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コンピューターソフトウェアのライセンス契約の保護に関する調査研究報告書 (SOFTIC 16-1)
概要
平成16年の破産法改正により、ライセンス契約におけるライセンサー破産の場合、ライセンス対象の知的財産権が対抗要件を備える場合は破産管財人の解除権は制限されることとなった。しかし、コンピューターソフトウェアの著作権については、現行著作権法上利用権設定の対抗要件制度を備えていないため、ライセンサー破産時の管財人の契約解除及び通常時に権利が移転された場合に、ライセンシーは当該ソフトウェアの利用権を確保できないことになる。
この問題について検討を行った文化審議会著作権分科会報告書は、利用者の保護については破産法との関係等から対抗要件制度によるべきとし、現行の著作権登録制度とは別の簡易な登録制度創設を視野に入れた検討を行うと共に、他の知的財産権との整合性のある制度とすべきとの提言がなされている。
このような背景の下、コンピューターソフトウェアのライセンス契約におけるライセンシー保護に関する著作権法上の問題について、どのような課題があり、そのためにどのような方策が考えられるか検討を行った。
主として提案された方策の方向は、契約の存在をもってライセンシーに対抗力を付与するとする新たな制度創設を挙げている。
目次
- 1.ソフトウェア関連取引におけるライセンシー保護の現状と問題点〔宮下佳之〕
- 1−1 はじめに
- 1−2 ソフトウェア関連取引の類型毎の実情と問題点について
- 1−2−1 パッケージソフトの販売に伴う問題
- 1−2−2 自社内の業務システムの開発に伴う問題
- 1−3 ライセンス契約に基づいて許諾されたプログラムが譲渡された場合の問題点と想定される解決策について
- 2.著作権ライセンス契約におけるライセンシーの地位の保護のあり方〔曽野裕夫〕
- 2−1 はじめに
- 2−1−1 議論の経緯
- 2−1−2 本稿の課題
- 2−1−3 本稿の検討順序
- 2−2 ライセンシーにとっての問題状況
- 2−2−1 著作権が譲渡された場合(いわゆる「平時」の問題)
- 2−2−2 ライセンサーの倒産時
- 2−2−3 小活
- 2−3 法政策的検討
- 2−3−1 はじめに
- 2−3−2 ライセンシーの地位を保護した場合に生ずる弊害
- 2−3−3 利益調整の試み
- 2−4 法技術的検討
- 2−4−1 登録制度の可能性
- 2−4−2 契約書をもって対抗要件とする制度の可能性について
- 2−4−3 目的適合的な制度案
- 2−5 残された問題―「第三者に対して効力を生ずる」ことの意味
-
3.ドイツ著作権法におけるライセンシーの保護〔駒田泰士〕
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3−2 ドイツ法における著作権取引―総論
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3−3 ドイツ著作権法33条
- 3−3−1 旧33条について
- 3−3−2 現行33条について
- 3−3−3 ドイツ倒産法103条について
- 3−4 考察
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3−5 おわりに―残された課題
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4.プログラム著作物の登録手続の現状〔SOFTIC事務局〕
- 4−1 登録の種類、登録申請件数
- 4−2 申請手続
- 4−3 登録の方法
- 4−4 プログラム登録原簿の調整、閲覧
- 4−5 料金
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5.おわりに〔小川憲久〕