原告: ARTHUR L. SERRANO、ANDREW W. HOLMAN

被告: TELULAR CORPORATION

CV 94-1272 JSL

合衆国カリフォルニア州中部地区連邦地方裁判所

1995 U.S. Dist. LEXIS 21476

1995年7月13日判決
1995年7月13日提出;1995年7月17日登録

処分決定: [*1] 被告Telular Corporationの部分的サマリジャジメントを求める申立てを許可。

弁護士: 原告ARTHUR L. SERRANOに対しては、Michael J Emling、Michael J Emling法律事務所、ロングビーチ、カリフォルニア州。原告ANDREW W. HOLMANに対してはMichael J Emling(前記参照)。

被告イリノイ州法人TELULAR CORPに対しては、Michael J Abbott、Glenn J Dickinson、C Edward Simpson、Jones Bell Simpson & Abbott法律事務所、ロサンゼルス、カリフォルニア州。Marvin N Benn、Stephen J Cassin、Dawn M Cassie、Hamman & Benn法律事務所、シカゴ、イリノイ州。Nicholas P Iavarone、Bellows & Bellows法律事務所、シカゴ、イリノイ州。

反訴者TELULAR CORPに対しては、Michael J Abbott、Glenn J Dickinson、C Edward Simpson、Jones Bell Simpson & Abbott法律事務所、ロサンゼルス、カリフォルニア州。Nicholas P Iavarone、Bellows & Bellows法律事務所、シカゴ、イリノイ州。

判事: J. Spencer Letts合衆国地方裁判所判事

意見の提示: J. Spencer Letts

意見: 事実の認定および法律問題に関する結論

 被告Telular Corporationの部分的サマリジャジメントを求める申立ては、1995年6月1日に正式に審理された。別個の決定により、本法廷は、部分的サマリジャジメントを求める被告の申立てを認めた。本法廷は慎重に、事実認定と法律問題に関する結論の案を検討し、それを実質的に、以下の事実認定 [*2] と法律問題に関する結論に組み入れた。本法廷は幾つかの認定をすることを却下したが、本法廷がこれらの認定が真実でないと考えていると推測されるべきものではない。

 提出されたすべての証拠と弁護士の主張すべてを考慮して、本法廷は、以下の事実認定および法律問題に関する結論を下す。

事実の認定

訴訟の背景

1. 本訴訟における原告かつ被反訴者はArthur L. Serrano(「Serrano」)とAndrew W. Holman(「Holman」)である。Serranoは、Morrison & Dempseyと、後にSerranoが、Telularの親特許U.S. Letters Patent第4,658,096号(第'096号)の故意の侵害者と認定された、DNIC Brokerage Company, d/b/a Metrofone, Inc. v. Morrison & Dempsey Communications, Inc. and Arthur Serrano, No. CV 87-3406 JSL(「Morrison & Dempsey訴訟」)という、本法廷の以前の訴訟における被告であったArthur Serranoと同一人物であ。

2. Serranoは、Morrison & Dempsey Communications, Ltd.の社長かつ株主であった(争われない事実No. 3、以下「事実No. 3」という)。

3. Holmanは、Morrison & Dempsey訴訟に関与した、Morrison & Dempsey Communications, Ltd.の副社長かつ [*3] 株主であったAndrew Holmanと同一人物である。SerranoとHolmanは合わせて、Morrison & Dempsey Communications, Ltd.の2/3を所有していた。Morrison & Dempseyへの金銭の投資に加えてHolmanは、AB1Xのためのソフトウェアを開発し所有し、それをMorrison & Dempseyにライセンスした。AB1Xは、Morrison & Dempsey訴訟で権利侵害していると認定された装置の一つであった。(事実No. 4;Holman Dep. 35)。本法廷は、Holmanは能動的にMorrison & Dempsey訴訟に関与し、Serranoとともに訴訟と被告の法人を指揮したと判断する。

4. その以前の訴訟において被告Morrison & DempseyとSerranoは、AB1X、AB3XおよびAB3XRとして知られる装置を含む、標準的な電話装置をセルラー型トランシーバーと接続するためのチップ & リング・インターフェース・システムを販売する事業を行っていた。

5. 本法廷は、特許第'096号は有効であり、Morrison & Dempseyの装置によって侵害されたと認定した。Morrison & Dempsey訴訟における本法廷の判決から数週間以内にMorrison & Dempseyは操業を停止し、SerranoとHolmanはパートナーシップを結成し、その後、「Cellabs」として事業を行った。判決に基づくTelularによるMorrison & Dempseyからの金の徴収はなかった。

6. 被告かつ反訴者であるTelular Corporation(「Telular」)は以前、Metrofone, Inc.として知られており、Morrison & Dempsey訴訟の原告DNIC Brokerage Company, d/b/a Metrofone, Inc.の権益承継人である。(「事実No. 2」)。

7. Telularは、Morrison & Dempsey訴訟で問題となった親特許である特許第'096号、および、二つの継続特許第4, 775, 997号(第'997号)と第4, 922, 517号(第'517号)の所有者である。第'997号と第'517号が本訴訟の係争事項である。特許第'096号、第'997号および第'517号は、チップ & リング中継線アピアランスを、セルラー型無線通信ネットワークとともに使用するためのインターフェース・システムに関連した発明を定義している。特に第'997号のクレームは、セルラー・ネットワークに使用される型の無線トランシーバーに電話通信型装置を接続する方法を具陳している。第'517号のクレームはセルラー型無線トランシーバーに電話通信型装置を接続するための装置を定義している。Telularは、特許第'096号、第'997号および [*5] 第'517号に説明されているインターフェースを生産しライセンスする事業を行っている。

8. 特許第'096号は1984年9月18日に出願され、1987年4月14日に認められた。特許第'997号は第'096号の継続であり、1987年4月8日に出願され1989年10月4日に認められた。特許第'517号は、結局は特許第'997号として認められた出願の継続であり、1988年9月15日に出願され1990年5月1日に認められた。三つの特許の明細書はすべて同一である。自明型の二重特許という、司法によって作られた法理を回避するため、特許第'096号を考えて、どちらの継続出願においても「終了修正」が提出された。したがってすべての特許は2004年4月14日に満了する。第'096号、第'997号および第'517号の発明の発明者は、William L. West, Jr.(「West」)とJames E. Shafer(「Shafer」)である。

