連邦巡回裁判所に対する合衆国控訴裁判所

95-1350

原告・控訴人 REFAC INTERNATIONAL, LTD. および
FORWARD REFERENCE SYSTEMS, LTD.

被告・被控訴人 LOTUS DEVELOPMENT CORPORATION

原告・控訴人側弁護士Kenneth J. Kelly
ニューヨーク州ニューヨーク市のEpstein Becker & Green, P.C.所属

被告・被控訴人側弁護士Henry B. Gutman
ニューヨーク州ニューヨーク市のBaker & Botts, L.L.P 所属

書面上の協力者Kerry L. Konrad  Jeffrey E. Ostrow Lori E. Lesser

控訴の対象である判決:合衆国ニューヨーク南部地方裁判所
Sotomayor判事

連邦巡回裁判所に対する合衆国控訴裁判所判決

95-1350

原告・控訴人REFAC INTERNATIONAL, LTD.および
FORWARD REFERENCE SYSTEMS, LTD

被告・被控訴人LOTUS DEVELOPMENT CORPORATION

判決       1996年4月26日

裁判官    ARCHER首席判事、LOURIEおよびCLEVENGER巡回判事


LOURIE巡回判事の意見

Refac International, Ltd.と Forward Reference Systems, Ltd. ("FRS")は、FRSの特許は不公正行為を理由に執行不能であるという合衆国ニューヨーク南部地方裁判所の判決に対して控訴した。Refac Int'l. Ltd.対 Lotus Dev. Corp.判決 No.89 Civil 5094 (SS) (S.D.N.Y. April 17,1995)。発明者であるRene K. PardoとRemy Landau が不公正行為を行った旨の認定をするについて、地方裁判所が明らかに誤った事実認定や裁量権の濫用をしたということはないので、我々は、これを認容する。

背 景

問題の特許、合衆国特許第4,398,249号は、ソフトウェア・ソースコード・プログラムをオブジェクト・コードに変換する方法に関するものである。'249号特許の審査の過程で、審査官は、当初、1970年8月12日に提出された申請を、35 U.S.C. §112.1の下での開示の不適切を理由に却下した。これに対して、Pardoによる規則第132条の宣誓供述書が提出された。これは、申請にはプログラミング技術に熟練した者が特許請求の対象である発明を実現し利用することを可能にするのに十分な開示が含まれていると証言するものだった。37 C.F.R. §1.132 (1995) 参照(「却下の理由を否認する供述または宣言」)。更に、これに対応して、審査官は最終的決定を下した。

「この開示は、当該技術において通常の熟練を有する者が発明を実現し利用することを可能にするような水準であるとはみなされない。申請者が第2図に示したフロー・ダイアグラムは、プログラマーがプログラムを書くために必要とする程度まで詳細にはなっていない。第2図に書かれた全体的な概要は、更に、プログラムを書くのに必要な基本的要素になるまで詳しく記述される必要がある」

Pardoの宣誓供述書に対する審査官の意見は、次の通りであった。

「申請者による宣誓供述書は、自己の利益をはかるものであり、それ故に、明細書の開示が不適切であるという異論に対する証拠としての価値は非常に低いことが指摘されるべきである。申請者は、申請を出すことにより、35 U.S.C.§112に定められた法文上の要件を満たしている旨を表示している。開示がそこに定められた条件に合致していないという審査官の異論は、それを行った申請者による供述書によっては反駁することができない」

審査官による説明要求は、申請者に証明責任を負わせる。共同申請者による供述書は、最初に提出されて、異論を出された明細書と同様に、開示が十分であるという証拠にはならない。

発明者の弁護士であるR. Gale Rhodes, Jr.は、発明者以外の、経験と熟練度が異なる3名の者から、開示が十分であることを証言する宣誓供述書を提出するという戦略を提案した。彼が発明者達にその3名を選ぶことを要請したところ、彼らは、コンピューター研究者でコンパイラー作成者のPeter H. Jones、コンピューター・プログラマーのDavid H. Cikra、プログラマー監督者のRobert F. Bullenを推薦した。その後、これら3名からの宣誓供述書が、規則第116 条の修正申請書と共に提出されたが、それには、「当発明は、単にプログラマーだけでなく、コンピューター研究者やコンパイラー作成者にも向けられたものであり、クレームによって定義されている発明を実施することになるのは、当該技術に普通程度の熟練を有する、かかるコンパイラー作成者である」という記述があった。37 C.F.R.§1.116 (1995)(「最終決定後の修正申請」)参照

