原告−ISOGON CORPORATION
対
被告−AMDAHL CORPORATION
97 Civ. 6219(SAS)
合衆国ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所
1998 U.S. Dist. LEXIS 20072
1998年12月22日、決定
1998年12月28日、登録
弁護士: [*1] 原告: Max Moskowitz弁護士、Lynne A. Borchers弁護士、Ostrolenk, Faber, Gerb & Soffen法律事務所、ニューヨーク州ニューヨーク
被告: Robert F. Perry弁護士、Robert T. Tobin弁護士、Paul H. Heller弁護士、Alexos D. Skucas弁護士、Kenyon & Kenyon法律事務所、ニューヨーク州ニューヨーク
被告: David E. Lovejoy弁護士、Mark E. Miller弁護士、Fliesler, Dubb, Meyer & Lovejoy法律事務所、カリフォルニア州サンフランシスコ
裁判官: Shira A. Scheindlin,合衆国地方判事
意見者: Shira A. Scheindlin
意見: 意見及び命令
Shira A. Scheindlin、合衆国地方判事:
原告Isogon Corporation(「Isogon」)は、被告Amdahl Corporation(「Amdahl」)に対して、合衆国特許第5,499,340号(「'340」)および第5,590,056号(「'056」)の侵害訴訟を提起した。特許訴訟における侵害判断は、2段階のプロセスによる。第一に、裁判所は特許のクレームを解釈しなければならない。そして第二に、侵害しているとされる装置が、裁判所によって判断されたクレームの範囲および意味と比較される。Genentech, Inc. v. Wellcome Foundation Ltd., 29 F.3d 1555, 1555 注6(連邦巡回控訴裁判所、1994)参照。Markman v. Westview Instruments, 52 F.3d 967(連邦巡回控訴裁判所、1995)、上訴棄却、517 U.S. 370, 134 L.Ed.2d 577, [*2]116 S.Ct.1384(1996)の判決以来、裁判所は特許のクレームを解釈する排他的権限をもっており、侵害の問題はその後に事実認定者によって判断される。
第一段階の目的は、特許のクレームによって何が対象とされているかの判断である。しかしクレームについての論争は、しばしば一つのフレーズや単語の意味、あるいは特許装置の中の単一の機能や構造上の側面に集中する。問題のフレーズ、あるいは機能/構造の説明は、クレーム内には直接登場しないこともしばしばである。その場合には裁判所は、特許に含まれている明細書および図面に基づく推論によって、あるいは、発明者および審査官が特許の発明とその意図された範囲について詳しい説明をしているかもしれない審査経過から、クレームがその表現、構造あるいは機能を含んでいるか判断しなければならない。この目的のために裁判所はしばしば、クレーム解釈の助けとなる外部証拠を集めるための「Markman審理」を行う。Home Shopping Network, Inc. v. Coupco, Inc., 1998 U.S. Dist. LEXIS 2111, 95 Civ.5048, 1998 WL 85740, *1(S.D.N.Y.1998年2月27日)。
Markman審理は1998年10月1日に行われた。Isogon [*3] は、プログラミングとソフトウェア・ライティングのコンサルタント、Jim Keohane氏(1998年10月1日付けのMarkman審理反訳記録(「Markman記録」)pp. 75-76参照)、およびIsogonの社長でありIsogon特許ソフトウェアの発明者であるRobert Barritz氏(同上、p. 67参照)を呼んだ。Amdahlは、電気工学博士であるサン・ルイス・オビスポのカリフォルニア・ポリテクニック州立大学電気工学科長Martin Kaliski博士を呼んだ。同上、p. 157参照。以下で議論するクレーム解釈は、この審理で提出された証拠、両当事者の提出物、および問題の特許の検討に基づくものである。
第 '340号と第 '056号の特許は、コンピューター・システムで使用されるソフトウェア・プログラムを特定しそれについて報告する、Isogonのソフトウェアの発明を説明している。Isogonの発明は、コンピューター・システムのマネージャーが「誰がいつ、どの程度、ソフトウェア製品を使っているか」を知るのを支援するために、メーンフレームの「大コンピューター」環境で使用されることを意図されている。原告Isogon Corporationによる、米国特許第5,499,340号および第5,590,056号のクレーム解釈に関する法律上の意見書(「原告意見書」)、p. 2。両当事者は、発明が4つの主要要素から構成されていることに合意する [*4]。それは、利用可能なソフトウェア製品の名称のリストつまりコレクションである「知識ベース」、コンピューターに記憶されているプログラムを検索しその名称のリストを作る「在庫管理」プログラム、それらのプログラムのうちのどれが「誰によって、どれだけの期間・・・と呼ばれているか」をモニターする「モニター」プログラム、および、「ソフトウェアの「在庫管理」と「モニター」の要素の出力を分析し整理し」その情報に基づき報告書を作成する「報告」プログラムである。原告意見書、pp. 3-4。被告Amdahl Corporationによる、米国特許第5,499,340号および第5,590,056号のクレーム解釈に関する法律上の意見書(「被告意見書」)、p. 4。
第 '340号および第 '056号の特許は、合計で130のクレームをもつ。IsogonとAmdahlは、訴訟対象のクレーム数を12に減らした。1998年12月21日付けの、訴訟対象となる特許のクレームに関する合意書(「合意書」)、p. 1参照。両当事者はさらに、それらのクレームに含まれている紛争対象の用語を8つにまで減らした。原告意見書pp. 8-11、被告意見書pp. 1-2参照。両当事者は、「サービス要求への割り込み」とは、「SVC割り込みによって、またはLOAD、LINK、ATTACHもしくはXTCLのコマンドによってプログラム・モジュールが呼び出されたときに、[*5] コンピューターの制御権を得ること」を意味するということに合意する。原告意見書p. 9参照。Markman記録pp.6-7も参照(クレーム解釈に関するIsogonの最初の意見書に記されている、「サービス要求」のIsogonによる解釈への同意)。両当事者はまた、「報告発生器」は「生のデータを取りそれから利用可能な情報ビットを抽出し」、かかる抽出は、その間にデータが「書式化」される「生のデータの何らかの処理」のことであると合意している。Markman記録、pp. 105-07。したがって、本法廷は、以下の7つの用語のみを解釈すればよい。つまり、装置/方法、製品名、知識ベースが含むことができる項目の数、製品記録/情報記録、モジュール識別子/テキスト列、モジュール名、およびクレームの方法が自動的に行われなければならないか否かである。同上、pp. 9-15、29、37、39、44、50、53、55、59、63、65参照。
