●調査研究報告書● |
2012.7.5
SOFTIC 23-1
ソフトウェア関連発明の特許保護に関する調査研究報告書―平成23年度―
●ビデオカセットレコーダインデックスと電子番組ガイドの組み合わせ事件(東京地方裁判所 平成22年12月3日判決)
特許「ビデオカセットレコーダインデックスと電子番組ガイドの組み合わせ」について、被告製品(レコーダー)は、原告特許(本件発明)の方法に用いられる物であって本件発明の課題の解決に不可欠なものであり、被告は被告製品が本件発明の実施に用いられることを知りながら業として行なったとして、101条5項(間接侵害)による差止と損害賠償を求めた。
裁判所は、原告の特許発明は、記録された番組のディレクトリと放送される番組のディレクトリを二者択一的に表示するもので(構成要件D)、これには「記録された番組の位置情報」が含まれ表示されるが、被告製レコーダーでは「記録された番組の位置情報」が含まれておらず、したがって番組の位置を表示しているものとはいえないので、本件特許に係る方法を使用しているとはいえないとした。
● Research Corporation Technologies対Microsoft Corporation事件(米国連邦巡回区控訴裁判所 2010(平成22)年12月8日判決)
コンピュータのディスプレイやプリンターにおいて、多くの灰色である中間色を表現することができるデジタル画像のハーフトーン技術に関する特許(方法クレーム)について、地裁は、101条の保護適格性要件を満たさず無効であるとした。
CAFCは、Bilski最高裁判決で示された3つの例外(自然法則、物理現象、抽象的アイデア)について検討した結果、本件が抽象的アイデアに該当するか否かについて、本件では抽象的ではなく、コンピュータ技術分野における機能的かつ明確な応用を示すものであるとして、地裁判断を破棄し、101条の保護適格性があるとした。
●Akamai Technologies対Limelight Networks事件(米国連邦巡回区控訴裁判所 2010(平成22)年12月20日判決)
コンテンツ配信のネットワークサービスに関する特許(645、703及び413)で、ウェブサイト内の個々の埋め込みオブジェクトを配信ネットワーク上にオブジェクトごとにタグ付けを要求するという方法について、被告とその顧客であるコンテンツプロバイダとの契約で、顧客のコンテンツプロバイダはこの「ダグ付け」しなければならないことで問題となった。本件で、被告が当該方法クレームのすべてのステップを実施しているのではなく「タグ付け」ステップは顧客が実施しているように、別の主体が侵害行為を行う場合であっても共同侵害が成立するかが争われた。
地裁は、被告の顧客であるコンテンツプロバイダに対する指示または管理はなかったとして、非侵害とした。
CAFCは、共同侵害の立証には、単に指示、管理がなされていることだけではなく、方法のステップを実行する当事者間に代理関係が存在する場合、又は一方当事者が他方当事者に対してステップを実行する契約上の義務を負う場合に限られるとした上で、本件ではそのいずれも存在しないとして、共同侵害を否定した。
●Microsoft Corporation対i4i 事件(米国最高裁判所 2011(平成23)年6月9日判決)
米国特許法282条で、特許無効を立証する責任は、無効を主値要する当事者が負うことは明らかであるが、本件では、無効の主張における立証基準、必要とされる証明の程度が問題となった。
最高裁判所は、282条による有効性の推定に関し、無効の主張における立証基準(証明の程度)について、特に特許商標庁の審査過程で考慮されていない証拠に基づく場合も含めて、証拠の優越ではなく、明白かつ確信を抱くに足る(明確かつ説得力のある)証拠の基準によって判断すべきものとし、従前のCAFCの判例上の取扱を是認した。
●車載ナビゲーション装置事件(知的財産高等裁判所 平成23年11月30日判決)
カーエレクトロニクス製品等の製造・販売する原告が有する特許「車載ナビゲーション装置」について、原告が、ナビゲーションコンテンツサービスの提供、ナビゲーションエンジンの開発及びライセンス等を行う被告に対し、被告が提供するナビゲーションサービスに係る装置等は、当該特許の構成要件を充足し、被告がユーザーに当該サービスを使用させ、又はそのための装置を生産することによって原告の本件特許を侵害し、かつ、当該サービスに供する携帯端末用のプログラムを譲渡等することは間接侵害に該当する等として、被告のナビゲーション装置に含まれるサーバーの使用差止、間接侵害を理由とする携帯端末用プログラムの譲渡等の差止及び損害賠償を求めた。
裁判所は、「車載」とは常に車両に積載されていることを意味する。対して被告装置は車両に載せられておらず本件特許の「車載ナビゲーション装置」を構成するものではないとした。また、均等の主張に対しても、被告装置は携帯するものであるから、「車載ナビゲーション装置」を被告装置の「送受信部を含んだ携帯端末」に置換することによって、本件各特許発明が「ナビゲーション装置が車載されたこと」としたことによる課題解決を実現することはなく、本件各特許発明において「車載ナビゲーション装置」としたことによる作用効果が得られず、結局、本件各特許発明の目的を達することができないしない、として退けた。
・・・ その他の報告書一覧はこちら ・・・