各宣誓供述書には、申請書の開示が十分であることを主張する意見や事実説明が書かれていた。Bullenの供述書は、平均的なプログラマーならば、申請が提出される前に知られていたプログラム作成技術を使って申請者の開示からコンピューター・プログラムを書くことができただろうと述べている。Cikraの供述書には、彼が開示だけを使って実際にコンピューター・プログラムを書いたこと、そして有効性を証明するためにそのプログラムを十分に検査したことが記載されていた。Jonesの宣誓供述書には、以下のような記載が含まれていた。

「〔私は、〕文書による開示と、この特許申請書の図面に示されたフロー・チャートから、1970年8月12日またはそれ以前に知られていたプログラム技術のみを使って、1970年8月12日およびそれ以前に必要なコードを作成できただろうし、それから詳細なコンピューター・プログラムを書くことができただろう」

これらの宣誓供述書に応えて、審査官は、承認通知を発した(注1)。ところが、発明者も宣誓供述者も、各供述者が発明者の会社であるLanpar, Ltd.とそれ以前に関係を持っていたとか、発明を商業的に具体化したLANPARプログラムについて事前の知識を持っていたとかについて、合衆国特許商標局("PTO")に開示していなかった。

'249号特許が発行された後、発明者達は、彼らが支配するもう一つの会社、FRSにそれを譲渡した。FRSは、Refacと契約を締結し、Refacが一カ月以内に少なくとも2名の侵害者とされる者を訴える義務と引換えに、'249号特許に対する5%の持分を譲渡した。RefacとFRSは、その訴訟から獲得した金銭を平等に分配することで合意している。1989年7月26日、Refacは、Lotus Development Corporation を含む、6名のソフトウェア発行者のスプレッドシート・コンピューター・ソフトウェア・プログラムが'249号特許を侵害していると主張して、彼らを訴えた。RefacがFRSを共同原告として加えるようにその不服申立を修正した後、Lotusを除くすべての被告に対して、その申立は却下された。1993年7 月29日と30日に、地方裁判所は、不公正行為ありとするLotusの抗弁に限定したベンチ・トライアルを行い、特許が不公正行為を根拠として執行不能であると判断した。その不公正行為とは、発明者達が、PTOを誤った方向に導いて特許を出させる意図を持った、重大な脱漏があるJonesの宣誓供述書を提出したことである。

地方裁判所は、3つの宣誓供述書のそれぞれを慎重に検討した。裁判所は、Bullenの宣誓供述書が、BullenがLandauと事前の関係を持っていたことを開示していなかったことを発見した。具体的には、Bullenが UNIVAC Canadaのコンサルタントだった時、彼は、その時にはBell Canadaに雇われているプログラマーだったLandauと一緒に働いていた。裁判所は、Bullenの宣誓供述書には、PardoとLandauが、Bullenが宣誓供述書を作成する前に、その発明を実施したコンピューター・プログラムがBell Canadaで使用されている旨を彼に告げたことも開示されていないことに気づいた。裁判所は、PTOにこのような脱漏のあるBullenの宣誓供述書を提出したことについては、不公正行為とならないという結論を出した。裁判所は、利害関係のない者から宣誓供述書をとる必要から、Bullenを供述人に採用することはできないかもしれないとか、BullenのBell Canadaとの接触やLanparとの関係が、PTOが開示を検討する際に重要視されるだろうとかについて、Landauと Pardoが理解していなかったと判断した。

