WANG LABORATORIES, INC.、原告・上訴人
v.
AMERICA ONLINE, INC.、被告・被上訴人および
NETSCAPE COMMUNICATIONS CORP、被告・被上訴人
98-1363
米国連邦巡回控訴裁判所
1999 U. S. App. LEXIS 32841
1999年12月17日判決
訴訟の履歴: [*1]バージニア州東部地区連邦地方裁判所(裁判官、Leonie M. Brikema)の控訴審
処分: 原判決維持
弁護士: 原告・上訴人に代わって、カリフォルニア州サンフランシスコ、Gibson, Dunn & Crutcher LLPのA. James Isbester。上訴趣意書記載の他の弁護士として、ワシントンD.C、Gibson, Dunn & Crutcher LLPのTerence P. Ross。
被告・被上訴人、AmericaOnline,Inc.に代わって、ニューヨーク州ニューヨーク、Latham& WatkinsのRobert J, Gunther。上訴趣意書記載の他の弁護士として、John J. Kirby、Thomas G. Gallatin, Jr.、James S. Blank、およびバージニア州アーリントン、Nixson & Vanderhye, P.CのRobert W. Faris。
被告・被上訴人、Netscape Communicationsに代わって、カリフォルニア州サンフランシスコ、Dergosits & Noah LLPのTodd A. Noah。上訴趣意書記載の他の弁護士として、Michael E. Dergosites。
裁判官: 裁判長MAYER、巡回控訴裁判所判事NEWMANおよびGAJARSA
意見の記述者: NEWMAN
意見: NEWMAN、巡回控訴裁判所判事
Wang Laboratoriesは、米国バージニア州東部地区連邦地方裁判所の終局判決を不服として控訴した(注1)。この地方裁判所は、America OnlineとNetscape Communications Corporationが、1984年6月14日に発行されたWangの米国特許No. 4,751,669('669特許)によって主張されるクレームを文言上も、均衡論[*2]の下でも侵害していないとするサマリジャッジメントを下した。この判決は維持される。
注1 Wang Laboratories, Inc. v. America Online, Inc., 1998 U.S. Dist. LEXIS 6582, Civ. No. 97-1628-A (E.D. Va. May 6, 1998)
背景
「ビデオテックス・フレーム処理」という名前の'669特許は、既存のビデオテックス・システムで使用するために、1983年と1984年にWangの技術者によって開発されたオンライン情報システムに関するものである。クレームされた発明は、電話網を通じてインタラクティブな双方向通信により、コンピューター制御データベースからテキスト情報とグラフィック情報をユーザーに提供する。ビデオテックス・システムを使用すると、多くの情報サプライヤーからデータのページまたは「フレーム」の表示、取り出し、保存を行うことができる。'669特許の図1には、このシステムの全体が示されている。これは、加入者の装置が(12)双方向チャネル(16)を通じて、電話交換網(18)に接続され、その電話交換網は双方向[*3]チャネル(22)および(23)を通じて、サプライヤーの装置(20)および(24)に接続されることを示している。
[原本の図1を参照]
Wangは、AOLとNetscapeに対して、クレーム1、8、9、20、22-28、38の侵害を主張した。控訴では、Wangはクレーム20と38の侵害を強調している。クレーム20は、ユーザーが簡単に取り出せるように、特定のページまたはフレームに名前を割り当てることができるキーワード機能に関するものである。Wangは、これがAOLの「お気に入り」およびNetscapeの「ブックマーク」機能に相当すると主張する。
20. 情報フレームの中央ビデオテックス・サプライヤーから、選択した情報フレームを取り出すための装置。各情報フレームは、そのフレームを取り出すためにサプライヤーが割り当てた一意な識別子と関連付けられる。この装置は、次のものから構成される。
情報フレームを表示するために接続される表示デバイス
識別子と、オペレータが選択して、その識別子と関連づけられる一意なキーワードを保存するために接続される記憶の手段
キーワードを含むメニュー・フレームを表示デバイスに表示するために接続されるメニューの手段
選択した情報フレームと関連付けられるキーワードにカーソルを移動することによって、選択した情報フレームの取り出し要求を装置に入力するために接続されるデータ入力の手段
