連邦巡回裁判所のための合衆国控訴裁判所

96-1504, -1514

当事者:MICRO CHEMICAL, INC.,(原告−控訴人)

GREAT PLAINS CHEMICAL CO., INC.,

LEXTRON, INC.,およびROBERT C. HUMMEL(被告-交差控訴人)

ならびに

WILLIAM PRATT(被告)

原告側弁護士:

Timothy B. Dyk,ワシントンD.C.、Jones, Day, Reavis & Pogue法律事務所。書面上の協力者、テキサス州ダラスのJohn P. Pinkerton, Ross Spencer GarssonおよびCarl F. Schwenker、ならびにワシントンD.C.のGregory A. Castanias。書面上の助言者、John Mozola,テキサス州アマリロ、Sprouse, Mozola, Smith & Rowley法律事務所。

被告側弁護士:

Dennis J. Mondolino,ニュヨーク州ニューヨーク、Hopgood, Calimafde, Kalil & Judlowe法律事務所。書面上の協力者、Michael F. HurleyおよびEdward M. Reisner

控訴された判決:合衆国コロラド州中部地方裁判所の判決

裁判官 Weinshienk判事

連邦巡回裁判所のための合衆国控訴裁判所

96-1504, -1514

当事者:MICRO CHEMICAL, INC.,(原告−控訴人)

GREAT PLAINS CHEMICAL CO., INC.,

LEXTRON, INC.,およびROBERT C. HUMMEL(被告−交差控訴人)

ならびに

WILLIAM PRATT(被告)

1997年1月3日決定

裁判官 ARCHER首席裁判官、MAYERおよびLOURIE巡回判事

意見:LOURIE巡回判事

反対意見:MAYER巡回判事

LOURIE巡回判事

MicroChemical Inc.は、合衆国特許第4,733,971号は無効であり被告はそれを侵害しなかったとの、合衆国コロラド州地方裁判所の判決を控訴している。MicroChem. Inc.対Great Plains Chem. Co.判決、900 F.Supp.1386 (D.Colo.1995)。Great Plains Chem. Co., Inc.、Lextron, Inc.および Robert C. Hummel (総称して「Lextron」)は、同特許は不公正な行為によっては取得されなかったとの地方裁判所の判決を控訴している。同上。地方裁判所は、特許は無効であるとの判断において誤りを犯したが、主張されているクレームのうちの幾つかは侵害されておらず、不公正な行為によっては取得されなかったとの判断においては誤りを犯さなかったので、我々は一部維持、一部破棄とする。地方裁判所が検討しなかった、幾つかの主張されているクレームについての判断のため、差し戻す。

背景

第’971号特許は、家畜または家禽の成長を促進し病気を防止するために、飼料に小量の成分(「微成分」)を加えるための方法と装置に関するものである。当該特許の図4は機械 (10) の内部の正面図である。微成分は容器に貯えられ (68, 74)、その下には「計量フレーム」(34) によって支えられた計量ホッパー (122) がある。混合容器 (170) は計量ホッパーの下に位置し、別個のメインフレーム (46) によってサポートされている。この機械は、「計量マイクロ・コンピューター」と、機械に連動したマイクロ・コンピューターによって制御される。特許はコンピューターの構成要素のブロック図と、コンピューターおよび機械の働きを制御するためのソフトウェアを図示したフロー・チャートを開示している。操作員は望ましい種類と量の微成分を機械にプログラムし、コンピューターが機械を制御して、微成分を計量ホッパーで測り、混合タンクの中へ入れ、飼料の上に散布する懸濁液を作るために水などの液体基剤と混合する。

この機械は、計量機構の敏感な装置を、その精度に影響を与えるかもしれない振動やその他の撹乱の効果から遮断するための部分を含んでいる。それには、機械が置かれた床から「重量フレーム」に伝わる振動を減衰させる、遮断用パッド (44) が含まれる。離れている「重量フレーム」(34) が、それ自体のフレーム (34) によってサポートされている混合装置およびその他の部分から、計量装置を分離している。混合装置は混合プロセス中に、撹拌によってかなりの振動を引き起こす。揺れ防止棒 (276) が横方向の動きを減衰させる。機械はパネル (12) で囲まれており、パネルは機械の各部分を埃やその他の汚染物質から遮断し、また計量システムを、精度に影響する風やその他の振動を引き起こす接触などの、外力から遮断する。パネル (12) は特許の図1に示されている。特許の明細書によれば、計量装置の遮断により、微成分の一貫した正確な計量がもたらされる。

遮断の特徴を説明するクレーム1は、次のように書かれている。

1.    液体基剤の懸濁液中の小量だが精確な量の微成分の濃縮飼料添加物を、計測し調合し、家畜または家禽の飼料の前記配給分を消費用として動物に与える直前に、その飼料に加えるための装置であり、以下のものから構成される。

多数のさまざまな微成分の濃縮飼料添加物を個別に貯えるための複数の貯蔵手段。

前記の多数の貯蔵手段から、幾つかの濃縮添加物を個別に調合するための、複数の調合手段。

前記のさまざまな調合濃縮添加物を計量するための計量手段。

正確な計量ができるように、前記の計量手段の計量機能に影響を与える効果を前記の計量手段から遮断するための遮断手段。

調合濃縮添加物の重量を制御するために、前記の計量手段による重量決定に対応して前記の多数の調合手段の動きを個別に制御するための制御手段。

調合濃縮添加物を前記の貯蔵手段から受け取るための受取手段。

基剤と調合濃縮添加物の懸濁液を作るために、前記の受取手段に入れられた調合濃縮添加物を液体基剤と混合するための混合手段。

飼料配給分と混合するために、前記の懸濁液を懸濁液受取場へ供給するための供給手段。

この特許はまた、連続的、および累積的な計量を使った微成分供給法も開示しクレームしている。連続計量では、計量された各微成分を混合タンクに投入するために、計量ホッパーが反転し、それから次の微成分を受け取り計量するために元に戻る。累積計量では、微成分は次々と計量ホッパーの中に投入され、各微成分が計量ホッパーに加えられるたびにコンピューターが目盛りをゼロにリセットする。連続的および累積的計量を含むクレーム47は、次のように書かれている。

