連邦巡回裁判所のための合衆国控訴裁判所

96-1075,-1106,-1091

当事者:FONAR CORPORATIONおよびRAYMOND V. DAMADIAN博士(原告/交差控訴人)

GENERAL ELECTRIC COMPANYおよびDRUCKER & GENUTH,

MDS, P.C., d/b/a SOUTH SHORE IMAGING ASSOCIATES(被告−控訴人)

原告/交差控訴人側弁護士:

Ronald J. Schutz−ミネソタ州ミネアポリス、Robins, Kaplan, Miller & Ciresi法律事務所所属。書面上の協力者、Martin R. Lueck, William L. NorineおよびDarren B. Schwiebert

被告側弁護士:

Donald R. Dunner−ワシントン, D.C.、Finnegan, Henderson, Farabow, Garrett & Dunner, L.L.P.法律事務所所属。書面上の協力者、Thomas H. JenkinsおよびJ. Michael Jakes。同じく、書面上の協力者、Carter G. Phillips, Mark E. Haddad, Paul E. Kalb,およびDenise W. DeFranco−ワシントンD.C.、Sidley & Austin法律事務所所属、Benjamin W. Heineman, Jr., Erwin F. Berrier, Jr.およびMolly B. Burke−コネティカット州フェアフィールド、General Electric社所属、Ronald W. O’KeefeおよびRobert R. Schroeder−ウィスコンシン州ミルウォーキー、General Electric社、Medical Systems Group所属。

控訴された判決:合衆国ニューヨーク東部地区地方裁判所の判決

裁判官−Wexler判事

連邦巡回裁判所のための合衆国控訴裁判所の判決

96-1075,-1106,-1091

当事者:FONAR CORPORATIONおよび

RAYMOND V. DAMADIAN博士(原告/交差控訴人)

GENERAL ELECTRIC COMPANYおよびDRUCKER & GENUTH,

MDS, P.C., d/b/a SOUTH SHORE IMAGING ASSOCIATES(被告−控訴人)

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1997年2月25日決定

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裁判官:Lourie巡回判事、Skelton首席巡回判事、Rader巡回判事

意見:Lourie巡回判事

General Electric Company、およびDrucker & Genuth, MDS, P.C., d/b/a South Shore Imaging Assosiates(まとめて「GE」という)は、法律問題としての判決(「JMOL」)を求める彼らの申立てを却下するとともに、(1) 合衆国特許第4,871,966号は無効ではなく、(2) GEは第’966号特許を侵害し、失われた利益および実施料の妥当な損害賠償に関して責任があるとする陪審の評決を支持する、合衆国ニューヨーク東部地区地方裁判所の判決を控訴した。Fonar Corp.対General Elec. Co.判決、902 F. Supp. 330 (E.D.N.Y.1995)。Fonar CorporationおよびRaymond V. Damadian博士(まとめて「Fonar」という)は、GEは第’966号特許の侵害を誘発せず、合衆国特許第3,789,832号、を侵害していないというJMOLを求める申立てを認める地方裁判所の判決を、交差控訴する。同上。地方裁判所は、GEが第’832号特許を侵害はしなかったというJMOLにおいては誤りを犯したが、その他の点では誤りを犯さなかったので、我々は原判決を一部維持し、一部破棄する。

背景

第’966号特許は、マルチ・アングル・オブリーク(「MAO」)画像と呼ばれる、1回のスキャンで患者の身体のさまざまな角度での多数の断層画像を得るための、磁気共鳴画像法(「MRI」)を使うための技術に関するものである。先行技術の機械では、1回のスキャンで、1つの軸に沿って複数の平行画像を得ることができたが、様々な角度で複数の画像を得るためには、多数回のスキャンが必要だった。MAOによって画像化時間が短縮され、その結果、1日当たり、より多くの患者の画像が撮れるようになった。第’966号特許のクレーム1はこの特徴を説明しており、その一部は次のように記されている:

1.    核磁気共鳴技術を使って、1回のスキャンで、対象物の様々な方向を向いた選択された多数の平面でのNMR[核磁気共鳴]画像データを得るための方法であり、この方法は以下の段階からなる:

(a)   静的かつ均一な磁場中に対象物の位置を定める。

(b)   NMR画像データを得ようとしている前記の対象物において、第一および第二の選択された平面を決める。

(c)   前記の対象物を、NMR励起および勾配磁場パルスからなる最初の反復シーケンスの多数回の反復にさらす。この最初の反復シーケンスの反復のそれぞれは、励起パルスをかける段階と、その励起パルスが生成したNMR信号の読み取りの段階を含む・・・この最初の反復シーケンスの前記の多数回の反復は、空間的情報を、前記のNMR信号の最初のグループにコード化する形で実施する。このNMR信号の最初のグループは、前記の最初に選択された平面に関するNMR画像データの標本である。

(d)   前記の対象物を、NMR励起および勾配磁場パルスからなる2回目の反復シーケンスの多数回の反復にさらす。この2回目の反復シーケンスの反復のそれぞれは、励起パルスをかける段階と、その励起パルスが生成したNMR信号の読み取りの段階を含む・・・この2回目の反復シーケンスの多数回の反復は、空間的情報を、前記のNMR信号の2回目のグループにコード化する形で実施する。このNMR信号の2回目のグループは、前記の2回目に選択された平面に関するNMR画像データの標本である。