要求の入力に応答し、関連付けられた識別子をサプライヤーに送信することによって、情報フレームを取り出すために、データ入力手段に応答する[*4]ために接続されるプロセッサ
構造要素がミーンズ・プラス・ファンクション形式で示されているクレーム38は、情報が取り出されたときに多重プロトコルを識別し、アクティブにするために、保存されたページまたはフレームにタグを付ける機能に関するものである。
38. 中央ビデオテックス・サプライヤーから取り出された情報フレームをローカルに処理するための装置。異なるフレームは、別のプロトコルに従って符号化される。これは次のものから構成される。
情報フレームをローカルに保存するために接続される手段
フレームをローカルに表示するために接続される手段
表示するときにローカルに保存されたフレームを復号するために接続される手段
フレームを符号化するために、上記の様々なプロトコルの1つが使用されたことを示すヘッダを保存された各フレームに付加するために接続される手段
フレームのヘッダが示すプロトコルに従って、各フレームを配列された状態に復号するために接続される手段
サマリジャッジメントでは、主張されたクレームの解釈、特にクレームが情報フレームの処理と表示に関する特定の技術[*5]に制限されるかどうかに焦点が当てられた。'669特許発明がなされた時点で、コンピューターが生成するデータを処理し、表示するために、複数のプロトコルが存在していた。これには、大きく分けて文字ベース・プロトコルとビットマップ・プロトコルの2種類があった。文字ベース・システムでは、画面表示はグリッドに分割され、グリッド内の各セルに英数字などの文字が格納される。典型的な文字ベース・システムは、表示する文字を識別し、文字のサイズまたは背景色などの表示されるフレームの属性に関する指示を含む符号化されたバイトのストリームとして、加入者にデジタル情報のフレームを送信する。また、このシステムにはモザイク文字によってグラフィックを表示する制限された機能もある。文字ベース・プロトコルではグリッド・ベースで文字だけが表示されるのに対して、ビットマップ・プロトコルは表示モニターの個々のピクセルを参照して、画像を符号化する。訴えられたAOLとNetscapeのシステムは、今日ほとんどのインターネット通信で使用されているビットマップ・プロトコルを使用している点には争いがない。
両当事者が専門家による証言を行った審理の後[*6]、地方裁判所は、争われている全てのクレームは文字ベース・システムに制限されると解釈した。この解釈は、裁判所による「フレーム」という用語の定義に基づいている。この用語は、次のようにクレームの至る所で使用されている。「これは、表示の前に組み立てられる情報のページである。これは文字ベース・プロトコルに符号化され、次に、行と列などの固定的な画面全体の配列で、英数字および図形文字として画面上に表示される」。また、裁判所はクレームされたシステムがアクセスするデータのサプライヤーは、文字ベース・プロトコルで符号化した情報フレームを提供する必要があると判示した。このクレームの解釈は適切であり、本裁判所もこれに従う。これは、'669特許の明細書が文字ベース・プロトコルに制限されており、出願経過もこの制限を支持しているためである。このクレームの解釈に基づいて、地方裁判所は35 U.S.C.§ 121 P6および均等論に基づく侵害を含む、文言上の侵害がないことを示すサマリジャッジメントを下した。
クレームの解釈
侵害の決定は、2段階の分析手続きである。第1段階では、クレームを法律問題として解釈し[*7]、次に訴えられた装置すなわち事実問題に適用する。EMI Group North America, Inc. v. Intel Corp., 157 F.3d 887, 891, 48 U.S.P.Q.2D (BNA) 1181, 1184(連邦巡回控訴裁判所、1998); Multiform Desiccants Inc. v. Medzam Ltd., 133 F.3d 1473, 1476, 45 U.S.P.Q.2D (BNA) 1429, 1431(連邦巡回控訴裁判所、1998)を参照。地方裁判所のクレーム解釈によって、侵害の事実問題も解決されることがある。Markman v. Westview Instruments , Inc., 52 F.3d 967, 989, 34 U.S.P.Q.2D (BNA) 1321, 1337(連邦巡回控訴裁判所、1995)(大法廷)(Mayer, J. 補足意見)(「クレームの意味を決定することによって、たいていの事案は解決する)。
控訴において、Wangは、地方裁判所が採用した「フレーム」の狭い定義は、明細書によって支持されず、出願経過によっても要求されず、クレームの全体的構造によって否定されると主張する。しかし、本裁判所に提出された記録に基づいて、我々は地方裁判所のクレーム解釈は適切であったと判断する。
明細書