47. 微成分飼料添加物を消費するために動物に与える直前に、調合し、家畜飼料の配給分に供給する方法で、以下の段階からなる。

前記の複数の添加物を濃縮状態で個別に貯蔵する。

液体基剤に入れられる前にはあまり混じり合っていない、予め決まった重量の、選択された前記の濃縮添加物を、液体基剤に入れて調合する。

濃縮添加物を液体基剤の中で混合し、希釈し分散し懸濁し、液体基剤と添加物の懸濁液を作る。

飼料配給分に供給されるまで添加物の懸濁と分散を保持しながら、その懸濁液を受取場に送る。

さまざまな濃縮物の分離を保持しながら、共通の計量容器の中で各添加物を連続的かつ累積的に計量することによって、選択された決められた重量の添加物を決定する。

第’971号発明の開発は、発明者 William C. Prattが、先行技術システムに比べて精度が改善した計量供給システムのアイデアを考案した、1984年に始まった。1984年12月、基準日である1985年2月26日の前に、(注1)Prattはカンサス州ヒューゴトンに位置するSunbelt FeedlotのマネージャーLee Isaacに、計量機械の販売を申し出た。Isaacはそのオファーを拒否し、その代わりにLextronが販売する機械を購入した。Prattはその時にオファーしたとされる機械のために計量システムを構築し試験していたが、計量システムと使用する懸濁液または混合システムは作らなかった。彼は混合システムの「おおざっぱな」略図はもっていた。

1985年1月Prattは、計量システムと混合システム双方を含んだプロトタイプを製作した。彼は、このプロトタイプの試験中に幾つかの問題に遭遇した。彼の主たる課題は、混合システムやその他のものが引き起こす振動の悪影響から計量システムを遮断することであった。計量システムは敏感なので、これらの振動の結果、測定が不正確になりがちであった。Prattは1985年2月に他のプロトタイプを製作したが、これも微成分を、一貫して正確に計量はしなかった。2月末、計量システムを適切に遮断するため、彼はそのプロトタイプに別の構成要素を組み入れた。改良された2月のプロトタイプは遮断要素として、分離した「重量フレーム」、ゴムの遮断用パッド、そして縦方向と横方向の安定装置を含んでいた。彼はまた、微成分を液体基剤に混合するため、混合タンクに三段変速のミキサーを付け加え、機械の作動の制御のために二つのRCAコンピューターを使用した。この機械は試験で満足のいく結果をもたらし、基準日の後である1985年2月28日にタルサの銀行家のグループに提示された。

特許が発行されてから 3日後、Microは Lextron, Great Plains Chemical Co., Inc.,および Robert C. Hummel を、特許侵害で訴えた。Microは、Lextronが「累積計量」および「計量/投入」機械として言及されている微成分添加物機械を製作し販売することで、特許を侵害したと告発した。Microはまた、Lextronは、Cactus Feedersが所有する飼育用地に「非混合」機械として言及されているものを提供することで、侵害を誘発したと告発した。Lextronは無効性と非侵害の確認判決を求める反訴を提起した。1993年3月、地方裁判所は損害賠償の問題を分離し、すべての特許関連の争点に関する非陪審審理を行った。

地方裁判所は、Isaacへの1984年12月のオファーが売出し済みという特許無効原因を成立させると判断し、特許で主張されているクレームは第102項 (b) に基づき無効であると判断した。地方裁判所は、第’971号特許のすべてのクレームも第103項に基づき無効であると判断し、この発明は、二つの先行技術の微成分機械の特徴を組み合わせたものに基づく、当該技術の熟練者にとって明らかなものと結論付けた。そして、Lextronはクレーム1、3、9、11、13および45を直接侵害しておらず、クレーム1、3、45、63、74、93および94の侵害を誘発しなかったと結論付けた。また、Prattおよび彼の代理人、James S. Leighは、特許の獲得において、不公正な行為に関わらなかったと判断した。それに基づき地方裁判所は、Microの訴状、および無効性および非侵害の確認判決を求めるLextronの反訴に関して、Lextronに対する判決を登録した。

Microはここに、有効性および侵害に関する地方裁判所の判決に異議を申し立て、本裁判所に控訴する。Lextronは、地方裁判所は不公正な行為が行われなかったと結論付けた点で誤りを犯したと主張して、交差控訴する。

議論

非陪審審理からの控訴に対して、我々は法律上の誤りおよび明確に誤った事実認定に関して、地方裁判所の決定を検討する。Fed.R.Civ.P.52 (a);Interspiro USA, Inc.対Figgie Int’l Inc.判決、18 F.3d 927, 930, 30 USPQ2d1070, 1072 (Fed.Cir.1994) 参照

A.    売出し済みという特許無効原因

Microは、基準日の前には、発明の販売、または具体的なオファーはなかったと主張する。発明はIsaacへのオファーとされるものの時点では、その発明は存在していなかったので、その販売は不可能であったと主張する。Microによれば、12月の日の時点では、Prattはまだ特許性のあるものは何も設計しておらず、したがって公衆は彼の発明を所持することはできなかった。

Lextronは、1984年12月のオファーが、売り出し済みという特許の無効原因となると適切に判断されると答える。Lextronによれば、Prattはすでに三つのプロトタイプを製作しており、オファーの約二週間後にはその発明を実地に移したので、Prattはその時点でIsaacに販売する発明をもっていた。さらに、本裁判所のUMCElecs. Co.対United States判決、 816 F.2d 647, 2 USPQ2d1465 (Fed.Cir.1987)、裁量上訴棄却、484U.S.1025 (1988)に基づけば、事前に実地に移すことは売出し済みという特許無効原因の前提条件ではなく、実地に移す前でもIsaacへのオファーは特許無効原因を構成すると Lextronは主張する。

第102項に基づく売出し済みという特許無効原因の適用は、基礎となる事実問題の争点に基づく法律問題である。KeyStone Retaining Wall Sys., Inc.対Westrock, Inc.判決、997 F.2d1444, 1451, 27 USPQ2d1297, 1303 (Fed.Cir.1993);UMC, 816 F.2d, 657, 2 USPQ2d, 1472参照。発明が第102項 (b)の意味で売出し済みであると判定するには、「売出し済みと主張されるクレームされた発明が作動可能であり、クレームされた完全な発明が、売出された装置に組み込まれていたか、その装置から見て自明であり、販売またはオファーが主として利益のためであり実験目的ではない」ことが要求される。Keystone, 997 F.2d, 1451, 27 USPQ2d, 1303。UMCにおいて我々は、クレームされた発明の実地への移行は、売出し済みという特許無効原因を成立させる前提条件ではないと述べた。UMC, 816 F.2d, 656, 2 USPQ2d, 1471。むしろ、「発明の開発段階や発明の性質を含む、販売またはそのオファーをめぐる状況のすべてが、第102項 (b) の基礎となる方針に鑑みて検討され斟酌されなければならない」。同上、2 USPQ2d, 1471-72 。