この1回目および2回目の反復シーケンスでの多数回の反復は、それぞれ、前記の対象物の1回のスキャン中に行われ、それぞれ、その1回のスキャン中を通してほぼずっと続けられる。また、1回目および2回目の反復シーケンスのそれぞれを繰り返すための反復時間は、実質的に同じである。そして2回目の反復シーケンスの各反復のための励起パルスをあてる段階とNMR信号の読み取りの段階は、最初の反復シーケンスのための励起パルスをあてる段階とNMR信号の読み取りの段階のそれぞれの時間とは、前記の反復時間中の別の時間に行われる。

第’832号特許は、癌を発見するためにNMR画像法を使う技術に関するものである。MRI機は、身体の組織の断層画像を作るのにNMRの原理に依拠している。発明者Damadian博士は、2つの通常のNMR測定であるT1とT2は、癌のある組織の場合、しばしば正常な組織と異なることを知った。そこで第’832号特許は、疑いのある組織のT1とT2の値を測定し、同じ種類の正常な組織と癌のある組織のT1およびT2の標準値と比較することによって癌を発見するための方法をクレームしている。第’832号特許のクレーム1は、この特徴を説明し次のように記している:

1.    癌を発見する方法であり、つぎの段階からなる:

a.     分析している種類の組織の正常なものと癌のあるものに対する、標準的なNMRスピン格子緩和時間とスピンスピン緩和時間を、癌のある組織で異常な振舞いを示す原子核を少なくとも1つ識別用原子核として使用し、測定し決定する。

b.     識別用原子核の異常さの程度を決定するために、疑いのある組織のNMRスピン格子緩和時間とスピンスピン緩和時間を測定する。

c.     (b) で得られた値を (a) で得られた標準値と比較する。

Fonarは、第’966号特許のクレーム1、2、4、5および12、さらに第’832号特許のクレーム1および2の侵害を主張して、この2つの特許の侵害でGEを訴えた。陪審は、主張されたクレームは無効ではなく侵害されたとする評決を下した。第’966号特許の侵害に対する補償として、陪審はFonarに、GEによって販売されたMRI機600台のうち75台に対する失われた利益として27,825,000ドルを、そして残りの525台の販売に対する妥当な実施料として34,125,000ドルを裁定した。陪審はFonarに、GEが特許の侵害を誘発したことに対する損害賠償として、13,625,000ドルを裁定した。陪審はまた、GEによる第’832号特許の侵害に対し、実施料に対する妥当な損害賠償として35,000,000ドルを裁定した。

原裁判所は、JMOLを求めるGEの新たな申立て2件を認め、GEは第’966号特許の侵害を誘発しておらず、また第’832号特許も侵害していないと裁定した。とりわけ原裁判所は、GEは特許の通知を受けなかったので、同社が権利侵害を誘発することは不可能だったと結論付けた。第’832号特許の侵害に関しては、原裁判所は、Fonarが、主張されたクレームの限定であるT1とT2の標準値の存在を立証できなかったと認定し、したがってGEは特許を侵害していないと結論付けた。

原裁判所は、ベスト・モード要件に反したとする主張および第’966号特許の直接侵害に対する損害賠償に関係する、JMOLを求めるGEの申立てを却下した。原裁判所は、Fonarの証人の証言が、同特許はベスト・モード要件を満たすとする陪審の認定を支持する実質的証拠を提供していると結論付け、さらに、実質的証拠が陪審の損害賠償額の認定を支持しているとした。原裁判所は、現在控訴中のその他の争点に関するJMOLを求めるGEの申立てを即決で却下した。原裁判所はFonarに予断裁決の権益を認め、GEに対して総額68,421,726ドルの最終的裁定を記録した。

GEは今、第’966号特許の有効性および侵害に関する判決において、また同特権の侵害に対する損害賠償額の決定において、地方裁判所は誤りを犯したと主張し、本裁判所に控訴する。Fonarは、第’966号特許の侵害の誘発および第’832号特許の侵害に関する地方裁判所の判決に対し異議を申立て、交差上訴する。

議論

陪審審理に沿って、JMOLを求める申立てを却下する判決を控訴する際には、控訴人は、「推定にしろ明示的なものにしろ、陪審の認定が実質的証拠によって支持されていないこと、またはもし支持されていたとしても、陪審の評決から導かれる法的な結論は、法律上、それらの認定によって支持されえないことを、示さなければならない」。Perkin-Elmer Corp.対Computervision Corp.判決、732 F.2d 888, 893, 221 USPQ 669, 673 (Fed.Cir.1984)(引用省略)。

A.    第’966号特許のベスト・モード

GEは、知っている中でMAO画像を得るための最良の方法であると発明者が証言した2つのソフトウェア・ルーチンLGRADおよびGETMAOプログラムを、特許は開示していないと主張する。GEはまた、発明の重要な側面、勾配増幅板(「GMB」)が、ベスト・モード要件を満たすに足る詳しさで開示されていないと主張する。さらにGEは、ハードウェアのある種の機能を実行するための新しい集積回路の「チップ」を発明者は特定しなかったと主張する。

