ARTHUR L. SERRANOおよびANDREW W. HOLMAN(原告-控訴人)

TELULAR CORPORATION(被告-被控訴人)
96-1308
合衆国連邦巡回控訴裁判所
111 F.3d 1578; 1997 U. S. App. LEXIS 8824; 42 U.S.P.Q.2D (BNA) 1538
1997年4月25日決定


原告弁護士:Michael J. Emilingカリフォルニア州ロングビーチ。協力者、Philip H. Haymond。
被告弁護士:Stephen J. Cassinイリノイ州シカゴ、Hamman & Benn法律事務所。書面上
      の協力者、Marvin N. BennおよびDawn M. Cassie。
裁 判 官:MAYOR, LOURIE, CLEVENGERの各巡回判事。意見LOURIE巡回判事。補足
      意見MAYOR巡回判事。

意見:

Arthor L. SerranoおよびAndrew W. Holman(「Serrano」と総称する)は、合衆国特許第4,775,997号および第4,922,517号が、Serranoにより侵害されたとの合衆国カリフォルニア州中部地区地方裁判所のサマリジャジメントに対し控訴している。Serrano対Telular Corp.判決, No. 94-CV-1272 (C.D.Cal.July17, 1995)。
 また、Serranoの再審理申し立ての却下を求めるTelular Corporationの申し立てを認め、Telularの弁護士報酬の請願を認める裁判所の決定に対しても、控訴している。Serrano対Telular Corp.判決, No. 94-CV-1272 (C.D.Cal.Feb. 9,1996)(Telularの弁護士報酬の請願を認める命令);Serrano対Telular Corp.判決, No. 94-CV-1272 (C.D.Cal.Nov. 17, 1995)(Telularの却下申し立てを認める命令)。
 地方裁判所は侵害に関する判決で誤りを犯さず、却下申し立てと弁護士報酬の請願を認めることにおいて裁量権を濫用しなかったので、我々は控訴を棄却する。

背景

 Telularは、第’997号特許と第’517特許を所有している。どちらも米国特許第4,658,096号の継続出願から付与されたものである。両特許は、実質的に同一の開示を含んでおり、標準的な回転ダイヤル式電話、タッチトーン電話、セルラー電話等の無線トランシーバー付きモデムなどの、通信機器のインターフェース用の方法および装置に関するものである。
 この発明品は、標準的な電話からのトーン・ダイヤルまたはパルス・ダイヤルのインプットを受信し、それを無線通信機に記憶させ、その後で送信するために、連続データ・ストリームに変換する。装置は自動的に、電話からいつ最後の数字がダイヤルされたかを判定し、それに応答してトランシーバーに送信信号を送る。第’517号特許は装置をクレームしており、クレーム1の一部は次のように記載されている。

1.  電話通信システムに使用される、電話ネットワークの一部である離れたセルラー無線送受信機システムとの無線通信が可能であるセルラー無線トランシーバーに、タッチトーン/回転ダイヤル型電話の信号を送ることのできる電話通信タイプの機器をインターフェースするためのシステムであり、以下のものから構成される:

 トランシーバー結合手段に送られた電話番号の数字グループの最後の数字を自動的に判断するための、電話番号デジタル変換手段に結合した判断手段、および

 電話番号の最後の数字が入力されたという前記の判断手段の判断に応答して、送信信号をセルラー・トランシーバーに送るための、前記の判断手段に結合した送信信号手段

 第’997号特許は方法をクレームしており、その特許のクレーム1の一部は次のように記載されている。

1.  電話通信システムに使用される、電話ネットワークの一部である離れた無線送受信機システムとの無線通信が可能である無線トランシーバーに、タッチトーン/回転ダイヤル型電話の信号を送ることのできる電話通信タイプの機器をインターフェースするための方法であり、以下のものから構成される:

 少なくとも電話通信タイプの機器でダイヤルされた電話番号の最後の番号を自動的に判断することからさらに構成され、結合する前記の段階、およびその後の送信のための、トランシーバーに切り替える前記の段階において形成される、数字的に変換された各数字の送信。