裁判所は更に、Cikraの宣誓供述書にも規則第116条の修正申請書にも、Cikraが、LANPARプログラムのバージョンが別のソフトウェア・システムで作動できるようにするために、発明者達と共に作業したり、LANPARプログラム・ソースコードの部分的な検討を行ったり、プログラムが使用されているのを観察したりしたことが、開示されていなかったと認定した。地方裁判所は、Cikraの宣誓供述書におけるこの脱漏は、Bullenの供述書の中の脱漏と比べ、発明者の意図に関して核心に迫る疑問を提示しているけれども、いまだに不公正行為の明白且つ説得力ある証拠とはなっていないと考えた。裁判所は、Cikraがそのプログラムと限定された接触しかしていなかった、そして、慎重さがあればCikraの発明との接点を開示しただろうが、発明者達が特許訴訟を熟知していなかったことを考えると、彼らはCikraの関与がPTOに開示されるべきであるとは知らなかった、と認定した。又、裁判所は、Cikraの宣誓供述書に、彼が大学でコンパイラーのコースをとり、分類プログラムの経験を持っていた旨の記述がなかったけれども、発明者達や彼らの弁護士には、こうした情報が彼の宣誓供述書の評価に関連があると考える理由はなかったと認定した。

Jonesの宣誓供述書は、これらとは異なっていた。地方裁判所は、Jonesの宣誓供述書も規則第116条の修正申請書も、以下の事実を開示していないと認定した。

(a)   Jonesの宣誓供述書の作成前6カ月の範囲に入る、1972年1月と2月に、Jonesは、8週間足らず、Lanparのために働いていた。

(b)   宣誓供述書を作成する前の、Lanparにいた時期に、Jonesは、LANPARプログラムについて詳細な内部情報を得、そのコンセプトを理解した。

(c)   宣誓供述書を作成する前の、Lanparにいた時期に、Jonesは、LANPARプログラムの内部ロジックでLandauから直接の指示を受け、実行されたLANPARプログラムを見守り、それに関連するソース・コード表、フロー・チャート、その他の説明資料を検討した。

(d)   宣誓供述書を作成する前の、Lanparにいた時期に、Jonesは、後にLANPARプログラム・ロジック・マニュアルとして作成されたものの序章となる部分の原稿を書いた。

裁判所は、Jonesの宣誓供述書において脱漏された情報は、審査官によるその宣誓供述書の評価にとって重大であった、そして、発明者達は、PTOを誤った方向に導く意図でその宣誓供述書を提出したと認定した。裁判所は、Landauと Pardoは、Jonesの宣誓供述書の原稿と、最終的な供述書が作成された後は、供述書も送ってもらっていたので、Jonesの宣誓供述書を検討する機会を持っていたと認定した。更に、裁判所は、Pardoが、3名の供述人、特にJonesについての背景情報を弁護士に提供するについて、積極的に関わっていたことに気づいた。裁判所は、「JonesのLANPARプログラムについての広い経験と知識は、利害関係の無い者の宣誓供述書の本質と矛盾している」し、発明者達は、Jonesの宣誓供述書からその情報を脱落させることによってPTOを誤った方向に導く意図を持っていたと認定した。又、裁判所は、審査官がPardoの宣誓供述書に対応して却下を取り消すことをしなかったから、発明者達は、Jonesと発明との関係が重大なものであることがわかっていたとも判断した。

前にPardoの宣誓供述書が「自己の利益をはかるもの」として拒否されたことに照らすと、PardoとLandauは、特に、宣誓供述人達が、特許申請者達との関係や特許の対象となる発明に対する知識に全く触れることなく、学歴や職歴を詳細に示したような場合、合理的な審査官が宣誓供述書を検討すれば、供述人達が特許プロセスに知識を持たない利害関係のない証人であると結論づけるはずだということがわかっていた。逆の言い方をすれば、PardoとLandauは、この場合のPTO審査官が、宣誓供述書を評価する際に、利害関係の無い供述人がそれ以前に特許プロセスまたはそれを商品化したプログラムに接したか否かを知ることを重大視するだろうということを知っていたのである。(下線追加)。

裁判所は、「Jonesの宣誓供述書における詐欺的な脱漏の効果は、他の宣誓供述書の中の脱漏によって高められている」とも考えた。地方裁判所は、脱漏された情報の重要性を、発明者達の意図の証拠とあわせて考慮し、不公正行為の明白且つ説得力ある証拠ありと結論づけた。従って、裁判所は、Refacの不服を却下した。そこで、Refacは、控訴するに至った。