両当事者は、「フレーム」という用語の一般的な用法は、文字ベース[*8]システムだけでなく、ビットマップ表示システムにも適用されることに地方裁判所で合意し、両者の専門家はそのように証言した。争いがあるのは、'669クレームの「フレーム」という用語がこの一般的な用法の意味を含んでいるのか、それとも、この分野で通常の技量を有する者によって、'669特許に記述されている文字ベース・システムに制限されると解釈されるのかという点である。地方裁判所は明細書からその分析を始めた。Slimfold Mfg. Co. v. Kinkead Indus., 810 F.2d 1113, 1116, 1, U.S.P.Q.2D (BNA) 1563, 1566(連邦巡回控訴裁判所、1987)を参照(クレームはその一部である明細書に照らして解釈される)。
'669特許で、フレームという用語が使用され、定義されている典型的な例には、その発明で使用されるビデオテックス・システムを説明している明細書の次の文章がある。
ビデオテックス・サプライヤーは、無数のページ(フレーム)の形式で、様々なソースから供給される情報を電子的に保存する。各フレームは、加入者の場所で陰極線管(CRT)に表示するための(行と列などに整列される)英数字または図形文字の集合を表現している。
'669特許、列1、行16-22。この文章は、明細書の類似の説明全て[*9]と同様に、「文字」のみについて記述されている。Wangは、特許で使用されている「フレーム」という用語は、選択し、表示することができるデジタル・データのユニット一般を示し、文字ベース・プロトコルの使用に制限されていないと主張する。このため、上に引用したパラグラフで、Wangは「英数字および図形文字」の表示には、文字ベース表示とビットマップ表示の両方が含まれうると主張する。また、Wangはカッコの使用「(行と列などに配列される)」は、上記の一節にある「フレーム」の文字ベースの制限は単なる例にすぎず、その表示が文字ベース表示システムのグリッド上のパターンである必要はないことを意味しているとも主張する。Wangは、地方裁判所でこの主旨の専門家証言を行った。
AOLとNetscapeは、「文字」と組み合わせて「フレーム」を使用することによって、発明は文字ベース・プロトコルに制限されていると主張し、Wangの見解に異議を唱えている。AOLとNetscapeは、この主旨の専門家証言を行い、'669明細書は一貫して文字ベース・プロトコルとの関係でのみ「フレーム」を説明していると指摘する。また、被告はデコーダー・モジュールのソフトウェア・フローチャートを示している図6[*10]など、表示の詳細を含む特許の図面では、受信、復号、保存、および表示されるものとして、文字ベース・プロトコルだけが示されていると指摘している。
[原本の図6を参照]
'669明細書は、「保存されたフレームを表示する場合には、(図6のデコーダー・モジュール)は文字と属性を復号して」、復号された文字を文字ベース表示モジュールに配信しなければならないと記述している。これに続いて、次のような記述がある。「この結果、画面上の行と列の位置ごとに、英数字または図形文字を表示することができる」。
'669明細書および図面で記述され、実施可能になる唯一のシステムは、文字ベース・プロトコルを使用している。明細書は、たとえば「発明の背景」で、次のように非文字ベース・プロトコルにも言及している。「様々な国で、各種のビデオテックス・プロトコルが開発されている。たとえば、Prestel(British Telecomが運営する文字ベース・プロトコル)、Telidon(ビットマップ・グラフィックス・プロトコル)、NAPLPS(北米プレゼンテーションレベル・プロトコル構文、ビットマップ・プロトコル)がある」。地方裁判所は、このビットマップ・プロトコルへの言及は、最新技術[*11]の確認にすぎず、特許に記述される発明の拡張ではないと見なした。我々はこの見解に合意し他の既知のプロトコルに言及することによって、そのプロトコルが出願者の発明に含まれることはなく、発明分野で通常の技量を有する者によって、そのように明細書が解釈されることはないと結論付ける。
この結論に加えて、Wangがクレームされたシステムにビットマップ・プロトコルを実装できなかったことにも争いがない。発明者は、NAPLPSベース・デコーダーを開発できなかったと証言した。Wangは、明細書にビットマップ・デコーダーを実施可能にする記述が含まれているかどうかは、クレームの解釈に関係がなく、「実施可能性は有効性の要件であって、クレーム解釈の要素ではない」と主張する。ただし、クレームが無効になり、特許要件を満たさなくなるような意味と範囲のクレーム解釈は適切とは言えない。Eastman Kodak Co. v. Goodyear Tire & Rubber Co., 114 F.3d 1547, 1556, 42 U.S.P.Q.2D (BNA) 1737, 1743(連邦巡回控訴裁判所、1997)を参照(「裁判所はクレームの有効性を否定するよりも、それを維持するようにクレームの解釈を試みる」)。