター AN/FRT-88

審理の時までに、オメガの送信局は、La Moure、HaikuおよびノルウェーのBratlandで完成し動いており、レユニオン、対馬およびアルゼンチンでは建設中であった。建設前の送信局の装置は、イリノイ州Great Lakesに保管されている。Great Lakesに保管されていない送信システムの部品は、タワーと、巻かれたヘリックス・コイルのみである。タワーは送信局が建設される時に購入され、ヘリックス・コイルは現場で巻かれる。

[*583](c)被告は、オメガの受信器AN/ARN-99とAN/BRN-7を調達した。ARN-99受信器は地上および飛行機上で使用され、BRN-7受信器は潜水艦で使われる。これらの受信器が合衆国が所有する乗物に設置され、これらの受信器が、動いている3つのオメガの送信局のうちの任意の2つの組合せから[***69]、また3局すべてから、信号を受信するために使われ、また、このことは合衆国の領土内および領土外双方で起きたということについては、争いはない[**1091]ようである。

12.   オメガ・システムは、世界全体を覆うように分布した8つの送信局から9f、10fおよび12fの信号の送信ができるように設計されている。各送信局は、3つの主要部分、つまりタイミング&コントロール装置AN/FRN-30、送信装置AN/FRT-88、および送信アンテナ用同調装置AN/FRQ-18(V)をもっている。タイミング&コントロール装置には、余分なセシウム・ビーム周波数標準装置が含まれる。このセシウム標準は、原子共鳴現象を利用する利他的な原子時計で、10の11乗分の1の精度をもつ。送信装置は音声電力増幅器を含む。同調装置には多くのリレーがあり、9f、10fおよび12fを、アンテナ・システムにつながるヘリックス・コイル上の適切なタップに向けるように選択的に閉じる。そして、2種類の移動受信器AN/ARN-99とAN/BRN-7により、オメガ・システムは完成する。次のブロック図が基本的なシステムを示す。

[原本の図を参照[***70]]

[*584]13. (a) オメガの周波数は、固定された倍数位相関係にあり、したがって以下のように、基本周波数fの高調波である: 

10.2 khz = 9 ´ 1.1 - 1/3 khz = 9f

13.6 khz = 12 ´ 1.1 - 1/3 khz = 12f

11.33 khz = 10 ´ 1.1 - 1/3 khz = 10f

これらの3つの周波数は世界時に位相同期され、正確に0000時にすべての周波数の位相が同時に、右上がりのゼロになる。送信器では、必要な固定倍数位相関係は、1mhzの出力をもつ極めて安定な原子時計が生成する高い周波数から、分割し、合成することによって得られる。1mhzの出力は816 khzに分割され、それが3つのオメガ周波数の整数倍になる。次にその信号は一連のデジタル的分割にかけられ、アンテナから発信される正しい値にされる。

(b) オメガのパターンは、すべての周波数がオメガ時間ゼロからの各30秒間の始めに振幅ゼロから立ち上がり、その瞬間にすべてが同期するように30秒のエポック・パルスが使われる。時折あるように、ある送信ユニットのいずれかの分割回路の位相がずれたとすると、[***71]警告灯がつき、そのユニットは停止し、その送信は他の装置からの新たなエポック・パルスを使って再度同期させられる。新しい送信ユニットの始動時には、既存の送信局で原子時計を動かし始め、その30秒エポック・パルスをその送信局と同期させ、[**1092]その時計を新送信局まで飛行機で運び、そこの送信ユニットを、最初の送信局からの30秒エポック・パルスと同期させてその時計に合わせてスタートさせる。それから時計を飛行機で送り返し、まだ精確であることをチェックする。各送信局にはそのような時計が4つあり、常に互いに比較される。あるユニットの分割回路の1つの同期がずれた場合、ただちに1つの時計からの参照信号がエラーを表示し、エラーを起こしたユニットは自動的に停止し、他のいずれかのユニットの30秒エポック・パルスを使ってリセットされる。