議 論

Refacは、全体的な状況はPTOを欺く意図を推測させないと主張している。Jonesの宣誓供述書は、事実の積極的な虚偽表示を含んでいないし、Refacによれば、それは、CikraおよびBullenの宣誓供述書との累積的証拠であるから、重大でないというのである。Jonesは、Lanparに対しても特許の申請に対しても、財政上およびその他の利害関係を持っていなかったから、発明者達は彼が利害関係を持たない者だと信じていたのであり、地方裁判所は不公正行為という結論において誤りを犯していると、Refacは主張している。

Lotusは、地方裁判所が、信頼性の適切な認定を行い、その判断において正しい裁量権を行使したと応じた。Lotusは、発明者達の弁護士が、特許を請求している発明と事前の関わりを持たない供述人を捜すように彼らに指示したことと、発明者達が、供述人達のLANPARプログラムに対する事前の知識を弁護士に知らせなかったことを指摘している。たとえ、Refacが言うように、Jonesが以前にLanparで働いていたことを発明者達が弁護士に告げていたとしても、弁護士は同じ開示義務を負っていて、その義務は果たされなかったのだから、特許は以前として執行不能であると、Lotusは主張する。

不公正行為の認定は、地方裁判所の裁量に委ねられている。従って、我々は、裁量権の濫用という点で、裁判所の判決を見直すことになる。Kingsdown Medical Consultants, Ltd.対Hollister Inc.判決、863 F.2d 867, 876, 9 USPQ2d 1384, 1392 (Fed.Cir.1988) cert.denied, 490 U.S.1067 (1989)。地方裁判所の裁量的決定を覆すためには、「申請者は、その決定が明白に誤った事実認定、または、適用すべき法律の誤った適用や解釈に基づいていることを証明するか、地方裁判所の側の明白な判断の誤りを立証しなければならない」。Molins PLC対Textron, Inc.判決、48F.3d 1172, 1178, 33 USPQ2d 1823, 1827 (Fed. Cir. 1995)。

不公正行為は、「欺こうとする意図を伴った、重大な事実の積極的な虚偽表示、重大な情報の不開示、または、誤った重大な情報の提出」からなる。Molins判決、48 F.3d, 1178, 33 USPQ2d, 1826(下線追加)。不公正行為ありと主張する者は、明白且つ説得力ある証拠によって、重大性と意図という出発点となる要素を証明しなければならない。同上、33 USPQ 2d, 1826-27。それがなされた時は、地方裁判所は、すべての状況に照らして、重大性と意図という出発点となる認定を行い、それらが不正行為があったとする結論を正当化するかどうかを判断しなければならない。同上Akzo N.V. 対United States Int'l Trade Comm'n判決も参照せよ。808 F.2d 1471,1481-82, 1 USPQ2d 1241,1247 (Fed. Cir. 1986)。(「重大性と意図は、あわせて考慮されなければならない。脱漏や虚偽表示が重大であればある程、不公正行為という結果に到達するため証明されなければならない意図は小さなものとなる」)cert.denied, 482 U.S.909 (1987)。「合理的な審査官ならば、申請に対して特許が出されることを許すか否かの判定において、その情報を重大だと考えるだろうという相当の可能性がある場合、その情報は『重大』である」 Molins判決、48 F.3d, 1179, 33 USPQ2d, 1827 (In re Jerabekを引用。789 F.2d 886, 890, 229 USPQ 530, 533 (Fed.Cir.1986)。LaBounty Mfg., Inc.対 United States Int'l Trade Comm'n判決も参照せよ。958 F.2d 1066, 1074, 22 USPQ2d 1025, 1031 (Fed. Cir. 1992)。