Fonarは、同社の開示がベスト・モード要件を満たすのに適切なものであり、明細書も適切にソフトウェアの機能を説明しており、実際のコンピューター・プログラムを開示する必要はないと答える。Fonarによれば、コードは特定のハードウェアの実施例に合わせて調整されており、したがって必ずしも他のハードウェアで作動するとは限らないので、実際の原始コードよりもソフトウェアの機能の説明を提供することが、ベスト・モードの開示にとって重要である。Fonarはまた、第’966号特許の明細書が適切に、GMBおよび新しい「チップ」の機能を開示していると主張する。

特許法令は、特許明細書は、「発明者が考える、発明の実行のためのベスト・モードを明示するものとする」と要求している。35 U.S.C. §112 (1994)。ある特許が、ベスト・モード要件を満たしているか否かを判断するには、2つの事実の調査が必要である。第一に、事実認定者は、出願者が特許出願を提出した時点で、発明を実施するベスト・モードを獲得していたかどうかを認定せねばならない。これは、主観的な認定である。第二に、発明者が、その発明を実施するベスト・モードを獲得していた場合、事実認定者は、そのベスト・モードが、当該技術に熟練した人が実施できる程度に、詳細に開示されていたか否かを認定しなければならない。これは客観的な認定である。United States Gypsum Co.対National Gypsum Co., 74 F.3d 1209, 1212, 37 USPQ2d 1388, 1390 (Fed.Cir.1996);Chemcast Corp.対Arco Indus. Corp., 913 F.2d 923, 927-28, 16 USPQ2d 1033, 1036 (Fed.Cir.1990)。

第’966号特許はベスト・モード要件を満たすという陪審の認定は、実質的証拠によって支持されているとするFonarの主張に、我々は同意する。発明者がベスト・モードを獲得し、ソフトウェア、GMB、および「チップ」がそのベスト・モードの一部であったとする証拠はある。しかし、ソフトウェア・ルーティンに関しては、Fonarの証人は、第’966号特許には、そのソフトウェアの機能に関する十分な説明が含まれていたと証言した。特に、発明者の1人であるRobert Wolfは、以下のように証言した。

質問:その文書説明は、あなたのようなソフトウェア技術者が、マルチ・アングル・オブリークの発明を実施するため、ソフトウェアについて記されていなければならない説明として十分なものですか。

回答:はい。

・・・

質問:とにかく、ソフトウェアそれ自体は、我々が100ページある証拠書類816で見たように、特許ではその全体が再現されていません。
正しいですか。

回答:正しいです。

質問:それは、どうしてですか。

回答:幾つかの理由があります。

まず第一に、見ての通り、量が多くなります。それは、数百ページになります。そのソフトウェアはFonarの機械でしか作動しないため、どのみちそのソフトウェアを取得しても何の役にも立ちません。

もっとずっと重要なことは、そのソフトウェアが何をするのかの説明があることであり、それが特許であなたたちが見ることでもあります。

Fonarの証人はさらに、ソフトウェアの機能を提供することは、コンピューターー・コードを提供するよりももっと重要であると証言した。我々はそれに同意する。

一般論として、ソフトウェアが発明を実行するベスト・モードの一部を構成する場合、かかるベスト・モードの説明は、そのソフトウェアの機能の開示によって満たされる。これはすなわち、通常、かかるソフトウェアの書込コードは当該技術の範囲内にあり、一度その機能が開示されたならば、過度の実験を必要としないからである。当該技術の範囲内にあるものは、そのモードが説明されている限り、ベスト・モード要件を満たすために開示される必要はない。ベスト・モードのソフトウェアの機能を述べることで、説明基準は満たされる。我々は以前もその判断をし、今もそう判断する。In re Hayes Microcomputer Prods., Inc.特権訴訟、982 F.2d 1527, 1537-38, 25 USPQ2d 1241, 1248-49 (Fed.Cir.1992);In re Sherwood, 613 F.2d 809, 816-17, 204 USPQ 537, 544 (CCPA 1980) 参照。したがって、フローチャートあるいは原始コードの一覧表は、ソフトウェアの機能を適切に開示するための要件ではない。Sherwood 613 F.2d 809, 816-17, 204 USPQ at 544参照。ここでは実質的証拠が、ソフトウェアの機能はベスト・モード要件を満たすように十分に開示されたとする認定を支持する。Hayes, 982 F.2d at 1537, 25 USPQ2d at 1248-49(明細書にファームウェア一覧表やフローチャートは開示されてはいないが、当該技術に熟練している人が、その発明を実施するためのファームウェアー覧表を作成するのに十分な詳細は開示されている場合、ベスト・モードの違反はなかったと述べている)参照

ベスト・モード要件を満たすに十分なGMBの開示がなされたとする認定もまた、実質的証拠によって支持された。Fonarの証人は、第’966号特許が、以下に複写された第’966号特許の図7の点線内の部分に関して、GMBの機能の説明を提供していると証言した。