[*585](c) オメガ送信システムは、天候の変化、地上の雪、風力および他の多くの要素によって引き起こされるアンテナの容量の変化を補償するように設計されている。[***72]アンテナの容量の小さな変化でも発信出力の大きな低下に結び付くので、精密な制御が欠かせない。フィードバック制御システムは、アンテナ線に存在する電流と電圧の値のサンプルを取り、そのサンプルに基づき補正をする。オメガ・システムはまた、常に送信されるVLFのキャリア・バーストの位相を監視し、発見されたエラーを修正する。システムのさまざまな箇所で波形をチェックするという対策もなされている。

(d) オメガの送信局はその信号を、送信元が特定できるように、明確に異なる送信パターンを使って送る。これは、送信セグメントがわずかに異なる継続時間をもつようにさせることで達成される。継続時間はコード化され、それによって受信器は送信元を区別できる。

14.   (a)基本的なオメガの受信器は、次のブロック図に示されている。

[原本の図を参照]

[*586](b) 各受信器は、自分と入力CWバーストとの間の位相差を測定するのに、参照発振器を使う。この発振器は送信局の原子時計ほど精確ではなく、ドリフトすることがある。また[***73]、オメガ受信器が始動した時の発振器のゼロ時刻はわからない。しかし、受信器の発振器がゼロ世界時に合っていないということは重要ではない。2つの送信局による測定では差を使うので、発振器における不定のゼロ時刻は相殺するし、受信器の発振器のゼロ時刻におけるエラーは計算でき、そのドリフトは測定され追跡されるので、単一送信局による位相測定が可能になるからである。2つの送信局を使う位相差測定という第一の方法による位置決定は[**1093]、双曲線航行と呼ばれる。各送信局を使う位相測定という第二の方法による位置決定は、円形、またはロー・ロー航行と呼ばれる。

(c) 受信器はRF部分を使う、単一変換ヘテロダイン設計であり、増幅器、フィルター、混合回路などがハ ードウェアを構成する。これらの受信器の出力はデジタル信号であり、軍事目的の汎用デジタル・コンピューターに提供される。コンピューターは、ループ・アンテナの最適方向の選択、入力信号のコンピューター・ルーチンとの同期、[***74]入力信号の位相の測定、搭載する乗物の動きによる補正、受信波の不完全性の予測と補償、地球の扁平さの補償、データの緯度・経度への変換など、あらゆる機能を行うようにプログラムされている。これらの機能の幾つかはバースト・フィルターで、幾つかはトラッキング・フィルターで、幾つかはカルマン・フィルターで行われ、これらのフィルターすべてが、コンピューターの磁気コアに記憶されるプログラムの一部を構成する。

(d) 双曲線モードで作動 している3チャンネル・オメガ受信器は、72海里の範囲内でのレーンの曖昧さを解決する能力をもっている。ロー・ロー・モードで作動している時は、自動的に144海里まで円形レーンを計算する。ARN-99受信器を使ったオメガ・システムは、修正ロー・ロー法とでも呼ばれるものと使い、双曲線モードで3つの送信局からの信号[*587]の位相差により最初の位置を決定する。その後、コンピューターが発振器のドリフトの計算に自信がつくと、その動作は、ロー・ローに移っていく。しかしBRN-7はロー・ローの航行モードは使わず、常に[***75]、位置決定をするのに3局からの信号を、またLOPを決めるのに2局からの信号を必要とする。どちらのタイプの受信器も、双曲線モードで作動している時は同じ方法で信号を処理し、いつでも無修正の「生の」双曲線LOPを表示する能力をもつ。

15.   オメガ送信局からの9f、10fおよび12fの信号つまり搬送波バーストは、周期的で10秒ごとに繰り返す、受信器自体の反復内部タイミング・サイクルと同期されなければならない。同期の確認が重要なのは、送信局からの入力バーストの先端が、それ自体の反復10秒サイクルに対してどこで始まるかを判断するまでは、コンピューターはその一連の計算サイクルを始めず、その論理回路が要求する、無数の臨界時刻ダウンストリーム・ゲート・パルスを正しく生成しないからである。受信器は、受信された信号と受信器のサイクルとの同期を取るのに、「短いスロット」と「長いスロット」が関係する微分相関と呼ばれる数学的技法を使う。受信器にシーケンスの正しいタイミングを伝えるのは[***76]、送信パターンの周期的な明確な変化である。同期を達成するためにコンピューターが入力信号のパターンを処理する具体的な方法は、重要ではない。

