原告−上訴人:ODETICS, INC.
対
被告−交差上訴人:STORAGE TECHNOLOGY CORPORATION,
VISA INTERNATIONAL SERVICE ASSOCIATION, INC., VISA USA, INC.
およびCRESTAR BANK
98-1533, 98-1585
合衆国連邦巡回区控訴裁判所
1999 U.S. App. LEXIS 15027; 51 U.S.P.Q.2D (BNA) 1225
判決1999年7月6日
事前経過: [*1] バージニア州東部地区合衆国地方裁判所、裁判官Thomas Selby Ellis, IIIからの上訴
処分: 一部維持、一部破棄
中心用語: ビン、侵害、特許、回転、列、均等、ギア、懈怠(laches)、ピン、対応する、特許権者、保管、テープ、ロッド、カム、フォロワー、実質的な証拠、文字どおり、故意、増額、カセット、ハウジング、最初の位置、明細書、実施料、均等性、機能の、差止命令、取り付けられた、陪審審理
原告 − 上訴人側弁護士:Vincent J. Belusko、Graham & James LLP法律事務所、カリフォルアニア州ロサンゼルス。摘要書共同執筆者、David L. Fehrman。
被告 − 交差上訴人側弁護士:Herbert F. Schwartz、Fish & Neave法律事務所、ニューヨーク州ニューヨーク。摘要書共同執筆者、Mark H. BloombergおよびRussell W. Faegenburg。
裁判官: LOURIE、CLEVENGERおよびSCHALL、巡回判事。意見提出CLEVENGER巡回判事。反対意見LOURIE巡回判事。
意見者: CLEVENGER
意見: CLEVENGER巡回判事
1998年3月27日、バージニア州東部地区連邦地方裁判所において選任された陪審は、Storage Technology Corporationが生産し販売し、Visa International Service Association, Inc.、Visa USA, Inc. およびCrestar Bank, Inc.(総称して「STK」)が使用した自動式保管ライブラリー・システムは、原告Odetics, Inc.(「Odetics」)が所有する合衆国特許第4,779,151号(「第'151号特許」)を文言侵害したと結論付けた。陪審は [*2] 故意侵害を認定し、損害賠償として7,060万ドルを決定した。法律問題としての判決(JMOL)を求めるSTKの新たな申立てを最初は却下した後、地方裁判所は自発的に再審を行い、JMOLを認め、STKに有利な判決を下した。地方裁判所はその再審での決定を、Chiuminatta Concrete Concepts, Inc. v. Cardinal Indus., Inc., 145 F.3d 1303, 46 U.S.P.Q.2D (BNA) 1752(連邦巡回、1988)における本法廷の意見により「確定した分析の枠組み」によって強いられるとみなした。 Odetics, Inc. v. Storage Tech. Corp., 14 F. Supp. 2d 807, 809, 47 U.S.P.Q.2D (BNA) 1923, 1924(バージニア州東部地区、1998年7月31日)(「Odetics VII」)も参照。Odeticsは、再審の判決および終局的差止命令を求める要請を部分的に棄却し(Odetics, Inc. v. Storage Tech. Corp., 14 F. Supp. 2d 785, 47 U.S.P.Q.2D (BNA) 1573(バージニア州東部地区、1998年6月5日)(「Odetics V」)参照)、故意侵害の評決から一定期間を除外し(Odetics, Inc. v. Storage Tech. Corp., No. 95-881-A, slip op. at 2(バージニア州東部地区、1998年2月12日)(「Odetics IV」)参照)、損害賠償の増額要請を棄却した(Odetics, Inc. v. Storage Tech. Corp., 14 F. Supp. 2d 800(バージニア州東部地区 [*3]、1998年7月17日)(「Odetics VI」)参照)それ以前の判決について上訴する。
STKは、35 U.S.C. §102 (g) に基づき、本訴訟の以前の上訴における本法廷の指示(Odetics, Inc. v. Storage Tech. Corp., 116 F.3d 1497, 1997 WL 357598(連邦巡回、1997)(表)(「Odetics II」)参照)の範囲内に入るとして、その有効性の抗弁を禁じた地方裁判所の判断を交差上訴する。Odetics, Inc. v. Storage Tech. Corp., No. 95-881-A, slip op. at 1(バージニア州東部地区、1997年12月3日)、No. 95-881-A, slip op. at 3-4(1998年1月8日)によって明確化(「Odetics IV」)を参照。STKはまた、陪審からある種の証拠を取り除いた地方裁判所の決定についても上訴する。同上、slip op. at 1参照。
Chiuminatta判決は、§112, P 6に基づく適切な侵害の分析を変更しておらず、陪審の評決は実質的な証拠によって支持されるので、本法廷はJMOLの付与を破棄し、陪審の評決の復活を命じる。しかし本法廷は、地方裁判所の上訴された他の判決は維持する。
本特許侵害訴訟は、本法廷への二度目の登場であるが(Odetics II、116 F.3d 1497, 1997 WL 357598(非侵害の判決を取り消す)参照)、通常、ビデオテープまたはコンピュターのデータ・テープを保管し [*4] 編成し検索するのに使われる、ロボット・テープ保管システムに関するものである。この保管システムは一般に、中央に位置するロボット・アームなどのピボット選択検索メカニズムをもち、通常は円筒形の大きなハウジングから構成される。テープ検索の命令に対して、ロボットのアームが検索すべきテープを選択的に掴み、保管棚から取出し、他の棚またはテープのプレーヤー/レコーダーに置く。システムは高度に自動化されており、多量のデータを容易かつ迅速に保管場所から検索しなければならない状況で、特に有用である。
争点は、第'151号特許のクレーム9および14である(クレーム8も主張されたが、地方裁判所はそのクレームに関する非侵害のサマリジャッジメントを下した。本法廷の処理全体から見て、この判決には現在は争訴性はない)。クレーム9は以下の通りである(争われている限定を明確にするために強調を追加)。
9. 以下のものから構成されるテープ・カセットを取り扱うシステム
複数のテープ移動器、ならびに、
複数の保管ビンをもつカセット保管ライブラリーおよび、保管ビンもしくはテープ移動器へ移動されるカセットを受け取るための、またはライブラリーもしくはテープ移動器から除去されるカセットを受け取るための [*5] 少なくとも一つのカセット・アクセス用開口部、を含むハウジング、ならびに、
それぞれがカセットを受け取る開口部をもつ一つまたは複数の保持ビンをもち、少なくとも一つの保持ビンの開口部がハウジングの外部からアクセス可能である最初の位置から、少なくとも一つの保持ビンの開口部がハウジングの内部からアクセス可能である二番目の位置まで回転可能な、アクセス用開口部に隣接してライブラリー内に回転可能な状態に設置される、保管ライブラリーへのアクセスを可能にする回転手段、ならびに、
回転手段、上記の保管ビンおよび上記のテープ移動器間でカセットを選択的に移動するための、ハウジング内部に位置するカセット操作手段。
クレーム14はすべての関係する側面において同一である。
重要な「回転手段」のクレーム要素は、ミーンズ・プラス・ファンクション形式であり、「明細書に記載の対応する構造、材料または行為およびその均等物を対象とすると解釈される」ことを要求している。35 U.S.C. §112, P 6(1994)参照。Odetics IIにおいて本法廷は、「回転手段」要素に対応する構造は、「力を受けとり [*6] その力の結果として回転する構成要素(つまりロッド、ギア、および回転積込みと積込み機構)」であると判断した。1997 WL 357598, at *6。本法廷は、この構造は第'151号特許の図3に見られると指摘した。ただしモーター(35)とそのギア(54)を含んでいない。
[合衆国特許第4,779,151号原文の図3を参照]
つまり、第'151号特許の図3に描かれている「回転手段」に対応する構造は、テープ・ホルダーつまりビン、回転軸を定めるロッド、および、クレームされた「回転」機能をこの構造が達成するのに十分な力を受けることができるギアのセットである。
STKは、多量の自動データ保管を必要とするVisaやCrestarなどの会社に、ライブラリー保管モジュール(「ライブラリー」)を製造し販売する。STKが販売したライブラリー・システムは可変である。つまり、保管スペースを増すために追加ライブラリーを加えることができる。ライブラリーを追加するときSTKは、ライブラリーをリンクさせるために、データ・テープがライブラリーからライブラリーへと動けるように、「通過ポート」と呼ばれるデバイスを使う。通過ポートは、「ビン列」を使ってライブラリー間のギャップの橋渡しをする。「ビン列」とは、短い通路に沿って真っすぐ滑る、テープ・スロット [*7] つまりホルダーの箱状のセットである。ビン列はライブラリーからライブラリーへ移動すると、ライブラリー・ハウジング内からテープを操作できるように回転する。この回転は、ビン列の底に付けられた複数のピンである、「カム・フォロワー」を使って達成される。ビン列がその通路に沿って動くと、ピンが、曲がった構造つまり「カム」と接触し、ビン列をロッドを軸として回転させる力が生じる。つまり提訴された装置における「ビン列」は、テープ・ホルダーまたはビン、ロッド、およびピンのセットである。