我々は、特許の発明は第102項 (b) の意味で基準日前にオファーされなかったという点で、Microに同意する。証拠によれば、Prattの発明は12月のオファーの時点では明らかに完成していなかったという結論が避けられない。オファーとされるものの時点では、Prattは計量システムのプロトタイプを開発し終わっていた。しかし混合システムは略図を作っただけで、計量システムを分離する要素は設計していなかった。したがって発明は完成間近ではなく、その発明が、意図された目的通りに作動するか否か、その時点ではPrattは確信をもっていなかった。1984年12月28日の時点では、「その時点の機械の混合タンクまたは懸濁液システム部分の建設は行われていなかった」とPrattは証言した。その時点でもっていたのは、配置案であったと彼は述べる。Isaacへのオファーとされる時点では、Prattは発明を実地へ移しておらず、発明を実質的に完成させてもいなかった。Prattはオファーとされる時点では発明の完成間近にはおらず、完成した時点で発明が意図された目的のために作動する可能性が大きいことも示していなかったので、彼の1984年12月の「オファー」は、売出し済みという特許無効原因を成立させることはできない。

UMC訴訟の場合、発明は実地に移されていなかったが、我々は売出し済みという特許無効原因に基づき特許を無効と判断した。UMCは我々がMicroの特許の無効性を認めることを要求しているとLextronは主張するが、我々はそれに同意しない。UMCでの発明は、飛行機が何回、予め決められている加速レベルに達したかを感知し決定するための、飛行機内で使用される、航空計数加速度計(「ACA」)であった。それ以前 ACAは、加速のレベルを示す機械的信号を発生させる電気機械的センサーを使用していたが、しばしば機械的振動や圧力の結果、誤った信号を出していた。新しいACAはアナログの変換器を用いて電子的信号を発生させ、機械的な振動の悪影響を除くためにフィルターを通す。UMCは訴訟対象の特許の基準日以前にこの新ACAの明確なオファーをしていた。オファーの時点ではこの新 ACAは実質的に完成していた。裁判所は、「先行技術の装置が、一つを除きクレームされた発明の要素をすべて一体化しており、その一つの部分も入手可能であって、結局クレームされたこの発明が意図された目的のために作動することが、発明者が満足できるレベルまで十分に試されていた」と述べている。UMC, 816 F.2d, 657, 2 USPQ2d, 1472。この発明は実質的に完成しており、高い信頼度で、意図された目的のために作動する理由があった。Seal-Flex, Inc.対Athletic Track and Court Constr.判決、98 F.3d1318, 1322, 40 USPQ2d1450, 1452 (Fed.Cir.1996) 参照

したがってUMCは、実地への移行という技術的要件は満たされていなかったが、完成した際には意図された目的で作動すると予想される十分な理由があるので、実質的に完成した発明の販売、またはその明確なオファーは、法律上の特許取消原因を成立させるのに十分であるという命題を支持している。一方で本裁判所は、「発明者が単に構想だけをもっていたか、その構想の開発に向けて作業をしていた場合、販売に供すことのできる『発明』はまだ存在していないと言うことができる」とも述べている。UMC, 816 F.2d, 657, 2 USPQ2d, 1472。本件での事実は、裁判所が特許取消原因を構成すると判断したその訴訟の実際の事実よりも、UMC判決での意見で説明された特許取消原因を構成しない仮設的事実に、はるかによく適合する。Prattのオファーとされるものに関する争われていない事実は、35 U.S.C. §102 (b) の意味における、売出し済みという特許取消原因を構成せず、構成すると判断した点で地方裁判所は誤りを犯したと我々は結論付ける。

B.    自明性

地方裁判所は、主張されているクレームの発明は、その発明の時点で、その技術において熟練度を持つ者にとって自明であったと結論付けた点で誤りを犯したと、Microは主張する。Microによれば、原裁判所は、そうすべきであるとの教えも示唆もないのに従来技術の構成要素を組み合わせたことによって誤りを犯した。Lextronは、地方裁判所は自明性に関する法律を正しく適用したと答える。

35 U.S.C. §103に基づく自明性の決定は、事実調査を含む法的結論である。Uniroyal, Inc.対Rudkin-Wiley Corp.判決、837 F.2d1044, 1050, 5 USPQ2d1434, 1438 (Fed.Cir.) 裁量上訴棄却、488 U.S. 825 (1988)。地方裁判所は、特許の発明は従来技術の計量機械、および先行技術の容積機械の組合せに基づいており、製作の時点では自明であったと判断した。従来技術の計量機械はSherman Brewsterが設計したもので、「ブルースター機」と呼ばれている。これは微成分を連続的に計量し調合するが、液体基剤を微成分と確実に混合するためのシステムはもっていない。ブルースターの顧客が液体基剤を用いようとする場合、この機械は微成分を水槽の中に投入し、それを流して飼料の入っているトラックに入れる。混合は付随的になされるだけである。関係する従来技術の容積機械は、Lextronが製作した。これは、微成分を部分的に水が入った混合タンクに入れて調合することによって作動する。この機械は、均質な懸濁液を作るために微成分と水基剤を混ぜるため、混合タンクの中にモーターで動くプロペラ・シャフトが入れてあった。

地方裁判所は、この技術に熟練度を持つ者はブルースター機を知っていたはずであり、飼料添加物のより正確な調合を得るためにその機械の特徴と容積機械を組み合せることは自明であったと認定した。原裁判所は、ブルースター機の計量機能と、容積機械の混合機能を組み合わせ、組み合わせの動機は明らかに、微成分のより正確な調合が必要であるとの、この技術に熟練度をもつ者の知識から生じているとした。

しかしMicroは、ブルースター計量機と、容積機械のミキサーを組み合わせるという動機は、後者がブルースター機の鋭敏な計量装置に悪影響を与える振動を生み出すので、存在しなかったと主張する。Microによれば、ブルースター機は振動やその他の動きから計量機構を適切に遮断することができず、したがって不正確に作動していた。Lextronは、ブルースター機を使って飼育用地を営業していたブルースターの顧客の証言で示されたように、同機は正確な計量機構を含んでおり、その懸濁液供給システムに分離したフレームを使えば、Prattの発明が回避した、正確さや遮断の問題は生じないと答える。

我々は、ブルースター計量機とLextronの容積機械から鑑みて、クレームされた発明は自明ではないという点で、Microに同意する。自明性の決定は、従来技術の単なる組み合わせ以上のものが関係する。組み合わせる動機または提案が存在しなければならない。ACS Hosp. Sys., Inc.対Montefiore Hosp.判決、732 F.2d1572, 221USPQ 929, 933 (Fed.Cir.1984)。我々は最近、次のように記した。