16.   9f、10fおよび12fの信号が受信器に到達した時、それらは共通の1f 1.1 - 1/3 khzにヘテロダインされる。(この周波数の選択は単に便宜上のものであり、航行問題に使われる1fとは特別の関係はない。)しかしヘテロダイン受信は、固定された位相関係をもつ、受信器が生成した信号との混合によってなされる。ゆえに、IFは、変更せずに9f、12fおよび10fの入力周波数の位相関係を保持する。したがって、それぞれの送信器からの異なる送信を、1.1 - 1/3 khzで振動する受信器の発振器と位相比較すれば、すべての入力周波数のそれぞれの位相関係[*588]を決定し測定することができる。この時点で位相情報(つまり、1.1 - 1/3 khzにされた入力信号と受信器の発振器との間の位相差)が測定され、その値が、二進法の数字を表わす一連の電気的パルスに翻訳され、それが[**1094]コンピューターに入れられ[***77]、そこで離散的な磁化領域という形でメモリー・コアに記憶され、記憶されたデジタル値は入力信号の位相を表わしている。この関連で、位相情報はコンピューターによって、その恒常的に維持されている組み込まれたプログラムにしたがって連続的に利用可能であり続ける。

17.   BRN-7のマニュアルは、バースト・フィルター、トラッキング・フィルターおよびカルマン(組合せ)フィルターの機能を、次のように説明している。

3.1.1.4.7 バースト・フィルター: バースト・フィルターの機能は、受信器の正弦と余弦の出力を集め、最初の粗い位相の計算をし、信号雑音比に基づき(雑音評価から)その信頼性の評価をすることである。これは、バースト・フィルター処理と、相関子比検知器と呼ばれる受信器の相関子の組合せである。その結果としての位相は、ハードウェアによる位相誤差を修正される。測定、位相および有効性の評価は、トラッキング・フィルターに移される前に位相差方程式に転送される。

*****

3.1.1.4.10 トラッキング・フィルター: 8つの送信局があり[***78]それぞれの局に3つの周波数があるので、24のトラッキング・フィルターがある。各トラッキング・フィルターは10秒ごとに位相差方程式から入力を受け取る。差分の後で、トラッキング・フィルターへの入力は位相差の程度と、その測定の偏差から構成される。次に測定された位相差は、トラッキング・フィルターが以前の測定に基づき計算する位相差の推定値と比較される(統計的意味でウェートを与える)。この比較から、位相差の新しい推定値が計算される。***

3.1.1.4.11 組合せ(カルマン)フィルター: トラッキング・フィルターの出力は、十分にフィルターにかけられた位相差の値と、位相差偏差[*589]と位相差率偏差の推定値である。トラッキング・フィルターの出力が統計的かつ最適に組み合わされ、システムの位置、速度および発振器のドリフトに対する「最善」の誤差評価に到達するのは、組合せフィルターの動作の範囲内のことである。システムの位置の誤差評価は参照三角形の軸の回りの回転補正として航行方程式に伝達され、速度の誤差評価は[***79]、軸に沿っての補正として「速度・方向処理」に伝達される。発振器のドリフトの誤差評価は、受信器内の発振器と、送信されたオメガ信号との間の位相と周波数の差の尺度である。

組合せフィルターはまた、レーン決定にも使われる。レーン決定(レーニング)は、複数状態ベクトル技術の利用によって達成される。各周波数の波長が、その中で受信器の位置を決定することができるレーンを決める。これらの位相差レーンの幅は、13.6、11 - 1/3および10.2 khzの周波数に対応して、それぞれ6、7.2および8マイルである。72マイルごとにこれらのレーンは繰り返され、幅の広い3周波数レーンを定義する。各周波数からわかる位相(位置)を大きなレーンに当てはめることを、レーン不定性の解決と呼ぶ。双曲線モードで動いている3チャンネル・オメガは、72海里の範囲で、レーン不定性を解決することができる。