1995年Odeticsは、STKが販売した保管ライブラリーの3つ(ACS 4400、PowerHornおよびWolfCreekとして知られる)が、その第'151号特許のクレーム8、9および14を侵害したとして、STKを訴えた。サマリジャッジメントを求める交差申立てに対して、地方裁判所は法律問題として、クレームは文言侵害されていないと認定し、ラッチェス(laches)の問題に関してサマリジャッジメントを求めるSTKの申立てを部分的に認めた。Odetics, Inc. v. Storage Tech. Corp., 919 F. Supp. 911, 38 U.S.P.Q.2D (BNA) 1873(バージニア州東部地区、1996年)(「Odetics I」)参照。争われている用語の [*8] 意味に関して地方裁判所から指示を受け取った後、均等論に基づき有効性および侵害の問題を検討する陪審は、第'151号特許の主張されているクレームは、無効ではなく、侵害されていないと認定した。
1996年末、Odeticsは上訴した。本法廷は、地方裁判所によるクレーム解釈は誤っていると判断し、したがって地方裁判所が下した判決を無効とし、正しいクレーム解釈に基づき更に裁判を行うよう、本訴訟を差し戻した。Odetics II, 1997 WL 357598, at *7参照。本訴訟は地方裁判所に差し戻され、1998年3月23日に二回目の陪審審理が始まり、3月27日に故意侵害という評決が下され、損害賠償として7,060万ドルが認定された。
審理後の申立てにおいて、地方裁判所は1998年5月1日に、JMOLを求めるSTKの申立て、および新たな審理を求める別の申立てを棄却した。Odetics, No. 95-881-A(バージニア州東部地区、1998年5月1日に登録された命令)参照。1998年5月か6月のある時点で、地方裁判所は、「[JMOLおよび新たな審理を求める]申立てを棄却した後で、Chiuminatta Concrete Concepts, Inc. v. Cardinal Indus., Inc., 145 F.3d 1303, [46 U.S.P.Q.2D (BNA) 1752](連邦巡回、1998)」における連邦巡回裁判所の決定を知った。Odetics VII, 14 F. Supp. 2d 807 at 810, 47 U.S.P.Q.2D (BNA) [*9] at 1925。Chiuminatta判決は「JMOLの申立ての[]処分に関して逆の結果を潜在的に含意している」と、地方裁判所は結論付け、両当事者に、本訴訟に対するその意見の影響を議論する補完的意見書を提出するように命令した。同上。かかる摘要書を受け取り審理を行った後、地方裁判所はJMOLを求めるSTKの申立てを棄却した以前の決定を破棄し、Chiuminatta判決は「被告を有利とする法律問題としての判決を下すことを強いる」と判断した。同上、at 807, 47 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1924。これが本上訴をもたらし、そして28 U.S.C. §1295 (a) (1) に基づき本法廷に裁判権が与えられる。
本法廷は、地方裁判所に遠慮することなくJMOLの付与を検討する。たとえば、Texas Instruments Inc. v. Cypress Semiconductor Corp., 90 F.3d 1558, 1563, 39 U.S.P.Q.2D (BNA) 1492, 1496(連邦巡回、1996);Markman v. Westview Instruments, Inc., 52 F.3d 967, 975, 34 U.S.P.Q.2D (BNA) 1321, 1326(連邦巡回、1995)(大法廷)、維持、517 U.S. 370, 134 L. Ed. 2d 577, 116 S. Ct. 1384(1996)。JMOLは、陪審の評決が実質的証拠によって裏付けられていないか、誤った法的基準に基づいていない限り、不適切である。たとえば、Applied Medical Resources Corp. v. [*10] United States Surgiacl Corp., 147 F.3d 1374, 1376, 47 U.S.P.Q.2D (BNA) 1289, 1290(連邦巡回、1998)裁量上訴棄却、142 L. Ed. 2d 772, 119 S. Ct. 870(1999);Markman, 52 F.3d at 975, 34 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1326を参照。
地方裁判所はSTKによるJMOLを求める申立て許可の根拠を、明示的に、Chiuminatta判決の意見の検討から生じた「指示」に置いているので、本法廷はまず、地方裁判所の表現で、Chiuminatta判決は「§112, P 6に基づく侵害分析の適切な形における重要な変更を表明している」か否かを判断しなければならない。Odetics VII, 14 F. Supp. 2d 811, 47 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1926。実際、Chiuminatta判決の地方裁判所による理解の中核は、§112, P 6に基づく法定の均等物は、特許において特定された該当する構造と、提訴されたデバイスの構造的に均等であると主張された部分との間に、「構成要素ごとの」均等性があることを要求するというものである。同上、at 814 n.12, 47 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1929 n.12(「陪審の結論はおそらく、2つ[の構造]を、構成要素ごとに比較するようには、特に指示されなかったという事実によって説明されることに、留意すべきである。... したがって陪審は、2つの [*11] 構造を全体として比較すれば十分であると誤って考え、法律に反する結論を導いたのかもしれない」)。Chiuminatta判決のこの解釈は、§112, P 6の侵害分析を誤解しており、したがって誤りである。
具体的な構造ではなく、行われる機能を説明する、ミーンズ・プラス・ファンクション形式で書かれたクレームの限定は、35 U.S.C. §112, P 6(1994)の要件に服する。B. Braun Med., Inc. v. Abbott Lab., 124 F.3d 1419, 1424, 43 U.S.P.Q.2D (BNA) 1896, 1899(連邦巡回、1997)。したがって限定は、「明細書に記載されている対応する構造、材料または行為およびその均等物を対象とする」と解釈されなければならない。35 U.S.C. §112, P 6;B. Braun Med., 124 F.3d at 1424, 43 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1899参照。§112, P 6の制限の文言侵害は、提訴されたデバイスの該当する構造が、記載されているクレームと同一の機能をもち、明細書の対応する構造と同一か均等であることを要求する。たとえばAl-Site Corp. v. VSI Int'l, Inc., 174 F.3d 1308, 1320, 50 U.S.P.Q.2D (BNA) 1161, 1168(連邦巡回、1999);Pennwalt Corp. v. Durand-Wayland, Inc., 833 F.2d 931, 934, 4 U.S.P.Q.2D (BNA) 1737, 1739(連邦巡回、1987)(大法廷)参照。機能上の [*12] 同一性、および構造上の同一性または均等性の双方が必要である。Pennwalt, 833 F.2d at 934, 4 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1739参照。
