連邦巡回裁判所のための合衆国控訴裁判所
96-1245
原告・被控訴人 ENDRESS+HAUSER, INC.
ENDRESS+HAUSER GMBH & CO.
対
被告・控訴人 HAWK MEASURMENT SYSTEMS PTY. LIMITED
HAWK AMERICA, INC.
原告・被控訴人側弁護士
Donald E. Knebel インディアナ州インディアナポリスのBarnes & Thornburg事務所所属。
書面上の協力者Dwight D.Lueck。
被告・控訴人側弁護士
Thomas G.Watkins, III世 アリゾナ州フェニックスのCahill, Sutton & Thomas
P.L.C.所属。
原判決:合衆国インディアナ南部地方裁判所
Barker首席判事
連邦巡回裁判所のための合衆国控訴裁判所判決
96-1245
原告・被控訴人 ENDRESS+HAUSER, INC.
ENDRESS+HAUSER GMBH & CO.
対
被告・控訴人 HAWK MEASURMENT SYSTEMS PTY. LIMITED
HAWK AMERICA, INC.
1997年8月21日
RICH、PLAGER、CLEVENGERの各巡回判事
意見:PLAGER巡回判事
これは、Hawk Measurement Systems Pty. Limited(個別的に「Hawk Australia」とする)とHawk America(集合的に「被告」または「Hawk」とする)が、合衆国特許第4,000,650号(「第 '650号特許」)を侵害したという地方裁判所の判決に対する控訴である。この特許は、現在は失効しているが、Endress+Hauser GmbH & Co.(「E+H Germany」)の所有財産であった。E+H Germanyの合衆国内の独占的販売店である Endress+Hauser, Inc.(「E+H U.S.」)も、訴訟の当事者になっている。原告等は、集合的に「原告」または「E+H」とする。ベンチ・トライアルを行い、証拠を採取し検討した上、インディアナ南部地方裁判所は、被告が原告の特許を侵害したと認定し、損害賠償金を決定した。地方裁判所は、ミーンズ・ファンクションのクレームを正しく解釈し、問題とされている被告の装置によってそれらのクレームが侵害されていることを正しく認定し、損害賠償金を適切に決定しているので、我々は、それを認容する。
背 景
本件で争点となっているのは、超音波の拍動を用い、その発信源であるトランスデューサーから容器やタンクに内蔵された物質への距離を判定することによって、容器やタンクに内蔵された物質の高さまたは水位を測定する装置である。トランスデューサーが超音波拍動を発した後、装置は、その拍動が内蔵された物質まで達し、反射されてトランスデューサーに戻ってくるのにかかる時間を計算する。この装置は、次に、計測された時間を、距離の数値に転換する。この種の装置に特有の問題は、戻ってきた真の拍動を、内蔵された物質以外の容器内の梯子や構造物といった源泉から出る擬似エコーや、壁や塵芥からのエコーと区別することにある。
1988年頃から、Hawk Australiaは、超音波水位測定器の製造を開始した。この機械は、その後、合衆国の販売店に販売された。Hawk Americaは、問題のHawk Australia製品を1991年半ばから合衆国で販売している。遅くとも、原告が、Hawk Australia製品のもう一つの販売店であるDelavanに、Hawkの装置が '650号特許を侵害しているという考えを伝えた1990年には、Hawk Australiaは、'650号特許のことを知ることになった。
Hawk Australiaは、'650号特許のことを知った後、その装置、以前の「コンパレーター装置」を修正し、それに代えて、アナログからデジタルへの変換器を組み入れた。同社は、それに応じて、ソフトウェアを新しい変換器に適合するように修正した。記録は、合衆国でなされた販売の大半が、修正された後のHawkの装置であることを示している。
議 論
この控訴の争点となっているクレーム、即ちクレーム43および44は、ミーンズ・ファンクションの形のクレームであり、35 U.S.C. §112.6 (1994) が適用される。このように書かれたクレームは、「明細書に記載された対応する構造物・材質・または行為、および、それに相当する物を含むものと解釈されなければならない」同上、クレーム43は、独立のクレームであるが、クレーム44は、それに従属している。クレーム43には、以下のような記載がある。