地方裁判所は、これらの要件をすべて満たしている。第一に、地方裁判所は、Jonesの宣誓供述書が重大な情報を脱漏していると結論を出したことで明白な誤りを犯してはいない。Jonesは、宣誓供述書を作成する6カ月足らず前に、Lanparで働いていた。供述書には、夏期の短期就業まで含むほど、細かく職歴が記載されていた。Jonesは、更に、発明を商品化したものであるLANPARプログラムに関する作業を行い、そのための文書も検討している。地方裁判所は、「Jonesは、1972年の宣誓供述書の中で彼が示した意見は、彼がLanparで働いている間に得た知識によって影響を受けていないと主張している」けれども、どのように宣誓供述書を作成したかを聞かれた時、Jonesは、申請書の開示を検討して、そのフロー・チャートが、Landauが彼に発明を説明した訓練セッションのうちの一回で、Landauが彼に示したものと本質的に同一であることを認識したと証言した。Jones自身の証言は、このように、宣誓供述書を作成した時点で彼が発明に関する事前の知識を持っていたことを示している。JonesのLanparとの関係およびLANPARプログラムに関する事前の知識について知ることは、当該審査官にとって、又、いかなる合理的な審査官にとっても、重要であったはずである。従って、地方裁判所は、この情報が重大であったと認定するについて明白な誤りを犯してはいない。

裁判所は、PTOを誤った方向に誘導しようとする意図の推断が全体的な状況によって裏付けられていると結論付けた点でも、明白な誤りを犯してはいない。発明者達には、Jonesの宣誓供述書がPTOに提出される前に、それを検討する機会があった。審査官がPardoの宣誓供述書で自己の利益をはかる性質と特徴づけたものを前提として、彼らは、却下の実体的な理由を覆すためには利害関係のない者からの宣誓供述書が必要であることをPTOから通知されていた。従って、発明者達は、拒絶を撤回して申請を認めるかどうかを決定する際には、そして、審査官が別にJonesの背景についての脱漏された情報を入手する方法を持っていなかった時は特に、供述人が発明について事前に知っていたという事実が審査官にとって重要であるとわかっていた筈である。Paragon Podiatry Lab., Inc.対KLM Lab., Inc.判決、984 F.2d 1182, 1191, 25 USPQ2d 1561, 1568 (Fed. Cir. 1993) 参照。「〔誤った方向に誘導する意図の〕推断は、単に宣誓供述書の重要性だけからなされているのではなく、それらを提出した積極的な行為、誤った方向に導くそれらの性質、審査官が事実を調査できないことなどからも由来している同上(下線追加)。

重要な事として、PTOを誤った方向に誘導しようとする意図があったかどうかの判定には、信頼可能性の判定が含まれている。発明者達の弁護士であるRhodesは、Jonesの発明者達との事前の関係や発明についての知識を問い合わせたが、発明者達は、Jonesの以前のLanparでの就業経験やLANPARプログラムに対する知識について、彼に告げなかったと証言した。彼は、更に、もし自分がそのことを知っていたら、その情報をPTOに開示するか、Jonesを供述人にしなかったかのいずれかであるとも証言した。しかし、Pardoは、自分の弁護士はJonesがLanparで働いていたことを知っていたと証言している。この互いに相いれない証言を前に、地方裁判所は、Rhodesの証言が発明者達のそれよりも信頼できると判定した。

LandauとPardoは、彼らがRhodesに、Jonesの職歴について話したと主張している。

我々はこの主張を信じていない。RhodesがJonesのそれまでの経験について知った後でJonesの宣誓供述書を受け取るというのは、理由がない。この情報が与えられていたら、Rhodesが証言しているように、宣誓供述書を提出するため、Jonesのような経験を持たない者を見つけるようにLandauとPardoに要請することが、彼にとっての明白な選択肢になっただろう。従って、私は、PardoとLandauが、Jonesの職歴をわざとRhodesに隠していたとの結論に達した(引用符省略)。

信頼可能性の認定を行うには、地方裁判所が最も適しているので、我々は、その認定に敬意を表する。Fed. R. Civ. P.52(a)参照Anderson対City of Bessemer City, North Carolina判決、470 U.S.564, 575 (1985)。(「認定が証人の信頼可能性に関する判断に基づいている場合、規則第52条(a)は、事実審裁判所の認定に更に大きな敬意を払うことを要求する。語られていることに対する聴取者の理解や確信に非常に大きく影響する、態度や声の調子の変化に気づくことができるのは、事実審裁判官のみだからである」)First Interstate Bank of Billings対United States 判決、61 F.3d 876, 882 (Fed.Cir.1995) 、Molins判決、48 F.3d, 1181, 33 USPQ2d, 1829。