9.  1993年、SerranoとHolmanは、彼らのCellabsパートナーシップの下で、標準的なチップ & リング装置とセルラー型トランシーバーを接続する装置の生産と販売を開始した。これらの製品は、「ダイアルジャック」および「ミニダイアル」と呼ばれた。

10. 1993年8月、TelularはCellabsのダイアルジャックとミニダイアルの装置に異議を申し立て [*6]、原告に特許第'997号と第'517号のクレームのコピーを送付した(事実No. 13;Serrano Dep. 200)。

11. 1994年2月、SerranoとHolmanは、Telularから、上記のCellabsのインターフェース装置はTelularの特許第'997号と第'517号を侵害しているとの書面による通知を受けた。

12. 1994年2月17日、Allianceが合衆国カリフォルニア州中部地区地方裁判所に、Telularの特許第'997号と第'517号を無効とする確認判決を求める訴状を提出した。Telularは侵害の訴えに対して反訴をした。この訴訟、No. 94 1065(RG)は、現在Gadbois判事の下で審理中である。

13.  SerranoとHolmanは、彼らの訴状から自発的に第'096号を取り下げることを拒否し、Telularに問題を申し立て説明するように要求した。訴状から第'096号を削除する被告の申立てに関する審理で、原告は申立てに対する法廷の裁定に先立ち、自発的に第'096号を取り下げた。

14. 1994年6月Telularは、SerranoとHolmanに対して反訴を提出した。SerranoとHolmanはその反訴に対する回答を提出した。

Morrison & Dempsey訴訟

15. Morrison & Dempsey訴訟において、本法廷は1987年11月6日 [*7] に、被告、および彼らと能動的に提携しているすべての人が、AB1Xまたは特許第'096号を侵害する他の製品の使用または販売を禁じる、被告に対する暫定的差止命令を出した。暫定的差止命令の登録から数週間以内に、被告はAB3XおよびAB3XRの販売を開始した

16. 1988年1月11日、Telularは本法廷に理由開示命令を申請し、AB3XおよびAB3XRは実質的にAB1Xに類似しているので、その配布は暫定的差止命令に違反すると主張した。命令の申請はMorrison & Dempsey、SerranoおよびHolmanに向けられた。申請に関する審理の後、本法廷は指名された被告が、AB3XおよびAB3XRを生産し使用し販売することを禁じる決定を出した。本法廷は侮辱問題に関する判断を正式審理まで留保した。

17. 1988年9月27日と1988年10月14日の間に、争点についての長い審理が行われた。約9日分の証言がなされた。本法廷の事実の認定と法律問題についての結論は、DNIC Brokerage Company v. Morrison & Dempsey Communications, Ltd., 14 U.S.P.Q.2D (BNA) 1043(C.D. Cal. 1989)に報告されている。

18. 正式審理中、本法廷は特許第'096号の有効性 [*8] の問題についての証拠、特に、先行発明、発明者、着想と実施化のための努力、予測および自明性に関する被告の主張に該当する証拠を審理した。本法廷は、WestとShaferは適切に特定された共同発明者であり、彼らは1984年5月にこの発明を考案し努力して実施化し、Serranoが実施化した1984年8月は第'096号の発明に先行してはいないと認定した。14 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1045, 1047。本法廷は被告が提出した先行技術を、それが先行技術であると考えるか否かに関わりなくすべて検討した。本法廷が検討した先行技術には、たとえばRACEやRTSとして知られるものも含まれた。本法廷は、これらの参照は、すでに特許商標庁(「PTO」)に提示されている先行技術以上の意味をもつものではないと結論付けた。14 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1046。

自明性および予見性

19. 本件で原告が提示したRACEやRTSを含む先行技術は、二つの継続特許に対し、それらの特許においてすでにPTOに提示された先行技術以上の意味をもつものではない。

20. 原告の専門家証人Fred HarrisとDan Chernoffは、すでにPTOが検討したものよりも意味のある先行技術を提出しなかった。Morrison & Dempsey訴訟において証拠として本法廷にまだ提示されていないとされた先行技術は、証拠610、611、612および613(Nordic System)と、証拠608、609および614(Ericsson)のみである。しかしEricssonの有料電話装置の文書の一つは、Morrison & Dempsey訴訟において本法廷に提出されていた。

21. Ericssonの有料電話は、意味のある先行技術ではない。参照されたEricsson、証拠614は、Morrison & Dempsey訴訟では証拠180-19として本法廷に提示されており、日付は1984年12月19日-1985年9月20日で、第'096号の出願以降である。(事実No. 36)。本裁判で提出されたEricssonの他の文書は、意味を付け加えるものではない。Ericssonの代表Lindellは、Ericssonとマレーシア政府との間の契約である証拠609は、インターフェースを開示していないと証言した。契約が公表されたとの証拠はなく、したがって争点である特許のいずれに対する先行技術でもなかった。Lindellはまた、その他のEricssonの有料電話の参照資料も、公表されていないか、第'096号の出願日以降に公表された [*10] と証言した。さらに、このEricssonの装置は、1984年9月18日以前には製作されなかったか、機能していなかった。(Lindell Dep. 69-71;73;87;90-91)。原告はこれらの供述について争っていない。(事実Nos. 36-38)。

22. Nordic Systemの参照資料、証拠610、611、612および613も同様に、PTOにすでに提出された技術以上の意味をもっていない。この参照資料は、セルラー・システムで使用されるインターフェース装置を説明してさえいない。つまり、プレオリジネーティング・ダイアルや、SENDコマンドを使用していない。(Lindell Dep. 45-46;77-78;80-81)。原告はこれらの事実について争っていない。(事実No. 35)。

23. 本判決の目的のために本法廷は、1995年2月10日に提出された「事実および法律問題に関する主張の覚書」に含まれている先行技術供述書の中で原告が提示したすべての参照資料を先行技術として受け入れる。これらの参照資料はいずれも、電話通信型装置とセルラー型トランシーバーのインターフェースを開示、教示または示唆するものではない。被告の専門家のいずれも、かかるチップ & リング・インターフェースを具体的に考えたときに、クレームがこれらの先行技術によって予測されたとは主張しなかった。

24. RACEやRTSは、第'096号の審査において特許庁に提示された先行技術よりも意味のあるものではないとの、Morrison & Dempsey訴訟における本法廷の [*11] の以前の裁定にも関わらず、原告は本件における重要な先行技術としてRACE&RTSシステムに大きく依拠し続けている。本法廷はこの依拠が誤っており、原告側の害意であると判断する。Morrison & Dempsey訴訟における証拠261であったRTSの参照資料も、すでにPTOに提示された先行技術を繰り返したものである。さらにRACEやRTSは実際、第'517号の手続き中に特許庁が検討している。これらの参照資料は意味のある先行技術ではない。RACEやRTSは、PTOにすでに提示されたさまざまな田舎の無線電話システムに似た、田舎の無線電話システムであり、第'997号や第'517号の発明品の環境とは異なる。