超音波拍動を物質の上面に送り、反射されるエコー拍動を受け取るトランスデューサーと、そのトランスデューサーと連結して作動し、超音波拍動がそのトランスデューサーからその物質の表面までの往復にかかる移動時間を基礎として物質の水位を示す指標を出すコントロール回路を内蔵した、貯蔵タンク内の物質の水位を監視するのに用いられるコントロール・システムにおいての、コントロール回路が、反射されたエコー拍動を互いに対する相対的な強さを表す数値を持つデジタル信号に転換する手段となるような改善、および、上記のデジタル化された反応拍動の相対的な数値を基礎として物質の水位の指標を示すという、上の転換手段に対応した水位表示手段(強調の意味で斜字)。
このように、クレームは、従来技術に対する二つの改善を記載している。転換手段と転換手段に対応する水位表示手段である。地方裁判所および控訴における議論の多くは、水位表示手段に関する限定、即ち、上記の斜字部分の限定が線引きする中に正確には何が含まれるのかという疑問に集中している。
当事者間に、問題のHawkの装置には、明細書に記載されたものとはある部分で異なる構造物(物質も行為もここには該当しない)が含まれていることに争いはない。従って、地方裁判所の正しい記述の通り、「唯一の疑問は、Hawkの装置が、['650号]特許の明細書に記載されている構造物に相当する手段を使っているか否かということである。Endress+Hauser, Inc.対Hawk Measurement Sys.判決、32 USPQ2D 1768, 1776(S.D.Ind.1994)(下線追加)。
「肯定」の結論に達するに際して、地方裁判所の裁判官は、詳細且つ綿密な意見の中で、まず、クレームとその個別的なミーンズ・ファンクションという限定、そして、その限定によって線引きされる相当する構造物の範囲を解釈し、次に問題の装置がそのように解釈されたクレームを侵害しているか否かを判定した。
被告等は、原告側の専門家として証言した、パーデュー大学の電気工学の教授、Silva博士の証言を地方裁判所裁判官が信じたことに強く反発している。被告等は、裁判官が多くの点でSilva博士が到達したと同じ結論に達したことを指摘し、裁判官が彼等の側の専門的証人に賛同していたら、解釈の争点は全く違った決定を見ただろうとの不服を述べている。被告等は、Silva博士が「当該技術において通常の熟練を有する者」でないことと、彼が手続中のある点でそれを認めたことを理由に、Silva博士を攻撃している。当然のことながら、この異議は効果がない。「当該技術分野で通常の熟練を有する者」というのは、§103 の下の明白性を判定する際に用いられる理論上の概念であって、特定の個人を描写する表現ではない。Custom Accessories, Inc.対Jeffrey-Allan Indust.判決、807 F.2d 955, 963, 1 USPQ2d 1196, 1201(Fed.Cir.1986)(「通常の熟練を有する者とは、関連の先行技術のすべてを認知していると仮定される理論上の人間である」)。Kimberly Clarke対Johnson & Johnson判決、745F.2d 1437, 1453(Fed.Cir.1984)も参照せよ。その概念が特定の個人に適用されるというのは、当該技術分野で例外的な熟練を有する者は、通常とは言えないために専門家として証言する資格を認められないことを意味している。被告の異議の骨子が、Silva博士にはおよそ専門家の証人として証言する資格がないということである限りでは、彼の電気技師としての相当の証明書の存在が記録に示されているので、彼に証言を許した決定は、十分に事実審裁判所の裁量の範囲内である。例として、Kelsay対 Consol.Rail Corp.判決を参照せよ。749 F.2d 437, 448-49(7th Cir.1984)。
被告は更に、次のように主張する。
「Silva博士は、法学部に通ったこともなく、特許法の業務に就いたこともなく、又、法律家として出廷してもいなかった。それにも関わらず、裁判所は、事実上すべてのクレームの解釈とクレームの適用を、裁判所の意見の各段落に追加された引用で確定された、Endress側の無資格の専門家証人の証言に基づいて行った」。