特に説明されていない主題があるだけで、クレームが無効になることはないという点でWangは正しいが[*12]、主題をクレームの対象とするためには、第112条の条件を満たすために、出願者の発明として十分に記述しなければならない。この要件は、文字ベース以外のプロトコルに関して満たされていない。Modine Mfg. Co. v. United States Int'l Trade Comm'n, 75 F.3d 1545, 1557, 37 U.S.P.Q.2D (BNA) 1609, 1617(連邦巡回控訴裁判所、1996)を参照(「クレームの複数の解釈が可能な場合は、できる限りその有効性を維持するように解釈するべきである」)(引用部分省略)。
また、Wangは、文字ベース・プロトコルとビットマップ情報プロトコルの互換性は'669発明が行われた時点で周知の事実であったため、明細書が文字ベース・プロトコルだけを記述しているように思われる場合であっても、クレームを文字ベース・プロトコルに制限するべきではないと主張する。Wangによると、'669特許の発明は情報フレームのためのプロトコルの選択ではなく、クレーム20および38のユーザー・インターフェース機能であるという。被告は、'669明細書の全体は、文字ベース[*13]情報フレームに基づく通信に関するもので、かつそれに制限され、この制限がキーワードなどの付属機能の根底にあり、クレームにはかかる記載があると反論する。我々は、クレームがユーザー・インターフェースだけではなく、このインターフェースの実装として記述されている電子システムにも関係していることに合意する。
Wangは、文字ベース・プロトコルが単なる「推奨実施例」であり、明細書に記述されている実施例はクレームの境界を設定するものではないと指摘する。Wangは、Comark Communications, Inc. v. Harris Corp., 156 F.3d 1182, 1186, 48 U.S.P.Q.2D (BNA) 1001, 1124(連邦巡回控訴裁判所、1998)を引用して、「明細書の制限はクレーム解釈に組み込まれるべきではない」と主張した。AOLとNetscapeは、Modine, 75 F.3d at 1551, 37 U.S.P.Q.2D (BNA) at 1612(「推奨実施例」が発明自体として記述される場合は、クレームの範囲はその実施例より広くなることはない)を引用して、主題が明細書で記述され、実施可能となる唯一の主題である場合は、それは発明自体であり、記述されても、実施可能にもなっていないもっと広い発明の「推奨」実施例ではないと反論する。判例[*14]は明細書の範囲に関して様々な結論を支持する引用文を分類して示しているが、各事案はそれぞれの事実問題に照らして検討しなければならない。クレームはできる限り有効性が維持されるように解釈すべきであるため、発明が明細書の「推奨実施例」よりも広い範囲で公正にクレームされているかどうかは、明細書の内容、その実施例が記述された文脈、出願経過、および適切な場合には先行技術に関係する問題である。 「推奨」という用語を使用するだけで、明細書で支持されているよりも、クレームの範囲が広くなることはない。同上、General American Transportation Corp. v. Cryo-Trans, Inc., 93 F.3d 766, 770, 772, 39 U.S.P.Q.2D (BNA) 1801, 1803, 1805-06(連邦巡回控訴裁判所、1996)を参照(明細書の記載は、「発明の単なる推奨実施例ではない。これは記述されている唯一の実施例である」)。'669特許明細書に記述されている唯一の実施例は文字ベース・プロトコルであり、クレームはそれに制限されるものとして正しく解釈された。
出願経過
出願経過も、文字ベース・フレームへの制限を支持している。特許出願の審査中にWangが提出した情報開示[*15]陳述書で、WangはNAPLPSシステムについて記述している引用例(Fleming)を、文字レベルではなく、pel(画像要素)レベルで画像情報を符号化している」として自らの発明と区別した。この陳述書は親の出願に含まれるもので、一部継続出願である'669特許には適用されないとWangは主張する。しかし、この主題は一部継続出願にも共通のもので、Fleming引用例に関する主張は、その共通主題に適用されるとする正しい判断が下された。Jonsson v. Stanley Works, 903 F.2d 812, 818, 14 U.S.P.Q.2D (BNA) 1863, 1869(連邦巡回控訴裁判所、1990)を参照(関連出願で行われた主張を適用した)。この出願経過は、発明家が、発明、その発明に関する記述およびクレームを文字ベース・システムに基づかせていること、および、この分野で通常の技量を有する者がこの出願経過を読めば、Fleming引用例の説明をそのように理解するという結論を支持している。