非自明性に関するその他の指標

25. 本法廷は、非自明性に関する他の指標を検討し、重要な事実問題についての真性な争点はないと判断した。本法廷はすでに、かかる要素を検討しており、全体として、非自明であるという主張に有利であると判断した。原告はこれに反駁する証拠を提示しなかった。特に、本法廷の1989年の裁定以来、発明の商業上の成功度 [*12] は増しており、原告はこの事実を争わなかった。

不公正な行為

26. 特許第'096号は、提示されたクレームに対する特許庁による制限なしに1987年4月14日に交付された。追加の技術が特許審査官Robert Levによって引用され記録された。

27. 1987年4月8日、Telularは特許第'096号の継続特許を出願した。継続特許出願でのクレームは、親特許で開示されたのと同じ発明を指示したクレーム、およびその発明の方法段階に対するクレームを含んでいた。継続出願のクレームは、特許第'096号に鑑みて、自明型の二重特許という司法によって作られた法理に基づき、特許性がないとして却下された。かかるクレームの特許庁による却下は、1987年8月26日の修正の提出によって回避された。

28. 1987年9月21日、Telularは、被告が提示した先行技術、MotorolaモデルQ1372A IMTS加入者ユニット使用説明書1973(証拠770)、Glenayre GL 2020移動トランシーバー・サービス・マニュアル(証拠769) [*13]、およびMorrison & Dempsey訴訟の結果としてTelularが発見した先行技術つまりE.F. Johnson 1154 セルラー・モービル使用説明書(証拠762)への参照を含む、情報開示供述書を提出した。これらの新しい先行技術のコピーも、供述書とともに提出された。被告の訴答摘要書に証拠169として添付された情報開示供述書。1987年9月25日、特許庁は1987年8月26日の修正に対する回答として許可通知を送った。その後特許審査官は、指摘されたこれらの先行技術を検討し、Motorola、GlenayreおよびE.F. Johnsonの上記の参照の横にイニシャルを記入することによって、1987年10月5日に様式PTO-1449に署名した。特許審査官は1987年10月6日付けの許可通知に見られるように、この先行技術を検討した後、継続出願のクレームを認めた。1987年11月9日、AT&Tネットワーク計画事業部基本ネットワーク計画課によるネットワークに関する注釈1980(証拠765)と、90935/36リモート及びマスター電話無線インターフェース・モジュール設置保守の実践、Dantel, Inc. 1981(証拠764)を含む追加の先行技術が、原告によって提出された。さらに、Lawson [*14] et al.特許第3, 856, 982号(証拠766)と、Mallien特許第4, 122, 304号(証拠767)が特許庁に提出された。特許審査官は1987年9月25日に継続出願のクレームを認め、特許庁は許可通知を交付した。提出されたクレームは、これらの追加の参照を組み入れた上で、すべて修正なしに認められた。基本発行手数料が1987年12月14日に支払われた。(事実No. 33;Cassie Decl.^6)。

29. 最初の継続出願第'997号は、1988年10月4日に交付された。

30. 特許庁は上記の先行技術すべてを検討した。そのことは本法廷に対し、特許第'997号の発明は単独で利用されるか特許庁に提示された他の先行技術と組み合わせて利用されるかに関わらず、それらの先行技術の上に定義されていることを示している。特許第'997号はMorrison & Dempsey訴訟中に交付され、証拠群180として本法廷に提出された。

31. すでに認定したように、参照されたRACEとRTSは、すでに検討された先行技術より意味をもつものではなかった。さらに、参照されたRACEとRTSは、単に、すでに検討された他の先行技術の繰り返しである。

32. 本法廷は、許可通知が出され、第'997号の出願に対し基本交付手数料が支払われた後に初めて、参照されたRACEとRTS [*15] がTelularの知るところとなったということは、争われていないと認定する。(事実No. 30、33;Cassie Decl.^3、6)。また、特許'997号が1988年10月4日に交付される前にRACEを検討する十分な時間をもつための、Telularの弁護士による提供要請にも関わらず、1988年9月13日になっても、Telularは参照されたRACEに関する完全な文書をもっていなかった。(事実No. 31;Cassie Decl.^31およびそれに添付されたEx. 2)。最後に、Telularは関連出願である第'517号でRACEとRTSを参照している。これらの一連の出来事は、詐欺的意図とは矛盾すると、本法廷は判断する。

33. 同様に、RACEとRTSは1989年9月15日以前にPTOに提出されており、また、特許第'096号と第'997号の審査に関わった審査官と同じRobert Levが特許第'517号が公布される数カ月前に先行技術を検討しているので、第'517号の審査で重要な先行技術の提出が差し控えられたとの証拠はなかった。本法廷は、第'997号と第'517号のいずれにおいても、詐欺の意図も、重要な情報の開示の不履行もなかったと判断する。

34. Telularの以前の専門家であるAndrew Lamothe(「Lamothe」)の意見の変更 [*16] とされるものに関しては、Morrison & Dempsey訴訟中にもその後でも、Telularやその弁護士による、意見の変更を示唆する供述はなかったと、本法廷は判断する。本法廷は、Lamotheの1994年8月25日の証言録取書の関連する部分を検討し、その証言録取書は供述とは矛盾しておらず、宣誓の下での反対尋問の際に、Lamotheが供述の重要な側面の多くを思い出せなかったことを示してもいないと判断する。

35. Lamotheが特許第'096号の有効性についての意見の変更を示唆したとしても、その変更は重要ではないと本法廷は判断する。Morrison & Dempsey訴訟において本法廷は、Lamotheが特に当てになる証人ではないと判断したが、彼の意見の幾つかには重さがあると考えた。Lamotheが現在異なる供述をしているとすれば、本法廷はその供述には重さは与えない。

侵害

36. 特許第'096号は、第'997号と第'517号の継続特許とともに、物理的かつ電気的に [*17] 電話通信型装置をセルラー・トランシーバーに結合し、インターフェース装置を通じて電話型通信装置が自動的にセルラー・トランシーバーの機能を制御できるようにする、電話型装置とその利用者に透明な、完全な電話インターフェース装置の最初の作品であることを、証拠は示した。これは、すでに製品がたくさんある分野でのささやかな改善とは異なり、比較的大きな突破口となった発明であった。