最高裁判所が指摘したように、§112, P 6に基づく構造上の均等性は、「制限された役割における ... 均等論の適用」である。Warner-Jenkinson Co. v. Hilton Davis Chem. Co., 520 U.S. 17, 28, 41 U.S.P.Q.2D (BNA) 1865, 1870, 137 L. Ed. 2d 146, 117 S. Ct. 1040(1997)。したがって、「均等性のそれらのテストは密接に関連しており」、Chiuminatta, 145 F.3d at 1310, 46 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1757、「相違の非実質性の同様の分析」が絡む。Al-Site, 174 F.3d at 1321, 50 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1168(Chiuminatta, 145 F.3d at 1310, 46 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1758を引用)。Valmont Indus., Inc. v. Reinke Mfg. Co., 983 F.2d 1039, 1043, 25 U.S.P.Q.2D (BNA) 1451, 1455(連邦巡回、1993)(「112条の「均等」という用語は、非実質的な変更というなじみ深い概念を惹起する」)も参照。均等論の文脈では、以下のテストがしばしば使われる。すなわち、もし代替と主張される構造の「機能、方法または結果」が、クレームの限定が説明するものと実質的に異なるならば、均等性は立証されない。たとえば、Warner-Jenkinson [*13] 520 U.S. at 39-40, 41 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1875を参照。すでに指摘したように、均等論のために開発されたこの3項目テスト(tripartite test)は、§112, P 6の法定の均等性の文脈に完全には移行しない。Alpex Computer. Corp. v. Nintendo Co., 102 F.3d 1214, 1222, 40 U.S.P.Q.2D (BNA) 1667, 1673(連邦巡回、1996);Valmont, 983 F.2d at 1043, 25 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1455;D.M.I., Inc. v. Deere & Co., 755 F.2d 1570, 1575, 225 U.S.P.Q. (BNA) 236, 239(連邦巡回、1985)を参照。その代わりに、法定の均等性分析は、均等論と類似した非実質的相違という概念に起源があるが、より狭い。Al-Site, 174 F.3d at 1320 n.2, 50 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1168 n.2を参照。これは、§112, P 6の均等性の下では、機能上の同一性が要求されるからである。したがって、法定の均等性分析に達するためには、代替であると主張される構造、材料または行為の「機能」の均等性(実際は同一性)がまず立証されなければならない。35 U.S.C. §112, P 6;Al-Site, 174 F.3d at 1320, 50 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1168;Chiuminatta, 145 F.3d at 1308, 46 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1755;Alpex, 102 F.3d at 1222, 40 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1673;Pennwalt, 833 F.2d at 934, 4 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1739を参照。したがって§112, P 6に基づく非実質的な相違のテストの内容は [*14]、「方法」と「結果」だけになる。つまり、法定の均等性分析は、代替構造とされるものがクレームされた機能を実施する「方法」、およびその実施の「結果」が、「明細書で説明されている対応する構造、行為または材料」によってクレームされた機能が実施される「方法」およびその「結果」と、実質的に異なるか否かの決定を必要とする。§112, P 6に基づく構造上の均等性は、その相違が実質的でない場合にのみ、つまり、主張された均等な構造が、明細書で説明されている対応する構造と実質的に同じ結果を達成するために、クレームされた機能を実質的に同じ方法で実施するならば、充たされる。Chiuminatta, 145 F.3d at 1308, 46 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1756参照。35 U.S.C. §112, P 6(手段プラス機能クレームは文理的には、「明細書で説明されている対応する構造、材料または行為、およびその均等物」を対象とする(強調追加))参照。
しかし、§112, P 6に基づく均等物の同様の分析、および均等論は、Pennwalt判決およびWarner-Jenkinson判決が [*15]、§112, P 6に基づく構造上の均等性の構成要素ごとの分析を命じているという結論には結び付かない。もちろん、「特許のクレームに含まれている各要素は、特許を受けた発明の範囲を決定するのに重要であるとみなされる」ことは自明である。Warner-Jenkinson, 520 U.S. at 29, 41 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1871。つまり、§112, P 6形式で書かれているクレームの限定は、侵害が認められるには、他のクレームの限定と同様に、文言または均等が満たされなければならない。たとえばPennwalt, 833 F.2d at 935, 4 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1739参照。すでに指摘したように、かかる限定は、実質的に同じ結果を達成するために実質的に同じ方法でクレームされた機能を実施する、提訴されたデバイスにおける構造、材料または行為によって文言的に満たされる。クレームされた機能に対応する全体的構造のうちの個々の構成要素は、あったとしてもクレームの限定ではない。むしろクレームの限定は、クレームされた機能に対応する全体的構造である。これが、部品の数が異なる構造でも§112, P 6の下で均等であり、したがってクレームの限定を満たしうる理由である。たとえばAl-Site, 174 F.3d at 1321-22, 50 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1169(「リベット・ファスナーまたはボタン・ホール・ファスナーを含む ... 機械的に結び付けられた [*16] ループ」と、「[眼鏡ハンガー・タグの]アームのホール」との間の§112, P 6の下での均等性を認めた陪審評決を支持)参照。該当する構造はクレームされた機能に「対応する」ものであるとの、適切なレベルの具体性が法律で定められている。たとえばChiuminatta, 145 F.3d at 1308-09, 46 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1756(特許で開示された「記されている機能に無関係な」構造は、§112, P 6には関係しない);Valmont, 983 F.2d at 1044, 25 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1455(クレームされた機能に関係する構造を特定)。これ以上の分解または分析は誤りである。
Chiuminatta判決は、法律のよく知られた道を変更したのではなく、それを確認したのである。本法廷は、「コンクリートの表面をサポートするための ... 手段」に対応する構造は、「スキッド」、つまり「平らな部分と丸い両端をもつ、一般に長方形の金属板」であると決定した後、145 F.3d at 1307, 46 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1756、スキッドと、提訴されたデバイスの均等であると主張された軟ゴムの輪のセットという構造との間の、相違の分析に進んだ。同上、at 1309, 46 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1757参照。輪とスキッドとの間には「非実質的ではない」相違 [*17] があると認定し、本法廷は、構造がクレームされた機能を行う方法は、実質的に異なると指摘した。輪は表面上を回転するが、スキッドは、「鋸がコンクリート上を動くように滑る」。同上。Chiuminatta裁判ではいかなる時点でも、均等性の分析のためにスキッドという構造を、構成要素に分解してはいない。Odetics VII, 14 F. Supp. 2d at 814, 47 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1928(「構造の均等性を証明するには、Odeticsは、[第'151号特許で開示された]ビン列が、[提訴されたデバイスの]ビン列と均等であることを証明しなければならなかった。このことは実質的に、Odeticsは[第'151号特許で開示された]ギアが、[提訴されたデバイスの]のカム・フォロワーと均等であることを証明しなければならなかったことを意味する。」)参照。そうではなく、Chiuminatta判決は単に、非実質的な相違という確立した法律を、問題の構造に適用しただけである。145 F.3d at 1309, 46 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1756-57。地方裁判所が使った構成要素ごとの分析は、法律に根拠はない。
本法廷は、地方裁判所の再審理 [*18] におけるJMOL付与の前提は誤っていると判断したが、本法廷の調査は終わりではない。STKは、JMOLの付与は他の根拠によって支持されると論じる。本法廷は同意しない。