発明者の1人であるDavid Hertzは特に、特許は、当該技術に熟練した人が一般的なMRIシステムで作動するGMBを作るために必要な機能の説明を提供しており、また、特許で開示されたGMBはFonarによって製作されたものであると証言した。さらに重要なことに、Fonar機に使われているGMBはMAO画像法を実施する唯一の方法ではなく、必ずしもすべての機械にとって同画像法を実施するための最良の方法ともいえない、とも彼は証言した。しかしGEは、第’966号特許には、ベスト・モードの必須な要素であると主張されている、GMBの一部としてのコンパレーターの使用が開示されていないと主張する。しかし、Hertzは、第’966号特許に基づいてMAO画像法を行うMRI機が、GMBの一部としてコンパレーターを必要としている場合、熟練した技術者であればコンパレーターを使用すべきだということはわかるはずだと証言した。彼はさらに、MRI機はそれぞれ、それ自体の、GMBの機能性に必要な一連の要求事項をもっており、それが、第’966号特許が発明の製作方法を一般的な用語で説明している理由であると、証言した。Hertzの証言は、GMBに関してベスト・モードの違反はなかったとする認定を支持するための実質的証拠を提供する。

実質的証拠はまた、新しい「チップ」の機能が、ベスト・モード要件を十分満たすように開示されていたとする認定を支持する。第’966号特許は図で、図7の「チップ」の機能を開示し、その機能に関する文字による説明を提供した。第’966号特許第13欄41-64行を参照。「チップ」の機能の適切な開示が明細書の中でなされているため、製造者の特定の「チップ」が明示されていなくても、ベスト・モード要件を満たすことに支障はない。したがって、第’966号特許がベスト・モード要件を満たすとする陪審の認定は、実質的証拠によって支持されており、地方裁判所には、争点に関するJMOLを求めるGEの申立てを却下した点で誤りはなかった。

B.    第’966号特権の直接的権利侵害

GEは、同社のMRIスキャナーが、第’966号特許を侵害していないという判決を受ける権利を持つと主張する。GEによれば、主張された各クレームは35 U.S.C. §112, 6を条件として限定を含んでおり、Fonarは、告発されている装置が、「手段」あるいは「段階」の限定によって特定された機能を行うと明細書に記された、構造、材料または行為を備えていることを示す証拠を、何も提出しなかった。GEは、同社の訴えられたスキャナーには一般的勾配波形は使われていないため、それには等価な構造は含まれていないと主張する。

Fonarは、主張されているクレームは、一般的勾配波形の使用に限定されたものではないと答えた。Fonarは、他の波形を使うこともできると明確に記されている明細書を指摘する。同社はまた、クレームによっては一般勾配波形発生器を必要としているが、必要としていないものもあると主張する。Fonarはまた、GEの機械が主張されているクレームで明記された機能を実施するたに、同一のあるいは等価な構造または行為を使ったという証拠を提出したと主張する。いずれにしろFonarは、同社のクレームの大部分はミーンズ・ファンクションの表現を含んでおらず、したがって、明細書に開示された構造または行為、あるいはその等価物には限定されないと考える。

特許のクレームが侵害されているか否かを決定するには、二段階の分析が必要である。「まず、当該クレームは、その範囲および意味を定めるため、適切に解釈されねばならない。次に、適切に解釈されたクレームを、告発された装置またはプロセスと比較しなければならない」。Carroll Touch, Inc.対Electro Mechanical Sys., Inc.判決、15 F.3d 1573, 1576, 27 USPQ2d 1836, 1839 (Fed.Cir.1993)。

我々はまず、方法クレームを含む主張されているクレームが第112項6に服するという、GEの主張を取り上げる。我々は最初に、方法クレームを考える。GEは特に、主張されている方法クレームはそれぞれ、第112項6を条件とすると主張する。なぜなら、結果を可能にする構造または行為を説明せず、パルス・シーケンスを空間的情報をコード化する形で適用しなければならないと説明することによって、「結果本位の方法で機能的に」記されているからである。

我々は、第112項6がこれらのクレームに適用されるかという疑問を取り上げる必要はない。なぜなら我々は、第112項6の制限の有無に関わらず、方法クレームは一般的勾配波形の使用に限定されていないとするFonarに同意しているからである。第’966号特許の明細書は、関連する説明を添えて、図7で「一般的勾配波形発生器」(20)を開示しているが、その明細書には、「図2 に描かれているように、発生器20はまた、位相をコード化する波形も数字の形で記憶する。発生器20はこれらの特定の波形を記憶するの好適だが、この発明の目的にとって充分なその他のものも記憶することができる」と記されている。第12欄 42-46行。空間的情報をコード化する形でパルスをあてるという、問題のクレームの表現は、一般的勾配波形の使用を説明していおらず、他の波形も使うことができると記す明細書を追っている。

方法クレームが侵害されたという陪審の認定を支持する実質的証拠があった。Fonarの専門家証人Thomas Gaffordは、告発された装置は、同一のまたは等価な行為を使ってクレームで定義された段階を行っていたので、主張されているクレームを侵害していると証言した。彼は、自分の意見を形成する際には、告発されたGE機の技術文献、明細書および図面に依拠したと述べた。陪審は、告発された機械が主張されているクレームの限定をそれがいかに解釈されようとも満たしていたという評決をする際に、彼の証言に依拠することは妥当であった。したがって侵害の認定は実質的証拠によって支持されている。