別個の争点として、Amdahlは、特許第 '056号のクレーム71-73に登場する幾つかの用語は「手段プラス機能」用語であり、もしそうだとすれば本法廷は、それを35 U.S.C.@ 112, P6に基づき解釈しなければならないと主張する。被告意見書pp. 24-25 [*6] 。問題の用語には、「検知のための事象検知器」、「取得のためのコレクター」、「記録のためのレコーダー」、および「相関のためのコリレーター」を含む。同上、pp. 24-25。原告意見書p. 11。Isogonはこの主張に反対する。原告意見書pp. 22-23参照。
クレーム解釈の目的は、「侵害していると主張された特許クレームの意味と範囲」を決定することである。Markman、52 F.3d 967,976(連邦巡回、1995)。クレーム解釈の焦点は、「その分野の技術をもつ人がそのクレームをどのように解釈するか」を判断することである。Moeller v. Ionetics, 794 F.2d 653,657(連邦巡回、1986)。特許出願には、「 (1)[35 U.S.C.の]第112条に定められている明細書、 (2) [35 U.S.C.の]第113条に定められている図面、および、 (3) 宣誓・・・」 U.S.C.@ 111(1984)。さらに、
明細書は、関係分野の技術をもつ人が・・それを製作し使用できる程度に完全で明確で簡潔で正確な用語での、発明の、ならびにその製作と使用の態様とプロセスの、文書による説明を含むものとする・・・。明細書は、発明者が[自分の]発明とみなす対象物を具体的に指摘して明確に主張する、一つまたは複数のクレーム [*7] を結論とする。
同上、112。
クレーム解釈において裁判所は、可能な限り、「内部証拠」に依拠する。Markman、52 F.3d 979(「主張されたクレームの解釈において、裁判所は記録の内部証拠をまず調べるべきであるということは、確立している」)。かかる内部証拠には、「特許自体、クレーム、明細書、そしてもし証拠内にあれば審査経過が含まれる」。Vitronics Corp. v. Conseptronic, Inc., 90 F.3d 1576,1582(連邦巡回、1996)。しかし、もし内部証拠がクレーム解釈にとって不十分であることがわかったら、裁判所は当然、「外部証拠」に依拠することができる。同上1584。外部証拠には、「特許および審査経過以外のすべての証拠」が含まれ、Markman、52 F.3d 980、「専門家証言、発明者証言、辞書、学術的な論文や論説」などの証拠を含めることができる。Vitronics、90 F.3d 1584。第 '340号と第 '056号の特許はほとんど同一なので、その特許の表現は一緒に検討することができる。原告意見書と被告意見書全般を参照。
[*8]1. 装置/方法
特許クレームは発明を、「コンピューターでのプログラムの利用を判断する・・ための装置」あるいは「方法」と、説明している。特許第 '340号col.12, ll. 48-49, col.13, l.37;特許第 '056号col.14, ll. 12-13。IsogonとAmdahlは、「装置」および「方法」という交換可能な用語が、単一のデバイスを指しているか否かについて意見が異なる。Isogonは、発明は単一のコンピューターの操作に限定されず、「一台または数台のコンピューター」で作動できると主張する。Markman記録、p. 9。Amdahlは、発明は単一のデバイスまたはつまりコンピューター上での操作、またはそれによる制御をクレームしていると主張する。同上pp. 31-32参照。
「特許においても審査経過においても、発明が「単一」のコンピューターあるいはデバイスに限定されるとはどこにも要求されていない」というIsogonの主張は正しい。原告意見書p. 11。むしろKeohane氏が指摘したように、クレームの表現は、ソフトウェアの発明の複数のコンピューターへの配備を示唆している。Keohane氏は、特許第 '056号のクレームのうちの4つ、つまりクレーム9、31、51および60は、「事象に付随するコンピューター・システム」の、発明による内部記録への言及を含んでいると証言した。Markman記録、p. 81。Keohane氏は [*9] この分野の技術をもつ人間として、このクレームの表現は、この発明が複数のシステムに配備されることを示唆すると証言した。「私が考えるに、すべてが同一のコンピューター・システムにあるとすれば、なぜあなたは事象が起きたコンピューター・システムの記録を取るのだろうか。・・・あなたが記録しているまたは報告している情報を見る人は、それが誰であったとしても、モニターされまたは報告されまたは記録されたシステム以外のシステムにいることを、このことは意味すると思われる」。同上。
しかしIsogonは、特許明細書は「単一のコンピューターを使う実施例を引用することにより」、発明を説明していることは認める。同上p. 12。しかし、明細書内での限定は、要求されていないならば、クレームを狭めるように読んではならないというのが、特許クレーム解釈の確立した原則である。Speciality Composites v. Cabot Corp., 845 F.2d 981,987(連邦巡回、1988)参照。(「明細書に登場する特定の実施例は、一般にはクレームに読み込まれない・・・特許対象はその例には限定されず、クレームが明細書によって裏付けられているならばそのクレーム中の言葉によって定められる・・」)。Fromson v. Advance Offset Plate, Inc., 720 F.2d 1565, [*10] 1568(連邦巡回、1983)(「クレームされた発明を明細書中の好適な実施例または特定の例に限定するための根拠は、この記録には登場しない」)