37. 争点であるクレームの表現は、特許第'096号のものとほとんど同じであり、訴訟の特許の明細書は特許第'096号の明細書と同一である。本法廷はすでに、特許第'096号のクレーム1から以下の要素を取り上げた。

 トランシーバーの結合手段に与えられる電話番号の最後の数字を決定するための、電話番号デジタル変換手段と結合した決定手段。

特許第'096号クレーム1、第15欄38-42行。

ほとんど同一の要素が、特許'517号のクレーム1に見られる。

トランシーバーの結合手段に与えられた電話番号の一連の数字の最後の数字を自動的に決定する、電話番号デジタル変換手段と結合した決定手段 [*18]。

特許第'517号クレーム1、第16欄3-6行。

38. 本法廷はすでに、Morrison & Dempsey訴訟の特許第'096号クレーム1の範囲を、「タイムアウト」を使う決定手段を含むと解釈した。その訴訟ではMorrison & DempseyのAB1Xは、ダイアルされた数字の6秒後にSEND信号が自動的に生成する、「タイムアウト」を利用していた。(事実No. 18;Serrano Dep. 48;106)。本法廷は、かかる「タイムアウト」は特許第'096号クレーム1の範囲に入るので、AB1Xはクレームを侵害していると判断した。(事実No. 20;14 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1046)。実際、Serranoはその正式審理中に証言台で、AB1Xは特許第'096号クレーム1のすべての要素に依拠していると認めた。第'997号や第'517号の審査経過やクレーム中の何物も、ここで争点となっているクレームの範囲を変えるものではなく、したがって本裁判でのその解釈を変更しないと認定する。

39. 本裁判では、告発された装置も「タイムアウト」を実施する。ダイアルジャックとミニダイアル(バージョン1)では、原告の専門家Daniel Chernoffが説明したように、装置は数字が入力されてから4秒後に自動的にSEND信号を生成する。(事実No. 24;Serrano [*19] Dep. 11-17;Chernoff Dep. 25)。原告自身がその証言録取書の中で、これらの装置はタイムアウト機能に関しては、正確にAB1Xと同様に機能すると証言した。

40. ミニダイアル(バージョン2)は、オフフックしてから6秒後にSEND信号を自動的に発生するというタイムアウトを利用した。(事実No. 25;Serrano Dep. 48)。ミニダイアル(バージョン1)と同様、タイムアウトの目的は、送信を開始するために最後の数字がいつダイアルされるかを決定することである。

41. 専門家の証言はすべて、訴訟の特許の明細書は、「タイムアウト」として知られる単独の、または原告の専門家が主張したようにデジタル分析と組み合わせた構造または機能を開示していることについて、一致している。したがって本法廷は、ダイアルジャック、ミニダイアル(バージョン1)およびミニダイアル(バージョン2)の利用されているタイムアウトは、明細書で説明されているタイムアウトの対応する構造または機能と同一であることについて、重大な事実問題についての真性な争点はないと認定する。

42. 明細書の表現がタイムアウトを具体的に開示していないとしても、最後にダイアルされた数字を決定 [*20] ためのタイムアウトの利用が、タイムアウトがいつ、そしていかに開始されるかに関わらず、明細書で開示されたカウント方法またはタイミング方法に等価であることについては、本法廷は、重大な事実問題についての真性な争点はないと認定する。

43. 原告SerranoはMorrison & Dempsey訴訟中に、AB1Xで使用されたタイムアウトは、特許第'096号のクレームに説明されているダイアル終了判定手段であると認めた。Serrano証言、原告の反対訴答摘要書のEx. A。原告は、告発された装置にはタイマーが使用されおり、タイマーの結果としてダイアルされた数字は、その後の通信のためにトランシーバーに記憶されるという目的のみのために、トランシーバーに送信されると認めた。本法廷はすでに、インターディジット(数字間隔)・タイムアウトは、問題の決定手段の範囲内にあると結論付けた。

44. ミニダイアル(バージョン2)に関しては、タイマーが各数字のダイアル後ではなく、電話型装置がはずされた瞬間から動きだすという事実は、数字のダイアル終了を判断するというタイマーの機能を変えない。特許明細書に説明されている構造と機能、つまりダイアル終了を判断するためのタイマーの利用は、告発された装置に使われたダイアル終了を判断するための構造と機能と同一 [*21] であるという事実が残る。告発された装置でと、特許のクレームでのタイマーの使用は、同じ機能を果たす。

45. 原告の証人、Ericsson TelecommunicationsのFilip Lindellの証言も、ダイアル終了は、数字分析かタイムアウトのいずれかによって判断できることを示した。(Lindell Dep. p. 53)。

46. 実際、特許明細書は、オフフックからの時間を測定する構造を説明し示している。特許第'997号第2欄52-55行;第5欄48行+;第6欄11行+。Westの特許には、電話内に再命令トーンを生成するためにオフフックからのタイムアウトを利用すると説明されているが、オフフック状態からの時間の測定のための構造が、明確に開示されている。

47. 専門家は、クレームの解釈および侵害に関しては争っていない。Telularの専門家O'Brienは、インターディジット・タイムアウトと、告発された装置に使われたオフフックからのタイムアウトは、ダイアル終了を判断するための手段であるという本法廷の解釈を、提出経過の注意深い検討の後に確認する。(規則26 (a) 開示、p. 4)。原告の技術専門家Fred Harrisは、機能的には、インターデジット・タイムアウトと、オフフックからのタイムアウトに違いはないと証言した [*22]。(Harris Dep. pp. 139-140)。原告のその他の専門家は、審査経過における付随条件がないとすれば、オフフックからのタイムアウトを利用するAllianceのCDL(バージョン2)のような装置は侵害しているだろうと認めた。(Chernoff Dep. pp. 103-105)。

48. 本法廷は、二つの特許の審査経過の中に、オフフックからのタイムアウトやインターディジット・タイムアウトが侵害しているとの解釈と矛盾する何物も読み取らない。たとえば参照されたGlenayreに関する特許権者の供述は、単に、Glenayreの装置が、ダイアルトーンの受信なしにはダイアルされた数字を送れないIMTS無線トランシーバーであることを述べているに過ぎない。参照されたGlenayreにおいては、5秒経過後に、ダイアルされた数字は無線トランシーバーの中に記憶され、無線トランシーバーと無関係の動きによって送られることはない。IMTSスイッチからのダイアルトーンが、数字の送信を開始させるものである。(被告の訴答摘要書の情報開示供述書Ex. 4)。

