O.I. CORPORATION(原告−控訴人)

TEKMAR COMPANY INCORPORATED(被告−被控訴人)

96-1427

連邦巡回区控訴裁判所

115 F. 3d 1576; 1997 U.S. App. LEXIS 11951; 42 U.S.P.Q.2D (BNA) 1777

1997年5月22日決定

事後の経過:部分的な再弁論許可。大法廷での再弁論の提案却下。1997年7月17日。報告1997 U.S. App. LEXIS 22282

事前の経過:[**1] テキサス南部地区連邦地方裁判所、Kent判事から控訴

決定:上訴棄却、原判決維持

原告側弁護士:Michael O. Sutton−テキサス州ヒューストン、Fish & Richardson P.C.法律事務所所属。書面上の協力者、Albert B. Deaver, Jr.。その他の書面上の協力者、Robert E. Hillman−マサチューセッツ州ボストン、および、Richard J. Anderson−ミネソタ州ミネアポリス。

被告側弁護士:Jesse J. Jenner−ニューヨーク州ニューヨーク、Fish & Neave法律事務所所属。書面上の協力者、W. Edward Bailey, William J. McCabe,およびPablo D. Hendler。

裁判官:RICH, MAYERおよびLOURIEの各巡回判事

意見執筆:LOURIE巡回判事。

意見:[*1577] LOURIE巡回判事

 O.I.Corporationは、テキサス南部地区連邦裁判所の、Tekmar Company Inc.は合衆国特許第5,358,557号と第5,470,380号を侵害しなかったとのサマリジャッジメントを控訴した。O.I.Corp.対Tekmar Co.判決、No.95-CV-113(S.D.Tex. 1996年6月17日)。重大な事実についての真の争点がなく、Tekmarは特許を侵害しなかったとの法律問題としての判決を受ける権利があると結論づけたことにおいて、連邦地方裁判所は誤りを犯さなかったので、我々は原判決を維持する。

[*1578] 背景

 OIは第'557号特許と第'380号特許を所有しており、第'380号特許 [**2] は第'557号特許の一部である。第'380号特許と第'557号特許はそれぞれ、ガス・クロマトグラフで分析するためにサンプルから水蒸気を除去するための装置と方法に関係している。装置においては、特許の図7に示されているように、不活性ガス流が、散布容器 (13) 内に含まれるサンプルを通って泡立つ。ガス流は、サンプルを通過する間に汚濁物質と水蒸気双方を除去する。アナライト・スラッグまたはストリームと呼ばれる、ガス、汚濁物質および水の流れは、散布容器から出て、水管理装置 (10) 中の温度制御通路を通って、トラップ (11) に流れる。トラップ (11) は熱せられ、ガス流はその中を、濃縮された汚染物を脱着しながら逆方向に流れる。それからストリームは、低い第二の温度の温度制御通路を戻り、汚濁物質の測定のためにガス・クロマトグラフ (12) へ流れる。

 下記の特許の図3は、通路 (31) の実施例を示す水管理装置 (10) の側面図である。通路 (31) は本体 (20) の中に含まれ、第一の部分 (34) が第二の部分 (35) と直角になっている。この実施例においては [**3] 通路は内部をぬって通っており、アナライト・スラッグの渦を作り出して水蒸気の除去を助けている。[*1579]

 連邦地方裁判所は、第'380号特許のクレーム17と第'557号特許のクレーム9を両特許の主張されているクレームの代表(注1)として扱った。これらのクレームは次のような記載になっている。

17. 以下のものを備えた、散布容器、トラップおよび分析装置の間を通過するアナライト・スラッグから水蒸気を除去する装置。

(a)   アナライト・スラッグが散布容器からトラップへと通過する際に、周囲よりも高い第一の温度に熱せられた通路に沿ってアナライト・スラッグを通すための第一の手段。および、

(b)   アナライト・スラッグがトラップから分析装置へと通過する際に、前記の第一の温度よりも低いが周囲よりは低くない第二の温度に空冷された通路に沿ってアナライト・スラッグを通すための第二の手段。