第一に、陪審による侵害の評決は実質的な証拠によって支持されていないとSTKは主張する。提訴されたデバイスが§112, P 6のクレームを均等物として侵害しているか否かは、事実問題である。C.R. Bard, Inc. v. M3 Sys., Inc., 157 F.3d 1340, 1363, 48 U.S.P.Q.2D (BNA) 1225, 1241(連邦巡回、1998)(「§112, P 6に基づく侵害の判定は事実問題である」)裁量上訴棄却, 119 S. Ct. 1804(1999);In re Hayes Microcomputer Prods., Inc. Patent Litig., 982 F.2d 1527, 1541, 25 U.S.P.Q.2D (BNA) 1241, 1251(連邦巡回、1992)(「[§112, P 6]の文理侵害の判定は事実問題である」:);Intel Corp. v. United States Int'l Trade Comm'n, 946 F.2d 821, 841, 20 U.S.P.Q.2D (BNA) 1161, 1178(連邦巡回、1991)(同一);Hartness Int'l Inc. v. Simplimatic Eng'g Co., 819 F.2d 1100, 1110, 2 U.S.P.Q.2D (BNA) 1826, 1833(連邦巡回、1987)(「提訴されたデバイスが説明されている実施例の§112の均等物であるか否かは事実問題である」(引用省略));King Instrument Corp. v. Otari Corp., 767 F.2d 853, 862, [*19] 226 U.S.P.Q. (BNA) 402, 408(連邦巡回、1985)(同一);Palumbo v. Don-Joy Co., 762 F.2d 969, 975, 226 U.S.P.Q. (BNA) 5, 8(連邦巡回、1985)(同一)、Markman, 52 F.3d at 976-79, 34 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1327-29(連邦巡回、1995)によって、他の根拠に基づき覆される;D.M.I., Inc. v. Deere & Co., 755 F.2d 1570, 1575, 225 U.S.P.Q. (BNA) 236, 239(連邦巡回、1985)。Markman, 52 F.3d at 977 n.8, 34 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1327 n.8(Palumbo判決の破棄は、その裁判の§112, P 6の判断に影響しなかった)も参照。
JMOLを求める申立ての許諾は、「陪審が[非申立て側]当事者に有利に認定する、法的に十分な根拠がない」場合にのみ認められうる。Fed. R. Civ. P. 50 (a) (1)。法的に十分な根拠が実際に存在するか否かを判断するためには、「第一審裁判所は、すべての証拠を非申立て側当事者に最も有利な観点から検討しなければならず、非申立て側当事者に有利な合理的な推論を行わなければならず、証人の信頼性について判断してはならず、その選択を陪審による選択の代わりにしてはならない」。Perkin-Elmer Corp. v. Computervision Corp., 732 F.2d 888, 893, 221 U.S.P.Q. (BNA) 669, 672(連邦巡回、1984)。Verdegaal Bros., Inc. v. Union Oil Co., 814 F.2d 628, 631, 2 U.S.P.Q.2D (BNA) 1051, 1052(連邦巡回、1987);Medtronic Inc. v. Intermedics, [*20] Inc., 799 F.2d 734, 742, 230 U.S.P.Q. (BNA) 641, 646(連邦巡回、1986)も参照。この分析の後に、陪審の評決を裏付ける実質的証拠が存在する場合には、陪審が合理的に安心できる証拠としては最低限のものであったとしても、JMOLを求める申立ては棄却されなければならない。Anderson v. Liberty Lobby, Inc., 477 U.S. 242, 249-50, 91 L. Ed. 2d 202, 106 S. Ct. 2505(1986)(「単なる見かけの」または「十分な証明にはならない」証拠は不十分である);Consolidated Edison Co. v. NLRB, 305 U.S. 197, 229, 83 L. Ed. 126, 59 S. Ct. 206(1938)(「実質的な証拠とは、単なるひらめき以上のものである。結論を支持するのに十分であると合理的な精神が受け入れるような、適切な証拠を意味する。」);Improvement Co. v. Munson, 81 U.S. 442, 448, 20 L. Ed. 867(1872)(基準は「文字通り証拠があるか否かではなく、それを提出した、立証責任を負わされた当事者のために、陪審が評決の認定に適切に進めるような証拠があるか否か」である)参照。
STKは、Odeticsが、提訴されたデバイスの「ビン列」が第'151号特許の「回転手段」クレーム要素および明細書の対応する構造と均等であることを示す実質的証拠を提示しなかったと主張する。[*21] しかし記録を検討すると、その逆であることが圧倒的に示される。Odetics IIにおいて本法廷が指示したように、陪審は、「「回転可能な形で設置された回転手段」は、要素52および54を除き、[第'151号特許の]図3に描かれているもの、またはその均等物でありうる。つまり、[回転手段は]要素52および54を除き、図3に描かれている。その図かその均等物である」と説示された。本法廷がOdetics IIで強調したように、地方裁判所は陪審に、クレームされた機能に対応する構造は、回転力を受けた結果として「回転可能」であると指摘された。提訴されたデバイスの「ビン列」は、ロッド、カセットを保持するためのビン、およびカセット・ビンの底から突き出るピンつまりカム・フォロワーを含む。均等性に関するOdeticsの理論は、クレームされた構造と提訴された構造との間の相似を指摘することであった。回転は第'151号特許においてはギアの歯に力を与え、それによりビンをロッドの回りで回転させることによって達成され、また提訴されたデバイスにおいては回転は、カム・フォロワーに力を与え、やはりビンをロッドの回りで回転させることによって達成される。そしてOdeticsは陪審に、両構造は [*22]]§112, P 6の意味において均等な「回転手段」であると論じた。Odeticsはその主張を証明するために、ダイアグラム、クレーム・チャート、コンピューター・アニメーション、およびその専門家John M. McCarthy博士の意見を含む、構造の均等性の文書証拠および証言証拠を提示した。両当事者はJohn M. McCarthy博士がロボット工学の専門家であることに合意している。McCarthy博士は、審理中に少なくとも8回、「回転手段」構造は提訴されたデバイスにおける「ビン列」と均等であることとその理由を、具体的かつ明確に証言した。実際、彼は提訴されたデバイスの「ビン列」構造と第'151号特許の回転手段を、「ほとんど同一であり」、「直接的に対応させる」ことが可能であり、「完全に均等であり」、「ほとんど同一である対応」をもち、「文字通り均等であり」、そしてそれらは「完全に対応するので私は各要素を一つずつ対応させられる」と説明した。第'151号特許で描かれたギアではなく、提訴されたデバイスにおけるピン、つまり、カム・フォロワーの存在が、なぜ均等性の分析に影響しないのかを具体的に説明するように求められたとき、McCarthy博士はまず、「貴方はピンを押すこともできるし、ギアの歯を押すこともできる ...。この応用においては [*23]、ピンを押すこととギアの歯を押すことは、特にこの分野の通常の技能をもつ人[の観点]からは完全に均等である」と指摘した。McCarthy博士は反対尋問においてさらに、「ギアをはずしピンを付けることもできる ...。[提訴された「ビン列」構造]は完全に均等、完全に同一である」と説明した。
第'151号特許の「回転手段」構造と、提訴されたデバイスの「ビン列」構造が均等であるとの明確で整合的で何度も繰り返された証拠を与えられ、地方裁判所はJMOLを拒絶する最初の決定を発表するとき、「陪審は、文言侵害であるとのMcCarthy博士の証言に基づき侵害であると認定することができ、実際にそうした。したがって、法律問題としての判決を求めるSTKの申立ては拒絶されなければならない」と述べた。本法廷はそれに同意する。Odeticsは回転手段とビン列が均等であるという実質的証拠を提示した。したがって合理的な陪審は、侵害の存在を認定する資格がある。たとえばAl-Site, 174 F.3d at 1316, 50 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1165(「均等な固定手段は、リベットでも糊でもステープルでもよい ...」という専門家証言は、陪審の評決を維持する十分な証拠を構成する)参照。
McCarthy博士の証言は2つの構造の機能上の同一性のみに関係しており、構造上の均等性の立証には不十分であるとのSTKの [*24] 議論は無効である。McCarthy博士は構造上の類似性について繰り返し証言し、全体としてこの2つの構造は「直接対比することができ」、「[ビン列]構造全体は均等である」と指摘した。McCarthy博士はまた、両構造がクレームされた「回転」機能を達成する方法およびその機能の結果は実質的に均等であるとして、「[回転手段の構造の図]は、このシステムが始動する方法を表す。それが、回転させるために力がかかるポイントである。回転のすべての均等な方法は、この図面に表現されている」と述べた。したがって、JMOLを求める新たな申立てを最初に棄却したときに地方裁判所が指摘したように、質問が、実質的な証拠が陪審の評決を裏付けるか否かであるとき、McCarthy博士の証言は、STKの主張に反対する答をしている。Perkin-Elmer, 732 F.2d at 893, 221 U.S.P.Q. (BNA)at 673を参照。