 「判断手段」と「判断する」段階のサポートとして、明細書は、いくつの数字がダイヤルされるかを判断するために、電話番号の最初の2、3の数字を分析することからなる数字分析を使う、好ましい実施例を開示している。たとえば、最初の数字が1で3番目の数字は1か0だったら、通常、中間の数字は地域コードであり、本システムは、通話は地域外の長距離通話であると想定し、送信信号を開始する前に11の数字がダイヤルされるのを待つ。いくつの数字がダイヤルされるかを判断するために、通話の最初の2、3の数字を分析した後、本システムはデジタル・カウンターを用い、最後の数字がいつダイヤルされるかを判断する。明細書はまた、数字「011」が前につく国際通話でのダイヤルにおいては、決まった数の数字がダイヤルされるとは想定できないと開示している。その場合、本システムはいつ最後の数字がダイヤルされたかを判断するのに、タイミング操作を使う。具体的には、1つの数字がダイヤルされてから3秒の間隔があいたときに、送信信号を発生させる。数字分析と時間切れ機構の双方が、ディスクリート論理回路に組み込まれていると開示されている。

 Serranoは、DialJackおよびMiniDialとして知られる製品を販売した。それらには、標準的電話を無線トランシーバーとインターフェースするのに、マイクロプロセッサーによるシステムが使われていた。問題となる機器は3種類ある。MiniDialバージョンIとDialJackは、いずれかの数字の入力から4秒間経過したときに、送信信号を発生させた。MiniDialバージョンIIは、受話器がはずれた状態によって起動したタイマーが切れた時点で送信信号を発生させた。Motorola適合のMiniDialは、特定の種類のMotorolaの電話に、数字がダイヤルされ変換されるのに合わせてその数字を送信した。

 TelularはSerranoに、DialJackとMinidialは第’997号特許と第’517号特許を侵害していると考えると通知した。SerranoはTelularに対して確認判決訴訟を提起し、特許無効、非侵害および不実施の確認を求めた。Telularは権利侵害で反訴した。サマリジャジメントで地方裁判所は、「判断手段」の限定内容を、数字分析の使用と時間切れ機構双方を含むと解釈し、明細書は、数字分析を行うための回路と時間切れ判定用のタイマーを開示していると認定した。原裁判所はまた、特許権者は特許の出願手続中に、ダイヤル終了の判断に時間切れ機構を使用することを排除するようには、クレームされた発明を指定しなかったと認定した。さらに原裁判所は、明細書は開示されたディスクリート論理回路に加えて、マイクロプロセッサーの使用を含めていると認定した。

 そして原裁判所は、DialJackとMiniDialのバージョンIとIIは、主張されているクレームを厳密に侵害したと結論づけた。モトローラ適合MiniDialに関しては、原裁判所は、明細書は発明者が、モトローラ電話の場合と同様、装置のある種の機構をトランシーバー内に組み込めると考えたことを示唆していると認定した。したがって原裁判所は、これらの装置が第’997号特許のクレーム1を侵害したと結論づけた。原裁判所はまた、Serranoが特許発明品を模倣し、無効または非権利侵害の意見を得ずにそうしたという証拠にもとづき、権利侵害は意図的であったとも認定した。

 Serranoは、特許は新しく発見された証拠にもとづき無効であると主張し、再審理を申し立てた。対抗してTelularは、Serranoの申し立てを削除(strike)する申し立てを提起した。原裁判所は、削除の申し立てを認め、弁護士報酬を求めるTelularの申立て(petition)も認めた。責任に関してTelularを支持するサマリジャジメントを裁定した後、地方裁判所は事実認定を行い、控訴されていない他の争点における法律問題に関する結論に到達した。両当事者は、権利侵害に対する補償としての損害賠償額に合意し、原裁判所は最終判決を登録した。Serranoはここに、本裁判所に控訴する。

議論

 サマリジャジメントは、重大な事実について真の争点がない場合に認められるもので、申立人は法律問題として判決を受ける権利を有する。Fed. R. Civ. P.56 (c);Johnston対IVAC Corp.判決、885 F.2d 1574, 1576-77, 12 USPQ2d 1382, 1383 (Fed.Cir.1989)。このように、サマリジャジメントは、「合理的な陪審が、申立人でない当事者に有利な評決を報告することができ」ない場合に、出されうる。Anderson対Liberty Lobby, Inc.判決、477 U.S. 242,248 (1986)。重大な事実についての真の争点があるかどうかを決定するにあたり、証拠は、申立に反対する当事者に最も有利な見方で、疑問は申立人でない者に有利に解釈して、検討されなければならない。Transmatic, Inc.対Gulton Indus, Inc.判決、53 F.3d 1270, 1274, 35 USPQ2d 1035, 1038 (Fed.Cir.1995)。我々は、地方裁判所のサマリジャジメントを、改めて検討する。Conroy対Reebok Int’l, Ltd.判決、14 F.3d 1570, 1575, 29 USPQ2d 1373, 1377 (Fed.Cir.1994)。