Speciality Composites訴訟において上訴裁判所は、「明細書のいずれの箇所にも・・・外部可塑剤を使用すべきであると記されていない」ので、特許が、「外部」または「内部」のいずれかの可塑剤の使用ではなく、「外部」可塑剤のみの使用を要求していると認定することを拒否した。Speciality Composites、845 F.2d 987。同裁判所はその認定の根拠を、明細書内に、単に「外部」可塑剤ばかりでなく他の種類の可塑剤の使用の可能性にも明示的な言及があることに置いた。同上。Speciality Compositesと同様、Isogonの明細書のいずれの箇所にも、発明は単一のコンピューターに配備されるべきであるとは記されていない。さらに第 '340号と第 '056号の特許明細書のどちらも明示的に、特許のネットワーク環境での配備の可能性に言及している。「この発明の基本の一つの重要な改良として、コンピューター・ネットワークへの応用がある。たとえば多くのPCコンピューターやマイクロ・コンピューターを接続することができる・・・これは、メインフレーム・コンピューターへ接続されたPCコンピューターやマイクロ・コンピューターや、あるいは同等のコンピューターのネットワークで行うことができる。」 [*11] 特許第 '340号 col. 10,1.66-col.11, l.11。参照特許第 '056号 col. 11, ll. 25-36。
Keohane氏はまた、装置は「明らかに」単一のまたは中央のコンピューターに限定されておらず、一つまたは複数のコンピューターに適用することができるとも証言した。Markman記録p. 80。一方Kaliski博士は、明細書および従来技術に説明されているように、この特許の発明は単一のコンピューターでの使用を意図したものであると証言した。同上p. 172参照。しかしKaliski博士は、明細書におけるネットワークによる改良への言及が、この考えに対する「幾分の懸念を生み出す」ことは認めた。同上p. 170。Kaliski博士は、クレームまたは明細書は、単一のコンピューターでの使用を要求しているとは指摘しなかった。同上pp. 166-73参照。したがってSpeciality Compositesと同様、そのような指定はないので、実施例によってはクレームは単一のコンピューターに限定すべきではない。
次にAmdahlは、「装置(複数形)」は、クレーム内の表現では、「装置(単数形)」として引用され、単一のデバイスであることを含意していると主張する。Markman記録p. 166(特許第 '340号col.3, ll. 10-12、強調追加)。Kaliski博士は、「装置」は単一のコンピューターに限定されるという彼の結論をこの表現は支持していると証言した。 [*12] 同上。しかし「特許用語においては、「a(an)」は文脈によっては「一つまたは複数」を意味しうる・・・ことは一般に受け入れられている。」North American Vaccine v. American Cyanamid Co.,7 F.3d 1571,1575(連邦巡回、1993)(Robert C.Faber、Landis on Mechanics of Patent Claim Drafting 531 (第3版、1990)を引用)。したがって、「装置」という用語が使われる文脈によっては、冠詞「an」はそれ自体では、単一のコンピューターへの限定を支持しない。したがって、「装置」あるいは「方法」という用語は、単一のコンピューター上での使用、あるいはそれによる制御に限定されない。
一般に、「製品名」は、市販のソフトウェア・プログラムの名称のことである。Isogonの発明は、コンピューター・システムにある製品の名称を、その存在と使用について報告できるように、検索し認識する。Markman記録p. 45。Amdahlは、「製品名」とは、「そのソフトウェアが一般にそれによって公衆に知られているところの名称」のみを意味すると主張する。被告意見書p. 18。Isogonは、「製品名」とは、「一般に」公衆に知られている名称、「英数字による名称」、「製品コード」、「業者間での名称」、 [*13] あるいは、この発明が使用状況を報告する目的でソフトウェア・プログラムを認識するのに使うその他のすべての名称を指していると主張する。合衆国特許第5,499,340号および第5,590,056号のクレームの解釈に関するAmdahlの意見書に対するIsogonの反対訴答(「原告の訴答書」)、p. 5参照。
「製品名」という用語はクレーム中では定義されていない。むしろこの用語は、発明が「プログラム・モジュール名」と結び付けるものとして言及されている。特許第 '340号col.12, ll. 53-65、col.13, l.3、col.14, ll. 8-28。その結果はモニター、相関および報告のために、この発明によって記憶される。同上、参照。明細書も同様に「製品名」を定義していない。さらに、クレームまたは明細書のいかなる箇所にも、「製品名」は、ソフトウェア・プログラムの「一般に知られている名称」として言及されてさえいない。
明細書中の1カ所で、「製品名」という用語が、「製品記録」に含まれる項目のリストの中で言及されている。「各製品に対する製品記録は、製品ID、製品名、業者用ID、および(オプションとして)その製品に対して業者が使う製品コードを含む」。同上、col. 5, ll. 32-35。この明細書の表現は [*14] 、記載されている用語が別個のものであり、したがって「製品コード」や「業者用ID」は「製品名」と同一の概念とはみなすことができないと示唆するが、明細書はこれらの用語が別個であるとも、また「製品名」が、記載されているその他の用語を除外しているとも要求していない。明細書が要求していない限定はクレーム中に読み込んではならないので、Speciality Composites、845 F.2d 987参照、「製品名」が、明細書中のリストに一緒に登場するその他の用語とは別個のものであり、それを排除するとの推論は、クレームに対する限定として読み込んではならない。つまり「製品名」は、「製品コード」あるいは「業者用ID」を含めることができる。
Kaliski博士はその専門家意見の中で、「製品名」とは、「知識のないユーザーのための読取可能な報告書で使用しようとしている」名称であると証言したが、Keohane氏は、「Wordperfect」など幾つかのソフトウェア・プログラムは、市場で知られている複数の名称を、あるいは市場で知られている一つのラベルの下で複数のバージョンを、もっていると指摘した。Markman記録pp. 143-44。Keohane氏は、複数の「一般に知られた名称」がありうるので、その名称はこの発明またはそのユーザーにとって [*15] 、各製品を適切に識別できないと述べる。特許、その明細書、あるいはこの分野の技術をもつ人の証言の何ものも、この発明が、製品名として「一般に知られている名称」を使用することを要求しているとは示唆しない。実際Keohane氏が証言したように、かかる一般的な名称の使用は、この発明またはそのユーザーのためには十分でないことがある。
以上の理由により、「製品名」という用語は「一般に知られている名称」には限定されない。それは「英数字による名称」、「製品コード」、「業者間での名称」、および、使用状況を報告する目的でソフトウェア・プログラムを認識するのに使うその他のすべての名称を含むことができる。
a. 最小限の内容