STKの主張に反して、「ビン列」構造(ロッド、ビンおよびピン)は、「ギア・モーターとの噛み合わせ」など、関連がない機能を行えないという事実によっては、§112, P 6の下で [*25] 第'151号特許の「回転手段」構造(ロッド、ビンおよびギア)に均等であることを妨げられない。§112, P 6に基づき書かれたクレームの限定は、行われる機能を説明する。35 U.S.C. §112, P 6参照。機能の限定の範囲は、もちろん、「明細書で説明された対応する構造、材料または行為、およびその均等物」に限定される。同上。「対応する」構造は、機能を行うとして開示された構造である。たとえばChiuminatta, 145 F.3d at 1308, 46 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1756;Pennwalt, 833 F.2d at 934, 4 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1739を参照。関連性のない、つまりクレームされていない機能の両構造による実施が異なるか否かは、§112, P 6の均等物の判定にとってまったく無関係である。Chiuminatta, 145 F.3d at 1308, 46 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1756(「ウォブリングを抑制し」「切断刃の重量を支持する」構造は、「コンクリート表面の支持」というクレームされた機能とは関連がなく、したがって、手段項目の範囲を限定すると読むべきではない)参照。[*26] 本訴訟でMcCarthy博士は、「回転手段」と「ビン列」の構造上の均等性は、両構造が、同じ方法で同一の機能を行える、つまり「回転」機能を達成するのに必要な力を受け取れるということから生じていると証言した。Odetics II, 1997 WL 357598, at *5参照。
JMOLの付与を求めるSTKの第二の根拠は、法律問題として、提訴されたデバイスの「ビン列」は、決してクレームされた「最初の位置」にはなく、したがってクレームを満たさないというものである。第'151号特許のクレーム9および14は、「回転手段」構造がライブラリー・ユニット内に取り付けられ、「少なくとも一つの保持用ビンの開口部がハウジングの外部からアクセス可能であるという最初の位置」にあるとき、ライブラリー・ユニット内にあることを要求していると、STKは主張する。第'151号特許クレーム9、14。提訴されたデバイスは、「最初の位置」にあるときライブラリー・ユニット内に位置しないことは争われていないので、法律問題として侵害を逃れるとSTKは主張する。
この主張は最初の上訴のときに本法廷に提起され棄却された。そこではSTKは、「「回転手段」つまり「積込みハウジング」は、ライブラリー内で回転できるように「取り付けられ」つまり「動かされている」間、[*27] 最初の位置から第二の説明された位置へ回転することができなければならないが、提訴された[デバイス]はこの機能を行えない」と明示的に論じた。Odetics II、被上訴人の摘要書、p. 41(強調原文)。それに応えて本法廷は、クレームの適切な解釈の下では、
「クレームによって要求されることは、手段が回転可能であり、ライブラリー内に取り付けられ、最初の位置から第二の位置へ回転することによってライブラリーへのアクセスを可能にすることだけである。これらの要件を満たすため、デバイスがその操作中にずっとライブラリー内に位置する必要はない」
と指摘した。
Odetics II, 1997 WL 357598, at *6。つまりSTKの主張は最初の上訴のときになされ検討され処理されている。この問題を復活させようとするSTKの試みは認められない。Engel Indus., Inc. v. Lockformer Co., 166 F.3d 1379, 1383, 49 U.S.P.Q.2D (BNA) 1618, 1621(連邦巡回、1999)(「本法廷によって差し戻されない限り、上訴された判決の範囲内のすべての争点は、指示の中に組み込まれたとみなされ、したがってさらなる司法判断から除外される」)。
さらに、STKによる「最初の位置」の主張が、何らかの意味で [*28] Odetics IIでの決定によって棄却されなかったとしても、本法廷の命令に合致して、「[クレームの]要件を満たすのに、デバイスはその作動中、常にライブラリー内に位置する必要はない。提訴されたデバイスは、その作動中にライブラリー外を動いたとしても、回転可能な状態に取り付けられるクレームされた回転手段の要件を満たすことは可能である」と述べた二回目の事実審理における陪審への説示に、STKが反対しなかったことによって、間違いなく終わりとなった。それらの指示を与えられた陪審は、McCarthy博士が指摘したように、「[提訴されたビン列構造]が作動中に[ライブラリー]から出るという事実は、... まったく無関係である」と認定する権利があった。STKの主張は実際上、陪審は、提訴されたビン列構造は「最初の位置」にあるときライブラリー内になければならないと適切に教えられなかったというものである。しかしSTKは、今になって陪審への説示の誤りを主張することはできない。Fed. R. Civ. P. 51(「いずれの当事者も、陪審が評決を審議するために退廷する前に異議を申し立てない限り、説示の内容またはその欠如を誤りとして主張することはできない」);Hafner v. Brown, 983 F.2d 570, 578(第4巡回、1992)(当事者による「説示への異議申し立てが、正当な理由なく [*29] 遅れた場合には、法廷は、実体的事項に関する主張された誤りを検討できない」(引用を省略))参照。またSTKは、陪審に対してなされるべきであるとSTKが指摘さえしなかった法的基準に基づき、陪審の評決を無効とするように本法廷に求めることもできない。Mattison v. Dallas Carrier Corp., 947 F.2d 95, 108(第4巡回、1991)(「第7修正と合致して、本法廷は陪審に与えられなかった法的基準 ... に基づき陪審の評決を評価することはできない」)。結局、STKの「最初の位置」に関する主張は、JMOLの付与を支持するには十分でなく、また、遅すぎる。
地方裁判所はChiuminatta判決を誤解することによって、誤った方向に進んだ。JMOLの見直しによる付与に対する法的に不適切な前提を取り除くと、本法廷は、陪審による侵害についての結論を覆す法的根拠も事実も見出だせない。評決は維持される。
Odeticsは次に、終局的差止命令を求める要請の、地方裁判所による部分的拒絶を上訴し、懈怠(laches)の判決(これは上訴していない)は、STKが懈怠中に生産し販売した [*30] 機械の使用、サービスまたは修補の差止命令を妨げるべきではないと主張する。地方裁判所は、JMOLを下しそれによって終局的差止命令を求めるOdeticsの希望を無効とする前に、懈怠中に販売された機械は侵害の責任を免除され、したがってそのサービスと修補を認める黙示のライセンスを取得したと判断し、この主張を棄却した。Odetics V, 14 F. Supp. 2d 785(バージニア州東部地区、1998)参照。
第35編283条は地方裁判所に、侵害の存在を認定した際には、「エクイティの原則に基づき」終局的差止命令を課すことを認めている。つまり、本法廷は、侵害の評決の後には差止命令が続くべきであるとの一般則を述べたが、(たとえばRichardson v. Suzuki Motor Co., 868 F.2d 1226, 1247, 9 U.S.P.Q.2D (BNA) 1913, 1929(連邦巡回、1989)を参照)、本法廷はまた、地方裁判所はエクイティ上の問題に適するように、状況の事実が差止命令を下すことを必要としているか否かを判断するのに、かなりの裁量権をもつことも認識する。Roche Prods., Inc. v. Bolar Pharm. Co., 733 F.2d 858, 865, 221 U.S.P.Q. (BNA) 937, 942(連邦巡回、1984)参照、35 U.S.C. §271 (e) (1)(1994)により他の根拠で破棄;35 U.S.C. §283(1994)も参照。そこで本法廷は、裁量権の乱用に関して、差止命令の棄却を [*31] 審議する。John Hopkins Univ. v. Cellopro, Inc., 152 F.3d 1342, 1354, 47 U.S.P.Q.2D (BNA) 1705, 1713(連邦巡回、1998);Ortho Pharm. Corp. v. Smith, 959 F.2d 936, 945, 22 U.S.P.Q.2D (BNA) 1119, 1127(連邦巡回、1992)。以下の理由で、本法廷は地方裁判所に同意する。