A.    侵害

 特許のクレームが侵害されたか否かを判断するには、2段階の分析が要求される。「第1に、クレームが、その範囲と意味を決定するために適切に解釈されなければならない。第2に、その適切に解釈されたクレームが、告発された装置または工程と比較されなければならない。」 Carroll Touch Inc.対Electro Mechanical Sys.,Inc.判決、15 F.3d 1573, 1576, 27 USPQ2d 1836,1839 (Fed.Cir.1993)。クレームの解釈は法律問題であり、我々は改めて検討する。Markman対Westview Instruments, Inc.判決、52 F.3d 967, 979, 34 USPQ2d 1321, 1329 (Fed.Cir.1995)(大法廷)、前記、116 S. Ct. 1384, 38 USPQ2d 1461 (1996)。

 第’997号特許のクレーム1-4と第’517号特許のクレーム1が、ここに本裁判所に控訴されている。Serranoは、地方裁判所がクレームを誤解したと主張する。クレームの「判断手段」と「判断する」段階の限定内容は、告発されたDialJackとMiniDialバージョンIおよびIIによっては満たされていないと主張する。Serranoによれば、「判断手段」と「判断する」段階の限定内容は、「判断する」という単語の辞書の定義に基づけば、ダイヤルされた最後の数字の特定を要求している。したがってSerranoは、告発された装置は最後にダイヤルされた数字を特定しないので、特許を侵害していないと主張する。Telularは、「判断手段」と「判断する」段階の限定内容は、いつ最後の数字がダイヤルされるかを判断するが、必ずしもその数字を特定しないと回答する。Telurarは、たとえば、最初の2, 3のダイヤルされた数字についてのみ数字分析を行い、最後にダイヤルされる数字を判断するために数字を数えるという、好ましい実施例に言及する。

 我々はまず、第’517号特許のクレーム1を検討する。このクレームの「判断手段」の限定内容は、最後の数字の判断のための手段を、その機能を支援する具体的な構造の説明なしに説明しており、したがってその限定内容は、35 U.S.C. §112, 6の要求事項を条件として、「ミーンズ・プラス・ファンクション」の限定である。Cole対Kimberly-Clark Corp.判決、102 F.3d 524, 531 41 USPQ2d 1001, 1006 (Fed.Cir.1996)(第112項6を適用するには、「ミーンズ・プラス・ファンクション」の限定内容は、説明される機能を行うための確定的な構造を説明してはならないと述べている)。また、Greenberg対Ethicon Endo-Surgery, Inc.判決、91 F.3d 1580, 1584, 39 USPQ2d 1783, 1787 (Fed.Cir.1996)(「〜のための手段」という表現の使用は、一般的に第112条P6を適用すると述べている)も参照。「ミーンズ・クロウズを含むクレームの厳密な文言侵害には、告発された装置が、手ミーンズ・クロウズで特定されているものと同一の機能を、明細書に開示されているものと同一のまたは等価な構造で行うことが要求される」。Micro Chem., Inc.対Great Plains Chem. Co., 103 F.3d 1538, 1547, 41 USPQ2d 1238, 1245-46 (Fed.Cir.1997)。

 クレーム1の「判断手段」が、最後にダイヤルされた数字の特定のみに言及しているというSerranoの主張には、我々は同意しない。明細書は、「本システムは、いつ電話番号の最後の数字がダイヤルされたかを判断する」と述べている。第’517号特許第10列第3-4行(下線追加)。この表明は、「すべての数字がダイヤルされた後で、インターフェース・システムが自動的に、いつ最後の数字がダイヤルされたかを判断する」と述べている発明の要約と合致している。同上第3列第3-5行(下線追加)。 本発明が、いつ最後の数字がダイヤルされたかを判断し、その数字を特定していないことは、明細書から明らかである。Serranoが提示した辞書の定義は、したがって明細書には合致しない。明細書から明らかな、「判断する」という単語の意味についての発明者の定義と説明が、そのクレームの用語の解釈を左右する。Vitronics Corp.対Conceptronic, Inc.判決、90 F.3d 1576, 1582, 39 YSPQ2d 1573, 1576-77 (Fed.Cir.1996)(それが特許または出願経過から明らかな場合は、特許権者がクレーム用語の定義を選択することができる)参照。したがって、「判断手段」の機能は、最後の数字を特定するのではなく、最後の数字がいつダイヤルされたかを判断することである。