IsogonとAmdahlは、「知識ベース」というクレームの用語が、「その中の情報がモジュール名を有効に製品名と結び付けている、一つのメモリー中の単一のファイル、または、一つもしくは複数のコンピューターの幾つかのファイルに位置する、情報のコレクション」を意味するという点では、合意している。同上、p. 8。しかし両当事者は、クレームの意味に含まれるには、その知識ベース内に幾つの記録が含まれていなければならないかという点で争っている。同上、p. 12参照。[*16]
クレームの表現は、知識ベースを、「[a plurality of](複数の、多数の)モジュール名と[a plurality of]情報記録」を含むとして説明している。特許第 '340号col. 13, ll. 40-45、col. 14, l.66-col.15, ll. 1、特許第 '056号col. 14, ll. 57-59、col.16, ll. 52-54。Amdahlは、記録が2つでも[plurality]となり、知識ベースとなりうると主張する。Markman記録p. 59参照。Isogonは、発明の作動上の必要性により、知識ベースには、記録の「かなりのコレクション」、つまり「作業をするのに」十分な記録が含まれることが要求されるので、記録2つでは十分ではなく、これらのクレームの意味における[plurality]とはならないと主張する。同上pp. 12,58。
York Prods. v. Ctr. Tractor Farm & Family Ctr.,99 F.3d 1568(連邦巡回、1996)では、上訴裁判所は、[plurality]とは「4つ以上」であるという地方裁判所の解釈を破棄した。その代わりに同裁判所は、[plurality]とは[pluralである状態]であり、クレームされた項目の「少なくとも2つ」のみを要求していると解釈した。同上、1575。しかしニューヨーク州の上訴裁判所は、「通常の意味」をその解釈の根拠としたのではなく、[plurality]の何らかの解釈に対する適切な根拠付けを地方裁判所が提示しなかったことを [*17] 根拠とした。同上。つまり適切な状況では、[plurality]に対して、クレームされた項目の(2つではない)幾つか以上の数を要求するとの解釈もありうることを同裁判所は含意した。本件においては、かかる解釈を必要とする理由が十分にある。
可能な限り、クレームはその有効性を維持するように解釈すべきであるというのは、クレーム解釈における確立された原則である。North American Vaccine, Inc. v. American Cyanamid Co., 7 F.3d 1571,1577(連邦巡回、1993)(Carman Indus., Inc. v. Wahl, 724 F.2d 932,937 n.5(連邦巡回、1983)引用);Texas Instruments Inc., v, United States Int'l Trade Comm'n, 871 F.2d 932,937 n.5(連邦巡回、1983)参照。特許の有効性に対する基本的要件の一つは、その有用性である。35 U.S.C.@ 101(1984)(「何らかの新しい有用なプロセス・・または何らかの新しい有用な改良を発明または発見した人は・・・特許を取得することができる」)参照。Gregory E.Upchurch、知的所有権訴訟ガイド: 特許&営業秘密、@@15.01-.02(1995)も参照。もし「知識ベース」という用語が2つのみの項目から構成されると解釈されるならば、この発明は実質的に無用となりしたがって無効となる。[*18]
知識ベースは、モジュールと製品名を「有効に」関係付けることができなければならないということには、両当事者は合意した。Markman記録p. 8参照。Keohane氏は、記録を2つのみ含む知識ベースでは、発明は技術的にはコンピューター上の2つのみのソフトウェア・プログラムを追跡できると証言したが、彼はまた、この態様での知識ベースの装備では、この発明の対象とされているメーンフレーム環境で「何らかの有用なものを定める」ことはできないとも証言した。同上、pp. 89、99-100。Keohane氏はさらに、この特許が意図されたように機能するためには、知識ベースは「かなりの量の」情報を必要とすると証言した。同上。ソフトウェア・プログラムをモニターするための「有効」なツールであるという、「知識ベース」に対する両当事者が合意した定義に適合させるには、そして特許の有効性を維持するには、「知識ベース」というクレームの用語は、[a plurality of]記録、つまり3つ以上の記録を含むと解釈されなければならない。
b. 製品記録/情報記録
クレームの表現では同じ意味で使われる「製品記録」と「情報記録」は、ソフトウェア製品を識別するために [*19] 、知識ベースの中に含まれている。同上、p. 14。IsogonとAmdahlは、「製品記録」が含まなければならない要素について合意していない。Amdahlは、「製品ID」、「製品名」および「業者用ID」を含まなければならないと主張する。同上、p. 65。Isogonは、「製品記録」が、「ソフトウェアのユーザーが、特定されたソフトウェア製品を認識することを可能にする」のに十分な情報を含むことができるが、「ファイル名またはモジュール名以外によってこのことをしなければならない・・」と主張する。同上、p. 14。クレームは「製品記録」も「情報記録」を定義していない。その代わりに特許第 '340号のクレームは、「情報記録」を、知識ベースに含まれており「少なくとも一つのモジュール名」に付随すると言及している。特許第 '340号col. 14, ll. 66-67-col.15, ll. 1-13。特許第 '056号のクレームは、部分的には「そのモジュール識別子をその第一メモリー手段に製品記録として記録する」ことによって機能する在庫管理方法を説明するときに、「製品記録」に言及している。特許第 '056号col.17, ll. 6-9。
明細書には次のように記されている。「製品記録: 各製品に対する製品記録は、製品ID、製品名、業者用IDおよび(オプションとして)業者がその製品に対して使う製品コードを含む。」特許第 '056号 [*20] col. 5, ll. 47-50。この明細書の表現は、製品記録が含まなければならない最低限のものを定めているとAmdahlは主張する。Markman記録p. 65参照。この表現は、「オプションとして」が4番目の要素「製品コード」だけを修飾しているので、記載されている最初の3項目は製品記録のオプショナルな要素ではないことを確かに示している。特許第 '056号col. 5, ll. 47-50。