最初の陪審審理に先立ち地方裁判所は、Odeticsは1995年に提訴状を提出する前に、第'151号特許に基づくその権利を正当な理由なく主張しなかったことで、懈怠をもたらしたとのサマリジャッジメントを下した。Odetics I, 919 F. Supp. 911, 927, 38 U.S.P.Q.2D (BNA) 1873, 1885(バージニア州東部地区、1996)参照。Storage Technologyは提訴前の懈怠中に、共同被告であるCrestarとVisaに14個の侵害しているデバイスを販売した。もちろん、Odeticsがかかる販売に対して損害賠償を得られないことは争われていない。A.C. Aukerman Co. v. R.L. Chaides Constr. Co., 960 F.2d 1020, 1040-41, 22 U.S.P.Q.2D (BNA) 1321, 1335(連邦巡回、1992)(大法廷)(懈怠は、訴訟に先立ち生じた損害の賠償を禁じると判断)参照。Lane & Bodley Co. v. Locke, 150 U.S. 193, 37 L. Ed. 1049, 14 S. Ct. 78(1893)(特許侵害の文脈で懈怠の抗弁を認定)も参照。しかし本法廷は、懈怠の抗弁の将来への適用 [*32] も、強く禁じた。つまり、「懈怠は、訴訟に先立ち生じた損害に関してのみ、特許権者の損害賠償を禁じる」(Aukerman, 960 F.2d at 1041, 22 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1335)。 Odeticsは、損害賠償がないことを認め、その替わりに提訴前のデバイスの使用および修補に対する差止命令を求め、35 U.S.C. §271 (a)(Supp. IV 1998)は、侵害者を、「特許対象の発明を製作し使用し売り出し売却する」人として定義していると指摘する。提訴前の侵害しているデバイスの使用の継続は、271条 (a) の現在の(そして実際、将来の)違反であり、したがって、排除する権利を無効にするための懈怠の使用は、認められない、懈怠の抗弁の将来の使用になると、Odeticsは論じる。Aukerman, 960 F.2d at 1040-41, 22 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1335(懈怠の将来の使用を棄却)を参照。
しかしOdeticsの立場は、懈怠の範囲を狭く解釈し過ぎている。懈怠は、裁判所は「自分の権利の上に寝ていた人を支援しない」というエクイティ上の原則に確固として根差している。Lane & Bodley, 150 U.S. at 201。もちろん特許権者は、特許対象の発明の製作、使用、売出しまたは売却から他の人を排除する権利の上に寝ていてもよい。[*33] この権利は公衆に対して特許権者が保持する。排除する権利を正当な理由なく適時に行使しないことによって、特許権者は実質的に公衆に、懈怠期間中に侵害すること、つまり特許対象の発明の「製作、使用、売出しまたは売却」を認めることになる。そして「特許対製品の許可された販売は、その製品を特許の効力外に置く」ことは、確立している。McCoy v. Mitsubishi Cutlery, Inc., 67 F.3d 917, 921, 36 U.S.P.Q.2D (BNA) 1289, 1291(連邦巡回、1995)(Intel Corp. v. ULSI Sys. Tech., Inc., 995 F.2d 1566, 1568, 27 U.S.P.Q.2D (BNA) 1136, 1138(連邦巡回、1993)を引用)。同様に、懈怠期間中の侵害製品の販売は、特許の効力外である。特許権者はその期間に販売された製品の使用を後になって禁じることはできない。最高裁判所は次のように述べている。
「特許権者は ... 特許対象の機械に関する実施料を一回だけ得る権利をもち、したがって、特許権者自身が機械を製作し売却したとき、または他の人にその製作と売却、もしくは製作と使用と運用を認めたとき、・・・その範囲において特許権者は自分の独占権を手放しており、その機械におけるいかなる権利ももたない。」
Bloomer [*34] v. Millinger, 68 U.S. 340, 350, 17 L. Ed. 581(1863)。懈怠は、特許権者が提訴の提出前に売却された特許侵害製品を排除する権利を無効にすると本法廷は結論付ける。
地方裁判所が指摘したように、特許権者に、懈怠が過ぎた提訴前の製品のさらなる使用を禁じることを認めると、多くの場合、懈怠が特に排除する実施料を、特許権者が獲得することを認めることになる。Odetics V, 14 F. Supp. 2d at 791、47 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1579(バージニア州東部地区、1998)を参照。差止命令を利用すると、理論上は特許権者は少なくとも、提訴前の侵害製品の現在の使用者から妥当な実施料を取れることになる。Rite-Hite Corp. v. Kelley Co., 56 F.3d 1538, 1554, 35 U.S.P.Q.2D (BNA) 1065, 1076-77(連邦巡回、1995)(大法廷)(「[妥当な]実施料は、確定したものがあればそれ、またなければ、原告と被告の仮想上の交渉の結果とされるものに基づく」)を参照。実際、かかる使用者は、非侵害製品に移行する費用と同じだけの金額を支払うと予想される。非侵害システムへの投資を考えると、妥当な実施料よりもはるかに多額になるだろう。同上、[*35] 35 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1076(「仮想上の交渉は裁判所に、侵害が始まった時点での特許権者と侵害者との間で到達するライセンス契約の条件を想像することを要求する」(強調追加))参照。これらのインセンティブは特許権者に、公正な通知をするよりも待ち伏せ戦略を取ることを奨励する。たとえば本訴訟では、陪審は、妥当な実施料は保管ライブラリー・システム合計価格の4パーセントと判断した。非侵害の保管ライブラリー・システムへの移行費用は、元の価格の4パーセントよりもかなり高額であると仮定すると、Odeticsは正当な理由なしに訴訟の提起が遅れたことにより、利益を受けることになる。このような状況では、懈怠は、避けるべき抗弁というよりも利用すべき武器となりうる。つまり、懈怠が特許対象製品に関する生命力を維持するには、すでに指摘したように、告訴の提出以前に売却された製品を排除する権利を無効としなければならない。
地方裁判所が告訴前の製品に対する差止命令を拒絶したことは正しかった。
故意侵害を認定した際には、地方裁判所はその裁量で、3倍までの損害賠償金を裁定することができる。[*36] 35 U.S.C. §284(1994);Read Corp. v. Portec, Inc., 970 F.2d 816, 826, 23 U.S.P.Q.2D (BNA) 1426, 1434-35(連邦巡回、1992)、Markman v. Westview Instruments, Inc., 52 F.3d 967, 975, 34 U.S.P.Q.2D (BNA) 1321, 1326(連邦巡回、1995)(大法廷)により、他の根拠で破棄。本訴訟では、陪審は、STKが故意に侵害をしたと認定したが、地方裁判所は損害賠償額の増額を拒否した。Odetics VI, 14 F. Supp. 2d 800(バージニア州東部地区、1998)参照。Odeticsはこの決定を上訴する。
故意侵害では損害賠償額の増額が可能だが、地方裁判所は増額を強いられないという点で、法律は明確である。Read, 970 F.2d at 826, 23 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1435を参照。そうではなく、損害賠償額の増額の付与または拒絶の決定は、明確に、状況全体を知らされた地方裁判所の合理的な裁量の範囲にある。State Indus., Inc. v. Mor-Flo Indus., Inc., 948 F.2d 1573, 1576, 20 U.S.P.Q.2D (BNA) 1738, 1740(連邦巡回、1991)参照。したがって本法廷は、損害賠償金の増額の拒絶は裁量権の乱用であるか否かを検討する。SRI Int'l, Inc. v. Advanced Tech. Lab., Inc., 127 F.3d 1462, 1469, 44 U.S.P.Q.2D (BNA) 1422, 1427(連邦巡回、1997)を参照。
本訴訟においては本法廷は、裁量権の乱用を見出さない。要求されているように、[*37] Jurgens v. CBK, Ltd., 80 F.3d 1566, 1572, 38 U.S.P.Q.2D (BNA) 1397, 1401(連邦巡回、1996)参照、地方裁判所は、Read, 970 F.2d at 827-28, 23 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1435-36で強調された9要素を注意深くなぞることにより、損害賠償金の増額の拒絶の詳細な理由を提示した。Odetics VI, 14 F. Supp. 2d at 803-04参照。しかしOdeticsは、9要素のうちの3要素のみに言及し、(1) 地方裁判所は、第'151号特許が無効であるとのSTKの信念とされるものを考慮した点で誤っており、(2) 地方裁判所の結論とは異なり、本件は伯仲しておらず、(3) 侵害が10年継続したことは、懈怠の抗弁の認定によって軽減すべきではないと論じた。Odeticsは、地方裁判所がSTKに有利に認定した残りの4要素は扱っていない。つまりSTKは、発明をコピーせず、訴訟中に違反行為はしておらず、Odeticsを傷付ける動機がなかったことを証明し、その侵害を隠そうとはしなかった。またOdeticsは、STKが「侵害の存在に対する [*38] 実質的な異議および誠意を提示し」なかったとしても、訴訟の伯仲さを考えると、損害賠償金の増額を拒絶しただろうと地方裁判所が述べたことにも、言及していない。14 F. Supp. 2d at 805 n 9。地方裁判所の論理に対する本法廷の見解は、この文脈では、「正しい救済の決定においては複数の要素を斟酌する必要があるので、幅広い裁量権が第一審裁判所に与えられる」ということを念頭に置く。SRI, 127 F.3d at 1469, 44 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1427。本法廷は、損害賠償金の増額を決定しなかった理由を地方裁判所は適切に説明したと考え、そうした際に裁量権の乱用はしなかったと認定する。