49. 証拠はまた、特許第'997号と第'517号のクレーム中の「電話通信型装置」という用語の使用は、原告の告発された装置で使われるタイプの装置であるモデム [*23] やファックス機、そして、警報システムによく使われるレパートリー・ダイアル・システムなどの、電話会社の標準的中継線に適合する他のチップ & リング装置を含んでいることを示している。

50. 原告が開発した、告発されたミニダイアルとCDL装置のあるモデルは、モトローラのセルラー・トランシーバーと使用するために作られた。これらのインターフェースがある種のモトローラ・トランシーバーと使われるときは、インターフェースはトランシーバーにSEND信号を送ることを要求されない。

51.    第一に、特許第'997号は、インターフェース装置からSENDコマンドを受け取ることを必要としないトランシーバーと使うための、インターフェース装置を説明している。

52.    第二に、特許第'997号と第'517号の発明者は、インターフェースは、さまざまなトランシーバーと使用するために、そのトランシーバーの特徴によっては修正されるかもしれないと予想していた。特許第'997号第4欄45-48行;第8欄24-29行。したがって、インターフェースの機能をトランシーバーへ移すためのインターフェースのかかる修正は、特許に説明されている。

53.    さらに、Cellabsのミニダイアルに関して原告の弁護士は審理で、数字はトランシーバーに一度に一回だけ伝わるだけであり [*24]、ダイアル終了の判断もインターフェースによる送信もないと主張した。この供述は事実に反する。原告のソフトウェア・プログラマー、CellabsでSerranoやHolmanと働いていたSamson氏は、装置は最後の数字がダイアルされたときを判断するためにインターディジット・タイムアウトを使用することを示すメモを提出した。4秒のタイムアウトの後、送信のために数字がトランシーバーに送られる。たとえば、Samson Dep. Ex. 8、ページ1で原告のプログラマーは、ダイアルされた数字はインターフェースに記憶され、最後の数字がダイアルされてから4秒間のタイムアウトの後、数字はトランシーバーに送られると供述している。またSamson Dep. Ex. 11では、3140ページから始まる「マイクロタック・プログラム」の説明は、最後の数字がダイアルされてから4秒後、インターフェースは数字をTRX(トランシーバー)に送ると述べている。p. 3142。(全般的には、Samson Dep. Ex. 8、11および12参照)。

54.    特許庁も、Westの特許を、ダイアル終了の判定手段としてのタイムアウトの使用を教えるものであり、デジタル分析には限られないと解釈した。(U.S.特許No. 5, 117, 450(Joglekar特許))[*25]。

55.    原告はまた、彼らの装置では、ミニダイアル(バージョン2)がオフフックされてから何も数字がダイアルされなかったとしてもSENDコマンドが生成されるので、訴訟の特許のクレームを侵害していないと主張する。本法廷はこの主張を受け入れない。通信のために数字をトランシーバーに送る段階だけである特許第'997号クレーム1では、SEND信号が生成されることは要求されない。さらに、かかる「数字がダイアルされない」というシナリオでは、原告の装置は意図されたように機能しない。数字がダイアルされなければ、いかなる場合でも、陸線や、別のセルラー電話への接続は起こらない。本法廷は、意図された目的のために使用された場合これらの装置は特許第'997号クレーム1-4に記されているすべての段階を実行すると認定する。

56.    本法廷は以前、離散論理回路の機能を実施するのにAB1Xはマイクロプロセッサーを利用したと認定した。この分野の技術をもつ人ならば、離散論理回路をマイクロプロセッサーで置き換えられるということは、第'096号の発明の発明者は十分に認識していた。Morrison & DempseyやSerranoの装置のマイクロプロセッサーは、第'096号 [*26] 明細書に説明されている装置の第112条における均等物であるとの以前の認定は、ここでは、特許第'997号と第'517号に適用される。この事実に関しても、専門家の間に争いはない。

57.    最後に、告発された装置における、数字のダイアルからではなくオフフック状態からのタイマーの利用は、特許のクレームを回避する「重要で実質的な変化または置き換え」ではない。オフフックからのタイムアウトは、特許に説明されているタイムアウトと実質的に同じ結果を達成するために、実質的に同じ方法で同じ機能を行う。

故意および例外的な場合

58.    原告は、Tellularの特許第'997号の実際の通知を、1988年10月にすでに受けていた。その継続特許はMorrison & Dempsey訴訟中に交付され、その訴訟での証拠として指定されていた。(事実No. 42)。

59.    原告はまた、特許第'997号と第'517号のクレームの通知を、Serranoが両特許のクレームのコピーをTelularから受理した1993年8月には得ていた。(事実No. 43;Serrano Dep. 200)。

60.    原告は再び、特許の通知と、原告の活動に対するTelularの異議を、1994年2月に受理し、そのときTelularは原告が不法な行為を停止するように要求した。[*27](反訴^8)。

61.    証拠は明らかに、原告は侵害行為または侵害の継続に踏み出す前に法的意見を求めず求めようともしなかったことを示している。Serranoは法的助言を得たことはなく、Holmanがそうするだろうとあてにした。(事実No. 40;Serrano Dep. 144)。Holmanは、少なくとも一回法的意見を受けたことを覚えているが、書面に書かれた意見を提出することはできず、書面または口頭での意見の詳細を思い出すこともできないと証言した。(事実No. 41;Holman Dep. 67-68)。

62.    原告は、AB1Xから始まり、ダイアルジャック、そしてミニダイアルへと、侵害する製品の開発に継続的に携わった。

原告は、ミニダイアル装置のソフトウェアが、SerranoとHolmanの指示および/または承認の下で開発されたAllianceのセルラー・データ・リンク(「CDL」)製品とほとんど同一であるということについて、争いさえしなかった。かかる製品は、故意と、Telularの特許の分別のない無視を示している。

63.    製品間の継続性とともに、本法廷は、Morrison & Dempsey Communications, Ltd.、二人の株主SerranoとHofman、およびその後設立された、Morrison & Dempseyの三人の株主と同じパートナーをもつパートナーシップCELLABS [*28] による、私利の継続を認定する。

