●調査研究報告書● |
2013.6.24
SOFTIC 24-1
ソフトウェア関連発明の特許保護に関する調査研究報告書―平成24年度―
1.Mayo Collaborative Services 対 Prometheus Laboratories 事件連邦最高裁判決(2012.3.20)
本件は、治療・診断方法の発明の保護適格性が問題となったものである。
Prometheusは,米国特許6355623号と6680302号の独占的ライセンシーである。Mayoは,Prometheusの特許方法を購入していた。しかし,2004年に,Mayoは,「独自の方法」を使用することを決定し,Prometheusからの購入を中止した。「独自の方法」は,数値範囲が,Prometheusの方法とは異なっていた。しかし,Prometheusは,「独自の方法」も,特許権を侵害するとして,訴訟を提起した。これに対し,Mayoは,当該特許は保護適格性を有しないとして,特許無効の略式判決の申立てをした。
最高裁は、Prometheusの特許の適格性を認めたCAFCの判断を覆し、適格性はないと判断した。そのなかで、適格性判断のためのMOTテストは使えないとした。
2.McKesson Technologies対Epic Systems Corporation事件CAFC判決(2011.4.12)
McKesson Technologies (控訴人、原審原告)が、米国特許6,757,898号のクレーム1-10、12-14、16-18について、Epic Systems Corporation(被控訴人、原審被告)による特許権侵害を主張して提訴した事案である。これに対して、ジョージア北部地区連邦地裁は、最終的に、joint infringementは不成立として898号特許のinducementによる侵害がない旨のsummary judgmentを下した。本件判決は、この判断を不服として、McKesson がCAFCへ控訴したことに伴う判断である。連邦地裁の前記summary judgmentでは、898号特許の方法クレームの全ステップの実施を、被控訴人たるヘルスケアサービス提供事業者の顧客という単一の主体によってなされるとすることは不可能であることから、特許権侵害はしないと判断していた。
CAFCは、方法クレームの全ステップの実施を被控訴人たるヘルスケアサービス提供事業者の顧客という単一の主体によってなされるとすることは不可能であることから、特許権侵害はしないとの連邦地裁の判断を支持した。*2012年8月31日の、Akamai事件とMckesson事件を併合したCAFC大法廷判決では(11人のうち6人の多数意見)、方法クレームの間接侵害(inducement)の侵害判断では、事実として直接侵害が存在すれば足りるのであって、単一主体によって全ステップが使用されているか否かは問題とならない、と判断した。
3.アップル インコーポレイテッド 対 日本サムスン事件(東京地裁H24.8.31判決 平成23年(ワ)第27941号)
名称を「メディアプレーヤーのためのインテリジェントなシンクロ操作」とする発明についての特許権(特許第4204977号)を有する原告(米アップル)が、被告ら(韓国サムスンの日本法人)が輸入、販売等する別紙被告製品目録記載1ないし8の各製品と「Kies」というソフトをインストールしたパーソナルコンピュータとの間で、保存してある楽曲ファイルのシンクロを行うことが(被告方法)、上記特許権を侵害するとして、被告らが被告製品を輸入、販売等する行為が同特許権の間接侵害(101条5号)に当たると主張して、被告らに対し、特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償金の一部請求として、連帯して1億円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(平成23年9月1日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案。
裁判所は、「ファイルサイズ」は本件発明における「メディア情報」に該当しない等として、原告の主張を退けた。
4.株式会社ジンテック対株式会社クローバー・ネットワーク・コム事件判決(知財高裁H24.1.16判決 平成23年(ネ)第10056号、電話番号リストのクリーニング方法事件)
本件原告の潟Wンテックは、「電話番号リストのクリーニング方法」(特許第3462196号)(本件発明)の特許権者である。本件発明は、電話回線網で実際に使われている電話番号をコンピュータを用いて調査し、その調査結果に基づいて既存の電話番号リストをクリーニングする方法に関するものである。本件被告の潟Nローバー・ネットワーク・コムは、 'DocBell'というサービスにおいて、全国の固定電話・携帯電話の使用状況を独自のIT技術を用いて調査蓄積し、顧客に電話番号履歴情報を提供するサービス(被告サービス)を行っている。
原告は、被告サービスの実施は、上記特許権を侵害するものであると主張して、被告に対し、特許法100条1項に基づく被告サービス実施の差止め等を求めて提訴した。
第一審では、文言・均等非侵害と判断され、控訴審でも原告の請求は棄却された。
5.エイディーシーテクノロジー株式会社対株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント事件(東京地裁H24.11.30判決 平成23年(ワ)第3572号)
本件は、発明の名称を「サーバ,利用者装置,プログラム及び指標処理方法」とする特許第4612747号等の特許権者である原告が、被告による装置及びプログラムの使用等が本件各特許の侵害又は間接侵害に当たるとして、被告に対し損害賠償を求めた事案である。
尚、原告は、特許第4612747号等について訂正審判請求(訂正2010-390119号事件)をし、特許庁は、訂正を認めるとの審決をし、同審決は確定している。一方、被告は、特許第4612747号等について無効審判請求(無効2011-800189号事件)をし、特許庁は、原告の行った訂正請求を認めた上で「特許第4612747号の請求項2ないし8に係る発明についての特許を無効とする。特許第4612747号の請求項1に係る発明についての審判請求は、成り立たない。」との審決をした。これに対して、原告、被告双方は、それぞれ、審決の部分取消を求める審決取消訴訟を提起し、これらの訴訟は、知的財産高等裁判所に係属中である(平成25年3月時点)。
裁判所は、被告サーバが本件発明の「サーバ」には該当しない等の理由で原告の主張を退けた。
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