同様な理由で本法廷は、地方裁判所はOdeticsに弁護士報酬を認定しなかった際に、その裁量権を乱用しなかったとも結論付ける。
2回目の陪審審理に先立ち、地方裁判所は、法律問題として、最初の審理における非侵害の判決と、その判決の本法廷によるその後の破棄との間の期間は、STK側に故意侵害があったとの認定から生じる損害賠償金増額の計算には含まれないと決定した。Odetics IV, No. 95-881-A, slip op. at 2(バージニア州東部地区、1998年2月12日)。陪審は故意侵害の存在を認定し、Odeticsは、審理後そして上訴前の期間の除外 [*39] は誤りであると主張して、この裁定を上訴する。しかし、地方裁判所は損害賠償金の増額の拒絶においてその裁量権を乱用しなかったとの本法廷の判断に鑑みると、審理後そして上訴前の期間が損害賠償金の計算に加えられるかには、争訴性はない。したがって、故意性の認定の限定の正しさに関して本法廷は見解を表明する必要はなく、表明しない。
STKは、Odetics II, 116 F.3d 1497, 1997 WL 357598(連邦巡回、1997)(表)における本法廷の指示を根拠に、「102条 (g) の抗弁」であると説明するものを含む、STKは無効性の争点をさらに争うことはできないとの地方裁判所の判断を交差上訴する。No. 95-881-A, slip op. at 3-4(1998年1月8日)(地方裁判所は「102条 (g) の抗弁を扱う裁判権」はもっていないと判断)によって明確化された。Odetics III, No. 95-881-A, slip op. at 1(バージニア州東部地区、1997年12月3日)参照。STKは、地方裁判所はOdetics IIにおける本法廷の指示を誤解していると論じ、陪審は「102条 (g) の抗弁」に関係する事実を特に認定していないので、Odetics IIにおける指示は、この争点 [*40] に関するさらなる訴訟を排除できなかったと指摘する。
本法廷は、本法廷自身の指示の解釈を新たに検討する。Engel Indus., Inc. v. Lockformer Co., 166 F.3d 1379, 1382, 49 U.S.P.Q.2D (BNA) 1618, 1621(連邦巡回、1999)参照。Laitram Corp. v. NEC Corp., 115 F.3d 947, 950, 42 U.S.P.Q.2D (BNA) 1897, 1899(連邦巡回、1997)も参照。「本法廷によって差し戻されない限り、上訴された判決の範囲内のすべての争点は指示の範囲内に組み入れられ、さらなる司法判断から除外される。」Engel, 166 F.3d at 1383, 49 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1621。Odetics IIにおいて本法廷は、最初の審理における陪審は、第'151号特許のクレームは無効ではない、つまり非新規でも自明でもないと明確に認定したと指摘した。1997 WL 357598, at *6参照。したがって本法廷は、STKによる102条 (g) の無効性の議論を検討することを拒絶し、「STKは実質上、特許性に関する陪審の評決を交差上訴せずに、特許性の問題を検討するように本法廷に要請している」と指摘した。同上。本法廷は、消滅時効の問題には触れず、本訴訟は「適切なクレーム解釈に基づく侵害の有無」の問題に関してのみ差し戻すと指示した。同上、at *7。
STKは本法廷に、Odetics IIの指示を取り消し、「102条 (g) の抗弁」のさらなる検討を認めるように、[*41] 本法廷が差戻し命令を修正するように示唆した。本法廷はOdetics判決からこの争点について要約した後、この申立てを棄却した。Odetics, Inc. v. Storage Tech., Inc., Nos. 96-1261, -1301(連邦巡回、1998年2月27日に提出された命令)参照。
無効性の判決をSTKが上訴しなかったことが、その問題に関する訴訟の継続を禁じるというOdetics IIに明確に記されている判断を、本法廷が変更すべき理由を、STKは提示していない。最初の陪審審理の後に、無効ではないとの別個の判決が登録されたことで、責任についての判決全体が上訴されたときに、第'151号特許の特許性は明らかに問題になる。Engel, 166 F.3d at 1383-84, 49 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1622(責任に関する上訴では、侵害と契約上の責任双方の争点が問題になる);合意Radio Steel & Mfg. Co. v. MTD Prods., Inc., 731 F.2d 840, 844, 221 U.S.P.Q. (BNA) 657, 660(連邦巡回、1984)(有効性または侵害への異議申立てを求める勝訴側当事者は、判決が別個である場合には交差上訴しなければならない)参照。第'151号特許が有効であるか否かの争点は、明らかに、最初の上訴において [*42] 上訴された判決の範囲に明らかに入っていた。STKはその争点を交差上訴しないと選択し、その争点のさらなる検討を排除した。Odetics IIにおいて本法廷はそのように判断した。本法廷は今日も、そのように判断する。
地方裁判所は、無効性の主張をさらに検討することを拒絶したことにおいて、正しかった。
STKはさらに、ある証拠の地方裁判所による排除を交差上訴する。STKは特に、故意侵害の問題には非常に関係があるとSTKが指摘する、その「102条 (g) の抗弁」にSTKが依拠していると公言した、および最初の審理に勝訴したという証拠を排除したことにおいて、地方裁判所は不適切に行動したと主張する。STKはまた、妥当な実施料の決定に関係するとSTKが主張する証拠である、第'151号特許に基づきOdeticsが許諾したライセンスの証拠を排除したことにおいて、地方裁判所は誤ったとも主張する。
証拠に関するこれらの決定は、特許法に限らない手続き上の問題を提起するので、本法廷は、この地方裁判所からの上訴が通常存在する巡回区の法律を適用する。たとえば、ATD Corp. v. Lydall, Inc., 159 F.3d 534, 548, 48 U.S.P.Q.2D (BNA) 1321, 1331(連邦巡回、1998)裁量上訴棄却、119 S. Ct. 1577(1999);Biodex Corp. v. Loredan Biomedical, Inc., 946 F.2d 850, [*43] 856, 20 U.S.P.Q.2D (BNA) 1252, 1256(連邦巡回、1991)参照。したがって本法廷は、証拠の排除を裁量権の乱用の観点から検討する。たとえば、Brown v. McLean, 159 F.3d 898, 904(第4巡回、1998)。証拠の排除は誤りであったとしても、その証拠の排除が「両当事者の実質的な権利」に影響しなければ破棄の理由にはならない。Mullen v. Princess Anne Volunteer Fire Co., 853 F.2d 1130, 1135(第4巡回、1988)(Fed. R. Civ. P. 61を引用)を参照。
STKは、以前にいわゆる「102条 (g) の抗弁」を主張した、および最初の陪審審理に勝訴したという証拠の排除は、故意侵害に対する抗弁において、非常に不利益であったと主張する。この証拠の欠如が、「STKの行動が故意であったという陪審の認定を、実質的に宿命付けた」とSTKは論じる。しかしこの主張は不適切である。「102条 (g) の抗弁」も最初の陪審審理の結果も、STKが最初に第'151号特許を知った日から何年も後に生じた。故意性を評価するための適切な時点とは、侵害者が通知を受け取った時点である。Johns Hopkins Univ. v. Cellpro, Inc., 152 F.3d 1342, 1362, 47 U.S.P.Q.2D (BNA) 1705, 1720参照。「102条 (g) の抗弁」や最初の陪審審理での評決など [*44]、後での展開の関連性は、控え目に見ても疑わしい。さらに、上訴によって排除された主張の証拠と同時に以前の審理の証拠を導入するのは、「陪審を混乱させる可能性がかなり大きい」。152 F.3d at 1363, 47 U.S.P.Q. (BNA) at 1720。地方裁判所はこの証拠の排除において、その裁量権を乱用しなかった。