 Serranoは次に、「判断手段」は数字分析を達成する構造に限定されるべきであると主張する。我々はそれに同意しない。明細書は最後にダイヤルされた数字を判断するための構造として、数字分析を行う回路を開示しているが、その数字がいつダイヤルされたかを判断するためのタイマーの使用も開示している。特に明細書は、「国際通話においては、数字の数を予め想定できないので、時間操作に依拠しなければならない」と述べている。第’517号特許第10列第35-37行。したがってSerranoが提示した、「判断手段」が数字分析を行う構造を要求するとの解釈は過度に限定的であり、明細書に開示されている複数の構造の表明に反している。Data Line Corp.対Micro Techs., Inc.判決、813 F.2d 1196, 1202 1 USPQ2d 2052, 2055 (Fed.Cir.1987)(ミーンズ・クロウズは、開示された構造およびその均等物を対象とするように解釈されなければならないと述べている)参照。開示された構造は、特定された他の構造も含め、特許明細書に説明されているものを含む。

 Serranoはまた、「判断手段」を実施する構造は、明細書に開示されている実施例で使用されたディスクリート論理回路に制限されるべきだと主張する。我々はそれに同意しない。明細書はかかる回路を、好ましい実施例として開示しているが、「論理的決定がソフトウェアに組み込まれたマイクロプロセッサーによるシステムも、使うことができることは、この分野で通常の能力をもった人ならば理解できるはずである」とも述べている。第’517号特許第10列第46-50行。したがって明細書は明確に、本発明はディスクリート論理回路の使用には制限されず、ソフトウェアにコントロールされて機能するマイクロプロセッサーを使って実施することもできると表明している。同上参照。したがって我々は、「判断手段」の限定内容を、いつ最後の数字がダイヤルされたかを判断する機能を意味し、数字分析または時間切れ機構の使用を含む構造を認めており、ディスクリート論理、ソフトウェアにコントロールされて機能するマイクロプロセッサー、およびかかる構造の均等物によって実施されると解釈する。告発されたDialJackおよびMiniDialバージョンIとIIは、明らかに、時間切れ機構を使っていつ最後の数字がダイヤルされたかを判断する、マイクロプロセッサー・システムを使用している。したがって、第’517号特許のクレーム1の範囲に含まれるかということに関する、重大な事実についての真の争点はない。

 次に我々は、第’997号特許の方法クレーム1を検討する。これは判断手段というよりも判断する段階を含んでいるが、「ステップ・プラス・ファンクション」形式にはなされていない。機能を説明していないからである。35 U.S.C. §112、6 (1994) 参照。むしろ、最後にダイヤルされた数字を判断する行為のみを説明している。したがって我々は、第112条P6の限定要求にとらわれないで、単にクレームの表現を告発された装置に適用しなければならない。明細書から既に説明したように、判断する段階では、いつ最後の数字がダイヤルされたかが判断されることは明らかである。告発されたDialJackおよびMiniDialバージョンIとIIはその段階を行っており、それは明らかに問題の唯一の限定内容である。Serranoはまた、告発された装置が、主張されている第’997号特許の従属クレームの限定内容を含んでいることには、異議を唱えていない。したがって、告発されたDialJackおよびMiniDialバージョンIとIIが、第’997号特許の主張されているクレームのいずれかの範囲に含まれるかということに関する、重大な事実についての真の争点はない。

 最後に、Serranoは、モトローラ適合のMiniDialは「判断する」段階を含んでいないので、第’997号特許のクレーム1を侵害していないと主張する。Telularは、その装置が同クレームを直接侵害していないとしても、寄与的に侵害しており、したがって地方裁判所の直接侵害の判決は無害な誤りであると応答する。我々は、モトローラ適合のMiniDialは、第’997号特許のクレーム1を寄与的に侵害しているとのTelularの主張に同意する。