しかしすでに指摘したように、明細書はまた、「モジュール識別子」を「製品記録」として記憶することができるとも記している。特許第 '056号col. 17, ll. 6-9。「モジュール識別子」とは、ソフトウェア・プログラム内に埋め込まれている「著作権表示」の中の情報からなる文字列である。特許第 '340号col. 5, ll. 59-60(モジュール識別子を公式化するために「ファイル・リーダー12B」によってスキャンされる情報の説明は、「著作権表示・・・」を含む)。Markman記録p. 102も参照。Keohane氏は、著作権表示には以下のものが含まれることがあると説明した。
著作権という単語、著作権のシンボルがあることもある。そしてその後の文は、会社名、日付、製品名・・・モジュールの識別に役立つ何かがあるかもしれない。その場合、モジュール識別子は [*21] 、「著作権」という単語を探し、望むらくはそのモジュールがどこから来たのかを識別するために、その後あるいはその前の情報をモジュールから引き出す。
同上。この証言は、「モジュール識別子」が「製品ID」、「製品名」および「業者用ID」を要求しておらず、著作権表示内に見つかる何らかの要素から構成されうるという結論を裏付ける。明細書は明らかに、「モジュール識別子」が記憶される場合、「製品記録」として記憶され、それから「第一メモリー手段」に記憶されると記している。特許第 '056号col. 17, ll. 7-8。特許第 '056号の明細書はその後で、「第一メモリー」には、「情報記録」の「データ表現」を含む「知識ベース」が含まれると説明している。同上、col. 19, ll. 4-10。したがって明細書は、「モジュール識別子」を「製品記録」として記憶することができ、その製品記録は「知識ベース」に記憶されると教えている。同上、col. 17, ll. 7-8。さらにその「製品記録」は、「製品ID」、「製品名」および「業者用ID」の3要素を含まない著作権表示から拾い集めた「モジュール識別子」から作られた場合 [*22] 、その3つよりも少ないかもしれない。同上;特許第 '340号col. 5, ll. 59-60。Markman記録p. 102も参照。結局、「知識ベース」内の「製品記録」は、「製品ID」、「製品名」および「業者用ID」を含むとは要求されない。
モニターされたプログラムを識別するために発明が使用する知識ベースに含まれていない情報は、「そのままでは知識ベース内の製品記録」を構成せず、その代わり「システム構成ファイル」に記憶されると、Kaliski博士は証言した。Markman記録p. 191。しかし専門家証言は、「内部証拠から理解されたクレームの用語を変更するまたはそれを否定するために使うことはできない。」Intellectual Property Development, Inc. v. UA-Columbia Cablevision of Westchester, Inc., 1998 U.S. Dist. LEXIS 3901,94 Civ.6296,1998 WL 142346, *21 (S.D.N.Y. 1998年3月26日)(Markman、52 F.3d 981、983を引用)。内部証拠は、「製品記録」が、「モジュール識別子」から構成される際には3要素すべてを含む必要はなく、かかる状態で知識ベースつまり「第一メモリー手段」に記憶されることを示している。特許第 '056号col. 17, ll. 7-8;特許第 '340号col. 5, ll. 59-60。Kaliski博士 [*23] の限定的解釈は、内部証拠が教える所と矛盾し、したがって棄却される。「製品記録」は「製品ID」、「製品名」および「業者用ID」に限定されず、「製品名」を含むようには要求されず、ソフトウェア製品を識別するのに必要な情報なら何でも含むことができる。
IsogonとAmdahlは、ソフトウェア・プログラムに埋め込まれた認識可能な「文字列」を表わす「モジュール識別子」と「テキスト列」が、同じ意味のクレーム用語であることを争ってはいない。Markman記録pp. 12、101-02。この文字列は、発明が、知識ベース内に記憶済みの識別情報をもっていないソフトウェア・プログラムを識別するのに使われる。同上、pp. 101-02参照。唯一の争点は、発明のどの部分に「モジュール識別子」が記憶されなければならないかという点にある。モジュール識別子は、知識ベースか調査プログラムに記憶されなければならないとAmdahlは主張する。Isogonは、「装置のどこにも」記憶させることができると主張する。Markman記録p. 13。
特許第 '340号のクレームは、発明を、「そのモジュール識別子をその第二メモリー手段 [*24] に記憶するための」手段、およびモジュール識別子をやはり「第二メモリー」に記憶されているモジュール名と関連付けるための手段をもつとして説明する。特許第 '340号col. 13, l.65-col.14,1.3。特許第 '340号で言及されている「第二メモリー」は、クレームでは、発明装置の一部を構成する「複数の記憶装置」の一部として定義される。特許第 '340号col. 12, ll. 48-53。特許第 '340号の「第二メモリー」は、クレームでは、「調査手段」によって検索される「モジュール名」の記憶として説明されている。同上、col. 12, ll. 55-60。クレームは、第二メモリーが「調査手段」または知識ベースの一部であるとは要求していない。
さらに、調査プログラムの機能を説明している図面の「図4」には、モジュール識別子は「システム構成ログ」の中に記憶されると記されている。特許第 '340号図4、シート4。次にこのシステム構成ログは、明細書の中では図面の要素「66」として特定されている。同上、col. 11, ll. 47-49。Amdahlは、発明が探索するモジュール識別子が、ファイル「ナンバー66」の中に「ダンプ」されることは認める。Markman記録p. 27。特許第 '340号の図面の「図1」では、「66」番の構成要素である「システム構成ログ [*25] 」は、調査プログラムと関連させて示されている。しかし構成要素「66」は明らかに、「図1」の構成要素「12」と標示されている、調査プログラムを示す境界線の外側に組み入れられている。特許第 '340号図1、シート1。幾つかの構成要素、つまり「12A」と標示されている「ディレクトリー」および「12B」と標示されている「モジュール・リーダー」は調査プログラムの境界内に記されているので、この図面から、調査プログラム内に含まれている構成要素とそうでない構成要素との区別が明らかになる。[1] したがって特許第 '340号の好適な実施例は、モジュール識別子が、調査プログラムによって使われる周辺装置に記憶させることができ、その調査プログラムの一部である必要はないことを教えている。
