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ソフトウェア等の権利保護に関する調査研究報告書― 平成19年度版 ― (SOFTIC 19-2)
概要
本委員会ではコンピュータ・ソフトウェア等の適切な権利保護について検討を行っている。
今年度取り上げた判例は国内4件、米国1件の計5件である。MYUTAと称する携帯電話向け音楽ストレージサービスにおける複製権等侵害行為の主体性が問題となったイメージシティ事件(事例2)、映画の著作権保護期間の延長を巡り相次いだ判決をまとめた「最近の映画事件の論点」(事例5)など。
報告書には発表者によるレポート及び各判決文を収録。
- 事例1−CADプログラムの無断改変事件(東京地裁 平成17年(ワ)第23419号 損害賠償等請求事件)
本件は、ソフトウェアメーカーである原告が、原告ソフトウェアのユーザーである被告に対し、被告による原告ソフトウェアの改変行為が、原告ソフトウェアの翻案権侵害、複製権侵害又は権利管理情報の改変行為に当たると主張して、著作権法112条1項及び2項に基づく改変されたプログラム等の使用差止め及び廃棄、並びに不法行為(民法715条)による損害金及び遅延損害金の支払を求めた事案である。
- 事例2−イメージシティ事件(東京地方裁判所 平成19年5月25日判決)
原告は、平成17年11月、プレスリリースを経て、本件サービスにつき機能を限定して無料による試用を開始した。 被告は、平成18年2月1日付けの「『MYUTA』について」と題する書簡をもって、原告に対し、本件サービスの中止と権利者の許諾を得た上での再開を申し入れた。
その後、原告と被告の間において、本件サービスをめぐって著作権法に違反する事態の有無につき書簡が交わされ、原告は、平成18年4月20日、「著作権法の解釈を明確にした後、改めてサービスを再開することを目指」すとして、本件サービスをいったん終了した上、同年5月17日、本件訴訟を提起した。
- 事例3−Perfect 10 v. Amazon. com(2007年5月16日 第9巡回区控訴裁判所)
女性のヌード画像の配信等を行っている会社であるPerfect 10は、同社が配信している画像が、Googleの検索機能を使って不正に利用されたと主張して、Googleに対して訴えを提起した。Perfect
10は、Googleの他に、Amazon.comも訴えているが、これは、Amazon.comが同社のサイトにおいてGoogleの検索エンジンにリンクを張っており、AmazonもGoogleの検索エンジンを用いて、Perfect
10の画像を配信しているという論拠によるものである。なお、本件で問題となっている画像は、サムネイル版とフルサイズ版の二つであり、サムネイル版は、Googleの検索用サーバ内に保存され、フルサイズ版は、Googleのサーバ内には保存されておらず、第三者がアップロードした画像に対して、リンクが張られているに過ぎなかった。
原審であるカリフォルニア中央地区米国連邦地裁は、サムネイル版は、Googleのサーバ内からユーザー向けに配信されているので、Googleが直接侵害者であると判示して、Googleに対して、Perfect
10の画像のサムネイル版の生成及び公然展示に対する暫定的差止命令を発令したが、第三者が掲示したPerfect 10の画像のフルサイズ版へのリンクについては、配信しているのはGoogleではないと判示して、Perfect
10の差止請求を棄却した。また、同裁判所は、Amazon.comがその利用者に対して、Googleから提供された情報へアクセスすることに対する暫定的差止命令も認めなかった。
上記の判断に対して、Perfect 10とGoogleは、それぞれ控訴した。控訴審は、原審の判断を一部維持し、一部を破棄差し戻しした。
- 事例4−「ロクラクU」事件(東京地裁決定:平成18年(ヨ)第22046号)
債務者株式会社日本デジタル家電は「ロクラクUビデオデッキレンタル」の名称で、ハードディスクレコーダー「ロクラクU」2台のうち1台を日本国内に設置し(以下「親機ロクラク」)、受信するテレビ放送をその1台に入力し、もう1台(以下「子機ロクラク」)を利用者に貸与又は譲渡することにより、当該利用者が国内で放送される放送番組の複製及び視聴ができるサービス事業(以下「本件サービス」)を行っていた。
これに対し、債権者株式会社東京放送(以下「TBS」)および債権者静岡放送株式会社(以下「SBS」)は、対象となる放送番組(以下「本件著作物」)と放送(以下「本件放送」)を特定した上で、本件サービスが、TBSの著作物及びSBSの放送に係る音又は影像を複製する行為に当たるから、複製権(著作権法21条)及び著作隣接権(同法98条)を侵害するとして、TBSが、本件著作物を複製の対象とすることの差止めを、そしてSBSが、本件放送に係る音又は影像を録音又は録画の対象とすることの差止めを求めたのが本件である。
東京地方裁判所は、債権者が金300万円の担保を立てることを執行実施の条件として、債務者のサービスにおいて、本件著作物を複製の対象とし、また本件放送に係る音又は影像を録音又は録画の対象としてはならないものとし、債権者らの申立を認めた。
- 事例5−最近の映画事件の論点−チャップリン・黒澤・シェーン判決−
I) チャップリン格安DVD販売事件;「The Chaplin Collection」)販売事件1・2審判決
II) 黒澤明監督の映画関連3事件;1審判決(東宝/角川映画/松竹株式会社)
III) シェーン判決事件;最高裁判決(2007年12月18日