18.   (a) 生の双曲線LOPを作る目的でのレーン決定は、オメガ受信器内で、周波数差と[***80]位相比較双方を含むプロセスにより行われる。受信器のコンピューターは最初の同期時間の間に、その記憶の中に、すべての受信された9f、10fおよび12fの入力信号の位相と順番について、必要に応じて周波数の差を取りあるいは位相を比較するのに十分な情報を蓄積している。当然、[**1095]時間の経過とともにこの情報は常に更新されており、同期が完了した後ならばいつでも、レーン決定のための生の双曲線LOPの決定に利用できる。各送信局に対して、9fと10f、10fと12fおよび9fと12fという対の周波数差によって、それぞれ1f、2fおよび3fという差周波数が生成できる。異なる2局からのこれらの差周波数を位相比較して、[*590]対応する1f、2fまたは3f地帯内での受信器の位置を決めることができる。それらの地帯は、2局の間の基準線上ではそれぞれ、72、36および24マイルの幅をもっている。この位置は、1.133 - 1/3 khzというオメガの1f基本周波数に対応する、72マイル幅地帯(基準線上で)内での受信器の位置の「粗い」指標である。受信器のデジタル・コンピューターは[***81]、この動作を何度もそして迅速に行い、結局、「粗い」レーンの決定を行う。つまり、1fの72マイル幅地帯内の9つの9fレーンのうちの、受信器があるレーンが決まる。

(b) この時点でコンピューターは、2つの送信局からの9fで、単一周波数測定を行い、位相比較により、以前に特定された9fレーンに受信器があるのかを判断する。これが達成されれば、受信器たとえば985.75というように、デジタルでLOPの読み出しを表示する。小数点の左の数字は8マイル幅レーンを表わし、右の数字は、その9fの8マイル幅レーン内での位置をパーセントで表わしている。

(c) したがって告発された受信器は、各送信局から受信される3つすべての周波数9f、10fおよび12fに基づき、レーンを±36海里まで特定することができる。航海士(航空士)が自分の位置を±36海里の範囲内に特定できなくても、オメガ・システムはその情報を提供することはできない。しかしそれを知っているとすれば、どちらの種類の受信器も、命令されれば、受信器が9レーンのグループのうちのどのレーンにあり、またそのレーン内のどこにあるのかを特定する生の双曲線LOPを表示するようにプログラムされている。受信器がどのレーンにあるのかを決めるのは、周波数の差分を求め[***82]、その位相を比較するというプロセスによる。9f信号の位相比較により、そのレーン内の位置が決定される。

(d) 72マイル幅レーン内での最初の位置を決定する際にも、またその他の時にも、受信器のコンピューターは解答に達するために、他の多くのデータを利用する。たとえばコンピューターのメモリーには、各オメガ送信局の座標、表面伝導度の値、および各オメガ地上送信局と受信器の間の伝達経路に影響する伝播速度の変動を補正する補正因子などの情報が記憶されている。コンピューターはまた、慣性速度、ドップラー速度および外部センサーが検知した真の空気速度などの[*591]、速度関連の補助信号を受け取り利用するように作られている。

19.   オメガ航行システムは、以下のようにクレーム1の中に読み取れる。

第1節

互いの距離がわかっている2つの送信局から発信される信号の、受信器までの伝播時間の差を示すことによって位置線が決定される[***83]双曲線無線航行システム

オメガは明らかに、レーン決定の問題を解決するために双曲線航行技術を採用している。告発された受信器はいずれも、生の双曲線LOPを読み出すように装備されている。これは位置線が、互いの距離がわかっている2つの送信局から発信される信号の、受信器までの伝播時間の差によって決定されることを意味する。

第2節

角度がラジアンでは、n1オメガ0t+a1、n2オメガ0t+a2、および(n1+1)オメガ0t+a3という、それぞれの位相条件を満足する3つの信号が第一の送信局から発信され、n1オメガ0t+a1+k、n2オメガ0t+a2+k、および(n1+1)オメガ0t+a3+kという、それぞれの位相条件を満足する3つの信号が第二の送信局から発信される。ただしn1とn2は整数、オメガ0は、一秒当たりのサイクル数である基本周波数に2piを掛けたもの[**1096]、tは秒単位での時間、そしてa1、a2、a3およびkは定数である。