かかる提案は明示的に、参照文献からくることもある。たとえば、In re Sernaker, 702 F.2d 989, 994, 217 USPQ1, 5 (Fed.Cir.1983) 参照。ある参照文献、または参照文献における開示が、特定の分野において特別の関心がもたれているまたは重要性があることが知られているという、関係技術に熟練度をもつ者の知識から、かかる提案がくることもある。Ashland Oil, Inc.対Delta Resin & Refractories Inc.判決、776 F.2d281, 297 n.24, 227 USPQ 657, 667 n.24 (Fed.Cir.1985)(当該技術に熟練度を持つ者の知識が、参照文献を組み合わせる「教訓、提案または推論」を提供すると述べている)、裁量上訴棄却、475 U.S.1017 (1986) と比較せよ。また、発明者が解くべき問題の可能な解決策に関係する参照文献を見るようにしむける、問題の性質からくることもある。たとえば、In re Rinehart, 531F.2d1048, 1054, 189 USPQ143, 149 (CCPA1976)(自明性の決定においては解くべき問題を考慮する)参照

Pro-Mold and Tool Co. 対Great Lakes Plastics, Inc.判決、75 F.3d1568, 1573, 37 USPQ2d1626, 1630 (Fed.Cir.1996)。本件では記録には、ブルースター計量機とLextronの容積機械を組み合わせる動機や提案の証拠が含まれていない。実際、当該技術に熟練度を持つ者は、容積機械の混合部分の激しい動きが計量を不正確にすると予想されるので、ブルースター機と容積機械を組み合わせる動機をもたなかっただろう。したがって、従来技術は、ブルースター機の特徴と容積機械の特徴を組み合わせるというアイデアからは外れている。Prattの発明は従来技術の逆を行き、正確な計量と、微成分の正確な供給を首尾よく組み合わせることで問題を解決した。Prattは、混合装置の振動の影響を受ける環境で一貫して正確な計量を達成するための遮断手段を加えることによってのみ、計量と確実な混合の特徴を組み合わせることができた。

計量システムを分離する問題を解決するためにPrattは大きな努力をしたということが、ブルースター機と、容積機械の確実な混合のための部分を組み合わせる提案がなかったことを示唆している。In re Dow Chem. Co., 837 F.2d 469, 473, 5 USPQ2d1529, 1532 (Fed.Cir.1988)(「クレームされた発明に先立つ5、6年間の研究」は、自明性の決定において公正な証拠上の重みを受ける資格があると述べている)参照。Prattによる努力は、当該技術に熟練度を持つ者が、問題の先行技術の機械の組み合わせに成功する合理的な期待を持っていなかったということを示す方向を向いている。同上、5 USPQ2d, 1531(「自明性の決定の一貫した基準は、先行技術が当該技術に通常の熟練度を持つ者に、このプロセスが実施されるべきであり、先行技術に鑑みて成功する妥当な可能性があると示唆しているか否かである」)参照。解決に導いたと後で主張される、従来技術に対して長い間感じられていた要求の存在は、かかる従来技術の組み合わせは自明であるとの命題を否定する方向を向いている。したがって我々は、問題のクレームの主題が自明であったと判断した点で地方裁判所は誤りを犯したと結論付ける。

C.    直接侵害

Microは、クレームの遮断手段の解釈において地方裁判所は誤りを犯したと主張する。Lextronは、地方裁判所は告発された装置は遮断手段に等価な構造を含んでいなかったと適切に認定したと答える。特にLextronは、告発された機械は、ゴムの基板ではなく堅いメインフレームを使い、分離した「重量フレーム」ではなくシリコンの密封剤を使い、揺れ防止棒ではなく計量ホッパーの圧縮取り付けを使うことによって、遮断を達成したと述べる。

特許のクレームが侵害されたか否かを判断するには、二段階の分析が要求される。「第一に、クレームが、その範囲と意味を決定するために適切に解釈されなければならない。第二に、その適切に解釈されたクレームが、告発された装置または工程と比較されなければならない。」Carroll Touch Inc.対Electro Mechanical Sys., Inc.判決、15 F.3d1573, 1576, 27 USPQ2d1836, 1839 (Fed.Cir.1993)。クレームの解釈は法律問題であり、我々は改めて検討する。Markman 対Westview Instruments, Inc.判決、52 F.3d 967, 979, 34USPQ2d1321, 1329 (Fed.Cir.1995)(大法廷)、前記、116 S.Ct.1384, 38 USPQ2d1461 (1996)。告発された装置への適切に解釈されたクレームの適用は事実問題であり、我々は明確な誤謬に関して検討する。General Am. Transp. Corp. 対Cryo-Trans, Inc.判決、93F.3d 766, 769, 39 USPQ2d1801, 1803 (Fed.Cir.1996)。

地方裁判所は、特許は厳密には侵害されなかったと判断した。特に、告発された機械は、主張されているクレーム1、3、9、11、13および45が要求する遮断手段を含んでいなかったと認定した。原裁判所は、主張されている残りのクレームが侵害されたかは検討しなかった。

我々は、告発された装置が、主張されているクレーム1、3、9、11、13および45の遮断手段に対応する構造を利用しなかったという点で地方裁判所に同意する。手段項目を含むクレームの厳密な侵害が成立するには、告発された装置が、手段項目で特定された機能と同一の機能を、明細書に開示されたものと同一のまたは等価な構造によって果たすことが必要である。Valmont Indus., Inc.対Reinke Mfg. Co.判決、983F.2d1039, 1042, 25 USPQ2d1451, 1454 (Fed.Cir.1993)。この特許は、計量システムの遮断を達成するために、主として三つの構造を開示している。ゴムの基板、メインフレームから分離した「重量フレーム」、および横方向の運動を減衰させる計量ホッパーに付けられた揺れ防止棒である。これと比較して、告発された装置は、ゴムの基板ではなく堅いメインフレームを使い、分離した「重量フレーム」ではなくシリコンの密封剤を使い、揺れ防止棒ではなく計量ホッパーの圧縮取り付けを使うことによって、その計量システムを遮断している。地方裁判所は、問題の構造は大きく異なっている、つまり構造的に等価ではないと認定したので、我々は、その事実認定は明確に誤ってはいないと結論付ける。

Microは、この特許は、告発された装置に存在する遮断を達成するための他の構造を開示したと主張する。特にMicroは、保護パネル、ダクトおよびゴム製遮断用パッドを特許は開示し、告発された装置はそれらを含んでいたと主張する。我々は、これらの構造がクレームを満たすという点では同意しない。第一に、告発された装置の保護パネルが遮断機能を果たしていたかは記録からは明らかでない。Lextronの証人は、サイド・パネルを取り除いた告発された装置を見たとき、機械は影響を受けたようには見えず、空気の動きはホッパーに影響しなかったと証言した。遮断は、明らかにサイド・パネルの機能ではなかった。したがって、告発された装置の保護パネルがクレームに記された機能を果たしたとは、確認されなかった。同様に、告発された装置がダクトおよびゴム製遮断用パッドを含んでいたことを確認するとしてMicroが引用した証言は、その要素の機能を特定しておらず、したがって問題の機能を確認していない。同上、25 USPQ2d, 1454(手段限定を告発された装置から読み取るには、それがクレームに記されているものと同一の機能を果たしていなければならない)参照