装置クレーム12に関しては、これは手段項目を含んでいる。第112項6に服するとGEが主張する限定を、我々による強調を加えて以下に示す。

12.   ・・・のための装置

・・・

(c)          以下の目的のために、前記の磁場をかける手段と前記の高周波をかける手段を、作動させ制御するための手段

(1)   第一の方向に直角な第一平面内のみの原子核を励起するため、第一の周波数で、第一のRF励起パルスとともに、第一の方向に勾配のある第一断面選択磁場を含む第一のシーケンスをかけ、それによって第一のNMR信号が前記の第一平面内の原子核のみによって放出される。第一のシーケンスはさらに、空間的情報を前記の第一のNMR信号にコード化するために働く、少なくとも1つのコード化磁場勾配を含む。

(2)   第二の方向に直角な第二平面内のみの原子核を励起するため、第二の周波数で、第二のRF励起パルスとともに、第二の方向に勾配のある第二断面選択磁場を含む第二のシーケンスをかけ、それによって第二のNMR信号が前記の第二平面内の原子核のみによって放出される。第二のシーケンスはさらに、空間的情報を前記の第二のNMR信号にコード化するために働く、少なくとも1つのコード化磁場勾配を含む。

装置クレームは、明細書に手段項目の機能を支持するための具体的構造を必要とする。クレーム12は定義された機能を支持する構造を説明していないので、第112項6に服する。Cole対Kimberly-Clark Corp.判決、102 F.3d 524, 531, 41 USPQ2d 1001, 1006 (Fed.Cir.1996) 参照;また、Greenberg対Ethicon Endo-Surgery, Inc.判決、91 F.3d 1580, 1584, 39 USPQ2d 1783, 1787 (Fed.Cir.1996)(「‘手段’という用語の使用は‘ミーンズ・ファンクション’のクレームに非常に密接に関連するようになったので、「手段」という用語の使用(特に『のための手段』という句の中で使用される場合)は一般に第112項 (6) を適用させ、別の形式の使用は一般にそうでないと言うのが公正である」と述べている)も参照。したがって我々は、問題の「手段」という限定を、明細書で開示された対応する構造または行動、およびその等価物に鑑みて解釈する。Johnston対IVAC Corp.判決、885 F.2d 1574, 1580, 12 USPQ2d 1382, 1386-87 (Fed.Cir.1989)。第’966号特許明細書は、一般的な勾配波形の使用を開示している。それは他の波形も使用できると述べているが、その波形を具体的に特定はしていない。したがって第112項6に基づき、クレーム12は一般的な勾配波形およびその等価物の使用に限定される。

我々はまた、告発された機械が装置クレームの構成要素を含んでいたという陪審の認定が、実質的証拠によって支持されていると結論付ける。Gaffordは、告発された装置は、明記された機能と同一の機能を行い、同一のまたは等価な構造を含み、同一のまたは等価な行為を使ってクレームで定義された段階を行うので、クレーム12を侵害したと証言した。彼は、自分の意見を形成する際には、告発されたGE機の技術文献、明細書および図面に依拠したと述べた。陪審は、告発された機械が主張されているクレームの限定を満たしており、第112項6に服する限定を満たすのに必要ならば等価な構造または行為を含んでいたという評決をする際に、彼の証言に依拠することは妥当であった。したがって侵害の認定は実質的証拠によって支持されている。Consolidated Edison Co.対National Labor Relations Bd.判決、305 U.S. 197, 229  (1938)(実質的証拠を、「結論を支持するのに適切だとして合理的な精神が受け入れるような、関係する証拠」として定義している)参照。したがって地方裁判所は、第’996号特許の主張されているクレームの直接侵害に関するJMOLを求めるGEの申立てを却下した点で、誤りを犯さなかった。

C.    第’966号特許の侵害に対する損害賠償

GEは、損害賠償額に関する陪審の認定は、実質的証拠に支持されていなかったと主張する。また、実施料に対する妥当な損害賠償額は、クレームされた発明の対象である改善の価値ではなくMRI機全体の売上に基づく誤ったものであり、FonarはMAOの特徴が機械全体に対する顧客の需要の根拠であったことを示す実質的証拠を提出していない、と主張する。また、裁定された実質的な実施料は記録にその裏付けがなく、証拠はGEが、実施料がそれよりもかなり低い16のライセンス契約を締結していることを示していたと主張する。

GEは、顧客にライセンスするのと同じ実施料でFonarが競争相手に技術をライセンスすると誤って仮定していると、Fonarは答える。さらにFonarは、特許を与えられた特徴がMRI機の一部だとしても、全市場価値規則により機械全体の価値に基づく実施料を受ける権利があり、Fonarの証人による証言は、陪審が裁定した実施料よりもさらに高い金額を支持していたと、主張する。

特許法令は次のように規定している:

申立てを認める認定がなされた際には、裁判所は、いかなる場合でも権利侵害者による発明の利用に対する妥当な実施料未満ではない、権利侵害を補償するために適切な損害賠償額、および裁判所が定める利子と経費を申立人に裁定するものとする。

