調査研究報告書

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ソフトウェア取引における紛争事例を巡る判例に関する調査 (SOFTIC 17-3)

概要

 ソフトウェア取引では、その対象が無体物であるソフトウェアやサービスであることから、法的紛争が発生した場合、有体物を前提としている民法、商法の判断枠組みだけでは必ずしも十分とは言えない。

 この問題について、実際の裁判事例においてどのような考えに基づいて裁判所が責任の有無等を判断したかについて調査を行った。取り上げた判例は以下のとおり。

○東京地裁H14.4.22判決(平成10年(ワ)第22251号、平成11年(ワ)第18926号)
 システムの請負代金支払い請求に対して、当該システムには受注者側に起因する瑕疵があることから、発注者の既払金請求および損害賠償請求が認められた事例。
  
○東京地裁 H15.5.28判決(平成14年(ワ)第15745号)
  被告開発ソフトに法律上の瑕疵があると主張して瑕疵担保責任に基づく損害賠償を請求したが、瑕疵は「注文者が与えた指図により生じた」ものであるとして原告の主張を退けた事例。

○東京地裁八王子支部H.15.11.5判決(平成11年(ワ)第2327号)
  請負契約に基づいて制作されたソフトについて瑕疵があるとの主張が退けられた事例。処理に時間がかかりすぎることや画面が小さいことから誤入力が多発するといったことは本件システムが使用に耐えないものであるとは認められないとされた。

○平成16年1月28日 名古屋地裁(平成11年(ワ)第3685号、平成12年(ワ)第335号)
総合行政システムの導入について、発注者が求めた債務不履行請求に基づく損害賠償請求等に対し、反訴において受注者の求める未払保守料及びカスタマイズ費用の一部が認められた事例。

○東京地裁 H16.3.10判決(平成12年(ワ)第20378号、平成13年(ワ)第1739号)
  ユーザーがシステムの不具合を理由に契約を解除し、ベンダーに6億円余の損害賠償を、ベンダーは契約解除により被った損害4億円余の損害賠償を請求した事例。裁判所は双方の履行が不完全であったとして、損害を認めベンダーに過払い金の返還を命じた。


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