さらに明細書は、知識ベースを、図面の構成要素「20」として言及している。特許第 '340号col. 5, l.20。システム構成ログ [*26] 、構成要素「66」は明確に、知識ベース、構成要素「20」とは別個のものとして、また調査プログラム、構成要素「12」とも別個にその外に、示されている。同上。したがって明細書および「図4」に示されているように、モジュール識別子が、調査プログラムとも知識ベースともまったく別個のものとしてここに組み入れられているシステム構成ログに記憶できるとすれば、この発明が調査プログラムにも知識ベースにもモジュール識別子の記憶を要求していないことを、特許第 '340号は示していることになる。
クレームまたは明細書のどの箇所でも、特許は特定の場所でのモジュール識別子の記憶を要求していない。Markman記録p. 102。「できる」および「可能である」という単語を使ったモジュール識別子の記憶を説明する明細書の表現は、オプションとしての記憶の場所を認めており、どのように「知識ベースも・・・列のような情報を記憶するのに使うことが可能か」、特許第 '056号col. 5, ll. 63-66、そして、モジュール識別子は「知識ベースに記憶させるかファイル・リーダー12Bの中にハードコードすることができる」ということを、説明する。同上、col. 6, ll. 18-20。Kaliski氏は [*27] この表現がこれら2つの記憶場所のみを認めていると証言したが、彼はまた、この明細書の表現は文脈からはずして考えるべきではないことも認めた。Markman記録p. 181参照。図面および明細書で説明されている特許は、これらの2つの場所のみが、モジュール識別子を記憶することができる場所なのではないことを明らかにしている。モジュール識別子は知識ベースあるいは調査プログラムの「モジュール・リーダー12B」の一部ではないシステム構成ログにも記憶できるからである。特許第 '340号図1、シート1。モジュール識別子の記憶は、調査プログラムまたは知識ベースの場所に限定されない。
「モジュール名」は一般にファイル名を指す。Markman記録p. 27参照。モジュール名は、発明の知識ベースか、発明がモニターするコンピューター・システムの「記憶装置」の中に含まれるファイルを指す。1998年10月8日付けAmdahl側弁護士Robert F. Perryの意見書(「Perry意見書」)p. 1。1998年10月8日付けIsogon側弁護士Max Moskowitzの意見書(「Moskowitz意見書」)p. 1も参照。両当事者は、「モジュール名」の意味について、それが発明の知識ベースに含まれるファイルを指す場合にのみ [*28] 意見が一致していない。Perry意見書p. 1参照。「モジュール名」は、「モニターされているコンピューターに記憶されるファイル名を識別するために、またはそれに言及するために」、「装置で使用されるすべての名称」を指すとIsogonは主張する。Moskowitz意見書」p. 1。Amdahlは、知識ベース内の「モジュール名」は、「ワイルド・カードの表示」として表現されているかもしれないが、「参照番号」による呼称は除外しなければならない。Perry意見書p. 1。クレームはモジュール名を定義しておらず、知識ベースの中に、「複数のモジュール名のデータ表示」として含まれるものとして言及している。特許第 '340号col. 14, l.67。モジュール名の「データ表示」へ言及しているクレーム表現は、クレームが、知識ベース内のモジュール名について一般的表示を考えているということを示唆する。かかる一般的表示の中に「参照番号」を含めるか否かについての言及は、クレーム中にはない。
第 '340号および第 '056号の特許明細書は、一般的な形で知識ベースに含まれているモジュール名に明示的に言及している。特許第 '340号は、「知識ベースの中では、モジュールはワイルド・カードの使用によって、つまり一般的な形で表現することができる [*29] 」と記している。特許第 '340号col. 5, ll. 50-53。特許第 '056号は、「好適な実施例」において知識ベースの内容の例を与え、モジュール記録、製品記録、業者記録、および業者用製品コード記録を含めている。モジュール記録の議論においては、かかる記録にはモジュール名が含まれると例で記されており、「すでに示したように、モジュール名は一般的な形で示すことができる・・」とされている。特許第 '056号col. 5, ll. 40-46。「すでに示したように」という部分は、明細書が、モニターされる記憶装置内に位置するモジュール名の名称は変更することができると説明する最初の部分を指している。同上;特許第 '056号col. 5, ll. 5-30も参照。したがって明細書はモジュール名の一般的呼称を強調しているばかりでなく、知識ベースに含まれる一般的に指定されたモジュール名ということに曖昧でない明白な言及をし、知識ベース内のモジュール名の一般性を、モニターされる記憶装置内に位置するモジュール名の一般性に類比している。Amdahlは、モニターされる記憶装置内のモジュール名の一般的表示については争っていない。Perry意見書p. 1参照。
しかしAmdahlは、特許は「モジュール名」と「番号」を区別し [*30] 、後者を一般的なモジュール名の表示から除外していると主張する。Perry意見書pp. 1-2。Amdahlはかかる「参照番号」を、数字で構成されるモジュール名の一般的表示として定義する。被告意見書pp. 19-20およびn.20参照。Amdahlはさらに、Isogonが特許の審査中にそのクレームを認めるように審査官を説得するために、その特許第 '056号を、モニターされたソフトウェア・アプリケーションを「独自の番号」によって識別した別の特許から区別したと、主張する。同上、p. 19。したがって、「特許権者はその特許を、特許の審査中に放棄された対象を回復するように解釈してはならない」ので、特許第 '056号でのモジュール名は「参照番号から構成される列を使う」とは定義できないと、Amdahlは主張する。同上(Southwall Technologies, Inc. v. Cardinal IG Co., 54 F.3d 1570(連邦巡回、1995)を引用)。
審査経過は内部証拠の一部とみなされ、したがってクレームの解釈にとって重要である。Southwall訴訟で上訴裁判所が判断したように、クレームの用語は整合的に解釈されなければならず、特許審査中の解釈は、「その反対の明確な示唆がない場合には」 [*31] 、後のクレーム解釈にとって意味をもつ。同上、1579。Southwall訴訟で裁判所は、「クレームはその認可を得るときと、侵害者に対するときで、異なる解釈をしてはならない」と説明した。同上、1575。(Unique Concepts Inc. v. Brown, 939 F.2d 1558,1562(連邦巡回、1991))。