地方裁判所の信頼可能性の判断が、誤った方向への誘導の意図の推断を裏付けているが、これは明らかに誤っているとは言えない。裁判所は、発明者達が、Rhodesが供述人達の背景を問い合わせた後になっても、JonesのLanparとの関係およびJonesのLANPARプログラムの知識をRhodesに告げなかったから、弁護士そして実際上PTOからこれらの情報を隠したことは意図的であったと結論付ける権利があった。早い時期のPardoの宣誓供述書に対する審査官の反応を考慮すれば、発明者達は、Jonesの発明に対する事前の知識が、申請を承認するか否かの審査官の決定に重要であること、それを開示しないことが特許を取得する可能性を増大させることを知っていた。Paragon判決、984 F.2d, 1191, 25 USPQ2d, 1568参照(「〔申請者の〕行為の当然の結果は、供述人達が『利害関係のない』者であると信じる方向に審査官を導くことであり、特許取得者達は、それに成功した」)。

不公正行為という結論に到達するため、重要性および意図の認定を検討するに当たって、裁判所は、Bullenと Cikraの宣誓供述書の評価も考慮に入れている。それらは、それ自身では不公正行為を構成しないものの、Jonesの供述書の効果を高めたのである。裁判所の全体的な評価を前提とすれば、我々は、不公正行為があったと判断するについて裁量権を濫用したとの結論は出し得ない。

Refacは、Paragon判決によって、「Lotusの証拠が '249号特許が執行不能と判断されるほどの不公正行為を立証するには程遠いことが示されている」と主張する。

Paragon事件において、審査官は、利害関係のない第三者からの宣誓供述書を求めた。それに応じて、申請者は、当該発明が従来技術に優る利点を主張する内容の、その分野の専門家からの3通の宣誓供述書を提出した。宣誓供述書には、次のような記述が含まれていた。

「私は、上の見出しの特許申請の権利の譲受人と理解される会社、 Paragon Podiatry Laboratoriesに、過去に雇用されていたこともなければ、将来雇用される予定もない」

Paragon判決、984 F.2d., 1191, 25 USPQ2d, 1568。彼らは、自分達がそれぞれ、譲受人たるParagonの株式を保有していること、彼らのうち、少なくとも一人が報酬を受ける顧問であったことを開示しなかった。我々は、宣誓供述人がParagonに雇用されていないという表示は「部分的真実の古典的な例」であること、供述人は「利害関係がない」者ではないことを述べた。更に、「各人がParagonを特許の譲受人であると『理解』しているとの不必要な記載は、彼らが自分達の会社と無関係であることを暗に示してもいる」同上、1191, 25 USPQ2d, 1569。我々は、申請者達が、PTOを誤った方向に誘導して特許を出させる意図で、重大な虚偽表示のある宣誓供述書を提出したと結論付けた。

Paragon判決の理由付けは、本件の事実審裁判所の判決の認容を支持するものである。ここでの行為が虚偽表示でなく脱漏であるという事実は、必ずしも異なる結果を導くものではない。いずれも審査官を誤った方向に導く可能性があるからである。審査官は、宣誓供述書の中の情報を、その前後関係の中で、適切な重みを与えながら評価することができなければならない。重要性にしても、Jonesの供述書の中の脱漏に由来する意図の推断にしても、その他の点では詳細な彼の職歴の記載によって重みを増される。従って、地方裁判所は、Jonesの供述書における利害関係なき者としての彼の立場に関する情報の脱漏が、PTOを誤った方向に誘導する意図でなされたと結論付けるについて、裁量権を濫用してはいない。