クレームの区別
Wangは、クレーム区別の原則に基づいて、全体的なクレームの構造は、文字ベース[*16]の制限を明記していないクレームに、その制限を組み込むべきではないという結論を支持し、要求しているとも主張している。ただし、全てのクレームは、明細書ではすべて文字ベースとして示されている「フレーム」に言及している。クレームの区別に関する主張だけでは、フレームが特定のプロトコルに制限されないとする解釈を支持するために十分ではない。Multiform Desiccants, Inc. v. Medzam, Ltd., 133 F.3d 1473, 1480, 45 U.S.P.Q.2D (BNA) 1429, 1434(連邦巡回控訴裁判所、1998)で説明されているように、「クレーム区別の原則によって、明細書、出願経過、関連する外部証拠に照らして決定された正確な範囲よりも広くクレームを拡張することはできない」。
両者の専門家証言を含むサマリジャッジメントの記録と共に、両者の全ての主張を検討して、我々は「フレーム」および「情報フレーム」という用語は文字ベース・プロトコルに関するもので、それに制限されると結論付ける。よって、この問題に関する地方裁判所のクレーム解釈を支持する。
ミーンズ・プラス・ファンクション用語
Wangは、クレームの「手段」の節に関して、35 U.S.C.§112 P6を引き合いに出している。クレーム23では、たとえば、加入者の装置でデジタル情報のフレームを保存し、取り出すための装置[*17]には、加入者が情報フレームに名前を関連付けるための「手段」から構成されるプロセッサーが含まれる。
23. 中央ビデオテックス・サプライヤーから受信されるデジタル情報のフレームをローカルに保存するための装置。これには次のものが含まれる。
中央サプライヤーから少なくとも1つの情報フレームを受信するために、中央サプライヤーに接続できるポート
中央サプライヤーから受信した少なくとも1つの情報フレームをローカルに表示するために接続される表示デバイス
中央サプライヤーから受信した少なくとも1つの情報フレームを表示した後に、再表示用に保存されるフレームとして、ローカルに保存するために接続される記憶デバイス
装置へのデータの入力を可能にするために接続されるデータ入力デバイス
次のものから構成されるプロセッサー
加入者が指定し、表示された特定の情報フレームと関連付けられる名前をデータ入力装置から受け取るために接続される手段
関連付けられた名前と共に、記憶デバイスに特定の情報フレームを保存するために接続される手段。
フレームに対して指定された名前に対応し、データ入力装置からの入力される命令に応答して、記憶デバイスから特定の情報[*18]フレームを取り出すために接続される手段。
(原文に強調はなし)。争点の「手段」要素は、情報フレームを保存し、取り出す機能を実行する文字ベース・デコーダーとして明細書に記述されているソフトウェア構造に関するものである。明細書は、表示するためにメモリーから情報フレームを取り出すには、フレーム・テーブルにフレームをロードして、明細書に記述される文字ベース・デコーダー・モジュールで復号することを示している。同様に、上記のクレーム38では、「情報フレームをローカルに保存するために接続される手段」と「表示するときに、ローカルに保存されたフレームを復号するために接続される手段」は、保存のために、受信した文字をフレーム・テーブルに書き込み、表示のために、保存された文字ベース・フレームを復号する文字ベース構造として明細書に記述されている。
Wangは、「手段」が明細書に記述される文字ベース・プロトコルに制限されず、既知のビットマップ・プロトコルは文字ベース・プロトコルと互換性を有する均等の手段であると指摘する。クレームされた[*19]機能が、明細書の構造によって十分に実施できる場合は、§112 P6に基づく均等構造物を明細書に記述することは要求されない。このため、Wangは、既知のビットマップ技術を§112 P6の下で均等物とするために、明細書に記載する必要はないと主張する。AOLとNetscapeは、文字ベース・モジュールとビットマップ・モジュールは類似の機能を実行することが知られているが、両者の機能は異なり、Wangの技術者がそのシステムにビットマップ・プロトコルを適合させることができなかったほど、その動作が大きく異なっていると反論している。被告は、ビットマップ技術を実装できなかったWangに対して、他の者がその実装に成功した後に、均等を認める判決を与えるべきではないと主張する。