1992年と1993年、Odeticsは第'151号特許に基づき、IBMとWestern Automationに2つのライセンスを許諾した。地方裁判所は、これらのライセンス契約は最初の侵害の日からそれぞれ4年後および5年後に交渉されたものなので、「関係するすべての事実と状況」に鑑みて「無関係」であったと決定した。「4年または5年が経過し、財務上の光景が大きく変化した後では、... まったく遅すぎる」と地方裁判所は理由付けた。ある状況では侵害後の証拠も関係するかもしれないが、「本裁判所の見解では、本訴訟においてはそうではない」、と地方裁判所は認識した。STKは、この決定は誤りであると主張する。
しかしこれは裁量権の乱用を構成しない。「[妥当な実施料の分析において要求される]仮想の交渉では、裁判所は、侵害が始まった時点で特許権者と侵害者間で到達したはずのライセンス契約の条件を想像しなければならない」ということを、地方裁判所は [*45] 正しく理解した。Rite-Hite Corp. v. Kelley Co., 56 F.3d 1538, 1554, 35 U.S.P.Q.2D (BNA) 1065, 1076-77(連邦巡回、1995)(大法廷)(強調追加)。Rite−Hite判決は侵害後の証拠の排除を要求はしないが、明らかにその登録は要求しない。争点である技術および「財務上の光景」が変化したという文脈では、ライセンス契約の時期のため、仮想交渉の分析にとってこれらの契約は無関係であるという決定において、地方裁判所は実質的な誤謬を犯していないと本法廷は判断する。
上記の理由により、本法廷はSTKを有利とするJMOLの付与を破棄し、陪審の評決の復活を命じる。しかし本法廷は、上訴された地方裁判所のその他の判断、裁定および命令には手を加えず、したがってOdeticsが提起した他の問題、およびSTKが提示した交差上訴を維持する。本訴訟は、以上の意見と抵触しない今後の手続きのために、地方裁判所に戻される。
訴訟費用
訴訟費用なし
一部維持 [*46]、一部破棄
反対者: LOURIE
反対意見: LOURIE巡回裁判所判事
私は、§112, P 6に基づく均等構造分析では、記載された手段に対応する構造の分解が認められないという判断、および、本訴訟において、その手段に対応する提訴された構造が均等であるという陪審の認定は、実質的な証拠によって支持されているという結論双方に、丁重に反対する。
クレームされた手段の開示された構造が、提訴されたデバイスの対応する構造とが均等であるか否かを判断する場合、その構造がどのような構成要素から構成されているかを見ないで、つまり、構造の分解をせずに何故そうすることができるのか、私にはわからない。これが、クレームされた構造と提訴された構造との間に構造上の詳細に重要な相違が存在するか否かを判断する、唯一の方法である。たとえば、本訴訟においては構造上の均等性は、開示された回転手段(ロッド、ビン、および歯型のギア)を、提訴されたビン列(ロッド、ビンおよびピン(カム・フォロワー))と比較することによって評価される。唯一の関係する構造上の相違は、歯型のギアとピンの違いであり、したがって、クレームされた手段がビン列に均等であるか否かを判断する際に評価すべきことは [*47]、この構造上の相違の意味である。
多数意見と私の意見との違いは、本質的に、多数意見が「構造」という単語の意味を誤解しているという私の考えから生じる。家の構造はその構成要素、つまり床、壁、屋根などから構成される。自動車の構造はその構成要素、つまり車台、エンジン、ホイール、座席、ボディーなどから構成される。化合物の構造は、その構成成分の名称、つまりその絵での表現から構成される。電気回路の構造は、トランジスター、抵抗、コンデンサーなどから構成される。これらの構造の他の構造との比較のための分析は、構成要素の分析を必要とする。我々は法律を明確にするという裁判所の機能を果たすには、この法律用語の真の意味に焦点を当てなければならない。
私は、実質的な証拠が陪審による均等性の認定を支持しているという多数意見の結論にも同意しない。多数意見は陪審による侵害の評決を支持するために、McCarthy博士の証言の中に、実質的な証拠を認定する。しかし私はEllis判事と同様に、この証言が [*48] 、§112, P 6の下での構造上の均等性にとって適切なものであるということに同意しない。そうではなく、McCarthy博士の証言は、クレームされたギアとカム・ファロワーが同一の機能、つまり「保管ライブラリーへのアクセスを可能にするための」ビン列の回転を行うことを証明したのみである。McCarthy博士の証言の多数意見が引用した部分が、このことを明らかにしている。つまり「貴方はピンを押してもいいしギアの歯を押してもいい。... この応用においては、ピンを押すこととギアの歯を押すことは完全に均等である ...」。「ギアをはずしピンをここに置く ...[提訴されたビン列構造]は完全に均等である ...」。注1 これらは皆、機能上の均等性の主張である。McCarthyは、滑らかなピンがクレームされた手段の歯型のギアと構造的に均等であることを証言できなかったので、そう証言しなかったのだろう。2つの構造が構造上均等であるというMcCarthyの生の主張は、その主張を支持する実質的な証拠なしでなされている。
注1 Odeticsによる構造上の均等性の論理に対する多数意見においてさえも、Odeticsは歯型のギアとカム・ファロワーが同じ機能を行うとの理由で主張していることを明確にしている。
Odeticsの均等性の論理は、クレームされた構造と提訴された構造との間の対応を指摘することであった。回転は、第'151号特許においてはギアの歯に力を与えロッドの回りでビンを回転させることによって達成され、提訴されたデバイスではカム・ファロワーに力を与え、やはりロッドの回りでビンを回転させることによって達成されることを指摘する。つまりOdeticsは陪審に、構造は§112, P 6の意味において均等な「回転手段」であると主張した。
Maj. slip op. at 14。
[*49]
ミーンズ・プラス・ファンクションの限定が、提訴されたデバイスにおける構造によって文言的に満たされるか否かを証明するするには、(1) 提訴された構造とクレームされた機能との間の機能の同一性、および、(2) 提訴された構造と開示された構造の均等性の証明を必要とする。Pennwalt Corp. v. Durand-Wayland, Inc., 833 F.2d 931, 934, 4 U.S.P.Q.2D (BNA) 1737, 1739(連邦巡回、1987)(大法廷)(「クレームの限定が文理的に満たされているか否かを判断するには、述べられた機能を行うための手段として表現されている場合、裁判所は記された機能を開示された構造と比較し、均等な構造、およびその構造に対するクレームされた機能を見付けなければならない」)(強調修正)を参照。テストのこの2つの部分は別個のものであり、文言侵害の証明に機能上の同一性にのみ依拠することは、§112, P 6を、その意図された限界を超えて拡張することになる。同上、4 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1739(「112条6項は、クレームに記されている機能を行うすべての手段が、文理的にその限定を満たすという可能性を排除する」)(強調削除)を参照。機能上の同一性に関するMcCarthyの証言は、構造上の均等性 [*50] を立証するという二重の役割は果たさなかった。Chiuminatta Concrete Concepts, Inc. v. Cardinal Indus., Inc., 145 F.3d 1303, 1309, 46 U.S.P.Q.2D (BNA) 1752, 1757(連邦巡回、1998)(§112, P 6に基づく侵害は、提訴されたデバイスがクレームの機能を行うことが分かっただけでは、必ずしも立証されない。構造上の均等性も示されなければならないと指摘)参照。歯型のギアとピンが交換可能であるとのMcCarthyの証言は、、構造上の均等性を証明するのには十分ではなかった。同上、46 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1757参照。
いずれにしろ本件は、構造上の均等性に関する専門家証言が特に役立つタイプの訴訟ではない。「回転手段」の構造に関係する技術は、比較的簡単なものである。Ellis判事が適切に要約したように、「開示された構造では、ギアは他のギアの歯に合った歯をもつディスクまたは円筒であり、開示されたギアが、ビン列に合わせて動く。一方カム・フラワーは、柄によって列に付けられた滑らかなピンであり、列とは独立に回転する」。Odetics Inc. v. Storage Tech, Corp., 14 F. Supp. 2d 807, 814(バージニア州東部地区、1998)。これは構造の分析である [*51]。上訴レベルでも、我々は争点の構造を容易に理解することができ、この問題に関して専門家証言は必要ない。§112, P 6に基づき構造上の均等性を検討するように適切に指示されれば、合理的な陪審は、機能の類似性にのみ焦点を当てることなく、開示された構造とクレームされた構造が構造上均等でないと結論付けることができただろう。注2 したがって私は、侵害についての陪審の評決とは無関係に、法律問題としての判決は適切に下されたと考え、したがって、部分的に丁重に反対意見を述べる。
注2 さらに、カム・ファロワーは特許に関して後発の技術ではないので、均等論に基づく侵害の存在も否定される。Chiuminatta Concrete Concepts, Inc. v. Cardinal Indus., Inc., 145 F.3d 1303, 1311, 46 U.S.P.Q.2D (BNA) 1752, 1758(連邦巡回、1998)参照。