Microはまた、地方裁判所は侵害分析において、法律上の誤りを犯したと主張する。そして地方裁判所の、「Lextronの計量機械にある告発された構造は、一つを除きすべての、Lextronの従来技術の容積機械に含まれていた」という表明に言及する。発明はしばしば従来技術の要素の組み合わせであり、したがって、クレームの特定の要素が従来技術と告発された装置双方に存在しているという事実は、要素の組み合わせからなるクレームの侵害を否定しない。しかし、Microが主張するように地方裁判所の論理が誤っていたとしても、我々は侵害に関する地方裁判所の認定は明確に誤りではないと結論付けたので、侵害の判定についての我々の検討結果を変更しない。したがって、地方裁判所のこの表明は、Microが主張するように解釈されたとしても、無害な誤りである。Fed.R.Civ.P.61参照

Microは、遮断手段の限定を満足するには、主たる三つの開示された構造すべてに対して等価物が必要だとした点で、地方裁判所は誤りを犯したと主張する。Microによれば、開示された構造は選択肢であり、したがって、そのいずれかの等価物があれば、クレームの限定を満たすのに十分である。地方裁判所は三つの告発された構造をすべて分析し、そのいずれも、特許で開示されたものと等価ではないと認定した。特に地方裁判所は、「これらの構造はいずれも、組み合わせとしても単独としても、第112項 (6) の下で『等価』とはみなされない」(強調追加)と述べている。そして原裁判所は、告発された機械は開示された構造のいずれにも等価なものを含まないと認定した。侵害の不在についてのこの結論は、明確に誤ってはいない。

Microはまた、クレーム47、48、49、63、65、67、68、74、79、89、90、91、92、93および94からなる、残りの主張されたクレームに関する侵害の認定をしなかったという点で、裁判所は誤りを犯したと主張する。事実認定と法律問題についての結論なしでは、我々はこれらのクレームの侵害問題を検討することはできない。Fed.R.Civ.P.52 (a)(「陪審なしで事実に関して審理されたすべての訴訟では、・・・裁判所は特に事実を認定し、それに関する法律問題についての結論を別個に述べるものとする・・・」)参照(強調追加)。したがって我々は、残りの主張されたクレームの侵害についての判断のため、差し戻さなければならない。特にその幾つかは、遮断手段ではなく遮断段階を含む方法クレームである(35 U.S.C. §112,第6パラグラフ参照)。他の主張されたクレームは、連続的かつ累積的計量機能であり、遮断のための手段も段階も含まない。差戻しにおいては、地方裁判所は、これら残りの主張されたクレームが侵害されたか判断すべきである。

D.    侵害の誘発

Microは、地方裁判所は、主張されたクレームの侵害を誘発しなかったと認定した点で、明確に誤ったと主張する。特に、糖蜜の使用が問題のクレームの液体基剤という限定を満たしていないのでCactus Feeders機はクレームを侵害しなかったとの地方裁判所の認定は、誤りであると主張する。その主張の裏付けとして、第’971号特許で引用された合衆国特許第3,437,075号(「Hawes特許」)は、糖蜜を液体基剤として特定しているとMicroは述べる。Lextronは、糖蜜は告発された機械で使用された液体基剤ではないので、直接の侵害も侵害の誘発もないと認定した地方裁判所は正しいと答える。

直接侵害がなければ侵害の誘発もありえない。Met-Coil Sys.Corp.対Korners Unlimited, Inc.判決、803F.2d 684, 231USPQ 474, 476 (Fed.Cir.1986)。地方裁判所は、糖蜜は問題のクレームの液体基剤の限定を満たしていないとの認定において、明確な誤りは犯していない。記録は、糖蜜が液体微成分として使用された場合は液体基剤とはならないという結論を裏付けている。該当する従来技術の一部であるHawes特許は、液体基剤としてではなく液体微成分として、糖蜜に言及している。したがって、地方裁判所は、Cactus Feeder機が、クレームで要求されているように微成分を液体基剤と混合したのではなく、微成分を液体微成分と組み合わせたと認定した点で、明らかな誤りを犯さなかった。

E.    不公正な行為

交差控訴においてLextronは、PrattとLeighは三つの形で不公正な行為に関わったと主張する。Lextronによれば、彼らは、ブルースター機の状態に関して審査官を故意に欺き、合衆国特許商標局(「PTO」)に、Lextronの容積機械の従来技術についての彼らの知識を意図的に伝えず、微成分の供給における正確さの必要性を意図的かつ偽って説明した。Microは、審査官を欺く意図の証拠はなく、容積機械は重複する従来技術であって重要ではないと答える。

不公正な行為の判断は、地方裁判所の裁量に委ねられている。したがって我々は、裁量権の乱用に関して、原裁判所の判決を検討する。Kingsdown Med.Consultants, Ltd.対Hollister Inc.判決、863, F.2d 867, 876, 9 USPQ2d1384, 1392 (Fed.Cir.1988) 裁量上訴棄却、490 U.S.1067 (1989)。地方裁判所の裁量的決定を覆すには、「控訴人は、その決定が明確に誤った事実認定または、準拠法の適用もしくは解釈の誤りに基づいていることを立証するか、地方裁判所側の判断の明確な誤りを証明しなければならない」。Molins PLC対Textron, Inc.判決、48 F.3d1172, 1178, 33USPQ2d1823, 1827 (Fed.Cir.1995)。

不公正な行為とは、「欺く意図と組み合わさった、重大な事実の積極的な不実表示、重大な情報の秘匿、または誤った重大な情報の提出からなる」。同上、33USPQ2d, 1826 。不公正な行為を告発する者は、重大性と意図という弁別要素を、明確で説得力のある証拠によって証明しなければならない。同上、33USPQ2d, 1826-27。地方裁判所は、不公正な行為が起こったとの結論の根拠があるか否かを判断するのに、すべての状況を鑑みて、その重大性と意図という弁別要素を検討しなければならない。同上

地方裁判所は、Microの代表は、第’971号特許の手続きにおいて不公正な行為に関わらなかったと判断した。原裁判所は、LeighとPrattはブルースター機の特徴についての表明でPTOを欺く意図はなく、またLextronの容積機械は重複する先行技術であって重大ではなく、したがってLeighとPrattはそれに言及しなかったことでPTOを欺く意図はなかったと判断した。原裁判所は、微成分の供給の正確さの必要性についての表明に関しては、特別の認定はしなかった。不公正な行為は起こらなかったと判断したにも関わらず、地方裁判所は、おそらくこの特許は無効であるとの判断に基づいて、実施不可能であると判断した。