Refacは又、Jonesの宣誓供述書が、CikraやBullenの宣誓供述書と累積の関係にあること、従って、法律問題として、重要なものには当たらないとも主張する。Refacは、この主張を裏付けるために、Molins判決の以下の文を挙げている。「出されなかったとされる情報が、審査官によって考慮されたものと関連がない、または、単に審査官が考慮したものと累積の関係にある場合、その情報は重要でない」Molins判決、48 F.3d, 1179, 33 USPQ2d, 1827(Scripps Clinic & Research Found.対Genentech, Inc.判決を引用、927 F.2d 1565, 1582, 18 USPQ2d 1001, 1014-15 (Fed. Cir. 1991))。

Lotusは、発明者達が、Jonesの宣誓供述書が特許を認める唯一の理由でないことを主張して、自分達の不公正行為を隠すことは許されてはならないと応じた。Lotusは、このような考え方は、不公正行為があったと主張されるすべての事案で、審査官の決定プロセスへの調査を余儀なくすると述べている。

Molins判決からの引用文は、累積的な従来技術の記載に関するもので、累積的な宣誓供述書に関するものではない。Molins判決は、やはり累積的な従来技術の記載に関するScripps判決の中の議論を引用している。「単に他の記載と累積的な関係にある記載は、不公正行為の判断の前提条件である重大性の要件を満たさない」Scripps判決、927 F.2d, 1582, 18 USPQ2d, 1014-15(Halliburton Co.対Schlumberger Technology Corp.判決、925 F.2d, 1435, 1440, 17 USPQ2d 1834, 1839 (Fed. Cir 1991)を引用)。Halliburton 判決の事実も、PTOに開示されなかった累積的な従来技術の記載を含んでいた。Halliburton 判決、925 F.2d 1440,1443, 17 USPQ2d 1839,1842。我々は、提出された累積的宣誓供述書を、提出されなかった累積的従来技術と同じ立場に置こうとは思わない(そうすることが賢明だとはいえ)。累積的な先行技術の引用は、既に記録されていることに何かを付け加えるものではないから、必要ではないのに対し、誤った方向に誘導する宣誓供述書の提出を、それが累積的であるというだけの理由で、弁明することはできない。宣誓供述書は、たとえ累積的であっても、その性質上、重大なものである。宣誓供述書を提出するという積極的な行為は、信頼が置かれることを意図していると解釈されなければならない。不必要な行為を省略することとは、比較に値しない。

Jonesの宣誓供述書が、CikraやBullenのそれと累積的な関係にあるか否かも、結果に違いをもたらさない。Cikra、Bullen、およびJonesからの宣誓供述書のどの一つも、特許請求の承認という結果を招来するかもしれないので、各供述書は、それ自体、一定水準の重要性を持っている。Rohm& Haas Co.対Crystal Chem. Co.判決、722 F.2d 1556, 1571, 220 USPQ 289, 300 (Fed. Cir. 1983) と比較せよ。(「欺罔の主張が従来技術を提示しなかったことに基づいている場合とは異なり、誤った宣誓供述書の提出が重要でないと主張する余地はない」)cert.denied, 469 U.S.851 (1984)。審査官は、発明者自身の供述書に対応して特許請求を認めることはしなかったので、発明者達は、審査官が、供述人の発明に対する事前の知識や、発明者との関係を知ることを重要視するだろうと分かっていた。発明者は、複数の宣誓供述書の中で、誤った方向に導く供述書を提出し、後に、承認という結果を生んだのは誤った方向に誘導しなかった宣誓供述書であると主張して、結果として、欠陥供述書を治癒することはできない。

Refacは、更に、Jonesの宣誓供述書は証拠価値を持たず、従って、誤った方向に導く意図を推断するのに用いることはできないとも主張している。Refacは、1972年の特許審査手続便覧("MPEP")(注2)の第716 条を引用している。それは、次のように定めている。

以下の規準は、第132 条の下で提出された宣誓供述書または宣言書のすべてに適用される。・・・

(2)   宣誓供述書または宣言書は、結論ばかりでなく、事実も明記しなければならない。宣誓供述書または宣言書に提示された事実は、却下に関連のあるものでなければならない。そうでない場合、宣誓供述書または宣言書は、証拠価値を持たない(引用符省略)。