9. 以下のステップからなる、散布容器、トラップおよびガス・クロマトグラフの間を通過するアナライト・スラッグから水蒸気を除去する方法。

(a)   アナライト・スラッグが散布容器からトラップへと通過する際に、周囲よりも高い第一の温度に熱せられた通路に沿って通すステップ。および、

(b)   アナライト・スラッグがトラップからガス・クロマトグラフへと通過する際に、前記の第一の温度よりも低いが周囲よりは低くない第二の温度に空冷された通路に沿って通す [**4] ステップ。

注1    OIは必ずしも、クレーム17が代表であることに同意していないが、我々による本控訴の処理の観点からは、この問題は実益を欠く。

 Tekmarは同様な装置を販売しており、OIはTekmarを訴え、Tekmar 3000(注2)「洗浄とトラップ」装置は、特許の装置と方法のクレームを侵害したと告発した。Tekmarは [*1580] 非侵害のサマリジャッジメントを求め、連邦地方裁判所はその申し立てを認めた。裁判所は第112条P6に基づき、特に「通路」という言葉の意味に焦点を当てて方法と装置のクレームを解釈した。そして、クレームは、明細書の文書説明の部分で開示されたタイプの通路、およびその等価物に限定され、Tekmarの装置の通路は含まないと結論付けた。裁判所は、[**5] 「特許が与えられた『通路』は、それが言及する構造群から、特に滑らかでなく円筒状でない[原文は『滑らかで円筒状の』]装置を除外しているが、一方、告発された装置の対応部分は、構造的に滑らかで円筒状である」と述べた。そして、クレームは告発された装置を含んでいないと結論付けた。原審裁判所は、特許は侵害されなかったとの最終判決を登録した。OIは、本裁判所に控訴した。

注2    Tekmarは、告発された製品をTekmar Model 3000Aと呼んでいる。両当事者は告発された製品に言及するのに異なった製品番号を使っているが、その装置の通路の構造に異議を唱えていない。

議論

 サマリジャッジメントは、重大な事実についての真の争点が無い場合に認められるもので、申立人は法律問題として判決を受ける権利を有する。Fed.R.Civ.P.56 (c); Johnston対IVAC Corp.判決、885 F.2d 1574, 1576-77, 12 U.S.P.Q.2D (BNA) 1382, 1383 (Fed.Cir.1989)。このように、サマリジャッジメントは、「合理的な陪審が、申立人でない [**6] 当事者に有利な評決を報告することができ」ない場合に、出されうる。Anderson対Liberty Lobby, Inc.判決、477 U.S. 242, 248, 91 L. Ed. 2d 202, 106 S.Ct. 2505 (1986)。重大な事実についての真の争点があるかどうかを決定するに当たり、証拠は、申立に反対する当事者に最も有利な見方で、疑問は申立人でない者の有利に解釈して、検討されなければならない。Transmatic, Inc.対Gulton Indus., Inc.判決、53 F.3d 1270, 1274, 35 U.S.P.Q.2D (BNA) 1035, 1038 (Fed.Cir.1995)。我々は、連邦地方裁判所のサマリジャッジメントを、改めて検討する。Conroy対Reebok Int'l, Ltd.判決、14 F.3d 1570, 1575, 29 U.S.P.Q.2D (BNA) 1373, 1377 (Fed.Cir.1994)

A.    装置クレーム17

 OIは、連邦地方裁判所は第112条P6を「通路」という用語に適用した点で誤りを犯したと主張する。特に、クレーム17 (a) で説明されている通路は、同クレームのmeans-plus-function節で説明されている手段の一部ではなく、したがって、第112条P6に基づく解釈で限定されるべきではないと主張する。Tekmarは、クレームで説明された通路は、アナライト・スラッグの通過に必要なので、説明された手段の一部であり、したがってmeans-plus-function節の一部であり、そのように解釈された「通路」という用語は、滑らかな壁で覆われた管を含まないと答える。そして、アナライト・スラッグを泡立てるための滑らかでない管を開示し、従来技術は一般に壁が滑らかであると述べて、従来技術と区別をした文書説明に言及する [**7]。