64.    本訴訟における原告の行為に関して本法廷は、Morrison & Dempsey訴訟で十分に審理された争点に関して、本審理の争点の制限を定めることを原告が拒否したことに留意する。そのためTelularは、不必要な証拠開示に携わり、本訴訟では提起されるべきでなかった争点に関する証人や証拠を準備しなければならなかった。さらに、原告が、せいぜい単なる繰り返しであると本法廷がすでに認定した技術に依拠することによって、第'997号と第'517号は無効であるとの主張を続けたことは、害意のある訴訟戦術である。

法律問題に関する結論

1.      本法廷は、28 U.S.C.@@1331、1332および1338に基づき、本訴訟の係争事項に対する裁判権をもつ。

特許第'096号の有効性

2.      本法廷はすでに、DNIC Brokerage Company, d/b/a Metrofone, v. Morrison & Dempsey Communications, Inc. and Arthur Serrano, 1989 U.S. Dist. LEXIS 18939, No. CV 87-3406 JSLという裁判で、第'096号特許は有効で実施可能であると判決した。原告はMorrison & Dempsey訴訟において本法廷に出されていた、着想と実施への還元 [*29]、発明、自明性および予測に関する議論を含む、有効性と実施可能性という同じ問題を提起した。SerranoとHolmanは、実際にこれらの争点を争う機会を十分にもったので、無効性と実施不可能性の抗弁を本法廷に再訴することを禁じられる。Mississippi Chemical Corp. v. Swift Agricultural Chemicals Corp., 717 F.2d 1374, 1379, 219 U.S.P.Q. 577, 581(Fed. Cir. 1983)。

3.      争点効(collateral estoppel)の問題を決定するには、サマリジャジメントが適切な手段である。Stevenson v. Sears, Roebuck & Co., 713 F.2d 705(Fed. Cir. 1983)。

4.      SerranoとHolmanは、侵害製品であると司法で判断された製品から「見かけだけ異なる」製品を創作するたびに、特許第'096号の有効性と実施可能性を再訴することを認められるべきではない。A.B. Dick Comapny v. Burroughs Corp., 713 F.2d 700, 702(Fed. Cir. 1983)、裁量上訴棄却、464 U.S. 1042, 79 L.Ed.2d 171, 104 S.Ct. 707、差戻後確定、798 F.2d 1392(Fed. Cir. 1986)。

特許第'997号と第'517号の有効性

5.      特許第'997号と第'517号は有効である。交付された特許の有効性の推定は、法律35 U.S.C.@ 282により指示される。この推定は、「明確かつ説得力のある証拠によってのみ」覆される。Bausch & Lomb, Inc. v. Barnes-Hind, Inc., 796 F.2d 443(Fed. Cir. 1986)。原告はこの有効性の推定を反駁できなかった。

6.      特許の有効性の法的推定を覆す責任を果たすことは、無効性を主張する当事者が、すでに特許庁が検討した先行技術に依拠している場合、「非常に難しい」。Central Soya Cor. v. Geo. A. Hormel & Co., 723 F.2d 1573(Fed. Cir. 1983)。

自明性と予見性

7.      サマリジャジメントは、他の分野の訴訟と同様に特許の裁判でも可能であり、自明性に関する事実の調査によって、重要な事実に関する真正な争点が提起されない場合は、本法廷は法律問題として、特許の有効性に関するサマリジャジメントを求める申立てを適切に認めることができる。Ryko Mfg. Co. v. Nu-Star, Inc., 950 F.2d 714, 716(Fed. Cir. 1991)。

8.      Telularは、原告の自明性という主張を指示する証拠がないことを本法廷に示すという責任を果たした。Avia Group International, Inc. v. L.A. Gear California, Inc., 853 F.2d 1557(Fed. Cir. 1988)。Celotex [*31] Corp. v. Catrett, 477 U.S.317, 325, 106 S.Ct. 2548, 91 L.Ed.2d 265(1986)を引用。

9.      第一に、この分野の通常の技術レベルに関しては、重要な事実問題に関する真正な争点はない。本法廷はすでにMorrison & Dempsey訴訟で、技術レベルを「マイクロエレクトロニクス、セルラー無線および標準的な電話操作を組合せた分野での熟練」と定義した。DNIC Brokerage Co. v. Morrison & Dempsey Communications, Inc., 14 U.S.P.Q.2D (BNA) 1043, 1046(C.D. Cal. 1989)。

10.    原告は、以前の訴訟で本法廷がすでに検討したのものと同じ先行技術に依拠している。本法廷が、サマリジャジメントを求める申立てに関する審理で尋ねたとき、原告の弁護士は、この先行技術は別の見方をされる必要がある、あるいは、やはりセルラー・トランシーバーへのチップ & リング・インターフェースに限定されている継続特許の新しいクレーム中の何らかのことによって、この先行技術はより大きな意味をもつとの主張を提示しなかった。サマリジャジメントを求める申立てに関する審理の反訳記録(transcript)3/23/95 pp. 16-18。したがって、特にRACEとRTSのシステムを含め、参照された何ものも、通常の電話とセルラー型トランシーバーとの間のチップ & リング・インターフェースを示さなかった。14 U.S.P.Q. [*32] 2D (BNA) at 1046。

11.    本法廷は、原告が引用した「新しい」先行技術とされるものはいずれも、そして特にNordic移動電話システムとEricsson有料電話は、すでにPTOに提示された多数の先行技術よりも意味のあるものではないと認定する。参照されたかかる先行技術は、第'997号と第'517号の発明を予測しもしないし、自明にもしない。Kalman v. Kimberly-Clark Corp., 713 F.2d 760(Fed. Cir. 1983)。

12.    非自明性の他の徴憑(indicia)に関しては、重要な事実問題についての真正な争点はなく、サマリジャジメントは妥当である。Avia, 7 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1553。

特許庁における不公正な行為の証拠はない。

13.    特許の審査中の不公正な行為とされるものは、「少なくとも、最低限必要なレベルの重大性と欺く意図」についての明確で説得力のある証拠によって証明されなければならない。Specialty Composites v. Cabot Corp., 845 F.2d 981, 6 U.S.P.Q.2D (BNA) 1601, 1608(Fed. Cir. 1988)。被告は、不公正な行為をしたとの原告の主張は事実によってまったく支持されておらず、原告による害意(bad faith)のある訴答を構成する。

14.    本法廷は特許第'517号に関して、重要な先行技術とされるものはすべて [*33] PTOに開示されたので、法律問題としての不公正な行為はないと認定する。