Refacは、Jonesの宣誓供述書の内容は意見だけであり、証拠価値を認められるためにMPEPのガイドラインによって必要とされている事実の記載を含んでおらず、それ故に、誤った方向に誘導する意図を推断するために使用されてはならないと主張する。我々はこれに賛成しない。却下を覆すために提出される宣誓供述書は、信頼が置かれることを意図している。供述人が、自分の誓約の言葉は真実である、または、何らかの脱漏があってもそれは重要でなく、欺罔の意図でなされたものでもないと主張していても、これらは証明および信頼可能性の問題であって、それに基づいて本件判決はRefacの敗訴となった。しかし、説得のために提出した宣誓供述書が、意見だけで、事実を含んでいないので欠陥があるとか、無視されるべきであるとか主張するのは、逆転判決を得られないばかりか、厚かましいという評価を与えられるだけである。Checkpoint Sys., Inc対United states Int'l Trade comm'n判決、54 F.3d 756, 763, 35 USPQ2d 1042, 1048 (Fed. Cir. 1995) 参照。発明者達は、却下を覆そうとして、PTOにJonesの宣誓供述書を提出した。彼らの責務は、選別された、誤った方向に導く開示ではなく、合理的な審査官が前後関係の中で宣誓供述書の意見を検討するのに十分な情報をPTOに提供することであった。発明者達はそれを怠ったので、後になって、MPEPのガイドラインを楯にして、彼らが目的をもってしたことが無視されるべきであると主張することはできない。Molins判決参照、48 F.3d, 1182, 33 USPQ2d, 1830 (「PTOと正面から向き合わない者は、後日、事実認定者が彼らに欺罔の意図ありと判定する危険を侵している」)。Precision Instrument Mfg. Co.対Automotive Maintenance Mach. Co.判決も参照せよ、324 U.S.806, 816 (1945)(特許が詐欺的に取得されていないことを見守る公益について説明)。

本件において、地方裁判所が認定した不公正行為は、関連の従来技術の不記載や重大な虚偽表示など、もっと一般的に(しかし、時として不適切に)不公正行為であると主張されるものは含んでいない。だから、ある者の職歴の一部分の脱漏が不公正行為であると認定することは、不当に厳しい、些細とも言えるような脱漏に対しては重い罰則であるように見えるかもしれない。しかし、地方裁判所は、部分的に信頼可能性の認定に基づいて、重要性と欺罔の意図をありと判断した。我々の検討基準を前提して、我々は、この判断が明らかに誤りであるとも、この結論が裁量権の濫用であるとも考えない。我々は、法律問題として、当該技術において通常の熟練を有する者にとっての特許明細書の適切性を示す目的を持つ宣誓供述書に記載されたある者の職歴の該当部分の脱漏が、発明者による同様の宣誓供述書がそれ以前に却下されている場合において、不公正行為を構成しないと考え ることはできない。

結 論

地方裁判所は、'249号特許が、不公正行為を理由に執行不能であると判断するについて、裁量権を濫用してはいない。

原判決認容

脚注

1.    承認の通知は、後日、最高裁のGottschalk対Benson判決、409 U.S.63, 175 USPQ 673 (1972) の後に、取り消された。申請は、その後、35 U.S.C. §101の下で、特許の対象となる主題の欠缺を理由に却下され、その却下は、不服申立審議会への不服の審理において認容された。発明者達は、税金および特許に関する控訴裁判所に控訴し、審議会決定を破棄する判決を得ることに成功した。In re Pardo判決、684 F.2d 912, 214 USPQ 673(CCPA 1982)。

2.    MPEPは、法律的効力を持たない。しかし、法令と矛盾していないことを条件に、当局の法令の公式の解釈として、司法上の告知がなされることができる。Molins PLC対 Textron, Inc.判決、48 F.3d 1172, 1180 n.10, 33 USPQ2d 1823, 1828 n.10 (Fed.Cir.1995) (Litton Sys.対Whirlpool Corp.判決を引用、728 F.2d 1423, 1439, 221 USPQ 97, 107 (Fed.Cir.1984))。