Isogonは特許第 '056号の審査中に、「モニターされたアプリケーション」は「数字」を除外するというモジュール名の解釈を主張した。特許第 '056号の審査経過、注釈、1996年6月26日付け、Markman審理、原告の証拠物F(「原告の証拠物F」)p. 15。Isogonは、その発明から区別しようした特許は、「モニターされる各アプリケーションが名称ではなく・・独自の仮想カウンター数字を与えられる」ので、「複数のモジュール名を記憶する」とは述べていないと主張した。同上。この議論によってIsogonは、モジュール名の指定の目的では、数字のみからなるどのような列も除外することに同意している。
明細書とクレームは、モジュール名は一般的に指定することができると述べているが、それは、モジュール「名」の使用が「数字」とは区別されているというIsogonの審査における立場と明確には矛盾しない。 [*32] つまり、特許を取得するために主張した、Isogon自身による「モジュール名」の解釈と合致するためには、「モジュール名」は数字とテキストを含む一般的な形で指定することができるが、数字のみで構成することはできない。
IsogonとAmdahlは、Amdahlが主張するように発明が完全な自動化を要求しているのか、あるいはIsogonが主張するように「実質的」な自動化のみを要求しているのかという点で対立する。Markman記録p. 9。クレームは、自動化については何も言及していない。この発明を従来技術から区別するために、明細書は発明の幾つかの側面を、「自動的に」行われると説明する。たとえば、自動的に「ソフトウェア在庫管理情報をモジュールの利用に関係付け」、自動的に「どの製品が、モニターされている製品の協力を受けずに使用されているか」を判断する。特許第 '056号col. 2, ll. 35-46。しかしこの説明のどの箇所も、発明から手作業を排除していない。これらの説明は単に、従来技術に欠けている自動化の可能性を提示しているだけである。
各特許の要約は、自動化された機能を一回だけ説明している: 「実行可能プログラム・モジュールに関係する事象をモニターし [*33]・・・モニターされた各事象を自動的に記録する方法と装置」。特許第 '340号要約;特許第 '056号要約。「記録」機能のみを修飾するような「自動的に」という単語の配置は、この発明のすべてのすべての機能が必ずしも自動的ではないことを示唆している。プログラムの開始と終了以外のそのすべての構成要素が自動的に行われれば、この発明は「技術をもたない」ユーザーにとって最も効率よく機能すると、Kaliski博士は証言し、フロー・チャートが最善の自動機能をどのように組み入れているかを説明した。Markman記録pp. 175-82。
Kaliski博士もKeohane氏も、この発明が、かかる好適な自動機能を強制しているとは証言していない。自動化を示唆する用語が明細書や要約で時折使われているが、クレーム中では使われておらず、この用語が発明の機能の説明に限られていることは、自動化が、発明のすべての側面に対する要件ではなく、この発明を従来技術と区別するオプションの機能であることを強調している。明細書に登場する、必要とはされない限定は、クレーム中に読み込むことはできないので、Speciality Composites,845 F.2d 987参照、 [*34] Isogon発明の作動は完全な自動化を要求していない。
Amdahlは、特許第 '056号のクレーム71-73内に登場するある種の用語は「手段プラス機能」用語であり、もし本法廷がそう判断すれば、それは35 U.S.C.@ 112, P6に基づき解釈されなければならないと主張する。被告意見書pp. 24-25。問題の用語は、「検知のための事象検知器」、「取得のためのコレクター」、「記録のためのレコーダー」および「相関のためのコリレーター」である。同上。Isogonは、この主張に反対する。原告意見書p. 11参照。クレーム71-73は構造ではなく主に機能を説明しているので、それらは@ 112, P6の限定に服する手段プラス機能クレームである。
手段プラス機能というオプションは、発明の諸側面を、明確さの欠如によってクレームを無効とせずに、構造ではなく機能によってクレームすることを発明者に認めている。B.Braun Med., Inc. v. Abbots Labs., 124 F.3d 1419,1423-24(連邦巡回、1997)参照。Home Shopping Network, 1998 WL 85740, *2(Valmont Indus. v. Reinke Mfg.Co.,983 F.2d 1039,1042(連邦巡回、1993)を引用)も参照。しかしそのようなクレームが過度に広範囲になることを避けるため、35 U.S.C.@ 112 [*35] は、その対象を、「明細書に記されている対応する構造、材料もしくは行為、またはそれに等価なもの」に限定している。35 U.S.C.@ 112, P6(1984)。かかる限定の効果によって、侵害しているとされる装置の要素を手段プラス機能クレームと比較するとき、それらが「明細書で開示されている構造またはそれに等価な構造」に基づき特許に記されているものと「同一」の機能を行っていない限り、その要素は侵害していないことになる。Carrol Touch, Inc. v. Electro Mechanical Systems, Inc., 15 F.3d 1573,1578(連邦巡回)。
かかるクレームを特定するための第一のテストは、「手段」あるいは「のための手段」という用語を使った、「典型的な」手段プラス機能の定式化を探すことである。Greenberg v. Ethicon Endo-Surgery, Inc., 91 F.3d 1580,1584(連邦巡回、1996)(「「手段」という用語の使用は(特に「のための手段」という表現で使われる場合)一般に第112条 (6) を惹起し、異なる定式化を使用すればそうではないと考えるのが適切である」)。特許第 '056号のクレーム71-73はこの用語法を使っていない。しかし「手段」という用語でクレームを定式化していないことは、決定的ではない。Cole v. Kimberly-Clark Corp., 102 [*36] F.3d 524,530(連邦巡回、1996)(「特許クレームのあるクレームに「手段」という単語が続いているというだけでは・・その要素は自動的に「手段プラス機能」要素にならない。・・その逆も正しい。ある要素が「手段」という単語を含んでいないとしても、その要素を手段プラス機能要素と解釈することは自動的に妨げられない。」)
あるクレームが手段プラス機能であるか否かのよりよいテストは、そのクレームが「その機能を達成する明確な構造」の説明を含んでいるか否かである。Braun, 124 F.3d 1424(Cole v. Kimberly-Clark Corp., 102 F.3d 531を引用)。明確な構造がある場合に、もはや機能クレームのようなものとはみなされないほど構造の「詳細な説明」を含んでいれば、典型的な「手段」の定式化を使っていたとしても、そのクレームは@ 112, P6による限定は受けない。