Lextronは、Microの代表はブルースター計量機の品質に関して故意にPTOを欺いたと主張する。Lextronによれば、ブルースター機に関する第’971号特許の主観的な表明は、誤解を招くように意図的に書かれた。問題の表明は以下の通りである。

少なくとも一つの、計量タイプの濃縮添加物供給システムが試行されたが、成功しなかったと思われる。かかるシステムは各添加物を個別かつ連続的に計量し調合したと思われる。かかるシステムは飼育用地環境で濃縮添加物を処理するには遅すぎ、かつ不正確なので成功しなかったと思われる。

第’971号特許第2欄第12〜18行(発明の背景)。Lextronは、Microはその表明を裏付ける事実を証明する義務があったがしなかったと主張する。Lextronはまた、LeighがPTOに提出した情報開示説明書の中の一つの表明を引用する。ブルースター機を説明する中で、「出願者による検査によれば、かかる機械は・・すべて、計量中に計量部分を外部の影響から遮断する手段を欠いているようであり、したがって非常に不正確であった」と述べられている。

我々は、手続き経過を全体として検討するとPTOを欺く意図の証拠はないという地方裁判所に同意する。特許の前記の部分でPrattは、事実の表示というよりは彼の個人的信念を述べている。さらに他の情報開示説明書でLeighは、個人的な検査に基づくブルースター機の詳しい説明を提示している。Leighはブルースター機の遮断手段とされるものを特定し、それによって適切な遮断ができていない理由を提示した。特に、彼はブルースター機の説明において、「ロード・セル・フレームが、短く堅いゴムの帯によって、装置のメインフレームに接続されている」と述べ、次のような議論をしている。

(5) ロード・セル・フレームを装置のメインフレームに装着するゴムの短い帯は、堅過ぎて、装置の計量部分のメインフレームからの遮断にほとんどなっていない。

(6) 計量ホッパー上の油圧シリンダーを事実上メインフレームに接続している、金属製の油圧液体導管も、遮断の欠如と、計量の不正確さのappararent[原文通り]発生源として明らかに寄与している。

したがって、記録は特許手続き中に、ブルースター機の遮断要素とされるものの適切な開示と、それらが適切な遮断をしていない理由に関する適切な主張があったことを立証している。

Lextronはまた、PrattとLeighが、彼らがLextronの容積機械についてもつ知識をPTOに意図的に開示しなかったが、それは重要な従来技術であったと主張する。Lextronによれば、彼らはその機械に関する以前の訴訟に関係していたのだから、その機械に気付いていた。Microは、その機械は重複する従来技術であり、したがって重要でなかったと答える。

地方裁判所は、Lextronの容積機械は重複しておりしたがって重要でないと判定した点で明確に誤りはしなかった。地方裁判所は、Lextronの機械はHawes特許と合衆国特許第3,720,185号(「Aldous特許」)に重複しており、そのどちらもPTOに開示されたと認定した。地方裁判所は、Aldous特許は機械的ミキサーを開示したと認定した。また、そのクレームの該当する限定は、「流れを誘発する手段」、「混合」および「確実な混合」を含んでおり、Hawes特許はこれらの要素を開示していたとも認定した。Lextronは、それらの結論が明確に誤っていたとは立証しなかった。したがってLextronの容積機械の該当する混合部分は重複しており重要ではない。

Lextronはさらに、PrattとLeighは、正確さの必要性を意図的にかつ偽って説明したと主張する。Lextronは、政府の規定は35パーセントの誤差を認めていることを考えると、彼らはずれはしばしば0.5グラム以内でなければならないと偽って述べていると主張する。Microは、PrattとLeighは、たとえば、第’971号特許の出願経過で引用されている、微成分の測定における正確さの必要性を説明した業界の文献を考えると、微成分の調合における正確さの必要性を偽って説明しはしなかったと答える。

記録は、正確さの必要性を説明する業界の文献の証拠を含んでいる。さらに、従来技術のHawes特許は、精度が改善されれば、過剰投与の危険を犯さずに非常に有毒な添加物を使用できるようになると述べていた。PrattとLeighは、当該業界内での正確さの必要性に対する信念を立証するものとして、その文献に依拠することは合理的であったので、PTOを欺く意図は否定される。したがって、第’971号特許の取得において不公正な行為に関わらなかったと判断した点で、地方裁判所はその裁量権を乱用しなかった。

我々は両当事者のその他の主張を検討し、それらは本控訴の解決にとって説得力がないか不必要であると結論付ける。

結論

地方裁判所は、第’971号特許が無効であると判断した点で誤りを犯したが、Lextronは主張されたクレームのうちのあるものは侵害しておらず、この特許は不公正な行為によって取得されたものではないと判断した点では誤りを犯さなかった。したがって我々は、主張されたクレームが第102項 (b) に基づき無効であるとの地方裁判所の判決を破棄し、その他の点ではその判決を維持する。地方裁判所の意見によって処理されなかった、主張されたクレームの侵害についての判断、および必要ならば損害賠償に関しては、我々は差し戻す。

費用

各当事者が自身の費用を負担するものとする。

一部維持、一部破棄、そして差戻し


連邦巡回裁判所のための合衆国控訴裁判所

96-1504, -1514

当事者:MICRO CHEMICAL, INC.,(原告−控訴人)

GREAT PLAINS CHEMICAL CO., INC.,

LEXTRON, INC.,およびROBERT C. HUMMEL(被告−交差控訴人)

ならびに

WILLIAM PRATT(被告)

−−−−

反対意見:MAYER巡回判事

売出し済みという特許無効原因に関する地方裁判所の事実認定へ適切な敬意を払えば、MicroChemical, Inc.の特許は無効であるとの結論が強いられるので、私は反対意見を述べる。

発明者は、自分の発明を「米国での特許の出願日以前に一年以上、この国で公然使用または販売に」供した場合には、特許に対する権利を失う。35 U.S.C. §102 (b) (1994)。この項に基づき特許を無効とするには、売出し済みであることによる特許無効を主張する当事者は、「問題の特許の出願以前に一年以上、明確な販売またはオファーがあったこと、そして販売またはオファーの対象物が、クレームされている発明を完全に予想していたか、あるいは先行技術に加えることによってクレームされている発明を自明にするものであった」ことの明確かつ説得力のある証拠を示さなければならない。UMC Elec. Co.対United States判決、816 F.2d 647, 656, 2USPQ2d1465, 1472 (Fed.Cir.1987)。特許無効を主張する当事者が、オファーの存在、および、オファーされた装置もしくはその解説に鑑みてオファーされた装置と特許が付与された装置の同一性か、クレームされている発明の自明性かのいずれかを証明した場合、特許の所有者は、「その立証に対抗する証拠を提出する」ことによって自分の特許の有効性を守ることができる。U.S.Envtl.Prods., Inc.対Westall判決、911 F.2d 713, 716, 15 USPQ2d1898, 1901 (Fed.Cir.1990)。