 特許のクレームが侵害されたか否かを判断するには、二段階の分析が要求される。「第一に、クレームが、その範囲と意味を決定するために適切に解釈されなければならない。第二に、その適切に解釈されたクレームが、告発された装置またはプロセスと比較されなければならない。」Carroll Touch Inc.対Electro Mechanical Sys.,Inc.判決、15 F.3d 1573,1576,27 U.S.P.Q.2D (BNA) 1836,1839 (Fed.Cir.1993)。第112条P6は次のように規定している。

 組み合わせに対するクレームの構成要素は、構造、材料またはそれをサポートする行為の説明なしで、具体的な機能を行うための手段またはステップとして表現することができ、かかるクレームは、明細書に説明されている対応の構造、材料または行為、およびその等価物を対象とすると解釈されるものとする。

35 U.S.C. §112, P6 (1994)(強調追加)

 我々は、連邦地方裁判所は、装置クレーム17での用語「通路」に第112条P6を誤って適用したが、この誤りは無害である(harmless)と結論付ける。[**8] 法律のこの節がクレーム17に適用されるという点には疑問はない。これはmeans-plus-function節をもつ装置クレームであり、何らかの手段をサポートする構造は説明されていない。クレームの第一および第二の手段節は、何らかの手段をサポートする具体的な構造を説明せずに、アナライト・スラッグを「通過させるための手段」を説明している。したがって、かかる節は、35 U.S.C. 第112条第6パラグラフの要件に従う。Cole対Kimberly-Clark Corp.判決、102 F.3d 524, 531, 41 U.S.P.Q.2D (BNA) 1001, 1006 (Fed.Cir.1996)(第112条P6を使用するためには、means-plus-functionの限定は、記述されている [*1581] 機能を実施するために、限定的に構造を説明してはならないと述べている)参照。Greenberg対Ethicon Endo-Surgery, Inc.判決、91 F.3d 1580, 1584, 39 U.S.P.Q.2D (BNA) 1783, 1787 (Fed.Cir.1996)(「のための手段」という表現の使用は一般的に、第112条P6を使用すると述べている)も参照。「手段節を含むクレームの文言上の侵害は、告発された装置が、その手段節で特定されたものと同一の機能を果たす必要があり、明細書で開示されたものと同一または等価な構造を使って行うことが要求される」。Micro Chem., Inc.対Great Plains Chem. Co.判決、103 F.3d 1538, 1547, 41 U.S.P.Q.2D (BNA) 1238, 1245-46 (Fed. [**9] Cir. 1997)

 しかし原審裁判所は、クレームに説明された「通路」という用語がmeans-plus-function節の一部であり、したがって第112条P6に従うとの誤った結論を出した。クレーム17で説明されている機能は、汚濁物質と水蒸気を含んだガスの流れからなるアナライト・スラッグを通路に通すことである。通路を含む水管理装置に沿ってアナライト・スラッグを通すための手段をサポートする構造は、クレームでは説明されていない。通路は、スラッグが通過する時に、それを通すことによってスラッグに作用するかもしれないが、通過を引き起こす手段ではない。むしろそれは機能が起こる場所を単に示したものであり、それを達成する構造ではない。したがって、クレーム17は第112条P6を条件とするmeans-plus-functionクレームであるが、「通路」という用語に関してはそうではない。明細書はまた、手段をサポートする、通過を達成するための構造を示唆していない。しかし、水管理装置が散布容器と、バックフラッシュまたはフォーフラッシュ・システムに使用されるトラップの間に位置しているとは説明しており、したがって、通過は明らかに当業者に知られている [**10] 手段によって起こる。説明された手段を遂行するための抜けている構造がクレームの意味を限定するかという疑問は我々には提起されていないので、これ以上その疑問には関わらない。我々は単に、「通路」は第112条P6のための、説明された「具体的な機能を実施するための・・手段」の一部ではなく、したがってそれ自体は、その法規定によって求められる解釈に服しないという我々の結論に鑑みて、原審裁判所が結局、「通路」という用語の意味を正しく解釈したかを検討する。