オメガの9f(10.2 khz)、12f(13.6 khz)および10f(11 - 1/3 khz)の位相条件が、上記の解析的表式に対応する。それらは、すべての周波数がゼロ・オメガ時刻で振幅ゼロから立ち上がるように送信される。つまり、[***84]上記の表式のすべての定数がゼロである。しかし第’816号の何ものも、これらの定数が特定の値をもつということは要求しておらず、必要なことは定数ということだけである。そしてオメガでは定数である。

第3節

1つの送信局からの各周波数の信号は、他の送信局からの同じ周波数の送信の中断中に送信されるように、送信は順番に切換えられる。

[*592]オメガでは、2つの送信局から同時に同じ周波数が送られることはない。受信器では、同じ周波数の2つの信号の同時の受信は同じように感じ、また、位相情報はいずれか1つの位相情報ではなく2つの組合せなので、このことは不可欠である。したがって、定められている切換えは必要であり、オメガはこの限定を満たしている。

第4節

送信は、受信器の切換え手段を送信の切換えに同期させるために周期的に明確に変えられる。

オメガのパターンでは、それぞれのCWセグメントがわずかに異なる継続時間をもっており、受信器の切換え手段を同期させる目的でコード化されている。これは明らかに[***85]、第’816号で意図された意味での周期的な「明確な変化」である。

第5節

受信器は、発信された信号を受信する手段を含む。

オメガは明らかに、これをもっている。

第6節

送信における明らかな変化によって同期させられ、受信された信号を2つの送信器から区別するように作られた、切換え手段

告発された受信器はどちらも、送信パターンに同期する切換え手段をもっている。切換えはコンピューター内で、コンピューター内の時計で制御され、別個に受信した信号のデジタル位相情報をコア内の適切な記憶場所に送る「ゲーティング」と回路シーケンスによって行われる。

第7節

伝播の時間差を表示する、時間差表示の反復周期が秒数で言って基本周波数の逆数に等しい位相差指示計

「秒数で言って基本周波数の逆数に等しい時間差表示の反復周期」は[*593]、レーン決定が可能な「地帯」は1f幅であり、その距離を超えるとレーン決定が依拠する1f位相差の表示は同じことの繰り返しとなり、したがって曖昧になるという事実に言及している。ARN-99およびBRN-7でのレーン決定は、この同じ定義に対応している。この2つの告発されたシステムでは、レーン決定は、2つの送信局からの3つのすべての周波数を受信している場合に限り、最大±36海里まで可能である。読み出しはレーン番号全体(±36海里の範囲で正しい)、および8海里レーン内での位置を十進数で(小数点の右側)示す。これはまた、9番目ごとの10.2レーン、つまり基準線上で72海里幅の地帯を強調するように作られている、公表されているオメガ図にも対応する。

第8節

その指示器は、細かい制御と粗い制御によって動かされる。

オメガでは「生」のLOPは、異なる送信局からの9f信号の直接の位相比較によって求める。しかしかかる比較では、「レーンの割合」数、つまり、表示の小数点の右側の数字しか与えられない。小数点の左側の数字は、レーンを決めるための周波数差モード[**1097]によって求められる。周波数差モードの唯一の効果は[**87]、レーンの数字全体を求めるもので、この意味では(第’816号と同様)「粗い制御」であり、レーンの割合は「細かい制御」である。

第9節

その細かい制御は、受信場所で生成された、途切れのない一対の信号に依拠する。その1つは第一の送信局から受け取った信号のうちの1つによってのみ位相制御され、他方は、第二の送信局から受け取った信号のうちの1つによってのみ位相制御される。