15.    さらに原告は、第'997号出願の準備または審理に関連したいずれかの人が、特許庁への何らかの表明が虚偽または紛らわしいと考えていることについての証拠を、明確か説得力があるかに関わらず、何ももっていない。欺く意図についての明確かつ説得力のある証拠がなく、開示されていない先行技術の重要性の証拠もない場合には、不公正な行為の認定はない。Walker Process Equip., Inc. v. Food Mach. & Chem. Corp., 382 U.S. 172, 15 L.Ed. 2d 247, 86 S. Ct. 347(1965)。

16.    引用されなかった先行技術が重要であることが示されたとしても、重要性は意図を推定させない。これらは不公正な行為の別個で必須な要素である。Manutte Sales Corp. v. Paramount Sys., Inc., 917 F.2d 544, 552(Fed. Cir. 1990)。

17.    さらにTelularは、参照されたRACEとRTSの先行技術を特許第'997号の出願について最終手数料が支払われた後で初めて知り、関連する第'517号の出願でRACEとRTSを同じ審査官に提示した。これは、欺くという意図とは合致しない。Kimberly-Clark Corp. v. Proctor & Gamble Distrib. [*34] Co., Inc., 973 F.2d 911(Fed. Cir. 1992)。

18.    本法廷は、RACEとRTSが単にすでに審査官に提示された技術の繰り返しであると認定したので、その情報は定義によって、重要であるとはみなされ得ず、不公正な行為であるとの原告の主張はその基準でも支持されない。特許審査手続きマニュアル@1.56 (c)。

19.    Lamotheの伝聞供述が認められるとしても、当事者の専門家の意見変更とされるものを当事者が開示しなかったことに基づく不公正な行為の主張はありえない。原告はその論理を支持する法律を示さなかった。しかし本法廷は、Telularの弁護士へのLamotheの表明とされるものは、本件にとって重要ではないと認定した。この認定は、Lamotheの意見の変化とされるものに基づく不公正な行為の主張を終決させる。

侵害

20.    一般に、侵害があったか否かを判断するには、本法廷はまず、クレームの表現に注目しなければならない。Graver Tank & Mfg. Co. v. Linde Air Products Co., 399 U.S.605, 607, 85 U.S.P.Q. (BNA) 328, 94 L.Ed.1097, 70 S.Ct.854(1950)。さらに、各要素が告発された装置に発見されなければならない。Builders Concrete, Inc. v. Bremerton Concrete Producs Co., 757 F.2d [*35] 255(Fed. Cir. 1984)。これらの基準に基づき、ダイアルジャックとミニダイアルのバージョン1と2は、特許第'997号のクレーム1、2、3と4、および特許第'517号のクレーム1の各要素を侵害していることが示された。また、圧電信号を使うミニダイアル装置は第'997号クレーム14を侵害している。

21.    クレームの解釈は本法廷にとって、法律問題である。Hormone Research Foundation, Inc. v. Genentech, Inc., 904 F.2d 1558(Fed. Cir. 19)。実際、連邦巡回区裁判所は最近、「クレームの解釈は法律問題としてのみ適切に見られる」との原則を再確認した。Markman v. Westview-Instruments, Inc., 52 F.3d 967, 34 U.S.P.Q.2D (BNA) 1321,1333(Fed. Cir. 19)。したがって、クレームの解釈という争点は、サマリジャジメントを禁じない。Becton Dickinson & Cole v. C.R.Bard, Inc., 922 F.2d 792, 17 U.S.P.Q.2D (BNA) 1097(Fed. Cir. 1990)。

22.    クレームの解釈では、審査経過、その特許の他のクレーム、専門家の証言、そして勿論クレームの表現と明細書など、多くの要素が検討される。上記Hormone Research Foundation参照。さらに、この発明のパイオニア的性質 [*36] も考慮しなければならず、クレームに広く解釈される資格を与える。Texas Instruments, Inc. v. United States ITC, 805 F.2d 1558, 231 U.S.P.Q.833(Fed. Cir. 1986)。さらに、パイオニア的発明は明らかに、広範囲のものを等価物とする資格をもつ。Perkin-Elmer Corp. v. Westinghouse Elec. Corp., 822 F.2d 1528(Fed. Cir. 1987)。

23.    本法廷は、これらの要素をすべて検討し、争点のクレームは、「トランシーバー結合手段に与えられる電話番号の最後の数字を自動的に判断する手段」(特許第'517号クレーム1)としての、そして「少なくとも、電話通信型装置でダイアルされた電話番号の、最後にダイアルされた数字を自動的に判断することからなる、結合の一段階」(特許第'997号クレーム1、2、3および4)としての、そして「SEND信号がトランシーバーに与えられる時点を自動的に判断する」ことからなる方法(特許第'997号クレーム14)としてのタイムアウトを、オフフックからかインターディジットからかに関わらず含むと解釈されると結論付ける。

24.    さらに本法廷は、Morrison & Dempsey訴訟における、「タイムアウト」をダイアル終了の判断のために [*37] 使ったAB1Xは、その訴訟で争点であった特許第'096号のクレームを侵害したとのSerranoの以前の自認を考慮することができる。上記のように、継続特許の明細書は同一である。「タイムアウト」は明細書で開示されておらず、クレームの対象にもなっていないとの本件でのSerranoの主張は、本法廷での彼の以前の逆の立場を考えると、重みを与えられる資格はない。

25.    第112条に基づく文言侵害に関しては、出願者は特許明細書の中に、記された機能を行う構造を説明しなければならない。Valmont Industries, Inc. v. Reinke Mfg. Co., Inc., 983 F.2d 1039, 1042(Fed. Cir. 1993)。特許第'517号と第'997号の明細書は実際、「ある構造」、つまり、自動的にダイアル終了を判断し、その後SEND信号をセルラー・トランシーバーに送るという機能の実施のためにタイマーを使うことを説明している。Valmontにおいては、「裁判は機能的クレームの用語を、「明細書で説明されている対応する構造、材料または行為およびその均等物を含む」と解釈しなければならない。35 U.S.C. @ 112。」(強調追加)。同上、983 F.2d at 1042。告発された装置は文言的に侵害している。

26.    モトローラMicroTacトランシーバーを含む、さまざまなトランシーバーとの使用のための原告の [*38] の装置に関しては、特許明細書の表現は明らかに、インターフェースの機能をトランシーバーに移すことができると発明者が予測していたことを示していると、本法廷は判断する。さまざまなトランシーバーと使用するためのインターフェースのかかる修正は、侵害を回避しない。