弁護士や特許弁護士だけが特許訴訟の専門家証人になれると主張するのは、もちろん、ナンセンスである。事実、当裁判所は、いろいろな機会に、特許弁護士が専門家証人として証言し、裁判所が判断する究極の争点の法律問題として、適切なクレームの解釈に関する意見を述べることの不適切を述べてきた。Silva博士の証明書は、明らかに、特許の対象たる発明および問題とされている装置の技術的側面に関して、意見を聞かれる資格を彼に与えるものであった。
被告達は、Markman判決での当裁判所の意見を引用し、「連邦巡回裁判所は、専門家の証言を含む外部からの証拠は、法律的意見に過ぎず、重きを置くことはできないと記載している」という主張で、この論点を締めくくっている。当裁判所は、このような結論はとっていない。又、我々がMarkman判決で十分に明らかにしているように、事実審裁判所は、証人の証言を含む、法律問題たるクレームの解釈という作業を補佐するために採用される資料の種類について、広い裁量範囲を持っている。Markman判決、52 F.3d, 979, 34 USPQ2d, 1329。
Silva博士に対する攻撃に決着をつけたことと、ミーンズ・ファンクションのクレームの意味と範囲を解釈する際に彼の専門家としての証言を信じた事実審裁判官の判断を正当と認めたことによって、我々は、控訴に持ち込まれた被告の言い分のかなりの部分を処理したことになる。被告等が難詰しているもう一つの大きな問題点は、「対応する構造物・・とそれに相当するもの」が、本件の文脈でどのように理解されるべきかという疑問についてである。被告等は、問題とされている彼らの装置は、特許明細書に記載されているプロセスとは異なる、それぞれが閉じた幾何学模様を示すような、スペースの空いたエコー・キャップの列を明確にするノイズ識閾プロセスの使用によって、水位表示の機能を果しているし、彼らの装置には、'650号特許に記載されているデジタル・インテグレーターやデジタル・ピーク・ディテクターがないと主張している。彼らは、又、特許は、短い範囲の測定(2フィートから21フィート)では単一の拍動を使用することを計画しているが、長い距離の測定(14フィートから158フィート)では複数の拍動を使用するように記載していることを強調する。Hawkシステムは、両方の場合に、送られた単一の拍動に反応する形で、水位を表示する数値を生み出している。
地方裁判所の裁判官は、慎重に組み立てられた事実認定と法律解釈の積み重ねの中でクレームを分析した上で、Hawkのシステムが、明細書に記載された構造物に相当するものを内蔵していることから、ミーンズ・ファンクションの限定の中に当てはまっていると結論づけた。前述の通り、事実審裁判所の争点は、問題とされている装置が特許に記載された構造物そのものを組み込んでいるかではなく、問題の装置の中にクレーム43の「水位表示手段」に相当するものがあるかどうかということである。§112.6の下の「相当物」が、司法的に創造された相当物概念における「相当物」とは異なる概念であることは十分に理解されているものの、地方裁判所裁判官は、§112.6の下で要求される法文解釈は限定の一つ一つについて行われなければならず、この点、相当物概念の下の分析と異なるわけではないという正しい認識を持っていた。Warner-Jenkinson Co.対Hilton davis Chem, Co.判決、117 S.Ct. 1040 (1997) 参照。
本件において、事実審裁判所は、特許を請求した発明の中心的な構成要素を特定した。そして、裁判官は、それらの要素そのものが問題の装置に存在していない限りで、クレームに記載された機能を果たすための手段である構造物に相当する物を、問題の装置の中に見いだしたのである。控訴人等は、事実審裁判所の分析のこの部分の誤りを立証することができなかった。
損害賠償
最後に、損害賠償の争点に関し、地方裁判所は、両当事者の間の使用許諾の協議を仮定して、被告が原告に対して負う合理的なロイヤルティを決定した。裁判所は、10万ドルの前払技術使用料と、合衆国内でHawk Americaが販売した製品についての15%のロイヤルティからなり、判決前の利息を付した損害賠償金を認定した。Hawkは、一括金の額と、裁判所が利息発生日を不服が申し立てられた日としたことに対して、異議を唱えた。記録を見たところ、この損害賠償を認定した事実審裁判官の広い裁量権の行使を十分に支持できる証拠が存在する。我々は、Hawkの異議と、その認定が35 U.S.C.§287 (1994) の規定に矛盾する旨の主張を隅々まで検討したが、それらには根拠がないとの結論に達した。
結 論
控訴には、地方裁判所の判決を覆す根拠がないと認定したので、原判決は、あらゆる点で認容される。
原判決認容