Cole訴訟において裁判所は、「引き裂きのための・・穴開け手段」というクレームは、「切り裂き機能を達成する構造ばかりでなく、その位置(脚バンドからウエスト・バンドまで延びる)と程度(外部の不浸透層を貫く [*37] )」を説明しているので、手段プラス機能ではないと判断した。Isogon特許におけるクレーム71-73は、「検知のための事象検知器」、「記録のためのレコーダー」、「出力のための報告発生器」というように、Cole特許のクレームと同様の態様で定式化されている。特許第 '056号col. 18, ll. 7-19。しかしCole訴訟で解釈されたクレームとは異なり、これらのクレームは構造の説明を含んでおらず、もちろん位置や程度などの詳細もない。これらのクレームでは構造は定義されていない。[2] これらのクレームは機能の説明が主体となっている。したがって、これらは手段プラス機能クレームであり、@ 112, P6の限定に服する。
Isogonは、この問題は特許の審査中に提起され、特許審査官は、クレーム71-73と同じ定式化を使った一つのクレーム(現在のクレーム「53」)を手段プラス機能ではないと判断したと主張する。[3] 原告意見書p. 22参照。Isogonは、特許の審査過程で、手段プラス機能である他のクレームと区別するために手段プラス機能クレームではないと主張することによって、クレーム53を弁護することに成功したと主張する。同上、pp. 22-23参照。そして特許審査官は、クレーム53を修正要求なしで認めており、このことは、クレーム53が手段プラス機能ではないというIsogonの主張が受け入れられたことを意味する。1996年7月16日付けの特許第 '056号の審査経過、面接の抄録、原告意見書の付属書2として添付、p. 1参照。
審査経過は手段プラス機能クレームの解釈に関係することだが、Hayes訴訟、982、F.2d 1527、1543参照、特許審査官の判断は「決して裁判所を拘束しない」。Fromson v. Advance Offset Plate, Inc., 755 F.2d 1549, 1555; Western Elecric Co., Inc. v. Piezo Technology, Inc., 860 F.2d 428,433(連邦巡回、1988)(特許審査官の決定は推定として正しい)も参照。すでに議論したように、クレーム71-73は、手段プラス機能クレームのすべての特徴をもっている。したがって特許審査官の結論は棄却される。
クレーム71-73の表現は、明確な構造の説明なしで機能により発明の要素を説明しているので、クレーム71-73は手段プラス機能クレームである。したがって、これらのクレームは@ 112, P6の限定に服する。
1. 装置と方法は、単一のコンピューターあるいはデバイス上での作動に限定されない。
2. 製品名は一般に知られている名称に限定されない。英数字での名称、製品コード、業者用の名称、あるいはソフトウェア・プログラムがその使用の報告のために認識される手段としてのその他の呼称を含む。
3a. [*40]知識ベースは[a plurality of]、つまり2つより多くの記録を含む。
3b. 製品記録は製品ID、製品名および業者用IDに限定されず、製品名を含むことを必要とされず、ソフトウェア製品を識別するのに必要なすべての情報を含めることができる。
4. モジュール識別子の記憶場所は、調査プログラムおよび知識ベースに限定されない。
5. モジュール名は一般的な形で指定することができ、数字やテキストを含むことができるが、数字のみから作ることはできない。
6. 発明の作動は、完全自動である必要はない。
7. 「サービス要求への割り込み」は、「SVC割り込み、あるいはLOAD、LINK、ATTACHまたはXTCLのコマンドによるものを含む、プログラム・モジュールが起動されたときにコンピューターの制御権を得ること」を意味する。同上、p. 4参照。
8. 「報告発生器」は、「生のデータを取りそれから利用可能な情報ビットを抽出する」。かかる抽出は、その間にデータが「何らかの形で書式化」される「生のデータの何らかの処理」のことである。同上。
9. クレーム71-73は、@ 112, P6の限定に服する、手段プラス機能クレームである。
そのように命令される。
Shira A. Scheindlin
U.S.D.J.
日付: [*41] ニューヨーク州ニューヨーク
1998年12月22日
[1] 実際、境界線内の構成要素はコンピューター・システムの一部であり、その外の構成要素は「周辺機器」である。特許第'340号col. 4, ll. 2-6。
[2] Amdahl側弁護士は、この分野の技術をもつ人にとって、「検知のための事象検知器」などの、クレーム71中のソフトウェア特許の要素は、「フロー・チャート」、「コード」、あるいはコードの例である「疑似コード」が付随すれば明確な構造を表現すると主張した。1998年12月1日付け審理記録、pp. 19-20。一方、Isogon側弁護士は、ソフトウェアの構造を明確にするには、フロー・チャートやコードを必要としないと主張した。Isogon側弁護士Max Moskowitzの1998年12月3日付けの意見書(Fonar Corp. v. General Electric Co., 107 F.3d 1543(連邦巡回、1997)を引用)参照。IsogonによるFonar訴訟への依拠は間違っている。同訴訟では裁判所は、特許は「最善の態様」の要件を充たしているとの陪審の認定を検討していた。この要件は、特許明細書は「発明を実施するための、発明者が考えた最善の態様を記す」と要求するた特許法令の中に見られる。35 U.S.C.@ 112。Fonar訴訟では、陪審は、特許はソフトウェアの機能についての十分な説明を含んでいると認定した。本件での問題はまったく異なる。つまり、これらのクレームが手段プラス機能クレームと解釈すべきであるか否かということである。機能の説明はあるが構造の特定はされていないので、これらのクレームはこのカテゴリーに含まれる。しかし今回は、これらのクレームで説明されている機能が、「最善の態様」要件を満たすのに十分であるか否かを議論する必要はない。その問題は後日検討される。その時には、Fonar訴訟の教えが非常に関係してくるかもしれない。
[3] クレーム54-69の元となっているクレーム53は、含意によって、特許審査中に手段プラス機能クレームではないと判断された唯一のクレームである。原告意見書pp. 22-23参照。Isogonが最初にこの主張を提起したときは、クレーム53はまだ争点となっていたが、その後取り下げられた。共同合意書p. 1参照。クレーム53に関する特許審査官の判断は、もはや直接的な争点ではないが、クレーム53および71の定式化は非常に類似しているので、Isogonの最初の主張を、類推によってクレーム71に適用するのが公正である。