 寄与侵害に対する責任は、「特許された機械の構成要素を・・かかる特許を侵害する使用に特に作られた、または特に改造されたことを知りながら・・合衆国内で販売する」者を含む。35 U.S.C. §271 (c) (1994)。直接侵害なくして寄与侵害はありえない。Met-Coil Sys. Corp.対Korners Unlimited, Inc.判決、803 F.2d 684, 687, 231 USPQ 474, 477 (Fed.Cir.1986)。地方裁判所は、モトローラ適合のMiniDialは、MotorolaMicrotacトランシーバーと組み合わさって、最後にダイヤルされた数字を判断するための時間切れ機構を使用しており、したがって、「判断する」ステップを満たしていると結論づけた。原裁判所はまた、両装置の組合せは、「送る」ステップも満たしていると結論づけた。Serranoは、これらの結論に関して重大な事実についての真の争点がないとの認定において地方裁判所が誤ったとは表明しなかった。

 Serranoはまた、第’997号特許の手続き中になされた説明により、クレーム1は送信信号の発生を要求するように解釈されなければならないと主張する。また告発された装置は、かかる信号を発しないので、同クレームを侵害していないと主張する。我々はそれに同意しない。Serranoが言及した出願経過での説明は、PTOに先行技術を提示する情報開示の説明の中に登場する。その説明において特許権者は、中でも、先行技術は「自動送信信号手段」を開示していないと述べることによって、提出された先行技術に対して発明を区別した。第’997号特許のある種のクレームは、「送信」信号の発生を必要としているが、クレーム1はかかる限定を列挙していない。先行技術が「送信」信号手段を開示しているかに関する特許権者の説明は、かかる信号の発生を必要とするクレームに対してのみ関係するが、それらのクレームは、ここでは主張されていない。逆にクレーム1は、数字の送信を達成するための「送信」信号の使用を特定せずに、数字の送信を要求している。もちろん出願経過における説明は、クレームの限定内容の意味を説明し、場合によっては制限するために使うことはできるが、Serranoが主張している解釈に対する根拠は存在しない。問題の説明は、同クレームに完全に新しい限定を加えるために使うことはできない。D.M.I.,Inc.対Deere & Co.判決、755 F.2d 1570, 1574 n.2, 225 USPQ 236, 238 n.2 (Fed.Cir.1985)(明細書または出願経過における限定は、そうする根拠がない場合にはクレームの内容として読み取ってはならないと述べている)参照。したがって、クレーム1は適切に解釈されれば、「送信」信号の発生を要求していない。

 原裁判所は、直接侵害の結論において誤った。Serranoが指摘したように、告発された製品は実際、クレーム1のすべての限定を含んでいない。しかし、告発された製品はMicrotacトランシーバーと組み合わされれば、主張されているクレームのすべての限定を含む。さらに、Motorola適合のMiniDialは、特に、そのトランシーバーと使用するために設計されており、主要商品ではなかったとの、異議のない記録の証拠がある。モトローラ適合のMiniDialは、クレーム1を直接侵害したと結論づけた点で地方裁判所は誤ったが、しかしこの装置は寄与的に同クレームを侵害していると我々は結論づける。地方裁判所の誤りは、Serranoが特許侵害に責任があるとの判決の正しさに影響しないので、この誤りは無害である。Fed.R.Civ.P.61参照。

B.    再審理の申し立て

 地方裁判所は、その地方規則7.16に適合していないとの理由でSerranoの再審理の申し立ての却下を求めるTelularの申し立てを認めた。我々は、我々の専属管轄権の範囲内にない問題を、地域巡回裁判所、本件では第9巡回区控訴裁判所の該当する法律にもとづき検討する。Cochran Consulting, Inc.対Uwatec USA, Inc.判決、102 F.3d 1224, 1228 n.3, 41 USPQ2d 1161, 1164 n.3 (Fed.Cir.1996)。連邦地方裁判所地方規則7.16はSerranoに、問題の文書について妥当な注意を払っても判決登録の前に知ることができなかったこと、および事実問題に関して判決前に裁判所に提示されたものと重大な相違をもたらすことを示すように要求している。Hinton対Pacific Enterprises, 5 F.3d 391, 393 n.2 (9th Cir.1993)参照。我々は、再審理の申し立てに対する地方裁判所の裁定を、裁量権の濫用に関する地方規則7.16にもとづき検討する。同上、395。