告発されたオメガの受信器では、9fつまり10.2 khzレーン内での割合としての「細かい」LOPの読み出しは、2つの送信局からの10.2 khz信号を位相比較することによって求める。その求め方は、まず、順番に信号を受け取る。それぞれが受信されると、そこにある発振器と位相比較し、位相差を求め、位相差のデジタル値を表わす[*594]パルス列に変換する。このパルス列は「受信場所で生成された信号」であり、次にそれはコンピューターに入れられ、記憶用コアの離散的に磁化した領域という形で記憶される。この形では、連続的に利用可能な状態となっている。つまり告発された受信器では、[***88]位相情報は実質的に「受信場所で生成された、途切れのない信号」である。もちろん信号は、受信器が動いているシステムでは必須のこととして、周期的に更新される。しかし信号は、操作員が生のLOPの読み出しをほしい時は常に、「細かい」表示をするための比較のために常に利用可能なので、特許で意図された意味で「途切れない」。つまり告発された受信器では、10.2 khzレーン内の位置の読み出しのための細かい制御は、2つの送信局ごとに受信場所で生成された、途切れのない信号によってなされる。告発されたシステムではそれがデジタル的に行われ、第’816号ではアナログ的に行われることを除けば、2つのシステムは同一である。

第10節

粗い制御は、各送信局から送信される3つの異なる周波数から求まる、6つの受信した信号に依拠する。

告発された受信器はレーンを決定するのに「周波数差モード」に入り、認定18で説明した周波数差と位相比較技術によって72海里の「地帯」幅内でレーンを決定するのに、2つの送信局からの3つの周波数すべてを必要とする。

20.   クレーム4は次の通りである:

       各送信局でさまざまな異なる周波数が順番に発信される、クレーム1でクレームされた双曲線無線航行システム[***89]。

       オメガ信号が順番に発信されるということには、疑いはない。

21.   クレーム11は次の通りである: 

       角度がラジアンでは、k1を定数として、n1オメガ0t+a1+k1、n2オメガ0t+a2+k1、および(n1+1)オメガ0t+a3+k1という、それぞれの位相条件を満足する3つの信号を発信する第三の送信局が用意され、送信は順番に切換えられ、他の送信局からの同じ周波数の送信の中断中に[*595]各周波数の信号が1つの送信局から送信され、受信器には2つの位相差指示計が付き、1つの指示計は1番目と2番目の送信局からの信号の伝播時間の差を示すように作られ、他の指示計は1番目と3番目の送信局からの信号の伝播時間の差を示すように作られている、クレーム1でクレームされた双曲線無線航行システム。

       3つの送信局を使うことによってオメガ受信器は一対のLOPを表示でき、位置決定ができる。

22.   (a)[***90]契約の条件に基づき、ノルウェーは被告の負担なしでBratlandに送信器の敷地用の土地を取得した。合衆国はノルウェーの負担なしで、次のものを提供した。

(a) すべての必要な電子的な通信および監視装置

(b) 設置と始動のための技術支援[**1098]

(c) 送信局建設のための設計情報

       すべての装置に対する権原は合衆国にあるが、送信器の敷地の主権はノルウェーが保持する。さらに、送信局はノルウェーが指名する、合衆国の負担で訓練を受けたスタッフによって運営されることになっていた。送信局の建設、運営および保守の全費用は合衆国の負担であった。ノルウェーは、世界全体のオメガ・システムに合わせた、継続的な運営を保証する責任をもっていた。合衆国は、送信局の運営から生じる賠償請求に対する、訴訟費用および和解金を含む、すべての費用と経費を負担することになっていた。実際、被告は少なくとも最初の1ヵ月は、ノルウェー送信局の同期管理に責任があった。

       (b) 合衆国はまた、アルゼンチン[***91]とリベリアの送信局の建設の費用も支払っているが、レユニオンと日本には支払っていない。しかし被告は、少なくとも日本には、無料で装置を提供しており、またその装置の権原は合衆国にとどまることになっている。

       (c) ノルウェーにおけるオメガ送信器の作動は、位相同期を確立するために原子時計を飛行機で送信器に送ることによって開始された。その後、合衆国からの監視の下で作動が続いてきた。[*596]この外国の送信器は、被告によって設定されているオメガのフォーマットに基づきオメガ信号を送る。合衆国は、オメガの背後にある唯一の管理および指導機関である。

法律問題の結論

本判決の一部とされる上記の事実認定に基づき、本裁判所は、法律問題として、合衆国特許第2,844,816号のクレーム1、4および11は有効であり侵害されたと結論付ける。原告が権利をもつ妥当な損害賠償金額、および補償金額全体は、規則131(c)(2)にしたがって、今後の訴訟手続きの中で決定される。