 クレームの限定の解釈において、我々はクレームの表現、発明の記載、出願経過、および必要ならば外部証拠を見る。Victronics Corp.対Conceptronic, Inc.判決、90 F.3d 1576, 1582-83, 39 U.S.P.Q.2D (BNA) 1573, 1576-77 (Fed.Cir.1996)。本件では発明の説明では、通路の構造は、滑らかでない配置と円筒形を含むと述べている。

 第二の部分に対しては縫うような形状が示されているが、水蒸気を除去し穴の第二の部分にトラップさせるためには、その他の滑らかでない配列も使用できる。たとえば、一連の [**11] うねを、第二の部分の内面に含めることもできる。あるいは、穴の第二の部分は、円錐形でもよい。縫うような配置か、うねの付いた配置では、円錐形は水蒸気に泡立ち効果をもたらし、水蒸気をアナライト・スラッグから除去する。

 第'557号特許第7欄第13〜22行(強調追加)。発明の記載は、従来技術の配置に対して次のように区別している。

 第二の部分に対しては、不規則な形の表面や円筒形など、多くの様々な配置が考えられる。逆に従来技術は一般に、トラップとGCの間の気送管と通路は滑らかな壁であると記している。

 第'557号特許第7欄第45〜50行(強調追加)。

 発明の説明で考えられている「通路」構造はすべて、滑らかでないか円錐形である。さらに、説明は明示的に、従来技術の通路は一般に滑らかな壁を使っているとして区別をしている。OIは、出願経過における、その表明に反する何物も特定しなかった。したがって我々は、この [**12] クレーム、発明の説明および出願経過を読む当業者は、クレーム17の「通路」という用語は壁が滑らかでない完全に円筒形の構造を含まないと判断するだろう、と結論付ける。説明は、この特許での「通路」の意味を適切に説明しているので、[*1582] 我々は外部証拠を検討する必要はない。Victronics, 90 F.3d at 1582-83, 39 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1577参照。告発された装置が、滑らかな壁の、完全に円筒形の通路をもっていることは争われていない。したがって、連邦地方裁判所がクレームの用語「通路」を、第112条P6によって要求される解釈に服すると解釈した点において誤りを犯したとしても、告発された装置が第'380号のクレーム17の条件を満たしていないという点で重大な事実についての真の争点は無く、Tekmarは同クレームを侵害していないとの法律問題としての判決を受ける権利をもつと結論付けた点においては誤りを犯さなかった。したがって原審裁判所の誤りは無害である。Fed.R.Civ.P.61参照。

 しかしOIは、従属クレームがさらに「通路」という用語の意味を [**13] アナライト・スラッグの渦を生成する構造に限定していることに注目し、「通路」という用語から滑らかな壁をもつ配置を排除するのは、クレーム差異の法理(doctrine of claim differentiation)に反すると主張する。OIは、独立クレームは、それに従属するクレームよりも範囲が広いので、アナライト・スラッグに渦をたてる構造に限定されるべきでないと主張する。我々はそれに同意しない。クレーム差異の法理が支配することもあるが、クレーム解釈は他のクレーム表現のみには依存しない。この法理は、クレームの表現、発明の記載および出願経過から明らかな定義を変えることはできない。Hormone Research Found., Inc.対Genentech, Inc.判決、904 F.2d 1558, 1567 n.15, 15 U.S.P.Q.2D (BNA) 1039, 1047 n.15 (Fed.Cir.1990)(クレーム差異の法理は「特許の起草者の明確な反対の意図を覆い隠すことはできない」と述べている)参照。我々は、説明がクレーム表現に明らかな意味を与えており、クレーム差異の法理に打ち勝つと結論付ける。

B.    方法クレーム9

 我々は次に、第'557号特許の方法クレーム9を検討する。OIは、連邦地方裁判所は主張されている方法クレームに第112条P6を適用したという点で誤りを犯したと主張する。特に、プロセスの一連のステップに第112条P6の適用を要求する機能 [**14] として、クレームの前提部分にある目的の一般的説明に依拠したという点で原審裁判所は誤りを犯したと主張する。そして第112条P6は、個々に付随する機能をもつステップと、それをサポートする説明された行為なしのステップにのみ適用されると主張する。それに対してTekmarは、第'557号特許のクレーム9の「通過する」節は、第112条P6の限定に服するstep-plus-function節であり、そのように解釈されればこのクレームは侵害されていないと答える。