我々に提出された記録の証拠は、§112 P6に基づく均等を否定した地方裁判所の決定を支持している。専門家の証言は、だいたい次のような主旨である。両プロトコルは、今日、自己完結的な「ブラック・ボックス」に配置し、適切なソフトウェアに挿入した場合は互換性を有するが、両者は著しく異なる原則に従って動作し、大きく異なる機能を持ち、通常、実質的に[*20]同じ方法では動作しない。'669特許の発明者は、少なくとも部分的には技術的な困難さのために、このシステムでのビットマップ・モジュールの開発を打ち切ったことを証言した。また、証人は、Prestelではグラフィック機能が制限されることは認識されていたが、Wangが文字ベースPrestelプロトコルの開発を選択したのは、既に普及していて、ビットマップNAPLPSシステムよりも単純であったためであるとも証言した。Wangは、特許の出願経過で、NAPLPSシステムのFleming引用例は文字ベース・システムについて記述していないために無関係であると陳述したが、このことは§112 P6の下でこのシステムに均等を認めるための重大な反証となる。このため、明細書、出願経過、証人の証言は、ビットマップ・プロトコルが§112 P6の下で均等物ではないとする結論を支持している。
以上により、文言上の侵害はないとする地方裁判所のサマリジャッジメントを維持する。
均等論
地方裁判所は、均等論に基づく均等の問題についても簡潔に判断を下した。被申立人[*21]が主張する事実に基づき、被申立人に有利なすべての合理的な事実上の推定を行い、いかなる合理的な事実認定者も責任を認めることができない場合は、事実問題が生じていても、サマリジャッジメントは適切である。Anderson v. Liberty Lobby, Inc., 477 U.S. 242, 250, 91, L. Ed. 2d 202,106 S. Ct. 2505(1986)。上訴審による審査に基づいて、我々は同じ基準を適用する。EMI, 157 E.3d at 891, 48 U.S.PQ.2D (BNA) 1184; Strattec Security Corp v. General Automotive Specialty Co., 126 F.3d 1411, 1419, 44 U.S.P.Q.2D (BNA) 1030, 1037(連邦巡回控訴裁判所、1997)。
Wangは、Warner-Jenkinson Co. v. Hilton Davis Chemical Co., 520 U.S. 17, 37, 41 U.S.P.Q.2D (BNA) 1865, 1874, 137 L. Ed. 2d 146, 177 S. Ct. 1040(1997)(「均等物は既知であるだけでなく、特許で実際に開示されていなければならないとするより厳格な主張を却下した」)を引用して、明細書に既知の均等物を記述する必要はないと指摘した。この指摘は正しい。さらに、Wangは、両プロトコルには互換性があるため、地方裁判所のクレーム解釈の下でも、均等論は文字ベース・プロトコルとビットマップ・プロトコルに適用されると主張する。同上、at 25, 36, 41 U.S.P.Q.2d (BNA) at 1869, 1874を参照(「既知の互換性」は均等性に関する有用で客観的な基準である)[*22]。被告は、NAPLPSシステムのFleming引用例を区別したWangの陳述を引用して、出願経過によりこのシステムでのビットマップ・プロトコルの使用は否定されると反論する。両技術間に著しい違いがあることには争いがない。Wangの技術専門家は、これを「非常に大きい違い」と呼んだ。また、AOLのシステムでは、グラフィック表示が可能であり、その細かさと複雑さは、'669特許で開示された文字ベース・システムでは生成できないことにも争いがない。両システムの動作、構造、機能の相違は非常に大きいため、我々は、'669特許の文字ベース・プロトコルと提訴されたグラフィック・イメージ・システム間に、合理的な事実認定者が些細な相違のみを又は実質的に同じ機能、方法、結果を認定することはあり得ないとする地方裁判所の決定に同意する。よって、均等論の下でも侵害のないことを示した判決を維持する。(注2)
注2 「中央サプライヤー」という用語の地方裁判所による解釈に関しても、Netscapeにサマリジャッジメントが与えられた。この判決では、Wangシステムによってアクセスされるデータの中央サプライヤーは、文字ベース・プロトコルで符号化されるフレームを使用する必要があるため、Netscapeシステムは除外されること、並びに、インターネットのTCP/IPプロトコルは、'669特許によって要求される「接続」から大幅に変化していることが認定された。我々の決定に鑑みて、趣意書で提起された問題については全て十分に検討されているため、ここでは論じない。
訴訟費用
FED. R. APP. P.39(a)に従って、訴訟費用は上訴人に請求される。
判決維持