●調査研究報告書● |
コンピューター・ソフトウェア関連発明の特許侵害訴訟について、米国と日本の事件について検討した。取り上げた事件とその概要は以下のとおり。
○Medical Instrumeytation and Diangostics 対EleKta(03.9.23 CAFC)
脳のイメージング技術に関する特許侵害事件。CAFCは、1,600万$の損害賠償を認定した地裁判決について、M+Fで記載されたクレーム中、争点となった「D/D変換のソフトウェア」が開示されていないとして、破棄・差し戻した。なお、プログラムの開示について、当業者が書けるであろう程度に開示されていれば十分であるとする反対意見もあった。
○ACTV 対Walt Disney(03.10.8 CAFC)
テレビ番組に対応したインターネットコンテンツを番組と同時に提供するシステムに関する特許の侵害事件。この特許では、テレビ番組の内容に関するコンテンツのアドレスを示すURLを、映像信号と共に送信することが記載されており、これに対して被告システムでは、映像信号と共に当該ウェブサイトのコンテンツのファイル名を送信ものであり、このファイル名がURLに含まれるかが争点となった。
地裁は、本件特許には絶対的URLしか含まれないとして非侵害としたが、CAFCは、インターネット上でコンテンツ情報の位置が示される以上は、相対的URLも含まれ、よって、被告システムが送受信する当該ファイル名は、URLに該当する、として、地裁判決を差し戻した。
○Bancorp Service 対 Hartford Life Insurance事件(04.3.1 CAFC)
「安定価額の保護を備えた投資プランを管理するためのシステム」について、本件クレーム中の文言「解約金払戻金の保護を備えた投資のクレジット」が不明瞭で112条違反で無効であるとの地裁判決に対し、CAFCは、「発行された特許に関する訴訟において不明瞭か否かというきわどい問題は,特許権者に有利となるように適切に解決される。」として、不明瞭を理由とする地裁の無効判断を差し戻した。
○ジャストシステム(反訴被告) 対 松下電器産業(反訴原告)事件(H16.8.31 東京地裁)
被告の特許「情報処理装置及び情報処理方法」に関し、原告製品で表示される「?」ボタン及び「表示」ボタン等は、当該特許の構成要件にいう「アイコン」に該当するかが主な争点となった。
裁判所は、『本件発明にいう「アイコン」とは,「表示画面上に,各種のデータや処理機能を絵又は絵文字として表示して,コマンドを処理するもの」であるのに対し,本件製品の「?」や「表示」,「プロパティ」及び「キャンセル」は,表示画面上にあり,処理機能を表示しているものの,デザイン化されていない単なる「記号」や「文字」であって,絵又は絵文字とはいえないことは明らかであるから,本件各構成要件における「アイコン」には該当しない。』と判示した。
○松下電器産業 対 ジャストシステム事件(H16.10.29 東京地裁)
原告特許「文書作成装置及び文書作成方法」について、被告製品が特許侵害している(被告の「一太郎Home」等が推定される)として提訴された事件。
裁判所は、被告製品は、構成要件(1-C、1-D)にいう「影付き文字のベクトルデータ」を生成するかについて、『被告製品において,影付き文字の生成後においては,影付き文字のベクトルデータを用いて処理を行っていることは認められても,影付き文字の生成過程において,文字パターンを表すベクトルデータから影付き文字のベクトルデータを生成し,生成された影付き文字のベクトルデータを影付き文字のビットマップデータに変換していると認めるに足りない。』として、原告の主張を退けた。