 Serranoはその第1の摘要書において、問題の証拠、つまりフィンランドの文書を1995年5月30日に受理し、その英語への翻訳は1995年6月21日に完成したと記している。文書の意味を確認するための翻訳にかなりの時間が必要であり、したがって、その裁判所への提示の遅れは非合理ではないと主張する。しかしSerranoは、なぜサマリジャジメントを求めるTelularの申し立てに関する1995年6月1日の裁判所での審理中に、少なくともその文書に裁判所の注意をひき、翻訳の時間を要請しなかったのかを説明していない。審理中に少なくとも2回、地方裁判所は両当事者の弁護士に、「何か他にあるか」と尋ねている。Serranoの弁護士は、このフィンランドの文書には言及しなかった。我々はまた、この文書には翻訳前にその意義を示すはずであった図面を含んでいることにも注目する。Serranoは、地方規則7.16の第1要件を満たさなかったので、このフィンランドの文書に関しては「終わり」である。この文書が事実問題に重大な相違をもたらすかという、判例法の他の要件を検討する必要はない。したがって、地方裁判所は、Serranoの再審理の申し立ての却下を求めるTelularの申し立てを認めたことにおいて、裁量権を濫用しなかった。

C.   弁護士報酬

 Serranoは、地方裁判所の判決は、本件がTelularの弁護士報酬の認定を認める例外的事例であるとの結論を支持しないと主張する。Serranoは、この認定は本質的に、Serranoが親特許の侵害で告発された以前の訴訟の問題を再提起したとの裁判所の判断にもとづくと主張する。DNIC Brokerage Co.対Morrison & Dempsey Communications, Inc.判決、14 USPQ2d 1043 (C.D.Cal.1989)、改訂、960 F.2d 155 (Fed.Cir.1992)(表)。* Telularは、SerranoがDNIC訴訟で既に判決が下された争点を再提起したとの理由で、弁護士報酬の認定は正当化されると回答する。Telularは、Serranoが、すでに判決が下されている発明者の要件と優先権の争点に関するある種の事実に合意することを拒否したことで、余分の費用と遅延が発生したと主張する。Telularはまた、Serranoによる訴訟における違反行為にも言及した。それにはSerranoが、親特許の侵害は主張されていなかったにもかかわらず、親特許を確認判決の申し立てから自発的に取り下げることを最初は拒否したことも含まれる。

 例外的な場合、裁判所は35 U.S.C. §285にもとづき弁護士報酬を認定することができる。弁護士報酬を認定すべきか否かは地方裁判所の裁量権の範囲内である。Seal-Flex, Inc.対Athletic Track and Court Constr.判決、98 F.3d 1318, 1325 40 USPQ2d 1450, 1455  (Fed.Cir.1996) 参照。地方裁判所はTelularの弁護士報酬の請願を認めたという点で裁量権を濫用しなかったということについて、Telularに同意する。地方裁判所は、Telularに不必要な経費をもたらしたSerranoの訴訟行為のいくつかの例を挙げた。たとえば、Serranoの行為により、TelularはすでにDNIC訴訟で決定済みの問題を再提起しなければならなかったと判断した。また、特許を侵害している製品の販売を禁じられた後でSerranoは、以前の製品とわずかしか異ならないDialJackとMiniDialの販売を開始したと判断した。Serranoは、Telularに弁護士報酬を認定した地方裁判所の判断が、裁量権の濫用に相当するとは示さなかった。Sensonics, Inc.対Aerosonic Corp.判決、81 F.3d 1566, 1574, 38 USPQ2d 1551, 1558 (Fed.Cir.1996)(訴訟における違反行為は、その訴訟を第285項の下での例外的なものとするのに十分であると述べている)参照。

 我々は両当事者のその他の主張を検討したが、それらは本控訴の解決のためには説得力も必要性もないと判断する。

結論

 地方裁判所は、事実問題において重大な争点はなく、Telularは、第’997号特許および第’517号特許の主張されているクレームが、DialJack、およびMiniDialのバージョンIとIIによって侵害されたと判断した点で、誤りを犯さなかった。モトローラ適合のMiniDialが第’997号特許のクレーム1を直接侵害したとの原裁判所の結論の誤りは、我々は、同装置がクレームを寄与侵害したと結論づけるので、無害である。地方裁判所は、Serranoによる再審理申し立ての却下を求めるTelularの申し立てと、弁護士報酬を求めるTelularの請願を認めた点において、その裁量権を濫用しなかった。したがって、我々は地方裁判所の判決と、却下の申し立ておよび弁護士報酬の請願を認める命令を維持する。

控訴棄却