製品が第102項 (b) に基づく販売に供されていたという判断は、基礎となる事実に基づく法律問題である。KeyStone Retaining Wall Sys. Inc.対Westrock, Inc.判決、997 F.2d1444, 1451, 27 USPQ2d1297, 1303 (Fed.Cir.1993)。地方裁判所の第102項 (b) に基づく特許無効の最終的判断を改めて検討する際に、我々は明確な誤りの有無に関連して、この結論を裏付ける補助的事実を検討する。U.S.Envtl.Prods., 911 F.2d at 715, 15 USPQ2d AT1900。

第102項 (b) に関する地方裁判所の法律および事実についての決定を検討する際に、本裁判所は、その二つの別個の調査、つまり基準日から一年間以上前のオファーの存在と、先行技術に加えることによってクレームされている発明を完全に予想させるか、もしくは自明にする対象物の販売の存在の区別を、曖昧にすることを避けなければならない。販売の対象物が、クレームされている発明を予想させたり自明にしたりしないという明確かつ確固とした信念は、確固としたオファーを不明瞭で曖昧なものにはしない。

地方裁判所は、一部、以下の事実に基づき、William PrattがLee Isaacに明確なオファーをしたとの、裏付けのある認定を行った。

Sunbelt Feedlotの共同所有者Lee Isaac氏は、彼がPratt氏と・・1984年10月から1985年1月初旬までの間に数回の会合をもったことを確認した。その間Pratt氏は、計量機械をSunbelt Feedlotに設置することをオファーした。Pratt氏が彼に、「これ[ MCI計量機]は容積機械よりも正確である」と述べたと、Isaacは証言した。Isaac氏はまた、この機械は・・注文次第、飼育用地に設置できるというのが彼の理解であったとも証言した。

Pratt氏は、彼の弁護士が、特許が付与された彼の発明の最初の公然使用またはオファーがいつ行われたのかを、特許局に伝える必要があることを説明した後、これら[もはや存在していない販売]のファイルを再検討し、これらのメモ[「特許出願日が必要」と題されている。そのうちの一つは、「12/26/84 - MWS機、直接オファー、6D e 6L −日付は約束せず、MWS 最終版ではない」と記されている]を作成したと証言した。

これらの言葉の素直な意味は、本訴訟に利害をもたない第三者証人の宣誓付き証言録取書によって確認されており、本裁判所は、Pratt氏が書いた言葉のその素直な意味と、これらの言葉の意味についての彼の説明とされるものを、調和させることができない。

この文書の内容の意味についてのPratt氏の説明の信頼性を判断する際に、本裁判所は、この文書は彼の特許出願が提出される前に彼自身が利用するためにPratt氏が作成した、純粋に事実の叙述を含んでおり、Pratt氏の弁護士には送られなかったが、証拠開示手続き中には弁護士職務活動の成果の法理に基づき隠され、原告の秘匿文書リストに誤って記載されたことに留意する。

地方裁判所が記したように、PrattのIsaacへのオファー中の価格や支払い条件についての協議の欠如は、通常はオファーがなされなかったことを示唆するが、この業界での標準的慣行が、両当事者の主たる問題である微成分添加物の購入を奨励するためにこれらの機械を無料で飼育用地に提供することであったので、本件では有益ではない。Prattが彼の装置を、彼の容積機械よりも正確な計量機械であると言う以上にIsaacに説明しなかったという事実、そしてIsaacがこの発明がどのように作動するのか理解していなかったという事実も、同様に有益ではない。本件において第102項 (b) の適切な分析は、装置あるいはその機能の詳細についての購入者の知識に焦点は当てない。たとえば、RCA Corp.対Data Gen. Corp.判決、887 F.2d1056, 106012USPQ2d1449, 1452 (Fed.Cir.1989)(「詳細が開示されていなくても」オファーまたは販売は法律上の特許無効原因となりうる)参照King Instrument Corp.対Otari Corp.判決、767 F.2d 853, 860, 226 USPQ 402, 407 (Fed.Cir.1985)(「基準日前に未確定の販売契約が締結された(またはオファーがなされた)ときは、購入者は、オファーに含まれている発明がどのように機能するか知っていなければならない。・・しかし売出し済みという特許無効原因の基礎となる方針は、購入者が発明を知っていたか否かではなく、発明者がその発明を利用しようとする試みに集中する。したがって、購入者は売出されている発明についての実際の知識をもっている必要はない」)。購入者が装置の作動について一般的に理解している場合は、詳しい知識は一層、決定力を失う。本裁判所がFerag, 45 F.2d, 1568, 33 USPQ2d, 1516で述べたように、「我々は、これが客観基準であり、その心底には、発明を市販化しようとする発明者の意図があることを強調する・・。特許無効の基準は、特許権者の意図ではなく何がオファーされたかである」。

第一審での紛争の焦点、そして地方裁判所による第102節 (b) の分析についての我々の検討にとって残されている唯一の適切な質問は、1984年12月にIsaacにオファーされた装置が、特許が付与された発明を組み込んでいたか、あるいはそれを自明なものにしていたかである。事実認定およびこの疑問に関する法律上の結論についての我々の検討は、同節の基礎となる政策の考慮によって推し進められる。King Instrument, 767 F.2d, 860, 226 USPQ, 407参照。その中でも最も重要なのは、発明者がその発明の商業上の価値を、法的に認められる以上に利用することを防止することである。Envirotech Corp.対Westech Eng’g Inc.判決、904 F.2d1571, 1574, 15 USPQ2d1230, 1232 (Fed.Cir.1990)参照。このことを達成するため、発明者は、その特許出願を、発明の市販化を試みた後一年以内に提出するという厳格な要求が課せられる。したがって我々は、発明者は市販化後、発明に改良を加え続けることによって、売出し済みという特許無効原因を避けられないと判断した。たとえば、Seal-Flex, Inc.対Athletic Track and Court Constr.判決、98 F.3d1318, 1324, 40 USPQ2d1450, 1454-55 (Fed.Cir.1996) 参照