35 U.S.C. §284 (1994)。

全市場価格規則の下では、陪審が妥当な実施料を、告発されたMRI機全体の価値に基づき決めるのは不適切ではない。この規則は、「特許が与えられた特徴は1つであっても、複数の特徴を含む装置全体の価値に基づく損害賠償額を認めている」。Paper Convening Mach. Co.対Magna-Graphics Corp.判決、745 F.2d 11, 22, 223 USPQ 591, 599 (Fed.Cir.1984)。これは、特許を与えられた特徴が、機械全体に対する顧客の需要の根拠であるときに認められる。Rite-Hite Corp.対Kelly Co.判決、56 F.3d 1538, 1549, 35 USPQ2d 1065, 1073 (Fed.Cir.)(大法廷)、裁量上訴棄却、116 S. Ct. 184 (1995)。本件でもそうであると陪審が結論付ける証拠が存在した。GE自体の技術記録文献はMAOを強調していた。GEのシグナ機の1987年のパンフレットは、「マルチスライス・マルチアングル機能によって、1回の捕捉で、複数の視角の直接捕捉ができる」と述べ、MAOの特徴に焦点を当てている。GE機の他の幾つかのパンフレットも、MAOの特徴を特定している。「マルチアングルNMR画像法」というタイトルのあるGEのパンフレットは、「しかしGE医療システムの最近の発展は、効率と処理する患者数を増す助けとなっている。すべてのシグナ (R) システムに付けられたマルチアングル画像法は、1回のスキャンがグラフィックに指定され、各スライスまたは一連のスライスが別の角度で得られる」と述べている。告発された機械全体の費用に基づき妥当な実施料を裁定することを支持する実質的な証拠が存在した。

陪審による実施料に対する妥当な損害賠償額の裁定も、実質的証拠によって支持されていたという点で、我々はFonarに同意する。Fonarの専門家証人であるLaurits Christensen博士は、特許を侵害している機械の販売についての見込利益の四分の一から三分の一が妥当な実施料となり、この見積りは告発された525台の機械に対して、7.25%つまり5400万ドルの実施料となると証言した。これは陪審が裁定した3412.5万ドルの実施料よりも多い。またGE自体がMRI技術に関して7%のライセンス契約を締結していた。

GEは、販売すべてに対して失われた利益を裁定することは、Fonarが、GEと競合していなかった市場で販売を行ったと誤って仮定していると主張する。Fonarは侵害していない代替物がなかったことを適切に証明しなかったとGEは主張する。Fonarは、侵害していない代替物は存在せず、購入者はMAOの特徴のためにこの機械を購入する意思をもったのであり、代替物とされているものはその特徴を欠いていると答える。Fonarはまた、GEのために失った販売のための機械を製造し販売する能力をもっていたとも主張する。

失われた利益に対する権利を持つには、特許権者は、侵害が「なかったら」その販売を行った相当の可能性があることを示さなければならない。Rite-Hite, 56 F.3d at 1545, 35 USPQ2d at 1069。これは、4つの要因からなるPanduitテストによって行うことができる。そのテストは、特許を与えられた製品に対する需要、受け入れ可能な無侵害の代替物の欠如、特許権者の需要に応じられる能力、および特許権者が得たはずの利益の立証を必要とする。Panduit Corp.対Stahlin Bros. Fiber Works, Inc.判決、575 F.2d 1152, 1156, 197 USPQ 726, 729-30 (6th Cir. 1987) 参照。「その後は立証責任は侵害者側に移り、失われた販売のすべてまたはそのある部分に対してその推測は妥当ではないことを示さなければならない」。Rite-Hite, 56F.3d at 1545, 35 USPQ2d at 1069。

失われた利益に関する陪審の裁定は実質的な証拠に支持されているという点で、我々はFonarに同意する。Damadian博士は、MAO画像法の受け入れ可能な代替物はなかったと証言した。彼は、入手可能であった代替物は、MAOを利用した場合と比較して、速度においても質においてもかなりの妥協をしなければならなかったと証言した。Damadian博士によれば、1つの代替物は3D画像法であった。しかし、3D画像法を使用した場合、データ収集のため、患者は不可能なほど長い時間、スキャナー内にとどまらなければならないことになると彼は証言した。「高速スピンエコーまたはエコー面などの、高速画像化技術」と呼ばれる他の技術は、高速で1回でスキャンされた「スライス群」を得て、それを多角度の組合せに変換することからなっていた。しかしDamadian博士は、これらの技術は画素の品質が受け入れがたいものであると証言した。MAO画像法に対する受け入れ可能な代替物は存在しないというこの証拠に加えて、Christensen 博士は、MAO機能をもつすべての競合する機械は第’966号特許を侵害していると証言した。