27.    原告の、出願記録禁反言の主張に関して、参照された先行技術を区別するために審査中に特許権者が行ったすべての表明は、別個の禁反言を生じず、主張は文脈の中で検討されなければならない。Read Corp. v. Protec, Inc., 970 F.2d 816, 23 U.S.P.Q.2D (BNA) 1426(Fed. Cir. 1992)。審査経過のいずれにおいても、送信信号に結合したダイアル終了決定手段としてタイムアウトを含めないようには、特許権者はそのクレームを限定していない。

28.    文言侵害が存在しなかったとしても、告発された装置は、均等論に基づき侵害していると認定する。Valmontにおいては、均等論が、模倣者が実質的でない変更により特許のクレームを回避することを阻んでいる。本法廷は、SerranoとHolmanを、コピーした物をクレームの範囲外とする試みにおいて、「特許において重要でなく実質的でもない [*39] 」何も加えない「変更や置き換え」を行った「無節操な模倣者」であると認定する。同上、25 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1454(1950)。Graver Tank and Mfg. Co. v. Linde Air Products & Co., 399 U.S.605, 607, 94 L.Ed.1097, 70 S.Ct.854(1950)。

29.    本法廷はまた、明細書の表現はマイクロプロセッサーに基づくインターフェースの使用を開示しており、かかるインターフェースは、明細書で説明されているのと同じ機能をするのに使われる離散論理回路の均等物であると解釈する。本法廷は以前、特許第'096号と同一の明細書を検討し、同じ判断をした。

損害賠償

30.    Telularは侵害に対する補償として適切な損害賠償金を受ける権利をもち、それはいかなる場合も、侵害者による発明での利用に対する妥当な実施料と、本法廷が定める利子と費用を加えた金額以下ではないものとする。35 U.S.C.@284。

故意

31.    故意の侵害の認定に関しては、侵害者は、自分が問題となった行動をする権利をもつと考える妥当な根拠はもっていなかったと思われる。Resemount, Inc. v. Beckman Instr., Inc., 727 F.2d 1540, [*40] 221 U.S.P.Q. (BNA) 1(Fed. Cir. 1984)。侵害者が損害賠償の増額に値する害意をもって行動したか否かを判断するには、本法廷は、模倣の証拠、Telularの特許についての原告の知識、特許が無効もしくは侵害されていないとの善意の信念を形成する基礎となる原告の調査、および訴訟の当事者としての侵害者の振舞いを含む、状況全体を検討しなければならない。Bott v. Four Star Corp., 807 F.2d 1567, 1 U.S.P.Q.2D (BNA) 1210(Fed. Cir. 19)。本法廷は、この訴訟における原告の行為に関して明示的な認定を行った。

32.    さらに、原告はTelularの特許について知っていたので、彼らは通常、侵害または侵害の継続の前に、資格のある弁護士の法的助言を求めることを伴う、積極的注意義務をもっていた。Minnesota Min. & Mfg. Co. v. Johnson & Johnson Orthopaedics, Inc., 976 F.2d 1559 U.S.P.Q.2D (BNA) 1321(Fed. Cir. 1992)。原告はこの義務を怠った。文書での法的意見は存在せず、もし原告が、実際には提示していないが仮に口頭での意見の証拠を提示していたとしても、かかる口頭の意見とされるものは、法律では重視されない。同上。

33.    35 U.S.C.@284に基づき、本法廷 [*41] は、侵害は故意であり、Telularは三倍の損害賠償金を受ける資格があると認定する。原告は、すべての損害賠償金に対して連帯責任を負う。

弁護士報酬と費用

34.    開示と正式審理の準備を通じて、原告は、すでにMorrison & Dempsey訴訟で両当事者間で審理された争点の再審理を主張した。原告の不法行為の結果として、Telularはすでに審理された争点を証明するためだけに、経費のかかる、全国的な調査と審理の大がかりな準備をすることを、不必要に要求された。

35.    さらにSerranoとHolmanは、Morrison & Dempseyの代理人として、特許第'096号を侵害する製品を販売することを禁じられており、また、特許第'997号と第'517号の同様のクレームを十分に知っていた。それにも関わらず原告は、(かかってくる電話の探知なしのAB1Xである)ダイアルジャックとミニダイアルを販売し、AB1Xに見掛けの変更をしただけのミニダイアル・バージョン2製品を販売した。かかる行為はそれ自体で、本件を「格別な事例」とするのに十分であり、Telularは、本件のために必要だった妥当な弁護士報酬と費用を受ける権利がある。[*42] Kloster Speedsteel AB v. Crucible, Inc. 793 F.2d 1565, 1580-81, 230 U.S.P.Q. 81, 91(Fed. Cir. 1986)。原告は、Telularの弁護士報酬と費用に対して連帯で責任を負う。

36.    本件のような特許訴訟では、判決前および判決後の利子も考慮される。判決前の利子は、損害賠償が清算されたと認定された日から裁定される。

差止命令による救済

37.    Telularは、原告SerranoとHolman、ならびにそれぞれの原告の代理人、従業員、権益の承継人、譲受人および弁護士、ならびに、ダイアルジャックおよびミニダイアルIとIIを含むがそれに限らない、特許第'517号と第'997号を侵害する製品の生産、使用、販売または輸入を禁じるとの実際の通知を受けた人と能動的な協力関係にあるすべての人に対する終局的差止命令を得る権利をもつ。Fed.R.Civ.P.Rule 65 (d);35 U.S.C. @ 283。

38.    連邦民事訴訟規則の規則65 (d) に基づき、本法廷に提出された訴答と証拠の審問、および申立ての審理での弁護士の尋問の後、反訴者Telularを勝訴側とし、[*43] 被反訴者SerranoとHolmanを敗訴側とする、Telularへ裁定される損害賠償金額の問題以外のすべての問題についての、サマリジャジメントを記録する。

日付: 1995年7月13日

J. Spencer Letts
合衆国地方裁判所判事

部分的サマリジャジメントを求める被告の申立てを認める決定

 部分的サマリジャジメントを求める被告Telular Corporationの申立ては、1995年6月1日に適法に審理にかけられた。

 本件に関連して提出された書類を検討し、口頭での主張を聞き、関連する事実と法律を十分に評価し、

 ここに、部分的サマリジャジメントを求める被告Telular Corporationの申立ては認められる。事実の認定と法律問題についての結論は、別個の決定で出される。

以上の通り、決定する。

日付: 1995年7月13日

J.Spencer Letts
合衆国地方裁判所判事