この政策の枠組みの範囲内で、多くの要因が、売出し済みという特許無効の決定に影響を与えうる。しかしいずれの要因も支配的ではないので、最終的な決定は、状況全体、つまり取引を取りまくすべての事実に依存しており、どの件も互いに類似していない。Envirotech, 904 F.2d, 1574, 15 USPQ2d, 1232。個々の状況では、技術の熟練度や状態、発明の性質、後でクレームされた発明のどの構成要素がオファーされたかあるいは先行技術にオファーされた要素を加えることによって何が暗黙に示唆されたかを含むオファーされた時点での開発段階、そして、市販化だとされる時期の発明者の意図についての事実の決定を要求される。我々は、証拠全体がある結果を支持しているとの第一審裁判所の最終的な結論を破棄するかもしれないが、事実認定自体は、誤りが犯されたとの明確かつ確実な確信がなければ破棄することはできない。Anderson対City of Bessemer City判決、470 U.S. 564, 573 (1985)。

売出し済みという特許無効原因の問題の第二の要素に関する、地方裁判所の事実認定は、次の通りである。

[Pratt]は1984年12月にメモと図面を作って、計量ホッパー上での衝撃吸収棒と安定器の使用、振動の伝達を防止するためのサブフレームの柔軟性をもたせた装着、そして空気の流れとホッパーの振動が計量の正確さに影響するのを防止するための機械全体のパネルでの囲みを示した。Prattはまた、彼の混合タンクと、懸濁液の供給システムの製作を12月に始めた。

1月12日のプロトタイプは、特許の「混合」クレームの対象とされた、材料混合と懸濁液供給のシステムのすべての構成要素を含んでいた。Pratt氏は1月12日の機械も材料を累積的に計量したと証言しており、1月12日の機械が「累積的」計量クレームに開示されたすべての構成要素を含んでいたことは明らかである。さらに1月12日の機械は幾つかの遮断手段を含んでおり、Pratt氏のメモは、彼がすでにパネルや安定棒などの他の遮断手段を含めることを計画していたことを示唆している。本裁判所は、Pratt氏がSunbelt Feedlotに彼の計量機械をオファーした時点で、彼はすでに一つのプロトタイプを製作しており、1月12日のプロトタイプの製作を開始していたと認定する。

証拠は第一審および控訴審で議論されたが、これらの事実認定は明確には誤っておらず、本裁判所も誤っているとは認定しなかった。

争われなかった事実ばかりでなく、これらの事実にも基づいて、地方裁判所は、状況全体は、第102項 (b) の意味の範囲内で、売出し済みという特許無効原因の存在を証明しているとの法的結論を下した。地方裁判所はまた、Microは被告の立証に対抗しなかったと判断した。これらの事実は、1984年12月26日にオファーされた装置が、二週間ほど後になされた実地への移行や、3月に設置された発明の最終版にのレベルには達していないものであったことを示唆しているが、本件、および発明者が特許期限を延長することを防止するという、基礎となる特別に重要な政策は、我々は特許を無効とするオファーが存在したと確認すべきであると要求している。市販化の試み以降に行われた、発明を改善する要素の追加は、地方裁判所の別個の事実認定を覆さない。Prattは1984年12月にIsaacにオファーすることによって、装置を市販化しようとし、そのオファーされた装置は、第’971号特許にクレームされているすべての構成要素、あるいは、オファーされた要素と既存の遮断手段など先行技術とを組合せるための、残りの要素を自明なものとするのに必要な示唆を含んでいた。

控訴審におけるMicroの主張は、特許が与えられた発明の幾つかの特徴は、1984年12月にIsaacがオファーした装置に完全に組み入られておらず、またその装置に鑑みても自明ではなかったので、売出し済みという特許無効の判断は破棄されるべきだという要請である。*特にMicroは、Prattは彼の発明を完成させても、実質的に完成させても、あるいは完成に近付けてもおらず、発明がその意図した目的のために作動する「可能性が高い」という確信ももっておらず、Isaacへのオファーの時点で発明は市販可能でもなかったと主張する。Microは第102節 (b) に関する本裁判所の棄却をサポートする、Prattの装置の開発プロセスの証拠および彼の審理での証言を提示し、特許のクレームと、オファーの時点でPrattが存在したと主張する装置を比較するよう要請する。

Microの証拠と主張は地方裁判所に提示され、二週間以上の審理によって検討され棄却された。地方裁判所は、本裁判所がほとんど再検討不可能な信用性に関する決定をしたのである。さらに、自分の主観的意図についてのPrattの証言は、役立たない。たとえば、TP Lab.対Professional Positioners, Inc.判決、724 F.2d 965, 972, 220 USPQ 577, 583 (Fed.Cir.1984)(実験の客観的徴候を考慮する際には、「発明者による主観的意図の表明は・・特に訴訟の提起後では一般に価値が小さい」)参照。地方裁判所は、PrattのIsaacへのオファーは、彼の第’971号特許の大部分の要素を先行技術に加えたものであり、この追加は、特許に見られるすべての追加要素を自明なものとしていたと認定した。私はここに誤りを見ない。我々は、発明者の秘密で主観的で自分の利害に関係する信念を使って、第102節 (b) の決定を破棄することは差し控えるべきである。

脚注

1     第’971号特許の出願日は1986年2月26日であり、したがって35 U.S.C. §102 (b) の目的においては基準日は1985年2月26日である。

2     Great Plains Chemical Co., Inc.は、Lextronの前身である。Robert C. HummelはLextronの会長である。

3     Microはクレーム1、3、9、11、13、45、47、48、49、63、65、67、68、74、79、89、90、91、92、93および94の侵害を主張した。

4     LextronはMicroおよびその会長Pratt双方に対して反訴した。

5     「人は、・・発明が・・合衆国での特許出願日までに一年以上、合衆国で販売されていなければ、特許を得る資格がある」35 U.S.C. §102 (b) (1994)。

* Microは地方裁判所の注意を「1985年1月12日のプロトタイプに完全に組み込まれていなかったか、それに鑑みても自明にもなっていなかったクレームの構成要素に」向けなかったと、地方裁判所は述べた。該当する調査は、Isaacに何がオファーされたかであり、1985年1月のプロトタイプがクレームされた発明と実質的に同一であったかではない。しかしこの誤りは無害である。

Great Plains Chemical Co., Inc.は、Lextronの前身である。Robert C. HummelはLextronの会長である。Microはクレーム1、3、9、11、13、45、47、48、49、63、65、67、68、74、79、89、90、91、92、93および94の侵害を主張した。LextronはMicroおよびその会長Pratt双方に対して反訴した。「人は、・・発明が・・合衆国での特許出願日までに一年以上、合衆国で販売されていなければ、特許を得る資格がある」35 U.S.C. §102 (b) (1994)。*Microは地方裁判所の注意を「1985年1月12日のプロトタイプに完全に組み込まれていなかったか、それに鑑みても自明にもなっていなかったクレームの構成要素に」向けなかったと、地方裁判所は述べた。該当する調査は、Isaacに何がオファーされたかであり、1985年1月のプロトタイプがクレームされた発明と実質的に同一であったかではない。しかしこの誤りは無害である。42