Fonarが、失った販売分の機械を製造する能力をもっていたという実質的証拠もあった。Damadian博士の証言によって、1988年には毎月8台の機械を製造できたことをFonarは立証した。1989年、Fonarには600-650人の従業員がおり、高い成長率をもっており、2年続けて、Inc.誌掲載の成長率の最も高い会社のリストに登場した。Fonarの成長率に基づいてDamadian博士は、Fonarの能力は1992年までには毎年500台にまで成長したはずであると証言した。したがって地方裁判所は、第’966号特許の直接侵害に対する損害賠償についてのJMOLを求めるGEの申立てを却下した点で、誤りは犯さなかった。

D.    第’966号特許の消滅

Fonarは期限内の管理料の支払いがなかったことによって第’966号特許が消滅した期間に帰せられる損害を回収できないので、実施料と喪失利益の認定は取り消されなければならないと、GEは主張する。さらにGEは、35 U.S.C. §41 (c) (2) は再発行特許に基づく独立参入権に類似した権利を定めており、同項に基づきGEは第’966号特許が消滅していた期間中、MRI機を特許権侵害なしに販売する絶対的権利をもっていたと主張する。

Fonarは、GEは当該期間中、第’966号特許を侵害する「独立参入権」を獲得しなかったと答える。Fonarによれば、第41項 (c) のGEの解釈は、その表現および立法経過に反している。同規定は明示的に、管理料を期限後に受け取った時点で特許は満了していないとみなされるものとすると記している。立法経過は、同規定が、管理料の支払いを怠ったために満了した特許をその後に初めて使用し始めた人、または使用を始めるための措置を取った人にのみ適用されることを示しており、それは1992年以来特許を侵害しており消滅期間中に侵害を始めたのではないGEには適用されないと、Fonarは主張する。

該当する規定の該当する部分は次のように記されている:

本項に基づき、管理料の支払いの受理の結果としてその期間が維持された特許は、6ヵ月間の猶予期間後しかし本項に基づき管理料を受理する以前に、特許によって保護されたものを作成、購入または使用したいかなる人またはその事業上の承継人が、そのように作成、購入または使用された具体的なものの使用を継続し、使用または販売のために他人に販売する権利を削減せず、その権利に影響を与えない。

35 U.S.C. §41 (c) (2) (1994)。

本規定は、消滅に依拠して、消滅期間中に初めてクレームされている発明の使用を始めた人、またはその使用を始めるための措置を取った人の権利を保護することを意図していた。特に、立法経過は次のように記している:

管理料の支払いを怠ったため満了したが、その後、期限後の支払いの受理によって再設定された特許の使用を開始した、または開始する措置を取った人の権利を保護するための規定が含まれる。第41項 (c) (2) の独立参入権の規定は、再発行された特許に関する35 U.S.C. 252の独立参入権の規定に類似している。

H.Rep. No.97-542, at 8 (1982), 1982年にU.S.C.A.N. 722に再掲。我々は、「作成、購入または使用した人」という表現を、「消滅期間中に初めて当該特許により保護されたものを作成、購入または使用し始めた人」を意味すると解釈する。消滅以前に始められた継続する商売努力の一部として作成、使用または販売された、気付かれなかった製品を免責するものではない。GEが第’966号特許の侵害を、それが消滅する前に始めたことは争われていない。したがって法律が保護を意図した種類の活動に関わっていたのではない。さらに、前記の法規定は、「 6ヵ月間の猶予期間の後に特許局長官が保守料の支払いを受け入れるならば、特許は猶予期間末には満了していなかったとみなされる」と記している。35 U.S.C. §41 (c) (1) (1994)。したがって、長官が期限後に支払いを受けいれた場合、特許は消滅期間中もさかのぼって実施可能となる。したがって、GEは第41項 (c) (2) の保護を受ける権利を持たない。地方裁判所は、消滅期間に帰せられる損害賠償に関して、JMOLを求めるGEの申し立てを却下した点で、誤りを犯さなかった。

E.    第’966号特許の侵害の誘発

交差控訴においてFonarは、GEは第’966号特許の侵害を誘発したとの陪審の評決をくつがえした点で地方裁判所は誤りを犯したと主張する。そして、GEは特許の通知を受ける前に販売したスキャナーの保守を継続することによって侵害を誘発したことの実質的証拠を提出したと主張する。GEは、Fonarはその誘発の主張の対象となるスキャナーをマークせず、また、最初の購入者がスキャナーの修理と保守に対する権利をもっている場合は侵害の誘発に対する責任は存在しないと答える。

特許の特許のマーク付けに関する法律の該当する部分は次のように記されている:

そのようにマークがなされなかった場合には、侵害に対するいかなる訴訟でも、特許権者は損害賠償を受けられない。ただし、侵害者が侵害を通知されその後も侵害を継続したことが立証されれば、通知後に起きた侵害に対してのみ損害賠償を受けられる。

35 U.S.C. §287 (a) (1994)。

GEは正しい。問題の機械はマークされなかった。したがって通知がなされる前については損害賠償は与えられない。さらに、機械の保守は修理に類似している。Aro Mfg. Co.対Convertible Top Replacement Co.判決、365 U.S. 336, 346, 128 USPQ 354, 359 (1961) 参照。そして修理は侵害でない。機械がその売主を損害賠償に服させないという状況で販売された場合、その後の修理は売主を損害賠償に服させない。人は、侵害の責任がなく販売されたものを修理する権利を持つ。したがって、地方裁判所は、第’966号特許の侵害を誘発しなかったというJMOLを求めるGEの申立てを認めた点で誤りを犯さなかった。