 我々はまず、方法クレームへの第112条P6の適用を一般的に検討する。控訴人は、他の当事者と同様、我々はまだそれをしていないと主張する。第112条P6は次のように規定している。

 組み合わせにかかわるクレームの構成要素は、具体的構造、材料または行為を明記せず、特定の機能を果たすための手段またはステップとして表現することができ、かかるクレームは、明細書に記載されている対応の構造、材料ないし行為、またはそれらの等価物をその範囲とすると解釈されるものとする。

 35 U.S.C. §112, P6 (1994)(強調追加)。この規定は明らかに、組み合わせに対するクレームに適用される。もちろん装置クレームである組み合わせにおいては、明確な構造または材料の説明がない場合には、特定の機能を行うための手段 [**15] は、この節を条件とすることは確立している。論理的には、構造と材料は装置のさまざまな手段を構成している。しかし、「この節での『組み合わせ』という用語は、『機械的要素の組み合わせばかりでなく、構成クレームでの物質の組み合わせ、あるいはプロセス・クレームでのステップを含む』」。 In re Fuetterer, 50 C.C.P.A. 1453, 319 F.2d 259, 264, 138 U.S.P.Q. (BNA) 217, 222, (CCPA 1963)(P.J.Federico, Commentary on New Patent Act(新特許法に関する注釈), 35 U.S.C.A. Vol.1, p.25 (1954)、リプリント75 J. Pat. & Trademark Off. Soc'y 161, 186 (Mar. 1993))(強調追加)。

 もちろんこの規定は、同様の意味をもつものとみなされる用語、すなわちステップと行為を使用している。それは手段とステップに言及しており、それらは構造、材料または行為によってサポートされなければならない。「手段」という用語は明らかに、装置の構成要素の一般的表現であり、かかる概念の実施は明らかに、構造または材料によって行われる。我々は [*1538]「ステップ」という用語を、プロセスの構成要素の一般的表現に言及するものと解釈し、「行為」という用語を、かかるステップの実施 [**16] に言及するものと解釈する。この解釈は、手段と構造の間の確立した相関と合致している。この段落では、構造と材料は手段に対応し、行為はステップに対応する。 もちろん既に指摘したように、第112条P6は、明確な構造のないmeans-plus-functionが存在するときにのみ適用される。それはステップに関しても同様に真であり、このステップは、行為のないstep-plus-functionが存在するときにのみ適用される。したがってこの規定は、結局、組み合わせの方法またはプロセスのクレームにおける構成要素を、特定の機能を行うためのステップとして、その機能をサポートする作用(act)の説明なしに記載することができると規定している。許可的な「may」という単語を使って書かれているので、この規定は、方法クレームでのステップが、step-plus-function形式で記載されることを要求しているのではなく、その形式を認めているのである。

 本件では、問題の表現は「通路に沿ってアナライト・スラッグを通す・・ステップ」である。連邦地方裁判所は、「水蒸気をアナライト・スラッグから除去する」という前提を、第112条P6を求める機能とみなした。我々はそれに同意しない。全体的な [**17] プロセスの目的についての前提は、クレーム9の二つの「通過する」ステップのための付随的機能ではない。一連のステップを実施することは、当然、何らかの結果をもたらす。本件ではアナライト・スラッグからの水蒸気の除去である。しかし前提における、一連のステップの実施から必然的に生じる結果についての表明は、それらの各ステップをstep-plus-function節に変えるものではない。クレームにおいては「通過する」というステップは、通過するステップによって行われる機能に個々に付随してはいない。