F.    第’832号特許の直接侵害

Fonarは、等価物の法理に基づく、第’832号特許のGEによる侵害の実質的証拠を提示したので、地方裁判所は、GEはその特許を侵害しなかったというJMOLを求める申立てを認めた点で地方裁判所は誤りを犯したと主張する。GEは、その告発された機械は主張されているクレーム1の段階を直接的にも等価の段階としても行わないと答える。

特許は等価物の法理に基づき、クレームの文言通りの発明に等価な物の製造、使用または販売によって侵害されることがある。この法理に基づく侵害には、「クレームされた製品またはプロセスと告発された製品またはプロセス間に実質的な相違がないことの証明が要求される」。Hilton Davis Chem. Co.対Warner-Jenkinson Co.判決、62 F.3d 1512, 1521-22, 35 USPQ2d 1641, 1648 (Fed.Cir.1995) 裁量上訴許可、116 S. Ct. 1014 (1996)。この法理に基づく侵害は事実問題であり、我々はJMOLを求める申立ての許可を、実質的証拠について再検討する。同上at 1522, 35 USPQ2d at 1648。

等価物の法理に基づく侵害を認定した陪審の評決が実質的証拠によって裏付けられたという点で、我々はFonarに同意する。クレーム1の構成要素 (a) に関しては、T1とT2に対する標準値の存在を示す証拠があった。特にGEの科学者は、T1とT2に対する報告された値をまとめた論文を出版した。P.A. Bottomley et al., A Review of 1H Nuclear Magnetic Resonance Relaxation in Pathology: Are T1 and T2 Diagnostic?,(病理学における1H核磁気共鳴緩和:T1とT2は診断に役立つか)、Medical Physics, Jan/Feb. 1987, at 1。この証拠は、限定が要求する標準値とGEが編集したT1とT2の値の間に、実質的差異はないことによって、少なくとも等価な段階として、GEの機械がクレーム1の段階 (a) を満たしたという立証となった。

また、GEの機械がクレーム1の段階 (b) に等価な段階を行うという証拠も提示された。GEの機械は癌の発見のためにT1加重の像とT2加重の像を使用した。T1加重の像は、T1と機械のパラメーターの作用であった。T2加重の像は、T2と機械のパラメーターの作用であった。T1加重とT2加重の像は、主としてそれぞれT1とT2によって制御されるという証言があった。特に、Damadian博士は、T1像はT1緩和時間によって制御されると証言した。GEの専門家証人であるMezrich 博士でさえも、T1加重とT2加重の像は、主としてT1とT2における差異がコントラストを決定する像であることに同意した。そのレファランス・マニュアルでGEは、T1加重の像は、「T1緩和情報に大きく依拠している」と記している。この証拠は、GEによるT1加重およびT2加重の像の使用は実質的に、T1とT2の値によって制御されており、したがってクレーム1の段階 (b) が要求するT1とT2の値の使用と実質的な差異はなかったことを立証する。

最後に、GEの機械はクレーム1の段階 (c) が要求する比較と等価なものを実行するという証拠があった。GEは、校正済みグレースケール値を作り出すために、編集した標準値を使用したという証拠があった。GEの機械がボクセル、つまり像の1つの画素(ピクセル)に対応する体内の容積要素の信号強度を得るために、疑いのある組織をスキャンしたとき、その信号強度は、校正済みグレースケール値内の値に合わせられた。しがたって、疑いのある組織のグレースケール値の判定は、結局、その組織の信号強度と標準値との比較によって決定された。この証拠は、この決定と、クレーム1の段階 (c) が要求する比較との間に実質的な差異がないことの立証となった。したがって、陪審が、告発された機械が第’832号特許の主張されているクレームを侵害したと等価物の法理に基づき認定する評決を下したことには、実質的証拠が存在し、地方裁判所がJMOLを求める逆の申立てを認めたのは誤りであった。

費用

各当事者が、自身の費用を負担する。

結論

JMOLを求めるGEの申立てを却下し、(1) ベスト・モードの要求を満たさなかったことが理由で第’966号特許は無効とはならず、(2) GEは第’966号特許を侵害し、失われた利益および実施料に関する妥当な損害賠償を支払う責任があり、(3) 第’966号特許が期限内の管理費の支払いがなかったためにその後再設定されたが一時消滅していた期間中の侵害に対して、GEは責任があるという、陪審の評決を支持する判決を下した点で、地方裁判所は誤りを犯さなかった。また地方裁判所は、第’966号特許の侵害を誘発しなかったというJMOLを求めるGEの申立てを認めた点では間違いを犯さなかったが、GEは第’832号特許を侵害しなかったというJMOLを求める申立てを認めた点で誤りを犯した。したがって我々は、第’832号特許を侵害しなかったというGEのJMOLを求める申立てを認めた地方裁判所の判決を破棄し、同特許の侵害を認定しその侵害に対する補償として3500万ドルの損害賠償を裁定した陪審の評決を復活し、その他の点では我々は地方裁判所の判決を維持する。