 第112条P6は、よく証明されているように、クレームされる装置で使用されるかもしれないすべての可能な手段の説明なしに、手段の表現の使用を認めることを意図したものである。Federico、上記、at 25(この規定は、組み合わせのクレームでの機能的表現の使用において、Halliburton Oil Well Cementing Co.対Walker, 329 U.S. 1, 91 L. Ed. 3, 67 S.Ct. 6 (1946) などの幾つかの判決により認められたものよりも大きな自由を認めていると述べている)。その便宜の利用に対して支払わねばならない代償は、クレームの、発明の説明で記述された手段およびその等価物への限定である。同様に、プロセス・クレームでの、特定の機能を達成するためのステップも、同様の代償を条件として、具体化なしにクレームすることができる [**8]。しかし、ステップのクレーム自体、あるいは一連のステップでさえも第112条P6を発動しない。機能の説明なしにステップを単に主張することは、means-plus-functionの類似物ではない。 Halliburton判決は、装置クレームに関したものでプロセス・クレームではないことに我々は留意する。我々はこの規定を、議会が考えなかった状況に拡大しないように注意を払わなければならない。もし我々が、passing, heating, reacting, trasferringなど「ing」動詞によって説明されるステップを含むすべてのプロセス・クレームを、step-plus-functionの限定に含めるとしたら、我々は議会が決して意図しなかった態様でプロセス・クレームを限定することになる。したがって我々は、クレーム9の「通過する (passing)」限定は、第112条P6の要件に従うstep-plus-functionの限定ではないと結論付ける。

 Tekmarは、方法クレームは装置クレームに「対応する」ので、装置クレームと合致して解釈されねばならないと主張する。装置クレームが第112条P6の限定に従うと仮定して、Tekmarは、方法クレームのステップも同様にそれらの [**19] 限定に従わなければならないと論じる。さらに、OIは特許出願中に方法クレームと装置クレームを差別しなかったので、それらは整合的に解釈されねばならないと主張する。我々は、方法クレームでのステップには「のための手段」という制限は付いていないが、実質的に、装置クレームでの限定と同一の表現であると理解する。しかし、装置クレームの「通路」という用語が第112条P6の基準を満たすと判断するにしても、クレーム間の「対応」が、方法クレームが第112条P6の要件に従うべきであることを意味するかという点では、我々はTekmarに同意しない。各クレームが第112条P6の要件に従うかを判断するには、各クレームを個別に検討しなければならない。この規定に服する他のクレームで使用された表現と類似した表現を使っているという理由で、means-plus-functionあるいはstep-plus-functionのクレームではないクレームが、あたかもそうであるかのように解釈されるとしたら、クレームの解釈 [*1584] はまったく紛らわしいものになるだろう。すでに議論したように、方法クレームはstep-plus-function形式では書かれておらず、したがってこの規定は適用されない。

 したがって我々は、クレーム9の「通路」という用語の意味 [**20] を、第112条P6の制限からは自由に解釈する。OIは、「通路」という用語はその通常の慣習上の意味を与えられるべきであり、連邦地方裁判所は通路を、好適な実施例に限定したという点で誤りを犯したと主張する。我々はそれに同意しない。第'380号の文書説明での、通路を説明する表現は、第'557号特許にも存在している。したがって、すでに説明した理由で、我々は、クレーム9の「通路」という用語は、完全に円筒形で、滑らかな壁をもった構造を含まないと結論付ける。告発された装置がそのような構造を含んでいることについての異論はない。したがってTekmarは、クレーム9を侵害していないという法律問題としての判決を受ける権利をもつ。連邦地方裁判所は、方法クレームが第112条P6の要件に服すると判断した点で誤りを犯したが、告発された装置がそのクレームが要求する通路を含んでいないとの判断においては誤りを犯さなかった。したがって連邦地方裁判所の誤りは無害である。Fed.R.Civ.P.61参照。

結論

 主張されたクレームでの「通路」という用語は、適切に解釈されれば、完全に円筒形で滑らかな壁をもった構造を含まない。告発された装置がかかる通路を含んでいるという点に関して、重大な事実に関する真の争点 [**21] は存在しない。したがってTekmarは、主張されたクレームを侵害していないとの法律問題としての判決を受ける権利をもつ。したがって、連邦地方裁判所の判決を維持する。

控訴棄却